説明

塗装装置

【課題】 外管バルブのような中空球状体の内面に対して少ない工程で、且つ均一に塗料を塗布することが可能な塗装装置を提供する。
【解決手段】 開口を有する中空球状体1の内面1aに塗料4を塗布する塗装装置を、上記開口を通じてその先端部が中空球状体1内に挿入される棒状の支持部材5と、支持部材5の先端部に支持される塗料噴霧用のノズル部6と、中空球状体1の内面1aに対してノズル部6を回動させる駆動機構32と、を用いて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空球状体の内面に対して塗料を均一に塗布する為の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ランプの外管バルブのような中空球状体の内面に蛍光体等を含む塗料を塗布し、これにより中空球状体の内面に蛍光体等を含む被膜を形成することが知られている。上記の中空球状体内に被膜を形成する為の塗装装置としては、中空球状体の内部に液体状の塗料を流入させ、内面全体に行き渡るように流した後に、外管バルブ内に溜まった余剰分の塗料を排出させるといった方式のものが提案されている(特許文献1参照)。しかし、上記塗装装置にあっては、中空球状体内に流入させた塗料を排出するといった工程が必要になるうえに、塗料を内面全体に均一に塗布することが困難であるという問題がある。
【特許文献1】特開2004−063284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、外管バルブのような中空球状体の内面に対して少ない工程で、且つ均一に塗料を塗布することが可能な塗装装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明を、開口を有する中空球状体の内面に塗料を塗布する塗装装置であって、上記開口を通じてその先端部が中空球状体内に挿入される棒状の支持部材と、支持部材の先端部に支持される塗料噴霧用のノズル部と、中空球状体の内面に対してノズル部を回動させる駆動機構と、を具備したものとする。上記構成の塗装装置にあっては、駆動機構によりノズル部を回動させながら塗料を噴霧させることで、中空球状体の内面全体に塗料を塗布することができ、したがって、中空球状体の内面に対して少ない工程で且つ均一に塗料を塗布することが可能となる。
【0005】
上記駆動機構は、支持部材の中心軸方向と直交する方向に伸びる回転軸を中心としてノズル部を支持部材に対して旋回させる旋回機構と、支持部材と中空球状体とを該支持部材の中心軸を中心として相対的に回転させる回転機構と、から成ることが好適である。上記構成によれば、中空球状体に対してノズル部を回動させる駆動機構を、旋回機構と回転機構とを組み合わせたシンプル且つ効果的な構造で実現することができる。
【0006】
また、上記塗装装置においては、支持部材をその中心軸方向に進退させる進退機構と、ノズル部からの噴霧方向において該ノズル部と中空球状体の内面との距離が一定に保持されるように上記駆動機構及び上記進退機構を連動させる制御部と、を具備することが好適である。このようにすることで、中空球状体が断面楕円状を成すような各種形状のものであってもこれに対応して内面全体に均一に塗料を塗布することが可能となる。
【0007】
また、上記構成の塗装装置においては、支持部材の先端部に、複数のノズル部を夫々の噴霧範囲が相違するように連結させることも好適である。このようにすることで、中空球状体の内面に対して均一に塗料を塗布することが容易となる。
【0008】
また、上記構成の塗装装置にあっては、上記ノズル部が、中空球状体の内面と沿うように湾曲させた側周面に複数の噴霧孔を形成したスリットノズル部であることも好適である。このようにすることで、中空球状体の内面に対して均一に塗料を塗布することが容易となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、外管バルブのような中空球状体の内面に対して少ない工程で、且つ均一に塗料を塗布することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。図1には、本発明の実施形態における一例の塗装装置を示している。本例の塗装装置は、開口を有する中空球状体1の上記開口縁から外方に向けて円筒状の筒体2を延設して成る外管バルブ3の、上記中空球状体1の内面1aに蛍光体を含む塗料4を塗布する為の装置であって、外部から筒体2内及び中空球状体1の開口内を通じて中空球状体1内に挿入される棒状の支持部材5と、支持部材5の挿入方向(図中上方向)の先端部に連結されるノズル部6とを具備している。
【0011】
ノズル部6には、塗料供給部である塗液タンク7と該ノズル部6とを連通するチューブ8と、噴霧エアを該ノズル部6に供給するチューブ9とを接続させており、両チューブ8,9から吐出ポンプ部10を介して送り込まれる塗料4及び噴霧エアがノズル部6にて混合された後に、ノズル部6先端の噴霧口6aから所定範囲の広がりをもって噴霧されるようになっている。図中の符号40は支持部材5に設置したロータリージョイントであり、両チューブ8,9の流路途中に介在するように設けている。
【0012】
ノズル部6は、支持部材5の中心軸A方向(図中上下方向)と直交する方向に伸びる回転軸Bを中心として、支持部材5の先端部に旋回自在に連結されている。ノズル部6には、その中心を回転軸Bが通るように第1旋回用プーリ11を固定しており、支持部材5の基端側に回動自在に設置してある第2旋回用プーリ12との間に、旋回用ベルト13を巻着させるとともに、第2旋回用プーリ12を回転駆動させる旋回用モータ14を、支持部材5近傍に配している。本例にあっては上記各構成によってノズル部6を旋回させる旋回機構15が構成されており、この旋回機構15によって、ノズル部6がその噴霧口6aの向きを回転軸B中心に回動させて該噴霧口6aからの塗料4の噴霧方向を自在に変更するものである。
【0013】
支持部材5の、第2旋回用プーリ12を設けてある箇所よりも基端側の個所には、中心軸A方向に伸びる溝16を外周面に有するスプライン軸部5aを形成している。スプライン軸部5aには、上記溝16と中心軸A方向にスライド自在に係合する凹凸形状(図示せず)を内周面に有する第1自転用プーリ17を嵌合させており、自転用モータ18により回動駆動される第2自転用プーリ19と上記第1自転用プーリ17との間には、自転用ベルト20を巻着させている。上記各構成によって、支持部材5及びノズル部6を該支持部材5の中心軸A中心に自転させる自転機構21が構成されており、この自転機構21によって、ノズル部6は中心軸A中心に自転しながらその噴霧方向を自在に変更するものである。
【0014】
また、支持部材5の、スプライン軸部5aを形成してある箇所よりも基端側の箇所には、外周面に雄ねじ22を切ってある送りねじ軸部5bを形成している。送りねじ軸部5bには、上記雄ねじ22と螺合する雌ねじ(図示せず)を内周面に切ってある第1進退用プーリ23を嵌合させており、進退用モータ24により回動駆動される第2進退用プーリ25と上記第1進退用プーリ23との間には、進退用ベルト26を巻着させている。第1進退用プーリ23は中心軸A方向に移動不能に設置しているので、進退用モータ24により第2進退用プーリ25及び進退用ベルト26を介して第1進退用プーリ23を回転駆動させると、その回転方向及び回転量に応じて、ねじ軸部5b即ち支持軸部5全体が中心軸A方向に進退することとなる。
【0015】
上記各構成によって、支持部材5をその中心軸A方向に進退させる進退機構27が構成されており、この進退機構27によって、ノズル部6はその位置を中心軸A方向に移動させるものである。なお、このとき上記自転機構21のスプライン軸部5aと第1自転用プーリ18とは中心軸A方向に相対位置を変えることとなるが、相対位置の変更に関わらずスプライン軸部5aと第1自転用プーリ18とは動力伝達可能に係合するので、自転用モータ18の回転駆動力は支持部材5にまで問題無く伝達される。
【0016】
図中の符号28は、外管バルブ3を保持する保持具であり、中空球状体1の外面であって開口部分とは逆側の個所に固定されている。保持具28は、回転用モータ29により支持部材5の中心軸A回りに回転駆動されるものであって、該保持部28を介して中空球状体1自体を中心軸A回りに回転駆動することが可能になっている。
【0017】
本例にあっては、上記各構成から成り中空球状体1を回転駆動させる球状体側回転機構30と、この球状体側回転機構30とは逆方向に支持部材5を回転駆動させる上述の自転機構21とが、支持部材5と中空球状体1とを該支持部材5の中心軸Aを中心として相対的に回転させる回転機構31となっているのだが、球状体側回転機構30及び自転機構21の一方のみで、上記回転機構31を構成してあっても構わない。
【0018】
そして、本例にあっては上記のように支持部材5と中空球状体1とを中心軸A中心に相対的に回転させる回転機構31と、中心軸Aと直交する回転軸Bを中心としてノズル部6を支持部材5に対して旋回させる旋回機構15とで、中空球状体1の内面1aに対してノズル部6を全方位に回動させる駆動機構32を構成している。
【0019】
上述した各モータ14,18,24,29は制御部33によりPLC制御されるものであり、中空球状体1の各種形状に応じて、進退用モータ24により駆動される進退機構27を旋回用モータ14により駆動される旋回機構15と連動させ、ノズル部6からの噴霧方向において該ノズル部6と中空球状体1の内面1aとの距離を一定に保持させるように設定している。つまり、例えば中空球状体1が図中上下方向を長径方向とする楕円状断面を有するものであった場合には、中空球状体1の内面1aの上側部分を塗装する際には噴霧口6aが上方を向くようにノズル部6を旋回させるとともに該ノズル部6を支持部材5と一体に上方に移動させ、この上方位置でノズル部6と中空球状体1とを中心軸A中心に相対的に回転させる。内面1aの下側部分を塗装する際には噴霧口6aが下側を向くようにノズル部6を旋回させるとともに該ノズル部6を下方に移動させるものであり、ここでのノズル部6の旋回制御及び進退制御は中空球状体1の形状に応じて適宜設定すればよい。
【0020】
また、旋回用モータ14により駆動される上記旋回機構15と、自転用モータ18及び回転用モータ29により駆動される回転機構31とは、中空球状体1の内面1aに対する塗布速度がノズル部6の向きに関わらず常時一定となるように連動させる。つまり、中空球状体1の内面1aの上側部分や下側部分のように中心軸Aからの距離が短い部分を塗装する場合には、噴霧口6aが上方又は下方を向くようにノズル部6を旋回させるとともに、ノズル部6と中空球状体1とを相対的に小さな回転速度で中心軸A中心に回転駆動させ、逆に、中空球状体1の内面1aの上下方向中央部分のように中心軸Aからの距離が長い部分を塗装する場合には、噴霧口6aが側方を向くようにノズル部6を旋回させるとともに、ノズル部6と中空球状体1とを相対的に大きな回転速度で中心軸A中心に回転駆動させる。これにより、中空球状体1の内面1aに対する塗布速度を一定に保持することができ、ここでの旋回制御及び回転制御は中空球状体1の形状に応じて適宜設定する。
【0021】
具体的には、中空球状体1の内面1a上の塗料4を吹付けられる箇所の、中心軸Aを中心とする周速度が90mm/secとなり、且つ、中空球状体1の内面1a上の吹付箇所がノズル部6の旋回により中心軸A方向に移動する移動速度が5mm/secとなるように、自動調整させる。ここで、上記移動速度は上記周速度の1/14以下であることが望ましい。
【0022】
つまり、制御部33での上記PLC制御によって、中空球状体1の内面1aのいずれの個所においても、ノズル部6からの距離及び塗布速度が一定に保持されることとなり、中空球状体1の形状に関わらずその内面1a全体に塗料4を均一に塗布することが可能となるものである。
【0023】
上記構成を具備して成る本例の塗装装置にあっては、中空球状体1の開口を下方に向けた状態で保持具28により外管バルブ3を固定し、筒体2を通じて上記開口から中空球状体1内に支持部材5を挿入し、この支持部材5の先端部に連結されるノズル部6を中空球状体1の中心部分に位置させる。ここで、自転機構21及び球状体側回転機構30から成る回転機構31によって、ノズル部6及び支持部材5と中空球状体1の内面1aとを中心軸A中心に相対的に回転駆動させるとともに、旋回機構15によって、支持部材5に対してノズル部6を回転軸B中心に旋回させるように制御することで、中空球状体1の内面1a全体に塗料4を塗布することができる。
【0024】
しかもこのとき、制御部33のPLC制御によって、噴霧方向におけるノズル部6と中空球状体1の内面1aとの距離が一定となるように、進退機構27により支持部材5及びノズル部6が中心軸A方向に進退駆動されるとともに、中空球状体1の内面1aへの塗料4の塗布速度が一定となるように、旋回機構15及び回転機構31が駆動されるので、中空球状体1の形状に関わらずその内面1a全体に塗料4が均一に塗布されるものである。
【0025】
次に、本発明の実施形態における他例の塗装装置について、図2に基づいて説明する。なお、本例の基本的構成は上記した一例の構成と同様であることから、一例と一致する構成については同一符号を付して詳細な説明を省略し、一例とは相違する特徴的な構成についてのみ以下に詳述する。
【0026】
本例の塗装装置にあっては、支持部材5の先端部に、中空球状体1の内面1aと沿う円弧状に湾曲した支持片34を固定しており、この支持片34上に複数(図示例では三つ)のノズル部6を夫々の噴霧範囲が相違するように配置している。各ノズル部6の配置は、その噴霧口6aと中空球状体1の内面1aとの距離が同一となり、且つ内面1a上の噴霧範囲が一部重なり合うように設定する。
【0027】
つまり、本例の塗装装置にあっては、一例のような旋回機構15を備える代わりに複数のノズル部6を支持部材5の先端部に放射状に配置させてあるので、一例と同様の自転機構21から成る回転機構31(本例にあってはこれで駆動機構32を構成する)によって支持部材5及び各ノズル部6を中空球状体1に対して中心軸A回りに回転駆動させながら、各ノズル部6から塗料4を噴霧させることで、中空球状体1の内面1a全体に塗料4を均一に塗布することが可能なものである。
【0028】
次に、本発明の実施形態における更に他例の塗装装置について、図3に基づいて説明する。なお、本例の基本的構成は上記した一例の構成と同様であることから、一例と一致する構成については同一符号を付して詳細な説明を省略し、一例とは相違する特徴的な構成についてのみ以下に詳述する。
【0029】
本例の塗装装置にあっては、中空球状体1内に挿入される支持部材5の先端部に、塗料噴霧用のスリットノズル部35を連結させ、該スリットノズル部35が中空球状体1の中央部分に位置するように設けている。スリットノズル部35は、中空球状体1の内面1aに沿うように円弧状に湾曲した側面35aを有し、該側面35aに多数の噴霧口(図示せず)を穿設したものであって、各噴霧口から内面1aまでの距離が同一となり、且つ内面1a上の噴霧範囲が一部重なり合うように設定している。また、本例にあっては、塗料供給部である塗液微細化装置36から送り込まれる塗料4と噴霧エアとが混合された状態でチューブ37からスリットノズル部35にまで送り込まれる構造にしている。図3(a)には円弧状の側面35aを有する半円状のスリットノズル部35を一つ備えた場合を示し、図3(b)には上記スリットノズル部35を互いに逆方向を向くように一対備えた場合を示しているが、上記スリットノズル部35を3以上備えたものであっても構わない。
【0030】
つまり、本例の塗装装置にあっては、一例のようなノズル部6や旋回機構15を備える代わりに、塗料4を放射状に噴霧するように多数の噴霧口を設けてあるスリットノズル部35を支持部材5の先端部に連結させているので、一例と同様の自転機構21から成る回転機構31(本例にあってはこれで駆動機構32を構成する)によって、支持部材5及びスリットノズル部35を中空球状体1に対して中心軸A回りに回転駆動させながら、各噴出口から塗料4を噴霧させることで、中空球状体1の内面1a全体に塗料4を均一に塗布することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態における一例の塗装装置を示す説明図である。
【図2】同上の他例の塗装装置を示す説明図である。
【図3】同上の更に他例の塗装装置を示す説明図であり、(a)はスリットノズル部を一つ備えた場合、(b)はスリットノズル部を一対備えた場合を示している。
【符号の説明】
【0032】
1 中空球状体
1a 内面
3 外管バルブ
4 塗料
5 支持部材
6 ノズル部
15 旋回機構
21 自転機構
27 進退機構
30 球状体側回転機構
31 回転機構
32 駆動機構
33 制御部
35 スリットノズル部
A 中心軸
B 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する中空球状体の内面に塗料を塗布する塗装装置であって、上記開口を通じてその先端部が中空球状体内に挿入される棒状の支持部材と、支持部材の先端部に支持される塗料噴霧用のノズル部と、中空球状体の内面に対してノズル部を回動させる駆動機構と、を具備することを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
上記駆動機構が、支持部材の中心軸方向と直交する方向に伸びる回転軸を中心としてノズル部を支持部材に対して旋回させる旋回機構と、支持部材と中空球状体とを該支持部材の中心軸を中心として相対的に回転させる回転機構と、から成ることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
支持部材をその中心軸方向に進退させる進退機構と、ノズル部からの噴霧方向において該ノズル部と中空球状体の内面との距離が一定に保持されるように上記駆動機構及び上記進退機構を連動させる制御部と、を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装装置。
【請求項4】
支持部材の先端部に、複数のノズル部を夫々の噴霧範囲が相違するように連結させることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項5】
上記ノズル部が、中空球状体の内面と沿うように湾曲させた側周面に複数の噴霧孔を形成したスリットノズル部であることを特徴とする請求項1又は4に記載の塗装装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−297353(P2006−297353A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127175(P2005−127175)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】