説明

塗装用マスキング材

【課題】本発明の課題は、マスキング材によって孔部または凹部とその周囲を確実に塗装から保護することにある。
【解決手段】該マスキング材1を一個または複数個の挿着部2と、フランジ3とによって構成し、該挿着部2を該孔部Hまたは凹部に挿着し、該フランジ部3で該孔部Hまたは凹部の周囲Sを被覆するが、該フランジ3の裏面には高さ0.1mm〜1.0mmの凸部4を複数個形成して該フランジ3と該孔部Hまたは凹部の周囲Sとの間に隙間dを設け、該隙間dに塗料Pが侵入しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装の際に孔部または凹部とその周囲とを該塗装から保護するために使用される塗装用マスキング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗装用マスキング材としては、図5に示すように孔部に挿着される挿着部12と、該孔部の周囲を被覆するフランジ部13とからなる構成のマスキング材11が提供されている。
【0003】
上記マスキング材11は、図6に示すように塗装対象物Aの孔部Hに挿着部12を挿着することによって該孔部Hに取付けられ、この状態で該マスキング材11のフランジ部13は該孔部Hの周囲を被覆する。
この状態で塗装対象物Aの表面に、例えばスプレー塗装等によって塗装を施す(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2863171号
【特許文献2】特許第3675495号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のマスキング材11にあっては、該マスキング材11のフランジ部13が孔部Hの周囲と略密着するため、塗装の際、塗料Pが該マスキング材11のフランジ部13と該孔部Hの周囲との間に毛細管現象によって侵入してしまい、孔部Hの周囲を塗装から完全に保護することが出来ず、塗装部分と非塗装部分との境界も明確にならず、外観が悪化してしまうと云う問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決するための手段として、孔部Hまたは凹部とその周囲Sとを塗装から保護するために使用されるマスキング材1であって、該マスキング材1は、一個または複数個の孔部Hまたは凹部に挿着される一個または複数個の挿着部2と、該挿着部2の端部から延設されて該孔部Hまたは該凹部の周囲Sを被覆するフランジ部3とからなり、該フランジ部3の裏側で該孔部Hまたは該凹部の周囲Sに相対する面には複数個の凸部4が形成されており、該凸部4の高さが0.1mm〜1.0mmである塗装用マスキング材1を提供するものである。
該マスキング材1は熱可塑性シートを真空および/または圧空成形することによって製造されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
〔作用〕
本発明の塗装用マスキング材1は、挿着部2を孔部Hまたは凹部に挿着することによって該孔部Hまたは凹部に取付けられ、この状態で該孔部Hまたは該凹部の周囲Sは該マスキング材1のフランジ部3によって被覆される。該フランジ部3の裏側の該孔部Hまたは該凹部の周囲Sに相対する面(フランジ部3の裏面)には複数個の凸部4が形成されているので、該凸部4のスペーサー作用によって該フランジ部3と該孔部Hまたは該凹部の周囲Sとの間には若干の隙間dが形成される。該隙間d、即ち該フランジ部3の凸部4の高さは0.1mm〜1.0mmに設定されているから、塗装対象物Bに塗装を施す際には、該マスキング材1のフランジ3と該孔部Hとの隙間dに塗料が侵入しない。
該フランジ部3の凸部4の高さが0.1mm未満の場合には、毛細管現象によって塗料Pが該隙間dに侵入し易くなり、一方該凸部4の高さが1.0mmを越えると該隙間dが大きくなって塗料Pが侵入し易くなる。また該フランジ3の先端(挿着部2の端部からのフランジ3の延設方向における先端であり、フランジ3の外周縁)から凸部4までの距離(挿着部2の端部からのフランジ3の延設方向を該フランジ3の幅方向として、該幅方向における距離)は0.2mm以上が望ましい。
【0008】
〔効果〕
したがって、本発明では、塗装されるべきでない孔部または凹部と、該孔部または該凹部の周囲とがマスキング材によって完全に保護され、外観も優れたものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を図1〜図4に示す―実施例によって以下に詳細に説明する。
1はマスキング材であって、例えば塗装対象物である自動車のバンパーBの孔部である空気取入れ口Hおよびその周囲Sを塗装から保護するために用いられるものであり、該バンパーBの空気取入れ口Hは複数個の縦桟hと一個の横桟hとによって複数個の区画孔Hに区画されている(図1参照)。
【0010】
上記マスキング材1には該空気取入れ口Hに挿着される挿着部2と、該空気取入れ口Hの周囲Sを被覆するためのフランジ部3とからなり、該挿着部2の底部からは該空気取入れ口Hの複数個の縦桟hを嵌合するための複数個の縦桟嵌着溝2Aと、該横桟hを嵌合するための一個の横桟嵌着溝2Bとが形成され、該挿着部2は該複数個の縦桟嵌着溝2Aと該一個の横桟嵌着溝2Bとによって複数個の区画挿着部21に区画されている(図1,図2参照)。
上記マスキング材1のフランジ部3の裏面には複数個の凸部4が形成されている。上記凸部4の高さは0.1mm〜1.0mmの範囲に設定される(図2,図3参照)。
【0011】
上記マスキング材1は熱可塑性樹脂シートを真空および/または圧空成形することによって製造される。該真空および/または圧空成形によれば、複雑形状のマスキング材を大量生産することが容易になる。しかし本発明では、該マスキング材1はプレス成形、射出成形、ブロー成形等他の成形によっても製造されてもよい。
【0012】
上記熱可塑性樹脂シートの熱可塑性樹脂材料としては、例えば例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体等やポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトンのようなエンジンアリングプスラチック、またとうもろこしや、サトウキビ等の澱粉から得られるポリ乳酸を原料とした生分解樹脂等が例示される。
【0013】
上記熱可塑性樹脂には、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維、ケイ酸カルシウム、ベンナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材、木綿、麻、竹繊維、ヤシ繊維、羊毛、絹等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維、ビニロン繊維、アセテート繊維等の有機合成繊維、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー等の無機繊維、リンター、リネン、サイザル、木粉、ヤシ粉、クルミ粉、でん粉、小麦粉、木片、木粉、排水処理によって発生した汚泥の焼却灰等の有機充填材等の補強材を添加して形状保持性、寸法安定性、圧縮および引張強度等を向上せしめてもよい。その他顔料や染料、DOP,DBP等の可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、難燃剤、防炎剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、化学発泡剤またはカプセル型発泡剤のような発泡剤等の第三成分が添加されてもよい。これらの成分は一種または二種以上相互に混合して添加させられてもよい。
難燃剤としては、例えば燐系難燃剤、窒素系難燃剤、硫黄系難燃剤、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤、グアニジン系難燃剤、燐酸塩系難燃剤、燐酸エステル系難燃剤、アミノ樹脂系難燃剤等がある。
【0014】
上記熱可塑性樹脂には発泡剤が添加され、発泡性ビーズまたは発泡性ペレットとして提供されるが、上記発泡剤としては例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン、1,1’−アゾビスホルムアミド等の有機発泡剤、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム等の無機発泡剤等がある。
【0015】
上記マスキング材1は該バンパーBの空気取入れ口Hに挿着部2を挿着することによって該空気取入れ口Hに取付けられ、この状態で、該空気取入れ口Hの縦桟hは該マスキング材1の縦桟嵌着溝2Aにそれぞれ嵌着され、横桟hは該マスキング材1の横桟嵌着溝2Bに嵌着され、かくしてマスキング材1の各区画挿着部21は該空気取入れ口Hの区画孔Hにそれぞれ挿着される(図2,図3参照)。そして該マスキング材1のフランジ部3は該空気取入れ口Hの周囲Sを被覆するが、該フランジ部3の裏面には複数個の凸部4が形成されているので、該フランジ3と該空気取入れ口Hの周囲Sとの間には凸部4の高さに対応して隙間dが形成される(図4参照)。
【0016】
該マスキング材1を該空気取入れ口Hに取付けた後、該バンパーBには塗装が施される。該塗装は通常、塗料Pをスプレーすることによって行われるが、この際、該マスキング材1のフランジ部3と該空気取入れ口Hとの間には、図4に示すように該凸部4の高さに相当する隙間dが設けられているので、塗料Pが毛細管現象によって該隙間dに侵入することが防止される。
【0017】
したがって本実施例では空気取入れ口Hとは確実に該マスキング材1によって塗装から保護される。
【0018】
上記実施例以外、本発明のマスキング材1は図5、図6に示される従来のマスキング材のように一個の孔部あるいは凹部の保護に使用されるものであってもよい。また上記実施例ではマスキング材1を孔部である空気取入れ口Hの保護に使用したが、該マスキング材1を凹部の保護に使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のマスキング材は、塗装対象物の孔部あるいは凹部とその周囲が、塗装に対して確実に保護され、塗装部分と被塗装部分との境界が明瞭になり、優れた外観をする塗装が可能になるから、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1〜図4は本発明の実施例を示すものである。
図5および図6は従来例を示すものである。
【図1】マスキング材と空気取入れ口との斜視図。
【図2】マスキング材取付け状態横断面図。
【図3】マスキング材取付け状態縦断面図。
【図4】マスキング材取付け状態フランジ部分拡大説明図。
【図5】マスキング材斜視図。
【図6】マスキング材の取付け状態断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 マスキング材
2 挿着部
3 フランジ部
4 凸部
H 孔部である空気取入れ口
S 孔部または凹部の周囲


【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部または凹部とその周囲とを塗装から保護するために使用されるマスキング材であって、該マスキング材は、一個または複数個の孔部または凹部に挿着される一個または複数個の挿着部と、該挿着部の端部から延設されて該孔部または該凹部の周囲を被覆するフランジ部とからなり、該フランジ部の裏側で該孔部または該凹部の周囲に相対する面には複数個の凸部が形成されており、該凸部の高さが0.1mm〜1.0mmであることを特徴とする塗装用マスキング材。
【請求項2】
該マスキング材は熱可塑性シートを真空および/または圧空成形することによって製造されている請求項1に記載の塗装用マスキング材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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