説明

塩化ビニリデン系共重合体樹脂組成物及びその成形物

【課題】バリア性及び低温衝撃性に優れた樹脂組成物及びその成形物を提供する。
【解決手段】塩化ビニリデン系共重合体70〜97質量%と、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂3〜30質量%とを含有し、昇温速度2℃/分、振動周波数10Hz、−60〜50℃の条件で動的損失弾性率(E”)を測定したときにピークが二つ以上存在することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニリデン系共重合体と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物及びその成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデンを主成分とする共重合体からなるフィルムは、酸素遮断性、防湿性等のバリア性に優れており、外気から中身を守るため多くの包装分野で使用されている。しかしながら、塩化ビニリデン系共重合体フィルムは、本来脆く、傷つきやすく、破壊しやすいという欠点がある。特に包装体とした後の5℃以下の低温流通過程や低温使用時等に衝撃を加えると、破壊しやすいという欠点を有している。
【0003】
そのため低温での柔軟性を改善して低温衝撃性を向上させるため、種々の方法がとられている。例えば、塩化ビニリデン系共重合体への液状可塑剤を添加したり、柔軟なフィルム又はシートとの多層化等が試みられている。
【0004】
しかし、上述の塩化ビニリデン系共重合体の柔軟性を改善する二つの試みの内、液状添加剤を添加する方法では、塩化ビニリデン系共重合体が有する特徴であるバリア性が大きく低下すると共に、低温衝撃性の改善についても不十分である。一方、塩化ビニリデン系共重合体の多層化では、塩化ビニリデン系共重合体が低温で脆い性質は変わらないため、低温流通時等に塩化ビニリデン層にクラックが発生し、バリア性を低下させる可能性が残る。
【0005】
上述以外で塩化ビニリデン系共重合体のバリア性を悪化させることなく、低温で脆い性質を改善する方法として、塩化ビニリデン系共重合体と他樹脂との混合物の検討が試みられている(例えば、特許文献1,2)。
【0006】
特許文献1には、塩化ビニリデン系共重合体と熱可塑性ポリウレタンの混合物を含有する多層フィルムが開示されており、柔軟性、耐ピンホール性に優れていると記載されている。
【0007】
特許文献2には、塩化ビニリデン系共重合体に熱可塑性ポリウレタンを混合することで他材フィルムとの接着性を改善し層間剥離を抑制することにより、耐ピンホール性、バリア性に優れた多層フィルムとすることが記載されている。
【特許文献1】特許第3866381号公報
【特許文献2】特開2000−326454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、得られたフィルムは柔軟性があり、低温衝撃性が改善されているが、塩化ビニリデン系共重合体の特徴であるバリア性において改善の余地がある。
【0009】
特許文献2に開示されている技術では、得られた多層フィルムの層間接着強度が改善される一方、多層フィルムにおける塩化ビニリデン系共重合体樹脂層は低温衝撃性が十分でない場合があり、このような場合は、低温での衝撃により塩化ビニリデン系共重合体樹脂層が破壊されてバリア性が低下することが懸念される。
【0010】
本発明の目的は、バリア性及び低温衝撃性に優れた樹脂組成物及びその成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、塩化ビニリデン系共重合体と特定の熱可塑性樹脂を混合することにより、塩化ビニリデン系共重合体の最大の特徴であるバリア性の低下を抑えつつ、優れた低温衝撃性をも併せ持つ樹脂組成物及びその成形物を提供できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)塩化ビニリデン系共重合体70〜97質量%と、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂3〜30質量%とを含有し、昇温速度2℃/分、振動周波数10Hz、−60〜50℃の条件で動的損失弾性率(E”)を測定したときにピークが二つ以上存在することを特徴とする樹脂組成物。
(2)(1)に記載の樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム又はシート状の成形物。
(3)一方向及びこれと直交する方向の120℃における熱収縮率がそれぞれ5%以下であることを特徴とする(2)記載の成形物。
(4)厚さ25μm、温度23℃、湿度65%RHの条件で測定した酸素透過度が50ml/(m・day・MPa)以下であることを特徴とする(2)又は(3)記載の成形物。
(5)5℃における低温衝撃吸収エネルギーが0.2J以上であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の成形物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バリア性及び低温衝撃性に優れた樹脂組成物及びその成形物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明について以下詳細に説明する。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、塩化ビニリデン系共重合体と、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物及びその成形物において、塩化ビニリデン系共重合体の特徴であるバリア性を維持しつつ、低温衝撃性にも優れるものである。例えば、袋や容器の蓋材等の包装体とした場合、流通過程、使用時等に5℃程度の低温に曝される際に落下や変形による衝撃にも破壊されることなくバリア性を維持し、内容物の長期保存が可能といった優れた効果を発現させることができる。
【0016】
本発明者らは、特定の理論に拘束されるものではないが、塩化ビニリデン系共重合体と、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂を混合すると、これらの相溶性が低く、成形した際にそれぞれが別の層を形成することにより塩化ビニリデン分子の分子間力を弱めることが抑制されるため、バリア性に与える影響を抑制することができるものと考える。
【0017】
ここで、重要なことは、塩化ビニリデン系共重合体と、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂とを含有する混合物からなる樹脂組成物について、昇温速度2℃/分、振動周波数10Hz、−60〜50℃の条件で測定した動的粘弾性測定における動的損失弾性率(E”)のピークが二つ以上存在するようにすることである。動的損失弾性率(E”)のピークが二つ以上存在するものは、塩化ビニリデン系共重合体に混合した熱可塑性樹脂が完全相溶することなく、例えば、ミクロ相分離を生じているため、その熱可塑性樹脂の柔軟性によって優れた低温衝撃性を示すと考えられる。
【0018】
ここで、本発明における動的損失弾性率(E”)のピークとは、−60〜50℃が含まれる温度範囲で、例えば低温から高温へ昇温しながら各温度で本発明の樹脂組成物の動的損失弾性率(E”)を測定したときに観察されるピークを意味し、例えば、一度カーブが上昇し次いで下降するときの極大値として測定できる。なお、E”のピークがあるかどうかは、その温度において動的貯蔵弾性率(E’)に変曲点が生じているかどうかを参考に判定することもできる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の全量基準で、塩化ビニリデン系共重合体を70〜97質量%含有することが必要である。混合量が70質量%以上では、バリア性が良好となる。混合量が97質量%以下では、柔軟となる。上記混合量は、好ましくは80〜97質量%の範囲であり、より好ましくは85〜95質量%の範囲である。
【0020】
本発明で使用される塩化ビニリデン系共重合体とは、主成分の塩化ビニリデン成分と、塩化ビニリデンと共重合可能な単量体とからなる共重合である。塩化ビニリデン成分は、70〜98質量%であることが好ましく、80〜97質量%であることがより好ましい。塩化ビニリデン成分が98質量%以下であれば、加熱溶融押出が安定的に行え、70質量%以上であれば気体に対するバリア性が良好である。
【0021】
塩化ビニリデンと共重合可能な単量体とは、例えば塩化ビニル、アクリルニトリル、アクリル酸、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、マレイン酸、マレイン酸アルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル等であり、それらの共重合体の少なくとも1種が2〜30質量%の範囲で含まれる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0022】
ポリ塩化ビニリデン系共重合体の分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)で求めたポリスチレンを標準とした重量平均分子量が5万以上であれば、フィルム又はシートにした時の強度が優れており、12万以下であれば、加熱溶融押出時の熱安定性が良好である。すなわち、ポリ塩化ビニリデン系共重合体の重量平均分子量は50,000〜120,000が好ましい。
【0023】
また、ポリ塩化ビニリデン系共重合体は、必要に応じて、各種の公知の添加剤を添加したものであってもよい。添加剤としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、有機滑剤、無機粉末、着色剤等が挙げられる。
【0024】
本発明において、塩化ビニリデン系共重合体との混合に用いられるポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン単量体(エチレン、プロピレン、ブチレン等)の単独重合体、オレフィン単量体2種以上の共重合体、又はオレフィン単量体と非オレフィン系単量体の共重合体、を意味する。具体的には、チーグラー系マルチサイト触媒を用いた高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、シングルサイト触媒を用いたエチレン・αオレフィン共重合体、更にはポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブチレン共重合体、エチレン―プロピレン―ブチレン共重合体等が挙げられる。また、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸又はその酸無水物等の誘導体を共重合、グラフト重合して変性されたポリオレフィン系共重合体を使用することができる。但し、ポリオレフィン系樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体とのブレンド物(ポリオレフィン系樹脂3〜30質量%、塩化ビニリデン系共重合体70〜97質量%)について、動的損失弾性率(E”)を測定したときにピークが二つ以上現われるものでなければならない。
【0025】
本発明において、塩化ビニリデン系共重合体との混合に用いられるジエン系ポリウレタン樹脂とは、ポリジエン骨格(又はジエン骨格)を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂をいう。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、典型的にはソフトセグメント(例えばポリメリックグリコール等のポリオール由来)とハードセグメント(例えばジイソシアネート等のポリイソシアネート由来)とを有するポリウレタン樹脂であり、ポリオールとポリイソシアネートの反応時には鎖延長剤及び/又は架橋剤等を用いてもよい。なお、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤、架橋剤は、それぞれ複数種を用いてもよい。このようなジエン系ポリウレタン樹脂を用いることで、塩化ビニリデン系共重合体のバリア性を維持したまま低温特性を改良することができる。
【0026】
なお、ジエン系ポリウレタン樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体とのブレンド物(ジエン系ポリウレタン樹脂3〜30質量%、塩化ビニリデン系共重合体70〜97質量%)について、動的損失弾性率(E”)を測定したときにピークが二つ以上現われるものでなければならない。
【0027】
ジエン系ポリウレタン樹脂は、原料となるポリオール及びポリイソシアネートの少なくとも一方が、ポリジエン骨格(又はジエン骨格)を有していることが好ましく、ポリオールがポリジエン骨格(又はジエン骨格)を有していることがより好ましい。ジエン系ポリウレタン樹脂としては、原料となるポリオール及びポリイソシアネートの少なくとも一方が、ブタジエン骨格又はイソプレン骨格を有していることが好ましく、ブタジエン骨格を有しているブタジエン系ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0028】
ジエン系ポリウレタン樹脂の原料であるポリイソシアネートとしては、例えばメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の化合物や、これらの変性体、誘導体、混合物、高分子化合物等が使用できる。また、鎖延長剤及び/又は架橋剤としては、例えばエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール等が使用できる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂を3〜30質量%含有することが必要である。混合量が3質量%以上では、昇温速度2℃/分、振動周波数10Hz、−60〜50℃の条件で測定した動的粘弾性測定における動的損失弾性率(E”)のピークが二つ以上存在し低温特性に優れる。混合量が30質量%以下では、樹脂組成物中の塩化ビニリデン系共重合体の海に対して、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂が島となる海島構造を容易に形成して、バリア性が良好になる。上記混合量は、好ましくは3〜20質量%の範囲であり、より好ましくは5〜15質量%の範囲である。
【0030】
本発明における、塩化ビニリデン系共重合体と、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂との混合方法は、ターンブレンド法、リボンブレンド法、ヘンシェルミキサー法等が使用できる。ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂は、冷凍粉砕等により粉末状であっても良い。
【0031】
本発明における樹脂組成物は、加熱溶融押出機により押出し、円形ダイあるいはTダイにより成形し、フィルム又はシート状の成形物を得ることができる。また、ダイレクトインフレーション法、テンター法等を用いることができる。
【0032】
本発明におけるフィルム又はシート状の成形物は、他基材と積層して使用することができる。積層方法としては、熱溶融共押出法、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法等の一般的に知られている方法を使用できる。
【0033】
本発明におけるフィルム又はシート状の成形物の一方向及びこれと直交する方向の120℃での熱収縮率とは、例えば押出製膜したフィルム又はシートを機械方向(MD)及び機械交差方向(TD)にそれぞれ100mm切り出し、雰囲気温度120℃でフィルム又はシートに張力を掛けない状態で5分間放置した後、MD、TDの長さが元の長さよりも縮んだ割合を指す。本発明におけるフィルム又はシートでは、一方向及びこれと直交する方向の熱収縮率がそれぞれ5%以下であることが好ましく、2%以下がより好ましい。熱収縮率が5%以下では、例えばイージーシールによって二つの領域に分けられているバックに使用した際、イージーシール部が、120℃付近でレトルト殺菌された時の熱収縮により開くことが抑制される傾向にある。
【0034】
本発明におけるフィルム又はシート状の成形物は、ASTM−D3985に準拠し、厚さ25μm、温度23℃、湿度65%RHの条件で測定した酸素透過度が50ml/(m・day・MPa)以下であることが好ましい。酸素透過度が50ml/(m・day・MPa)以下であれば、バリア性を必要とする内容物を包装した場合でも実用上問題が生じない傾向にある。酸素透過率は、好ましくは20ml/(m・day・Ma)以下である。
【0035】
本発明におけるフィルム又はシート状の成形物は、ASTM−D3420記載の測定法により測定した低温衝撃吸収エネルギーは、0.2J以上であることが好ましく、0.4J以上がより好ましい。低温衝撃吸収エネルギーが0.2J以上では、低温時の取り扱いでも問題なく使用できる傾向にある。
【実施例】
【0036】
以下に実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、これにより本発明は、制限されない。なお、本発明で使用される評価方法は下記の通りである。
【0037】
各実施例、比較例のシート、フィルムは以下のように作製した。なお、各実施例及び比較例で使用した樹脂を以下に示す。
PVDC1:塩化ビニリデン(VDC)の共重合割合が95質量%、アクリル酸メチル(MA)の共重合割合が5質量%であり、重量平均分子量が8万の塩化ビニリデン系樹脂に対して、熱安定剤としてエポキシ化亜麻仁油(ELO)を樹脂組成物全質量に対して2質量%添加した。
PVDC2:塩化ビニリデン(VDC)の共重合割合が85質量%、塩化ビニル(VC)の共重合割合が15質量%であり、重量平均分子量が10万の塩化ビニリデン系樹脂に対して、熱安定剤としてエポキシ化亜麻仁油(ELO)を樹脂組成物全質量に対して1質量%、可塑剤としてセバシン酸ジブチルを樹脂組成物全質量に対して1質量%添加した。
PE1:低密度ポリエチレン、旭化成ケミカルズ社製、商品名:サンテックLD1920F。
PE2:酸変性ポリエチレン、三菱化学社製、商品名:モディックF534A。
TPU1:ブタジエン系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製、商品名:UBD2082。
TPU2:エステル系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製、商品名:パールセンU−100A。
EEA:エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸ターポリマー、アルケア社製、商品名:ボンダインTX8030。
SEBS:ブタジエンとスチレンからなる共重合体の水素添加物、旭化成ケミカルズ社製、商品名:タフテックM1943。
【0038】
[実施例1]
L/D=20、D=40mmの押出機に、PVDC1とPE1の質量比97:3の混合物を投入し、サーキュラーダイから厚さ200μmのチューブ状に押出し、冷却媒体を水として、外側から冷却固化して厚さ200μmのチューブ状シートを得た。
【0039】
[実施例2]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とPE1の質量比85:15の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0040】
[実施例3]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とPE1の質量比70:30の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0041】
[実施例4]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とPE2の質量比85:15の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0042】
[実施例5]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とTPU1の質量比95:5の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0043】
[実施例6]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とTPU1の質量比85:15の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0044】
[実施例7]
押出機に投入する樹脂をPVDC2とTPU1の質量比95:5の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0045】
[実施例8]
押出機に投入する樹脂をPVDC2とPE2の質量比85:15の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0046】
[比較例1]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とPE2の質量比99:1の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0047】
[比較例2]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とTPU2の質量比95:5の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0048】
[比較例3]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とTPU2の質量比85:15の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0049】
[比較例4]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とEEAの質量比95:5の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0050】
[比較例5]
押出機に投入する樹脂をPVDC1とSEBSの質量比95:5の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ200μmのシートを得た。
【0051】
[比較例6]
L/D=20、D=40mmの押出機に、PVDC1のみを投入し、サーキュラーダイから厚さ400μmのチューブ状に押出し、冷却媒体を水として、外側から冷却固化してチューブ状シートを作製し、バブルインフレーション法で縦4倍×横4倍の延伸を行った。このインフレーションバブルをデフレーターを通して折りたたんで巻取機でスリットし、厚さ25μmのフィルムを得た。
【0052】
<動的損失弾性率(E”)のピークの測定>
上記実施例・比較例で押出製膜したシート・フィルムを長さ45mm、幅5mmに切り出し、Rheometrics社製、商品名、RSA―IIにチャック間22.5mmとしてセットし、昇温速度2℃/分、振動周波数10Hz、−60〜50℃で測定をした時にピークを示す温度を測定した。
【0053】
<熱収縮率>
上記実施例・比較例で押出製膜したシート・フィルムを100mm×100mmの大きさに切り出し、空気雰囲気中120℃で、シートに張力がかからないようにした状態で5分間放置後のMD、TDのシート長さを測定し、元の長さから縮んだ割合を求め熱収縮率とした。
[評価基準]
2%以下:イージーシールによって二つの領域に分けられているバックに使用した際、イージーシール部が、120℃付近でレトルト殺菌された時の熱収縮により開くことがなく実用上優れたレベル
2%を越えて5%以下:イージーシールによって二つの領域に分けられているバックに使用した際、イージーシール部が、120℃付近でレトルト殺菌された時の熱収縮により開くことがなく実用上使用ができるレベル
5%を越える:イージーシールによって二つの領域に分けられているバックに使用した際、イージーシール部が、120℃付近でレトルト殺菌された時の熱収縮により開く恐れがあり、実用上不安があるレベル
【0054】
<酸素透過率>
上記実施例・比較例と同様の樹脂の混合物を用いて、比較例6と同様の手法により厚さ25μmのフィルムをそれぞれ作製し、ASTM D−3985に準拠して測定を行った。測定装置は、Mocon OX−TRAN2/20を使用し、温度23℃、湿度65%RHの条件下で測定を行った。
[評価基準]
20ml/(m・day・MPa)以下:長期保存用途に優れるレベル
20ml/(m・day・MPa)を越えて50ml/(m・day・MPa)以下:長期保存用途に使用できるレベル
50ml/(m・day・MPa)を越える:長期保存用途に使用できないレベル
【0055】
<低温衝撃吸収エネルギー>
ASTM−D3420に準拠して測定を行った。上記実施例・比較例で押出製膜したシート・フィルムを100mm×100mmの大きさに切り出し、雰囲気温度5℃で30分放置した後に、雰囲気温度5℃において測定装置フィルムインパクトテスター、テスター産業社製を使用し測定を行った。
[評価基準]
0.4J以上:寒冷地等での使用でもクラック、破れが発生せず実用上使用に優れるレベル
0.2J以上0.4J未満:寒冷地等での使用でもクラック、破れが発生せず実用上使用できるレベル
0.2J未満:寒冷地等での使用でクラック、破れが発生する可能性があるレベル
【0056】
各実施例、比較例の評価結果を表1、2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニリデン系共重合体70〜97質量%と、ポリオレフィン系樹脂及びジエン系ポリウレタン樹脂より選ばれる熱可塑性樹脂3〜30質量%と、を含有し、
昇温速度2℃/分、振動周波数10Hz、−60〜50℃の条件で動的損失弾性率(E”)を測定したときにピークが二つ以上存在することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム又はシート状の成形物。
【請求項3】
一方向及びこれと直交する方向の120℃における熱収縮率がそれぞれ5%以下であることを特徴とする請求項2記載の成形物。
【請求項4】
厚さ25μm、温度23℃、湿度65%RHの条件で測定した酸素透過度が50ml/(m・day・MPa)以下であることを特徴とする請求項2又は3記載の成形物。
【請求項5】
5℃における低温衝撃吸収エネルギーが0.2J以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の成形物。



【公開番号】特開2010−132773(P2010−132773A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310029(P2008−310029)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】