説明

塗装用マスキング材

【課題】 作業性に優れた、塗料の入り込みのないマスキング材を提供する。
【解決手段】 クッション層を有するマスキング材の被塗装面側に保護層を一体化させる。マスキング材の圧着の際、クッション層に含有される油脂分が染み出しても、保護層により油脂分を吸収させるため、非塗層面に油脂分が付着することなく、圧着痕の拭き取りといった従来要していた作業をなくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装作業において、被塗装物の非塗装面を塗料から保護するために使用するマスキング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両のフロント部に設けられるラジエータグリルにおいては樹脂素材上に金属メッキが施され、更に所望の意匠外観を呈するように所定個所にのみ塗装が施される場合がある。この工程を経ることにより、金属光沢を呈するメッキ面と所定色を呈する塗装面とが共存した高外観が付与されたラジエータグリルとすることができる。
【0003】
塗装作業にあたっては、熱可塑性樹脂製のシートやフィルムを真空、プレス成形等、また電鋳ニッケルメッキ等により非塗装面を反転して形成したマスキング材を予め準備しておく。そして、このマスキング材を樹脂素材の非塗装面に取付、被覆した後、スプレーガン等により塗料を塗布して塗装を行い、所望の位置のみに塗装膜を形成する。
【0004】
このようなマスキング材として、特許文献1には高分子製のクッションシートが接着剤により貼着されたマスキング材が開示されている。樹脂素材は成形時、寸法にバラツキが生じやすく、また、成形後に樹脂素材にそりや、歪みが発生する場合があり、塗装工程の際、マスキング材を樹脂素材の非塗装面に被覆しても、マスキング材と樹脂素材との間に隙間が発生してしまう場合がある。この場合、隙間から塗料が侵入し、樹脂素材上の非塗装面にミスト状のわずかな塗膜が形成されてしまうが、特許文献1に記載のマスキング材によれば、マスキング材の圧着の際、弾性を有するクッション材の圧縮反力より樹脂素材との隙間を封じて非塗装面への塗料の侵入を防止することができるとされている。
【特許文献1】特開平9−285750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1のマスキング材をラジエータグリルに圧着させると、非塗装面のメッキ面上に、クッションシートに含有された油脂分により圧着痕が発生してしまうという問題があった。これは、クッションシートを構成する高分子材には可塑剤として油脂分が含有されており、この油脂分が圧着により被塗装面上に染み出し、メッキ面に付着してしまうことによる。また、油脂分の染み出しは塗膜を固化させる際の乾燥による熱によっても起こることがわかっている。よって、高外観が要求されるメッキ面を有する被塗装物においては、塗装後に油脂分の払拭作業が必要となっていた。
【0006】
本発明は、クッション材による非塗装面への塗料の侵入を防ぎつつも、非塗装面に圧着痕を残すことがない、作業性に優れたマスキング材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明では、非塗装面を有する基材の表面に塗膜を形成する際、非塗装面に圧着して塗料が侵入することを防止するためのクッション層を有するマスキング材において、前記マスキング材は前記基材の非塗装面に対向する側に保護層を有することを特徴とする。
【0008】
このマスキング材によると、クッション層の弾性力により非塗装面とマスキング材との間に形成された隙間を密封して、非塗装面に塗料が侵入するのを効果的に防止できると共に、クッション層に含まれた油脂分による圧着痕の発生を防ぐことができる。つまり、マスキング材を圧着させた際、クッション層が圧縮されて含有されている油脂分が染み出し、圧着痕が形成されることが考えられるが、本発明によると、非塗装面との間に介在された保護層の存在により油脂分が非塗装面まで透過するのが阻止され、または保護層が油脂分を吸収し、非塗装面上までに到達することが無く、よって圧着による痕跡が発生しない。そのため、従来要していた油脂分の拭き取りといった後作業を不要とすることができる。
また、請求項2に記載の発明では前記非塗装面は金属面からなることを特徴とする。
この発明によると、反射性の高い光沢面を有する金属面に対してより高い効果を得ることができる。つまり、油脂分による金属光沢面の曇りがなくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、作業性に優れたマスク効果の高いマスキング材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のマスキング材について図に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明に係るマスキング材の構成を示す断面図である。また、図2は図1のマスキング材を被塗装物であるメッキが施されたラジエータグリルに取付けた状態をあらわしている。
【0012】
図1に示すように、マスキング材1は表面側から電鋳ニッケルメッキにより非塗装面を反転して形成した電鋳マスク10、クッション層としての発泡シート11、保護層としての保護シート12が順に積層されたものである。発泡シート11はウレタン材からなり、公知の押出し成形により形成されたものを電鋳マスク10に両面テープにて貼付一体化したものであって、従来用いられているマスキング材と同様のものである。また、保護シート12は紙製のコピー用紙であり、発泡シート11の電鋳マスク10とは反対側の面、つまり後述する基材2の非塗装面2bと対向する側に図示しない両面テープで貼着して設けられている。こうして従来用いられているマスキング材に保護シート12を貼付することにより本発明のマスキング材を得ることができる。
【0013】
このマスキング材1を図2に示すように、ABS素材21の表面に電気メッキ20が施されて表面がクロムメッキにより光沢の鏡面となっている被塗装物である基材2の非塗装面2bに圧着、貼付する。マスキング材1により被覆されていない基材2の表面は塗装面2aとして露出している。
【0014】
このとき、基材2の非塗装面2bとマスキング材1との間には、基材2の形成時またはメッキ20の形成時に発生した寸法バラツキにより、微小な隙間が発生している。しかし、マスキング材1の圧着によりウレタン発泡シート11が圧縮され、非塗装面2bからの反力により隙間が埋められている。また、非塗装面2bの表面は保護シート12が被覆しているため、発泡シートに含有された可塑剤の油脂分が圧着により染み出しても、保護シート12に吸着され、非塗装面2bまで到達することがない。
【0015】
その後、図3に示すようにスプレーガン4により塗料をマスキング材2が貼着された非塗装面2bも含めて基材2の上方から吹き付け塗装する。これにより塗装面2aはメッキ面が被覆されて、所定色の塗膜3が形成される。
【0016】
塗膜の固化後、図4に示すように非塗装面2bを覆うマスキング材1を除去してメッキ面が施された非塗装面2bを表出させる。表出した非塗装面2bは塗料の侵入によるミスト状の塗膜が形成されることも、マスキング材の圧着痕が形成されることもなく、美しい鏡面光沢を有したままである。
【0017】
よって、従来要していたメッキ面の表面に形成されてしまった圧着痕の拭き取りという後作業を要することなく、高外観を有するラジエータグリルを得ることができる。
【0018】
つまり、本発明のマスキング材によると外観に優れた部分塗装が施された被塗装物を作業効率良く得ることができる。
【0019】
また、従来使用しているマスキング材1に両面テープにより保護層12を貼り付けるのみで本発明のマスキング材を得ることができるため、安価なマスキング材として使用することができる。
【0020】
実施例では保護層12にコピー用紙を用いたが、本発明の保護層12はこれに限られるものでなく、発泡シート11に含まれる油脂分等、メッキ面の外観に悪影響を及ぼす物質の吸着が可能なものであれば、例えばPE、アクリルなどの薄い樹脂製シート等、いずれも採用することができる。また、発泡シート11はウレタン材のもの以外にEPDM、NBR等のゴム、又はPP、PE等のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のマスキング材の構成を示す断面図である。
【図2】本発明のマスキング材を被塗装物に貼付した状態を示す断面図である。
【図3】本発明のマスキング材を用いて塗膜を形成している工程の説明図である。
【図4】本発明のマスキング材を除去し、所望の被塗装物を得る工程を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1…マスキング材、10…電鋳マスク、11…発泡シート、12…保護シート、2…基材、20…メッキ層、21…ABS素材、2a…塗装面、2b…非塗装面、3・・・塗膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非塗装面を有する基材の表面に塗膜を形成する際、非塗装面に圧着して塗料が侵入することを防止するための樹脂或いはゴム製のクッション層を有するマスキング材において、前記クッション層は油脂分が含有されており、前記クッション層の前記基材の非塗装面に対向する側には前記油脂分を吸着する保護層を有することを特徴とする塗装用マスキング材。
【請求項2】
前記非塗装面は光沢金属面からなることを特徴とする請求項1に記載のマスキング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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