説明

塵芥運搬装置

【課題】パイプシュートの勾配が緩やかであったり、多少湾曲した形状であっても、パイプシュート内に塵芥が残留することを防止できるようにする。
【解決手段】高所で収集された塵芥60を、低所に運搬するための塵芥運搬装置1であって、筒状の部材からなり、高所から低所へ所定の勾配を付けられて設置され、上流端の近傍に投入口15が形成され、下流端又はその近傍に排出口16が形成されてなるパイプシュート5と、前記パイプシュート5内に配置され、該パイプシュート5内を移動可能にする駆動手段を具備し、該駆動手段によって前記投入口15の上流側から前記排出口16又はその近傍にかけて移動することにより前記パイプシュート5内に投入された塵芥60を前記排出口16まで押し動かす運搬装置6と、前記運搬装置6の遠隔操作を可能にする遠隔操作手段7とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山間部等の高所にある水槽等に堆積又は浮遊している枯葉、ゴミ、土、砂等の塵芥を処理するための装置に関し、特に高所で収集された含水塵芥を、低所の集積所まで運搬する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水力発電所の水槽等は、山間部等の高所に設置されるが、このような水槽には枯葉、ゴミ、土、砂等の塵芥が堆積するので、これを定期的に取り除く必要がある。このような塵芥の処理方法として、次のような先行技術が開示されている。この先行技術は、水槽から回収した含水した塵芥を、パイプシュート内に所定期間保留して乾燥させる含水塵芥の乾燥処理装置であって、パイプシュートを、そのパイプ内に上昇気流を発生させるように傾斜配置し、パイプシュートの上端に含水塵芥を投入する投入口を、その下端に空気を取り込む空気吸入口を兼ねると共に、乾燥した塵芥を排出する排出口をそれぞれ設け、パイプシュートの排出口に、上昇気流を発生させる空気を取り入れる通気構造を有すると共に、含水塵芥の落下を阻止する堰止め構造を設けたものである(特許文献1参照)。この構造によれば、高所で収集された塵芥を、パイプシュートを通して低所の集積所に送ることができると共に、パイプシュート内に発生する上昇気流によって、塵芥を乾燥させることができる。
【特許文献1】特開2006−112674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示される装置(方法)においては、パイプシュート内での塵芥の移動が塵芥の自重による自然落下のみによるため、パイプ内に塵芥が残留してしまうことがあり、目詰まりや汚損等が発生するという問題があった。また、パイプシュート内での塵芥の自然落下を可能にするためには、パイプシュートの傾斜角度を所定値以上にしたり、全体に渡って直線形上する等の必要があった。
【0004】
そこで、本発明は、パイプシュートの勾配が緩やかであったり、多少湾曲した形状であっても、パイプシュート内に塵芥が残留することを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決を図る本発明は、高所で収集された塵芥を、低所に運搬するための塵芥運搬装置であって、筒状の部材からなり、高所から低所へ所定の勾配を付けられて設置され、上流端の近傍に投入口が形成され、下流端又はその近傍に排出口が形成されてなるパイプシュートと、前記パイプシュート内に配置され、該パイプシュート内を移動可能にする駆動手段を具備し、該駆動手段によって前記投入口の上流側から前記排出口又はその近傍にかけて移動することにより前記パイプシュート内に投入された塵芥を前記排出口まで押し動かす運搬装置と、前記駆動手段の遠隔操作を可能にする遠隔操作手段とを具備して構成されるものである(請求項1)。
【0006】
上記構成によれば、パイプシュートの勾配が小さい等の理由により、塵芥がパイプシュート内で止まってしまっても、パイプシュート内に配置され利用者によって遠隔操作される運搬装置により、塵芥を排出口まで押し運ぶことができる。これにより、パイプシュートが低勾配であったり、多少湾曲した形状であっても、塵芥を確実に排出口まで運搬することができる。
【0007】
また、上記請求項1記載の構成において、前記駆動手段は、前記遠隔操作手段からの信号に応じて駆動力を発生させると共に回転方向を変化させる駆動輪を有して構成され、前記運搬装置には、その胴体部から外方へ突き出すと共に弾性体の作用により揺動可能となる補助輪が設けられていることが好ましい(請求項2)。
【0008】
このように、運搬装置全体を動かすための駆動輪とは別に、上記のような補助輪を具備することによって、運搬装置のパイプシュート内での姿勢を安定させることができ、多少の障害物等があっても、運搬装置の機動性を確保することができる。
【0009】
また、上記請求項1又は2記載の構成において、前記運搬装置の下流側の先端部には、塵芥を受け止めるためのシールド部が設けられ、該シールド部には、前記パイプシュートの内壁と摺接するブラシ状部材が設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0010】
このように、運搬装置の進行方向(下流側)の端部に塵芥を受け止めるシールド部を具備することにより、確実に塵芥を下流側へ押し出すことができる。また、このシールド部にブラシ状部材を具備することによって、塵芥の運搬力を向上させると共に、パイプシュートの内壁にこびり付いた汚れ等を除去することができる。
【0011】
また、上記請求項1〜3のいずれか1つに記載の構成において、前記遠隔操作手段は、前記パイプシュートの上流端近傍に設置された操作パネルと、前記操作パネル及び前記駆動手段に接続されるケーブルとを有して構成され、前記運搬装置は、前記ケーブルを巻き取って収納可能なケーブル収納手段を具備することが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように、パイプシュートの上流端近傍に操作パネルを設置し、この操作パネルと運搬装置とをケーブルで接続することによって、利用者は塵芥の投入場所に近い所から運搬装置を操作することができる。そして、上記のようにケーブル収納手段を具備することによって、ケーブルの弛みをケーブル収納手段に巻き取ることができ、運搬装置をスムーズに動かすことができる。
【0013】
また、上記請求項1〜4のいずれか1つに記載の構成において、前記パイプシュートの前記投入口よりも上流側に、前記運搬装置が待機可能なスペースが形成されていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このように、パイプシュートの投入口の上流側に、運搬装置の待機場所を確保することにより、投入口からの塵芥の投入をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、パイプシュートの勾配が小さい等の理由により、塵芥がパイプシュート内で止まってしまっても、パイプシュート内に配置され利用者によって遠隔操作される運搬装置により、塵芥を排出口まで押し運ぶことができる。これにより、パイプシュートが低勾配であったり、多少湾曲した形状であっても、塵芥を確実に排出口まで運搬することができる。また、運搬装置に補助輪を設けることによって、パイプシュート内での運搬装置の姿勢を安定させることができる。更に、シールド部及びブラシ状部材を設けることによって、塵芥の確実な運搬を可能にすると共にパイプシュートの内壁にこびり付いた汚れ等を除去することができる。更にまた、運搬装置にケーブルドラムを設けることによって、遠隔操作手段と運搬装置との間の余分なケーブルの弛みを巻き取ることができ、運搬装置をスムーズに動かすことができる。また、パイプシュートの投入口の上流側に運搬装置の待機場所を設けることにより、塵芥の投入時等の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1において、本実施例に係る塵芥運搬装置1の構成が概略的に示されている。この塵芥運搬装置1は、山間部に設置された水力発電所の水槽2に溜まった塵芥を、低所の集積所3まで運搬するための装置であり、パイプシュート5、運搬装置6、操作パネル7を有して構成されている。
【0017】
パイプシュート5は、円筒形状の部材からなり、水槽2の近傍部から集積所3の塵芥収集容器10までを連通させるように、山間部の斜面11に沿って敷設されている。パイプシュート5の水槽2近傍部には投入口15が設けられ、塵芥収集容器10近傍部には排出口16が設けられている。また、パイプシュート5の投入口15よりも上流側の部分には、後述する運搬装置6の待機スペース17が設けられている。
【0018】
運搬装置6は、パイプシュート5内に配置され、水槽2近傍部に設置された操作パネル7からの遠隔操作によって、このパイプシュート5内を移動可能になされた装置である。この運搬装置6は、図2(a),(b)に示すように、胴体部20、駆動輪21、補助輪22(a〜g)、シールド部23、ブラシ部24、駆動用モータ25、ケーブルドラム26、ドラム用モータ27を有して構成されている。
【0019】
胴体部20は、円筒形の前後端部が略半球形に閉じられた形状を有し、金属等の材料からなり、その先端寄りの下部に、駆動輪21が回転可能に軸支されている。
【0020】
駆動輪21は、ホイール部30とタイヤ部31とを有し、ホイール部30が前記胴体部20の下部に回転可能に軸支され、ゴム等の滑りにくい材質からなるタイヤ部31が、このホイール部30に固定されている。
【0021】
補助輪22は、胴体部20の上部に2つ(22a,22b)、右部に2つ(22c,22d)、左部に2つ(22e,22f)、下部に1つ(22g)設けられており、図3に示すように、そのそれぞれがロッド部35、ホイール部36、タイヤ部37を有して構成され、このロッド部35の一端部が胴体部20に揺動可能に固定されており、他端部にホイール部36が回転可能に軸支され、このホイール部36にタイヤ部37が固定されている。また、これらの補助輪22は、図示しないが、バネ等の弾性力によってタイヤ部37がパイプシュート5の内壁に当接するようになされている。
【0022】
シールド部23は、図2(a),(b)に示すように、胴体部20の先端部に立設するように固定された円盤形状の部材であり、アルミ等の軽量且つ堅牢な材料からなる。このシールド部23の下部には、鉛直方向を基準にして円周角±45°程度の範囲内で、ブラシ部24が設けられている。
【0023】
駆動用モータ25は、駆動輪21のホイール部30に固定された駆動軸に歯車等を介して動力の伝達が可能なものであり、駆動輪21を前方又は後方へ回転させる。この駆動輪21の回転により、運搬装置6全体がパイプシュート5内を進退する。
【0024】
ケーブルドラム26は、ホイール部40と脚部41とを有して構成され、胴体部20の後端部にホイール部40が回転可能となるように固定されている。このホイール部40には、図2(a)及び図4に示すように、ケーブル45が巻かれていると共に、ドラム用モータ27の駆動軸が固定されている。ケーブル45は、操作パネル7、駆動用モータ25、及びドラム用モータ27に接続され、駆動用モータ25及びドラム用モータ27は、操作パネル7(内の電子制御装置)から出力される電力及び制御信号に応じて駆動する。即ち、駆動用モータ25が進行方向に回転する時、ドラム用モータ27はケーブル45を繰り出す方向に回転し、駆動用モータ25が後退方向に回転する時、ドラム用モータ27はケーブル45を巻き取る方向に回転する。
【0025】
操作パネル7は、上記運搬装置6を高所の水槽2部付近から遠隔操作するためのものであり、操作ボタン50、コンピュータや所定の制御プログラム等からなる電子制御装置を有して構成される。操作ボタン50としては、主電源ボタン55、進行ボタン56、後退ボタン57等(図4参照)が必要となる。電子制御装置は、これらのボタン55,56,57への操作に応じて、電力及び制御信号をケーブル45を介して運搬装置6の駆動用モータ25及びドラム用モータ27に送信する。
【0026】
図5において、上記塵芥運搬装置1を用いた塵芥処理の流れが示されている。先ず、図5(a)に示すように、パイプシュート5の投入口15に水槽2から収集した塵芥60を投入する。この時、運搬装置6は投入口5より上流側に設けられた待機スペース17に配置されている。すると、図5(b)に示すように、塵芥60は自然落下(自重)によってパイプシュート5内をある程度下方側へ移動して止まる。そして、操作パネル7を操作して、図5(c),(d)に示すように、運搬装置6を矢印の方向に移動(進行)させ、塵芥60をパイプシュート5の排出口16まで押し下げて集積所3に排出させる。このようにして塵芥60を排出させたら、図5(e)に示すように、操作パネル7を操作して運搬装置6を矢印の方向に移動(後退)させ、図5(f)に示すように、運搬装置6を待機スペース17に配置させて完了となる。
【0027】
以上のように、この発明によれば、塵芥60が自然落下では滑り落ちていかないような緩い勾配であっても、人員に負担をかけることなく、安全且つ確実に、塵芥60を下方の集積所3まで運搬することができる。また、パイプシュート5が多少の湾曲形状を有していても、塵芥60の運搬が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施例に係る塵芥運搬装置の構成を示す図である。
【図2】(a)は、運搬装置の構造を示す正面図であり、(b)は、同装置の左側面図である。
【図3】補助輪の構造を説明するための図である。
【図4】ケーブルドラムの構造を説明するための図である。
【図5】(a)〜(b)は、本実施例にかかる塵芥運搬装置を用いた塵芥処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 塵芥運搬装置
2 水槽
3 集積所
5 パイプシュート
6 運搬装置
7 操作パネル
15 投入口
16 排出口
17 待機スペース
20 胴体部
21 駆動輪
22(a〜g) 補助輪
23 シールド部
24 ブラシ部
25 駆動用モータ
26 ケーブルドラム
27 ドラム用モータ
45 ケーブル
60 塵芥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所で収集された塵芥を、低所に運搬するための塵芥運搬装置であって、
筒状の部材からなり、高所から低所へ所定の勾配を付けられて設置され、上流端の近傍に投入口が形成され、下流端又はその近傍に排出口が形成されてなるパイプシュートと、
前記パイプシュート内に配置され、該パイプシュート内を移動可能にする駆動手段を具備し、該駆動手段によって前記投入口の上流側から前記排出口又はその近傍にかけて移動することにより前記パイプシュート内に投入された塵芥を前記排出口まで押し動かす運搬装置と、
前記駆動手段の遠隔操作を可能にする遠隔操作手段と、
を具備して構成されることを特徴とする塵芥運搬装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記遠隔操作手段からの信号に応じて駆動力を発生させると共に回転方向を変化させる駆動輪を有して構成され、
前記運搬装置には、その胴体部から外方へ突き出すと共に弾性体の作用により揺動可能となる補助輪が設けられていることを特徴とする請求項1記載の塵芥運搬装置。
【請求項3】
前記運搬装置の下流側の先端部には、塵芥を受け止めるためのシールド部が設けられ、
該シールド部には、前記パイプシュートの内壁と摺接するブラシ状部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の塵芥運搬装置。
【請求項4】
前記遠隔操作手段は、前記パイプシュートの上流端近傍に設置された操作パネルと、前記操作パネル及び前記駆動手段に接続されるケーブルとを有して構成され、
前記運搬装置は、前記ケーブルを巻き取って収納可能なケーブル収納手段を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の塵芥運搬装置。
【請求項5】
前記パイプシュートの前記投入口よりも上流側に、前記運搬装置が待機可能なスペースが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の塵芥運搬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−91144(P2009−91144A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266128(P2007−266128)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】