説明

塗装建築板及びその製造方法

【課題】ブロック状凸部の凸面と傾斜面との境界を目立たないようにすることができる塗装建築板を提供する。
【解決手段】周囲に傾斜面1を有するブロック状凸部2を表面に複数設けて形成された建築板3に印刷データ4に基づいてインクジェット印刷して形成された塗装建築板に関する。前記印刷データ4上において前記ブロック状凸部2の凸面5に比べて前記傾斜面1の明度及び輝度が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材等に用いられる塗装建築板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築板3は、例えばブロック状凸部2を表面に複数設けて形成されている。そして、この建築板3の表面に受理層を形成した後、所望の印刷データ4に基づいてインクジェット式塗装機7を用いてインクジェット印刷することによって塗装建築板を製造することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−305820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の塗装建築板にあっては、必ずしも印刷データ4と外観とが一致するようには塗装されていない。すなわち、印刷データ4上は図4(a)のようにブロック状凸部2の凸面5及び傾斜面1の明るさが同等であっても、実際に得られた塗装建築板を正面から見ると、図4(b)のように凸面5に比べて傾斜面1の方が明るくなり(図4(b)では傾斜面1を白抜きで表している)、凸面5と傾斜面1との境界が目立ってしまって、デザイン上、不自然になるという問題がある。これは、図5に示すように、インク滴の噴射方向(矢印)に対して垂直な凸面5についてはドット密度が高くなるので、受理層(図示省略)を隠蔽することができるが、インク滴の噴射方向に対して垂直ではなく傾斜している傾斜面1についてはドット密度が低くなるので、受理層が透けて明るく見えるのではないかと考えられる。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ブロック状凸部の凸面と傾斜面との境界を目立たないようにすることができる塗装建築板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る塗装建築板は、周囲に傾斜面を有するブロック状凸部を表面に複数設けて形成された建築板に印刷データに基づいてインクジェット印刷して形成された塗装建築板であって、前記印刷データ上において前記ブロック状凸部の凸面に比べて前記傾斜面の明度及び輝度が小さいことを特徴とするものである。
【0007】
前記塗装建築板において、前記傾斜面の傾斜角度が小さくなるにつれて前記印刷データ上の前記凸面と前記傾斜面との明度差及び輝度比が小さくなっていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る塗装建築板の製造方法は、周囲に傾斜面を有するブロック状凸部を表面に複数設けて形成された建築板に印刷データに基づいてインクジェット印刷することによって塗装建築板を製造する方法であって、前記印刷データ上において前記ブロック状凸部の凸面に比べて前記傾斜面の明度及び輝度を小さくすることを特徴とするものである。
【0009】
前記塗装建築板の製造方法において、前記傾斜面の傾斜角度が小さくなるにつれて前記印刷データ上の前記凸面と前記傾斜面との明度差及び輝度比を小さくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブロック状凸部の凸面及び傾斜面の明度及び輝度がほぼ同等となることによって、ブロック状凸部の凸面と傾斜面との境界を目立たないようにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は建築板の正面の印刷データ、(b)は実際に得られた塗装建築板の正面図である。
【図2】塗装時における建築板の一部の概略断面図である。
【図3】インクジェット式塗装機の概略構成を示す正面図である。
【図4】従来例を示すものであり、(a)は建築板の正面の印刷データ、(b)は実際に得られた塗装建築板の正面図である。
【図5】塗装時における建築板の一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明において建築板3としては、図1のようにブロック状凸部2を表面に複数設けて形成されたものを用いることができる。このような建築板3は、例えばセメント系板などの窯業系板で形成されている。そして各ブロック状凸部2は、凸面5及びこの凸面5の周囲に下り傾斜する傾斜面1を有している。図1に示すブロック状凸部2は矩形状であるがこれに限定されるものではない。また、複数のブロック状凸部2は、目地6を介して縦横に配置されているが、図1のように千鳥状に配置されていてもよいし、格子状に配置されていてもよい。
【0014】
そして塗装建築板を製造するにあたっては、上記のような建築板3の表面に適宜にプライマー処理を施し、受理層を形成した後、インクジェット式塗装機7を用いてインクジェット印刷する。なお、プライマー処理や受理層の形成は従来と同様に行うことができる。
【0015】
ここで、インクジェット印刷するためのインクジェット式塗装機7としては、例えば、図3に示すようなものを用いることができる。このインクジェット式塗装機7は、噴射ノズル8を設けた塗装ノズルヘッド9、塗装ノズルヘッド9の噴射ノズル8に水性インクを供給する塗料供給タンク10、塗装ノズルヘッド9の噴射ノズル8からの水性インクの噴射を制御する塗装制御システム11などを設けて形成されている。
【0016】
塗装ノズルヘッド9は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の水性インクを噴出する4種類の塗装ノズルヘッド9y,9c,9m,9kで形成され、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗料供給タンク10も同様に4種類のものからなるものであり、イエローの水性インクを供給する塗料供給タンク10yは塗装ノズルヘッド9yに、シアンの水性インクを供給する塗料供給タンク10cは塗装ノズルヘッド9cに、マゼンタの水性インクを供給する塗料供給タンク10mは塗装ノズルヘッド9mに、ブラックの水性インクを供給する塗料供給タンク10kは塗装ノズルヘッド9kに、それぞれ接続してある。また、各塗装ノズルヘッド9は建築板3の搬送方向に沿って配列してある。
【0017】
塗装制御システム11は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、印刷データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。
【0018】
印刷データ作成部は、原画をスキャン等して得た色柄パターンのデータを入力して保存し、このデータを加工して図1(a)のような印刷データ4を作成して保存するものである。所望の色柄パターンのデータをそのまま用いると、実際に得られた塗装建築板を正面から見た場合に、各ブロック状凸部2において凸面5に比べて傾斜面1の方が明るくなり(図4(b)参照)、凸面5と傾斜面1との境界が目立ってしまう。そこで本発明においては、所望の色柄パターンのデータをそのまま用いるのではなく、ブロック状凸部2の凸面5に比べて傾斜面1の明度及び輝度が小さくなるように上記のデータを加工して図1(a)のような印刷データ4を作成し、この印刷データ4を用いるようにしている。具体的には、凸面5と傾斜面1の明度差が125未満(下限は0)、凸面5と傾斜面1の輝度比が4.5未満(下限は0)のいずれか一方の条件を満たすように印刷データ4を作成することが好ましい。ここで、明度差は、凸面5及び傾斜面1のそれぞれの色のRGB値を0〜255の10進数で表した後(それぞれR,G,Bとする)、それぞれの明るさを計算式((R×299)+(G×587)+(B×114))/1000で算出し、この両者の差により求めることができる。また、輝度比は、まず凸面5及び傾斜面1のR,G,Bをガンマ補正してR’,G’,B’を求め、次に計算式R’×0.2126+G’×0.7152+B’×0.0722で輝度L1,L2(L1は輝度の大きい傾斜面1の値、L2は輝度の小さい凸面5の値)を算出した後、計算式(L1+0.05)/(L2+0.05)により求めることができる。なお、ブロック状凸部2の傾斜面1と目地6との境界は目立っていても目立っていなくてもよい。
【0019】
塗装制御部は、塗装を行う建築板3に応じた印刷データ4を印刷データ作成部から取り出し、この印刷データ4に基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。
【0020】
噴射ノズル制御部は、塗装ノズルヘッド9の各噴射ノズル8に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル8を制御するものである。各噴射ノズル8は例えばピエゾ制御方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル8を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各水性インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができるものである。
【0021】
また、インクジェット式塗装機7の下側には建築板3を搬送するための搬送コンベア12が配置されており、この搬送コンベア12は例えばベルトコンベア等で形成することができる。
【0022】
そして、建築板3を搬送コンベア12上に導入し、インクジェット式塗装機7の塗装ノズルヘッド9の下を順に通過させ、上記の印刷データ4に基づいて、塗装ノズルヘッド9の噴射ノズル8から水性インクを噴射させてインクジェット印刷することによって、図1(b)のような塗装建築板を製造することができる。このようにして得られた塗装建築板にあっては、各ブロック状凸部2について凸面5に比べて傾斜面1のドット密度は低いが、印刷データ4上においては凸面5に比べて傾斜面1の明度及び輝度が小さいので、実際には凸面5及び傾斜面1の明度及び輝度がほぼ同等となることによって、凸面5と傾斜面1との境界を目立たないようにすることができるものである。つまり、実際に得られた塗装建築板を正面から見た場合の外観は、印刷データ4に加工する前の色柄パターンのデータとほぼ一致するようになる。
【0023】
ところで、インクジェット印刷する場合、ブロック状凸部2の傾斜面1はその傾斜角度θの大小によってドット密度が異なる。すなわち、図2において傾斜角度θをθ1<θ2<θ3とすると、傾斜角度θがθ1のとき、傾斜面1は凸面5に近くなるので傾斜面1のドット密度は最も高くなり、傾斜角度θがθ3のとき、傾斜面1のドット密度は最も低くなる。そのため、建築板3ごとにブロック状凸部2の傾斜面1の傾斜角度θが異なっていたり、あるいは同一の建築板3において各ブロック状凸部2の傾斜面1の傾斜角度θが異なっていたりする場合には、印刷データ4上において凸面5に比べて傾斜面1の明度及び輝度を小さくする程度を一定にしてしまうと、凸面5と傾斜面1との境界が目立つブロック状凸部2が生じるおそれがある。そこで、上記のような場合には、傾斜面1の傾斜角度θが小さくなるにつれて印刷データ4上の凸面5と傾斜面1との明度差及び輝度比を小さくしておけばよい。具体例を挙げると図2において、傾斜角度θがθ1のとき、傾斜面1のドット密度は最も高いので、印刷データ4上では凸面5と傾斜面1との明度差及び輝度比は最も小さくし、傾斜角度θがθ3のとき、傾斜面1のドット密度は最も低いので、印刷データ4上では凸面5と傾斜面1との明度差及び輝度比は最も大きくすればよい。このようにすれば、各ブロック状凸部2の傾斜面1の傾斜角度θが異なっていても、各ブロック状凸部2の凸面5と傾斜面1との境界を目立たないようにすることができるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 傾斜面
2 ブロック状凸部
3 建築板
4 印刷データ
5 凸面
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に傾斜面を有するブロック状凸部を表面に複数設けて形成された建築板に印刷データに基づいてインクジェット印刷して形成された塗装建築板であって、前記印刷データ上において前記ブロック状凸部の凸面に比べて前記傾斜面の明度及び輝度が小さいことを特徴とする塗装建築板。
【請求項2】
前記傾斜面の傾斜角度が小さくなるにつれて前記印刷データ上の前記凸面と前記傾斜面との明度差及び輝度比が小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の塗装建築板。
【請求項3】
周囲に傾斜面を有するブロック状凸部を表面に複数設けて形成された建築板に印刷データに基づいてインクジェット印刷することによって塗装建築板を製造する方法であって、前記印刷データ上において前記ブロック状凸部の凸面に比べて前記傾斜面の明度及び輝度を小さくすることを特徴とする塗装建築板の製造方法。
【請求項4】
前記傾斜面の傾斜角度が小さくなるにつれて前記印刷データ上の前記凸面と前記傾斜面との明度差及び輝度比を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の塗装建築板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−107471(P2012−107471A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258744(P2010−258744)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】