説明

境界内計画評価装置及び方法

【課題】計測の点数が異なる計画であっても、計画を評価することができる境界内計画評価装置及び方法を提供すること。
【解決手段】境界内計画評価装置10は、計測点の位置に仮想光源を配置し、運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、運転可能領域の大きさと制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出し、運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに算出した仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、境界内計画評価装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンは、高性能化により、多くの制御パラメータによって制御されて動作する。この制御パラメータによって制御されるエンジンの特性は、実験計画法(DOE)によって配置された所定数の計測点における計測データに基づいて、モデル化されている。
【0003】
エンジンを制御するためのパラメータ数は、エンジンの機能強化に伴い、近年増加している。そのため、従来通りの点数で計測すると、パラメータ数が増加したため、計測データに基づいて作成したモデルである応答曲面の精度が不十分になる可能性がある。また、応答曲面の精度を十分確保するために、パラメータの数が増加した分だけ計測の点数を増加させると、増加させた点数の計測を行う計測時間がかかるので、全体の計測時間が膨大な時間になる可能性がある。
【0004】
このようなエンジン制御パラメータの適合化を短期に行うことができる技術を開示する特許文献1が知られている。特許文献1が開示するエンジン制御パラメータの設定方法は、各々が複数のエンジン制御パラメータの組み合わせで示される実験点を、応答曲面を得るために必要な第1の所定数だけ設定し、設定された第1の所定数の実験点において計測された実験結果データを参照して、応答曲面を得るのに有効なデータが得られた有効実験点と有効なデータが得られなかった欠測点を抽出し、欠測点の数が所定の閾値を超えた場合に、欠測点を実験点から排除した上で、有効実験点と組み合わせて用いることにより応答曲面を得ることができる第2の所定数の追加実験点を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−17698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された設定方法では、追加実験点を設定しても、求める計画の精度によっては、点数が不十分なことがある。また、特許文献1の方法は、格子状の領域のなかでしか実験点を設定できない。さらに、特許文献1の方法は、制御パラメータの数によって変化する閾値を決めることが困難である。
【0007】
このような実験計画において、計画の精度に対し点数が十分であるか否かを評価するために、例えば、D効率という指標がある。
D効率=det(XX)1/P/N
X:計画行列
p:モデル係数の数
N:実験点数
D効率を用いた場合、点数が多いと、図10(1)の様に点が固まった計画は、D効率が例えば30.2%となり、図10(2)の様に点が散らばっている計画のD効率が例えば16.2%になるのに比較して、高く評価される。また、D効率では、点数が異なる計画同士を比較して評価できない。
【0008】
そこで、計測の点数が異なる計画であっても、計画を評価することができる装置及び方法が求められている。
【0009】
本発明は、計測の点数が異なる計画であっても、計画を評価することができる境界内計画評価装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
(1) エンジンを制御する複数の制御パラメータにおいて、当該制御パラメータの限界値によって構成される運転可能領域の境界内に、当該制御パラメータの組み合わせによって前記エンジンの性能を計測するための計測点を配置する計画を評価する境界内計画評価装置であって、前記計測点の位置に仮想光源を配置し、前記運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、前記運転可能領域の大きさと前記制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出する仮想照度評価値算出手段と、前記運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに前記仮想照度評価値算出手段によって算出された前記仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める最小仮想照度評価値算出手段と、を備える境界内計画評価装置。
【0011】
(1)の構成によれば、本発明に係る境界内計画評価装置は、計測点の位置に仮想光源を配置し、運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、運転可能領域の大きさと制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出し、運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに算出した仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める。
【0012】
すなわち、本発明に係る境界内計画評価装置は、計測点の位置に仮想光源を配置し、最小仮想照度評価値(最も暗い場所の仮想照度評価値)を求め、計測点が配置された計画の評価値とする。
したがって、本発明に係る境界内計画評価装置は、計測の点数が異なる計画であっても、最小仮想照度評価値によって計画を評価することができる。
【0013】
(2) 前記運転可能領域の範囲内に、新たな前記計測点の位置を算出する計測点算出手段と、前記最小仮想照度評価値の目標値を設定する目標値設定手段と、前記最小仮想照度評価値算出手段によって求められた前記最小仮想照度評価値が、前記目標値以上になるまで、前記計測点算出手段による前記計測点の算出と、前記最小仮想照度評価値算出手段による前記最小仮想照度評価値の算出とを繰り返すように制御する計画評価制御手段と、をさらに備える(1)に記載の境界内計画評価装置。
【0014】
したがって、本発明に係る境界内計画評価装置は、計測の点数が異なる計画であっても計画を評価できることを利用して、最小仮想照度評価値が目標値以上になるように計測点を追加し、任意に設定された目標値以上の計画を作成することができる。
【0015】
(3) 前記計測点算出手段は、前記最小仮想照度評価値算出手段によって求められた前記最小仮想照度評価値に対応する位置を前記計測点の位置として算出する、(2)に記載の境界内計画評価装置。
【0016】
したがって、本発明に係る境界内計画評価装置は、任意の位置の仮想照度評価値を算出することができることを利用して、計測点の位置が重複しないように、計測点を効率よく追加することができる。
【0017】
(4) エンジンを制御する複数の制御パラメータにおいて、当該制御パラメータの限界値によって構成される運転可能領域の境界内に、当該制御パラメータの組み合わせによって前記エンジンの性能を計測するための計測点を配置する計画を評価する境界内計画評価装置が実行する方法であって、前記計測点の位置に仮想光源を配置し、前記運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、前記運転可能領域の大きさと前記制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出する仮想照度評価値算出ステップと、前記運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに前記仮想照度評価値算出ステップによって算出された前記仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める最小仮想照度評価値算出ステップと、を備える方法。
【0018】
したがって、本発明に係る方法は、(1)と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、計測の点数が異なる計画であっても、計画を評価することができる。さらに、本発明によれば、計測の点数が異なる計画であっても計画を評価できることを利用して、任意の領域内で計測点を追加して計画を評価し、任意の精度の計画を作成することができる。また、任意の領域内で計測点を追加する際に、位置が重複しないように追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の特徴を説明する説明図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置の最小仮想照度評価値算出処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置により計測点を追加する過程を示す図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置により計測点を追加した別の例を示す図である。
【図10】従来の実験計画の評価を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0022】
[実施形態1]
図1は、本発明の特徴を説明する説明図である。図1の例は、エンジンを制御する制御パラメータの数が2(2次元)において、点P5が配置された重心から最も遠い点P3までの距離Rの境界内に、点P1〜P5に仮想光源が配置され、任意の位置Xの仮想照度を示す仮想照度評価値が算出されることを示す例である。点P1〜P4によって囲まれた境界は、例えば、制御パラメータの限界値によって構成される運転可能領域の境界である。任意の位置Xに、制御パラメータの組み合わせによってエンジンの性能を計測するための計測点が配置される。任意の位置Xの仮想照度評価値A(X)は、後述する数式1により算出される。
【0023】
図2は、本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置10の機能を示す機能ブロック図である。境界内計画評価装置10は、仮想照度評価値算出手段としての仮想照度評価値算出部11と、最小仮想照度評価値算出手段としての最小仮想照度評価値算出部12とを備えている。以下、各部について詳述する。
【0024】
仮想照度評価値算出部11は、計測点の位置に仮想光源を配置し、運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、運転可能領域の大きさと制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出する。具体的には、仮想照度評価値算出部11は、数式1により、図1に示す点Xの仮想照度評価値を算出する。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで、Rは、運転可能領域の半径(凸領域の場合、重心から一番遠い点までの距離)、Nは制御パラメータの数、Pはi番目の仮想光源である。‖X−P‖が0値になることを避けるために、下限値が設けられてもよい。
【0027】
数式1によれば、例えば、仮想光源が運転可能領域の中心点のみに配置された計画の場合(中心点のみの計画)、A(x)=0%となる。また、任意の次元の直方体で表された運転可能領域において、運転可能領域を構成する全ての頂点に仮想光源が配置された計画(2水準全因子計画)の場合、A(x)=50%となる。また、無限個の仮想光源で運転可能領域を埋め尽くした計画の場合、A(X)=100%となる。
【0028】
最小仮想照度評価値算出部12は、運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに仮想照度評価値算出部11によって算出された仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める。具体的には、最小仮想照度評価値算出部12は、数式1において、Xの位置を運転可能領域の範囲内で任意に変えて、仮想照度評価値を算出し、算出した仮想照度評価値を比較して、最小仮想照度評価値を求める。
最小仮想照度評価値算出部12によって求められた最小仮想照度評価値は、計測点を配置した計画の評価値である。
【0029】
図3は、本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。境界内計画評価装置10は、CPU(Central Processing Unit)1010、バスライン1005、通信I/F1040、メインメモリ1050、BIOS(Basic Input Output System)1060、I/Oコントローラ1070、キーボード/マウス1100、及び表示装置1022を備える。
【0030】
I/Oコントローラ1070には、ハードディスク1074、半導体メモリ1078等の記憶手段を接続することができる。
【0031】
BIOS1060は、境界内計画評価装置10の起動時にCPU1010が実行するブートプログラムや、境界内計画評価装置10のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0032】
ハードディスク1074は、境界内計画評価装置10が本発明の機能を実行するためのプログラムを記憶しており、さらに、各種データベースを構成可能であり、運転可能領域や計測点のデータ等を記憶している。
【0033】
境界内計画評価装置10に提供されるプログラムは、ハードディスク1074、又はメモリカード等の記録媒体に格納されて提供される。このプログラムは、I/Oコントローラ1070を介して、記録媒体から読み出され、又は通信I/F1040を介してダウンロードされることによって、境界内計画評価装置10にインストールされ実行されてもよい。
【0034】
前述のプログラムは、専用通信回線に接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又は光ディスクライブラリ等の記憶装置を記録媒体として使用し、通信回線を介して境界内計画評価装置10に提供されるとしてもよい。
【0035】
ここで、表示装置1022は、境界内計画評価装置10による、最小仮想照度評価値等の演算処理結果の画面を表示したりするものであり、ブラウン管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイ装置を含む。
【0036】
また、通信I/F1040は、境界内計画評価装置10を専用ネットワークを介して端末と接続できるようにするためのネットワーク・アダプタである。
【0037】
図4は、本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置10の処理内容を示すフローチャートである。なお、本処理は、例えば、プログラム開始指令を受け付けて開始し、プログラム終了指令又は終了条件により終了する。
【0038】
ステップS101において、CPU1010は、境界を指定する。より具体的には、CPU1010は、境界を構成する座標データや、境界の重心座標データ、計測点の位置座標データ、仮想照度評価値を算出する任意の位置の間隔について、最小仮想照度評価値算出処理が必要とするデータを指定する。その後、CPU1010は、処理をステップS102に移す。
【0039】
ステップS102において、CPU1010は、最小仮想照度評価値算出処理を行い、最小仮想照度評価値を取得する。その後、CPU1010は、処理を終了する。
【0040】
図5は、本発明の実施形態1に係る境界内計画評価装置10の最小仮想照度評価値算出処理内容を示すフローチャートである。
【0041】
ステップS201において、CPU1010は、最初の位置を設定する。より具体的には、CPU1010は、指定された境界を構成する座標データから、仮想照度評価値を算出するための最初の位置を求める。その後、CPU1010は、処理をステップS202に移す。
【0042】
ステップS202において、CPU1010は、仮想照度評価値を算出する。より具体的には、CPU1010は、数式1に基づいて、仮想照度評価値を算出し、位置に対応付けてハードディスク1074に記憶する。その後、CPU1010は、処理をステップS203に移す。
【0043】
ステップS203において、CPU1010は、境界内の全ての位置について仮想照度評価値を算出したか否かを判断する。より具体的には、CPU1010は、境界内の終了位置に到達したか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU1010は、処理をステップS204に移し、NOの場合、CPU1010は、現位置から指定された間隔で、次に仮想照度評価値を算出する位置を算出し、処理をステップS202に移す。
【0044】
ステップS204において、CPU1010は、最小仮想照度評価値を求める。より具体的には、CPU1010は、ハードディスク1074に記憶した仮想照度評価値を比較し、値が最小の仮想照度評価値を求める。その後、CPU1010は、本処理に移るステップの次のステップに処理を戻す。
【0045】
[実施形態2]
実施形態1に加えて、次の様な構成を備える実施形態2について図を参照しながら説明する。
図6は、本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置10の機能を示す機能ブロック図である。境界内計画評価装置10は、実施形態1に加えて、さらに、計測点算出手段としての計測点算出部13と、目標値設定手段としての目標値設定部14と、計画評価制御手段としての計画評価制御部15とを備える。以下、各部について詳述する。
【0046】
計測点算出部13は、運転可能領域の範囲内に、新たな計測点の位置を算出する。具体的には、計測点算出部13は、空間充填法や、数理計画法を用いた最適化を利用するλi式数理計画、親個体から領域を作成してその中で子個体を配置するGA(遺伝アルゴリズム)を利用する実数値GA等により、新たな計測点の位置を算出する。特に、計測点算出手段は、最小仮想照度評価値算出部12によって求められた最小仮想照度評価値に対応する位置を計測点の位置として算出する。
【0047】
目標値設定部14は、最小仮想照度評価値の目標値を設定する。具体的には、目標値設定部14は、目標値を、例えば、入力装置(キーボード/マウス1100)から受け付ける。
【0048】
計画評価制御部15は、最小仮想照度評価値算出部12によって求められた最小仮想照度評価値が、目標値以上になるまで、計測点算出部13による計測点の算出と、最小仮想照度評価値算出部12による最小仮想照度評価値の算出とを繰り返すように制御する。具体的には、計画評価制御部15は、最小仮想照度評価値が目標値以下の場合に、計測点算出部13による計測点の算出を行い、算出した位置に計測点を追加して、最小仮想照度評価値算出部12による最小仮想照度評価値の算出を行い、最小仮想照度評価値が目標値以上になるまで繰り返すように制御する。
【0049】
図7は、本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置10の処理内容を示すフローチャートである。なお、本処理は、例えば、プログラム開始指令を受け付けて開始し、プログラム終了指令又は終了条件により終了する。
【0050】
ステップS301において、CPU1010は、目標値を設定する。より具体的には、CPU1010は、目標値を入力装置(キーボード/マウス1100)から入力し、ハードディスク1074に記憶する。その後、CPU1010は、処理をステップS302に移す。
【0051】
ステップS302において、CPU1010は、境界を指定する。より具体的には、CPU1010は、境界を構成する座標データや、境界の重心座標データ、計測点の位置座標データ、仮想照度評価値を算出する任意の位置の間隔について、最小仮想照度評価値算出処理が必要とするデータを指定する。その後、CPU1010は、処理をステップS303に移す。
【0052】
ステップS303において、CPU1010は、最小仮想照度評価値算出処理を行い、最小仮想照度評価値を取得する。その後、CPU1010は、処理をステップS304に移す。
【0053】
ステップS304において、CPU1010は、最小仮想照度評価値が目標値以上か否かを判断する。より具体的には、CPU1010は、最小仮想照度評価値算出処理によって求めた最小仮想照度評価値と、ステップS301において記憶した目標値とを比較し、最小仮想照度評価値が目標値以上か否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU1010は、処理を終了し、NOの場合、CPU1010は、処理をステップS305に移す。
【0054】
ステップS305において、CPU1010は、計測点を追加する。より具体的には、CPU1010は、最小仮想照度評価値算出処理によって求めた最小仮想照度評価値に対応する位置を、新たな計測点を追加する位置とし、最小仮想照度評価値算出処理が必要とするデータのうち計測点の位置座標データに追加する。その後、CPU1010は、処理をステップS303に移す。
【0055】
図8は、本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置10により計測点を追加する過程を示す図である。
【0056】
図8(1)は、境界190内の重心に配置された計測点100の計画について、最小仮想照度評価値が0%で目標値(例えば60%)以上でないので、境界内計画評価装置10は、計測点100から遠い点に計測点101を追加したことを示す図である。
図8(2)は、計測点100及び計測点101の計画について、最小仮想照度評価値が23%で目標値(例えば60%)以上でないので、境界内計画評価装置10は、既存の全ての計測点100及び計測点101から遠い点に計測点102を追加したことを示す図である。
図8(3)は、計測点100〜102の計画について、最小仮想照度評価値が32%で目標値(例えば60%)以上でないので、境界内計画評価装置10は、既存の全ての計測点100〜102から遠い点に計測点103を追加したことを示す図である。
図8(4)は、計測点100〜103の計画について、最小仮想照度評価値が51%で目標値(例えば60%)以上でないので、境界内計画評価装置10は、既存の全ての計測点100〜103から遠い点に計測点104を追加したことを示す図である。
図8(5)は、計測点100〜104の計画について、最小仮想照度評価値が53%で目標値(例えば60%)以上でないので、境界内計画評価装置10は、既存の全ての計測点100〜104から遠い点に計測点105を追加したことを示す図である。計測点105を追加した結果、最小仮想照度評価値が67%で目標値(例えば60%)以上であるので、境界内計画評価装置10は、計測点の追加を終了する。
【0057】
図9は、本発明の実施形態2に係る境界内計画評価装置10により計測点を追加した別の例を示す図である。図9の例は、運転可能領域390が限界点探索され、探索された限界点131〜137によって形成される境界290内に、境界内計画評価装置10が計測点Pを配置した例である。図9に示す様に、境界内計画評価装置10は、任意の領域で計測点を配置する計画を作成でき、最小仮想照度評価値についての目標値を指定することにより、重複しない計測点を配置して、任意の精度の計画を作成できる。
【0058】
本実施形態1によれば、境界内計画評価装置10は、計測点の位置に仮想光源を配置し、運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、運転可能領域の大きさと制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出し、運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに算出した仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める。したがって、境界内計画評価装置10は、計測の点数が異なる計画であっても、最小仮想照度評価値によって計画を評価することができる。
【0059】
本実施形態2によれば、境界内計画評価装置10は、最小仮想照度評価値の目標値を設定し、求めた最小仮想照度評価値が目標値以上になるまで、最小仮想照度評価値に対応する位置による新たな計測点の追加と、最小仮想照度評価値の算出とを繰り返すように制御する。したがって、境界内計画評価装置10は、計測の点数が異なる計画であっても計画を評価できることを利用して、最小仮想照度評価値が目標値以上になるように計測点を追加し、任意に設定された目標値以上の計画を作成することができる。さらに、境界内計画評価装置は、任意の位置の仮想照度評価値を算出することができることを利用して、計測点の位置が重複しないように、計測点を効率よく追加することができる。
【0060】
本実施形態では、制御パラメータが2つの場合の2次元における例について述べたが、本発明は、制御パラメータが3つ以上の場合の3次元以上についても適宜対応付けて成立する。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
10 境界内計画評価装置
11 仮想照度評価値算出部
12 最小仮想照度評価値算出部
13 計測点算出部
14 目標値設定部
15 計画評価制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを制御する複数の制御パラメータにおいて、当該制御パラメータの限界値によって構成される運転可能領域の境界内に、当該制御パラメータの組み合わせによって前記エンジンの性能を計測するための計測点を配置する計画を評価する境界内計画評価装置であって、
前記計測点の位置に仮想光源を配置し、前記運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、前記運転可能領域の大きさと前記制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出する仮想照度評価値算出手段と、
前記運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに前記仮想照度評価値算出手段によって算出された前記仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める最小仮想照度評価値算出手段と、
を備える境界内計画評価装置。
【請求項2】
前記運転可能領域の範囲内に、新たな前記計測点の位置を算出する計測点算出手段と、
前記最小仮想照度評価値の目標値を設定する目標値設定手段と、
前記最小仮想照度評価値算出手段によって求められた前記最小仮想照度評価値が、前記目標値以上になるまで、前記計測点算出手段による前記計測点の算出と、前記最小仮想照度評価値算出手段による前記最小仮想照度評価値の算出とを繰り返すように制御する計画評価制御手段と、
をさらに備える請求項1に記載の境界内計画評価装置。
【請求項3】
前記計測点算出手段は、前記最小仮想照度評価値算出手段によって求められた前記最小仮想照度評価値に対応する位置を前記計測点の位置として算出する、請求項2に記載の境界内計画評価装置。
【請求項4】
エンジンを制御する複数の制御パラメータにおいて、当該制御パラメータの限界値によって構成される運転可能領域の境界内に、当該制御パラメータの組み合わせによって前記エンジンの性能を計測するための計測点を配置する計画を評価する境界内計画評価装置が実行する方法であって、
前記計測点の位置に仮想光源を配置し、前記運転可能領域の範囲内における任意の位置の仮想照度を示す仮想照度評価値を、前記運転可能領域の大きさと前記制御パラメータの数と配置された仮想光源とに基づいて算出する仮想照度評価値算出ステップと、
前記運転可能領域の範囲内で仮想照度評価値を算出する位置を変え、変えた位置ごとに前記仮想照度評価値算出ステップによって算出された前記仮想照度評価値のなかで、値が最も小さい最小仮想照度評価値を求める最小仮想照度評価値算出ステップと、
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−64636(P2013−64636A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203264(P2011−203264)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【出願人】(504202472)大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 (119)
【Fターム(参考)】