説明

塩化ビニル系ペースト樹脂組成物およびそれを用いた防水性手袋

【課題】加工性に優れ、成形品が柔らかく耐油性に優れる塩化ビニル系ペースト樹脂組成物および防水性手袋を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系ペースト樹脂100質量部、アジピン酸系ポリエステル80〜150質量部、沸点が150〜220℃の芳香族系溶剤7〜55質量部および脱泡剤0.01〜0.2質量部からなる塩化ビニル系ペースト樹脂組成物であって、手型をこの塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の浴槽に浸漬し、引き上げ、加熱処理して防水性手袋を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工後の油抽出分が少なく、加工性と耐油性に優れた塩化ビニル系ペースト樹脂組成物およびそれを用いた防水性手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、塩化ビニル系ペースト樹脂にジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)あるいはブチルベンジルフタレート(BBP)などの可塑剤を配合して床材、壁材、フレコン、手袋などに使用されている。特に塩ビ樹脂製手袋や繊維製手袋の表面を塩化ビニル樹脂で被覆した防水性の手袋は、家庭用、食品加工用、医療用、精密工業用などさまざまな分野で使用されている。また手袋としては軟質塩化ビニル系樹脂の他に、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂や天然あるいは合成ゴムなどが用いられるが、柔らかく使用感が良いことと、価格が安価であること、加工性が高いことから軟質塩化ビニル系樹脂が使用されることが多い。
【0003】
先述のとおり、軟質塩化ビニル系樹脂には可塑剤が含まれており、フタル酸エステルやアジピン酸エステル、クエン酸エステル系可塑剤、および安息香酸エステル系可塑剤、アクリル共重合体が知られている(例えば特許文献1、2、3)。
【0004】
中でもフタル酸エステルはバランスの取れた諸物性を有し、ディップ成形、シャワー成型加工などに適している。しかし、フタル酸エステルの中には特にDOPのように、調理用極薄手袋への使用制限が実施されているものがあり、産業界の動向としてDOPなどのフタル酸エステル系可塑剤に代わる優れた性能の可塑剤の開発が望まれている。
【0005】
このため、例えば、クエン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル、安息香酸エステル系可塑剤、アクリル共重合体が一部用途では代替可塑剤として使用されているが、非移行性、耐油性、非揮発性、耐候性などの点で不十分であり問題であった。
【0006】
また、ポリエステル系可塑剤(例えば特許文献4、5)は、非移行性、耐油性、非揮発性および耐候性が必要とされる用途において優れた性能を有しているが、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物にポリエステル系可塑剤を用いた場合、DOPなどの芳香族ジカルボン酸エステルと比べて粘度が高いため、製品の厚みが不均一となり易く従来と同等の成形品を得ることが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、粘度を下げる目的でアジピン酸ジイソノニル(DINA)などを併用し低粘度化を行なっているが、用途によっては、DINAの相溶性、移行性および耐油性が問題になり易い傾向にある。
【0008】
また、粘度を下げる目的でシクロヘキサン系ジカルボン酸ジエステルを使用した場合(特許文献6)でも耐油性は不十分である。
従って、ポリエステル系可塑剤を用いた塩化ビニル系ペースト樹脂組成物では、高粘度であるため、ポリエステル系可塑剤を主に用いた手袋は実用化に至っていないという問題があった。
【特許文献1】特開平9−291118
【特許文献2】特開2002−194159
【特許文献3】特開2005−126860
【特許文献4】特開平4−185634
【特許文献5】特開2004−161801
【特許文献6】特開2003−277561
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、加工性に優れ、成形品が柔らかく耐油性に優れる塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を提供すること、また前述の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を成形してなる防水性手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記のような課題を解決するために鋭意研究の結果、塩化ビニル系ペースト樹脂にアジピン酸系ポリエステルと沸点が150〜220℃の芳香族系溶剤および脱泡剤を配合することで上記目的を達成することを見出した。
【0011】
さらに、本発明者は、上記配合物に手型を浸漬し、引上げ、加熱処理することで防水性に優れたアンサポート手袋が得られることを見出した。また、繊維製手袋原手に上記配合物を塗布、加熱処理することで防水性に優れたサポート手袋が得られることを見出した。
【0012】
即ち、本発明の請求項1に記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、塩化ビニル系ペースト樹脂100質量部、アジピン酸系ポリエステル80〜150質量部、沸点が150〜220℃の芳香族系溶剤7〜55質量部および脱泡剤0.01〜0.2質量部からなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の防水性手袋は、手型を請求項1記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の浴槽に浸漬し、引き上げ、加熱処理して得られることを特徴とする。
請求項3に記載の防水性手袋は、繊維製手袋に請求項1記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を塗布、加熱処理して得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、配合して作られた本発明の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、加工性が高く、耐油性を有するものであり、この塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を用いて成形する際に組成物の浴槽に浸漬し、引き上げ、加熱処理させることで耐油性を有するアンサポート手袋を提供することができる。
【0015】
また、上記塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を用いて、繊維性の編み手袋に塗布、加熱処理させることで耐油性を有する丈夫な防水性手袋を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、塩化ビニル系ペースト樹脂100質量部、アジピン酸系ポリエステル80〜150質量部、芳香族系溶剤(沸点150〜220℃)7〜55質量部および脱泡剤0.01〜0.2質量部からなる塩化ビニル系ペースト樹脂組成物であることを特徴とする。
【0017】
アジピン酸系ポリエステルは可塑剤として使用されるが、成形品の耐油性を高め、成形品の油抽出分の低下をもたらす点で優れている。また、その使用量は成形品に柔らかい風合いを持たせるために、80〜150質量部配合する。この可塑剤の含有量が80質量部未満では、得られた成形品は硬くなってしまい好ましくない。アジピン酸ポリエステル系可塑剤の含有量が150質量部を超えると、組成物がゲル化せず成形ができない。さらに、好ましくは90〜140質量部であり、より好ましくは95〜130質量部である。
【0018】
アジピン酸系ポリエステルの分子量は高いほど高粘度になるが、油への溶解性が低く抽出されにくい。平均分子量は1000〜6000が好ましく、より好ましくは1500〜5000、さらに好ましくは2000〜4000である。
【0019】
アジピン酸系ポリエステルの可塑剤はジカルボン酸であるアジピン酸と、ジオール成分としての、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオールあるいは3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどをその分子量調整成分とともに重縮合して得られ、市販品としては大日本インキ化学工業株式会社製のポリサイザー W−2610(但しポリサイザーは登録商標)、旭電化工業株式会社製のアデカサイザー PN−7650、PN−7550(但しアデカサイザーは登録商標)、ランクセス株式会社製のUltramoll IV(但しUltramollは登録商標)などがある。
【0020】
手袋用途に対する塩化ビニル系ペースト樹脂組成物用希釈剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系溶剤が知られている。しかし、フタル酸系可塑剤に比べアジピン酸系ポリエステルは粘度が高く溶解度が低いため、パラフィン系、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤では相分離してしまう。従って、アジピン酸系ポリエステル以外の可塑剤も配合しなければならず、耐油性が劣る結果となる傾向がある。ナフテン系溶剤でも少量であれば混ざるが、加工可能な粘度まで下げることは難しく、また加工可能な粘度まで下がった場合でも多くの添加量を必要とする場合が多く、揮発時の発泡によりフィルム中に気泡を発生する傾向にある。そこで、鋭意研究の結果、芳香族系溶剤がアジピン酸系ポリエステルと混合しやすく、また粘度を下げやすいことを見出した。さらに芳香族系溶剤はナフテン系に比べゆっくりと蒸発する傾向にあり、ナフテン系と同じ沸点においても気泡を発生しにくい傾向にあることを見出した。
【0021】
従って芳香族系溶剤は配合物の粘度を下げるために7〜55質量部加える。7質量部未満では配合剤の粘度が低下せず加工性が悪い傾向にある。溶剤は加工中にゆるやかに揮発するが、55質量部を超えると揮発量が多くなり成形品に気泡が発生する傾向があり好ましくない。芳香族系溶剤の配合量は好ましくは10〜50質量部であり、15〜45質量部がより好ましい。
【0022】
芳香族系溶剤の沸点は、加工物の到達温度が160〜170℃であることから150〜220℃が好ましい。沸点が150℃未満のときは加工中の揮発速度が速く、成形物中に揮発による気泡を形成してしまう傾向がある。また220℃以上の沸点を持つ希釈剤も使用可能であるが、成形後も成形品中に残留しブリード現象の原因になることもあり、また油に抽出される傾向もある。従って、芳香族系溶剤の沸点は、より好ましくは155〜210℃であり、さらに好ましくは160〜200℃である。
【0023】
市販品の芳香族系溶剤としてはイプゾール 100(出光興産株式会社製、但しイプゾールは登録商標、沸点159〜172℃)、SOLVESSO 100(エクソン化学株式会社製、但しSOLVESSOは登録商標、沸点164〜176℃)などがあり、これらを使用することができる。
【0024】
また、脱泡剤は塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の気泡の噛み込みを防止するために0.01〜0.2質量部配合する。0.01質量部未満では、気泡の噛み込みを防止することができにくい傾向にある。0.2質量部を超えると、ペーストゾルがはじいてしまい、均一な膜を形成することができにくい傾向がある。よって好ましくは0.02〜0.15質量部であり、より好ましくは0.03〜0.1質量部である。
【0025】
このような脱泡剤として市販品にはBYK−3105(ビックケミージャパン株式会社製、メチルアルキルポリシロキサン、但しBYKは登録商標)、KS−66(信越化学工業株式会社製、ジメチルポリシロキサン)などがあり、これらを使用することができる。
【0026】
上記塩化ビニル系ペースト樹脂組成物には粘度調節剤を配合することができる。その使用量は塩化ビニルペースト樹脂100質量部に対し1〜30質量部が好ましい。30質量部を超えると耐油性が劣る傾向がある。粘度調節剤としては、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが好ましい。粘度調節剤としての機能の他に、ポリエステル系可塑剤、希釈剤の両方との相溶性が高く、希釈剤がポリエステル可塑剤に混ざりやすくする効果を有する。かかる粘度調節剤として市販品にキョーワノール D(協和発酵工業株式会社製、但しキョーワノールは登録商標)がある。
【0027】
なお、本発明にかかわる塩化ビニル系ペースト樹脂組成物には加工性、耐油性を低下させない程度で二次可塑剤、安定剤、増粘剤、顔料などの、各種の添加剤が、必要に応じて所望量含有されることは言うまでもない。
【0028】
以上のようにして得られた塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は加工性が高く、耐油性を有する塩化ビニル樹脂製成形品を作成することができる。その成形は次のようにすることができる。
【0029】
例えば、撥水撥油処理を施した綿糸の編み手袋を手型に被せ、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物をシャワー加工によって手型に塗布した後、200〜240℃の炉で1〜3分間の加熱処理し、170〜220℃の炉で5〜30分間の加熱処理によるキュアを行ない手袋を得ることができる。なお、1〜3分間の加熱処理の後、滑り止め粒子を散布する工程を設けても良いし、指先、掌など強化する工程を設けても良い。そして、処理後、手型から取り外してサポート手袋を提供する。このように上記塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は耐油性を有するサポート手袋を提供するのに好適である。
【0030】
上記の他、例えば塩化ビニル系ペースト樹脂組成物中に手型を浸漬し引き上げた後、200〜240℃の炉で1〜3分間の加熱処理し、170〜220℃の炉で5〜30分間の加熱処理によるキュアを行ない手袋を得ることができる。なお、1〜3分間の加熱処理の後、滑材粒子液を塗布・乾燥する工程を設けても良いし、接着剤を塗布し、制電植毛加工を施す工程を設けても良い。そして、処理後、手型から取り外してアンサポート手袋を提供する。このように上記塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は耐油性を有するアンサポート手袋を提供するのに好適である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例で得られた各サンプル手袋について、加工性、n−ヘプタン抽出(片面100cmにn−ヘプタンを200ml使用し25℃で1時間抽出)後の蒸発残留物(エバポレーターによる濃縮後、105℃で約2時間の蒸発乾固)の評価を行ない、得られた結果を表1に示した。
実施例1
【0032】
塩化ビニル系ペースト樹脂(新第一塩ビ株式会社製、ZEST P21、但しZESTは登録商標)100質量部にアジピン酸系ポリエステル(旭電化工業株式会社製、PN−7550)100質量部、芳香族系溶剤(イプゾール 100、沸点159〜172℃)40質量部、脱泡剤0.05部(BYK−3105)、安定剤(旭電化工業株式会社製、SC−72)3質量部を配合した。
【0033】
配合物の浴槽中に手型を浸漬し、引き抜いた後、230℃で2分間、次いで180℃で10分間の加熱処理を行なった後、室温まで冷却後、手型から反転離型して手袋サンプルを得た。得られたサンプルについて前記の評価を行なった。評価の結果は、加工性が良く(組成物の脱泡性に優れ、手袋の成形性が良く、手袋中の気泡が無い)、n−ヘプタンによる抽出液の蒸発残留物も120ppmと非常に少ないものであった。
実施例2
【0034】
実施例1における塩化ビニル系ペースト樹脂(ZEST P21)100質量部を、塩化ビニル系ペースト樹脂(ZEST EA)100質量部とした以外は実施例1と同じである。
【0035】
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行なった。評価の結果は、加工性が良く(組成物の脱泡性に優れ、手袋の成形性が良く、手袋中の気泡が無い)、n−ヘプタンによる抽出液の蒸発残留物も98ppmと非常に少ないものであった。
比較例1
【0036】
塩化ビニル系ペースト樹脂(ZEST P21)100質量部にジ−2−エチルヘキシルフタレート(株式会社ジェィ・プラス社製、DOP)100質量部、安定剤(SC−72)3質量部を配合した。手袋サンプル作製と評価は実施例1と同じである。評価の結果は、加工性が良かった(組成物の脱泡性に優れ、手袋の成形性が良く、手袋中の気泡が無い)が、n−ヘプタンによる抽出液の蒸発残留物が7210ppmと非常に多いものであった。
比較例2
【0037】
比較例1におけるジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)100質量部をジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)70質量部およびアジピン酸系ポリエステル(PN−7550)30質量部とした以外は比較例1と同じである。手袋サンプル作製と評価は実施例1と同じである。評価の結果は、加工性が良かった(組成物の脱泡性に優れ、手袋の成形性が良く、手袋中の気泡が無い)が、n−ヘプタンによる抽出液の蒸発残留物が1580ppmと非常に多いものであった。
比較例3
【0038】
実施例1において使用した芳香族系溶剤(イプゾール 100)の使用量を5質量部とした以外は実施例1と同じである。
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行なった結果、組成物の脱泡性に優れ手袋中の気泡の発生は無いが、手袋の成形性について肉厚が不均一であるという問題があった。n−ヘプタンによる抽出液の蒸発残留物は122ppmと非常に少ないものであった。
比較例4
【0039】
実施例1において使用した芳香族系溶剤(イプゾール 100)の使用量を60質量部とした以外は実施例1と同様の実施例1と同じである。
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行なった結果、組成物の脱泡性および手袋の成形性に優れていたが、手袋中に気泡が発生していた。
比較例5
【0040】
実施例1において使用した芳香族系溶剤(イプゾール 100)に代えて出光興産株式会社製、キシレン(沸点138〜144℃)を40質量部とした以外は実施例1と同じである。
【0041】
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行なった結果は、組成物の脱泡性および手袋の成形性に優れていたが、手袋中に気泡が発生していた。
比較例6
【0042】
実施例1において使用した芳香族系溶剤(イプゾール 100)に代えてエクソン化学株式会社製、SOLVESSO 200(沸点231〜278℃)を40質量部とした以外は実施例1と同じである。
【0043】
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行なった結果、加工性が良かった(組成物の脱泡性に優れ、手袋の成形性が良く、手袋中の気泡が無い)が、n−ヘプタン抽出液の蒸発残留物は257ppmと多く発生した。
比較例7
【0044】
実施例1において使用した芳香族系溶剤(イプゾール 100)に代えてパラフィン系溶剤である出光興産株式会社製、IPソルベント 1620(沸点166〜202℃)を40質量部とした以外は実施例1と同じである。
【0045】
溶剤と可塑剤との相溶性が悪く、相分離してしまい手袋を作成することはできなかった。
比較例8
【0046】
実施例1において使用した芳香族系溶剤(イプゾール 100)に代えてナフテン系溶剤であるエクソン化学株式会社製、EXXSOL D−40(沸点153〜196℃、但しEXXSOLは登録商標)を40質量部とした以外は実施例1と同じである。
【0047】
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行なった結果、溶剤と可塑剤との相溶性が悪く、均一なペーストゾルを形成するのに時間がかかった上、手袋の成形性が悪く手袋中に気泡が発生してしまった。
比較例9
【0048】
実施例1において使用した脱泡剤(BYK−3105)の量を0.005質量部とした以外は実施例1と同じである。
得られたサンプルについて実施例1と同様の評価を行なった結果、手袋の成形性は良いが、組成物の脱泡性が悪く、手袋中に気泡が発生してしまった。n−ヘプタンによる抽出液の蒸発残留物は120ppmと非常に少ないものであった。
比較例10
【0049】
使用した脱泡剤(BYK−3105)の量を0.25質量部とした以外は実施例1と同じである。
手型にペーストゾルを塗布したところハジキが発生し、手袋を形成することはできなかった。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系ペースト樹脂100質量部、アジピン酸系ポリエステル80〜150質量部、沸点が150〜220℃の芳香族系溶剤7〜55質量部および脱泡剤0.01〜0.2質量部からなることを特徴とする塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。
【請求項2】
手型を請求項1記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の浴槽に浸漬し、引き上げ、加熱処理して得られることを特徴とする防水性手袋。
【請求項3】
繊維製手袋に請求項1記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を塗布、加熱処理して得られることを特徴とする防水性手袋。

【公開番号】特開2007−314703(P2007−314703A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147522(P2006−147522)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(591161900)ショーワグローブ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】