説明

塗装前処理方法

【課題】電着塗装前の化成処理工程に持ち込まれた油分を適切に除去し、化成不良の発生を防止できる塗装前処理方法を提供する。
【解決手段】脱脂・洗浄工程Aの後であって電着塗装工程Cの前に、ボディ4を化成処理液に浸漬させることによりボディ4の表面に化成被膜を形成する塗装前処理方法において、化成処理液が満たされた化成処理槽11に油吸着性樹脂塊体17を浮遊させた状態でボディ4を化成処理液に浸漬させて処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ボディや部品の表面に電着塗装を施す前に行われる前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディの下塗り塗装として電着塗装が一般的であるが、この電着塗装を施す前に、自動車ボディを洗浄したり化成被膜を形成したりする、いわゆる前処理が行われている。
【0003】
従来の電着塗装の前処理は、自動車ボディに付着した油分、鉄粉、塵埃などを除去する脱脂・洗浄工程と、清浄となったボディの表面にリン酸亜鉛系化成皮膜を形成する表面調整・化成処理工程とで構成されている。このうちの表面調整工程は、被処理物の表面に表面調整剤成分を吸着させることにより、次工程のリン酸亜鉛系化成処理工程における反応起点数を増加させ、また吸着した表面調整剤成分が、リン酸亜鉛皮膜結晶の核となり、皮膜形成反応を加速するという役割を担っている。
【0004】
ところが、リン酸亜鉛系化成処理法では、化成被膜の形成反応を加速させるためには上述したとおり表面調整工程が必要である。また、リン酸亜鉛系化成処理法は化学的反応によって化成被膜を形成するため、化成スラッジが必然的に生じてしまい、そのために化成スラッジを含む排水の処理装置や、ボディを洗浄する洗浄装置及び水切り乾燥炉などの設備が必要となる。
【0005】
このため、化成処理液を改善することで表面調整工程や化成スラッジの処理を省略することも提案されている。
【0006】
また、脱脂処理後の水洗工程において、水洗槽又はスプレー水洗で回収した油分含有水を一旦タンクに集め、油吸着ベルトを一部表面に浸して回転させてスクレーパで油分を掻きとって回収し、水をタンク下部から抜き取って水洗水として再利用することも提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、脱脂・洗浄工程にて脱脂できなかった油分、たとえば自動車ボディのパネルの合わせ面や狭隘部に残留した油分が化成処理工程に持ち込まれると化成不良が生じるおそれがある。特に化成処理工程を簡略化するために表面調整工程やその前の洗浄工程を省略乃至は短縮したときはこの問題が顕著となる。
【特許文献1】特開平10−324997号公報
【発明の開示】
【0008】
本発明は、電着塗装前の化成処理工程に持ち込まれた油分を適切に除去し、化成不良の発生を防止できる塗装前処理方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、脱脂・洗浄工程の後であって電着塗装工程の前に、前記被処理物を化成処理液に浸漬させることにより当該被処理物の表面に化成被膜を形成する塗装前処理方法において、前記化成処理液が満たされた化成処理槽に油吸着性樹脂塊体を浮遊させた状態で前記被処理物を化成処理液に浸漬させて処理を施すことを特徴とする塗装前処理方法が提供される。
【0009】
本発明では、化成処理槽に油吸着性樹脂塊体を浮遊させた状態で被処理物を化成処理液に浸漬させるので、被処理物によって前工程の油分が持ち込まれてもこれを油吸着性塊体で吸着することができ、これにより油が原因の化成不良の発生を防止することができる。
【発明の実施の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の塗装前処理方法が適用される塗装工程の一例を示す平面レイアウト図、図2は本発明の塗装前処理方法が適用される塗装前処理装置の一実施形態を示す側面図、図3(A)は本発明の塗装前処理方法に係る化成処理装置の一実施形態を示す側面図、同図(B)は平面図である。
【0011】
図1及び図2に塗装工程のうち前処理〜電着工程の一例を示し、同図を参照して塗装ラインの前半を概説する。以下の説明では、ホワイトボディに付着した油分、鉄粉、塵埃等を除去する工程及びその装置の総称を脱脂洗浄工程A又は脱脂洗浄装置Aと称し、その後にホワイトボディに化成被膜を形成する工程及びその装置の総称を化成処理工程B又は化成処理装置Bと称し、化成被膜が形成されたボディに未乾燥の電着塗膜を形成する工程及びその装置の総称を電着工程C又は電着塗装装置Cと称し、その後にボディに付着した余分な電着塗料を洗い流す工程及びその装置の総称を電着水洗工程D又は電着水洗装置Dと称し、未乾燥の電着塗膜を焼き付けて乾燥させる工程及びその装置の総称を電着焼付工程E又は電着乾燥炉29と称する。
【0012】
まずプレス部品の組立を終了したホワイトボディは、車体組立ラインのドロップリフタ1により、それまでの台車から塗装ハンガ3に移載され、オーバーヘッドコンベア2により塗装ラインに搬送される。
【0013】
塗装ラインに搬入されたホワイトボディ4には、プレス油や溶接による鉄粉、その他塵埃などが付着しているので、化成処理を施す前に脱脂洗浄工程Aにてこれら油分、鉄粉及び塵埃が除去される。同図に示す例では、この脱脂洗浄工程Aは、主として油分を除去するための予備脱脂工程A1と本脱脂工程A2、及びこれら予備脱脂工程A1及び本脱脂工程A2で使用した脱脂液、ボディ4に付着した鉄粉や塵埃を除去する第1水洗工程A3および第2水洗工程A4から構成されている。
【0014】
図2に示すように予備脱脂工程A1はタンク5に貯留された脱脂液をポンプで汲み上げてノズル6からボディ4に向かって噴霧する、いわゆるシャワー式接液方法であるのに対し、本脱脂工程A2は、脱脂槽7に収容された脱脂液にボディ4を全没させることで接液させる、いわゆるフルディップ式接液方法が採用されている。ただし、本発明に係る塗装前処理方法及び装置は、このような接液方法や段数(本例では予備脱脂と本脱脂の2段。)には何ら限定されず適宜変更可能である。
【0015】
また、第1水洗工程A3はタンク8に貯留された工水をポンプで汲み上げてノズル9からボディ4に向かって噴霧する、いわゆるシャワー式接液方法であるのに対し、第2水洗工程A4は、水洗槽10に収容された工水にボディ4を全没させることで接液させる、いわゆるフルディップ式接液方法が採用されている。ただし、本発明に係る塗装前処理方法及び装置は、このような接液方法や段数(本例では第1水洗と第2水洗の2段。)には何ら限定されず適宜変更可能である。以上説明した脱脂洗浄工程Aを構成する装置が脱脂洗浄装置Aである。
【0016】
脱脂洗浄工程Aにより清浄となったホワイトボディ4の表面に化成被膜を形成するために化成処理工程Bが設けられている。本例の化成処理工程Bは化成被膜形成工程B1と、化成処理液による発錆を防止するための純水洗工程B2とから構成され、表面調整工程は設けられていない。
【0017】
特に本例では、化成処理液として、たとえばジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン、並びにフッ素イオンを含有し、実質的にリン酸イオンを含有しない化成処理液が用いられている。
【0018】
リン酸イオンを含有する化成処理は、ボディを構成する鉄、亜鉛、アルミニウムとのイオン交換による析出反応(化学的反応)で化成被膜が形成されるが、たとえばジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン、並びにフッ素イオンを含有する化成処理液による化成処理は、化学的反応による被膜形成メカニズムではなく、コーディングのような物理的な作用により化成被膜が形成される。この種の化成処理液を用いると、リン酸亜鉛系化成処理液に比較して、化成スラッジ(反応生成物)が生じない点や、表面調整工程が不要である点などが有利となる。
【0019】
一例を挙げると、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン、並びに、フッ素イオンを含有、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオンの含有量は、重量基準で20〜500ppmであり、フッ素イオンの含有量は、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオンに対して、モル比で6倍以上であり、実質的にリン酸イオンを含有せず、pHが2〜5である化成処理液、若しくはこれにバナジウムイオン、セリウムイオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバルトイオンなどの防錆金属を添加した化成処理液、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン、フッ素イオン、並びに、可溶性エポキシ樹脂を含有し、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオンの含有量は、質量基準で20〜500ppmであり、フッ素イオンの含有量は、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオンに対して、モル比で6倍以上であり、可溶性エポキシ樹脂は、樹脂100g当たり−NH及び/又は−NHを少なくとも0.1モル有し、実質的にリン酸イオンを含有せず、pHが2.5〜4.5である化成処理液、6価クロムイオン2g/リットル以上、硫酸イオン20〜2000ppm、フッ素を400ppm未満、及びジルコニウムイオン及びチタニウムイオンから選ばれる1種又は2種のイオンを20〜1000ppm含有するpHが0.5〜2.0の化成処理液、若しくはこれにコロイダルシリカ、乾式シリカ、珪酸アルカリ金属塩の、1種又は2種以上のシリカゾルをその固形分濃度で1〜5g/リットルを含有する化成処理液などである。ただし、この化成処理液にのみ限定される趣旨ではなく、化学的反応に依らない物理的作用による化成皮膜が形成される化成処理液であればよい。
【0020】
図3に示す化成処理装置Bは、塗装ハンガに搭載されたボディ4が通過する化成処理槽11を有し、オーバーヘッドコンベア2のアップダウンに伴いボディ4もアップダウンするので、化成処理槽11に満たされた化成処理液にボディ4を浸漬することができる。なお、同図にはいわゆるフルディップ式化成処理槽11を示したが、ボディ4の下部のみを浸漬し、ボディ4の上部をシャワーするハーフディップ式や、ボディ4の全体をシャワー方式による化成処理を採用することも可能である。
【0021】
上述したジルコニウムイオンを含む化成処理液を用いた化成処理工程では、いわゆる化成スラッジが生じないので、化成処理槽11には特別なスラッジ除去装置を設ける必要がない。本例では、化成処理槽11内の化成処理液に含まれる塵埃を除去するとともに化成処理液の撹拌を目的として、フィルタ12,ポンプ13及び吐出ノズル14を有する循環配管15が設けられている。ここで同図(A)(B)に示すように、循環配管15の吸込み口16は化成処理槽11の比較的液面に近い高さに設けられ、また吐出ノズル14も同じく化成処理槽11の比較的液面に近い高さに設けられている。なお、循環配管15の吸込み口16は化成処理槽11の入口側に複数個所設けることもできる。また、吐出ノズル14は処理槽11の出口側の幅方向にほぼ均等に複数設けることで、化成処理液が化成処理槽11の出口側の液面近傍から入口側に向かって液流を形成する。これにより、ボディ4によって化成処理槽11に油分が持ち込まれてもこれを化成処理槽11の入口側へ戻すことになり、ボディ4が出槽する際に浮遊する油分を持ち出すことが防止される。
【0022】
特に本例では、化成処理槽11の側部に油吸着性を有する樹脂塊体17が液面に浮遊して設けられている。油吸着性を有する樹脂塊体17としては、ポリプロピレン繊維などの繊維で構成され、繊維の隙間に毛管現象を利用して油分を吸着させる吸蔵タイプの塊体や、ポリスチレンなどの炭化水素ポリマーにより構成され、分子間に油分を取り込んで吸着、ゲル化させるタイプのものを用いることができる。この種の油吸着性樹脂は疎水性であるため、水分を吸わずに油分のみを選択的に吸着するため、化成処理槽11に持ち込まれて液面に浮遊している油分を効率的に除去することができる。油吸着性樹脂塊体17の形状は特に限定されず、球状、柱状、マット状などに形成して用いることができる。また大きさも特に限定されないが、被処理物が自動車ボディの場合には、10mm〜1000mm程度であることが好ましい。
【0023】
油吸着性樹脂塊体17は、化成処理槽11の液面に単に浮遊させておくこともできるが、ボディ4内に入り込んで持ち出されないように、固定具18などで処理槽11側に固定しておくことがより好ましい。また、油吸着性樹脂塊体17の設置場所も特に限定されないが、同図(B)に示すようにボディ4の進路を妨害しない側部であって、特に循環配管15の吸込み口16の近傍にも設置しておくことが望ましい。
【0024】
本発明を限定するものではないが、油吸着性樹脂塊体17としてラバライザー(登録商標、HAZ−MAT社製炭化水素ポリマー,比重0.4,吸収能力が5倍/体積)を150mm×500mm×70mmの大きさ(0.05kg/個)に形成したものを用い、これを化成処理槽11の両側部に1mピッチで片側に10個固定する。こうすると、油吸着性樹脂塊体17の合計体積は105リットルであることから、吸着能力は525リットルとなる。ボディ4による油分の持ち込み量を5ml/台とすると、105,000台分の油を除去することができる。
【0025】
図3に戻り、化成被膜形成工程B1に続いて純水洗工程B2が設けられているが、この純水洗工程B2は、図3(A)に示すようにタンク19に貯留された純水をポンプ20で汲み上げてノズル21からボディ4に向かってミスト状に噴霧する、いわゆるシャワー式接液方法である。この純水洗工程B2は、上述したとおり化成処理液のpHが2〜5と酸性であるときはこれにより電着工程までの間にボディに錆が発生するのを防止するためである。したがって、必要に応じて当該純水洗工程を省略したり噴霧量を減少させたりすることは可能である。
【0026】
特に本例では、ボディ4に噴霧した純水をタンク19に回収するとともに、当該タンク19のオーバーフロー水を化成処理槽11に導くオーバーフロー管22が設けられている。化成処理槽11に自動車ボディ4を浸漬して化成処理を行うと,処理に使用される化成処理液のほかに、ボディ4によって次工程へ持ち出される化成処理液も少なくないが、本例のようにこの処理層11から持ち出された化成処理液を純水洗工程B2でタンク19へ回収するとともに、オーバーフローした液(化成処理液+純水)を化成処理槽11へ戻す。そして、化成処理槽11における不足分は図外の補給用化成処理液タンクから補給し、純水タンク19における不足分は図外の補給用純水タンクから補給する。これにより、化成被膜形成工程B1と純水洗工程B2の排水処理系がクローズド化されることになる。
【0027】
以上説明した化成処理工程Bを構成する装置が化成処理装置Bである。
【0028】
図1及び図2に戻り、純水洗B2の後には、電着工程C及び電着水洗工程Dが設けられている。特に本例の前処理塗装ラインでは、化成処理工程Bと電着工程Cとの間にボディ4のストレージ工程を省略して、昼休みや終業時であってもそのまま電着工程Cにボディを流すこととしている。これによっても、上述した純水洗工程B2に加えて、ボディ4の発錆が防止される。ただし、必要に応じてストレージ工程を設けることもできる。
【0029】
電着工程Cは、電着液の電気泳動作用によりボディ4の表面に電着塗膜を形成する工程であり、電着液が満たされた舟形の電着槽23を有し、塗装ハンガ3に搭載された状態でボディ4が電着液に浸漬され、電着槽23内の側壁及び低壁に設けられた複数の電極板(図示は省略する。)に高電圧を印加するとともにボディ4側をアースすることで電着塗装が施される。またこのとき、ボディ4の袋構造体の内部にも電着液が浸入するので袋構造体の内面にも電着塗膜が形成されることになる。なお、電着液としては上述したカチオン型電着塗料を用いることが防錆上好ましいが、電着液側をアースするとともにボディ4側に高電圧を印加するアニオン型電着塗料を用いても何ら差し支えない。
【0030】
電着工程Cに続いて、ボディ4に付着した余分な電着液を洗い流し、場合によってはこれを回収する電着水洗工程Dが設けられている。本例の電着水洗工程Dは工水を用いて水洗する前段の工程と、純水にて水洗する後段の工程とから構成され、図2には前段の工水洗浄工程のみを示す。この工水による水洗工程は、さらにフルディップ式水洗とシャワー式水洗とで構成され、工水が満たされた水洗槽24、工水が貯留されたタンク25、当該タンク25に貯留された工水をポンプで汲み上げてボディ4に向かって噴霧するノズル26を有している。また、このシャワー式工水水洗工程の直後には、図示は省略するが当該シャワー式工水水洗工程と同様に、純水を貯留するタンクと、当該タンクに貯留された純水をポンプで汲み上げてボディ4に向かってミスト状に噴霧するノズルを有する、純水洗工程が設けられている。
【0031】
電着水洗工程Dの後には、図1に示すように塗装ハンガ3に搭載されたボディ4を塗装台車に移載するためのドロップリフタ27が設けられ、ここで塗装台車に移載されたボディ4はフロアコンベア28により塗装乾燥炉29に搬入され、ここでたとえば170℃で20分間加熱されることにより、ボディ4に塗装された電着塗膜が硬化する。この塗装乾燥炉28が電着焼付工程Eに該当する。
【0032】
電着焼付工程Eの後には、昼休みや終業時のボディ4を一時的に溜めておくためのストレージ工程Fが設けられている。昼休みや終業時にあっては、ドロップリフタ1の前のボディ組立工程および電着焼付工程Eの後のシーリング工程Gは作業を中断する。これに対して、脱脂洗浄工程A〜電着焼付工程Eまでは処理を中断すると品質に影響することが多いので、ボディ組立工程やシーリング工程Gが作業中断してもそのまま処理を続行する。このストレージ工程Fは、その間に処理されたボディ4を一時的に溜めておき、作業が再開されたときにシーリング工程Gにボディ4を供給するためのラインである。そのため、通常は脱脂洗浄工程A〜電着焼付工程Eまでに在席するボディ数のストレージ能力とすることが好ましい。
【0033】
以上のとおり、本実施形態によれば、処理槽1に油吸着性樹脂塊体17を浮遊させた状態でボディ4を化成処理液に浸漬させるので、ボディ4によって前工程からの油分が持ち込まれてもこれを油吸着性塊体17で吸着することができ、これにより油が原因の化成不良の発生を防止することができる。
【0034】
また本例では、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン、並びにフッ素イオンを含有し、実質的にリン酸イオンを含有しない化成処理液を用いることで、化成処理工程Bの前に表面調整工程が不要となり、また化成処理工程Bの後に工業用水による水洗工程も不要となって、化成処理工程を簡略化することができる。
【0035】
またこのとき、化成被膜形成工程B1の後の、純水洗工程B2の回収オーバーフロー液を化成処理槽11に戻すことにより、化成処理工程Bの排水系をクローズド化することができる。また、この純水洗工程で噴霧された純水は次工程の電着工程に持ち込まれても何ら問題はないので、化成処理工程Bに水切り乾燥炉を設ける必要はなく、むしろ持ち込まれる純水が電着塗料の補給用純水として機能することになる。
【0036】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の塗装前処理方法が適用される塗装工程の一例を示す平面レイアウト図である。
【図2】本発明の塗装前処理方法が適当される塗装前処理装置の一実施形態を示す側面図である。
【図3】(A)は本発明の塗装前処理方法に係る化成処理装置の一実施形態を示す側面図、(B)は平面図である。
【符号の説明】
【0038】
A…脱脂洗浄工程
B…化成処理工程
C…電着工程
D…電着水洗工程
E…電着焼付工程
F…ストレージ工程
G…シーリング工程
4…自動車ボディ(被処理物)
11…化成処理槽
17…油吸着性樹脂塊体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱脂・洗浄工程の後であって電着塗装工程の前に、前記被処理物を化成処理液に浸漬させることにより当該被処理物の表面に化成被膜を形成する塗装前処理方法において、前記化成処理液が満たされた化成処理槽に油吸着性樹脂塊体を浮遊させた状態で前記被処理物を化成処理液に浸漬させて処理を施すことを特徴とする塗装前処理方法。
【請求項2】
前記脱脂・洗浄工程の後に、表面調整処理を施すことなく前記化成処理を施し、その後、工業用水による水洗処理及び被処理物の乾燥処理を施すことなく前記電着塗装を行うことを特徴とする請求項1記載の塗装前処理方法。
【請求項3】
前記化成処理液はジルコニウムイオンを含むことを特徴とする請求項2記載の塗装前処理方法。
【請求項4】
前記化成処理を施した後、純水を用いて前記被処理物を洗浄することを特徴とする請求項2又は3記載の塗装前処理方法。
【請求項5】
前記油吸着性塊体の平均直径は、10mm〜1000mmであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の塗装前処理方法。
【請求項6】
前記油吸着性塊体を前記化成処理槽に固定することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の塗装前処理方法。
【請求項7】
前記化成処理槽の出口側から入口側に向かう表面流を形成することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の塗装前処理方法。
【請求項8】
前記油吸着性塊体を前記化成処理槽の化成処理液の吸込み口の近傍に配置することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の塗装前処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−28579(P2006−28579A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208553(P2004−208553)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】