説明

塗装設備

【課題】塗料供給用の電動ポンプの運転制御を行うことにより、従来に比してエネルギー消費量が少ない塗装設備を提供する。
【解決手段】塗装ブース2と、塗装ブース2内に配設された塗装機3と、塗装ブース2内に配設され、ワーク4を搬送する搬送機5と、を備える塗装設備1において、塗料ごとに設けられた塗料タンク11と、塗料ごとに設けられ、各塗料タンク11内の塗料を循環させるための塗料循環配管13と、塗料ごとに設けられ、各塗料タンク11内の塗料を塗料循環配管13に圧送する塗料ポンプ12と、塗料循環配管13の途中に設けられ、塗装機3に接続されたカラーチェンジバルブユニット14と、生産計画に基づいてカラーチェンジバルブユニット14と塗料ポンプ12とを同期して制御する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装設備に関し、特に、従来に比してエネルギー消費量が少ない塗装設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の塗装においては、塗装ガンを備えた複数の塗装ロボットが塗装ブース内に配設されるとともに、塗装ガンに塗料を供給する塗料供給装置が設けられた塗装設備が広く利用されている。通常、塗料供給装置は、塗料調合室内に塗色ごとに設けられた複数の塗料タンクと、所望の塗色への切り替えを可能とするカラーチェンジバルブと、を備えるため、塗装ブース内に順次搬送されてくる塗装対象物に対して、同一の塗装ガンにより、塗色の異なる複数の塗料を塗装することが可能となっている。
【0003】
例えば、塗色ごとに設けられた複数の塗料タンクと、該塗料タンクに接続され途中に色替えバルブが設けられた、塗料が循環する塗料サーキュレーションと、該塗料サーキュレーションから分岐して複数の塗装機に接続される複数の塗料供給路と、該塗料供給路の夫々に設けられた塗料サージタンク及び該塗料サージタンクと塗装機の間に設けられた容積型ポンプと、を有する塗装装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この塗装装置によれば、塗色の切り替えに要する時間を短縮するために配管の口径を細くした場合であっても、塗装機へ塗料を安定して供給することができるとされている。
【特許文献1】特開平11−33447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1で提案されているような従来の塗装装置では、塗料を塗装機に供給するために、電動ポンプが常にフル稼働されていた。このため、ポンプの電動モータが常にフル運転状態であり、エネルギー消費量が多いのが課題であった。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料供給用の電動ポンプの運転制御を行うことにより、従来に比してエネルギー消費量が少ない塗装設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、生産計画に基づいて、カラーチェンジバルブユニットと塗料ポンプとを同期して制御する制御手段を備えることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のような塗装設備を提供する。
【0007】
請求項1記載の発明は、塗装ブースと、当該塗装ブース内に配設された塗装機と、当該塗装ブース内に配設され、ワークを搬送する搬送機と、を備える塗装設備において、塗料ごとに設けられた塗料タンクと、塗料ごとに設けられ、各塗料タンク内の塗料を循環させるための塗料循環配管と、塗料ごとに設けられ、各塗料タンク内の塗料を前記塗料循環配管に圧送する塗料ポンプと、前記塗料循環配管の途中に設けられ、前記塗装機に接続されたカラーチェンジバルブユニットと、生産計画に基づいて前記カラーチェンジバルブユニットと前記塗料ポンプとを同期して制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、塗装設備を、カラーチェンジバルブユニットと塗料ポンプとを同期して制御する制御手段を含んで構成した。
これにより、生産計画に基づいて、カラーチェンジバルブユニットを制御して所望の塗料を塗装機に供給するとともに、カラーチェンジバルブユニットの制御と同期して塗料ポンプの出力を制御することができる。そもそも、生産計画に基づいて塗装対象となる塗料については、塗装機へ塗料を供給して塗装機から塗料を噴射させるために塗料ポンプの出力を大きく設定する必要があるのに対して、塗装対象でない塗料については、顔料等が沈降しない程度に塗料を循環できればよく、塗料ポンプの出力を大きく設定する必要は無い。このため、カラーチェンジバルブユニットの制御と同期して塗料ポンプの出力制御を行うことにより、塗装対象の塗料のポンプのみをフル稼働させ、塗装対象でない塗料のポンプの出力を下げて待機運転とすることができる。
従って、本発明によれば、塗料ポンプのフル稼働時間を少なくすることができる結果、従来に比してエネルギー消費量を低減できる。また、塗料に与えるストレスを低減できるとともに、塗料ポンプのモータシールの劣化を抑制することもできる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の塗装設備において、前記塗装設備は、前記塗装ブースへのワークの搬入及び塗装後のワークの搬出を検知する検知センサをさらに備え、前記制御手段は、前記検知センサが前記塗装ブースへのワークの搬入を検知したときには、前記生産計画に基づいて塗装対象となる塗料に設けられた塗料ポンプの出力を上げて高出力運転モードとし、且つ前記検知センサが塗装後のワークの搬出を検知したときには、当該塗料ポンプの出力を下げて低出力運転モードとすることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、塗装ブース内へのワークの搬入を検知センサにより検知すると、生産計画に基づいて塗装対象となる塗料のポンプの出力を上げて高出力運転モードとし、検知センサが塗装ブース外への塗装後のワークの搬出を検知すると、塗装対象であった塗料のポンプの出力を下げて低出力運転モードとする制御手段を含んで構成した。
これにより、塗装ブース内へ塗装対象物であるワークが搬入されると、カラーチェンジバルブユニットの制御と同期して、塗装対象となる塗料のポンプの出力を上げる制御が行われる。また、塗装ブース外へ塗装後のワークが搬出されると、カラーチェンジバルブユニットの制御と同期して、塗装対象となる塗料のポンプの出力を下げる制御が行われる。このため、より適切なタイミングで塗料ポンプの出力を制御できることから、塗料ポンプのエネルギー消費量をより低減でき、大きな省エネルギー効果が奏される。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の塗装設備において、前記制御手段は、塗料の種類に応じて、前記塗料ポンプの出力を制御することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、塗料の種類に応じて塗料ポンプの出力を制御する制御手段を含んで構成した。
これにより、塗料の種類に応じて、より適切な運転条件で塗料ポンプを制御することができる。塗料の種類により粘度や分散安定性等の塗料特性は異なることから、塗装の際に必要な塗料ポンプの出力や、塗料中の顔料成分等が沈降しない範囲内で循環させるのに必要な塗料ポンプの出力は、塗料の種類により相違する。このため、塗装の際に必要な塗料ポンプ出力、及び塗料を循環させるのに必要な塗料ポンプ出力を、塗料ごとに最適化することができ、さらなる省エネルギー効果が奏される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生産計画に基づいて、カラーチェンジバルブユニットと塗料ポンプとを同期して制御する制御手段を備えることから、従来に比してエネルギー消費量が少ない塗装設備を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本発明の塗装設備を、自動車の塗装に適用した実施形態について説明する。
本実施形態に係る塗装設備1の構成を図1に示す。塗装設備1は、塗装ブース2と、塗装ブース2内に配設された塗装機3(3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G)と、塗装ブース2内に配設され、ワーク4を搬送する搬送機5と、を備える。
【0016】
また、塗装設備1は、塗料ごとに設けられた塗料タンク11(11a、11b、11c、11d、11e、11f)と、塗料ごとに設けられ、各塗料タンク11内の塗料を循環させるための塗料循環配管13(13a、13b、13c、13d、13e、13f)と、塗料ごとに設けられ、各塗料タンク11内の塗料を塗料循環配管13に圧送する塗料ポンプ12(12a、12b、12c、12d、12e、12f)と、塗料循環配管13の末端に夫々設けられた循環用ダンプバルブユニット17(17a、17b、17c、17d、17e、17f)と、塗料循環配管13の途中に設けられ、塗装機3に接続されたカラーチェンジバルブユニット14(14A、14B、14C、14D、14E、14F、14G)と、塗装ブース2へのワーク4の搬入、及び塗装後のワーク4の搬出を検知する検知センサ16A及び16Bと、を備えている。
また、塗装設備1は、生産計画に基づいて、カラーチェンジバルブユニット14と塗料ポンプ12の出力とを同期して制御する制御手段としてのALC(Assembly Line Control)システム15と、生産計画をALCシステム15に出力する生産計画システム18と、を備えている。
【0017】
本実施形態におけるワーク4は、一例として自動車バンパである。後述する搬送機5により吊り下げ支持されて、複数の自動車バンパが塗装ブース2内に搬入される。
【0018】
図1では便宜上簡略化しているが、搬送機5は、吊り下げ式の搬送機であり、塗装ラインに沿って配設されるトロリコンベヤと、このトロリコンベヤにて搬送される塗装ハンガと、を備えている。トロリコンベヤは、塗装ハンガを吊り下げるトロリを、天井架設のトロリレールに沿ってチェーンにて牽引するオーバーヘッドチェーンコンベヤである。塗装ガンを有する塗装機3(塗装ロボットを省略)は、ワーク4に対して、自在にガンの方向を変更することができる。
ワーク4としての自動車バンパは、搬送機5の塗装ハンガにより、吊り下げ支持されて搬送される。塗装ブース2内に搬入されたワーク4としての複数の自動車バンパは、塗装機3に対向する位置に夫々配置されて塗装が施された後、搬送機5により塗装ブース2外に搬出される。
【0019】
塗装機3は、静電式のベルガンであり、高速回転するカップにより塗料を霧化することにより、ワーク4としての自動車バンパに対して塗料を噴射する。塗装ブース2内には、搬送機5の両側に、所定の間隔を設けて7台の塗装機3が交互に配設されている。塗装機3は、後述する生産計画システムにより作成された生産計画に基づいて、搬送機5により各塗装機3に対向して配置された各ワーク4に対して、塗装対象となる塗料を噴射する。なお、複数の塗装機3においては、生産計画に基づいて、同一種の塗料による塗装が行われる。
【0020】
塗料タンク11は、塗料ごとに設けられており、各種塗料が貯蔵されている。本実施形態では、5種類の塗料が5つの塗料タンク11(11a、11b、11c、11d、11e)に貯蔵されており、残りの塗料タンク11fにシンナーが貯蔵されている。塗料タンク11fに貯蔵されているシンナーは、色替え時に、カラーチェンジバルブユニット14内の配管等の洗浄に利用される。
【0021】
塗料ポンプ12は、塗料ごとに設けられており、各塗料タンク内の塗料を塗料循環配管13に圧送する。塗料ポンプ12は、モータの回転数を制御可能なインバータポンプである。塗料ポンプ12は、後述するALCシステム15に電気的に接続されており、ALCシステム15から出力される制御信号により、塗料ポンプ12のモータの出力が制御される。
【0022】
塗料循環配管13には、塗料タンク11に貯蔵されている塗料が、塗料ポンプ12により圧送されて循環流通する。即ち、各塗料は、各塗料ポンプ12により圧送されて塗料循環配管13内を流通することで、顔料成分等の沈降を回避でき、良好な塗料分散性が確保される。
【0023】
カラーチェンジバルブユニット14は、塗料循環配管13の途中に設けられ、塗装機3に接続されている。また、カラーチェンジバルブユニット14は、ALCシステム15に電気的に接続され、ALCシステム15によりバルブの開閉制御がなされる。
カラーチェンジバルブユニット14の概略構成図を図2に示す。カラーチェンジバルブユニット14は、塗装機3に連結されており、塗装機3に塗料を供給するための塗料管路40と、この塗料管路40に取り付けられ、所定の塗料を供給又は停止する複数の塗料バルブユニット41(41a、41b、41c、41d、41e、41f)と、エアーを供給するエアーバルブユニット43と、洗浄用ダンプバルブユニット42と、を備えている。
【0024】
塗料バルブユニット41aは塗料タンク11aに接続されており、同様にして、塗料バルブユニット41bは塗料タンク11bに、塗料バルブユニット41cは塗料タンク11cに、塗料バルブユニット41dは塗料タンク11dに、塗料バルブユニット41eは塗料タンク11eに、塗料バルブユニット41fはシンナーが貯蔵されている塗料タンク11fに夫々接続されている。
塗料バルブユニット41は、塗料管路40に連通しており、連結部には、ニードル弁が配設されている。各塗料の塗料管路40への供給又は停止は、これらニードル弁を上下させることにより行われ、これにより塗料の切り替えが可能となっている。
【0025】
エアーバルブユニット43及び洗浄用ダンプバルブユニット42は、塗料の切り替え時に、塗装機3の内部を洗浄するために用いられる。具体的には、塗料の切り替えの際に、エアーバルブユニット43及び塗料バルブユニット41fのバルブが開放され、エアー及びシンナーがカラーチェンジバルブユニット14内に供給されることにより、塗料管路40等の内部が洗浄される。洗浄後は、洗浄用ダンプバルブユニット42のバルブが開放されることにより、洗浄に用いられたシンナーが配管中から全て排出される。
【0026】
循環用ダンプバルブユニット17は、塗料ごとに設けられている塗料循環配管13の末端に夫々設けられている。循環用ダンプバルブユニット17は、ALCシステム15に電気的に接続されており、ALCシステム15から出力される制御信号により、各バルブの開閉制御がなされる。具体的には、塗料噴射時にはバルブを閉じて背圧をかけることにより、塗料循環配管13内の圧力が高まる結果、塗装機3から塗料が勢い良く噴射されて塗装が実行される。
【0027】
検知センサ16A、16Bは、光電管等からなるセンサであり、ワーク4の搬入、搬出を検知する。検知センサ16A、16Bにより、ワーク4の搬入、搬出が検知されると、検知信号がALCシステム15に出力される。
【0028】
ALCシステム15は、検知センサ16A及び16Bからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下、CPUという)とを備える。この他、ALCシステム15は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、塗料ポンプ12、カラーチェンジバルブユニット14、循環用ダンプバルブユニット17に制御信号を出力する出力回路とを備える。
【0029】
ALCシステム15は、生産計画に基づいて、カラーチェンジバルブユニット14と塗料ポンプ12とを同期して制御することを特徴とする。生産計画は、後述する生産計画システム18により出力される。
また、ALCシステム15は、検知センサ16Aが塗装ブース2へのワーク4の搬入を検知したときには、生産計画に基づいて塗装対象となる塗料に設けられた塗料ポンプの出力を上げて高出力運転モードとする制御を行う。そして、検知センサ16Bが塗装後のワーク4の搬出を検知したときには、当該塗料ポンプ12の出力を下げて低出力運転モードとする制御を行う。
【0030】
また、ALCシステム15は、塗料の種類に応じて予め設定された運転条件に従って、塗料ポンプ12のモータの出力を制御する。即ち、塗料ポンプ12の高出力運転モードの運転条件と、低出力運転モードの運転条件とを、塗料の種類に応じて制御する。
塗料ポンプ12の高出力運転モード条件の一例を図3に示す。図3に示されるように、この例では、通常は周波数40Hzで運転が実行され、塗料をより強く噴射するために加圧が必要な時には、周波数50Hzで運転が実行される。
また、低出力運転モードの運転条件の例を図4及び5に示す。図4に示される例では、周波数30Hzでの5分間の運転と、周波数15Hzでの30分間の運転とが交互に繰り返し実行される。一方、図5に示される例では、一定の周波数15Hzで運転が実行される。
このように、これらの例に示されるように、塗料の種類(特に塗料粘度、分散安定性等)に応じて予め設定された運転条件に従って、塗料ポンプ12の出力が制御される。
【0031】
生産計画システム18は、多品種の自動車バンパ塗装ラインにおいて、生産される製品の生産計画を作成又は格納する。生産計画システム18は、ALCシステム15に電気的に接続されており、生産計画システム18からALCシステム15に生産計画が出力される。
【0032】
次に、本実施形態に係る塗装設備1の動作について説明する。
先ず、塗装対象物である複数のワーク4(自動車バンパ)が、搬送機5により吊り下げ支持されて搬送され、塗装ブース2内に搬入される。ワーク4の搬入を検知センサ16Aが検知すると、その検知信号がALCシステム15に出力される。
ALCシステム15に検知信号が入力されると、生産計画システム18からALCシステム15に生産計画が出力される。次いで、ALCシステム15は、生産計画に基づいて、カラーチェンジバルブユニット14と塗料ポンプ12とを同期して制御する制御信号を出力する。
具体的には、カラーチェンジバルブユニット14に対しては、生産計画に基づいて塗装対象となる塗料に対応して設けられた塗料バルブユニット41のバルブを開き、他の塗料バルブユニット41のバルブを閉じる制御がなされる。
また、塗料ポンプ12に対しては、生産計画に基づいて塗装対象となる塗料に対応して設けられた塗料ポンプの出力を上げて、塗料の種類に応じて予め設定された高出力運転モードとする制御がなされる。一方、塗装対象とならない塗料のポンプの出力を下げて、塗料の種類に応じて予め設定された低出力運転モードとする制御がなされる。
【0033】
次いで、複数の塗装機3に夫々対向して配置された複数のワーク4に対して、塗装機3より塗装対象である塗料が噴射される。この際には、塗装対象となる塗料に対応して設けられた循環用ダンプバルブ17のバルブを閉じる制御がなされ、塗料循環配管13内の圧力が高められる結果、複数の塗装機3から塗料が勢い良く噴射されて塗装が効率的に行われる。
【0034】
塗装が終了すると、塗装後のワーク4は、搬送機5により塗装ブース2外へ搬出される。塗装後のワーク4の搬出を検知センサ16Bが検知すると、その検知信号がALCシステム15に出力される。
ALCシステム15に検知信号が入力されると、高出力運転モード制御がなされていた塗料ポンプ12の出力を下げて低出力運転モードとする制御がなされる。また、生産計画に基づいて、塗料の切り替えが必要な場合には、カラーチェンジバルブユニット14に備えられたエアーバルブユニット43及び塗料バルブユニット41fのバルブが開放され、エアー及びシンナーがカラーチェンジバルブユニット14内に供給されて塗料管路40等の内部が洗浄される。洗浄後は、洗浄用ダンプバルブユニット42のバルブが開放され、洗浄に用いられたシンナーが配管中から全て排出される。
次いで、塗装対象物である複数のワーク4が、再び搬送機5により塗装ブース2内に搬入され、上記の動作が繰り返し実行される。
【0035】
本実施形態に係る塗装設備1によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、塗装設備1を、カラーチェンジバルブユニット14と塗料ポンプ12とを同期して制御する制御手段としてのALCシステム15を含んで構成した。
これにより、生産計画に基づいて、カラーチェンジバルブユニット14を制御して所望の塗料を塗装機3に供給するとともに、カラーチェンジバルブユニット14の制御と同期して塗料ポンプ12の出力を制御することができる。そもそも、生産計画に基づいて塗装対象となる塗料については、塗装機3へ塗料を供給して塗装機3から塗料を噴射させるために塗料ポンプ12の出力を大きく設定する必要があるのに対して、塗装対象でない塗料については、顔料等が沈降しない程度に塗料を循環できればよく、塗料ポンプ12の出力を大きく設定する必要は無い。このため、カラーチェンジバルブユニット14の制御と同期して塗料ポンプ12の出力制御を行うことにより、塗装対象の塗料のポンプのみをフル稼働させ、塗装対象でない塗料のポンプの出力を下げて待機運転とすることができる。従って、塗料ポンプ12のフル稼働時間を少なくすることができる結果、従来に比してエネルギー消費量を低減できる。また、塗料に与えるストレスを低減できるとともに、塗料ポンプ12のモータシールの劣化を抑制することもできる。
【0036】
また、本実施形態によれば、塗装設備1を、塗装ブース2内へのワーク4の搬入を検知センサ16Aにより検知すると、生産計画に基づいて塗装対象となる塗料のポンプの出力を上げて高出力運転モードとし、検知センサ16Bが塗装ブース外への塗装後のワーク4の搬出を検知すると、塗装対象であった塗料のポンプの出力を下げて低出力運転モードとする制御手段としてのALCシステム15を含んで構成した。
これにより、塗装ブース2内へ塗装対象物であるワーク4が搬入されると、カラーチェンジバルブユニット14の制御と同期して、塗装対象となる塗料のポンプの出力を上げる制御が行われる。また、塗装ブース2外へ塗装後のワーク4が搬出されると、カラーチェンジバルブユニット14の制御と同期して、塗装対象となる塗料のポンプの出力を下げる制御が行われる。このため、より適切なタイミングで塗料ポンプ12の出力を制御できることから、塗料ポンプ12のエネルギー消費量をより低減でき、大きな省エネルギー効果が奏される。
【0037】
また、本実施形態によれば、塗装設備1を、塗料の種類に応じて塗料ポンプ12の出力を制御する制御手段としてのALCシステム15を含んで構成した。
これにより、塗料の種類に応じて、より適切な運転条件で塗料ポンプ12を制御することができる。塗料の種類により粘度や分散安定性等の塗料特性は異なることから、塗装の際に必要な塗料ポンプ12の出力や、塗料中の顔料成分等が沈降しない範囲内で循環させるのに必要な塗料ポンプ12の出力は、塗料の種類により相違する。このため、塗装の際に必要な塗料ポンプ12の出力、及び塗料を循環させるのに必要な塗料ポンプ12の出力を、塗料ごとに最適化することができ、さらなる省エネルギー効果が奏される。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、本発明に係る塗装設備1は、自動車の塗装設備に限定されず、各種工業製品の塗装設備に用いることができる。このため、ワークも自動車バンパに限定されず、他の自動車部品や各種工業製品をワークとして用いることができる。
また、塗料タンク、塗料ポンプ、及び塗装機の数も特に限定されず、数が多いほど本発明の効果が増大する。
また、カラーチェンジバルブユニット14として、塗料管路40の上流部に設けられ、キャビテーションを有する洗浄液を噴射する洗浄液噴射バルブユニットを備えたものを用いることができる。ここで、キャビテーション(バブリング)とは、洗浄液とエアとが混合されて形成された泡状の混合体であり、この泡のキャビテーション振動によって、あたかも超音波洗浄機のように、塗料管路40の壁面に付着した塗料の除去効果を高めることができる。なお、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、塗料管路40の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられていることが好ましく、これにより、塗料管路40内にキャビテーションを有する洗浄液が円滑に供給され、洗浄効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る塗装設備の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカラーチェンジバルブの概略構成図である。
【図3】塗料ポンプの高出力運転モードを説明するための図である。
【図4】塗料ポンプの低出力運転モードを説明するための図である。
【図5】塗料ポンプの低出力運転モードを説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
1 塗装設備
2 塗装ブース
3、3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G 塗装機
4 ワーク
5 搬送機
11、11a、11b、11c、11d、11e、11f 塗料タンク
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f 塗料ポンプ
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f 塗料循環配管
14、14A、14B、14C、14D、14E、14F、14G カラーチェンジバルブユニット
15 ALCシステム
16A、16B 検知センサ
17、17a、17b、17c、17d、17e、17f 循環用ダンプバルブユニット
18 生産計画システム
40 塗料管路
41a、41b、41c、41d、41e、41f 塗料バルブユニット
42 洗浄用ダンプバルブユニット
43 エアーバルブユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装ブースと、当該塗装ブース内に配設された塗装機と、当該塗装ブース内に配設され、ワークを搬送する搬送機と、を備える塗装設備において、
塗料ごとに設けられた塗料タンクと、
塗料ごとに設けられ、各塗料タンク内の塗料を循環させるための塗料循環配管と、
塗料ごとに設けられ、各塗料タンク内の塗料を前記塗料循環配管に圧送する塗料ポンプと、
前記塗料循環配管の途中に設けられ、前記塗装機に接続されたカラーチェンジバルブユニットと、
生産計画に基づいて前記カラーチェンジバルブユニットと前記塗料ポンプとを同期して制御する制御手段と、を備えることを特徴とする塗装設備。
【請求項2】
前記塗装設備は、前記塗装ブースへのワークの搬入及び塗装後のワークの搬出を検知する検知センサをさらに備え、
前記制御手段は、前記検知センサが前記塗装ブースへのワークの搬入を検知したときには、前記生産計画に基づいて塗装対象となる塗料に設けられた塗料ポンプの出力を上げて高出力運転モードとし、且つ前記検知センサが塗装後のワークの搬出を検知したときには、当該塗料ポンプの出力を下げて低出力運転モードとすることを特徴とする請求項1記載の塗装設備。
【請求項3】
前記制御手段は、塗料の種類に応じて、前記塗料ポンプの出力を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の塗装設備。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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