説明

塩化ストロンチウム六水和物の製造方法

【課題】塩化ストロンチウム六水和物材料の集塊問題を解決すること。
【解決手段】塩化ストロンチウム六水和物の製造方法は、SrCO3に水を加えてスラリを調製し、そのスラリに塩酸を加え、溶解し、溶液を得るステップ;その溶液に過酸化水素を加えて鉄などの不純物を酸化するステップ
;得た溶液を沸騰するまで昇温した後、Sr(OH)2・8H2Oにてその溶液をpH=8−9に調節するステップ;得た溶液を加圧濾過し分離して得た清澄液を蒸発させボーメ度48−50まで濃縮し、こうして得た清澄液を冷却結晶するステップ;得た結晶を加圧濾過し分離して得た固体結晶を乾燥し、結晶の遊離水分含量(重量%)を2%以下にコントロールした後、結晶に対して熱風で乾燥操作を行い、結晶の遊離水分含量(重量%)を0.2%以下にコントロールし、冷却し、SrCl2・6H2Oを得るステップ;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩化ストロンチウム六水和物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ストロンチウム六水和物材料は、液晶ガラス基板に用いられ、ガラス基板の主結晶相材料として、需要が絶えず増えている。しかし、従来プロセスで製造した塩化ストロンチウム六水和物は、遊離水分量が不安定であるので、集塊や凝固が発生しやすく、実用に大きな問題がある。本発明者らは、集塊のメカニズムを鋭意検討した結果、塩化ストロンチウム六水和物の集塊の原因が、塩化ストロンチウム六水和物が一定量の遊離水を含有し、かつ、塩化ストロンチウム六水和物の溶解度が非常に大きいため、結晶同士接触する境界に溶解・成長過程が起こり、成長過程中、遊離水を排出し、より大きい範囲の溶解・成長を引き起こし、広範囲の集塊を形成してしまうからである、との知見を得るに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、塩化ストロンチウム六水和物材料の集塊問題を解決することを主な目的とする。
【0004】
本発明者らは、集塊メカニズムの研究に基づき、従来の製造プロセスを改良し、結晶の表面を二回乾燥する過度乾燥固化法により、塩化ストロンチウム六水和物結晶の表面の水分を乾燥させ、結晶分子1つあたりの表面の結晶水を6つ未満の状態にし、溶解・成長による集塊問題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、塩化ストロンチウム六水和物の製造方法であって、
SrCO3 に水を加えてスラリを調製し、そのスラリに塩酸を加え、溶解し、溶液を得るステップ1;
ステップ1で得た溶液に過酸化水素加えて鉄などの不純物を酸化するステップ2;
ステップ2で得た溶液を沸騰するまで昇温した後、Sr(OH)2 ・8H2 Oにてその溶液をpH=8−9に調節するステップ3;
ステップ3で得た溶液を加圧濾過し分離して得た清澄液を蒸発させボーメ度48−50まで濃縮し(一般に、該蒸発操作は蒸発缶内で行う)、こうして得た清澄液を冷却結晶する(一般に、該結晶操作は冷却結晶缶内で行う)ステップ4、また、ステップ4の二回の加圧濾過は、いずれも加圧濾過機にて行うことができる;
ステップ4で得た結晶を加圧濾過し分離して得た固体結晶を乾燥し、結晶の遊離水分含量(重量%)を2%以下にコントロールした後、結晶に対して熱風での乾燥操作(該乾燥操作を気流乾燥装置で行う)を行い、結晶の遊離水分含量(重量%)を0.2%以下にコントロールし、冷却し、SrCl2・6H2Oを得るステップ5;を含む方法が提供される。
【0006】
好ましくは、前記ステップ5において、さらに、調製したSrCO3 溶液に加圧濾過し分離して得た母液を戻すステップを含み、そのときのステップ1がSrCO3 に該母液を加えてスラリを調製するステップになる。
【0007】
好ましくは、前記ステップ5において、一回目の乾燥を振動流動床にて行う。
【0008】
好ましくは、前記ステップ5において、熱風の乾燥操作の温度が180−230℃である。
【0009】
本発明における主な化学反応は以下の通りです。
(化1)
SrCO3+2HCl→SrCl2+H2O+CO2
(化2)
MgCl2+Sr(OH)2+H2O→Mg(OH)2↓+SrCl2
(化3)
Fe2++H2O2→Fe3+→Fe(OH)3
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法で製造した塩化ストロンチウム六水和物製品は、外観がルーズな結晶(LOOSEN CRYSTALLINE)であり、遊離水含量が0.2%未満で安定であり、集塊問題を大幅に改善した。また、本発明の方法で製造した塩化ストロンチウム六水和物製品は、不純物が少なく、液晶ガラス基板に用いる塩化ストロンチウム六水和物材料の集塊問題を解決し、下流産業の輸送、原料配合、混合の工程の要求に満足した。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の主なプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
呼び容積10m3 のエナメル反応釜に母液2m3を加え、工業用炭酸ストロンチウム3トンを投入し、攪拌しながら工業用塩酸を加入し、溶解する。その後、濃度27.5%工業用過酸化水素25Lを加え、酸化反応を行う。酸化した溶液を昇温し沸騰させ、この溶液にSr(OH)2 ・8H2Oを用い、pHを8に調節する。
【0013】
調節した溶液を加圧濾過機でろ過し、得た清澄液を蒸発缶に輸送し、ボーメ度48まで濃縮した後、こうして得た清澄液を冷却結晶缶に輸送し、冷却結晶する。
【0014】
こうして得た結晶を吸引濾過し分離し、得た固体結晶を振動流動床に輸送し、一回目の乾燥を行い、測定された結晶の遊離水分は1.9%である。その後、さらに、その結晶を気流乾燥装置に輸送し、二回目の乾燥を行い、そのときの熱風温度が180℃であり、測定された結晶の遊離水分は0.16%である。乾燥を停止し、結晶が冷却された後、SrCl2 ・6H2 O試料1# を得る。
【実施例2】
【0015】
呼び容積10m3のエナメル反応釜に母液2m3を加え、工業用炭酸ストロンチウム3トンを投入し、攪拌しながら工業用塩酸を加入し、溶解する。そして、得た溶液に濃度27.5%工業用過酸化水素25Lを加え、酸化反応を行う。酸化した溶液を昇温し沸騰させ、この溶液にSr(OH)2・8H2Oを用い、pHを9に調節する。
【0016】
調節した溶液を加圧濾過機でろ過し、得た清澄液を蒸発缶に輸送し、ボーメ度50まで濃縮した後、こうして得た清澄液を冷却結晶缶に輸送し、冷却結晶する。
【0017】
こうして得た結晶を吸引濾過し分離し、得た固体結晶を振動流動床に輸送し、一回目の乾燥を行い、測定された結晶の遊離水分が1.7%である。その後、さらに、その結晶を気流乾燥装置に輸送し、二回目の乾燥を行い、そのときの熱風温度が230
℃であり、測定された結晶の遊離水分が0.10%である。乾燥を停止し、結晶が冷却された後、SrCl2・6H2O試料2#を得る。
以上の実施例で得た製品のパラメーターを以下の表1に示す。
【0018】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SrCO3に水を加えてスラリを調製し、そのスラリに塩酸を加え、溶解し、溶液を得るステップ1;
ステップ1で得た溶液に過酸化水素加えて鉄などの不純物を酸化するステップ2;
ステップ2で得た溶液を沸騰するまで昇温した後、Sr(OH)2・8H2Oにてその溶液をpH=8−9に調節するステップ3;
ステップ3で得た溶液を加圧濾過し分離して得た清澄液を蒸発させボーメ度48−50まで濃縮し、こうして得た清澄液を冷却結晶するステップ4;
ステップ4で得た結晶を加圧濾過し分離して得た固体結晶を乾燥し、結晶の遊離水分含量(重量%)を2%以下にコントロールし、その後、さらに、結晶に対して熱風で乾燥操作を行い、結晶の遊離水分含量(重量%)を0.2%以下にコントロールし、冷却し、SrCl2・6H2Oを得るステップ5;
を含むことを特徴とする塩化ストロンチウム六水和物の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ5において、加圧濾過し分離して得た母液を調製したSrCO3溶液に戻すステップを含み、そのときのステップ1がSrCO3に該母液を加えてスラリを調製するステップになることを特徴とする請求項1に記載の塩化ストロンチウム六水和物の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ5において、一回目の乾燥を振動流動床にて行うことを特徴とする請求項1に記載の塩化ストロンチウム六水和物の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ5において、熱風での乾燥操作の温度が180−230℃であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ストロンチウム六水和物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−121853(P2011−121853A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164542(P2010−164542)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(510200509)貴州紅星発展股▲ふん▼有限公司 (1)
【出願人】(510200510)重慶科昌科技有限公司 (3)
【Fターム(参考)】