説明

塗装方法

【課題】建築物内外装の壁面化粧仕上げにおいて、自然調の美観性を保ちつつ凹凸模様が形成された仕上塗材表面を簡便に付与することができる塗装方法を提供する。
【解決手段】特定の平均粒子径を有する粉粒体を含有する下塗材の上に、特定粒子径の自然石、着色骨材、植物性粉体から選ばれる1種以上の粉粒体を含有する仕上塗材を配り塗りし、該仕上塗材が完全に硬化する前に、パターンローラーで該仕上塗材表面にパターンを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンローラーを用いて、壁面に凹凸模様を付与する塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物内外装の壁面化粧仕上げにおいて、壁面に塗料を塗装した後、塗膜表面が完全に硬化する前に、塗膜に凹凸パターンを付与して塗膜表面に凹凸模様を形成する壁面化粧仕上げが知られている。
このような方法としては、外周面に凹凸を有する円筒状のパターンローラーを用いる方法が一般的に採用されている(例えば、特許文献1等)。
パターンローラーは、外周面の凹凸パターンを塗膜の上に押し当てながらローラー部を回転させることにより、塗膜表面に凹凸パターンを転写して塗膜表面に凹凸模様を形成することができる。
【0003】
一方、建築物内外装の壁面化粧仕上げにおいては、近年、自然石のもつ質感、着色骨材のもつ色彩、植物性粉体のもつやわらかさ等を有する自然調の仕上塗材が注目されており、自然石、着色骨材、植物性粉体等の自然調の美観性をかもし出す粉粒体を含有した仕上塗材を用いて、壁面化粧仕上げが施されている。
【0004】
【特許文献1】実公平4−6854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、このような自然調の仕上塗材に対しても、凹凸模様を有する壁面化粧仕上げが要望されている。
ところが、自然石、着色骨材、植物性粉体等の粉粒体を含有した仕上塗材に対し、パターンローラーを用いて凹凸模様を付与する場合、粉粒体のローラー離れが悪い場合があり、パターンローラーを転写する際に、粉粒体がローラーに引きずられ、かえって壁面の美観性を損ねてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、鋭意検討をした結果、特定の平均粒子径を有する粉粒体を含有する下塗材の上に、特定粒子径の自然石、着色骨材、植物性粉体から選ばれる1種以上の粉粒体を含有する仕上塗材を配り塗りし、該仕上塗材が完全に硬化する前に、パターンローラーで該仕上塗材表面にパターンを付与することにより、自然調の美観性を保ちつつ凹凸模様が形成された仕上塗材表面を簡便に付与できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
〔1〕基材上に、
1.合成樹脂エマルション(A−1)、平均粒子径0.1〜1.0mmである粉粒体(A−2)を含み、粉粒体含有量が5〜80重量%である下塗材を塗付し、
2.合成樹脂エマルション(B−1)、平均粒子径5μm〜3.0mmの自然石、着色骨材、植物性粉体から選ばれる1種以上の粉粒体(B−2)を含み、合成樹脂エマルション(B−1)の固形分100重量部に対して粉粒体(B−2)が100〜1000重量部配合された仕上塗材を配り塗りし、
3.該仕上塗材が完全に硬化する前に、パターンローラーで該仕上塗材表面にパターンを付与する、ことを特徴とする塗装方法。
〔2〕粉粒体(B−2)が、植物性粉体を含むことを特徴とする〔1〕に記載の塗装方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗装方法によれば、建築物内外装の壁面化粧仕上げにおいて、自然調の美観性を保ちつつ凹凸模様が形成された仕上塗材表面を簡便に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明の塗装方法は、基材上に、
1.合成樹脂エマルション(A−1)、平均粒子径0.1〜1.0mmである粉粒体(A−2)を含み、粉粒体含有量が5〜80重量%である下塗材を塗付し、
2.合成樹脂エマルション(B−1)、平均粒子径5μm〜3.0mmの自然石、着色骨材、植物性粉体から選ばれる1種以上の粉粒体(B−2)を含み、合成樹脂エマルション(B−1)の固形分100重量部に対して粉粒体(B−2)が100〜1000重量部配合された仕上塗材を配り塗りし、
3.該仕上塗材が完全に硬化する前に、パターンローラーで該仕上塗材表面にパターンを付与することを特徴とする。
【0011】
本発明の塗装方法は、主として建築物内外装や土木構造物等の表面に適用するものであり、適用できる基材としては、一般的に建材として用いられているものであれば特に限定されず、例示するならば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、金属等の各種基材が挙げられる。また、基材は、下地調整材やシーラー、プライマー、サーフェーサーなどを用いて素地調整を行ったものでもよい。さらに、塗装面の塗り替えにも適用でき、旧塗膜やクロス等が存在する基材にも適用できる。
【0012】
本発明の塗装方法では、第1工程として下塗材を塗付する。
下塗材としては、合成樹脂エマルション(A−1)、平均粒子径0.1〜1.0mmである粉粒体(A−2)を含み、粉粒体含有量を5〜80重量%含有するものを使用する。
このような下塗材を基材の上に塗装した場合、塗装面に微細な凹凸を有する塗膜を形成することができ、後述する第2工程、第3工程において、この塗装面の微細な凹凸が重要となる。すなわち、第2工程での仕上塗材塗付時には、該凹凸により仕上塗材が塗膜表面を滑りにくくなり、塗装作業性が向上し、簡便に均一な塗膜を得ることができる。さらに第3工程でのパターン付与時には、パターンローラーによって粉粒体(B−2)が引きずられにくく、また粉粒体(B−2)のローラー離れが良好となり、塗装作業性に優れ、優れた仕上がり感を得ることができる。
【0013】
粉粒体(A−2)の平均粒子径が0.1mmより小さくなるか又は塗料中の粉粒体(A−2)の含有量が5重量%より小さくなると、下塗材の塗装面の微細な凹凸が少なくなり、塗装作業性や仕上がり感に劣る傾向がある。
また、平均粒子径が1.0mmより大きくなるか又は塗料中の粉粒体(A−2)の含有量が80重量%を越えると、粉粒体(B−2)等は滑りにくくなるがローラーが引っかかりやすくなり、やはり塗装作業性が悪くなるという傾向にある。また、優れた仕上がり感が得られにくく、好ましくない。その他、粉粒体(A−2)の含有量が80重量%を越えると、下塗材自体を塗付する際の塗装作業性が極端に悪くなり好ましくない。
【0014】
合成樹脂エマルション(A−1)としては、重合性不飽和二重結合を有するモノマーをエマルション重合して得られるもの、または、予め合成した樹脂を、水系分散媒に分散剤を使用して分散したものの何れでもよく、さらに粉末型のエマルションでもよい。ただし、粉末型の場合は使用時に水の添加が必要となる。
【0015】
例えば、アクリル樹脂エマルション、酢酸ビニル樹脂エマルション、塩化ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、シリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、内部架橋形や反応硬化形のアクリル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション等の合成樹脂エマルションを用いることもできる。
【0016】
このような合成樹脂エマルションは、重合性モノマーを乳化重合する等の方法により得ることができる。
重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルキレンオキサイド鎖含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アンモニウム基含有モノマー、ホスホニウム基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、オキサゾリン基含有モノマー、アセトアセトキシル基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、シクロアルキル基含有モノマー、t−アルキル基含有モノマー、ピペリジル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニリデン系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有モノマー、ケイ素含有モノマー、シアノアクリレート系モノマー、ベンゾトリアゾール系モノマー等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
【0017】
さらに、上記重合性モノマーとともに、必要に応じ各種添加剤を用いて、通常知られる乳化重合法等により合成樹脂エマルションを製造することができる。
添加剤としては、水、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等が挙げられ、各種重合法、目的に応じ、必要量添加すればよい。
【0018】
粉粒体(A−2)としては、例えば、珪砂、ガラスビーズ、セラミックスの粉砕物、自然石の粉砕物、樹脂ビーズ、樹脂粉末、有機・無機発泡粒子、珪藻土等が挙げられ、平均粒子径0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.8mm)であれば限定されるものではない。
【0019】
また、下塗材としては、必要に応じ、顔料、平均粒子径0.1mm未満の粉粒体、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。
【0020】
顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(べんがら)、クロム酸鉛(モルブデートオレンジ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン、シリカ、アルミナ、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンヅイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料が挙げられる。
【0021】
基材の上に下塗材を塗付する方法としては、ローラー塗り、刷毛塗り、吹き付けなど種々の方法で塗装できるが、本発明ではローラーで塗装することが好ましい。
塗付け量としては、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定されず、通常、は約0.2〜0.5kg/m程度にて塗装するのが好ましい。
【0022】
第1工程で塗装された塗膜表面は、微細な凹凸を形成するもので、具体的には、凹凸の高低差が0.05〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.8mm)程度であることが好ましい。このような微細な凹凸は、主に粉粒体(A−2)によるものであるが、ローラー塗り、刷毛塗り、吹き付けなどの塗装によるものでもよい。
【0023】
第2工程として、下塗材塗膜の上に、仕上塗材を配り塗りする。
配り塗りで用いる塗装器具としては、特に限定されないが、コテ、配り塗りローラー、スプレー等を用いることができ、仕上塗材を均一に塗り広げることができる。本発明では、特に、コテを用いて仕上塗材を配り塗りすることが好ましい。
コテとしては、目的とする意匠性に合わせて、公知のコテを使用すればよい。本発明では、仕上塗材中に植物性粉体を含む場合は、鉄製のコテは使用しないほうがよく、ステンレス製、スチール製、木製、プラスチック製、ゴム製のコテが好適に用いられる。
【0024】
仕上塗材としては、合成樹脂エマルション(B−1)、平均粒子径5μm〜1.0mmの自然石、着色骨材、植物性粉体から選ばれる1種以上の粉粒体(B−2)を含み、合成樹脂エマルション(B−1)の固形分100重量部に対して粉粒体(B−2)が50〜1000重量部配合されたものである。
【0025】
粉粒体(B−2)としては、平均粒子径5μm〜1.0mmの自然石、着色骨材、植物性粉体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。(B−2)成分の形状としては、例えば、球状、繊維状、板状、棒状、リン片状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
自然石としては、重晶石や石灰石、カオリナイト、滑石、珪灰石等の粉砕物の他、珪藻土、石英粉等が挙げられる。
着色骨材としては、有色のものであれば特に限定されるものではないが、珪砂、砕石、ガラスビーズ等の粒状物の表面に、耐熱性の高い顔料を添加した珪酸ソーダ系のバインダーを高温で焼き付ける方法、アミノアルキッド樹脂塗料等による焼付コーティングを施したもの、着色ラッカーにより焼付工程を省略したもの、また、耐候性を考慮した場合には、アルコキシシリル基を官能基として含み、主鎖がアクリルであるシロキサン架橋型反応性オリゴマーと、顔料、硬化剤からなる着色材によって着色コーティングしたもの、また、顔料と共に焼成したセラミックスの粉砕物、陶磁器タイルの粉砕物等適宜使用可能である。
植物性粉体としては、例えば、マツ、スギ、ヒノキ、モミ、ケヤキ、ナラ、ラワン、ヒバ、キリ、ブナ、カシ、コルクガシ等の木本類、アシ、ラン、イグサ、イネ、ムギ、ケナフ、フキ、コウゾ等の草本類等、またはこれらの樹皮、幹、枝、葉、根、果物の皮や種子、海草、鋸屑、籾殻等を原料とするものが挙げられる。このような植物性粉体のうち、無着色の植物性粉体、または、漂白された植物性粉体は、特に、自然調の風合いをかもし出すことができるため、好ましい。
【0027】
このような粉粒体(B−2)は、平均粒子径が5μm〜3.0mm(好ましくは50μm〜1.0mm)であり、塗材中の合成樹脂エマルション(B−1)の固形分100重量部に対して50〜1000重量部(100〜800重量部)配合して使用する。
粉粒体(B−2)がこのような配合比率で配合されることにより、自然調の仕上がり感を得ることができ、かつ、仕上塗材を配り塗りする際の塗装作業性(コテ塗り作業性等)が優れるものとなる。
粉粒体(B−2)の平均粒子径が、5μmより小さい場合は自然調の風合いが得られず、3.0mmより大きい場合は塗装作業性が悪くなるので好ましくない。また、配合量が100重量部より小さくになるとやはり自然調の風合いが得られず、配合量が1000重量部を越えると塗装作業性が極端に悪くなるので好ましくない。
【0028】
合成樹脂エマルション(B−1)としては、上述した合成樹脂エマルション(A−1)で記載した合成樹脂エマルションのなかから適宜選定し、使用することができる。
【0029】
粉粒体(B−2)として植物性粉体を使用する場合は、合成樹脂エマルション(B−1)として、カチオン性合成樹脂エマルションを使用することが好ましい。
植物性粉体には通常、多種多様な成分、例えば、各種糖類の他、タンニン、セサミン、パウロニン、ピノレジノール、ロイコアントシアニン、アクテオシド等の成分が含まれている。このような成分は塗材貯蔵中にアクとして溶出し、塗材の色相に悪影響を及ぼすおそれがあるが、カチオン性合成樹脂エマルションを使用することにより、塗材貯蔵中における植物性粉体からのアク発生を防止し、さらに、植物性粉体が有する種々の性質、例えば触感、吸放湿性、柔軟性、吸音性等が阻害されるのを防止することができる。さらにカチオン性合成樹脂エマルションは、pHが7以下、さらには1〜6、さらには2〜4であるものを使用することが好ましく、よりいっそう、塗材貯蔵中における植物性粉体からのアク発生を防止することができる。
カチオン性合成樹脂エマルションとしては、例えば、アミノ基含有モノマー、アンモニウム基含有モノマー、ホスホニウム基含有モノマー等もカチオン性官能基含有モノマーを重合することにより得ることができる。このほか、チオン性官能基含有する乳化剤や開始剤、分散剤等を添加してカチオン性合成樹脂エマルションを得ることもできる。
【0030】
また、合成樹脂エマルション(B−1)としては、紫外線吸収性を高めるために、重合性モノマーとして、シアノアクリレート系モノマー、ベンゾトリアゾール系モノマー、ピペリジル基含有モノマー等を含有し、エマルション重合して得られたものを用いることもできる。
【0031】
本発明の仕上塗材には、合成樹脂エマルション(B−1)と粉粒体(B−2)の他に、一般的に塗料に使用されている各種塗料用添加剤を混合することが可能である。これらは、本発明の下塗材で使用できるものと同様のものが使用可能である。また、自然石調の仕上がり感を阻害しない範囲で、顔料などを加えてもかまわない。
【0032】
このような仕上塗材を配り塗りするタイミングとしては、下塗材が塗膜を形成した後であれば、特に限定されないが、下塗材の塗装後、通常2時間から2週間程度で、塗装すればよい。
塗付け量としては、特に限定されないが、0.8〜5.0kg/mで塗装するのが好ましい。
【0033】
本発明では、さらに、仕上塗材が完全に硬化する前に、パターンローラーを用いて該仕上塗材表面にパターンを付与する。
パターンローラーとしては、外周面に凹凸を有するものであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
外周面の素材としては、公知のものを使用すればよいが、仕上塗材中に植物性粉体を含む場合は、鉄製のものは使用しないほうがよく、ステンレス製、スチール製、木製、プラスチック製、ゴム製の外周面が好適に用いられる。特に、軟質樹脂を含むプラスチック製、ゴム製等の弾力性のある素材を外周面として使用することが好ましい。
【0034】
また、自然調仕上塗材によって得られた塗膜上に、さらに保護塗膜層を設けることことも可能である。特に、耐久性を要求される外装面への施工の場合は、保護塗膜層を設けるのが好ましい。保護塗膜層は、クリヤー塗膜層であれば特に限定されず、その目的により、耐候性の高いものや、耐汚染性に優れるクリヤー塗膜などを施工すればよい。
【実施例】
【0035】
以下に本発明の実施例を示す。
【0036】
<下塗材の作製>
〔下塗材A〕
合成樹脂エマルションA(アクリルスチレン共重合体エマルション、ガラス転移温度15℃、固形分50重量%)を30重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン5重量部、平均粒子径8.0μmの炭酸カルシウム52重量部と、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペースト作製し、さらに平均粒子径0.5mmの寒水石を10重量部加え(寒水石の重量比率:10重量%)十分に混練し、下塗材Aを作製した。
【0037】
〔下塗材B〕
合成樹脂エマルションAを20重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン5重量部、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペーストを作製し、さらに平均粒子径0.5mmの寒水石を72重量部加え(寒水石の重量比率:72重量%)十分に混練し、下塗材Bを作製した。
【0038】
〔下塗材C〕
合成樹脂エマルションAを30重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン5重量部、平均粒子径8.0μmの炭酸カルシウム32重量部と、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペースト作製し、さらに平均粒子径0.5mmの寒水石を30重量部加え(寒水石の重量比率:30重量%)十分に混練し、下塗材Cを作製した。
【0039】
〔下塗材D〕
合成樹脂エマルションAを30重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン5重量部、平均粒子径8.0μmの炭酸カルシウム32重量部と、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペースト作製し、さらに平均粒子径0.8mmの寒水石を30重量部加え(寒水石の重量比率:30重量%)十分に混練し、下塗材Dを作製した。
【0040】
〔下塗材E〕
合成樹脂エマルションAを30重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン5重量部、平均粒子径8.0μmの炭酸カルシウム60重量部と、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペースト作製し、さらに平均粒子径0.5mmの寒水石を2重量部加え(寒水石の重量比率:2重量%)十分に混練し、下塗材Eを作製した。
【0041】
〔下塗材F〕
合成樹脂エマルションAを8重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン4重量部、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペースト作製し、さらに平均粒子径0.5mmの寒水石を85重量部加え(寒水石の重量比率:85重量%)十分に混練し、下塗材Fを作製した。
【0042】
〔下塗材G〕
合成樹脂エマルションAを30重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン5重量部、平均粒子径8.0μmの炭酸カルシウム32重量部と、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペースト作製し、さらに平均粒子径0.08mmの炭酸カルシウムを30重量部加え十分に混練し、下塗材Gを作製した。
【0043】
〔下塗材H〕
合成樹脂エマルションAを30重量部に対して、平均粒子径0.3μmの酸化チタン5重量部、平均粒子径8.0μmの炭酸カルシウム32重量部と、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)3重量部を混合して下塗材用ペースト作製し、さらに平均粒子径2.0mmの寒水石を30重量部加え十分に混練し、下塗材Hを作製した。
【0044】
<自然調塗材の作製>
〔仕上塗材A〕
合成樹脂エマルションB(アクリル酸エステル重合体エマルション、ガラス転移温度5℃、固形分50重量%)を200重量部に対して、水64重量部、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)26重量部を加えて混練し、塗材用ペーストを作製した。さらに平均粒子径0.15mmの着色珪砂(赤)20重量部、平均粒子径0.5mmの着色珪砂(黒)10重量部、平均粒子径0.3mmの着色珪砂(白)320重量部、平均粒子径20μmの炭酸カルシウム350重量部を加え、充分混練して仕上塗材Aを作製した。
【0045】
〔仕上塗材B〕
合成樹脂エマルションBを200重量部に対して、水64重量部、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)26重量部を加えて混練し、塗材用ペーストを作製した。さらに平均粒子径0.15mmの着色珪砂(赤)20重量部、平均粒子径0.5mmの着色珪砂(黒)10重量部、平均粒子径0.3mmの着色珪砂(白)100重量部、平均粒子径20μmの炭酸カルシウム680重量部を加え、充分混練して仕上塗材Bを作製した。
【0046】
〔仕上塗材C〕
合成樹脂エマルションC(カチオン性アクリル樹脂エマルション(ジメチルアミノエチルアクリレート含有)、ガラス転移温度0℃、固形分50重量%、pH3)を200重量部に対して、ヒドロキシエチルセルロース(3重量%水溶液)480重量部、水160重量部、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)5重量部を加えて混練し、塗材用ペーストを作製した。さらに、平均粒子径1mm以下の無漂白コルク粉(赤茶色)30重量部、平均粒子径1mm以下の漂白処理コルク粉(無漂白コルク粉を過酸化水素で漂白処理したもの、淡黄色)120重量部を加え、充分混練して仕上塗材Cを作製した。
【0047】
〔仕上塗材D〕
合成樹脂エマルションCを200重量部に対して、ヒドロキシエチルセルロース(3重量%水溶液)500重量部、水430重量部、塗料用添加剤(増粘剤、消泡剤等)5重量部を加えて混練し、塗材用ペーストを作製した。さらに平均粒子径0.7mmのケナフ粉200重量部を加え、充分混練して仕上塗材Dを作製した。
【0048】
(実施例1)
スレート板に、下塗材Cを、温度23℃、相対湿度50%で、ウールローラーにて塗付け量0.3kg/mで塗付し、2時間養生した。得られた塗膜表面は、0.5mmの凹凸を有していた。
次に、仕上塗材Aをコテ(ステンレス製)にて1.5kg/mで塗付した。この時、仕上塗材Aはスムーズに塗付することができコテ塗り作業性に優れ、得られた塗膜表面は仕上塗材Aに含まれる粉粒体の偏りもなく、優れた美観性を有していた。
次に、仕上塗材A塗付後5分後、パターンローラー(ウッディローラー、エスケー化研株式会社製)にて、パターン付与を行った。この時、粉粒体のローラー離れがよくスムーズにパターン付与することができ、得られた塗膜表面は、凹凸模様が形成された自然調の優れた美観性を有していた。
【0049】
(実施例2)
仕上塗材Aを仕上塗材Bに替えた以外は、実施例1と同様の方法で塗装を行った。
仕上塗材B塗付時には、仕上塗材Bはスムーズに塗付することができコテ塗り作業性に優れ、得られた塗膜表面は仕上塗材Bに含まれる粉粒体の偏りもなく、優れた美観性を有していた。
また、パターン付与時には、粉粒体のローラー離れがよくスムーズにパターン付与することができ、得られた塗膜表面は、凹凸模様が形成された自然調の優れた美観性を有していた。
【0050】
(実施例3)
スレート板に、下塗材Aを、温度23℃、相対湿度50%で、ウールローラーにて塗付け量0.3kg/mで塗付し、2時間養生した。得られた塗膜表面は、0.5mmの凹凸を有していた。
次に、仕上塗材Cをコテ(ステンレス製)にて2.0kg/mで塗付した。この時、仕上塗材Cはスムーズに塗付することができコテ塗り作業性に優れ、得られた塗膜表面は仕上塗材Cに含まれる粉粒体の偏りもなく、優れた美観性を有していた。
次に、仕上塗材C塗付後5分後、パターンローラー(ウッディローラー、エスケー化研株式会社製)にて、パターン付与を行った。この時、粉粒体のローラー離れがよくスムーズにパターン付与することができ、得られた塗膜表面は、凹凸模様が形成された自然調の優れた美観性を有していた。
【0051】
(実施例4)
下塗材Aを下塗材Bに替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。(下塗材塗膜表面の凹凸の程度:0.5mm)
仕上塗材C塗付時には、仕上塗材Cはスムーズに塗付することができコテ塗り作業性に優れ、得られた塗膜表面は仕上塗材Cに含まれる粉粒体の偏りもなく、優れた美観性を有していた。
また、パターン付与時には、粉粒体のローラー離れがよくスムーズにパターン付与することができ、得られた塗膜表面は、凹凸模様が形成された自然調の優れた美観性を有していた。
【0052】
(実施例5)
下塗材Aを下塗材Cに替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。(下塗材塗膜表面の凹凸の程度:0.5mm)
仕上塗材C塗付時には、仕上塗材Cはスムーズに塗付することができコテ塗り作業性に優れ、得られた塗膜表面は仕上塗材Cに含まれる粉粒体の偏りもなく、優れた美観性を有していた。
また、パターン付与時には、粉粒体のローラー離れがよくスムーズにパターン付与することができ、得られた塗膜表面は、凹凸模様が形成された自然調の優れた美観性を有していた。
【0053】
(実施例6)
下塗材Aを下塗材Dに替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。(下塗材塗膜表面の凹凸の程度:0.7mm)
仕上塗材C塗付時には、仕上塗材Cはスムーズに塗付することができコテ塗り作業性に優れ、得られた塗膜表面は仕上塗材Cに含まれる粉粒体の偏りもなく、優れた美観性を有していた。
また、パターン付与時には、粉粒体のローラー離れがよくスムーズにパターン付与することができ、得られた塗膜表面は、凹凸模様が形成された自然調の優れた美観性を有していた。
【0054】
(実施例7)
下塗材Aを下塗材Cに、仕上塗材Cを仕上塗材D替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。
仕上塗材D塗付時には、仕上塗材Dはスムーズに塗付することができコテ塗り作業性に優れ、得られた塗膜表面は仕上塗材Dに含まれる粉粒体の偏りもなく、優れた美観性を有していた。
また、パターン付与時には、粉粒体のローラー離れがよくスムーズにパターン付与することができ、得られた塗膜表面は、凹凸模様が形成された自然調の優れた美観性を有していた。
【0055】
(比較例1)
下塗材Aを下塗材Eに替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。(下塗材塗膜表面の凹凸の程度:0.5mm)
仕上塗材C塗付時には、仕上塗材Cが滑ってしまいコテ塗り作業性に劣っていた。
また、パターン付与時には、粉粒体のローラー離れが悪くスムーズにパターン付与することができなかった。
【0056】
(比較例2)
下塗材Aを下塗材Fに替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。(下塗材塗膜表面の凹凸の程度:0.5mm)
仕上塗材C塗付時には、コテが引っかかってしまいコテ塗り作業性に劣っていた。
また、パターン付与時には、ローラーが引っかかってしまいスムーズにパターン付与することができなかった。
【0057】
(比較例3)
下塗材Aを下塗材Gに替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。(下塗材塗膜表面の凹凸の程度:0.1mm以下)
仕上塗材C塗付時には、仕上塗材Cが滑ってしまいコテ塗り作業性に劣っていた。
また、パターン付与時には、粉粒体のローラー離れが悪くスムーズにパターン付与することができなかった。
【0058】
(比較例4)
下塗材Aを下塗材Hに替えた以外は、実施例3と同様の方法で塗装を行った。(下塗材塗膜表面の凹凸の程度:2.0mm)
仕上塗材C塗付時には、コテが引っかかってしまいコテ塗り作業性に劣っていた。
また、パターン付与時には、ローラーが引っかかってしまいスムーズにパターン付与することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、
1.合成樹脂エマルション(A−1)、平均粒子径0.1〜1.0mmである粉粒体(A−2)を含み、粉粒体含有量が5〜80重量%である下塗材を塗付し、
2.合成樹脂エマルション(B−1)、平均粒子径5μm〜3.0mmの自然石、着色骨材、植物性粉体から選ばれる1種以上の粉粒体(B−2)を含み、合成樹脂エマルション(B−1)の固形分100重量部に対して粉粒体(B−2)が100〜1000重量部配合された仕上塗材を配り塗りし、
3.該仕上塗材が完全に硬化する前に、パターンローラーで該仕上塗材表面にパターンを付与する、
ことを特徴とする塗装方法。



【公開番号】特開2008−253913(P2008−253913A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98547(P2007−98547)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】