説明

塩味料およびその製造方法

【課題】塩化カリウムのエグ味を感じさせない塩味料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】核粒子である塩化カリウムの表面が塩化ナトリウムの被覆層で覆われ、該被覆層の表面における塩化ナトリウム結晶の個数平均径が10〜100μmであることを特徴とする塩味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の食塩に代わる塩味料およびその製造方法に関する。詳しくは、低ナトリウム塩及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からナトリウムを過剰摂取することによって、高血圧などの生活習慣病を招くことが知られている。また、ナトリウムはナトリウムイオンと塩素イオンが結合した食塩の形で摂取され、現在成人1人当たりの食塩摂取量は、約12g/dayである。しかし、近年における消費者の健康志向、厚生労働省の食塩摂取量10g/day未満の推奨及び食塩感受性の高い患者の事を考慮した食生活の改善が必要となってきている。食生活の改善方法としては、カリウムにナトリウムを排泄する作用がある塩化カリウムが昭和57年に食品添加物に指定されてからは、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに替えた低ナトリウム塩が多数開発されている。しかし、塩化カリウムは、独特のエグ味を有しているので、食品の味が損なわれるという課題がある。そのため、かかる課題の解決が望まれている。
【0003】
例えば、塩化カリウムのエグ味を抑制するために、クエン酸塩、コンブエキス、ポリ−γ−グルタミン酸等の成分を添加する方法が開示されている(特許文献1〜3)。しかし、どの添加剤も異味が添加され、本来の塩化ナトリウムとは異なる味となる。また、塩化ナトリウムと塩化カリウムの単なる混合物に各添加剤を添加又はコーティングしているだけなので、粒径比及び比重差により偏析が生じ、料理で使用する際には毎回異なる味を有する。特に、固形物として使用(ゆで卵にふりかけて食べる等)する際には、塩化ナトリウムと塩化カリウムと各添加剤が口の中で同時に溶解するので、先味及び後味において塩化カリウムのエグ味を抑制することはできない。
【0004】
また、塩化カリウムと溶解速度の速いフレーク塩との混合によって塩化カリウムのエグ味を抑制する方法が開示されている(特許文献4)。しかし、溶解速度の速いフレーク塩によって、塩味を強くすることは可能であるが、単に塩化ナトリウムと塩化カリウムを混合しただけあるため、上記と同様に先味及び後味において十分に塩化カリウムのエグ味は抑制できない。また、単なる混合物であるため、粒径比及び比重差により偏析が生じ、使用時において毎回異なる味を有する。
【0005】
更に、塩化カリウムと塩化ナトリウムを押出し造粒することにより、塩化カリウムの露出を抑え、塩化カリウムのエグ味を抑制する方法が開示されている(特許文献5)。しかし、造粒物の表面には、塩化カリウムが露出しているので、十分に塩化カリウムのエグ味を抑制できていない。
【0006】
また、塩化カリウムを胃溶性皮膜剤で薄膜コーティングした後に塩化ナトリウムでコーティングした三層構造により塩化カリウムのエグ味を抑制する方法が開示されている(特許文献6)。この方法は、塩化カリウムの表面を胃溶性皮膜でコーティングしているので、経口摂取においては、最外層の塩化ナトリウムだけを口の中で溶解させ、胃溶性皮膜剤でコーティングした塩化カリウムは口の中で溶出することなく飲み込んで胃で溶出させるDDS(ドラッグデリバリーシステム)製剤である。しかし、塩化ナトリウムが溶出した後は、口の中に固形物が残り違和感を感じる。更に、塩化ナトリウムは被覆層を形成することが難しいと共に、できたとしても被覆層が脆い。
【0007】
更に、塩化カリウムの表面を塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドでコーティング(中間層被膜)した後に塩化ナトリウム及び糖類でコーティング(表層被膜)した三層構造により塩化カリウムのエグ味を抑制する方法が開示されている(特許文献7)。この方法では、糖類を用いてコーティングするので、塩化ナトリウムの被覆層を形成することは容易になるが、添加物による異味で本来の塩化ナトリウムとは異なる味となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−189709号公報
【特許文献2】特開平6−7111号公報
【特許文献3】WO2008/146491公報
【特許文献4】特開2000−262241号公報
【特許文献5】特開2008−228715号公報
【特許文献6】特開昭59−146564号公報
【特許文献7】特開2008−289386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような理由から、食塩に近い味を呈する塩味料が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを含む低ナトリウム塩において、使用時及び保存時において塩化カリウムと塩化ナトリウムの含量均一性に優れており、塩化カリウムのエグ味を抑制する添加剤を添加しなくとも塩化カリウムのエグ味を感じない塩味料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上述した課題を解決するために、核粒子である塩化カリウムの表面を塩化ナトリウムの被覆層で覆うことによって、上記の課題が達成される事を見出した。
【0012】
即ち、本発明(1)は、核粒子である塩化カリウムの表面が塩化ナトリウムの被覆層で覆われ、該被覆層の表面における塩化ナトリウム結晶の個数平均径が10〜100μmであることを特徴とする塩味料である。
【0013】
更に、本発明(2)は、該被覆層がにがりを含む、前記発明(1)記載の塩味料である。
【0014】
また、本発明(3)は、塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比が90:10〜10:90である、前記発明(1)または(2)記載の塩味料である。
【0015】
更に、本発明(4)は、前記発明(1)〜(3)のいずれか1つに記載の塩味料を含む、調味料および食品である。
【0016】
また、本発明(5)は、下記の工程:
〔1〕塩化カリウム粒子に塩化ナトリウム水溶液をスプレーしながら乾燥造粒し、塩化ナトリウムを含む噴霧層を形成する工程;および
〔2〕過飽和の塩化ナトリウム水溶液を用いて塩化ナトリウムを結晶成長させることにより、塩化ナトリウムを含む晶析層を形成する工程
を含む、塩味料の製造方法
である。
【0017】
更に、本発明(6)は、前記発明(5)記載の製造方法によって得られる、塩味料である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る塩味料は、核粒子である塩化カリウム表面を塩化ナトリウムの被覆層でコーティングした造粒物にすることによって、含量均一性が極めて良好(例えば、試験例5において、5gのサンプリングを4回行ったところほぼ均一な値を示した)であり、塩化カリウムのエグ味を感じない。
【0019】
また、本発明の製造方法によれば、従来のコーティング方法と比べて被覆層が強固な造粒物となり、造粒工程後の移送、乾燥、充填等で被覆層が剥離して微粉末が発生しないのでハンドリングが極めて優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、単粒子の核粒子の表面を被覆層でコーティングした状態を示したイメージ図である。尚、図中、Aは被覆層、Bは単粒子の核粒子を示す。
【図2】図2は、複数の核粒子の表面を被覆層でコーティングした状態を示したイメージ図である。尚、図中、Aは被覆層、Bは単粒子の核粒子、1は塩化カリウム、2は塩化ナトリウムを示す。
【図3】図3は、塩化カリウム粒子と塩化ナトリウム粒子が単に混合している状態を示したイメージ図である。尚、Cは塩化カリウム、Dは塩化ナトリウムを示す。
【図4】図4は、塩化カリウム粒子と塩化ナトリウム粒子が凝集した状態を示したイメージ図である。尚、Cは塩化カリウム、Dは塩化ナトリウムを示す。
【図5】図5は、本発明の造粒物を製造するのに好適に用いられる晶析装置を説明する図である。
【図6】図6は、実施例2で得られた造粒物の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例2で得られた造粒物の核粒子(塩化カリウム)の元素分析結果(エネルギー分散型X線分析装置(EDX))を示す。
【図8】図8は、実施例2で得られた造粒物の被覆層(塩化ナトリウム)の元素分析結果(エネルギー分散型X線分析装置(EDX))を示す。
【図9】図9は、比較例1で得られた造粒物の表面状態の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、比較例2で得られた造粒物の表面状態の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】図11は、比較例3で得られた造粒物の表面状態の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】図12は、実施例1で得られた造粒物の表面状態の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】図13は、実施例2で得られた造粒物の表面状態の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、実施例3で得られた造粒物の表面状態の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る塩味料は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを必須成分として含むものである。但し、この必須成分以外のにがり、固結防止剤、添加物を含有していてもよい。
【0022】
本発明に係る塩味料の特徴は、核粒子である塩化カリウムの表面を塩化ナトリウムの被覆層で覆っていることである。
【0023】
先ず、本発明に係る核粒子に関して説明する。核粒子とは、造粒の際に核となる粒子のことをいう。また、該核粒子に使用する塩化カリウムは、特に限定されないが、例えば、通常市販されている食品添加物用の塩化カリウムや日本薬局方用の塩化カリウムで目的は十分達成できる。
【0024】
次に、被覆層に関して説明をする。被覆層とは、核粒子の表面をコーティングしている層をいい、核粒子の表面をコーティングすることによって、使用時及び保存時における含量均一性に優れた造粒物を調製することができる。また、該コーティングに使用する塩化ナトリウムは、特に限定されないが、例えば、イオン交換膜法、天日製塩、塩浜等の一般的な方法により得られ、通常市販されている塩化ナトリウムで目的を十分達成でき、にがり成分を含有していてもよい。
【0025】
塩味の強さは塩化ナトリウム濃度(塩化ナトリウム含量)に依存するが、本発明による塩化カリウムの表面を塩化ナトリウムでコーティングした造粒物(例えば、図1又は図2)は、単なる混合により得られる塩化カリウムと塩化ナトリウムの混合物(例えば、図3)や、塩化カリウムと塩化ナトリウムの混合造粒物(例えば、押出し造粒や流動層造粒による凝集造粒物、図4)と比べて、先味において、塩化カリウムとの接触を抑制することができるため、塩化カリウムのエグ味を抑制できる上に、塩味を強く感じることができる。
【0026】
本発明に係る塩味料は、典型的には、顆粒及び/又は粉末である。そして、その平均粒子径は、約125〜1550μmであることが好適である。また、塩味料の形態は、単粒子の核粒子の表面に被覆層が形成された単核コーティング(例えば、図1)であってもよいし、複数の核粒子が被覆層を介して結合した凝集造粒コーティング(例えば、図2)であってもよい。尚、本発明における平均粒子径の測定は、例えばロボットシフター(株式会社セイシン企業製;RPS−85c)を用いて測定できる。
【0027】
本発明による塩味料における塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比は、好ましくは90:10〜10:90の範囲である。
【0028】
次に本発明に係る塩味料の必須成分以外のにがり、固結防止剤、添加物について説明する。にがりとは、一般的に、海水からの製塩工程において副産物として分離されるものであり、カルシウム塩(塩化カリウム、硫酸カルシウム)、マグネシウム塩(塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム)、カリウム塩(塩化カリウム、硫酸カリウム)、リン、鉄、亜鉛、マンガン等を含む液状物、その乾燥物、又は上記成分を人工的に配合することによって調製されたものである。
【0029】
固結防止剤とは、湿度の影響によって塩が固結して塊になることを防止する添加剤であり、その成分としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、でん粉、クエン酸鉄アンモニウムが挙げられる。
【0030】
添加剤とは、第一次機能(栄養機能)、第三次機能(健康性機能・生体調節機能)を有した食品のことである。つまり、一次機能とは、生命現象を営むために必要不可欠なエネルギー源や生体構成成分の補給に必要な食品成分(栄養素)としての機能であり、成分としては、糖質、脂質、タンパク質、ビタミンを挙げることができる。また、三次機能とは、体調を整える機能で、病気の予防や健康の維持増進に果す機能であり、成分としては、高血圧予防、糖尿病予防、高脂血症予防、動脈硬化予防、肥満予防、老化予防、抗酸化作用、抗アレルギー作用等を有する成分であれば特に限定されないが、好適には、天然ポリフェノール類、タンパク質、アミノ酸類、糖類、不飽和脂肪酸、テンペン類、オクタコサノール、カプサイシン、セラミド、レシチン、ノビレチン、タンゲレチン、モナコリン、スルフォラファンを挙げることができる。必須成分以外のにがり、固結防止剤、添加物については、単独で乃至は複数組み合わせて用いてもよい。更に、必須成分以外のにがり、添加物については、被覆層中に存在させても、層構造の最外層に存在させても、又は単に混合してもよい。
【0031】
次に、本発明に係る塩味料の使用方法につき説明する。本発明に係る塩味料は、食品以外にも、化粧品として用いることができる。ここで、化粧品とは、トイレタリー(例えば、石鹸、歯磨き粉、シャンプー、リンス、シェービングフォーム、口中清涼剤、制汗剤、エステティック用品)及びコスメティック(例えば、洗顔石鹸、化粧水、栄養クリーム、コールドクリーム、乳液、パック等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅、頬紅、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、マニキュア等の仕上げ化粧品、男性用化粧品、ボディ化粧品、薬用化粧品等の特殊用途化粧品、香水、オーデコロン等のフレグランス、ヘアートリートメント、ポマード、ヘアークリーム、シャンプー、リンス等の頭髪用化粧品、エステティック用品)等を意味する。
【0032】
本発明に係る塩味料は、そのまま用いてもよいし、健康食品の加工用や健康食塩として、日常的な食卓塩(例えば、低ナトリウム塩、ゴマ塩、塩胡椒、グルタミン酸ナトリウムを含有した味塩)として使用してもよい。さらには、調味料(例えば、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、味噌)、調味食品(例えば、ふりかけ、インスタント味噌汁、インスタントスープ、レトルト惣菜)、調理済食品(例えば、冷凍食品)、ステープル(例えば、シリアル、パン、即席めん、スナックめん)、農産加工品(例えば、漬物)、水産加工品(例えば、ツナ缶詰、魚介類缶詰、魚肉ハム・ソーセージ、佃煮、魚類の干物)、畜産加工品(例えば、ソーセージ類、ハム類)、乳油製品(例えば、バター、マーガリン、チーズ)、菓子(例えば、スナック菓子)、果実飲料(例えば、野菜飲料)などにおける添加物として使用することも可能である。
【0033】
次に、本発明の塩味料の製造方法を説明する。詳しくは、塩化カリウムの表面を塩化ナトリウムでコーティングする方法であり、より詳しくは、以下の通りである。
【0034】
本発明の塩味料の製造方法は、下記工程:
〔1〕塩化カリウム粒子に塩化ナトリウム水溶液をスプレーしながら乾燥造粒し、塩化ナトリウムを含む噴霧層を形成する工程;および
〔2〕過飽和の塩化ナトリウム水溶液を用いて塩化ナトリウムを結晶成長させることにより、塩化ナトリウムを含む晶析層を形成する工程
を含む。したがって、本発明の被覆層は、噴霧層と晶析層を有する。
【0035】
<工程〔1〕>
本発明に係る工程〔1〕の塩化ナトリウムを含む噴霧層を形成する方法について説明する。塩化ナトリウムを含む噴霧層の形成は、遠心流動コーティング造粒装置(例えば、高速攪拌造粒装置)、流動層コーティング装置やパンコーティング装置等を用いて実施することができ、好ましくは、流動層コーティング装置を用いる。
【0036】
流動層コーティング装置は、底部の通気構造から、流動層コーティング装置(一般的なトップスプレー式流動層やサイドスプレー式流動層)、噴流層コーティング装置(ドラフト管付)、攪拌転動流動層(転動流動層型、攪拌転動流動層型、回転円板付流動層型)コーティング装置の三つに分類される。各装置は、調製しようとする造粒物によって適宜選定することができる。例えば、単粒子コーティングであれば、噴流層コーティング装置を使用することが好ましい。
【0037】
本発明に係る工程〔1〕の塩化カリウム粒子とは、固体状態の塩化カリウムのことであり、平均粒子径は特に限定されるものではないが、ハンドリング面を考慮すると、平均粒子径は100〜1500μmが好ましく、100〜700μmがより好ましく、200〜700μmがさらに好ましい。尚、塩化カリウムの平均粒子径が小さいほど、口中において塩化カリウムの溶解速度が速くなるので塩化カリウムのエグ味を抑制できると推測する。
【0038】
本発明に係る工程〔1〕の塩化ナトリウム水溶液の濃度は、20〜28重量%が好ましく、25〜27重量%がより好ましい。該水溶液の濃度が低くなると、水溶液の量が多くなるため塩化ナトリウムの噴霧層を形成する時間が長くなる。また、28重量%以上より高いと塩化ナトリウムが100℃では溶解しなくなり懸濁液となる。
【0039】
工程〔1〕で形成する噴霧層の厚みは、25μm以上が好ましく、25〜50μmがより好ましい。該噴霧層の厚みが25μm未満になると、被覆が不完全であるため、工程〔2〕の操作により噴霧層が剥離・脱落して核粒子の塩化カリウムの溶出率が20%以上となり、含量均一性や生産コストに問題が生じる。他方、噴霧層の厚みが50μm以上になると、核粒子の塩化カリウムの溶出率を10%以下に抑制できるが、工程〔1〕における塩化ナトリウムを含む噴霧層を形成する時間が長くなり、やはり生産コストが問題となる。噴霧層とは、工程〔1〕で得られた造粒物の被覆層を意味する。ここで、溶出率とは、工程〔2〕において、塩化カリウムが結晶成長中に溶出する割合のことである。尚、噴霧層の厚みは以下の式より算出する。
噴霧層の厚み[μm]=[{(X×Z×P/Y×Q)+X1/3−X]/2
X:KCl平均粒子径[μm]
Y:工程〔1〕で使用するKClの重量[g]
Z:KCl比重(1.98)[g/cm
P:噴霧層中のNaCl重量[g]
Q:NaCl比重(2.16)[g/cm
尚、Pはイオンクロマトグラフで測定した結果である。
【0040】
本発明に係る工程〔1〕の運転条件に関して説明する。先ず造粒温度及び乾燥温度は、25〜200℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。温度が低くなると、コーティング時間が長くなり、100℃以上になると、排出等のハンドリングが困難となる。
【0041】
次に、風量に関しては、一般的条件の範囲内で目的は充分達成される。ただし、風量が少ないと核粒子同士が凝集しやすくなる。また、多くなると水溶液中の成分がスプレードライ現象を生じやすくなり微粉末が増える。更に、各粒子が受ける衝撃が大きくなるため微粉末が生じやすくなる。
【0042】
<工程〔2〕>
本発明に係る工程〔2〕は、工程〔1〕で得られる造粒物の表面に存在する塩化ナトリウム粒子を核として、過飽和の塩化ナトリウム水溶液から塩化ナトリウムの結晶を成長させて晶析層を形成する工程である。大量生産スケールにおいては、工程〔1〕と工程〔2〕で被覆を行うことにより、工程〔1〕のみで被覆を行うよりも短時間で被覆層を形成できる。また、塩化ナトリウムの結晶を成長させることにより、移送、乾燥、充填等で被覆層が剥離して微粉末が発生しない強固な被覆状態となる。このような結晶成長をさせる装置としては、一般的な晶析装置が使用でき、例えば、クリスタル−オスロ型晶析装置、逆円錐型晶析装置、DTB型晶析装置、DP型晶析装置を用いてもよいが、好ましくは、図5の逆循環流動式晶析装置(以下、単に晶析装置ともいう)である。
【0043】
本発明に係る工程〔2〕の飽和溶液に関して説明する。溶質は工程〔1〕と同じく塩化ナトリウムであり、図5の晶析装置を使用する場合は、槽aにおいて攪拌モーターbにより飽和溶液が調製される。また、過剰量の溶質が槽aにあることが好ましい。槽aにおける飽和水溶液の温度は、20〜120℃が好ましい。
【0044】
本発明に係る工程〔2〕の過飽和溶液に関して説明する。図5の晶析装置を使用する場合は、槽aで調製された溶液がポンプcを介して冷却器dで冷却されて過飽和溶液が調製される。過飽和溶液の過飽和度の値が大きいほど結晶の成長速度は大きくなる。ここで、過飽和度とは、例えば、90℃で飽和にした塩化ナトリウム飽和濃度とそれを80℃に冷却した時の塩化ナトリウム飽和濃度の差である。
【0045】
本発明に係る工程〔2〕の晶析条件に関して説明する。先ず、晶析の温度は10〜50℃が好ましい。10℃以下になると、結晶成長速度が小さくなり、核粒子の塩化カリウムの溶出率が高くなる。ポンプの流量はカラムから造粒物が溢流しない程度が好ましいが、流動状態が激しいと結晶が破砕してしまうので、穏やかな流動状態が好ましい。
【0046】
尚、工程〔2〕で得られた造粒物を乾燥するタイミングについては特に限定しないが、工程〔2〕の直後に乾燥することが好ましい。また、乾燥で使用する乾燥装置としては特に規定しないが、流動層乾燥機が好適である。操作条件は、通常乾燥する一般的条件の範囲内で目的は充分達成される。
【0047】
工程〔2〕後に得られる造粒物の塩化ナトリウム被覆層の量は、工程〔1〕で得られた噴霧層の量と工程〔2〕で得られた晶析層の量の総和となり、塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比が90:10〜10:90の範囲であればよい。
【0048】
また、工程〔2〕後に得られる造粒物の被覆層表面における塩化ナトリウム結晶の個数平均径は、10〜100μmであることが好ましい。従来の方法(流動層造粒等)では、造粒物表面の粒子の個数平均径が8μm以下となるので、口内での溶解速度が速く非常に塩辛い味となる。しかし、本発明では、得られる造粒物の被覆層表面の結晶は個数平均径が大きいので、口内での溶解速度が遅くなり本来の塩の味に近くなる。なお、本発明による塩化ナトリウムの結晶成長には成長限界があり、その限界値は100μm程度である。従来の被覆層を形成する造粒方法としては、噴霧溶液を核粒子に対して噴霧する方法(流動層造粒)があるが、噴霧溶液を微小液滴として核粒子に付着させて被覆層を形成するので、被覆層表面の塩化ナトリウムを個数平均径が10μm以上の結晶とすることは困難である。さらに、他の従来の方法としては、攪拌転動流動層や表面改質装置に塩化カリウムと塩化ナトリウムを仕込み、水を噴霧しながら塩化カリウムの表面を塩化ナトリウムで被覆する方法もあるが、この方法では核粒子と被覆層粒子の平均粒子径の比率を10:1にするためには、例えば平均粒子径100μmの塩化カリウムを使用する場合、平均粒子径10μmの塩化ナトリウムが必要であり、塩化ナトリウムを粉砕して使用しなければならず、本発明のように球から立方形のような結晶にはならない。また、塩化ナトリウムの平均粒子径が100μm以下の場合、塩化ナトリウムが凝集しやすく、造粒時のハンドリングが問題である。
【0049】
本発明に係る個数平均径とは、走査型電子顕微鏡で倍率1000倍にて被覆層表面における塩化ナトリウム結晶を観察後、Feret径を測定し、以下の式より算出した値である。
個数平均径[μm]=Σ(nd)/Σn
n[個]:ある粒子径を有する粒子の個数
d[μm]:ある粒子の粒子径
以下に本発明の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0050】
工程〔1〕
塩化ナトリウム(ナイカイ塩業株式会社製;ナイカイ食塩 NaCl純度99.0%以上)300gを精製水900gに溶解して25重量%水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製;FL−LABO)に、核粒子として塩化カリウム(マナック株式会社製;日本薬局方塩化カリウム)200g(平均粒子径531μm;以下、平均粒子径の測定値は、株式会社セイシン企業製のロボットシフターRPS85cによる)を投入し、給気温度90℃、風量0.4m/min、スプレー圧力0.2MPa、スプレー流量60NL/minの条件下で、前記水溶液を2.3g/minの噴霧速度で5.4hr噴霧しながら乾燥した。造粒後、目開き180μmのJIS標準篩(内径φ200mm;深さ45mm)を用いてスプレードライした粒子を分級した後、イオンクロマトグラフの測定(試験例4の測定方法)により噴霧層中の塩化ナトリウムの重量を測定した結果、154.4g(塩化カリウムの仕込み量を200gとして換算)であった。噴霧層の厚みは、51.85μm(噴霧層の厚み[μm]=[{(531×1.98×154.4/200×2.16)+5311/3−531]/2)であった。
工程〔2〕
図5に示される逆循環流動式晶析装置を使用した。1000mL四つ口フラスコ(槽a)に塩化ナトリウム(ナイカイ塩業株式会社製;ナイカイ食塩 NaCl純度99.0%以上)380.5gと精製水1000gを仕込んで45℃に設定したオイルバスで飽和溶液を調製した。次に、晶析槽e(入口口径:5mm;出口口径:35mm;高さ:165mmの円筒形で下部が円錐型)に工程〔1〕で得られた造粒物20gを仕込んだ後、冷却器dに18〜20℃の冷水を循環させると共に、オイルバスの温度を105℃に設定して120〜200mL/minの速度で槽aの飽和溶液をポンプcを介して冷却器dで冷却して過飽和溶液とし、晶析槽eの下部に供給し、晶析槽eから溢流した溶液は槽aに循環させた。この時の槽aの温度は60〜70℃であり、槽aに戻ってくる水温は冷却器dによる熱交換および放熱を伴って18〜20℃であった。尚、槽eの温度は、槽aに戻ってくる水溶液の温度と同程度であると推測する。また、上記条件で4min運転を行った後、ヌッチェ濾過をし、80℃で乾燥した。得られた造粒物を構成する塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比は、イオンクロマトグラフによる測定値(試験例4の測定方法)より約1:1であった。
【実施例2】
【0051】
工程〔1〕
塩化ナトリウム(ナイカイ塩業株式会社製;ナイカイ食塩 NaCl純度99.0%以上)300gを精製水900gに溶解して25重量%水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製;FL−LABO)に、核粒子として塩化カリウム(マナック株式会社製;日本薬局方塩化カリウム)200g(平均粒子径309μm)を投入し、給気温度90℃、風量0.4m/min、スプレー圧力0.2MPa、スプレー流量60NL/minの条件下で、前記水溶液を2.3g/minの噴霧速度で5.2hr噴霧しながら乾燥した。造粒後、目開き180μmのJIS標準篩(内径φ200mm;深さ45mm)を用いてスプレードライした粒子を分級した後、イオンクロマトグラフの測定(試験例4の測定方法)により噴霧層中の塩化ナトリウムの重量を測定した結果、150.8g(塩化カリウムの仕込み量を200gとして換算)であった。噴霧層の厚みは、29.57μm(噴霧層の厚み[μm]=[{(309×1.98×150.8/200×2.16)+3091/3−309]/2)であった。
工程〔2〕
実施例1の工程〔2〕と同様の操作を行った。尚、運転時間は3minとした。また、得られた造粒物を構成する塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比は、イオンクロマトグラフによる測定値(試験例4の測定方法)より約1:1であった。
【実施例3】
【0052】
工程〔1〕
粗塩化ナトリウム(ナイカイ塩業株式会社製;ナイカイ並塩 NaCl純度95.0%以上であり、にがりを含む)300gを精製水900gに溶解して25重量%水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製;FL−LABO)に、核粒子として塩化カリウム(マナック株式会社製;日本薬局方塩化カリウム)200g(平均粒子径312μm)を投入し、給気温度90℃、風量0.4m/min、スプレー圧力0.25MPa、スプレー流量65NL/minの条件下で、前記水溶液を2.3g/minの噴霧速度で5.3hr噴霧しながら乾燥した。造粒後、目開き180μmのJIS標準篩(内径φ200mm;深さ45mm)を用いてスプレードライした粒子を分級した後、イオンクロマトグラフの測定(試験例4の測定方法)により噴霧層中の塩化ナトリウムの重量を測定した結果、151.1g(塩化カリウムの仕込み量を200gとして換算)であった。噴霧層の厚みは、29.91μm(噴霧層の厚み[μm]=[{(312×1.98×151.1/200×2.16)+3121/3−312]/2)であった。
工程〔2〕
実施例1の工程〔2〕と同様の操作を行った。尚、粗塩化ナトリウムは、ナイカイ塩業株式会社製のナイカイ並塩を使用した。そして、運転時間は4minとした。また、得られた造粒物を構成する塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比は、イオンクロマトグラフによる測定値(試験例4の測定方法)より約1:1であった。
【実施例4】
【0053】
工程〔1〕
塩化ナトリウム(ナイカイ塩業株式会社製;ナイカイ食塩 NaCl純度99.0%以上)300gを精製水900gに溶解して25重量%水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製;FL−LABO)に、核粒子として塩化カリウム(マナック株式会社製;日本薬局方塩化カリウム)200g(平均粒子径531μm)を投入し、給気温度90℃、風量0.4m/min、スプレー圧力0.2MPa、スプレー流量60NL/minの条件下で、前記水溶液を2.3g/minの噴霧速度で2.6hr噴霧しながら乾燥した。造粒後、目開き180μmのJIS標準篩(内径φ200mm;深さ45mm)を用いてスプレードライした粒子を分級した後、イオンクロマトグラフの測定(試験例4の測定方法)により噴霧層中の塩化ナトリウムの重量を測定した結果、75.6g(塩化カリウムの仕込み量を200gとして換算)であった。噴霧層の厚みは、27.68μm(噴霧層の厚み[μm]=[{(531×1.98×75.6/200×2.16)+5311/3−531]/2)であった。
工程〔2〕
実施例1の工程〔2〕と同様の操作を行った。尚、運転時間は11minとした。また、得られた造粒物を構成する塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比は、イオンクロマトグラフによる測定値(試験例4の測定方法)より約1:1であった。
【実施例5】
【0054】
工程〔1〕
塩化ナトリウム(ナイカイ塩業株式会社製;ナイカイ食塩 NaCl純度99.0%以上)300gを精製水900gに溶解して25重量%水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製;FL−LABO)に、核粒子として塩化カリウム(マナック株式会社製;日本薬局方塩化カリウム)200g(平均粒子径531μm)を投入し、給気温度90℃、風量0.4m/min、スプレー圧力0.2MPa、スプレー流量60NL/minの条件下で、前記水溶液を2.3g/minの噴霧速度で1.6hr噴霧しながら乾燥した。造粒後、目開き180μmのJIS標準篩(内径φ200mm;深さ45mm)を用いてスプレードライした粒子を分級後、イオンクロマトグラフの測定(試験例4の測定方法)により噴霧層中の塩化ナトリウムの重量を測定した結果、45.4g(塩化カリウムの仕込み量を200gとして換算)であった。噴霧層の厚みは、17.27μm(噴霧層の厚み[μm]=[{(531×1.98×45.4/200×2.16)+5311/3−531]/2)であった。
工程〔2〕
実施例1の工程〔2〕と同様の操作を行った。尚、運転時間は11minとした。また、得られた造粒物を構成する塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比は、イオンクロマトグラフによる測定値(試験例4の測定方法)より約1:1であった。
【0055】
[比較例1−3]
実施例1−3の工程〔1〕において得られた造粒物を、それぞれ比較例1−3とした。
【0056】
[比較例4]
塩化ナトリウム100g(平均粒子径310μm)と塩化カリウム100g(平均粒子径320μm)を攪拌混合機(深江パウテック株式会社製;LFS−GS−2Jハイスピードミキサー)に仕込み、撹拌混合を行った。
【0057】
[試験例1]
実施例2で得られた造粒物の走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製)による被覆層の断面構造を図6に示す。図6により、被覆層を有していることが確認できた。また、核粒子及び被覆層の元素分析結果(エネルギー分散型X線分析装置(EDX))を図7及び図8にそれぞれ示す。これらの図より、核粒子が塩化カリウムであり、被覆層が塩化ナトリウムであることが確認された。
【0058】
[試験例2]
実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2及び比較例3で得られた造粒物の走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製)による表面状態を、図9、図10、図11、図12、図13および図14にそれぞれ示す。
【0059】
[試験例3]
試験例2において、走査型電子顕微鏡で倍率1000倍にて粒子を観察し、200個の粒子について表面結晶のFeret径を測定し、個数平均径を求めた。どのサンプルにおいても、数箇所で結晶形状を観察し、それぞれ200個の粒子について測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例1〜3では被覆層を形成する表面状態は微粒子(約数μm)の集合体であるが、実施例1〜3では、粗大粒子(約10μm以上)の集合体であることが確認された。
【0062】
[試験例4]
実施例1、2、4及び5の工程〔2〕において塩化カリウムの溶出率を以下の式で算出した。
溶出率[%]=[[A−{B/(1+C)}/A]]×100
A:工程〔2〕で仕込んだ工程〔1〕の造粒物中のKCl重量[g]
B:工程〔2〕の乾燥後の重量[g]
C:イオンクロマトグラフで測定した工程〔2〕における(NaCl重量/KCl重量)の割合[g]
その結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
尚、イオンクロマトグラフの測定方法に関しては、工程〔1〕及び〔2〕のサンプル5.0000gを水に溶かして正確に100mlとし、これを50倍希釈してNa+、K+の各電解質濃度を東ソー株式会社製のイオンクロマトグラフにより測定してKCl及びNaCl重量を算出した。イオンクロマトグラフの分析条件を下記に示す。
カチオン測定
装置;TOSOH ION CHROMATOGRAPH
カラム;TSKguardcolumn SuperIC−C Super IC−Cation
カラム温度;40℃
サンプル量;30μL
溶離液;2.5mmol/L HNO+0.5mmol/L L−ヒスチジン
流量;0.80ml/min
【0065】
[試験例5]
実施例2と比較例4で得られた造粒物を100mLなすフラスコにそれぞれ22g仕込み、エバポレーターで5分間回転させた後、それぞれ5gのサンプリングを4回行い、試験例2と同条件で成分含量について分析した。実施例2の測定結果を表3、比較例4の測定結果を表4に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
この変動係数の結果より、単に混合した比較例4よりも実施例2で得られた造粒物の含量均一性が優れていることがわかる。
【0069】
[試験例6]
まず、官能評価試験を行うためのパネル(官能評価を行うために選ばれた人)を選定するために、5味の識別テストおよび味の濃度差識別テストを行った。
<5味の識別テスト>
5種の基本味である甘味(ショ糖;0.4g/dL)、塩味(塩化ナトリウム;0.13g/dL)、酸味(酒石酸;0.005g/dL)、エグ味(硫酸キニーネ;0.0004g/dL)およびうま味(グルタミン酸ナトリウム;0.05g/dL)、ならびに水の計6種から5味を当てさせた。合格基準は5味中の誤差が1個以下とし、合格者は味の濃度差識別テストを行った。
<味の濃度差識別テスト>
エグ味を除く4種の基本味である甘味(ショ糖;5.00g/dLと5.50g/dLの比較)、塩味(塩化ナトリウム;1.00g/dLと1.06g/dLの比較)、酸味(酒石酸;0.020g/dLと0.024g/dLの比較)及びうま味(グルタミン酸ナトリウム;0.200g/dLと0.266g/dLの比較)において濃度の異なる2つの溶液を比較させ、各味の強い方を判断させた。合格基準は4対中の誤差が1個以下として、パネルを選定した。
<官能評価試験>
実施例2と比較例4の造粒物を用いて、2点比較法で官能評価試験を行った。官能評価試験方法は、午前と午後に各一回行って、塩化カリウムの味の強い方をパネル12人に選ばせた。結果を表5示す。
【0070】
【表5】

【0071】
この結果、本発明の方法に従って塩化カリウムの表面を塩化ナトリウムで被覆することによって、塩化カリウムのニガ味を抑制できたことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の塩味料により、高血圧患者及びナトリウムの摂取の抑制を必要とする人に対して、低ナトリウム塩を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
A:被覆層
B:核粒子
C:塩化カリウムの単粒子
D:塩化ナトリウムの単粒子
1:塩化カリウム
2:塩化ナトリウム
a:飽和溶液を調製する槽
b:攪拌モーター
c:ポンプ
d:冷却器
e:晶析槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核粒子である塩化カリウムの表面が塩化ナトリウムの被覆層で覆われ、該被覆層の表面における塩化ナトリウム結晶の個数平均径が10〜100μmであることを特徴とする塩味料。
【請求項2】
該被覆層がにがりを含む、請求項1記載の塩味料。
【請求項3】
塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比が90:10〜10:90である、請求項1または2記載の塩味料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の塩味料を含む、調味料および食品。
【請求項5】
下記の工程:
〔1〕塩化カリウム粒子に塩化ナトリウム水溶液をスプレーしながら乾燥造粒し、塩化ナトリウムを含む噴霧層を形成する工程;および
〔2〕過飽和の塩化ナトリウム水溶液を用いて塩化ナトリウムを結晶成長させることにより、塩化ナトリウムを含む晶析層を形成する工程
を含む、塩味料の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法によって得られる、塩味料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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