説明

塵芥収集車

【課題】塵芥の積載重量を減らすことなく、エンジン停止時にも塵芥収容箱内部の火災を消火することができる塵芥収集車を提供する。
【解決手段】後面が開口した塵芥収容箱2と、エンジンより排出される排気ガスを外部に放出するための排気管23と、この排気管23から排気ガスを塵芥収容箱2の内部に導く排気ガス導入路Dと、を備えている。排気ガス導入路D又は排気管23の所定部に、排気ガス導入路Dを通して消火剤又は水を塵芥収容箱2の内部に供給するための接続口21cを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された塵芥収容箱の内部で発生した火災を消火する車両用消火装置を備えた塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塵芥収集車によって廃棄物等の収集する際に、廃棄物の中に混在する内部ガスが残ったLPG缶等の爆発物や発火物に起因する火災が問題となっている。このような火災は、塵芥収集車の塵芥収容箱内部で生じるので、塵芥収集車の外部から消火することが困難であった。
このため、塵芥収集車に消火剤を収容したタンクを積載し、このタンク内の消火剤を塵芥収容箱内に案内する導入管を設け、消火剤を塵芥収容箱内に散布することで塵芥収容箱の内部の火災を消火することができる車両用消火装置を備えた塵芥収集車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1の塵芥収集車は、塵芥収集車に消火剤を収容したタンクを積載する必要があるため、タンクの重量だけ塵芥の積載重量が減少するという問題があった。
【0003】
この問題を解決するため、排気ガスを利用して塵芥収容箱内の火災の消火を行う塵芥収集車が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の塵芥収集車では、排気ガスを塵芥収容箱内に案内する導入管を設け、塵芥収容箱内で火災が発生したときに排気ガスを塵芥収容箱内に放出して塵芥収容箱内の酸素濃度を低下させて消火するため、塵芥の積載重量を減らすことなく塵芥収容箱内の火災を消火することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−95404号公報
【特許文献2】特開2005−323855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の塵芥収集車は、エンジンより排出される排気ガスを利用して消火を行うため、ガス欠等によりエンジンが停止したときには排気ガスが排出されず、塵芥収容箱内部の火災を消火することができないという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、塵芥の積載重量を減らすことなく、エンジン停止時にも塵芥収容箱内部の火災を消火することができる塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塵芥収集車は、後面が開口した塵芥収容箱と、エンジンより排出される排気ガスを外部に放出するための排気管と、この排気管から排気ガスを前記塵芥収容箱の内部に導く排気ガス導入路と、を備え、前記排気ガス導入路又は排気管の所定部に、前記排気ガス導入路を通して消火剤又は水を前記塵芥収容箱の内部に供給するための接続口を設けたことを特徴としている。
【0007】
上記のように構成された塵芥収集車によれば、走行中に塵芥収容箱内部で火災が発生したときには、エンジンの排気ガスを排気ガス導入路から塵芥収容箱の内部に導入することにより、塵芥収容箱内部の酸素濃度を低下させることができ、火災を消火することができる。一方、エンジンが停止しているときに塵芥収容箱内部で火災が発生した場合には排気ガスが発生しないので消火に排気ガスを用いることはできないが、排気ガス導入路又は排気管の所定部に設けられた接続口から、消火剤又は水を排気ガス導入路を通して塵芥収容箱内部に供給することができ、これにより火災を消火することができる。
このように、塵芥収容箱内部の火災が走行時に起こったときにはエンジンの排気ガスで、エンジン停止時には接続口から供給される消火剤等により消火を行うので、上記従来技術のように、消火剤を収容したタンクを積載する必要がなく、よって塵芥の積載重量を減少させることなく塵芥収容箱内部の消火を行うことが可能となる。
【0008】
上記塵芥収集車において、前記排気ガス導入路の少なくとも一部が、前記塵芥収容箱の構成部材により形成される中空部により構成されていることが好ましい。この場合、排気ガス導入路の少なくとも一部に、塵芥収容箱の構成部材により形成される中空部を使用したので、新たに排気ガス導入路全体を設ける必要がなく、塵芥収集車の製造コストの増大化を抑えることができる。
上記塵芥収集車において、前記接続口に、前記排気ガス導入路を通して消火剤又は水を前記塵芥収容箱の内部に供給する外部配管用の結合金具が取り付けられていることが好ましい。この場合、接続口に外部配管を迅速且つ確実に接続することができる。
【0009】
上記塵芥収集車において、前記排気ガス導入路を、前記塵芥収容箱の構成部材により形成される中空部により構成された内部経路と、前記排気管に接続された導入管と、この導入管と前記内部経路とを連結する連結管とで構成し、前記接続口を前記塵芥収容箱の外方且つ当該連結管の導入管側に設け、当該接続口に前記導入管を取り外し可能に接続してもよい。
この場合、連結管において、導入管の接続口と、排気ガス導入路を通して消火剤又は水を塵芥収容箱の内部に供給するための接続口とを兼用することができるので、接続口を別々に設けるよりも排気ガス導入路の構造を簡素化することができる。
【0010】
また、上記塵芥収集車において、前記排気管の前記排気ガス導入路との分岐部よりも下流に、排気ガスの流路を前記排気ガス導入路側に切り替える排気バルブを設けるとともに、前記分岐部より上流に前記接続口を設けてもよい。
この場合、排気バルブで排気ガスの流路を排気ガス導入路側に切り替えた状態で、排気管の接続口から、消火剤等を排気ガス導入路を通して塵芥収容箱の内部に導入することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の塵芥収集車によれば、塵芥の積載重量を減らすことなく、エンジン停止時にも塵芥収容箱内部の火災を消火することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る車両用消火装置を備えたプレス式の塵芥収集車を示す側面図である。この塵芥収集車1は、後端部が開口しており、収集した塵芥を収容するための塵芥収容箱2と、その後部に連接する塵芥投入箱3とを備えている。塵芥投入箱3の後方には、塵芥が投入される投入口3aを、上下にスライドして開閉する蓋3bが設けられている。また、塵芥投入箱3の前方には、上部から斜め下方向に延びる遮蔽板3eが設けられるとともに、その下方には、塵芥を塵芥収容箱2に積み込むための開口部3dが設けられている。
【0013】
塵芥投入箱3は、上部に設けられた支点Pを中心に回動可能であり、図示しない油圧で作動するスイングシリンダによって、塵芥収容箱2に対しての開閉動作が可能となる。塵芥投入箱3は、図の実線で示す位置で塵芥収容箱2を閉鎖し、図の二点鎖線で示す上方へ回動した位置で塵芥収容箱2の後端部を開放し塵芥を後方へ排出することができる。
【0014】
塵芥投入箱3内には積込装置50が設けられている。積込装置50は、スライダ5と、このスライダ5の下端部にピン7を介して回動自在に取り付けられている押込板8と、を有している。塵芥投入箱3の左右の側壁3cには、遮蔽板3eに沿って斜め上下に延びるガイドレール4が設けられており、スライダ5に取り付けられた左右一対二組のローラ6によって、図中の二点鎖線で示すようにガイドレール4に沿って斜め上下に移動することができる。スライダ5は、図示のような側面形状の左右の側面部材5a間を車幅方向に延びるプレート等(図示せず)により接続して一体化したものである。押込板8もまた、図示のような側面形状の左右の側面部材8a間を車幅方向に延びるプレート等(図示せず)により接続して一体化したものである。
【0015】
塵芥投入箱3内の左右両側において、スライダ5の側面部材5aと塵芥投入箱3の側壁3cとの間には油圧で作動するプッシュシリンダ9が取り付けられている。また、押込板8の側面部材8aとスライダ5の側面部材5aとの間には油圧で作動するプレスシリンダ10が取り付けられている。
従って、プレスシリンダ10の収縮伸長動作により押込板8をスライダ5に対して回動させることができるとともに、プッシュシリンダ9の収縮伸長動作によりスライダ5と押込板8とを共に斜め上下方向に移動させることができる。これらの動作を組み合わせることにより、積込装置50は、投入口3aから投入された塵芥を圧縮し、圧縮した塵芥を塵芥収容箱2側へ押し込むことができるように構成されており、いわゆるプレス式による塵芥の塵芥の積み込み動作を行うことができる。
また、上記スライダ5及び押込板8は、図1の実線で示した状態において、塵芥投入箱3の開口部3dを遮蔽することができる。
【0016】
塵芥収容箱2は、その下部に設けられたフレーム部材11を介して車体(シャーシ)12に設置されている。
そして、塵芥収容箱2の内部には、車両前後方向に移動可能とされている排出板13が設けられている。排出板13には、油圧によって伸縮させることができるディスチャージシリンダ14の一端部が接続されている。ディスチャージシリンダ14の他端部は、塵芥収容箱2の車両前方向の端部に接続されており、これによって、排出板13は、ディスチャージシリンダ14の伸縮により、図の実線で示す位置から二点鎖線で示す位置までの範囲で移動可能とされている。塵芥が空のとき排出板13は実線で示す位置にあり、排出板13よりも車両後方向に塵芥を積み込むための空間Sが確保されている。そして、排出板13は積込装置50によって積み込まれる塵芥を押込板8との間で圧縮させることができる。塵芥収集車1が塵芥を収容する際には、排出板13を車両前方向に間欠移動させることで前記空間Sを拡大させて塵芥収容箱2における塵芥の収容量を漸増させることができるとともに、排出板13を車両後方向に移動させることで塵芥収容箱2に収容された塵芥を後方へ排出することができる。
【0017】
ここで、排出板13は、塵芥収容箱2の内部の幅方向断面のほぼ全面の範囲に渡って形成されている。図3も参照して、塵芥収容箱2の内側面の左右両側には、この排出板13の前後方向の移動を案内するガイドレール15が設けられている。このガイドレール15は、塵芥収容箱2の内側面から突出しかつ前後方向に延びるように形成されており、内部に中空部を有している。そしてガイドレール15は、排出板13の左右側面に形成された溝部13aにはめ込まれており、これによって、排出板13を前後方向への移動を案内している。また、ガイドレール15は、後述するように、排気ガスを塵芥収容箱2の内部に導入する排気ガス導入路Dとしても機能する。
【0018】
図2は、図1に示される塵芥収集車1における塵芥収容箱2付近の要部側面図であり、図3は、図2におけるIII−III線矢視図である。図2及び図3に示すように、塵芥収容箱2には、当該塵芥収容箱2の剛性を向上させるために、後部スチフナ16、下部スチフナ17及び上部スチフナ18が配設されている。
【0019】
後部スチフナ16は、例えば断面がほぼ矩形の中空パイプを所定の形状に形成したものであって、塵芥収容箱2の後端部の周縁に沿って配設されており、内部に中空部を有している。下部スチフナ17は、断面凹型の部材を塵芥収容箱2の下面前後方向にフレーム部材11と平行に配設したものであって、下部スチフナ17と塵芥収容箱2とで中空部を形成している。また、この下部スチフナ17はフレーム部材11とともに塵芥収容箱2を支持する機能も有している。上部スチフナ18は、断面凹型の部材を塵芥収容箱2の上面前後方向に配設したものであって、上部スチフナ18と塵芥収容箱2とで中空部を形成している。
【0020】
そして、本実施形態では、これら塵芥収集箱2の構成部材である後部スチフナ16、下部スチフナ17、上部スチフナ18及び上記ガイドレール15により形成される中空部を排気ガス導入路Dの一部(内部経路)として利用している。すなわち、下部スチフナ17、上部スチフナ18及び上記ガイドレール15のそれぞれの後端部を後部スチフナ16に接続し、後部スチフナ16におけるそれぞれの接続部分に導入口を形成するとともに、下部スチフナ17の下部に、後述する当該塵芥収集車1のエンジンの排気ガスを導入する連結管21が接続されている(図3参照)。
【0021】
ここで、後部スチフナ16において上側に位置する上部には、塵芥収容箱2内部と、後部スチフナ16の内部とを連通する孔である充填口19aが4カ所形成されており(図3参照)、左右側に位置する側部には充填口19bがそれぞれ1カ所ずつ形成されている(図2参照)。また、上部スチフナ18には、塵芥収容箱2内部と、上部スチフナ18の内部とを連通する孔である充填口19cが4カ所形成されており(図2及び図4参照)、ガイドレール15にも、塵芥収容箱2内部と、ガイドレール15の内部とを連通する孔である充填口19dが左右に4カ所ずつ形成されている(図3参照)。そして、各充填口19a,19b,19c,19dには、それぞれ噴射ノズル20が取り付けられている。
【0022】
図4は、図3中、破線Aで囲まれた上部スチフナ18の下部を拡大して示した一部欠截図であり、上部スチフナ18の充填口19cにおける噴射ノズル20の取り付け状態を示している。図4に示すように、噴射ノズル20を上部スチフナ18の中空部の内部に配置することで、専用の保護部材を設けなくても、塵芥収容箱2の面より突出せずに設置することができ、これにより噴射ノズル20の破損を防止することができる。後部スチフナ16の充填口19a,19b及びガイドレール15の充填口19dについても、上記と同様に設置されている。
【0023】
よって、下部スチフナ17内部に導入された排気ガスは、下部スチフナ17内部を車両後方向に流れて導入口から後部スチフナ16内部に流れ込む。後部スチフナ16は、導入口によってそれぞれ上部スチフナ18及びガイドレール15に接続されているので、排気ガスは、後部スチフナ16から上部スチフナ18及びガイドレール15へと流れていく。そして、後部スチフナ16を流れる排気ガスは充填口19a,19bの噴射ノズル20から、上部スチフナ18を流れる排気ガスは、充填口19cの噴射ノズル20から、ガイドレール15を流れる排気ガスは、充填口19dの噴射ノズル20からそれぞれ塵芥収容箱2内部に放出される。
【0024】
図3に戻って、連結管21は、その一端部21aが下部スチフナ17の下部に接続されている。下部スチフナ17における連結管21の接続部分には、連結管21からの排気ガスを下部スチフナ17内部に導入するための導入口17aが形成されている。また、連結管21と、下部スチフナ17との接続部は、排気ガスが漏れない程度の気密性をもって接続されている。これにより、連結管21の内部から供給される排気ガスは導入口17aから下部スチフナ17内部に導入される。
【0025】
連結管21の他端部は塵芥収集箱2のフレーム部材11の外方に突出しており、後述する導入管24の接続口21bと、排気ガス導入路Dを通して消火剤又は水を塵芥収容箱2の内部に供給するための接続口(以下、消火剤等の供給用接続口という場合もある)21cとを兼用している。接続口を兼用することで、別々に接続口を設けるよりも排気ガス導入路Dの構造を簡素化することができる。接続口21b(消火剤等の供給用接続口21c)には、排気ガス導入路Dを通して消火剤又は水を塵芥収容箱2の内部に供給する外部配管(以下、単に外部配管という場合もある)としての消防ホースH用の結合金具22が取り付けられており、この結合金具22に塵芥収集車1のエンジン(図示せず)の排気管23から分岐した導入管24が取り外し可能に接続されている。
図5は、排気管23、導入管24及び連結管21の位置関係を示す車体上方から見た平面図である。
【0026】
排気管23は、エンジンの排気側に接続されて当該エンジンから排出される排気ガスを導くものであり、排気ガスを塵芥収集車1の外部に放出する排気口23aを有している。そして、この排気口23aの上流側には、排気ガスを塵芥収容箱2内に導入するための導入管24が接続されて分岐部25を形成している。
【0027】
導入管24は、図3に示すように、その中間部分がフレキシブルチューブ24aで構成されており、その一端部24bが分岐部25で排気管23に連結している。ここで、導入管24は分岐部25において排気管23が排気口23aに向かう方向(図5の矢印b)とは逆の方向(図5の矢印c)に延びるように排気管23に接続されている。
このように導入管24が分岐部25で排気管23に接続されることにより、排気ガスが流れる2方向の流路が形成される。すなわち、エンジンから排出される排気ガスは、排気管23を分岐部25まで流れると(図3及び図5の矢印a)、排気管23をそのまま排気口23aまで流れる流路(図3及び図5の矢印b)、又は導入管24に流れ込む流路(図3及び図5の矢印c)のいずれかをとるようになっている。
【0028】
図6(a)は、導入管24と連結管21とが接続している状態を示す説明図であり、図6(b)は、図6(a)におけるVI−VI線矢視断面図である。
排気管23に接続された導入管24は、中間部分がフレキシブルチューブ24aで構成されているとともに、他端部に脱着部材24cが設けられているため、連結管21の接続口21bに取り外し可能に接続することができる。
そして、図6(a)、(b)に示すように、導入管24の脱着部材24cと、連結管21の接続口21bに取り付けられた結合金具22とは、締付金具26で締め付けられている。
【0029】
図7は、導入管24が連結管21と接続されていない状態を示す説明図である。導入管24の接続を解除する場合は、図6(a)の状態から締付金具26を外し、連結管21から導入管24を抜けばよい。導入管24の中間部分がフレキシブルチューブ24aで構成されているので、導入管24全体を取り外す必要はない。連結管21から導入管24を外すことにより、連結管21の他端部は、消火剤等の供給用接続口21cとなる。そして、この消火剤等の供給用接続口21cには、予め外部配管(消防ホース)H用の結合金具22が取り付けられている。なお、図7に示される、消火剤等の供給用接続口21cに取り付けられた消防ホースH用の結合金具22は、「消防用ホースに使用する差込式の結合金具の技術上の規格を定める省令」で規定された消防ホースに使用する差込式の結合金具の差し口であって、図8(a)に示す消防ホースHに装着されている結合金具h1の受け口と嵌合するものである。
そして、連結管21と導入管24との接続が解除された状態(図7)において、図8(b)に示すように、連結管21の消火剤等の供給用接続口21cに取り付けられている結合金具22に消防ホースHの結合金具h1を嵌合することにより連結管21と消防ホースHとを接続することができる。これにより、消防ホースHから塵芥収容箱2内に消火剤又は水を導入することが可能になる。
【0030】
次に、排気ガスの流路の切り替えについて説明する。
図1に示されているように、排気管23における分岐部25の下流側には、排気管23内部の排気ガスの流れを開閉自在に遮断する排気バルブ27が配設されている。排気バルブ27は、電磁バルブであり、このバルブを制御することで、エンジンからの排気ガスを導入管24側、もしくは排気口23a側のいずれか一方に切り替えることができるように構成されている。
ここで、排気バルブ27は、その開閉を制御するためのバルブ開閉用ソレノイド28に接続されており、このバルブ開閉用ソレノイド28は、作業者が排気ガスの流路を切り替えるための操作手段としての緊急用手動スイッチ29に接続されている。
【0031】
緊急用手動スイッチ29は、塵芥収集車1の運転席に設けられた操作パネルに配置されている。なお、この緊急用手動スイッチ29が配置されるに操作パネルは、塵芥投入箱3の外部に設けてもよい。
緊急用手動スイッチ29をOFF状態としたときには、バルブ開閉用ソレノイド28は、排気バルブ27を開くようにされており、排気ガスは排気口23a側に導かれて大気に放出される。一方、ON状態としたときには、バルブ開閉用ソレノイド28は、排気バルブ27を閉じるようにされており、排気ガスは排気管23の分岐部25から導入管24側に導かれる。すなわち、排出バルブ27、バルブ開閉用ソレノイド28、及び緊急用手動スイッチ29は、排気ガスの流路を導入管24側もしくは排気口23a側のいずれか一方に切り替える切替手段を構成している。
【0032】
なお、通常走行中は、緊急用手動スイッチはOFF状態であって両方の流路は開いている。このとき、導入管24は、連結管21、下部スチフナ17、後部スチフナ16、塵芥収容箱2等に接続されているため、排気管23よりも排気ガスを導入する際の抵抗が大きく、さらに導入管24が分岐部25から排気口23a方向とは逆の方向に延びているので、排気ガスは導入管24に流れることなく排気口23aから外部に放出される。
【0033】
上記のように構成された塵芥収集車1において、エンジンの排気管23(図1)に接続された導入管24、連結管21、下部スチフナ17、後部スチフナ16、上部スチフナ18及びガイドレール15は、排気ガスを塵芥収容箱2の内部に案内する排気ガス導入路Dを構成している。排気ガス導入路Dの少なくとも一部に、塵芥収容箱の構成部材により形成される中空部を使用したので、新たに排気ガス導入路D全体を設ける必要がなく、塵芥収集車1の製造コストの増大化を抑えることができる。
【0034】
塵芥収集車1が通常に走行しているとき(緊急用手動スイッチ29がOFF状態)には、導入管24と連結管21の結合金具22とが取付金具26により連結され(図6(a))、排気バルブ27は開いた状態である。よって、排気ガスは排気管23を通って(図3の矢印a,b)排気口23aから塵芥収集車1の外部に放出される。
【0035】
塵芥収集車1の走行時に塵芥収容箱2内部で出火したときには、導入管24と連結管21とが連結した状態(図6(a))で緊急用手動スイッチ29をONにする。すると、バルブ開閉用ソレノイド28の制御により排気バルブ27が閉じられて排気ガスの流路が導入管24側に切り替えられる。これにより、排気ガスは、前記排気ガス導入路Dに導入される。すなわち、排気ガスは、排気管23(図3の矢印a)の分岐部25から導入管24(図3の矢印c)、連結管21(図3の矢印d)、下部スチフナ17(図2の矢印e)を通って後部スチフナ16に流れ、さらに後部スチフナ16を下から左右側部を通って上に向かって流れ(図2又は図3の矢印f)、ガイドレール15(図2の矢印g)及び上部スチフナ18(図2の矢印h)へと流れ込み、後部スチフナ16、上部スチフナ18及びガイドレール15の内部に配置された噴射ノズル20から塵芥収容箱2の内部に充填される(図2又は図3の白抜き矢印)。このため、走行中に塵芥収容箱2内部の塵芥が燃焼したとしても、排気ガスを塵芥収容箱2内部に充填することで、その内部の酸素濃度を低下させることができ、燃焼した塵芥を消火することができる。
【0036】
一方、塵芥収集車1のエンジンがガス欠等により停止しているときに塵芥収容箱2内部で出火したときには、導入管24と連結管21との接続部分から取付金具26を取り外して導入管24を連結管21から外し(図7)、連結管21の消火剤等の供給用接続口21cに取り付けられている結合金具22に、外部の給水源(貯水槽、消防車等)から延びる消防ホースHを連結する(図8)。これにより、当該消防ホースHから放出された消火剤又は水が連結管21、下部スチフナ17、後部スチフナ16等を通って(図2又は図3の矢印d〜h)塵芥収容箱2内部に散布されることになり、塵芥収容箱2内部の火災を消火することができる。
【0037】
このように、塵芥収容箱2内部の火災が走行時に起こったときにはエンジンの排気ガスで、エンジン停止時には消火剤等の供給用接続口21cに外部配管(消防ホース)Hを接続させ、そこから供給される消火剤等により消火を行うので、上記従来技術のように、消火剤を収容したタンクを積載する必要がなく、よって塵芥の積載重量を減少させることなく塵芥収容箱2内の消火を行うことが可能となる。
【0038】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではない。例えば、上記で説明した実施形態では、収容した塵芥の排出方式が排出板を備えた押し出し式であるとともに、塵芥の積込方式がプレス式である塵芥収集車を例示したが、塵芥の積込方式がいわゆる回転板式の塵芥収集車についても適用することができる。
また、上記実施形態では、排出板13のガイドレール15の中空部を排気ガス導入路Dの一部とした例を示しており、ガイドレール15を有する押し出し式の排出方式の塵芥収集車に適用される。しかしながら、必ずしもガイドレール15を排気ガス導入路Dの一部としなければならないというわけではなく、その場合、ガイドレール15を有さない他の排出方式の塵芥収集車に適用可能である。
【0039】
上記実施形態においては、塵芥収容箱2の構成部材(後部スチフナ16、下部スチフナ17、上部スチフナ18、ガイドレール15)の各中空部を排気ガス導入路Dの内部経路として用いたが、その一部又は全体を配管で構成してもかまわない。また、上記以外の塵芥収容箱2の構成部材を排気ガス導入路Dとして用いてもかまわないし、後部スチフナ16、下部スチフナ17、上部スチフナ18、ガイドレール15をすべて排気ガス導入路Dの内部経路として使用しなければならないわけではない。
上記実施形態では、その中間部分にフレキシブルチューブ24aを有している導入管24を接続口21bに接続させた場合について説明したが、導入管24は配管で構成し、導入管24の両端を連結管21から取り外すような構成としてもよい。
【0040】
上記実施形態では、連結管21の結合金具22を差し口、消防ホースHの結合金具H1を受け口として説明したが、その逆(連結管21の結合金具22が受け口で消防ホースHの結合金具H1が差し口)でもよい。また、結合金具22,H1は差込式に限られず、ねじ式のものでもかまわない。この場合、ねじ式結合金具の規格は、「消防用ホース又は消防用吸管に使用するねじ式の結合金具の技術上の規格を定める省令」に従う。
また、連結管21の接続口21b(21c)に結合金具22を取り付けておいて、この結合金具22と導入管24の脱着部材24cとを接続させているが、これに限られるものではなく、連結管21と導入管24との接続を解除した後に、消火剤等の供給用接続口21cに消防ホースHが連結可能な媒介継手を取り付けることも可能である。
なお、上記実施形態においては、外部配管として消防ホースHを用いたが、外部配管はホース以外に配管で構成することも可能である。
【0041】
上記実施形態においては、連結管21に消火剤等の供給用接続口21cを設けたが、この接続口21cは排気管23の途中、例えば、分岐部25より上流に設けてもよく、この場合、排気管23の分岐部25側とエンジン側とを分離可能に接続する接続部を設け、この接続部の分岐部25側を消火剤等の供給用接続口とすることができる。そして、分岐部25より下流にある排気バルブ27で排気ガスの流路を排気ガス導入路D側に切り替えた状態で、排気管23の消火剤等の供給用接続口に外部配管(消防ホース)Hを接続すれば、消火剤等を排気ガス導入路を通して塵芥収容箱2の内部に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るプレス式の塵芥収集車を示す側面図である。
【図2】図1に示される塵芥収集車における塵芥収容箱付近の要部側面図である。
【図3】図2におけるIII−III線矢視図である。
【図4】図3中、破線Aで囲まれた上部スチフナの下部を拡大して示した一部欠截図である。
【図5】排気管、導入管及び連結管の位置関係を示す車体上方から見た平面図である。
【図6】(a)は、導入管が連結管と接続している状態を示す説明図であり、(b)は、(a)におけるVI−VI線矢視断面図である。
【図7】導入管が連結管と接続されていない状態を示す説明図である。
【図8】(a)は、消防ホースを示す説明図であり、(b)は連結管に消防ホースを接続した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 塵芥収集車
2 塵芥収容箱
3 塵芥投入箱
11 フレーム部材
12 車体(シャーシ)
15 ガイドレール
16 後部スチフナ
17 下部スチフナ
18 上部スチフナ
19 充填口
20 噴射ノズル
21 連結管
21c 消火剤等の供給用接続口
22 結合金具
23 排気管
24 導入管
26 取付金具
27 排気バルブ
28 バルブ開閉用ソレノイド
29 緊急用手動スイッチ
D 排気ガス導入路
H 消防ホース(外部配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後面が開口した塵芥収容箱と、
エンジンより排出される排気ガスを外部に放出するための排気管と、
この排気管から排気ガスを前記塵芥収容箱の内部に導く排気ガス導入路と、を備え、
前記排気ガス導入路又は排気管の所定部に、前記排気ガス導入路を通して消火剤又は水を前記塵芥収容箱の内部に供給するための接続口を設けたことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記排気ガス導入路の少なくとも一部が、前記塵芥収容箱の構成部材により形成される中空部により構成されている請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記接続口に、前記排気ガス導入路を通して消火剤又は水を前記塵芥収容箱の内部に供給する外部配管用の結合金具が取り付けられている請求項1又は2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記排気ガス導入路が、前記塵芥収容箱の構成部材により形成される中空部により構成された内部経路と、前記排気管に接続された導入管と、この導入管と前記内部経路とを連結する連結管とで構成され、前記接続口が前記塵芥収容箱の外方且つ当該連結管の導入管側に設けられており、当該接続口に前記導入管が取り外し可能に接続されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記排気管において、前記排気ガス導入路との分岐部よりも下流に、排気ガスの流路を前記排気ガス導入路側に切り替える排気バルブが設けられているとともに、前記分岐部より上流に前記接続口が設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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