増幅プライマーおよびプールされた試料における突然変異の検出
【課題】多重増幅反応において使用されるオリゴヌクレオチドプライマーの設計および利用法を提供する。
【解決手段】多重増幅反応を最適化し、反応1回あたり150 pg未満のDNAを用いる遺伝子型判定に関するインベーダー(INVADER)アッセイ法と組合わせ、高度に多重化されたPCR法。プールされた核酸試料において突然変異の検出方法に利用できる。特に、インベーダー検出アッセイ法を用いて、プールされた核酸試料における突然変異を検出するため、および対立遺伝子を測定するために利用できる。
【解決手段】多重増幅反応を最適化し、反応1回あたり150 pg未満のDNAを用いる遺伝子型判定に関するインベーダー(INVADER)アッセイ法と組合わせ、高度に多重化されたPCR法。プールされた核酸試料において突然変異の検出方法に利用できる。特に、インベーダー検出アッセイ法を用いて、プールされた核酸試料における突然変異を検出するため、および対立遺伝子を測定するために利用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年10月12日に出願された米国特許仮出願第60/329,113号、2001年10月19日に出願された米国特許仮出願第60/360,489号、2001年5月9日に出願された米国特許仮出願第60/289,764号、および2001年10月2日に出願された米国特許仮出願第60/326,549号の優先権を主張する、2001年11月30日に出願された国際出願番号第PCT/US01/45705号からの日本国内移行段階である。
【0002】
発明の分野
本発明は、多重増幅反応において用いられるオリゴヌクレオチドプライマーを設計するための方法に関する。本発明はまた、多重増幅反応を最適化するための方法を提供する。本発明はまた、反応1回あたり150 pg未満のDNAを用いる遺伝子型判定のためにインベーダー(INVADER)アッセイ法と組合わせて高度に多重化されたPCR法を行うための方法を提供する。本発明はまた、プールされた核酸試料において突然変異を検出することに関する。特に、本発明は、インベーダー検出アッセイ法を用いてプールされた核酸試料において突然変異を検出するためおよび対立遺伝子を測定するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒトゲノムプロジェクトが完成に近づき、入手可能な遺伝子配列情報の量が増加するにつれて、ゲノム解析研究および続いて起こるドラッグデザインの試みも同様に増加している。ゲノム解析研究、ドラッグデザインおよび個人別医薬品において用いられうる検出アッセイ法の効率的オーダー、開発、生産および販売を可能にするシステムおよび方法に対する要求が存在している。多数の機関が、遺伝子、遺伝子発現および表現型(例えば、疾患状態、代謝応答など)間の相関関係を同定するために、入手可能な遺伝子配列情報を活発に調べている。これらの分析は、個体および集団における遺伝子突然変異の効果ならびに遺伝的および遺伝子発現の不均一性を特徴付ける試みを含む。しかしながら、多量の入手可能な配列情報にもかかわらず、多数の多型および他の変異の頻度ならびに臨床的関連性についての情報はまだ、獲得されかつ確証されなければならない。例えば、最近のゲノムシーケンシングの試みにおいて用いられるヒト参照配列は、どの人のゲノムに対しても厳密な整合を示さない。ヒトゲノムプロジェクト(HGP)において、研究者は、多数の供与者から血液(女性)または精液(男性)試料を収集した。しかしながら、ほんの少数の試料だけがDNA供給源として処理され、そしてその出所名は保護されて、供与者も科学者のどちらも誰のDNAがシーケンシングされているのかを知らない。民営のゲノム解析会社セレラ(Celera)により作製されたヒトゲノム配列は、ヒスパニック、アジア人、カフカス人またはアフリカ系アメリカ人として同定される5人の供与者から収集されたDNA試料に基づいた。その参照配列を作製するために用いられた少数のヒト試料は、集団グループおよび個体の間での遺伝的多様性を反映していない。ゲノム配列情報に基づいて個体を分析する試みは、失敗することが多い。例えば、多くの遺伝子検出アッセイ法は、ゲノムDNAまたはmRNAにある標的領域へのプローブオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに基づいている。その参照配列に基づいて作製されたプローブは、複数の個体についての標的配列がその参照配列と異なるため、失敗することが多い(例えば、正確にハイブリダイズしない、標的の特定の位置での配列を正確に特徴付けられない)。相違は、個体ごとに基盤をおく場合もあるが、多くは地域的集団パターンに従う(例えば、多くは人種、民族性、地理的土地、年齢、環境的曝露などに高く相関している)。現在入手可能な情報の利用性が限定されているため、当技術分野では、生体試料の研究および臨床的分析のための1つまたは複数の型の検出アッセイテクノロジーのアレイを提供することを目標とする、多量の遺伝子情報を獲得する、分析する、蓄積する、および適用するために1つまたは複数の生産装置において選択的に用いられうるシステムおよび方法が要求されている。これらの様々な要求を満たすことが本発明の目的である。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、多重増幅反応に用いられるオリゴヌクレオチドプライマーを設計するための方法を提供する。本発明はまた、多重増幅反応を最適化するための方法を提供する。本発明はまた、反応1回あたり150 pg未満のDNAを用いる遺伝子型判定のためにインベーダーアッセイ法と組合わせて高度に多重化されたPCR法を行うための方法を提供する。本発明はまた、プールされた核酸試料において突然変異を検出するための方法を提供する。特に、本発明は、インベーダー検出アッセイ法を用いてプールされた核酸試料において突然変異を検出するためおよび対立遺伝子を測定するための組成物および方法を提供する。
【0005】
いくつかの態様において、本発明は以下の段階を含む方法を提供する:
a)各標的配列がi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)少なくともY個の標的配列それぞれに対するフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。一つの変法において、顧客提供の配列が上流および下流へ自動的に増大されて本明細書記載の方法およびシステムを用いる適当なプライマー設計を可能にすることもまた認識されている。
【0006】
他の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法を提供する:
a)各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)少なくともY個の標的配列それぞれに対するフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0007】
特定の態様において、方法(次の機能性を提供するコンピュータープログラムおよびルーチンを含む)は以下を含む:
a)各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)i)Y個の標的配列それぞれについての5'領域の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについての3'領域の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0008】
他の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(次の機能性を提供するコンピュータープログラムおよびルーチンを含む)を提供する:
a)各標的配列がi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)i)Y個の標的配列それぞれについての5'領域の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについての3'領域の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0009】
特定の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(および次の機能性を提供するルーチン)を提供する:
a)各標的配列は一塩基多型を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;
b)フットプリント領域が各標的配列上に位置しているような一塩基多型を検出するために、各標的配列上のどこに1つまたは複数のアッセイプローブがハイブリダイズするかどうかを決定する段階;ならびに
c)i)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0010】
いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(および次の機能性を提供するルーチン)を提供する:
a)各標的配列は一塩基多型を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;
b)フットプリント領域が各標的配列上に位置しているような一塩基多型を検出するために、各標的配列上のどこに1つまたは複数のアッセイプローブがハイブリダイズするものであるかを決定する段階;ならびに
c)プライマーセットはi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドTまたはGであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0011】
ある態様において、プライマーセットは、少なくともY個の単位複製配列を増幅する多重PCR反応を行うために構成され、各単位複製配列はフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列の位置により限定される。その他の態様において、プライマーセットは、デジタル式のまたは印刷された配列情報として作製される。いくつかの態様において、プライマーセットは、物理的なプライマーオリゴヌクレオチドとして作製される。本明細書の方法、ルーチンおよび構成要素を用いて、100重およびそれ以上のPCRプライマー反応を起こすことが可能である。
【0012】
ある態様において、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'は、プライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'にも相補的でない。その他の態様において、処理は、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含む。特定の態様において、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のGまたはTとして最初に選択することを含む。いくつかの態様において、処理は、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含み、かつ処理が、各フォワードプライマーのN[2]-N[1]-3'がプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'に相補的でないという必要条件を欠くフォワードプライマー配列について、N[1]を5'領域において次に最も3'側のAまたはCに変えることをさらに含む。
【0013】
他の態様において、(好ましくは電子的)処理段階は、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域の相補体における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含む。いくつかの態様において、処理は、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域の相補体における最も3'側のGまたはTとして最初に選択することを含む。さらなる態様において、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含み、かつ処理が、リバースプライマーのN[2]-N[1]-3'それぞれがプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'に相補的でないという必要条件を欠くリバースプライマー配列について、N[1]を3'領域において次に最も3'側のAまたはCに変えることをさらに含む。
【0014】
特定の態様において、フットプリント領域は、一塩基多型を含む。いくつかの態様において、フットプリントは突然変異を含む。いくつかの態様において、各標的配列についてのフットプリント領域は、一塩基多型を検出するために構成された1つまたは複数のアッセイプローブにハイブリダイズする標的配列の部分を含む。特定の態様において、フットプリントは、そのプローブがハイブリダイズするこの領域である。その他の態様において、フットプリントは、どちらの末端にでも付加的ヌクレオチドをさらに含む。
【0015】
いくつかの態様において、(本発明の変法の1つにおける電子的な)処理段階は、アッセイ構成要素配列と80パーセント未満の相同性が存在するように、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてN[5]-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'を選択することをさらに含む。好ましい態様において、アッセイ構成要素は、FRETプローブ配列である。特定の態様において、標的配列は、約300塩基対〜500塩基対長、または約200塩基対〜600塩基対長である。特定の態様において、Yは、2から500の間、または2〜10,000の間の整数である。
【0016】
ある態様において、(本発明の変法の1つにおいては電子的な)処理段階は、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度(例えば、摂氏50度、または少なくとも摂氏50度、かつ摂氏55度を越えない)の標的配列に関する融解温度をもつように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのxを選択することを含む。好ましい態様において、プライマーの融解温度(標的配列とハイブリダイズする場合の)は、少なくとも摂氏50度であるが、選択された検出アッセイ法の最適反応温度より少なくとも10度違う。
【0017】
いくつかの態様において、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの対の最適化された濃度は、そのプライマーセットに対して決定される。その他の態様において、処理は自動化される。さらなる態様において、処理は処理装置で自動化される。
【0018】
他の態様において、本発明は、本発明の方法により作製されるプライマーセット、および少なくとも1つの他の構成要素(例えば、切断剤、ポリメラーゼ、インベーダーオリゴヌクレオチド、または本発明のもう一つの変法における他の検出アッセイ法もしくは検出アッセイ構成要素)を含むキットを提供する。特定の態様において、本発明は、本発明の方法により作製されるプライマーおよびプライマーセットを含む組成物を提供する。
【0019】
特定の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(および方法論を利用するルーチン)を提供する:a)i)配列データを受け取るように設定されたユーザーインターフェース、ii)その中に多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムを供給する段階と、b)配列データをユーザーインターフェースからコンピューターシステムへ送信する段階であり、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む段階と、c)プライマーセットを作製するために多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションで標的配列情報を処理する段階であり、プライマーセットがi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む段階。
【0020】
いくつかの態様において、本発明は以下の段階を含む方法(および方法論に用いられるルーチン)を提供する:a)i)配列データを受け取るように設定されたユーザーインターフェース、ii)その中に多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムを供給する段階と、b)配列データをユーザーインターフェースからコンピューターシステムへ送信する段階であり、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む段階と、c)プライマーセットを作製するために多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションで標的配列情報を処理する段階であり、プライマーセットがi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む段階。
【0021】
ある態様において、本発明は以下を含むシステムを提供する:a)ユーザーインターフェースからデータを受け取るように設定されたコンピューターシステム(および方法論に用いられるルーチン)であり、ユーザーインターフェースは配列データを受け取るように設定されており、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、b)ユーザーインターフェースに操作可能に連結された多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションであり、多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションはプライマーセットを作製するために標的配列情報を処理するように設定されており、プライマーセットはi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む、ならびにc)その中に多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムであり、コンピューターシステムはコンピューターメモリーおよびコンピューター処理装置を含む。
【0022】
他の態様において、本発明は以下を含むシステムを提供する:a)ユーザーインターフェースからデータを受け取るように設定されたコンピューターシステムまたはコンピューターであり、ユーザーインターフェースは配列データを受け取るように設定されており、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、b)ユーザーインターフェースに操作可能に連結された多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションであり、多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションはプライマーセットを作製するために標的配列情報を処理するように設定されており、プライマーセットはi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む、ならびにc)その中に多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムであり、コンピューターシステムはコンピューターメモリーおよびコンピューター処理装置を含む。特定の態様において、コンピューターシステムはプライマーセットをユーザーインターフェースへ戻すように設定されている。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は、プールされた核酸試料において突然変異を検出することに関する。特に、本発明は、インベーダー検出アッセイ法または本明細書に記載される他の検出アッセイ法を用いて、プールされた核酸試料において突然変異を検出するまたは対立遺伝子頻度を測定するための組成物および方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む、多型の対立遺伝子頻度を検出するための方法を提供する:
a)i)プールされた試料が少なくとも10個の個体(または少なくとも50個、または少なくとも100個、または少なくとも250個、または少なくとも500個、または少なくとも1000個の個体など)に由来する標的核酸配列を含む、プールされた試料;および
ii)多型の有無を検出するように設定されたインベーダー検出試薬(例えば、一次プローブ、インベーダーオリゴヌクレオチド、FRETカセット、構造特異的酵素など)
を供給する段階;ならびに、
b)プールされた試料を検出可能なシグナルを産生するインベーダー検出試薬に接触させる段階;ならびに、
c)検出可能なシグナルを測定し、それにより多型を含む標的核酸配列の数を決定する段階(例えば、分子の量的数、または集団における多型についての対立遺伝子頻度が決定される)。いくつかの態様において、特定の標的核酸遺伝子座について2つまたはそれ以上の対立遺伝子由来のシグナルが測定され、かつその数が比較される。好ましい態様において、特定の標的核酸遺伝子座の2つまたはそれ以上の異なる対立遺伝子についての測定は、単一反応において測定される。その他の態様において、特定の標的核酸遺伝子座の1つまたは複数の対立遺伝子由来の測定は、1つまたは複数の参照標的核酸遺伝子座からの測定と比較される。好ましい態様において、特定の標的核酸遺伝子座の1つまたは複数の対立遺伝子由来の測定は、同じ反応混合物における1つまたは複数の参照標的核酸遺伝子座からの測定と比較される。さらなる方法は、単一の個体の特定の対立遺伝子頻度(すなわち、個体内における配列の複数コピーの間での突然変異の頻度)または多型を有することを見出された分子の量的数(例えば、インベーダーアッセイ法により測定される)を集団の対立遺伝子頻度(または予想される数)と比較することを可能にして、その単一の個体が疾患に罹りやすいかどうか、疾患はどのくらい進行しているか(例えば、ヘテロ接合性の損失を同定することにより診断されうる癌のような疾患)などが決定される。いくつかの態様において、個体は、同じ人種または民族の部類由来である(例えば、ヨーロッパ人、アフリカ人、アジア人、メキシコ人など)。
【0024】
特定の態様において、本発明は、以下の段階を含むまれな突然変異を検出するための方法を提供する:a)i)試料が少なくとも10,000個の標的核酸配列(例えば、10,000個の細胞由来、または少なくとも20,000個の標的核酸配列、または少なくとも100,000個の標的核酸配列)を含む、単一対象由来の試料、ii)野生型対立遺伝子と比較して1:1000またはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる検出アッセイ法(例えば、インベーダーアッセイ法)を供給する段階;およびb)まれな突然変異(例えば、野生型と比較して1:100、または1:500、または1:1000もしくはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在するもの)の有無が検出されるような条件下で検出アッセイ法で試料をアッセイする段階。いくつかの態様において、標的核酸配列はゲノムである(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、つまりPCR増幅されず、細胞から直接的に)。その他の態様において、標的核酸配列は増幅されている(例えば、PCRにより)。
【0025】
いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含むまれな突然変異を検出するための方法を提供する:a)i)試料が少なくとも10,000個の標的核酸配列を含む、単一対象由来の試料、ii)野生型対立遺伝子と比較して1:1000またはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる検出アッセイ法を供給する段階;およびb)まれな突然変異の試料における対立遺伝子頻度が測定されるような条件下で検出アッセイ法で試料をアッセイする段階。いくつかの態様において、診断がなされうるように(例えば、疾患の程度、その疾患をもつことまたはそれを子孫へ伝えることの見込みなど)、対象の対立遺伝子頻度は、既知の参照対立遺伝子頻度と統計学的に比較される。
【0026】
本発明はまた、例えば、インベーダーアッセイ法を用いることにより試料に存在する1つまたは複数の多型の分子の数を測定するための方法を提供する(例えば、疾患に関連しているSNPsのような多型)。このアッセイ法は、第一試料での特定の多型の数を測定し、その後、その数と第二試料での同じ多型の数との間に統計学的有意差があるかどうかを決定するために用いられうる。好ましくは、1つの試料は、健康な個体から、またはプールされた試料が使用される場合には健康な集団から得られる試料において発生すると予想される多型の数を提示する。健康な個体において一塩基遺伝子座にあると予想される多型の数と患者から得られる試料においてあると測定された数との間の統計学的有意差は、臨床上、示唆するものである。
【0027】
添付の図面は、本明細書の一部をなし、本発明の特定の局面および態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に示されている特定の態様の記載と合わせて、1つまたは複数のこれらの図面を参照することにより、より理解されうる。
【0028】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を下記のように定義する。
【0029】
本明細書に用いられる「コンピューターメモリー」および「コンピューターメモリー装置」という用語は、コンピューター処理装置により読める任意の記憶媒体を指す。コンピューターメモリーの例には、これらに限定されるわけではないが、RAM、ROM、コンピューターチップ、デジタルビデオディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、ハードディスクドライブ(HDD)、および磁気テープが含まれる。
【0030】
本明細書に用いられる「コンピューター可読媒体」という用語は、情報(例えば、データおよび命令)を記憶し、かつコンピューター処理装置へ供給するための任意の装置またはシステムを指す。コンピューター可読媒体の例には、これらに限定されるわけではないが、DVD、CD、ハードディスクドライブ、磁気テープおよびネットワークを通じてのストリーミングメディアのためのサーバーが含まれる。
【0031】
本明細書に用いられる「処理装置」および「中央処理装置」または「CPU」という用語は互換的に用いられうり、コンピューターメモリー(例えば、ROMまたは他のコンピューターメモリー)からのプログラムを読むことができる装置を指し、プログラムに従ってステップのセットを実行する。
【0032】
本明細書に用いられる「SNP」、「SNPs」または「一塩基多型」という用語は、生物体(例えば、ヒト)のゲノムにおける特定の位置での一塩基の変化を指す。「SNPs」は、遺伝子としてコードされないゲノムの部分に位置されうる。または、「SNP」は遺伝子のコード領域に位置される場合がある。この場合、その「SNP」は、それが関連しているRNAまたはタンパク質の構造および機能を変化させる可能性がある。
【0033】
本明細書に用いられる「対立遺伝子」という用語は、所与の配列の変異型を指す(例えば、これらに限定されるわけではないが、1つまたは複数のSNPを含む遺伝子)。集団において、複対立遺伝子型として多数の遺伝子が存在する。ホモ接合体は同じ対立遺伝子の2つのコピーを有するのに対して、遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を有する二倍体生物は、その遺伝子についてヘテロ接合性であると言われる。
【0034】
本明細書に用いられる「連鎖」という用語は、染色体上の2つまたはそれ以上のマーカー(例えば、遺伝子)の近接を指す。
【0035】
本明細書に用いられる「対立遺伝子頻度」という用語は、所与の集団(例えば、特定の性、人種、または民族集団)において所与の対立遺伝子(例えば、SNPを含む配列)の発生頻度を指す。特定集団が、所与の対立遺伝子を、他集団よりも高い割合(%)の範囲内でそのメンバーを含む場合がある。例えば、BRCA1と呼ばれる乳癌遺伝子における特殊な突然変異が、一般的なユダヤ人集団の1パーセントに存在することが見出された。比較すると、BRCA1になんらかの突然変異をもつ一般的な米国集団における人々の割合(%)は、0.1パーセント〜0.6パーセントの間であると見積もられている。2つのさらなる突然変異(BRCA1遺伝子内のものと、BRCA2と呼ばれるもう一つの乳癌遺伝子内にあるもの)は、アシュケナジ(Ashkenazi)のユダヤ人集団においてより大きい普及率をもち、これらの3つの突然変異のうちの1つを保有することについての総合的リスクは2.3パーセントになる。
【0036】
本明細書に用いられる「インシリコ(in silico)分析」という用語は、コンピューター処理装置およびコンピューターメモリーを用いて実行される分析を指す。例えば、「インシリコSNP分析」とは、コンピューター処理装置およびメモリーを用いるSNPデータの分析を指す。
【0037】
本明細書に用いられる「遺伝子型」という用語は、生物体の実際的な遺伝子組成を指す(例えば、遺伝子座に有する特定の対立遺伝子に関して)。遺伝子型の発現は、生物体の身体的外観および特徴(「表現型」)を生じさせる。
【0038】
本明細書に用いられる「遺伝子座」という用語は、染色体上における遺伝子または任意の他の特徴付けられた配列の位置を指す。
【0039】
「野生型」という用語は、天然に存在する源から単離された場合のその遺伝子または遺伝子産物の特徴をもつ遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察されるものであり、従って、その遺伝子の「正常」または「野生型」の形態を任意に意図される。対照的に、「改変された」、「変異体(mutant)」および「変種(variant)」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較される場合、配列および/または機能的性質における改変(すなわち、変化した特徴)を見せる遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体が単離されうることを特に言及しておくが、これらは野生型遺伝子または遺伝子産物と比較される場合、変化した特徴をもつという事実により同定される。
【0040】
本明細書に用いられる「相補的な」または「相補性」という用語は、塩基対構成ルールにより関係付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して用いられる。例えば、配列「5'-A-G-T-3'」については、配列「3'-T-C-A-5'」に相補的である。相補性は、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対構成ルールに従って整合されている「部分的」でありうる。または、核酸間に「完全な」または「全体的」相補性がありうる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強さに有意な効果を及ぼす。これは、増幅反応において、加えて、核酸間の結合に依存する検出方法においても特別重要である。
【0041】
本明細書に用いられる「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対構成に関して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強さ(すなわち、核酸間の結合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、構成されたハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比のような因子により強く影響される。
【0042】
本明細書に用いられる「Tm」という用語は、「融解温度」に関して用いられる。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が半分解離して一本鎖になる時の温度である。核酸のTmを計算するための方程式は当技術分野においてよく知られている。標準的参照文献により示されるように、Tm値の簡単な概算は、核酸が1 M NaClの水溶液中にある場合、方程式:Tm = 81.5 + 0.41 (% G + C)により計算されうる(AndersonおよびYoung、「定量的フィルターハイブリダイゼーション(Quantitative Filter Hybridization)」、「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」中、(1985)を参照)。その他の参照には、Tmの計算について配列上の特性および構造上の特性を考慮に入れる、より非常に複雑な計算法が含まれる。
【0043】
本明細書に用いられる「ストリンジェンシー」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる時の、温度、イオン強度、および有機溶媒のような他の化合物の存在の条件に関して用いられる。上述されたばかりのパラメーターを、別々にまたは一斉に変化させることにより「ストリンジェンシー」条件が変化されうることを、当業者は認識すると考えられる。「高ストリンジェンシー」条件では、核酸塩基対構成は、相補的塩基配列が高頻度にある核酸断片間のみ生じるであろう(例えば、「高ストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、約85 %〜100 %の同一性、好ましくは約70 %〜100%の同一性をもつ相同体の間で起こりうる)。中程度のストリンジェンシー条件では、核酸塩基対構成は、相補的塩基配列が中間の頻度にある核酸間に生じるであろう(例えば、「中程度のストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、約50 %〜70 %の同一性をもつ相同体の間に起こりうる)。このように、遺伝的に多様な生物体由来の核酸については、相補的配列の頻度が通常は、より低いため、「弱い」または「低い」ストリンジェンシーの条件が要求されることが多い。
【0044】
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「高ストリンジェンシー条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、5×SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.5 % SDS、5×デンハルト試薬および100 μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合またはハイブリダイゼーション、続いて、0.1×SSPE、1.0 % SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。
【0045】
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「中程度のストリンジェンシー条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、5×SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.5 % SDS、5×デンハルト試薬および100 μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合またはハイブリダイゼーション、続いて、1.0×SSPE、1.0 % SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。
【0046】
「低ストリンジェンシー条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、5×SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.1 % SDS、5×デンハルト試薬[50×デンハルト試薬500 mlあたり、5 gフィコール(400型、ファルマシア(Pharmacia))、5 g BSA(フラクションV;シグマ(Sigma))を含む]および100 g/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合またはハイブリダイゼーション、続いて、5×SSPE、0.1 % SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。
【0047】
「増幅」とは、鋳型特異性に伴う特殊な場合の核酸複製である。それは、非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存性であるが、特定の鋳型に依存しない)と対照的である。鋳型特異性は、ここでは、複製の忠実度(すなわち、正確なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)特異性から区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性という用語で記載されることが多い。標的配列は、それらが他の核酸から区別されるように求められるという意味において「標的」である。増幅技術は、初めは、この区別することについて設計された。
【0048】
鋳型特異性は、酵素の選択により、たいていの増幅技術において達成される。増幅酵素は、不均一の核酸混合物において核酸の特定の配列のみを処理しようとする。例えば、Qレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAはそのレプリカーゼについての特異的鋳型である(D. L. Kacianら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69: 3038[1972])。その他の核酸はこの増幅酵素により複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素はそれ自身のプロモーターに対してストリンジェントな特異性をもつ(M. Chamberlinら、Nature 228: 227[1970])。T4 DNAリガーゼの場合、酵素は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの基質と鋳型との間のミスマッチがライゲーション接合部にある、その2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをライゲーションしようとしない(D. Y. WuおよびR. B. Wallace、Genomics 4: 560[1989])。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力によって、プライマーにより結合され、かつこのように限定される配列に対して高い特異性を見せることが見出されているが、その高温は、結果として、その標的配列とのプライマーのハイブリダイゼーションに有利であり、標的非含有配列とのハイブリダイゼーションに有利ではない熱力学的状態を生じる(H. A. Erlich(編)、「PCRテクノロジー(PCR Technology)」、ストックトンプレス(Stockton Press)[1989])。
【0049】
本明細書に用いられる「増幅可能な核酸」という用語は、任意の増幅方法により増幅されうる核酸に関して用いられる。「増幅可能な核酸」とは通常、「試料鋳型」を含むものであることが企図されている。
【0050】
本明細書に用いられる「試料鋳型」という用語は、「標的」(下記に定義されている)の存在について分析される試料に由来する核酸を指す。対照的に、「バックグラウンド鋳型」とは、試料に存在するまたは存在しない可能性がある、試料鋳型を除く核酸に関して用いられる。バックグラウンド鋳型は、不注意に起因することが多い。それは、持ち越し汚染の結果である可能性がある、または試料から精製し取り去られるように求められる核酸夾雑物の存在による可能性がある。例えば、検出されるべき核酸を除く生物体由来の核酸は、試験試料にバックグラウンドとして存在する可能性がある。
【0051】
本明細書に用いられる「プライマー」という用語は、精製された制限酵素消化物の形として自然発生していようが合成的に作製されようが、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘発される条件下に置かれた場合(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘発剤の存在下で、適した温度およびpHで)、合成の開始点としての機能を果たす能力があるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、増幅において最高の効率のために、好ましくは、一本鎖であるが、または二本鎖であってもよい。二本鎖の場合には、プライマーは最初、伸長産物を調製するために使用される前にその鎖を分離するために処理される。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘発剤の存在下において伸長産物の合成を開始するのに十分長くなければならない。プライマーの的確な長さは、温度、プライマーの供給源および方法の用途を含む多くの因子に依存するであろう。
【0052】
本明細書に用いられる「プローブ」または「ハイブリダイゼーションプローブ」という用語は、精製された制限酵素消化物の形として自然発生していようが合成的に、組換えで、またはPCR増幅により作製されようが、関心対象の別のオリゴヌクレオチドに、少なくとも一部的に、ハイブリダイズする能力があるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。プローブは、一本鎖または二本鎖でありうる。プローブは、特定の配列の検出、同定および単離に有用である。いくつかの好ましい態様において、本発明に用いられるプローブは、これらに限定されるわけではないが、酵素(例えば、ELISA、および酵素に基づく組織化学アッセイ法)、蛍光、放射性、および発光のシステムを含む、任意の検出系において検出可能であるように「レポーター分子」により標識されているものである。本発明は、任意の特定の検出系または標識に限定されることを意図したものではない。
【0053】
本明細書に用いられる「標的」という用語は、検出されるまたは特徴付けされる核酸配列または構造を指す。
【0054】
本明細書に用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、クローニングまたは精製なしに、ゲノムDNAの混合物において標的配列のセグメントの濃度を増加するための方法を記載した、K. B. Mullisの方法(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,965,188号を参照)を指す。標的配列を増幅するためのこの段階は、所望の標的配列を含むDNA混合物へ2つのオリゴヌクレオチドプライマーの大過剰量を導入すること、続いて、DNAポリメラーゼの存在下のサーマルサイクリングの正確な連続からなる。その2つのプライマーは、二本鎖標的配列それぞれの鎖に相補的である。増幅を果たすために、その混合物を変性させ、その後、プライマーを標的分子内のそれらの相補的配列へアニーリングさせる。アニーリング後、プライマーは、相補的鎖の新しい対を構成するために、ポリメラーゼで伸長される。変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長の段階を所望の標的配列の増幅されたセグメントの高濃度を得るために、多数回、繰り返すことができる(すなわち、変性、アニーリングおよび伸長は1つの「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」がありうる)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、お互いに関するプライマーの相対的位置により決定され、それゆえ、この長さは、制御可能なパラメーターである。段階の繰り返しの局面によって、その方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下「PCR」)と呼ばれる。所望の増幅された標的配列のセグメントが混合物において優勢な配列(濃度に関して)になるため、それらは「PCR増幅」されていると言われる。
【0055】
PCRを用いて、ゲノムDNAにおいて特定の標的配列の単一のコピーをいくつかの異なる方法(例えば、標識されたプローブでのハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの組込み、続いてアビジン-酵素結合体検出;dCTPまたはdATPのような、32P標識化デオキシヌクレオチド三リン酸の増幅されたセグメントへの組込み)により検出可能なレベルまで増幅することが可能である。ゲノムDNAに加えて、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列をプライマー分子の適当なセットで増幅することができる。特に、PCR段階自身により産生された増幅セグメントは、それら自身、次のPCR増幅のための有効な鋳型である。
【0056】
本明細書に用いられる「PCR産物」、「PCR断片」および「増幅産物」という用語は、変性、アニーリングおよび伸長のPCR段階の2回またはそれ以上のサイクルが完結した後に結果として生じる化合物の混合物を指す。これらの用語は、1つまたは複数の標的配列の1つまたは複数のセグメントの増幅があった場合を包含する。
【0057】
本明細書に用いられる「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型および増幅酵素を除いて増幅のために必要とされるそれらの試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)を指す。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分といっしょに置かれて、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に入れられている。
【0058】
本明細書に用いられる「試料」という用語は、その最も広い意味において用いられる。ヒト染色体またはヒト染色体に関連している配列を含むと推測される試料は、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、中期染色体のスプレッド)、(溶液中のまたはサザンブロット分析用のような固体支持体に結合した)ゲノムDNA、(溶液中のまたはノーザンブロット分析用のような固体支持体に結合した)RNA、(溶液中のまたは固体支持体に結合した)cDNAなどを含みうる。タンパク質を含むと推測される試料は、細胞、組織部分、1つまたは複数のタンパク質を含む抽出物などを含みうる。
【0059】
本明細書に用いられる「標識」という用語は、検出可能な(好ましくは定量可能な)効果を与えるために使用されうり、かつ核酸またはタンパク質に付着されうる任意の原子または分子を指す。標識は、これらに限定されるわけではないが、色素;32Pのような放射性標識;ビオチンのような結合部分;ジゴキシゲニンのようなハプテン;発光性、リン光性または蛍光発生的部分;および蛍光色素の単独または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により発光スペクトルを抑制もしくは転換することができる部分との組合わせを含む。標識は、蛍光、放射能、比色、重量測定、X線回折または吸着、磁気、酵素活性などにより検出可能なシグナルを供給しうる。標識は、荷電した部分(陽電荷または陰電荷)でありうり、または電荷中性でありうる。標識は、その標識を含む配列が検出可能である限り、核酸またはタンパク質の配列を含むまたは構成することができる。
【0060】
本明細書に用いられる「シグナル」という用語は、標識またはアッセイ反応により引き起こされるまたは供給されるような任意の検出可能な効果を指す。
【0061】
本明細書に用いられる「検出アッセイ構成要素」という用語は、検出アッセイを行うことができるシステムの構成要素を指す。検出アッセイ構成要素は、これらに限定されるわけではないが、ハイブリダイゼーションプローブ、緩衝液などを含む。
【0062】
本明細書に用いられる「キット」という用語は、材料を配達するための任意の配達系を指す。反応アッセイに関連しては、そのような配達系は、ある場所から別の場所へ、反応試薬(例えば、適当な容器中におけるオリゴヌクレオチド、酵素など)および/もしくは補助材料(例えば、緩衝液、そのアッセイを実施するための書面にした使用説明書)の保管、輸送または配達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連性のある反応試薬および/または補助材料を含む1つまたは複数の封入物(例えば、箱)を含む。本明細書に用いられる「分割化キット」という用語は、それぞれが全キット構成要素の一部を含む2つまたはそれ以上の別個の容器を含む配達系を指す。容器は、意図された受取人へいっしょにまたは別々に配達されうる。例えば、第一の容器はアッセイ用の酵素を含み、一方、第二の容器はオリゴヌクレオチドを含む。「分割化キット」という用語は、米連邦食品医薬品化粧品法の520(e)項下に規制される分析物特定試薬(Analyte specific reagents)(ASR's)を含むキットを包含するものとするが、それに限定されるものではない。実際に、それぞれが全キット構成要素の一部を含む2つまたはそれ以上の別個の容器を含む任意の配達系が「分割化キット」という用語に含まれる。対照的に、「一体化キット」とは、単一の容器に反応アッセイの構成要素のすべてを含む(例えば、望ましい構成要素のそれぞれを収容する単一の箱において)配達系を指す。「キット」という用語は、分割化キットおよび一体化キットの両方を含む。
【0063】
本明細書に用いられる「情報」という用語は、事実またはデータの任意の収集を指す。これに限定されるわけではないが、インターネットを含むコンピューターシステムを用いて記憶されるまたは処理される情報に関して、本用語は、任意のフォーマット(例えば、アナログ、デジタル、光学式など)で記憶される任意のデータを指す。本明細書に用いられる「対象に関連する情報」という用語は、対象(例えば、ヒト、植物または動物)に関係する事実またはデータを指す。「ゲノム情報」という用語は、これらに限定されるわけではないが、核酸配列、遺伝子、対立遺伝子頻度、RNA発現レベル、タンパク質発現、遺伝子型に対応する表現型などを含むゲノムに関係する情報を指す。「対立遺伝子頻度情報」とは、これらに限定されるわけではないが、対立遺伝子同定、対立遺伝子の存在と対象(例えば、ヒト対象)の特徴との間の統計学的相関関係、個体または集団における対立遺伝子の有無、1つまたは複数の特殊な特徴をもつ個体において対立遺伝子が存在することの見込みの割合(%)などを含む、対立遺伝子頻度に関係する事実またはデータを指す。
【0064】
本明細書に用いられる「アッセイ確証情報」という用語は、試験結果データの処理(例えば、コンピューターを利用しての処理)の結果として生じるゲノム情報および/または対立遺伝子頻度情報を指す。アッセイ確証情報は、例えば、特定の候補検出アッセイ法を有効な検出アッセイ法として同定するために使用されうる。
【0065】
本明細書に用いられる「まれな突然変異」という用語は、試料中において核酸分子の母集団の20 %またはそれ未満(好ましくは10 %またはそれ未満、より好ましくは5 %またはそれ未満、およびさらに好ましくは1 %またはそれ未満)で存在する突然変異を指す(すなわち、核酸分子の残りの80 %またはそれ以上は、核酸分子の対応する領域において野生型配列または異なる突然変異を有する)。
【0066】
シグナルに関して本明細書で用いられる「独特な」という用語は、例えば、蛍光発光波長、色、吸光度、質量、サイズ、蛍光偏光特性、電荷などのようなスペクトルの特性により、または化学的試薬、酵素、抗体などとのような別の部分との相互作用の能力により、別のものと差異を認められうるシグナルを指す。
【0067】
発明の詳細な説明
以下の考察は、本発明の特定の好ましい例示的態様の説明を提供し、本発明の範囲を限定するものではない。便宜上、考察は、本発明の出願上、DNA標的の検出に焦点を合わせているが、その方法およびシステムが任意の核酸分析物、例えば、DNAまたはRNAの分析用の道具の開発における使用に向けられることは、理解されるべきである。また、例示のために、考察は、インベーダーアッセイテクノロジーを用いるSNPsの特徴付けに焦点を合わせていることが多い。本発明の方法およびシステムが広く様々な検出アッセイテクノロジーを用いて他の生物学的に関連性のある因子を検出することにおける使用に向けられることは理解されるべきである。
【0068】
I. 検出アッセイ
1つまたは複数の位置にある標的核酸の配列を決定するために利用可能である検出テクノロジーは、広く様々に存在する。例えば、SNPsの有無を検出するために利用可能な多数のテクノロジーが存在する。これらの技術の多くは、標的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの使用を必要とする。用いられるアッセイ法に依存して、そのオリゴヌクレオチドはその後、切断される、伸長される、結合される、解離される、または他の状態に変化させられ、そのアッセイ法におけるその挙動は、標的核酸の配列を特徴付けるための手段としてモニターされる。これらのテクノロジーのいくつかは下記の第V項において詳細に記載されている。
【0069】
本発明は、検出アッセイ法において使用されるオリゴヌクレオチドの設計のためのシステムおよび方法を提供する。特に、本発明は、検出アッセイのために望ましい反応条件(例えば、温度、緩衝液の条件など)下で、標的核酸の適当な領域(例えば、二次構造を含まない標的核酸の領域)にうまくハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの設計のためのシステムおよび方法を提供する。システムおよび方法はまた、その検出アッセイ法において同じまたは実質的に同じ反応条件下ですべて機能する、複数の異なるオリゴヌクレオチド(例えば、標的核酸の異なる部分にハイブリダイズする、または2つまたはそれ以上の異なる標的核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド)の設計を可能にする。これらのシステムおよび方法はまた、実験反応条件下で作用する対照試料を設計するために用いられうる。本発明はまた、検出される標的配列を増幅するための配列を設計するための方法を提供する(例えば、多重PCRのためのPCRプライマーの設計)。
【0070】
本発明のシステムおよび方法は、いずれの特定の検出アッセイ法にも限定されないが、以下の説明は、関心対象のSNPまたは他の配列を検出するための本発明の好ましい特徴を例示するために、インベーダーアッセイ法(Third Wave Technologies、Madison、WI;例えば、それぞれがあらゆる目的のために完全に参照として本明細書に組み入れられている、米国特許第5,846,717号;第6,090,543号;第6,001,567号;第5,985,557号;第5,994,069号、第6,214,545号、第6,210,880号、および第6,194,880号;Lyamichevら、Nat. Biotech.、17: 292 (1999)、Hallら、PNAS、USA、97: 8272 (2000)、Agarwalら、Diagn. Mol. Pathol. 9: 158 [2000]、Cookseyら、Antimicrob. Agents Chemother. 44: 1296 [2000]、GriffinおよびSmith、Trends Biotechnol.、18: 77 [2000]、GriffinおよびSmith、Analytical Chemistry 72: 3298 [2000]、Hessnerら、Clin. Chem. 46:1051 [2000]、Ledfordら、J. Molec. Diagnostics 2: 97 [2000]、Lyamichevら、Biochemistry 39: 9523 [2000]、Meinら、Genome Res.、10: 330 [2000]、Neriら、Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis 3826: 117 [2000]、Forsら、Pharmacogenomics 1: 219 [2000]、Griffinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 6301 [1999]、Kwiatkowskiら、Mol. Diagn. 4: 353 [1999]、およびRyanら、Mol. Diagn. 4: 135 [1999]、Maら、J. Biol. Chem.、275: 24693 [2000]、Reynaldoら、J. Mol. Biol.、297: 511 [2000]、およびKaiserら、J. Biol. Chem.、274: 21387 [1999];および国際公開公報第97/27214号、国際公開公報第98/42873号、および国際公開公報第98/50403号を参照されたい)と組合わせて用いられる場合の本発明を例示する。インベーダーアッセイ法は、本発明のシステムおよび方法と共に用いられる場合、検出パネル、ASRsおよび臨床的診断における使用にかなう簡単な使用および感度レベルを提供する。本例示的実施例の特定的および一般的な特徴は、概して、他の検出アッセイ法に適用できることを当業者は認識すると考えられる。
【0071】
A. インベーダーアッセイ法
インベーダーアッセイ法は、標的核酸の存在に依存する核酸切断構造を構成するため、および特有の切断産物を遊離するために核酸切断構造を切断するための手段を提供する(図1参照)。例えば、5'ヌクレアーゼ活性は、標的依存性切断構造を切断するために用いられ、その結果生じた切断産物は、試料中の特定の標的核酸配列の存在を示す。核酸またはオリゴヌクレオチドの2本の鎖が両方共、下記のように、重複している侵入型切断構造を構成するように、標的核酸鎖にハイブリダイズする場合、侵入型切断が生じることができる。切断剤(例えば、5'ヌクレアーゼ)と上流オリゴヌクレオチドとの相互作用を通して、切断剤が特有の断片を生じるような様式で内部部位で下流オリゴヌクレオチドを切断しようとさせることができる。
【0072】
インベーダーアッセイ法は、温度サイクリング(すなわち、標的核酸鎖の間欠的変性のため)または核酸合成(すなわち、標的またはプローブの核酸鎖の重合に基づく置換のため)を用いる必要なしに、標的核酸が、オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションおよびそのプローブの切断の複数回の繰り返しの間に再使用または再生利用される検出アッセイ法を提供する。プローブが連続的に標的鎖上で置換される条件下で(プローブ-プローブの置換を通して、もしくはプローブ/標的の結合と解離の間の平衡を通して、またはこれらの機構を含む組合わせを通して(Reynaldoら、J. Mol. Biol. 97: 511-520 [2000]))、切断反応が行われる場合、複数のプローブが同じ標的へハイブリダイズすることができ、複数の切断および複数の切断産物の生成が可能になる。
【0073】
他のアッセイ法と同様に、インベーダーアッセイ法もまた、縮重したオリゴヌクレオチド(例えば、縮重したインベーダーおよびプローブオリゴヌクレオチド)を使用しうる。例えば、標準インベーダーオリゴヌクレオチドおよびプローブは、縮重したインベーダーおよび/またはプローブオリゴヌクレオチドの1セットが作製されるように、もう1つの位置でランダムに変化されうる。インベーダーおよびプローブのオリゴヌクレオチドの縮重したセットは、特に、甚だしく変異される傾向にある標的配列(例えば、HIV-1 pol遺伝子)に関連して用いるために有用である。そのようなインベーダーおよびプローブのオリゴヌクレオチドの縮重したセットを用いることは、たとえその周囲配列がもはや野生型または予想される配列を表していないとしても、検出される特定の位置での標的配列の存在を認める。
【0074】
インベーダーアッセイテクノロジーは、mRNAを定量するために用いられうる(例えば、標的増幅なしで)。低可変性(3 %〜10 %変異係数)により、mRNAレベルにおいて2倍未満の変化の正確な定量が提供される。FRETに基づく二重検出形式は、同じ試料内の2つの遺伝子由来の発現の同時定量を可能にする。これらの遺伝子の1つは、内部標準として用いられる不変のハウスキーピング遺伝子であることができる。関心対象の遺伝子由来のシグナルを内部標準で標準化することは、正確な結果を与え、かつ複製試料の必要性を不要にする。簡単かつ迅速な細胞溶解物試料の調製方法は、mRNAインベーダーアッセイ法と共に用いられうる。二重検出法および容易な試料調製の組み合わされた特徴は、このアッセイ法を高処理量適用での使用に容易に適応させうるようにする。
【0075】
ある態様において、インベーダーアッセイ法(およびTAQMAN法のような他の検出アッセイ法)は、E-TAG標識を使用する(例えば、インベーダーオリゴヌクレオチド、プローブオリゴヌクレオチド、またはFRETオリゴヌクレオチドの部分として)。E-TAG標識は、特に、多重分析において有用である。E-TAG標識は、親和剤の表面固定化を必要としない。E-TAG型標識は、米国特許第5,858,188号;同第5,883,211号;同第5,935,401号;同第6,007,690号;同第6,043,036号;同第6,054,034号;同第6,056,860号;同第6,074,827号;同第6,093,296号;同第6,103,199号;同第6,103,537号;同第6,176,962号;および同第6,284,113号に記載されており、それらはすべて、参照として本明細書に組み入れられている。
【0076】
II. 多重PCRプライマー設計
インベーダーアッセイ法は、標的を前増幅する必要なしに、10 ng〜100 ng程度の微量ゲノムDNAを用いた一塩基多型(SNPs)の検出に使用されうる。しかしながら、展開された80,000以上のインベーダーアッセイおよび何十万というSNPsを含む全ゲノム関連研究についての可能性については、試料DNAの量は、大量分析に対する制限因子となる。標的増幅なしのヒトゲノムDNA(hgDNA)でのインベーダーアッセイ法の感度のおかげで、インベーダーアッセイ法と連結された多重PCR法は、通常のゲル検出方法のために大量の増幅(109〜1012)を要求する典型的多重PCR反応と比較して、制限された標的増幅だけ(103〜104)を要求する。インベーダーアッセイ検出のために使用される低レベルの標的増幅は、標的蓄積の結果として一般に生じる増幅阻害を避けることにより、より大規模な多重化を可能にする。
【0077】
いくつかの態様において、多重PCR反応において、関連した遺伝子座を検出することが望ましい場合がある。いくつかのそのような態様において、その検出アッセイテクノロジーは密接に関連した配列間を十分に識別することができない可能性があるため、遺伝子座の間の類似性が、その配列の検出アッセイ分析を妨げるまたは複雑にしうる。本発明は、核酸増幅技術(例えば、PCR)を用いて唯一の標的配列を産生することにより、そのような問題を克服するための方法を提供し、その唯一の標的配列、むしろその本来の試料(例えば、ゲノムDNA)がその検出アッセイ法により試験されるようになる。この方法は、増幅される標的配列が以下のいくつかの判定基準を満たすことを保証するように考慮する点において、多重化と適合可能である:1)標的配列が分析される多型を含むこと;2)標的配列が唯一の標的配列を示す(すなわち、それが、その標的配列を標的とするために設計された検出アッセイ法により検出される反応混合物において唯一の配列である);および3)その標的配列が多重反応において存在するいずれかの検出アッセイによって検出される他の多型を含まないこと。例えば、いくつかの態様において、ソフトウェアは、交差反応性シグナルを生じうるゲノムにおいて類似した配列を見出すために、SNPアッセイ法に用いられる標的配列のBLASTアラインメントを実行する。ソフトウェアプログラムでのPCRプライマーの設計は、SNPを含む遺伝子座を除くいずれの類似した遺伝子座の増幅も阻止すべきである。その特定のSNP配列を除く配列の前増幅を避けるために、ソフトウェアは、そのプールに含まれるすべての他の検出アッセイ配列に対する1対のプライマーで増幅される配列のBLASTアラインメントを実行する。交差反応性または可能性のある交差反応性が存在する場合には、そのプライマーのセットを再設計する、またはその同時増幅される配列を異なるプールに含める。
【0078】
同じ型の設計分析は、ハプロタイプの検出に向けられる検出アッセイ法に用いられうる。例えば、プライマーは、それぞれが検出される多型を唯一含む標的配列のセットを増幅するように作製される。
【0079】
いくつかの態様において、多重検出アッセイ法は、多数のアレイにおいて提供される。例えば、いくつかの態様において、第一のアレイは、ゲノムDNAからの直接的な検出のために構成されるアッセイを含み、第二のアレイは、標的配列の検出アッセイ分析の前にゲノムDNAから標的配列の前増幅のために構成されるアッセイを含む。
【0080】
いくつかの好ましい態様において、標的配列の制限された前増幅のみが、検出アッセイ法による検出の前に行われる。例えば、いくつかの態様において、標的コピー数の105倍〜106倍またはそれ未満の増加が検出の前に得られる。これは、検出反応において1010倍〜1012倍またはそれ以上の増幅が利用される典型的なPCR反応と対照的である。特定の態様において、10 ngのみのゲノムDNAを用いて(例えば、SNPあたりヒトゲノムDNAの0.1 ng未満)、本発明の方法およびシステムで、単一のPCR増幅から100個の遺伝子型が可能である。
【0081】
いくつかの態様において、標的配列の前増幅および検出のために、キットが提供される。いくつかの態様において、キットは増幅プライマーを含む。多重反応については、増幅プライマーは単一の容器で提供されうる。増幅プライマーはまた、検出アッセイ構成要素とともにパッケージされうる。いくつかの態様において、増幅プライマーおよび検出アッセイ構成要素(例えば、インベーダーアッセイ構成要素)は、単一の容器で(例えば、複数ウェルプレートのウェルの1つで)提供される。いくつかの態様において、反応構成要素は、反応チャンバーにおいて乾燥形状で提供される。いくつかのそのような態様において、キットは、ただゲノムDNAを含む溶液を反応チャンバーに添加するだけで、反応が起こるのを可能にするように構成される。
【0082】
本発明は、多重PCR用のプライマーセットが作製されるようにする方法および選択判定基準を提供する(例えば、インベーダーアッセイ法のような検出アッセイ法と連結させることができる)。いくつかの態様において、本発明のソフトウェアアプリケーションは、多重PCRプライマー選択を自動化し、このように、それにより設計されたプライマーで高度に多重化されたPCRを可能にした。SNP検出のための対応するプラットフォームとしてインベーダー医学的関連パネル(Medically Associated Panel)(MAP)を用いて、PCRプライマー実施例2に示されるように(下記)、本発明の方法、ソフトウェア、および選択判定基準は、単一のPCR反応から101個の可能な単位複製配列のうちの94個(〜93 %)の正確な遺伝子型判定を可能にした。最初のPCR反応は、インベーダーアッセイ法あたり150 pg未満のhgDNAに対応する、hgDNAの10 ngのみを鋳型として用いた。
【0083】
多重プライマー設計システムは、インベーダーアッセイ法のような特定の型のアッセイ法に有用なPCRプライマーセットを設計するために使用されうる。図2は、本発明のソフトウェアアプリケーションの態様の一つを用いる、インベーダー医学的関連パネル(Medically Associated Panel)における分析に利用可能な配列からの101個のプライマーセットについてのプライマー対(フォワードプライマーおよびリバースプライマーの両方)の作製の1つを例示する。図2Aは、単一のエントリーの試料入力ファイルを示す(例えば、本発明の方法およびソフトウェアにより処理されるSNPを含む単一の標的配列についての標的配列情報を示す)。図2における標的配列情報は、サードウェーブテクノロジーズ(Third Wave Technologies)のSNP番号、短縮の識別名および角型括弧で示されるSNP位置をもつ配列を含む。図2Bは、同じエントリーの試料出力ファイルを示す(例えば、本発明のシステムおよび方法およびソフトウェアにより処理された後の標的配列を示す)。出力情報は、フットプリント領域の配列(大文字の隣接SNP部位、標的配列においてSNPを検出するために、インベーダーアッセイプローブがこの標的配列にハイブリダイズする領域を示している)、フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列(太字)、およびそれらの対応するTmを含む。
【0084】
いくつかの態様において、多重PCRが可能なプライマーセットを作製するためのプライマーの選択は、自動化形式で行われる(例えば、ソフトウェアアプリケーションにより)。多重PCR用の自動化プライマー選択は、図4のフローチャートにより示されるように設計されたソフトウェアプログラムを用いて達成されうる。
【0085】
多重PCRは、一般的に、選択単位複製配列の偏りのある増幅およびプライマーダイマーの構成の結果として生じる擬似産物の増幅を避けるために、広範囲な最適化が要求される。これらの問題を避けるために、本発明は、多重PCRおよび検出アッセイ(例えば、インベーダー検出アッセイ)におけるその後の使用のように設定されるプライマーセットを作製するための選択判定基準を提供する方法およびソフトウェアアプリケーションを提供する。
【0086】
いくつかの態様において、本発明の方法およびソフトウェアアプリケーションは、ユーザー定義の配列および対応するSNP位置から始まる。特定の態様において、方法および/またはソフトウェアアプリケーションは、各配列について、標的配列内(インベーダー検出に必要とされる最少の単位複製配列)のフットプリント領域を決定する(図2Bの大文字で示される)。フットプリント領域は、アッセイプローブがハイブリダイズする領域に加え、そのために外へ延長している任意のユーザー定義の付加的な塩基(例えば、アッセイプローブがハイブリダイズする所の両側に含まれる5個の付加的な塩基)を含む。次に、プライマーはフットプリント領域から外側に設計され、その現行の多重化セットにおいて前に設計されたプライマーとのプライマーダイマー構成についての可能性を含めて、いくつかの判定基準に対して評価される(図2Aの太字のプライマー、および図4の選択段階を参照)。図4に示されるように、同じ配列のセットの複数の相互作用を通して、その現行の多重化セットにおいてすべての配列に対するプライマーが設計されうるまで、この段階は続けられうる。
【0087】
いくつかの態様において、プライマーセットが多重PCRのために設計されたら、図3に示される基本的な作業の流れの機構において示されるようにこのセットが使用されうる。例えば、多重PCRは、鋳型として、hgDNAの10 ngのみを用いて標準的条件下で行われうる。95℃で10分後、Taq(2.5単位)が50 μl反応物へ添加され、PCRが50サイクル行われうる。PCR反応物は希釈され、インベーダーMAPプレートに直接ロードされうる(3 μl/ウェル)(図3参照)。15 mM MgCl2を更に3 μl、インベーダーMAPプレート上の各反応物に添加し、6 μlのミネラルオイルでカバーしてもよい。プレート全体は、その後、5分間、95℃まで加熱され、63℃で40分間インキュベートされうる。その後、Cytofluor 4000蛍光プレートリーダーおよび各単位複製配列について計算された「フォールドオーバーゼロ(Fold Over Zero)」(FOZ)値において、FAMおよびRED蛍光が測定されうる。各SNPから得られた結果は、「パス(pass)」(緑色)、「ミスコール(mis-call)」(ピンク色)、または「ノーコール(no-call)」(白色)として、表において色分けされうる(下記のPCRプライマー設計実施例2を参照)。
【0088】
いくつかの態様において、PCR反応は、約1回から約10回までの反応である。いくつかの態様において、PCR反応は、約10回から約50回までの反応である。さらなる態様において、PCR反応の数は、約50回から約100回までである。追加的態様において、PCR反応の数は100回より多い。
【0089】
本発明はまた、多重PCR反応を最適化するための方法を提供する(例えば、プライマーセットが作製されると、各プライマーまたはプライマー対の濃度が最適化されうる)。例えば、プライマーセットが作製されかつ等モル濃度での多重PCRにおいて使用されたら、プライマーは、多重プライマーセットがより良く働くように最適プライマー濃度が決定されるために、別々に評価されうる。
【0090】
多重PCR反応は、標準的な一重PCR反応と比較して、可能性として時間効率的かつより費用のかからない核酸情報を得る手段として、科学、研究、臨床およびバイオテクノロジー産業において認識されつつある。反応容器(例えば、チューブまたは複数ウェルのプレートのウェル)につき単一の増幅反応のみを行う代わりに、多数の増幅反応が単一の反応容器において行われる。
【0091】
標的あたりの費用は、アッセイ設定およびデータ分析における専門技術者時間を削除すること、および実質的な試薬の節約(特に酵素費用)により、理論上、低下している。多重方法のもう一つの利点は、はるかに少量の標的試料が要求されることである。何十万という一塩基多型(SNPs)を含むゲノム全体の関連研究において、標的または試験試料の量は大量分析に対して制限があるため、例えば100個の結果を得るために1つの試料一定分量を使用することに対して、同じデータセットを得るために100個の試料一定分量を使用することの単一反応を行うという概念は、魅力的な選択である。
【0092】
多重PCR反応を成功させるためのプライマーを設計するために、プライマー間の異常型の相互作用の論点に注意を向けねばならない。たとえ少数塩基長のみであったとしても、プライマーダイマーの構成は、両方のプライマーが標的配列へ正しくハイブリダイズするのを阻害する可能性がある。さらに、ダイマーがそのプライマーの3'末端においてまたは近くで構成される場合には、3'末端はプライミング事象のために必要とされるため、増幅は起こらない、または非常に低レベルの増幅が起こるであろう。明らかに、多重反応あたりプライマーの使用が多くなればなるほど、多くの異常型のプライマー相互作用が起こる可能性がある。本救済の方法、システムおよびアプリケーションは、多数のプライマーセットにおけるプライマーダイマーを防ぎ、高度に多重化されたPCRに適したセットを作製する。
【0093】
多数の部位(例えば、1つの多重PCR反応において100個の部位)に対するプライマー対を設計する場合、プライマー対が設計される順序により、1つの反応についての適合性のあるプライマー対の総数が左右されうる。例えば、プライマーの第一のセットが、偶然にもA/T豊富な領域である第一の標的領域に対して設計される場合には、これらのプライマーはA/T豊富になると考えられる。選択された第二の標的領域もまた、偶然にもA/T豊富な標的領域である場合には、これらの2つのセットに対して設計されるプライマーは、プライマーダイマーのような異常型相互作用のせいで、不適合になる可能性がよりはるかに高い。しかしながら、選択された第二の標的領域がA/T豊富でない場合には、第一のA/T豊富なセットと相互作用しようとしないプライマーセットが設計されうる可能性がよりずっと高くなる。入力標的配列の任意の与えられるセットに対して、本発明は、プライマーセットが設計される順序をランダム化する(図4参照)。さらになお、いくつかの態様において、本発明は、任意の所与の多重反応に対して、適合性のあるプライマーセットの数を最大化するように、入力標的配列のセットを多数の異なるランダムな順序に設計し直す(図4参照)。特定の態様において、プライマーは、GC豊富およびAT豊富な領域が避けられるように設計される。
【0094】
本発明は、多重設計において反応標的の所与のセットに対して適合性のあるプライマー対の数を最大化する一方で、3'相互作用を最小化する(例えば、プライマーダイマー構成の可能性を減らすためにプライマーの3'相補性を避ける)プライマー設計についての判定基準を提供する。5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'のように記載されるプライマーについて、N[1]はAまたはCである(代替の態様において、N[1]はGまたはTである)。設計されたフォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]は、任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[2]-N[1]に相補的であるべきではない。特定の態様において、N[3]-N[2]-N[1]は、任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[3]-N[2]-N[1]に相補的であるべきではない。好ましい態様において、所与のN[1]でこれらの判定基準を満たさない場合には、フォワードプライマーについての5'方向の次の塩基またはリバースプライマーについての3'方向の次の塩基がN[1]部位として評価されうる。標的配列のすべて、または大多数に関してすべての判断基準が満たされるまで(例えば、標的配列の95 %が、これらの判定基準を満たすプライマーセットとして作製されたプライマー対をもちうる)、標的ランダム化と共に、この段階が繰り返される。
【0095】
多重プライマー設計において克服されるべきもう一つの問題は、実際に必要なヌクレオチド配列、配列の長さ、およびオリゴヌクレオチド融解温度(Tm)制約間のバランスである。重要なことには、1つの反応における1つの多重プライマーセットのプライマーは、緩衝液、塩および温度の同じ反応条件下で機能することになるため、それゆえ、それらは、関心対象の領域のGC豊富性またはAT豊富性にかかわらず、実質的に類似したTmをもつ必要がある。本発明は、最小のTmおよび最大のTmの必要条件ならびに最小および最大の長さの必要条件を満たすプライマー設計を可能にする。例えば、各プライマーについての式5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'において、xは、プライマーがあらかじめ決められた融解温度をもつように選択される(例えば、プライマーが摂氏約50度の計算された融解温度をもつまでプライマーに塩基を含める)。特定の態様において、セットの各プライマーは、同じ融解温度をもつ。
【0096】
PCR反応産物は、ハイブリダイゼーション型検出アッセイ法、または例えばインベーダー反応アッセイ法のような別の核酸検出手段のための標的材料として用いられることが多い。第二次反応がうまく起こるようにさせるためのプライマー配置の位置に考慮するべきであり、かつ再び、増幅プライマーと第二次反応オリゴヌクレオチドとの間の異常型相互作用は、正確な結果およびデータのために、最小限度にさせるべきである。選択判定基準は、多重プライマーセットとして設計されたプライマーが検出アッセイ法のオリゴヌクレオチド構成要素と反応しない(例えば、ハイブリダイズしない、または反応を誘発しない)ように用いられうる。例えば、プライマーが二重インベーダーアッセイ法のFRETオリゴヌクレオチドと反応することを防ぐために、特定の相同性判定基準が用いられる。特に、セットの各プライマーが5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'として定義される場合には、その後、N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'がFRETまたはインベーダーオリゴヌクレオチドと90 %未満の相同性があるように選択される。その他の態様において、N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'がFRETまたはインベーダーオリゴヌクレオチドと80 %未満の相同性があるように各プライマーについて選択される。特定の態様において、N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'がFRETまたはインベーダーオリゴヌクレオチドと70 %未満の相同性があるように各プライマーについて選択される。
【0097】
プライマーセットを開発するために本発明の判定基準を使用する一方で、いくつかのプライマー対がその定まった判定基準のすべてを満たしえない場合がある(これらはエラーとして拒絶されうる)。例えば、100個の標的のセットにおいて、30個は設計されかつすべての列挙される判定基準を満たすが、セット31番は失敗する。本発明の方法において、セット31番は失敗としてフラグ付けされうり、本方法は、判定基準を満たさないセットに再びフラグ付けしながら、100個の標的のリストの終わりまで続けることができる(図4参照)。100個の標的すべてがプライマー設計の機会をもったら、本方法は不成功のセットの数を書き留め、新しいランダムな順序で100個の標的を再整列させ、設計段階を繰り返す(図4参照)。設定可能な回数を実行したら、最も合格した回数の多いプライマー対(不成功のセットの最小数)をもつセットがその多重PCR反応について選択される(図4参照)。
【0098】
図4は、本発明の方法およびソフトウェアアプリケーションの特定の態様の基本的な流れについてのフローチャートを示す。好ましい態様において、図4において詳細に示される段階は、使用の簡便さのためにソフトウェアアプリケーションへ組み入れられる(とはいえ、その方法は、ガイドとして、例えば図4を用いて、手作業でも行なわれうる)。
【0099】
標的配列および/またはプライマー対は、図4に示されるシステムへ入力される。最初の四角のセットは、他の配列は、プライマーセットのプールへ(例えば、PDパス(PDPass)、以前に処理され、かつプライマーダイマーを構成することまたはFRET配列への反応性を有することなしに、いっしょに働くことが示された配列)、およびダイマーテスト(Dimer Test)エントリーへ(例えば、ユーザーが使用することを望んでいるが、プライマーダイマーまたはFRET反応性についてまだ試験されたことがない対またはプライマー)とすぐに移される一方で、どのようにして標的配列が決定されたフットプリント(図4の「B」を参照)を有する配列のリストに加えられるのかを示す。言い換えると、「入力の終わり」へ次第に導く最初の四角のセットは、後でそれらが正確に処理されることができるように、その配列を分類する。
【0100】
図4の「A」で開始して、プライマープールは基本的に、新たなラン(run)を開始するためにクリアされるまたは「空にされる」。その後、その標的配列は、「B」へ送られて処理され、ダイマーテスト対は、「C」へ送られて処理される。標的配列は「B」へ送られ、そこで、ユーザーまたはソフトウェアアプリケーションがその標的配列についてフットプリント領域を決定する(例えば、そこで、その標的配列において突然変異(例えば、SNP)を検出するためにアッセイプローブがハイブリダイズする)。この領域は、一般的に、図2Bのように、図において大文字で示される。設計されるプライマーがこの領域を完全に含むようにこの領域(ユーザーがそのハイブリダイゼーション領域を越してさらなる塩基が付加されるように定めることによりさらに拡張する場合がある)を設計することが重要である。(任意の型のシステムのプログラムを用いて、ユーザーがプローブを設計すること、およびこのように標的配列上にフットプリント領域を決定することに関心を示している任意の型のプローブを作製するために使用することができたが、)図4において、ソフトウェアアプリケーションのインベーダークリエイター(INVADER CREATOR)は、標的領域とハイブリダイズするであろうインベーダーオリゴヌクレオチドおよび下流プローブを設計するために用いられる。このように、コアのフットプリント領域はその後、標的上におけるこれらの2つのアッセイプローブの位置により限定される。
【0101】
次に、システムは、フットプリントの5'端から開始し、第一塩基に到達するまで、または第一のAもしくはC(またはGもしくはT)に到達するまで、5'方向に移動する。これは、フォワードプライマーの配列を限定するための最初の開始点として設定される(すなわち、これは最初のN[1]部位として供する)。この最初のN[1]部位から、フォワードプライマーとしてのプライマーの配列は、標的領域上で遭遇されるそれらの塩基と同じである。例えば、プライマーのデフォルトサイズが12塩基として設定される場合には、システムはN[1]として選択される塩基から開始し、その後、標的配列中に見出される次の11個の塩基を加える。この12merのプライマーは、その後、融解温度について(例えば、インベーダークリエイターを用いて)試験され、その配列がユーザーにより指定される融解温度(例えば、摂氏約50度、かつ摂氏55度を越さない)をもつまで、その標的配列から追加的塩基が付加される。例えば、システムは、式5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'を使用し、xは最初は12である。その後、システムは前もって設定された融解温度が見出されるまで、xをより大きい数(例えば、より長い配列)へと調節する。
【0102】
図4における次の四角は、これまでに設計されたプライマーがプライマーダイマーおよび/またはFRET反応性を引き起こすかどうかを決定するために用いられる(例えば、残りの配列はすでにそのプールにある)。この決定のために用いられる判定基準は、上記で説明されている。プライマーがこの段階を合格する場合には、そのフォワードプライマーはプライマープールへ加えられる。しかしながら、そのフォワードプライマーがこの判定基準を欠いている場合には、図4に示されるように、開始点(N[1])が5'方向に1ヌクレオチド(または次のAもしくはC、または次のGもしくはTへ)移動される。システムは、まず、越えて移動することがプライマーを作製することに成功するための十分な余地をその標的配列上に残しているかを確かめるためにチェックする。イエス(Yes)の場合には、システムは折り返して、この新しいプライマーを融解温度についてチェックする。しかしながら、配列が設計されることができない場合には、その時、その標的配列はエラーとしてフラグ付けされる(例えば、この標的に対してフォワードプライマーが作製されることができないことを示す)。
【0103】
図4に示されるように、その後、この同じ段階がリバースプライマーを設計するために繰り返される。リバースプライマーの作製に成功した場合には、その対またはプライマーはプライマープールへと入れられ、システムは「B」へ戻る(処理する標的配列がさらにある場合)、またはダイマーテスト対を試験するために「C」へ進む。
【0104】
図4の「C」を開始することは、どのようにして、プライマー(ダイマーテスト(Dimer Test))としてエントリーされたプライマー対がシステムにより処理されるかを示している。ダイマーテスト対がない場合には、図4に示されるように、システムは「D」へ進む。しかしながら、ダイマーテスト対がある場合には、これらは、上記のように、プライマーダイマーおよび/またはFRET反応性について試験される。ダイマーテスト対がこれらの判定基準を欠く場合には、それらはエラーとしてフラグ付けされる。ダイマーテスト対が判定基準に合格する場合には、それらはプライマーセットプールへ加えられ、その後、システムは、評価されるダイマーテスト対がさらにある場合には「C」へ戻る、または評価されるダイマーテスト対がそれ以上ない場合には「D」へ進む。
【0105】
図4の「D」から開始して、作製されたプライマーのプールが評価される。この項における第一段階は、配列のこの特定のランダム化されたランにより生じたエラー(失敗)の数を調べることである。エラーがない場合には、このセットは、ユーザーへ出力されうる最良のセットである。ゼロを上回るエラーがある場合には、システムは、どのランが最も少ないエラーを生じたかを見るために、このランを任意のその他の以前のランとも比較する。現行のランがより少ないエラーをもつ場合には、現行の最良セットとして指定される。この時点において、システムは「A」に戻り、同じ配列の別のランダム化されたセットについてランをもう一度開始してもよく、またはあらかじめ設定されたランの最高数(例えば、5ラン)に、このランで到達してもよい(例えば、これは第5番目のランであり、ランの最高数が5として設定されていた)。最高数に到達された場合には、その最良のセットが最良セットとして出力される。この最良のプライマーセットは、その後、多重PCR反応が実施されうるような物質的オリゴヌクレオチドのセットとして作製するために使用されうる。
【0106】
多重PCR反応について克服されるべきもう一つの問題は、標準的多重反応において結果として生じる不均等な単位複製配列の濃度である。増幅について標的とされる異なる遺伝子座は、増幅反応においてそれぞれ異なった挙動を示し、異なる単位複製配列産物それぞれの大いに異なる濃度を生じうる。本発明は、プライマー濃度を最初の検出アッセイの読み取り値(例えば、インベーダーアッセイの読み取り値)に関連して調整し、その後、バランスのとれたプライマー濃度で、異なる単位複製配列の実質的に均等な濃度に接近させるために用いられうる方法、システム、ソフトウェアアプリケーション、コンピューターシステム、およびコンピューターデータ記憶媒体を提供する。そのような多重最適化についての一般化したプロトコールは図4に提示されている。
【0107】
様々なプライマー対についての濃度は、実験に基づいて決定されうる。いくつかの態様において、最初のランは、すべてのプライマーを等モル濃度にして実施される。その後、時間の読み取りが実施される。時間の読み取りに基づき、各単位複製配列についての相対的増幅因子が決定される。その後、統一化する補正方程式に基づき、同じ時点内でより接近したシグナルを得るために、プライマー濃度がどれくらいであるべきかの推定値を獲得した。これらの検出アッセイ法は、異なるサイズのアレイにおいて可能である(384ウェルプレート)。
【0108】
本発明を検出アッセイおよび検出アッセイのアレイと組合わせることが実質的処理効率を与えることが認識されている。本発明を用いて作製されたプライマーまたはプライマー対のバランスのとれた混合物を使用して、1点読み取りを行うことができ、平均的ユーザーが高感度および異なる標的のアレイにわたる高特異性を必要とする試験を実施するにおいて高い効率を得ることができるようになる。
【0109】
単一の反応容器において最適化されたプライマー対濃度にすることにより、ユーザーが単一の反応容器で、かつ単一の段階で、多数のまたは多種の増幅標的について増幅を行うことが可能になる。その1段階の段階の生成物は、その後、例えば、数百のアッセイについての試験結果データを首尾良く得るために使用される。例えば、384ウェルプレート上の各ウェルは、その上で異なる検出アッセイを行うことができる。1段階の多重PCR反応の結果は、ゲノムDNAの384個の異なる標的を増幅しており、各プレートについて384個の試験結果を提供する。各ウェルが多数のアッセイを行っている所においては、よりいっそう高い効率を得ることができる。
【0110】
それゆえ、本発明は、各PCR産物の偏らない増幅を達成するためにパラメーターとして、高度に多重化されたPCRにおける各プライマーセットの濃度の使用を提供する。いずれのPCRもプライマーアニーリングおよびプライマー伸長段階を含む。標準的PCR条件下において、1 μMのオーダーでのプライマーの高濃度により、プライマーアニーリングの速い反応速度が保証されるが、一方、プライマー伸長段階の最適時間は、増幅産物の量に依存し、アニーリング段階よりかなり長くなりうる。プライマー濃度を下げることにより、プライマーアニーリング反応速度が律速段階になることができ、PCR増幅因子は、プライマー濃度、プライマーの結合反応速度定数、およびアニーリング時間に強く依存することになる。
【0111】
プライマーPの標的Tとの結合は、以下のモデルにより記載されうる。
【数1】
Kaはプライマーアニーリングの結合反応速度定数である。アニーリングはプライマー融解より低い温度で起こり、かつ逆反応を無視することができることを仮定している。
【0112】
プライマー過剰の条件下でのこの反応速度についての解式は、よく知られている。
【数2】
[PT]はプライマーと結合した標的分子の濃度であり、T0は最初の標的濃度、cは最初のプライマー濃度、およびtはプライマーアニーリング時間である。プライマーと結合した各標的分子は完全なサイズのPCR産物を産生するために複製され、単一PCRサイクルにおける標的増幅因子は以下のとおりである。
【数3】
【0113】
nサイクル後の全PCR増幅因子は、以下の式により与えられる。
【数4】
方程式4から導かれるように、プライマーアニーリング反応速度がPCRの律速段階である条件下において、増幅因子は、プライマー濃度に強く依存することになる。このように、偏りのある遺伝子座の増幅は、それが個々の結合反応速度定数、プライマー伸長段階、またはいくつかの他の因子により引き起こされているにせよ、多重PCRにおける各プライマーセットについてのプライマー濃度を調整することにより補正されうる。調整されたプライマー濃度はまた、PCR前増幅された遺伝子座の分析に用いられるインベーダーアッセイ法の偏りのある実行を補正するためにも使用されうる。この基本的原理を用いて、本発明は、増幅効率とプライマー濃度との間の直線的関係を実証し、この方程式を異なる単位複製配列のプライマー濃度のバランスをとるために用いて、その結果として、PCRプライマー設計実施例1において10個の異なる単位複製配列が均等に増幅された。この技術は、複数のプライマー対の任意の大きさのセットに用いられうる。いくつかの態様において、PCRプライマーは最適化されず、かつインベーダーアッセイ法がその増幅産物を検出するために使用される(参照として本明細書に組み入れられている、Ohnishiら、J. Hum. Genet. 46: 471〜477、2001を参照)。
【0114】
i. PCRプライマー設計 実施例1
以下の実験例は、多重増幅反応、およびその後のインベーダーアッセイ法による単位複製配列の検出のための増幅プライマーの手作業での設計を記載する。
【0115】
TWT社内オリゴヌクレオチドオーダーエントリーデータベースにおいて入手可能な、あらかじめ確証されたSNP含有配列のセットから、10個の標的配列が選択された(図4参照)。各標的は、以前にインベーダーアッセイ法が設計されたことのある一塩基多型(SNP)を含む。インベーダーアッセイオリゴヌクレオチドは、インベーダークリエイターソフトウェア(Third Wave Technologies社、Madison、WI)により設計され、このように、本実施例におけるフットプリント領域がインベーダー「フットプリント」、またはインベーダーおよびプローブオリゴヌクレオチドによりカバーされ、関心対象の塩基、この場合は一塩基多型の検出のために最適に位置される塩基として、定義される(図5参照)。10個の標的配列それぞれの約200ヌクレオチドは、増幅プライマー設計分析のために分析され、SNP塩基がその配列の中心あたりに存在するようにする。配列は図5に示される。
【0116】
最大および最小のプローブの長さ(それぞれ、30ヌクレオチドおよび12ヌクレオチドのデフォルト)の判定基準は、50℃〜60℃のプローブ融解温度Tmのための範囲であるように定義される。本実施例において、前もって選ばれた反応温度で最適に実行するだろうプローブ配列を選択するために、オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)は、隣接モデルおよびDNA二重鎖構成のための公表されているパラメーターを用いて計算される(AllawiおよびSantaLucia、Biochemistry、36: 10581 [1997]、これは参照として本明細書に組み入れられている)。アッセイの塩濃度は隣接パラメーターが得られる溶液条件(1 M NaClおよび二価金属なし)とは異なるため、および酵素の存在および濃度が最適反応温度に影響を及ぼすため、反応を行う最適温度を決定するために、計算されたTmに調整が施されるべきであることが多い。これらの因子について補正する一つの方法は、融解温度計算内の塩濃度について与えられる値を変えることである。この調整は「塩補正」と呼ばれる。「塩補正」という用語は、二重鎖に影響を及ぼす塩以外のパラメーターまたは条件の核酸二重鎖についてのTm計算に効果を反映する目的のために、塩濃度について与えられる値に施される変動を指す。鎖濃度について与えられる値の変動もまた、これらの計算の出力に影響を及ぼすであろう。280 nM NaClの値(SantaLucia、Proc Natl Acad Sci USA、95: 1460 [1998]、これは参照として本明細書に組み入れられている)およびプローブ約10 pMおよび標的1 fMという鎖濃度を用いることにより、プローブ-標的融解温度を計算するために使用されるアルゴリズムを最適プライマー設計配列を予測することに使用するために適応させた。
【0117】
次に、フットプリント領域に隣接した、上流および下流両方のの配列両方がスキャンされ、そして、プライマーについて、N[1]がAまたはCである5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'として記載されるように、最初のAまたはCが設計開始として選択された。所与のオリゴヌクレオチドのN[2]-N[1]は任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[2]-N[1]とも相補的であるべきではなく、かつN[3]-N[2]-N[1]は任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[3]-N[2]-N[1]とも相補的であるべきではないという規則を用いることにより、プライマー相補性は回避された。所与のN[1]においてこれらの判定基準が満たされない場合には、フォワードプライマーについては5'方向での次の塩基、またはリバースプライマーについては3'方向での次の塩基が、N[1]部位として評価される。手作業の分析の場合では、A/C豊富な領域が、3'末端の相補性を最小化するために標的とされた。
【0118】
本実施例において、インベーダーアッセイ法は、多重増幅反応後に行われた。それゆえ、二次インベーダー反応オリゴヌクレオチドの部位(FRETオリゴヌクレオチド配列)もまたプライマー設計のための判断基準として組み込まれたが、増幅プライマー配列はFRETオリゴヌクレオチドの特定された領域に対して80 %未満の相同性であるべきである。
【0119】
10重の多重設計についての出力プライマーは図5に示される。すべてのプライマーは、標準的オリゴヌクレオチド化学に従って合成され、(標準的方法により)脱塩され、A260での吸光度により定量化されて、50 μM濃縮貯蔵液へと希釈された。その後、以下の条件下で、等モル量のプライマー(0.01 uM/プライマー)を使用する10重のPCRを用いて、多重PCRが行われた:50 μl反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl2、10 mM トリスpH 8.0、200 uM dNTP、2.5 U taq、およびヒトゲノムDNA(hgDNA)鋳型10 ng。反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で30サイクル、インキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は水で1:10に希釈され、インベーダーアッセイFRET検出プレート(INVADER Assay FRET Detection Plates)、96ウェルゲノム二重(genomic biplex)、100 ngCLEAVASE VIIIを用いるインベーダー分析に供され、インベーダーアッセイは、以下のような、15 ul反応として構築された:PCR反応物の1:10希釈液1 ul、PPI混合物3 ul、22.5 mM MgCl2 5 ul、dH2O 6 ul、Chillout 15 ulでカバーする。試料は、95 Cで5分間のインキュベーションによりインベーダー二重において変性され、引き続いて、63 Cでのインキュベーション、および様々な時点においてCytofluor 4000で蛍光を測定した。
【0120】
正確に遺伝子型判定コール(call)が作成されるように次の判定基準を用いると(FOZ_FAM + FOZ_RED-2 > 0.6)、10個のインベーダーアッセイコールのうち2個のみを63Cで10分間のインキュベーション後に作成することができ、10個のコールのうち5個のみを63 Cでのさらなる50分間のインキュベーション(60分間)後に作成することができた(図6A参照)。60分の時点で、検出可能なFOZ値間の変動は、最強シグナル(図6A、41646、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 54.2、これはまた、リーダーのダイナミックレンジのはるか外側にある)と最弱シグナル(図6A、67356、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 0.2)との間で100倍を超える。ヒトゲノムDNAの100 ngに対して直接的に同じインベーダーアッセイ法を用いると(各標的の等モル量が利用可能であろう)、すべての読み取り値をリーダーのダイナミックレンジ内で作成することができ、FOZ値での変動はアッセイの最強(図6、53530、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 3.1)と最弱(図6、53530、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 0.43)の間で約7倍であった。これは、同じ多重PCR反応において異なる単位複製配列間に見られるFOZ値での劇的な不一致が偏りのある増幅の作用であり、インベーダーアッセイ法に帰する変動性ではないことを示唆する。これらの条件下において、異なるインベーダーアッセイにより生じたFOZ値は、お互いに直接的に比較でき、単位複製配列の効率性の指標として信頼性をもって使用されることができる。
【0121】
FOZ値を用いる所与の単位複製配列の増幅因子の推定
所与の単位複製配列の増幅因子(F)を推定するために、インベーダーアッセイのFOZ値は、単位複製配列存在量を推定するために使用されうる。所与の時間(FOZm)で未知の濃度をもつ所与の単位複製配列のFOZを、時間の定められた点(FOZ240、240分)での標的の既知量(例えば、ゲノムDNA 100 ng = 1個の遺伝子 30,000コピー)のFOZと直接的に比較し、未知の単位複製配列のコピー数を計算するために用いることができる。方程式1において、FOZmは、所与の時間量(m)の間、インベーダーアッセイにおいてインキュベートされる標的の未知の濃度のRED_FOZおよびFAM_FOZの合計を表す。FOZ240は、240分間での標的の既知のコピー数
について用いられる、経験的に決定されたRED_FOZ値(インベーダーアッセイ41646を用いる)を表す。
【数5】
【0122】
方程式1aは、プライマー濃度と増幅因子Fとの間の直線的関係を決定するために用いられるが、方程式1a'は10重のPCRについての増幅因子Fの計算において用いられ(プライマーの等モル量およびプライマーの最適化濃度の両方について)、D値はPCR反応の希釈因子を表す。50 ul多重PCR反応の1:3希釈の場合。D = 0.3333。
【数6】
【0123】
方程式1aおよび1a'は10重の多重PCRの記述に用いられるだろうが、この方程式のさらに補正適応が、107重PCRでのプライマー濃度の最適化に用いられた。この場合、標的としてhgDNAを用いる全インベーダーMAPプレートにわたる、FOZ240 = FAM_FOZ240 + RED_FOZ240の平均(FOZ240 = 3.42)、および希釈因子Dは0.125に設定されている。
【数7】
【0124】
より正確である増幅因子Fの推定のために、FOZ値が、読み取り値が得られる装置のダイナミックレンジ内であるべきであるということは、留意されるべきである。この研究に用いられたCytofluor 4000の場合、ダイナミックレンジは、約1.5 FOZと約12 FOZの間であった。
【0125】
第3項 増幅因子とプライマー濃度との間の直線的関係
プライマー濃度と増幅因子(F)との間の関係を決定するために、4つの別個の1重PCR反応をプライマー1117-70-17および1117-70-18を使用して、それぞれ、0.01 uM、0.012 uM、0.014 uM、0.020 uMの濃度で、実行した。その4つの独立したPCR反応は、以下の条件下で行われた:100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mMトリスpH 8.0、200 uM dNTP、鋳型としてhgDNAを10 ng使用する。インキュベーションは、(94 C/30秒、50 C/20秒)で30サイクル行なわれた。PCR後、反応物は水で1:10に希釈され、インベーダーアッセイFRETフレット検出プレート、96ウェルゲノム二重、100 ng CLEAVASE VIII酵素を使用して標準的条件下で実行された。各15 ul反応物は次のように設定された:1:10希釈PCR反応物1ul、3 ulのPPI混合物SNP番号47932、5 ulの22.5 mM MgCl2、水 6 ul、Chillout 15 ul。プレート全体を、95 Cで5分間およびその後63 Cで60分間インキュベートし、その時点においてCytofluor 4000蛍光プレートリーダー上で単一の読み取り値を得た。4つの異なるプライマー濃度(0.01 uM、0.012 uM、0.014 uM、0.020 uM)それぞれについて、60分間におけるFOZm = FOZ_FAMとFOZ_REDの合計、m = 60、およびFOZ240 = 1.7として、方程式1aを用いて増幅因子Fを計算した。増幅因子の対数Log(F)に対して各反応のプライマー濃度をプロットすると、顕著な直線的関係が示された(図7)。図7のデータ点を用いて、増幅因子とプライマー濃度間の直線的関係を表す式は方程式2に記載される。
Y' = 1.684X + 2.6837 (方程式2a)
【0126】
方程式2を用いて、所与の単位複製配列の増幅因子Log(F) = Y'をプライマーの既知の濃度(X)を使用する予想可能な形で操作できた。逆の方法において、多重PCRでの等モルのプライマー濃度の条件下で観察される増幅の偏りをその増幅因子Fに基づく「見かけの」プライマー濃度(X)として測定することができた。多重PCRにおいて、異なる単位複製配列間の「見かけの」プライマー濃度の値は、異なる遺伝子座の増幅を均等にするために必要とされる各単位複製配列のプライマーの量を推定するために使用されうる。
X = (Y'-2.6837)/1.68 (方程式2b)
【0127】
第4項 バランスのとれた複数混合物からの見かけのプライマー濃度の計算
前の項で記載されるように、プライマー濃度は所与の単位複製配列の増幅因子に直接的に影響を及ぼすことができる。プライマーの等モル量の条件下でのFOZmの読み取り値を、方程式2を用いて各単位複製配列の「見かけの」プライマー濃度を計算するために用いることができる。方程式2のY'を所与の増幅因子のlog(F)に置き換えて、Xについて解くことにより、多重反応における所与の単位複製配列の相対的存在量に基づく「見かけの」プライマー濃度が得られる。多重反応におけるすべてのプライマー(等モル濃度として供給される)の「見かけの」プライマー濃度を計算するために方程式2を用いることにより、お互いに対するプライマーセットを標準化する手段が提供される。「最適化された」多重プライマー混合物Rへと加えられるべき各プライマーの相対的量を導くために、その「見かけの」プライマー濃度のそれぞれで、最大の見かけのプライマー濃度(Xmax)を割ればよく、最強の単位複製配列が1の値に設定され、残っている単位複製配列は等しいまたは1より大きい値に設定される。
R[n] = Xmax/X[n] (方程式3)
【0128】
R[n]の値を相対的プライマー濃度の任意の値として用いて、R[n]の値に一定のプライマー濃度を掛け算すると、所与の多重反応における各プライマーについての作業濃度が提供される。示される実施例において、SNPアッセイ41646に対応する単位複製配列は、1に等しいR[n]値をもつ。R[n]値のすべてに0.01 uM(等モル多重PCR反応における最初の開始プライマー濃度)を掛け算すると、最低のプライマー濃度は、1に設定されている41646のR[n]、つまり0.01 uMである。プライマーセットの残りもまた、図8に示されるように、比例して増加した。「最適化された」プライマー混合物をもつ多重PCRの結果は下記に記載されている。
【0129】
第5項 多重PCRにおいて最適化されたプライマー濃度を用いると、10個のインベーダーアッセイ間のFOZでの変動は大きく低下する。
多重PCRは、図8に示される容量に基づく様々な量のプライマーを使用する10重のPCRを用いて行われた(X[max]はSNP41646であり、1x = 0.01 uM/プライマーに設定)。多重PCRは、等モルのプライマー混合物で用いられたのと同一の条件下において行われた:50 ul反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mMトリスpH 8.0、200 uM dNTP、2.5 U taqおよびhgDNA鋳型10 ng。反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で30サイクル、インキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は、水で1:10に希釈され、インベーダー分析に供された。インベーダーアッセイFRET検出プレート、(96ウェルゲノム二重、100 ng CLEAVASE VIII酵素)を用いて、反応物は、以下のように、15 ul反応物として構築された:PCR反応物の1:10希釈液1 ul、適当なPPI混合物3 ul、22.5 mM MgCl2 5 ul、dH2O 6 ul。CHILL OUT 15 ulを更に各ウェルへ添加し、引き続いて、95 Cで5分間のインキュベーションを行った。プレートは、63 Cでインキュベートされ、10分間の時点で、Cytofluor 4000上で蛍光が測定された。
【0130】
正確に遺伝子型判定コールが作成されるように次の判定基準を用いると(FOZ_FAM + FOZ_RED-2>0.6)、10個のうちの10個すべて(100 %)のインベーダーコールを、63 Cにおけるインキュベーションの10分後に作成することができる。さらに、FAM + RED-2の値(増幅因子に直接的に関係する、総合的なシグナル産生の指標(方程式2を参照))は、最低シグナル(図9、67325、FAM + RED-2 = 0.7)と最高(図9、47892、FAM + RED-2 = 4.3)の間を7倍未満までで変動した。
【0131】
ii. PCRプライマー設計 実施例2
TWTオリゴオーダーエントリーデータベース(TWT Oligo Order Entry Database)を用いて、SNPが各配列についてSNP位置を示すために角型括弧を使用して注釈をつけられている、200ヌクレオチド長未満の144個の配列が得られた(例えば、NNNNNNN[N(wt)/N(mt)]NNNNNNNN)。関心対象のSNPに隣接する配列データを拡張するために、配列は、BLAST分析を用いて、長さ約1 kB(SNPの各側に隣接する500ヌクレオチド)まで拡張された。144個の出発配列のうち、16個はBLASTにより拡張されることができず、結果として、長さ約1 kBまで拡張された128個の配列の最終セットが生じた(図10を参照、29043および34573のみが示されている)。これら拡張された配列は、各配列について次の情報をエクセル(Excel)形式でユーザーに提供された:(1)TWT番号、(2)短縮識別名、および(3)配列(図10を参照、SNP29043番および34573番のみが示されている)。エクセルファイルはコンマ区切り形式へ変換され、プライマーデザイナーインベーダークリエイター(Primer Designer INVADER CREATOR)v1.3.3ソフトウェア(このバージョンのプログラムは、FRET反応性についてスクリーニングせず、またユーザーにプライマーの最大長を条件として指定させない)についての入力ファイルとして使用された。インベーダークリエイタープライマーデザイナー(INVADER CREATOR Primer Designer)v1.3.3は、60 Cに設定されたTmlowを除いては、デフォルト条件(例えば、最小プライマーサイズ12、最大プライマーサイズ30)を用いて実行された。出力ファイル(図11を参照、SNP29043番および34573番のみが示されている、各シートの下部はアッパーケース文字でフットプリント領域、および角型括弧でSNPを示している)は、128組のプライマーセット(256個のプライマー、図12を参照)を含み、そのうちの4組は過度に長いプライマー配列のために捨てられ(SNP番号47854、47889、54874、67396)、合成について有効な124個のプライマーセット(248個のプライマー)が残された。残っているプライマーは、200 nmolのスケールで標準的方法を用いて合成され、脱塩することにより精製された。合成失敗の後、107組のプライマーセットが等モルの107重のプライマー混合物の集合(214個のプライマー、図12を参照)として有効であった。増幅に有効な107組のプライマーセットのうち、101組のみが、増幅因子を評価するためのインベーダーMAPプレート上に存在した。
【0132】
多重PCRは、次の条件下で、等モル量(0.025 uM/プライマー)のプライマーを使用する101重のPCRを用いて行われた:50 ul反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mM トリスpH 8.0、200 uM dNTP、およびヒトゲノムDNA(hgDNA)鋳型10 ng。95 Cで10分間の変性後、Taq 2.5単位が添加され、反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で50サイクルインキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は、水で1:24に希釈され、インベーダーMAP検出プラットフォームを使用するインベーダーアッセイ分析に供された。各インベーダーMAPアッセイは、次のように、6 ulの反応物として実行された:PCR反応物(D = 0.125に等しい総希釈度1:8)の1:24希釈液3 ul、15 mM MgCl2 3 ul、CHILLOUT 6 ulでカバーされている。試料は、95 Cで5分間のインキュベーションによりインベーダーMAPプレートにおいて変性され、引き続いて、63 Cでインキュベーション、そして160分間の間の様々な時点においてCytofluor 4000(384ウェルリーダー)上で蛍光が測定された。10分、20分、40分、80分、160分において計算されたFOZ値の分析は、正しいコール(同じDNA試料のゲノムのコールと比較して)がインベーダーMAPプラットフォームにより検出可能な101個の単位複製配列のうちの94個について行われたことを示している(図13および図14)。これは、インベーダークリエイタープライマーデザイナーソフトウェアが、高度に多重化されたPCRにおいて機能するプライマーセットを作製できることの証拠を提供している。
【0133】
160分間を通して得られたFOZ値の使用において、増幅因子FおよびR[n]を101個の単位複製配列それぞれについて計算した(図15)。R[nmax]は1.6に設定されたが、160分において十分なFOZmシグナルを与えることができなかった単位複製配列について、R[n]に12という任意の値を割り当てて、低い端の補正を行った。10分でのFOZm値が読まれる単位複製配列についての高い端の補正は、1というR[n]値が任意に割り当てられた。101重の最適化されたプライマー濃度は、10重の実施例および方程式1bにおいて概略を示されている基本的原理を用いて計算され、0.025 uMプライマーにR[n]の1が対応している。多重PCRは次の条件下であった:50 ul反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mM トリスpH 8.0、200 uM dNTP、およびヒトゲノムDNA(hgDNA)鋳型10 ng。95 Cで10分間の変性後、Taq DNAポリメラーゼ2.5単位が添加され、反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で50サイクル、インキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は水で1:24に希釈され、インベーダーMAP検出プラットフォームを使用するインベーダーアッセイ分析に供された。各インベーダーMAPアッセイは、次のように、6 ulの反応物として実行された:PCR反応物(D = 0.125に等しい総希釈度1:8)の1:24希釈液3 ul、15 mM MgCl2 3 ul、これはCHILLOUT 6 ulでカバーされている。試料は、95 Cで5分間のインキュベーションによりインベーダーMAPプレートにおいて変性され、引き続いて、63 Cでインキュベーション、そして160分間の様々な時点においてCytofluor 4000(384ウェルリーダー)上で蛍光が測定された。FOZ値の分析は、10分、20分、および40分において行われ、ゲノムDNAに対して直接的に作成されるコールと比較された。図13に示されているのは、等モルのプライマー濃度での101重PCRについて10分に作成されるコール対最適化されたプライマー濃度下で実行される101重PCRについて10分で作成されたコールの間での比較である。本実施例についての追加データは図16a、図16bおよび図17に示されている。等モルのプライマー濃度下では、多重PCRは、10分の時点において50個のみの正しいコールを生じるのだが、最適化されたプライマー濃度下では、多重PCRは71個の正しいコールを生じ、結果として、21個(42 %)の新しいコールの増加を生じた。101個すべてのコールが10分の時点で作成されることはできなかったが、94個のコールが40分の時点で作成されることができ、これは単位複製配列の大多数の増幅効率が向上したことを示唆する。1ラウンドの最適化を必要としただけの10重の最適化とは違って、より複雑な多重化された反応については、すべての遺伝子座の増幅のバランスをとるために、複数ラウンドの最適化が必要とされうる。
【0134】
CYP2D6についての追加プライマーは図18に示されている。図19は、多重最適化についての一つのプロトコールを示す。
【0135】
III. プールされた試料における対立遺伝子頻度の測定
特定の態様において、本発明は、集団における複数の個体(例えば、10個、50個、100個、または500個の個体)から、または核酸配列が一度にアッセイされる大量の細胞由来である1つの対象から合同されるプールされた試料において多型の検出を可能にする。このことについては、本発明は、プールされた試料においてまれな突然変異の頻度を検出すること、および集団についての対立遺伝子頻度を確証することを可能にする。いくつかの態様において、この対立遺伝子頻度は、その後、インベーダー検出アッセイをその多型についての個体の頻度に適用した(例えば、インベーダーアッセイ法を用いて測定された)結果を統計的に分析するために用いられうる。このことについては、見出される変異体の割合(%)に頼る突然変異(例えば、ヘテロ接合性突然変異の減少)が分析されうり、疾患の重症度または疾患の進行が決定されうる(例えば、あらゆる目的のために参照として本明細書に組み入れられる、ラピダス(Lapidus)による米国特許第6,146,828号および第6,203,993号を参照、遺伝子の試験および統計的分析が、疾患原因性突然変異を見出すことまたは患者の試料の疾患原因性突然変異を含むことを同定するために使用されている)。
【0136】
本発明のいくつかの態様において、広い集団スクリーニングが行われる。いくつかの好ましい態様において、数百個体または数千個体由来のプールしているDNAが最適である。そのようなプールにおいて、例えば、任意の1つの個体由来のDNAは検出可能ではなく、任意の検出可能なシグナルがより広い集団において検出される対立遺伝子の頻度の測定を提供するものである。例えば、使用されるDNA量は、プールにおける個体数によるのではなく、実施例3に記載される15人のプールで行われたように、むしろ、検出される対立遺伝子頻度により設定されるものである。例えば、96ウェル形式でのアッセイ法は、90分の反応において、20 ng〜40 ngのDNAから十分なシグナルを与えるものである。このレベルの感度において、高複雑性プール由来のDNA 1 μgの分析は、集団の約3 %〜5 %だけに存在する対立遺伝子から比較可能なシグナルを産生するものと思われる。いくつかの態様において、反応は、各分析に必要とされるDNAがより少なくなるように、より少ない容量において実行するよう設定される。いくつかの好ましい態様において、反応はマイクロウェルプレート(例えば、384ウェルのアッセイプレート)において行われ、各反応ウェルにおいて少なくとも2つの対立遺伝子または遺伝子座が検出される。特に好ましい態様において、各ウェルにおいて該2つまたはそれ以上の対立遺伝子または遺伝子座のそれぞれから測定されるシグナルが比較される。
【0137】
プールされた試料 - 実施例1
本実施例は、APOC4遺伝子における多型の検出を記載する。特に、本実施例は、プールされた試料においてAPOC4遺伝子における突然変異を検出するためのインベーダーアッセイ法の使用を記載する。
【0138】
本実施例において、ゲノムDNAは、数人の個々の供与者由来の血液試料から単離され、APOC4遺伝子のコドン96におけるT/C多型に対して侵入型切断により特徴付けられた(参照として本明細書に組み入れられる、Allanら、Genomics 1995年7月20日; 28(2): 291〜300を参照)。APOC4アッセイは、侵入型オリゴヌクレオチドとして
ならびに、T(Leu96)およびC(Pro96)の対立遺伝子それぞれに対する一次シグナルプローブとして
または
のいずれかを使用した。二次標的およびプローブはそれぞれ、
および
であった。
【0139】
すべてのオリゴヌクレオチドは標準的ホスホラミダイト化学を用いて合成された。一次プローブオリゴヌクレオチドは標識されなかった。FRETプローブは、Cy3ホスホラミダイトおよび蛍光ホスホラミダイトの取り込みにより標識された(Glen Research、Sterling、VA)。5'末端の使用のために設計される一方で、Cy3ホスホラミダイトは、その色素上に、さらなる合成的鎖の延長を可能にするために除去することができる付加的モノメトキシトリチル(MMT)基をもち、結果として、オリゴヌクレオチドの糖-リン酸骨格におけるギャップを架橋する色素での内部標識を生じる。一次プローブおよび二次標的オリゴヌクレオチドの3'末端において、それらが侵入型オリゴヌクレオチドとして使用されないように、表示されているようなアミンまたはリン酸修飾が用いられた。二次標的オリゴヌクレオチドにおける2'-O-メチル塩基は下線により表示されているが、同じく、3'末端の酵素認識を最小にするために用いられた。大体のプローブ融解温度(Tm)は、Oligo 5.0ソフトウェア(National Bioscience、Plymouth、MN)を用いて計算され、非相同的領域を計算から排除した。
【0140】
プールされた試料は、ヘテロ接合性(het)DNAをこの遺伝子座においてホモ接合性T(L96)であるDNAへ希釈することにより構築された。試験反応は反応あたりT(L96)ゲノムDNAを0.08 μg〜8 μg含み、かつhet DNAは0.08 μgで保持され、これにより、het DNAが試料中の総DNAの50 %から下は1 %までを表示する一連の混合物が作製された(図20を参照)。C(P96)対立遺伝子の実際の表示は、混合試料中のこの遺伝子のコピーの25 %から下は0.5 %までの範囲にわたった。対照は、様々なDNAレベルそれぞれにおけるT(L96)DNAすべて、または80 ngレベルにおけるhet DNAすべてのいずれかを有する反応物を含んだ。さらに、C(P96)対立遺伝子についてホモ接合性であるDNAの試料を試験した(図20)。
【0141】
すべてのインベーダーアッセイ反応について、侵入型プローブ4 pmol、FRETプローブ40 pmol、および二次標的オリゴヌクレオチド20 pmolを1.6 % PEG含有10 mM MOPS(pH 7.5)34 μlにおいてゲノムDNAと結合させた。APOC4遺伝子のC(Pro96)対立遺伝子との反応物は、この対立遺伝子にヘテロ接合性DNA 80 ngを含み、かつその指示された比率でT(Leu96)についてホモ接合性DNAを含んだ。試料は、Chill-Out液体ワックス15 μlで表面を覆われ、DNAを変性させるために95℃まで5分間加熱された。67℃まで冷めたらすぐ、Cleavase VIII酵素400 ng、T(Leu96)またはC(Pro96)いずれかの一次シグナルプローブ15 pmol、および最終濃度7.5 mMまでのMgCl2により、反応を開始させた。プレートは、67℃で2時間インキュベートされ、二次(FRET)反応を開始するために54℃まで冷却され、そしてさらに2時間インキュベートされた。その後、反応はTE 60 μlの添加により停止された。蛍光シグナルは、Cytofluor蛍光プレートリーダー上で、励起485/20、放出530/25、増加(gain)65、温度25℃において測定された。各反応および標的非含有対照について、3回の反復実験を行った各標的DNAについての平均シグナルを計算し、標的非含有対照由来の平均バックグラウンドを差し引き、マイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)を用いて、データをプロットした。
【0142】
本実施例の結果は、図20に示されている。この図に示されているように、C(P96)対立遺伝子は、それが混合物に存在するAPOC4対立遺伝子の0.5 %だけ存在している反応を含む、すべての反応において容易に検出された。これらのデータは、その侵入型切断反応がプールされたDNA試料を使用する集団分析について用いられうることを示す。これは、新しいSNPを実証するために必要とされるアッセイの数を引き下げること、および多数の試験のためにプールされた1つのDNAの大量調製の使用を可能にして、それらにより、DNA純度における試料間の変動の影響を低減させることの二倍の利点をもつ。
【0143】
上記実施例は、インベーダーアッセイ法が集団をスクリーニングするために用いられうることを実証している。分析されるべき混合DNAの試料は、低頻度の対立遺伝子を検出可能な範囲に、例えば、これら40 μl反応物における変種ゲノム量を80 ng〜100 ngにするのに十分な多さであるべきである。本実施例において上記で示されるように、混合されたDNA 8 μg〜10 μgの試料は、これらの条件下において、集団の0.5 %〜1 %で存在する対立遺伝子の検出を可能にする。さらに、任意の1つの個体からのDNAは、理想的には、そのプールの分割量が試験される場合、検出可能なシグナルを産生するために十分な大量で存在しない方がいい。数百個体のプールを作製することは、どの検出されるシグナルもそのプールにおける複数の個体からの寄与を反映していることを保証するべきである。最後に、内部標準として設定される第二プローブの使用は、シグナルが反応から反応へ標準化されることを可能にし、かつどんなSNPの普及率もより正確に測定されることを可能にするものと思われる。
【0144】
プールされた試料 - 実施例2
本実施例は、CFTR遺伝子における多型の検出を記載する。特に、本実施例は、プールされた試料においてCFTR遺伝子におけるΔF508突然変異を検出するためのインベーダーアッセイ法の使用を記載する。
【0145】
ΔF508突然変異のインベーダーアッセイ分析について、一次プローブセットは、侵入型オリゴヌクレオチドとして
ならびに野生型および変異型の対立遺伝子についてのシグナルプローブとして
または
のいずれかを含んだ。二次反応構成要素は、一次反応温度より少なくとも5度低い温度で最適に機能するように設計された。
【0146】
すべてのオリゴヌクレオチドは、標準的ホスホラミダイト化学を用いて合成された。一次プローブオリゴヌクレオチドは標識されなかった。FRETプローブは、Cy3ホスホラミダイトおよび蛍光ホスホラミダイトの取り込みにより標識された(Glen Research、Sterling、VA)。5'末端の使用のために設計される一方で、Cy3ホスホラミダイトは、その色素上に、さらなる合成的鎖の延長を可能にするために除去することができる付加的モノメトキシトリチル(MMT)基をもち、結果として、オリゴヌクレオチドの糖-リン酸骨格におけるギャップを架橋する色素での内部標識を生じる。その色素に適応させるためにこの位置で1つのヌクレオチドを削除した。一次プローブ、二次標的および停止(arrestor)オリゴヌクレオチドの3'末端において、それらが侵入型オリゴヌクレオチドとして使用されないように、アミン修飾が用いられた。2'-O-メチル塩基は、下線を施して表示されているが、同じく、3'末端の酵素認識を最小にするために用いられている。大体のプローブ融解温度は、Oligo 5.0ソフトウェア(National Bioscience、Plymouth、MN)を用いて計算され、非相同的領域を計算から排除した。
【0147】
CFTR遺伝子型として特徴付けられたDNA試料は、コリエル医学研究所(Coriell Institute for Medical Research)(Camden、NJ)、カタログ番号NA07469番(ΔF508およびR553Xの両方の突然変異についてのCFTR遺伝子におけるヘテロ接合性)およびNA01531番(ホモ接合性ΔF508)から購入された。FRET経時的侵入型切断方法を用いて変異体のどのくらいの用量がプールされた試料内で検出されることができるのかを決定するために、CFTR遺伝子におけるΔF508突然変異についてのヘテロ接合体であるDNAは、その遺伝子座においてホモ接合性の野生型であるDNAへ希釈された。試験反応には、反応あたり総ゲノムDNA 0.1 μg〜2.6 μgが含まれ、かつ変異体 DNAは0.1 μgで保持され、このようにして、変異体DNAが試料中における総DNAの50 %から下は4 %までを表示する混合物のセットを作製した。変異体DNAは508遺伝子座においてヘテロ接合性であるため、実際の対立遺伝子の表示は、混合された試料においてそのDNAの25 %から下は2 %までの範囲にわたった。対照は、様々なDNAレベルそれぞれにおいてすべて、または100 ngレベルにおいてすべてのヘテロ接合性変異体DNAのいずれかを有する反応物を含んだ。さらに、ΔF508突然変異についてホモ接合性であるDNAの試料を試験した。
【0148】
DNA濃度は、ピコグリーン(PicoGreen)法を用いて推定された。インベーダープローブ4 pmol、FRETプローブ40 pmol、および二次標的オリゴヌクレオチド20 pmolを、4 % PEG含有10 mM MOPS(pH 7.5)34 μlにおいてゲノムDNAと組合せた。試料は、Chill-Out液体ワックス15 μlで表面を覆われ、DNAを変性させるために95℃で5分間加熱された。62℃まで冷めたらすぐ、AfuFEN1酵素の400 ng、野生型または変異型のいずれかの一次プローブ15 pmol、および最終濃度7.5 mMまでのMgCl2の添加により、反応を開始させた。プレートは、62℃で2時間、インキュベートされ、二次(FRET)反応を開始するために54℃まで冷却され、そしてさらに2時間インキュベートされた。その後、反応はTE 60 μlの添加により停止された。蛍光シグナルは、Cytofluor蛍光プレートリーダー上で、励起485/20、放出530/25、増加65、温度25℃において測定された。各反応についておよび標的非含有対照について、3回の反復実験を行った。各標的DNAについての平均シグナルを計算し、標的非含有対照由来の平均バックグラウンドを差し引き、その後マイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)を用いてデータをプロットした。
【0149】
本実施例の結果は、図21に提示されている。変異体対立遺伝子由来のシグナルの分析は、野生型DNAの量における実質的増加により顕著には阻害されないことを示し、ΔF508変異体DNAが、混合物の2 %のみとして存在する場合、容易に検出されることができた(図21)。これらのデータは、侵入型切断反応がプールされたDNA試料を使用する集団分析のために用いられうることを示す。これは、新しいSNPを実証するために必要とされるアッセイの数を引き下げること、および多数の試験のために使用されるプールされた1つのDNAの大量調製の使用を可能にして、それらにより、DNA純度における試料間の変動の影響を低減させることの二倍の利点をもつ。
【0150】
本実施例において結果が提示されたことを考慮すれば、集団をスクリーニングするためにインベーダーアッセイ法を適用することは可能である。好ましい態様において、集団スクリーニングについて、各個体からのDNAの寄与は均等であるべきであり、かつプールの分割量が試験される場合、任意の1つの個体由来のDNAも、検出可能なシグナルを産生するために十分な大量で存在しない方がいい。例えば、このシステムについては、任意の1人が各反応に対して1 ng未満(例えば、0.5 ng)を寄与する十分大きなプールを作製することにより、どの検出されるシグナルもプールにおける複数の個体からの寄与を反映していることが保証されるだろう。その他の検出系について、任意の1つの個体由来のDNAをそのシステムの検出限界より少ない量、例えば、検出限界の1/5〜1/10に制限することにより、望ましい効果が生じるだろう。内部標準として設定される二次プローブの使用は、例えば、シグナルが反応から反応へ標準化されることを可能にし、かつどんなSNPの普及率もより正確に測定されることを可能にするものと思われる。
【0151】
プールされた試料 - 実施例3
本実施例は、プールされた試料におけるコンソーシアム(Consortium)番号:TSC 0006429(SNP 1831)突然変異の検出を記載する。15個の個体由来のDNAはコリエル細胞貯蔵所(Coriell Cell Repository)から購入され、各試料は、SNPコンソーシアム番号:TSC 0006429(SNP 1831)遺伝子座における遺伝子型を同定するために試験された。各反応は、7.5 mM MgCl2を含有する10 mM MOPS(pH 7.5)緩衝液中の、各個体由来DNA 40 ng、0.366 μM一次プローブ、0.0366 μMインベーダーオリゴヌクレオチド、0.183 μMFRETプローブおよび100 ngCLEAVASE VIII酵素を含んだ。
【0152】
使用されるプローブは以下のとおりである(5'から3'へ)。
【0153】
アッセイは、ホール(Hall)ら、PNAS、97(15): 8272 (2000)に記載されているように行われた。簡単に述べると、反応物は、65℃の一定温度でインキュベートされた。リアルタイム反応検出のためのABI7700装置を使用して作製された、各試料についてのデータは、図22および図23の15個のパネルに示され、ここでG対立遺伝子由来のシグナルは薄い色の線として示され、かつT対立遺伝子由来のシグナルは濃い色の線として示されている。混合物に存在する各対立遺伝子由来のシグナルは、シグナル蓄積の二次式的性質を反映する上昇曲線として産生され、どんな対立遺伝子も存在しないところからのシグナルは、本質的に直線である。これらのDNAは、その後、いくつかの組合わせでプールされた:試料1〜5、6〜10、11〜15、1〜10、6〜15、および1〜15。データパネルは、図24に示されている。図25は、各反応の終わりに測定された正味の蛍光カウントの比較を提供する。図22および図23における結果から、各混合物における対立遺伝子の表現を計算することができる。図24および図25の両方は、各プールについて集計されたシグナルが混合物における対立遺伝子の最終比率に関して比例していることを実証している。プールされた試料からの正味の蛍光シグナルは、各人からのDNAの量が一定に保持されたため、個体からのそれらよりも大きい。例えば、5個の個体からプールされたDNAにおいて実行されるアッセイは、1個の個体からのDNAにおいて実行されるアッセイの5倍のDNA量を有した。
【0154】
本実施例に見られるように、ABI7700のリアルタイム検出能力は、まれなSNPsの検出における非常に貴重なことを立証できる。反応は2段階カスケードであるため、インベーダーアッセイにおいて蓄積されるシグナルのリアルタイムトレースは二次方程式に適合するが(すなわち、図22、図23および図24に観察される曲線)、バックグラウンドシグナルは、反応の過程の間、直線のままである。従って、ゲノム標的から産生されるシグナルをバックグラウンド蛍光から区別することは、明白である。アッセイのこの特徴は、まれな対立遺伝子由来の低レベルシグナルを、より確実にバックグラウンドから決定することができることを意味する。
【0155】
プールされた試料 - 実施例4
1つの反応内での異なる対立遺伝子の測定により、対立遺伝子頻度の決定において比較される測定に不正確さを持ち込む試料間の変動についての懸念が除去される。二重(反応あたり2つの対立遺伝子または遺伝子座の検出)またはより複雑な多重(反応あたり2つより多い対立遺伝子または遺伝子座の検出)形態の使用により、対立遺伝子頻度決定についての処理量が増加し、異なる集団間での対立遺伝子頻度の比較が容易になる(例えば、特定の形質に影響されているものに対して影響されていないもの)。
【0156】
以下は、DNA試料における2つの対立遺伝子の検出についての一般的プロトコールの例の1つ、およびそのプロトコールが試料における対立遺伝子の決定に適用された数例を提供する。本実施例において、シグナルは蛍光色素(FAM)およびレドモンドレッド(REDMOND RED)色素(Red、Synthetic Genetics、San Diego、CA)から測定され、それぞれは、Z28エクリプス(ECLIPSE)消光剤と組合わされた独立のFRETプローブ上で使用される。このプロトコールは実施例として役に立つように提供され、本発明の方法または構成要素の使用をどんな特定のアッセイプロトコールまたは反応形態にも限定するものではない。多数の蛍光色素およびフルオロフォア/消光剤の組合わせ、およびそのような試薬を単独および核酸へのFRET結合において接着および検出する方法は、当技術分野において公知である。そのような他の試薬の組合わせは、本発明における使用のために企図され、これらの方法におけるその使用は、本発明の範囲内である。
【0157】
a. プールされた試料における対立遺伝子頻度の決定のための手順
1. ピコグリーン(PICOGREEN)試薬を使用する(手順は後に続く)インベーダーアッセイ法において使用される各試料のDNA濃度を測定する。
2. 特定された対立遺伝子頻度でのゲノム試料の模擬プールへ望ましい比率でDNA試料を混合する。
3. ゲノムDNA試料を95℃で10分間インキュベートすることにより変性させる。その後、試料を氷上に置いてもよい(選択的に)。
4. 反応あたり、1.15 μL プローブ/インベーダーオリゴヌクレオチド混合物(各一次プローブ3.5 μMおよび0.35 μMインベーダーオリゴヌクレオチド)と1.85 μL 24 mM MgCl2を混合することによりプローブ/ インベーダーオリゴヌクレオチド/MgCl2混合物を調製する。試料の完全セットの試験のために十分なマスター混合物の調製が好ましい。
5. 384ウェル二重インベーダーアッセイFRET検出プレート(Third Wave Technologies、Madison、WI)の適当なウェルへ、80 ng/μl〜100 ng/μl(ゲノムDNAの約240 ng〜300 ng)での適当な対照または試料DNA標的を3 μl添加する。各プレートウェルは、分配後乾燥された、10 mM MOPS、8 % PEG、4 % グリセロール、0.06 % NP 40、0.06 % ツィーン20、12 ug/ml BSA、50 ng/ul BSA、33.3 ng/ul CLEAVASE VIII酵素、1.17 μM FAM FRETプローブ
および1.17 μM Red FRETプローブ
を含有する溶液3 μlを含む。
6. 次に、384ウェル二重インベーダーアッセイFRET検出プレートの適当なウェルへ、プローブ/ インベーダーオリゴヌクレオチド/MgCl2混合物3 μlをピペットで移す。
7. 各反応物をミネラルオイル6 μlで表面を覆う。
8. プレートを接着性カバーで覆い、プローブおよび標的をウェルの底に移動させるためにベックマン(Beckman)GS-15R遠心分離機(または等価物)で10秒間、1,000 rpmで振とうする。
9. 反応物をサーマルサイクラーまたはBioOven IIIなどのインキュベーターにおいて63℃で3時間〜4時間、インキュベートする。63℃での3時間〜4時間のインキュベーション後、サーマルサイクラーを使用する場合には4℃まで、またはインキュベーターを使用する場合には室温まで、温度を低下させる。
10. 以下のパラメーターを用いる蛍光プレートリーダー上でマイクロタイタープレートを分析する。
【0158】
b. フォールドオーバーゼロマイナス1(fold-over-zero minus 1)(FOZ-1)の計算
各反応からのシグナルは、標的非含有対照(「ゼロ」)からのシグナルとの比較により測定され、「ゼロ」反応物からのシグナルの倍数として表現される。バックグラウンドに対しての実際のシグナルの因子を得るために、因子1が差し引かれる(例えば、ゼロの1.5×シグナルすなわち1.5フォールドオーバーゼロをもつ試料について、固有のシグナルの量は、1.5 - 1、すなわち0.5である)。
【0159】
FOZ-1を以下のように決定する。
FOZ-1 FAMプローブ = ((FAMプローブ1の数の生データ(raw count)、485/530)/(標的非含有対照FAMプローブの数の生データ、485/530))-1
FOZ-1レッドプローブ = ((レッドプローブ2の数の生データ、560/620)/(標的非含有対照レッドプローブの数の生データ、560/620))-1
【0160】
c. 補正因子(Correction Factor)(CF)を以下のように計算
補正因子は、切断反応効率におけるプローブセット間の任意の変動を合わせるために計算されうる。
ヘテロ接合性対照のCFFAM = (FOZFAM-1)/((FOZRed-1);CFRed = (FOZRed-1)/(FOZFAM-1)
FAM対立遺伝子頻度計算について:
レッド対立遺伝子頻度計算について:
【0161】
d. DNA定量の手順(Molecular Probes PICOGREENアッセイ法)
ピコグリーン(PICOGREEN)試薬は、非対称のシアニン染料である(モレキュラープローブズ(Molecular Probes)、OR)。遊離染料は蛍光を発しないが、dsDNAに結合すると同時に、>1000倍の蛍光増加を示す。ピコグリーン(PICOGREEN)は、UV吸光度法より10,000倍も感度が高く、かつssDNAおよびRNAに比較してdsDNAに対する選択性が高い。
【0162】
1. 結果を読む前に少なくとも10分間蛍光プレートリーダー上で回転させる。ピコグリーン(PICOGREEN)結果を読むために以下の設定を用いる。
2. ピコグリーン(PICOGREEN)キットに供給されている20×TE保存液から1×TE緩衝液(10 mM トリスHCl、1 mM EDTA、pH 7.5)を調製する(50 mlを作製するためには、DNase非含有滅菌蒸留水47.5 mlへ20×TEを2.5 ml添加する)。50 mlは、250アッセイに対して十分な量である。
3. DNA標準を1×TEで100 μg/mlから2 μg/mlまでに希釈する。2つの標準曲線のために、100 μg/ml保存液8 μlを392 μlの1×TEへ添加することにより2 μg/ml保存液を400 μl調製する。
4. 表1に示されるように、マイクロタイタープレート内の2つの標準曲線を調製する。
【0163】
【表1】
【0164】
5. 各未知試料について、マイクロプレートウェル内で試料2 μlを1×TE 98 μlへ添加する。ピペットで上下することにより混合する。
6. 1×TE中でピコグリーン(PICOGREEN)試薬の1:200希釈を調製する。各標準および各未知試料について、100 μlの容量が必要とされる。例えば、それぞれ8点をもつ2つの標準曲線は、1.6 mlを要求することになる。必要とされる希釈されたピコグリーン(PICOGREEN)試薬の総容量を計算するために、試験されるであろう試料および未知の総数を決定し、この数に100 μlを掛ける(マルチチャンネルピペットを使用する場合には、さらなる試薬を作製する)。ピコグリーン(PICOGREEN)試薬は光感受性であり、解凍中および希釈された状態においては、ホイルで覆っておくべきである。十分にボルテックスする。
7. 希釈ピコグリーン(PICOGREEN)100μlを全標準および試料に添加する。ピペットで上下させて混合する。
8. ホイルでマイクロプレートを覆い、室温で2分間〜5分間、インキュベートする。
9. プレートを読み取る。
10. 標準の平均値を用いて標準曲線を作製し、未知試料におけるDNA濃度を決定する。
【0165】
e. ゲノムDNA試料における対立遺伝子頻度の測定
様々な頻度で対立遺伝子を有するDNA試料は、異なるホモ接合性ゲノムDNA試料を異なる比率で混合することにより作製された。各プールは、合計240 ngのゲノムDNAを含み、反応は、上記のように、63℃で3時間、384ウェルプレートで行われた。測定されたシグナルは図26Aに示されている。対立遺伝子頻度は、FAMおよびRedレポーター色素により産生される相対的シグナルに基づいて計算され、図26Bにおいてグラフで示されている。これらのデータは、インベーダーアッセイデータから計算された対立遺伝子頻度と比較した、理論上または実際の対立遺伝子頻度(DNAの既知量を混合することにより作製されていることを意味される頻度)間の相関関係を示す。
【0166】
異なる個体のゲノムDNAの8通りのプールもまた試験された。8つのDNAのそれぞれは、8個の異なるSNP遺伝子座それぞれについて以前に特徴付けられており、そのプールにおける8個のSNPsそれぞれについての対立遺伝子頻度は知られていた。この試験において、各プールは、合計300 ngのゲノムDNAを含み、反応は、上記のように、63℃で3時間、384ウェルプレートにおいて行われた。FAMチャンネルについて測定されたシグナルは、各場合においてよりまれな対立遺伝子であるが、図27に示されている。グラフは、各対立遺伝子についての既知の頻度をインベーダーアッセイデータから計算された頻度と比較している。
【0167】
2つの異なるSNPs(SNP132505およびSNP131534)それぞれについてホモ接合性DNAは、異なる対立遺伝子頻度をもつゲノムのプールをシミュレートするために様々な比率で組合わされた。各プールは合計240 ngのゲノムDNAを含み、反応は、上記のように、63℃で3時間、384ウェルプレートにおいて行われた。対立遺伝子頻度は、FAMおよびRedレポーター色素により産生される相対的シグナルに基づいて計算され、図28Aおよび図28Bにおいてグラフで示されている。
【0168】
上記の試験に使用されるプローブおよび本発明の方法における使用に適したさらなるプローブセットは、図30A〜図30Cに示されている。
【0169】
上記明細書において挙げられているすべての発行物および特許は、本明細書に特別に述べられているのと同様に、参照として本明細書に組み入れられている。本発明記載の方法およびシステムの様々な改変および修正は、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、当業者にとって明白であると思われる。本発明は、特定の好ましい態様に関して記載されてきたが、主張される本発明がそのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際に、当業者にとって明らかであるような、本発明の実践のために記載された様式の様々な改変は、添付の特許請求の範囲内であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】インベーダー検出アッセイ法の態様の一つを示す。
【図2】入力標的配列ならびに、本発明のシステムおよびルーチンを用いてこの配列 を処理した結果を示す。
【図3】インベーダー医学的関連パネル(INVADER Medically Associated Panel)を用いる高度多重PCRについての基本的な作業の流れの一例を示す。
【図4】多重PCR法に有用なプライマーセットを作製するために行われうる段階の概略を示す流れ図を示す。
【図5】図5は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図6】図6は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図7】図7は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図8】図8は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図9】図9は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図10A】図10Aは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図10B】図10Bは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図11】図11は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図12】図12は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図13−1】図13-1は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図13−2】図13-2は、図13-1の続きを示す図である。
【図13−3】図13-3は、図13-2の続きを示す図である。
【図14】図14は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図15−1】図15-1は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図15−2】図15-2は、図15-1の続きを示す図である。
【図16A】図16Aは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図16B】図16Bは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図17】図17は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図18−1】CYP2D6の様々な領域を増幅するために有用な、特定のPCRプライマーを示す。
【図18−2】図18-2は、図18-1の続きを示す図である。
【図19】本発明による多重PCR最適化のためのプロトコールの一つを示す。
【図20】インベーダーアッセイ法が、プールされた試料中のAPOC4遺伝子における突然変異を検出できることを実証するグラフを示す。
【図21】インベーダーアッセイ法が、プールされた試料中のCFTR遺伝子における突然変異を検出できることを実証するグラフを示す。
【図22】図22は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図23】図23は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図24】図24は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図25】図25は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図26】図26Aは、各遺伝子座のコピー数を示された割合(%)で含む対立遺伝子の検出に関するインベーダーアッセイ法において対立遺伝子シグナルを測定するデータを示す。図26Bは、理論上の対立遺伝子頻度を、図5Aに示されたインベーダーアッセイデータから計算される対立遺伝子頻度と比較するエクセル(Excel)グラフを示す。
【図27】8つの異なる個体由来のプールされたゲノムDNAにおいて検出される8個のSN遺伝子座それぞれについての実際のおよび計算された対立遺伝子頻度を比較するエクセル(Excel)グラフおよびデータを示す。
【図28】これらの対立遺伝子の異なる混合物を有するゲノムDNAにおけるSNP遺伝子座132505についてのフォールドオーバーゼロマイナス1(fold-over-zero minus 1)(FOZ-1)測定値と比較して計算された対立遺伝子頻度を示すエクセル(Excel)グラフおよびデータを示す。
【図29】これらの対立遺伝子の異なる混合物を有するゲノムDNAにおけるSNP遺伝子座131534についてのフォールドオーバーゼロマイナス1(fold-over-zero minus 1)(FOZ-1)測定と比較して計算された対立遺伝子頻度を示すエクセル(Excel)グラフおよびデータを示す。
【図30A】図30Aは、プールされた試料-実施例4に記載されたアッセイにおける使用のために構成されたプローブの配列および、各対立遺伝子についての合成標的を示す。「Y」とはアミンブロック基を示す。実施例4に記載された例示的アッセイ構成において使用された際の多型および各プローブについて検出されると考えられる色素が示されている。
【図30B】図30Bは、プールされた試料-実施例4に記載されたアッセイにおける使用のために構成されたプローブの配列および、各対立遺伝子についての合成標的を示す。「Y」とはアミンブロック基を示す。実施例4に記載された例示的アッセイ構成において使用された際の多型および各プローブについて検出されると考えられる色素が示されている。
【図30C】図30Cは、プールされた試料-実施例4に記載されたアッセイにおける使用のために構成されたプローブの配列および、各対立遺伝子についての合成標的を示す。「Y」とはアミンブロック基を示す。実施例4に記載された例示的アッセイ構成において使用された際の多型および各プローブについて検出されると考えられる色素が示されている。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年10月12日に出願された米国特許仮出願第60/329,113号、2001年10月19日に出願された米国特許仮出願第60/360,489号、2001年5月9日に出願された米国特許仮出願第60/289,764号、および2001年10月2日に出願された米国特許仮出願第60/326,549号の優先権を主張する、2001年11月30日に出願された国際出願番号第PCT/US01/45705号からの日本国内移行段階である。
【0002】
発明の分野
本発明は、多重増幅反応において用いられるオリゴヌクレオチドプライマーを設計するための方法に関する。本発明はまた、多重増幅反応を最適化するための方法を提供する。本発明はまた、反応1回あたり150 pg未満のDNAを用いる遺伝子型判定のためにインベーダー(INVADER)アッセイ法と組合わせて高度に多重化されたPCR法を行うための方法を提供する。本発明はまた、プールされた核酸試料において突然変異を検出することに関する。特に、本発明は、インベーダー検出アッセイ法を用いてプールされた核酸試料において突然変異を検出するためおよび対立遺伝子を測定するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒトゲノムプロジェクトが完成に近づき、入手可能な遺伝子配列情報の量が増加するにつれて、ゲノム解析研究および続いて起こるドラッグデザインの試みも同様に増加している。ゲノム解析研究、ドラッグデザインおよび個人別医薬品において用いられうる検出アッセイ法の効率的オーダー、開発、生産および販売を可能にするシステムおよび方法に対する要求が存在している。多数の機関が、遺伝子、遺伝子発現および表現型(例えば、疾患状態、代謝応答など)間の相関関係を同定するために、入手可能な遺伝子配列情報を活発に調べている。これらの分析は、個体および集団における遺伝子突然変異の効果ならびに遺伝的および遺伝子発現の不均一性を特徴付ける試みを含む。しかしながら、多量の入手可能な配列情報にもかかわらず、多数の多型および他の変異の頻度ならびに臨床的関連性についての情報はまだ、獲得されかつ確証されなければならない。例えば、最近のゲノムシーケンシングの試みにおいて用いられるヒト参照配列は、どの人のゲノムに対しても厳密な整合を示さない。ヒトゲノムプロジェクト(HGP)において、研究者は、多数の供与者から血液(女性)または精液(男性)試料を収集した。しかしながら、ほんの少数の試料だけがDNA供給源として処理され、そしてその出所名は保護されて、供与者も科学者のどちらも誰のDNAがシーケンシングされているのかを知らない。民営のゲノム解析会社セレラ(Celera)により作製されたヒトゲノム配列は、ヒスパニック、アジア人、カフカス人またはアフリカ系アメリカ人として同定される5人の供与者から収集されたDNA試料に基づいた。その参照配列を作製するために用いられた少数のヒト試料は、集団グループおよび個体の間での遺伝的多様性を反映していない。ゲノム配列情報に基づいて個体を分析する試みは、失敗することが多い。例えば、多くの遺伝子検出アッセイ法は、ゲノムDNAまたはmRNAにある標的領域へのプローブオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに基づいている。その参照配列に基づいて作製されたプローブは、複数の個体についての標的配列がその参照配列と異なるため、失敗することが多い(例えば、正確にハイブリダイズしない、標的の特定の位置での配列を正確に特徴付けられない)。相違は、個体ごとに基盤をおく場合もあるが、多くは地域的集団パターンに従う(例えば、多くは人種、民族性、地理的土地、年齢、環境的曝露などに高く相関している)。現在入手可能な情報の利用性が限定されているため、当技術分野では、生体試料の研究および臨床的分析のための1つまたは複数の型の検出アッセイテクノロジーのアレイを提供することを目標とする、多量の遺伝子情報を獲得する、分析する、蓄積する、および適用するために1つまたは複数の生産装置において選択的に用いられうるシステムおよび方法が要求されている。これらの様々な要求を満たすことが本発明の目的である。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、多重増幅反応に用いられるオリゴヌクレオチドプライマーを設計するための方法を提供する。本発明はまた、多重増幅反応を最適化するための方法を提供する。本発明はまた、反応1回あたり150 pg未満のDNAを用いる遺伝子型判定のためにインベーダーアッセイ法と組合わせて高度に多重化されたPCR法を行うための方法を提供する。本発明はまた、プールされた核酸試料において突然変異を検出するための方法を提供する。特に、本発明は、インベーダー検出アッセイ法を用いてプールされた核酸試料において突然変異を検出するためおよび対立遺伝子を測定するための組成物および方法を提供する。
【0005】
いくつかの態様において、本発明は以下の段階を含む方法を提供する:
a)各標的配列がi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)少なくともY個の標的配列それぞれに対するフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。一つの変法において、顧客提供の配列が上流および下流へ自動的に増大されて本明細書記載の方法およびシステムを用いる適当なプライマー設計を可能にすることもまた認識されている。
【0006】
他の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法を提供する:
a)各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)少なくともY個の標的配列それぞれに対するフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0007】
特定の態様において、方法(次の機能性を提供するコンピュータープログラムおよびルーチンを含む)は以下を含む:
a)各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)i)Y個の標的配列それぞれについての5'領域の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについての3'領域の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0008】
他の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(次の機能性を提供するコンピュータープログラムおよびルーチンを含む)を提供する:
a)各標的配列がi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;ならびに
b)i)Y個の標的配列それぞれについての5'領域の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについての3'領域の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0009】
特定の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(および次の機能性を提供するルーチン)を提供する:
a)各標的配列は一塩基多型を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;
b)フットプリント領域が各標的配列上に位置しているような一塩基多型を検出するために、各標的配列上のどこに1つまたは複数のアッセイプローブがハイブリダイズするかどうかを決定する段階;ならびに
c)i)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0010】
いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(および次の機能性を提供するルーチン)を提供する:
a)各標的配列は一塩基多型を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を供給する段階;
b)フットプリント領域が各標的配列上に位置しているような一塩基多型を検出するために、各標的配列上のどこに1つまたは複数のアッセイプローブがハイブリダイズするものであるかを決定する段階;ならびに
c)プライマーセットはi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドTまたはGであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように標的配列情報を処理する段階。
【0011】
ある態様において、プライマーセットは、少なくともY個の単位複製配列を増幅する多重PCR反応を行うために構成され、各単位複製配列はフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列の位置により限定される。その他の態様において、プライマーセットは、デジタル式のまたは印刷された配列情報として作製される。いくつかの態様において、プライマーセットは、物理的なプライマーオリゴヌクレオチドとして作製される。本明細書の方法、ルーチンおよび構成要素を用いて、100重およびそれ以上のPCRプライマー反応を起こすことが可能である。
【0012】
ある態様において、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'は、プライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'にも相補的でない。その他の態様において、処理は、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含む。特定の態様において、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のGまたはTとして最初に選択することを含む。いくつかの態様において、処理は、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含み、かつ処理が、各フォワードプライマーのN[2]-N[1]-3'がプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'に相補的でないという必要条件を欠くフォワードプライマー配列について、N[1]を5'領域において次に最も3'側のAまたはCに変えることをさらに含む。
【0013】
他の態様において、(好ましくは電子的)処理段階は、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域の相補体における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含む。いくつかの態様において、処理は、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域の相補体における最も3'側のGまたはTとして最初に選択することを含む。さらなる態様において、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択することを含み、かつ処理が、リバースプライマーのN[2]-N[1]-3'それぞれがプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'に相補的でないという必要条件を欠くリバースプライマー配列について、N[1]を3'領域において次に最も3'側のAまたはCに変えることをさらに含む。
【0014】
特定の態様において、フットプリント領域は、一塩基多型を含む。いくつかの態様において、フットプリントは突然変異を含む。いくつかの態様において、各標的配列についてのフットプリント領域は、一塩基多型を検出するために構成された1つまたは複数のアッセイプローブにハイブリダイズする標的配列の部分を含む。特定の態様において、フットプリントは、そのプローブがハイブリダイズするこの領域である。その他の態様において、フットプリントは、どちらの末端にでも付加的ヌクレオチドをさらに含む。
【0015】
いくつかの態様において、(本発明の変法の1つにおける電子的な)処理段階は、アッセイ構成要素配列と80パーセント未満の相同性が存在するように、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてN[5]-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'を選択することをさらに含む。好ましい態様において、アッセイ構成要素は、FRETプローブ配列である。特定の態様において、標的配列は、約300塩基対〜500塩基対長、または約200塩基対〜600塩基対長である。特定の態様において、Yは、2から500の間、または2〜10,000の間の整数である。
【0016】
ある態様において、(本発明の変法の1つにおいては電子的な)処理段階は、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度(例えば、摂氏50度、または少なくとも摂氏50度、かつ摂氏55度を越えない)の標的配列に関する融解温度をもつように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのxを選択することを含む。好ましい態様において、プライマーの融解温度(標的配列とハイブリダイズする場合の)は、少なくとも摂氏50度であるが、選択された検出アッセイ法の最適反応温度より少なくとも10度違う。
【0017】
いくつかの態様において、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの対の最適化された濃度は、そのプライマーセットに対して決定される。その他の態様において、処理は自動化される。さらなる態様において、処理は処理装置で自動化される。
【0018】
他の態様において、本発明は、本発明の方法により作製されるプライマーセット、および少なくとも1つの他の構成要素(例えば、切断剤、ポリメラーゼ、インベーダーオリゴヌクレオチド、または本発明のもう一つの変法における他の検出アッセイ法もしくは検出アッセイ構成要素)を含むキットを提供する。特定の態様において、本発明は、本発明の方法により作製されるプライマーおよびプライマーセットを含む組成物を提供する。
【0019】
特定の態様において、本発明は、以下の段階を含む方法(および方法論を利用するルーチン)を提供する:a)i)配列データを受け取るように設定されたユーザーインターフェース、ii)その中に多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムを供給する段階と、b)配列データをユーザーインターフェースからコンピューターシステムへ送信する段階であり、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む段階と、c)プライマーセットを作製するために多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションで標的配列情報を処理する段階であり、プライマーセットがi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む段階。
【0020】
いくつかの態様において、本発明は以下の段階を含む方法(および方法論に用いられるルーチン)を提供する:a)i)配列データを受け取るように設定されたユーザーインターフェース、ii)その中に多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムを供給する段階と、b)配列データをユーザーインターフェースからコンピューターシステムへ送信する段階であり、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む段階と、c)プライマーセットを作製するために多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションで標的配列情報を処理する段階であり、プライマーセットがi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む段階。
【0021】
ある態様において、本発明は以下を含むシステムを提供する:a)ユーザーインターフェースからデータを受け取るように設定されたコンピューターシステム(および方法論に用いられるルーチン)であり、ユーザーインターフェースは配列データを受け取るように設定されており、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、b)ユーザーインターフェースに操作可能に連結された多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションであり、多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションはプライマーセットを作製するために標的配列情報を処理するように設定されており、プライマーセットはi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む、ならびにc)その中に多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムであり、コンピューターシステムはコンピューターメモリーおよびコンピューター処理装置を含む。
【0022】
他の態様において、本発明は以下を含むシステムを提供する:a)ユーザーインターフェースからデータを受け取るように設定されたコンピューターシステムまたはコンピューターであり、ユーザーインターフェースは配列データを受け取るように設定されており、配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、各標的配列はi)フットプリント領域、ii)フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、b)ユーザーインターフェースに操作可能に連結された多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションであり、多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションはプライマーセットを作製するために標的配列情報を処理するように設定されており、プライマーセットはi)Y個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の5'に隣接した標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)少なくともY個の標的配列それぞれについてのフットプリント領域の3'に隣接した標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、各フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列は5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドGまたはTであり、かつ各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'はプライマーセットのどのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[2]-N[1]-3'にも相補的でないものを含む、ならびにc)その中に多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションを記憶しているコンピューターシステムであり、コンピューターシステムはコンピューターメモリーおよびコンピューター処理装置を含む。特定の態様において、コンピューターシステムはプライマーセットをユーザーインターフェースへ戻すように設定されている。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は、プールされた核酸試料において突然変異を検出することに関する。特に、本発明は、インベーダー検出アッセイ法または本明細書に記載される他の検出アッセイ法を用いて、プールされた核酸試料において突然変異を検出するまたは対立遺伝子頻度を測定するための組成物および方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含む、多型の対立遺伝子頻度を検出するための方法を提供する:
a)i)プールされた試料が少なくとも10個の個体(または少なくとも50個、または少なくとも100個、または少なくとも250個、または少なくとも500個、または少なくとも1000個の個体など)に由来する標的核酸配列を含む、プールされた試料;および
ii)多型の有無を検出するように設定されたインベーダー検出試薬(例えば、一次プローブ、インベーダーオリゴヌクレオチド、FRETカセット、構造特異的酵素など)
を供給する段階;ならびに、
b)プールされた試料を検出可能なシグナルを産生するインベーダー検出試薬に接触させる段階;ならびに、
c)検出可能なシグナルを測定し、それにより多型を含む標的核酸配列の数を決定する段階(例えば、分子の量的数、または集団における多型についての対立遺伝子頻度が決定される)。いくつかの態様において、特定の標的核酸遺伝子座について2つまたはそれ以上の対立遺伝子由来のシグナルが測定され、かつその数が比較される。好ましい態様において、特定の標的核酸遺伝子座の2つまたはそれ以上の異なる対立遺伝子についての測定は、単一反応において測定される。その他の態様において、特定の標的核酸遺伝子座の1つまたは複数の対立遺伝子由来の測定は、1つまたは複数の参照標的核酸遺伝子座からの測定と比較される。好ましい態様において、特定の標的核酸遺伝子座の1つまたは複数の対立遺伝子由来の測定は、同じ反応混合物における1つまたは複数の参照標的核酸遺伝子座からの測定と比較される。さらなる方法は、単一の個体の特定の対立遺伝子頻度(すなわち、個体内における配列の複数コピーの間での突然変異の頻度)または多型を有することを見出された分子の量的数(例えば、インベーダーアッセイ法により測定される)を集団の対立遺伝子頻度(または予想される数)と比較することを可能にして、その単一の個体が疾患に罹りやすいかどうか、疾患はどのくらい進行しているか(例えば、ヘテロ接合性の損失を同定することにより診断されうる癌のような疾患)などが決定される。いくつかの態様において、個体は、同じ人種または民族の部類由来である(例えば、ヨーロッパ人、アフリカ人、アジア人、メキシコ人など)。
【0024】
特定の態様において、本発明は、以下の段階を含むまれな突然変異を検出するための方法を提供する:a)i)試料が少なくとも10,000個の標的核酸配列(例えば、10,000個の細胞由来、または少なくとも20,000個の標的核酸配列、または少なくとも100,000個の標的核酸配列)を含む、単一対象由来の試料、ii)野生型対立遺伝子と比較して1:1000またはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる検出アッセイ法(例えば、インベーダーアッセイ法)を供給する段階;およびb)まれな突然変異(例えば、野生型と比較して1:100、または1:500、または1:1000もしくはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在するもの)の有無が検出されるような条件下で検出アッセイ法で試料をアッセイする段階。いくつかの態様において、標的核酸配列はゲノムである(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、つまりPCR増幅されず、細胞から直接的に)。その他の態様において、標的核酸配列は増幅されている(例えば、PCRにより)。
【0025】
いくつかの態様において、本発明は、以下の段階を含むまれな突然変異を検出するための方法を提供する:a)i)試料が少なくとも10,000個の標的核酸配列を含む、単一対象由来の試料、ii)野生型対立遺伝子と比較して1:1000またはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる検出アッセイ法を供給する段階;およびb)まれな突然変異の試料における対立遺伝子頻度が測定されるような条件下で検出アッセイ法で試料をアッセイする段階。いくつかの態様において、診断がなされうるように(例えば、疾患の程度、その疾患をもつことまたはそれを子孫へ伝えることの見込みなど)、対象の対立遺伝子頻度は、既知の参照対立遺伝子頻度と統計学的に比較される。
【0026】
本発明はまた、例えば、インベーダーアッセイ法を用いることにより試料に存在する1つまたは複数の多型の分子の数を測定するための方法を提供する(例えば、疾患に関連しているSNPsのような多型)。このアッセイ法は、第一試料での特定の多型の数を測定し、その後、その数と第二試料での同じ多型の数との間に統計学的有意差があるかどうかを決定するために用いられうる。好ましくは、1つの試料は、健康な個体から、またはプールされた試料が使用される場合には健康な集団から得られる試料において発生すると予想される多型の数を提示する。健康な個体において一塩基遺伝子座にあると予想される多型の数と患者から得られる試料においてあると測定された数との間の統計学的有意差は、臨床上、示唆するものである。
【0027】
添付の図面は、本明細書の一部をなし、本発明の特定の局面および態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に示されている特定の態様の記載と合わせて、1つまたは複数のこれらの図面を参照することにより、より理解されうる。
【0028】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を下記のように定義する。
【0029】
本明細書に用いられる「コンピューターメモリー」および「コンピューターメモリー装置」という用語は、コンピューター処理装置により読める任意の記憶媒体を指す。コンピューターメモリーの例には、これらに限定されるわけではないが、RAM、ROM、コンピューターチップ、デジタルビデオディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、ハードディスクドライブ(HDD)、および磁気テープが含まれる。
【0030】
本明細書に用いられる「コンピューター可読媒体」という用語は、情報(例えば、データおよび命令)を記憶し、かつコンピューター処理装置へ供給するための任意の装置またはシステムを指す。コンピューター可読媒体の例には、これらに限定されるわけではないが、DVD、CD、ハードディスクドライブ、磁気テープおよびネットワークを通じてのストリーミングメディアのためのサーバーが含まれる。
【0031】
本明細書に用いられる「処理装置」および「中央処理装置」または「CPU」という用語は互換的に用いられうり、コンピューターメモリー(例えば、ROMまたは他のコンピューターメモリー)からのプログラムを読むことができる装置を指し、プログラムに従ってステップのセットを実行する。
【0032】
本明細書に用いられる「SNP」、「SNPs」または「一塩基多型」という用語は、生物体(例えば、ヒト)のゲノムにおける特定の位置での一塩基の変化を指す。「SNPs」は、遺伝子としてコードされないゲノムの部分に位置されうる。または、「SNP」は遺伝子のコード領域に位置される場合がある。この場合、その「SNP」は、それが関連しているRNAまたはタンパク質の構造および機能を変化させる可能性がある。
【0033】
本明細書に用いられる「対立遺伝子」という用語は、所与の配列の変異型を指す(例えば、これらに限定されるわけではないが、1つまたは複数のSNPを含む遺伝子)。集団において、複対立遺伝子型として多数の遺伝子が存在する。ホモ接合体は同じ対立遺伝子の2つのコピーを有するのに対して、遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を有する二倍体生物は、その遺伝子についてヘテロ接合性であると言われる。
【0034】
本明細書に用いられる「連鎖」という用語は、染色体上の2つまたはそれ以上のマーカー(例えば、遺伝子)の近接を指す。
【0035】
本明細書に用いられる「対立遺伝子頻度」という用語は、所与の集団(例えば、特定の性、人種、または民族集団)において所与の対立遺伝子(例えば、SNPを含む配列)の発生頻度を指す。特定集団が、所与の対立遺伝子を、他集団よりも高い割合(%)の範囲内でそのメンバーを含む場合がある。例えば、BRCA1と呼ばれる乳癌遺伝子における特殊な突然変異が、一般的なユダヤ人集団の1パーセントに存在することが見出された。比較すると、BRCA1になんらかの突然変異をもつ一般的な米国集団における人々の割合(%)は、0.1パーセント〜0.6パーセントの間であると見積もられている。2つのさらなる突然変異(BRCA1遺伝子内のものと、BRCA2と呼ばれるもう一つの乳癌遺伝子内にあるもの)は、アシュケナジ(Ashkenazi)のユダヤ人集団においてより大きい普及率をもち、これらの3つの突然変異のうちの1つを保有することについての総合的リスクは2.3パーセントになる。
【0036】
本明細書に用いられる「インシリコ(in silico)分析」という用語は、コンピューター処理装置およびコンピューターメモリーを用いて実行される分析を指す。例えば、「インシリコSNP分析」とは、コンピューター処理装置およびメモリーを用いるSNPデータの分析を指す。
【0037】
本明細書に用いられる「遺伝子型」という用語は、生物体の実際的な遺伝子組成を指す(例えば、遺伝子座に有する特定の対立遺伝子に関して)。遺伝子型の発現は、生物体の身体的外観および特徴(「表現型」)を生じさせる。
【0038】
本明細書に用いられる「遺伝子座」という用語は、染色体上における遺伝子または任意の他の特徴付けられた配列の位置を指す。
【0039】
「野生型」という用語は、天然に存在する源から単離された場合のその遺伝子または遺伝子産物の特徴をもつ遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察されるものであり、従って、その遺伝子の「正常」または「野生型」の形態を任意に意図される。対照的に、「改変された」、「変異体(mutant)」および「変種(variant)」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較される場合、配列および/または機能的性質における改変(すなわち、変化した特徴)を見せる遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体が単離されうることを特に言及しておくが、これらは野生型遺伝子または遺伝子産物と比較される場合、変化した特徴をもつという事実により同定される。
【0040】
本明細書に用いられる「相補的な」または「相補性」という用語は、塩基対構成ルールにより関係付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して用いられる。例えば、配列「5'-A-G-T-3'」については、配列「3'-T-C-A-5'」に相補的である。相補性は、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対構成ルールに従って整合されている「部分的」でありうる。または、核酸間に「完全な」または「全体的」相補性がありうる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強さに有意な効果を及ぼす。これは、増幅反応において、加えて、核酸間の結合に依存する検出方法においても特別重要である。
【0041】
本明細書に用いられる「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対構成に関して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強さ(すなわち、核酸間の結合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、構成されたハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比のような因子により強く影響される。
【0042】
本明細書に用いられる「Tm」という用語は、「融解温度」に関して用いられる。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が半分解離して一本鎖になる時の温度である。核酸のTmを計算するための方程式は当技術分野においてよく知られている。標準的参照文献により示されるように、Tm値の簡単な概算は、核酸が1 M NaClの水溶液中にある場合、方程式:Tm = 81.5 + 0.41 (% G + C)により計算されうる(AndersonおよびYoung、「定量的フィルターハイブリダイゼーション(Quantitative Filter Hybridization)」、「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」中、(1985)を参照)。その他の参照には、Tmの計算について配列上の特性および構造上の特性を考慮に入れる、より非常に複雑な計算法が含まれる。
【0043】
本明細書に用いられる「ストリンジェンシー」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる時の、温度、イオン強度、および有機溶媒のような他の化合物の存在の条件に関して用いられる。上述されたばかりのパラメーターを、別々にまたは一斉に変化させることにより「ストリンジェンシー」条件が変化されうることを、当業者は認識すると考えられる。「高ストリンジェンシー」条件では、核酸塩基対構成は、相補的塩基配列が高頻度にある核酸断片間のみ生じるであろう(例えば、「高ストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、約85 %〜100 %の同一性、好ましくは約70 %〜100%の同一性をもつ相同体の間で起こりうる)。中程度のストリンジェンシー条件では、核酸塩基対構成は、相補的塩基配列が中間の頻度にある核酸間に生じるであろう(例えば、「中程度のストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、約50 %〜70 %の同一性をもつ相同体の間に起こりうる)。このように、遺伝的に多様な生物体由来の核酸については、相補的配列の頻度が通常は、より低いため、「弱い」または「低い」ストリンジェンシーの条件が要求されることが多い。
【0044】
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「高ストリンジェンシー条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、5×SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.5 % SDS、5×デンハルト試薬および100 μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合またはハイブリダイゼーション、続いて、0.1×SSPE、1.0 % SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。
【0045】
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「中程度のストリンジェンシー条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、5×SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.5 % SDS、5×デンハルト試薬および100 μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合またはハイブリダイゼーション、続いて、1.0×SSPE、1.0 % SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。
【0046】
「低ストリンジェンシー条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、5×SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.1 % SDS、5×デンハルト試薬[50×デンハルト試薬500 mlあたり、5 gフィコール(400型、ファルマシア(Pharmacia))、5 g BSA(フラクションV;シグマ(Sigma))を含む]および100 g/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合またはハイブリダイゼーション、続いて、5×SSPE、0.1 % SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。
【0047】
「増幅」とは、鋳型特異性に伴う特殊な場合の核酸複製である。それは、非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存性であるが、特定の鋳型に依存しない)と対照的である。鋳型特異性は、ここでは、複製の忠実度(すなわち、正確なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)特異性から区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性という用語で記載されることが多い。標的配列は、それらが他の核酸から区別されるように求められるという意味において「標的」である。増幅技術は、初めは、この区別することについて設計された。
【0048】
鋳型特異性は、酵素の選択により、たいていの増幅技術において達成される。増幅酵素は、不均一の核酸混合物において核酸の特定の配列のみを処理しようとする。例えば、Qレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAはそのレプリカーゼについての特異的鋳型である(D. L. Kacianら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69: 3038[1972])。その他の核酸はこの増幅酵素により複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素はそれ自身のプロモーターに対してストリンジェントな特異性をもつ(M. Chamberlinら、Nature 228: 227[1970])。T4 DNAリガーゼの場合、酵素は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの基質と鋳型との間のミスマッチがライゲーション接合部にある、その2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをライゲーションしようとしない(D. Y. WuおよびR. B. Wallace、Genomics 4: 560[1989])。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力によって、プライマーにより結合され、かつこのように限定される配列に対して高い特異性を見せることが見出されているが、その高温は、結果として、その標的配列とのプライマーのハイブリダイゼーションに有利であり、標的非含有配列とのハイブリダイゼーションに有利ではない熱力学的状態を生じる(H. A. Erlich(編)、「PCRテクノロジー(PCR Technology)」、ストックトンプレス(Stockton Press)[1989])。
【0049】
本明細書に用いられる「増幅可能な核酸」という用語は、任意の増幅方法により増幅されうる核酸に関して用いられる。「増幅可能な核酸」とは通常、「試料鋳型」を含むものであることが企図されている。
【0050】
本明細書に用いられる「試料鋳型」という用語は、「標的」(下記に定義されている)の存在について分析される試料に由来する核酸を指す。対照的に、「バックグラウンド鋳型」とは、試料に存在するまたは存在しない可能性がある、試料鋳型を除く核酸に関して用いられる。バックグラウンド鋳型は、不注意に起因することが多い。それは、持ち越し汚染の結果である可能性がある、または試料から精製し取り去られるように求められる核酸夾雑物の存在による可能性がある。例えば、検出されるべき核酸を除く生物体由来の核酸は、試験試料にバックグラウンドとして存在する可能性がある。
【0051】
本明細書に用いられる「プライマー」という用語は、精製された制限酵素消化物の形として自然発生していようが合成的に作製されようが、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘発される条件下に置かれた場合(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘発剤の存在下で、適した温度およびpHで)、合成の開始点としての機能を果たす能力があるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、増幅において最高の効率のために、好ましくは、一本鎖であるが、または二本鎖であってもよい。二本鎖の場合には、プライマーは最初、伸長産物を調製するために使用される前にその鎖を分離するために処理される。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘発剤の存在下において伸長産物の合成を開始するのに十分長くなければならない。プライマーの的確な長さは、温度、プライマーの供給源および方法の用途を含む多くの因子に依存するであろう。
【0052】
本明細書に用いられる「プローブ」または「ハイブリダイゼーションプローブ」という用語は、精製された制限酵素消化物の形として自然発生していようが合成的に、組換えで、またはPCR増幅により作製されようが、関心対象の別のオリゴヌクレオチドに、少なくとも一部的に、ハイブリダイズする能力があるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。プローブは、一本鎖または二本鎖でありうる。プローブは、特定の配列の検出、同定および単離に有用である。いくつかの好ましい態様において、本発明に用いられるプローブは、これらに限定されるわけではないが、酵素(例えば、ELISA、および酵素に基づく組織化学アッセイ法)、蛍光、放射性、および発光のシステムを含む、任意の検出系において検出可能であるように「レポーター分子」により標識されているものである。本発明は、任意の特定の検出系または標識に限定されることを意図したものではない。
【0053】
本明細書に用いられる「標的」という用語は、検出されるまたは特徴付けされる核酸配列または構造を指す。
【0054】
本明細書に用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、クローニングまたは精製なしに、ゲノムDNAの混合物において標的配列のセグメントの濃度を増加するための方法を記載した、K. B. Mullisの方法(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,965,188号を参照)を指す。標的配列を増幅するためのこの段階は、所望の標的配列を含むDNA混合物へ2つのオリゴヌクレオチドプライマーの大過剰量を導入すること、続いて、DNAポリメラーゼの存在下のサーマルサイクリングの正確な連続からなる。その2つのプライマーは、二本鎖標的配列それぞれの鎖に相補的である。増幅を果たすために、その混合物を変性させ、その後、プライマーを標的分子内のそれらの相補的配列へアニーリングさせる。アニーリング後、プライマーは、相補的鎖の新しい対を構成するために、ポリメラーゼで伸長される。変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長の段階を所望の標的配列の増幅されたセグメントの高濃度を得るために、多数回、繰り返すことができる(すなわち、変性、アニーリングおよび伸長は1つの「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」がありうる)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、お互いに関するプライマーの相対的位置により決定され、それゆえ、この長さは、制御可能なパラメーターである。段階の繰り返しの局面によって、その方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下「PCR」)と呼ばれる。所望の増幅された標的配列のセグメントが混合物において優勢な配列(濃度に関して)になるため、それらは「PCR増幅」されていると言われる。
【0055】
PCRを用いて、ゲノムDNAにおいて特定の標的配列の単一のコピーをいくつかの異なる方法(例えば、標識されたプローブでのハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの組込み、続いてアビジン-酵素結合体検出;dCTPまたはdATPのような、32P標識化デオキシヌクレオチド三リン酸の増幅されたセグメントへの組込み)により検出可能なレベルまで増幅することが可能である。ゲノムDNAに加えて、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列をプライマー分子の適当なセットで増幅することができる。特に、PCR段階自身により産生された増幅セグメントは、それら自身、次のPCR増幅のための有効な鋳型である。
【0056】
本明細書に用いられる「PCR産物」、「PCR断片」および「増幅産物」という用語は、変性、アニーリングおよび伸長のPCR段階の2回またはそれ以上のサイクルが完結した後に結果として生じる化合物の混合物を指す。これらの用語は、1つまたは複数の標的配列の1つまたは複数のセグメントの増幅があった場合を包含する。
【0057】
本明細書に用いられる「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型および増幅酵素を除いて増幅のために必要とされるそれらの試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)を指す。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分といっしょに置かれて、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に入れられている。
【0058】
本明細書に用いられる「試料」という用語は、その最も広い意味において用いられる。ヒト染色体またはヒト染色体に関連している配列を含むと推測される試料は、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、中期染色体のスプレッド)、(溶液中のまたはサザンブロット分析用のような固体支持体に結合した)ゲノムDNA、(溶液中のまたはノーザンブロット分析用のような固体支持体に結合した)RNA、(溶液中のまたは固体支持体に結合した)cDNAなどを含みうる。タンパク質を含むと推測される試料は、細胞、組織部分、1つまたは複数のタンパク質を含む抽出物などを含みうる。
【0059】
本明細書に用いられる「標識」という用語は、検出可能な(好ましくは定量可能な)効果を与えるために使用されうり、かつ核酸またはタンパク質に付着されうる任意の原子または分子を指す。標識は、これらに限定されるわけではないが、色素;32Pのような放射性標識;ビオチンのような結合部分;ジゴキシゲニンのようなハプテン;発光性、リン光性または蛍光発生的部分;および蛍光色素の単独または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により発光スペクトルを抑制もしくは転換することができる部分との組合わせを含む。標識は、蛍光、放射能、比色、重量測定、X線回折または吸着、磁気、酵素活性などにより検出可能なシグナルを供給しうる。標識は、荷電した部分(陽電荷または陰電荷)でありうり、または電荷中性でありうる。標識は、その標識を含む配列が検出可能である限り、核酸またはタンパク質の配列を含むまたは構成することができる。
【0060】
本明細書に用いられる「シグナル」という用語は、標識またはアッセイ反応により引き起こされるまたは供給されるような任意の検出可能な効果を指す。
【0061】
本明細書に用いられる「検出アッセイ構成要素」という用語は、検出アッセイを行うことができるシステムの構成要素を指す。検出アッセイ構成要素は、これらに限定されるわけではないが、ハイブリダイゼーションプローブ、緩衝液などを含む。
【0062】
本明細書に用いられる「キット」という用語は、材料を配達するための任意の配達系を指す。反応アッセイに関連しては、そのような配達系は、ある場所から別の場所へ、反応試薬(例えば、適当な容器中におけるオリゴヌクレオチド、酵素など)および/もしくは補助材料(例えば、緩衝液、そのアッセイを実施するための書面にした使用説明書)の保管、輸送または配達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連性のある反応試薬および/または補助材料を含む1つまたは複数の封入物(例えば、箱)を含む。本明細書に用いられる「分割化キット」という用語は、それぞれが全キット構成要素の一部を含む2つまたはそれ以上の別個の容器を含む配達系を指す。容器は、意図された受取人へいっしょにまたは別々に配達されうる。例えば、第一の容器はアッセイ用の酵素を含み、一方、第二の容器はオリゴヌクレオチドを含む。「分割化キット」という用語は、米連邦食品医薬品化粧品法の520(e)項下に規制される分析物特定試薬(Analyte specific reagents)(ASR's)を含むキットを包含するものとするが、それに限定されるものではない。実際に、それぞれが全キット構成要素の一部を含む2つまたはそれ以上の別個の容器を含む任意の配達系が「分割化キット」という用語に含まれる。対照的に、「一体化キット」とは、単一の容器に反応アッセイの構成要素のすべてを含む(例えば、望ましい構成要素のそれぞれを収容する単一の箱において)配達系を指す。「キット」という用語は、分割化キットおよび一体化キットの両方を含む。
【0063】
本明細書に用いられる「情報」という用語は、事実またはデータの任意の収集を指す。これに限定されるわけではないが、インターネットを含むコンピューターシステムを用いて記憶されるまたは処理される情報に関して、本用語は、任意のフォーマット(例えば、アナログ、デジタル、光学式など)で記憶される任意のデータを指す。本明細書に用いられる「対象に関連する情報」という用語は、対象(例えば、ヒト、植物または動物)に関係する事実またはデータを指す。「ゲノム情報」という用語は、これらに限定されるわけではないが、核酸配列、遺伝子、対立遺伝子頻度、RNA発現レベル、タンパク質発現、遺伝子型に対応する表現型などを含むゲノムに関係する情報を指す。「対立遺伝子頻度情報」とは、これらに限定されるわけではないが、対立遺伝子同定、対立遺伝子の存在と対象(例えば、ヒト対象)の特徴との間の統計学的相関関係、個体または集団における対立遺伝子の有無、1つまたは複数の特殊な特徴をもつ個体において対立遺伝子が存在することの見込みの割合(%)などを含む、対立遺伝子頻度に関係する事実またはデータを指す。
【0064】
本明細書に用いられる「アッセイ確証情報」という用語は、試験結果データの処理(例えば、コンピューターを利用しての処理)の結果として生じるゲノム情報および/または対立遺伝子頻度情報を指す。アッセイ確証情報は、例えば、特定の候補検出アッセイ法を有効な検出アッセイ法として同定するために使用されうる。
【0065】
本明細書に用いられる「まれな突然変異」という用語は、試料中において核酸分子の母集団の20 %またはそれ未満(好ましくは10 %またはそれ未満、より好ましくは5 %またはそれ未満、およびさらに好ましくは1 %またはそれ未満)で存在する突然変異を指す(すなわち、核酸分子の残りの80 %またはそれ以上は、核酸分子の対応する領域において野生型配列または異なる突然変異を有する)。
【0066】
シグナルに関して本明細書で用いられる「独特な」という用語は、例えば、蛍光発光波長、色、吸光度、質量、サイズ、蛍光偏光特性、電荷などのようなスペクトルの特性により、または化学的試薬、酵素、抗体などとのような別の部分との相互作用の能力により、別のものと差異を認められうるシグナルを指す。
【0067】
発明の詳細な説明
以下の考察は、本発明の特定の好ましい例示的態様の説明を提供し、本発明の範囲を限定するものではない。便宜上、考察は、本発明の出願上、DNA標的の検出に焦点を合わせているが、その方法およびシステムが任意の核酸分析物、例えば、DNAまたはRNAの分析用の道具の開発における使用に向けられることは、理解されるべきである。また、例示のために、考察は、インベーダーアッセイテクノロジーを用いるSNPsの特徴付けに焦点を合わせていることが多い。本発明の方法およびシステムが広く様々な検出アッセイテクノロジーを用いて他の生物学的に関連性のある因子を検出することにおける使用に向けられることは理解されるべきである。
【0068】
I. 検出アッセイ
1つまたは複数の位置にある標的核酸の配列を決定するために利用可能である検出テクノロジーは、広く様々に存在する。例えば、SNPsの有無を検出するために利用可能な多数のテクノロジーが存在する。これらの技術の多くは、標的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの使用を必要とする。用いられるアッセイ法に依存して、そのオリゴヌクレオチドはその後、切断される、伸長される、結合される、解離される、または他の状態に変化させられ、そのアッセイ法におけるその挙動は、標的核酸の配列を特徴付けるための手段としてモニターされる。これらのテクノロジーのいくつかは下記の第V項において詳細に記載されている。
【0069】
本発明は、検出アッセイ法において使用されるオリゴヌクレオチドの設計のためのシステムおよび方法を提供する。特に、本発明は、検出アッセイのために望ましい反応条件(例えば、温度、緩衝液の条件など)下で、標的核酸の適当な領域(例えば、二次構造を含まない標的核酸の領域)にうまくハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの設計のためのシステムおよび方法を提供する。システムおよび方法はまた、その検出アッセイ法において同じまたは実質的に同じ反応条件下ですべて機能する、複数の異なるオリゴヌクレオチド(例えば、標的核酸の異なる部分にハイブリダイズする、または2つまたはそれ以上の異なる標的核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド)の設計を可能にする。これらのシステムおよび方法はまた、実験反応条件下で作用する対照試料を設計するために用いられうる。本発明はまた、検出される標的配列を増幅するための配列を設計するための方法を提供する(例えば、多重PCRのためのPCRプライマーの設計)。
【0070】
本発明のシステムおよび方法は、いずれの特定の検出アッセイ法にも限定されないが、以下の説明は、関心対象のSNPまたは他の配列を検出するための本発明の好ましい特徴を例示するために、インベーダーアッセイ法(Third Wave Technologies、Madison、WI;例えば、それぞれがあらゆる目的のために完全に参照として本明細書に組み入れられている、米国特許第5,846,717号;第6,090,543号;第6,001,567号;第5,985,557号;第5,994,069号、第6,214,545号、第6,210,880号、および第6,194,880号;Lyamichevら、Nat. Biotech.、17: 292 (1999)、Hallら、PNAS、USA、97: 8272 (2000)、Agarwalら、Diagn. Mol. Pathol. 9: 158 [2000]、Cookseyら、Antimicrob. Agents Chemother. 44: 1296 [2000]、GriffinおよびSmith、Trends Biotechnol.、18: 77 [2000]、GriffinおよびSmith、Analytical Chemistry 72: 3298 [2000]、Hessnerら、Clin. Chem. 46:1051 [2000]、Ledfordら、J. Molec. Diagnostics 2: 97 [2000]、Lyamichevら、Biochemistry 39: 9523 [2000]、Meinら、Genome Res.、10: 330 [2000]、Neriら、Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis 3826: 117 [2000]、Forsら、Pharmacogenomics 1: 219 [2000]、Griffinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 6301 [1999]、Kwiatkowskiら、Mol. Diagn. 4: 353 [1999]、およびRyanら、Mol. Diagn. 4: 135 [1999]、Maら、J. Biol. Chem.、275: 24693 [2000]、Reynaldoら、J. Mol. Biol.、297: 511 [2000]、およびKaiserら、J. Biol. Chem.、274: 21387 [1999];および国際公開公報第97/27214号、国際公開公報第98/42873号、および国際公開公報第98/50403号を参照されたい)と組合わせて用いられる場合の本発明を例示する。インベーダーアッセイ法は、本発明のシステムおよび方法と共に用いられる場合、検出パネル、ASRsおよび臨床的診断における使用にかなう簡単な使用および感度レベルを提供する。本例示的実施例の特定的および一般的な特徴は、概して、他の検出アッセイ法に適用できることを当業者は認識すると考えられる。
【0071】
A. インベーダーアッセイ法
インベーダーアッセイ法は、標的核酸の存在に依存する核酸切断構造を構成するため、および特有の切断産物を遊離するために核酸切断構造を切断するための手段を提供する(図1参照)。例えば、5'ヌクレアーゼ活性は、標的依存性切断構造を切断するために用いられ、その結果生じた切断産物は、試料中の特定の標的核酸配列の存在を示す。核酸またはオリゴヌクレオチドの2本の鎖が両方共、下記のように、重複している侵入型切断構造を構成するように、標的核酸鎖にハイブリダイズする場合、侵入型切断が生じることができる。切断剤(例えば、5'ヌクレアーゼ)と上流オリゴヌクレオチドとの相互作用を通して、切断剤が特有の断片を生じるような様式で内部部位で下流オリゴヌクレオチドを切断しようとさせることができる。
【0072】
インベーダーアッセイ法は、温度サイクリング(すなわち、標的核酸鎖の間欠的変性のため)または核酸合成(すなわち、標的またはプローブの核酸鎖の重合に基づく置換のため)を用いる必要なしに、標的核酸が、オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションおよびそのプローブの切断の複数回の繰り返しの間に再使用または再生利用される検出アッセイ法を提供する。プローブが連続的に標的鎖上で置換される条件下で(プローブ-プローブの置換を通して、もしくはプローブ/標的の結合と解離の間の平衡を通して、またはこれらの機構を含む組合わせを通して(Reynaldoら、J. Mol. Biol. 97: 511-520 [2000]))、切断反応が行われる場合、複数のプローブが同じ標的へハイブリダイズすることができ、複数の切断および複数の切断産物の生成が可能になる。
【0073】
他のアッセイ法と同様に、インベーダーアッセイ法もまた、縮重したオリゴヌクレオチド(例えば、縮重したインベーダーおよびプローブオリゴヌクレオチド)を使用しうる。例えば、標準インベーダーオリゴヌクレオチドおよびプローブは、縮重したインベーダーおよび/またはプローブオリゴヌクレオチドの1セットが作製されるように、もう1つの位置でランダムに変化されうる。インベーダーおよびプローブのオリゴヌクレオチドの縮重したセットは、特に、甚だしく変異される傾向にある標的配列(例えば、HIV-1 pol遺伝子)に関連して用いるために有用である。そのようなインベーダーおよびプローブのオリゴヌクレオチドの縮重したセットを用いることは、たとえその周囲配列がもはや野生型または予想される配列を表していないとしても、検出される特定の位置での標的配列の存在を認める。
【0074】
インベーダーアッセイテクノロジーは、mRNAを定量するために用いられうる(例えば、標的増幅なしで)。低可変性(3 %〜10 %変異係数)により、mRNAレベルにおいて2倍未満の変化の正確な定量が提供される。FRETに基づく二重検出形式は、同じ試料内の2つの遺伝子由来の発現の同時定量を可能にする。これらの遺伝子の1つは、内部標準として用いられる不変のハウスキーピング遺伝子であることができる。関心対象の遺伝子由来のシグナルを内部標準で標準化することは、正確な結果を与え、かつ複製試料の必要性を不要にする。簡単かつ迅速な細胞溶解物試料の調製方法は、mRNAインベーダーアッセイ法と共に用いられうる。二重検出法および容易な試料調製の組み合わされた特徴は、このアッセイ法を高処理量適用での使用に容易に適応させうるようにする。
【0075】
ある態様において、インベーダーアッセイ法(およびTAQMAN法のような他の検出アッセイ法)は、E-TAG標識を使用する(例えば、インベーダーオリゴヌクレオチド、プローブオリゴヌクレオチド、またはFRETオリゴヌクレオチドの部分として)。E-TAG標識は、特に、多重分析において有用である。E-TAG標識は、親和剤の表面固定化を必要としない。E-TAG型標識は、米国特許第5,858,188号;同第5,883,211号;同第5,935,401号;同第6,007,690号;同第6,043,036号;同第6,054,034号;同第6,056,860号;同第6,074,827号;同第6,093,296号;同第6,103,199号;同第6,103,537号;同第6,176,962号;および同第6,284,113号に記載されており、それらはすべて、参照として本明細書に組み入れられている。
【0076】
II. 多重PCRプライマー設計
インベーダーアッセイ法は、標的を前増幅する必要なしに、10 ng〜100 ng程度の微量ゲノムDNAを用いた一塩基多型(SNPs)の検出に使用されうる。しかしながら、展開された80,000以上のインベーダーアッセイおよび何十万というSNPsを含む全ゲノム関連研究についての可能性については、試料DNAの量は、大量分析に対する制限因子となる。標的増幅なしのヒトゲノムDNA(hgDNA)でのインベーダーアッセイ法の感度のおかげで、インベーダーアッセイ法と連結された多重PCR法は、通常のゲル検出方法のために大量の増幅(109〜1012)を要求する典型的多重PCR反応と比較して、制限された標的増幅だけ(103〜104)を要求する。インベーダーアッセイ検出のために使用される低レベルの標的増幅は、標的蓄積の結果として一般に生じる増幅阻害を避けることにより、より大規模な多重化を可能にする。
【0077】
いくつかの態様において、多重PCR反応において、関連した遺伝子座を検出することが望ましい場合がある。いくつかのそのような態様において、その検出アッセイテクノロジーは密接に関連した配列間を十分に識別することができない可能性があるため、遺伝子座の間の類似性が、その配列の検出アッセイ分析を妨げるまたは複雑にしうる。本発明は、核酸増幅技術(例えば、PCR)を用いて唯一の標的配列を産生することにより、そのような問題を克服するための方法を提供し、その唯一の標的配列、むしろその本来の試料(例えば、ゲノムDNA)がその検出アッセイ法により試験されるようになる。この方法は、増幅される標的配列が以下のいくつかの判定基準を満たすことを保証するように考慮する点において、多重化と適合可能である:1)標的配列が分析される多型を含むこと;2)標的配列が唯一の標的配列を示す(すなわち、それが、その標的配列を標的とするために設計された検出アッセイ法により検出される反応混合物において唯一の配列である);および3)その標的配列が多重反応において存在するいずれかの検出アッセイによって検出される他の多型を含まないこと。例えば、いくつかの態様において、ソフトウェアは、交差反応性シグナルを生じうるゲノムにおいて類似した配列を見出すために、SNPアッセイ法に用いられる標的配列のBLASTアラインメントを実行する。ソフトウェアプログラムでのPCRプライマーの設計は、SNPを含む遺伝子座を除くいずれの類似した遺伝子座の増幅も阻止すべきである。その特定のSNP配列を除く配列の前増幅を避けるために、ソフトウェアは、そのプールに含まれるすべての他の検出アッセイ配列に対する1対のプライマーで増幅される配列のBLASTアラインメントを実行する。交差反応性または可能性のある交差反応性が存在する場合には、そのプライマーのセットを再設計する、またはその同時増幅される配列を異なるプールに含める。
【0078】
同じ型の設計分析は、ハプロタイプの検出に向けられる検出アッセイ法に用いられうる。例えば、プライマーは、それぞれが検出される多型を唯一含む標的配列のセットを増幅するように作製される。
【0079】
いくつかの態様において、多重検出アッセイ法は、多数のアレイにおいて提供される。例えば、いくつかの態様において、第一のアレイは、ゲノムDNAからの直接的な検出のために構成されるアッセイを含み、第二のアレイは、標的配列の検出アッセイ分析の前にゲノムDNAから標的配列の前増幅のために構成されるアッセイを含む。
【0080】
いくつかの好ましい態様において、標的配列の制限された前増幅のみが、検出アッセイ法による検出の前に行われる。例えば、いくつかの態様において、標的コピー数の105倍〜106倍またはそれ未満の増加が検出の前に得られる。これは、検出反応において1010倍〜1012倍またはそれ以上の増幅が利用される典型的なPCR反応と対照的である。特定の態様において、10 ngのみのゲノムDNAを用いて(例えば、SNPあたりヒトゲノムDNAの0.1 ng未満)、本発明の方法およびシステムで、単一のPCR増幅から100個の遺伝子型が可能である。
【0081】
いくつかの態様において、標的配列の前増幅および検出のために、キットが提供される。いくつかの態様において、キットは増幅プライマーを含む。多重反応については、増幅プライマーは単一の容器で提供されうる。増幅プライマーはまた、検出アッセイ構成要素とともにパッケージされうる。いくつかの態様において、増幅プライマーおよび検出アッセイ構成要素(例えば、インベーダーアッセイ構成要素)は、単一の容器で(例えば、複数ウェルプレートのウェルの1つで)提供される。いくつかの態様において、反応構成要素は、反応チャンバーにおいて乾燥形状で提供される。いくつかのそのような態様において、キットは、ただゲノムDNAを含む溶液を反応チャンバーに添加するだけで、反応が起こるのを可能にするように構成される。
【0082】
本発明は、多重PCR用のプライマーセットが作製されるようにする方法および選択判定基準を提供する(例えば、インベーダーアッセイ法のような検出アッセイ法と連結させることができる)。いくつかの態様において、本発明のソフトウェアアプリケーションは、多重PCRプライマー選択を自動化し、このように、それにより設計されたプライマーで高度に多重化されたPCRを可能にした。SNP検出のための対応するプラットフォームとしてインベーダー医学的関連パネル(Medically Associated Panel)(MAP)を用いて、PCRプライマー実施例2に示されるように(下記)、本発明の方法、ソフトウェア、および選択判定基準は、単一のPCR反応から101個の可能な単位複製配列のうちの94個(〜93 %)の正確な遺伝子型判定を可能にした。最初のPCR反応は、インベーダーアッセイ法あたり150 pg未満のhgDNAに対応する、hgDNAの10 ngのみを鋳型として用いた。
【0083】
多重プライマー設計システムは、インベーダーアッセイ法のような特定の型のアッセイ法に有用なPCRプライマーセットを設計するために使用されうる。図2は、本発明のソフトウェアアプリケーションの態様の一つを用いる、インベーダー医学的関連パネル(Medically Associated Panel)における分析に利用可能な配列からの101個のプライマーセットについてのプライマー対(フォワードプライマーおよびリバースプライマーの両方)の作製の1つを例示する。図2Aは、単一のエントリーの試料入力ファイルを示す(例えば、本発明の方法およびソフトウェアにより処理されるSNPを含む単一の標的配列についての標的配列情報を示す)。図2における標的配列情報は、サードウェーブテクノロジーズ(Third Wave Technologies)のSNP番号、短縮の識別名および角型括弧で示されるSNP位置をもつ配列を含む。図2Bは、同じエントリーの試料出力ファイルを示す(例えば、本発明のシステムおよび方法およびソフトウェアにより処理された後の標的配列を示す)。出力情報は、フットプリント領域の配列(大文字の隣接SNP部位、標的配列においてSNPを検出するために、インベーダーアッセイプローブがこの標的配列にハイブリダイズする領域を示している)、フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列(太字)、およびそれらの対応するTmを含む。
【0084】
いくつかの態様において、多重PCRが可能なプライマーセットを作製するためのプライマーの選択は、自動化形式で行われる(例えば、ソフトウェアアプリケーションにより)。多重PCR用の自動化プライマー選択は、図4のフローチャートにより示されるように設計されたソフトウェアプログラムを用いて達成されうる。
【0085】
多重PCRは、一般的に、選択単位複製配列の偏りのある増幅およびプライマーダイマーの構成の結果として生じる擬似産物の増幅を避けるために、広範囲な最適化が要求される。これらの問題を避けるために、本発明は、多重PCRおよび検出アッセイ(例えば、インベーダー検出アッセイ)におけるその後の使用のように設定されるプライマーセットを作製するための選択判定基準を提供する方法およびソフトウェアアプリケーションを提供する。
【0086】
いくつかの態様において、本発明の方法およびソフトウェアアプリケーションは、ユーザー定義の配列および対応するSNP位置から始まる。特定の態様において、方法および/またはソフトウェアアプリケーションは、各配列について、標的配列内(インベーダー検出に必要とされる最少の単位複製配列)のフットプリント領域を決定する(図2Bの大文字で示される)。フットプリント領域は、アッセイプローブがハイブリダイズする領域に加え、そのために外へ延長している任意のユーザー定義の付加的な塩基(例えば、アッセイプローブがハイブリダイズする所の両側に含まれる5個の付加的な塩基)を含む。次に、プライマーはフットプリント領域から外側に設計され、その現行の多重化セットにおいて前に設計されたプライマーとのプライマーダイマー構成についての可能性を含めて、いくつかの判定基準に対して評価される(図2Aの太字のプライマー、および図4の選択段階を参照)。図4に示されるように、同じ配列のセットの複数の相互作用を通して、その現行の多重化セットにおいてすべての配列に対するプライマーが設計されうるまで、この段階は続けられうる。
【0087】
いくつかの態様において、プライマーセットが多重PCRのために設計されたら、図3に示される基本的な作業の流れの機構において示されるようにこのセットが使用されうる。例えば、多重PCRは、鋳型として、hgDNAの10 ngのみを用いて標準的条件下で行われうる。95℃で10分後、Taq(2.5単位)が50 μl反応物へ添加され、PCRが50サイクル行われうる。PCR反応物は希釈され、インベーダーMAPプレートに直接ロードされうる(3 μl/ウェル)(図3参照)。15 mM MgCl2を更に3 μl、インベーダーMAPプレート上の各反応物に添加し、6 μlのミネラルオイルでカバーしてもよい。プレート全体は、その後、5分間、95℃まで加熱され、63℃で40分間インキュベートされうる。その後、Cytofluor 4000蛍光プレートリーダーおよび各単位複製配列について計算された「フォールドオーバーゼロ(Fold Over Zero)」(FOZ)値において、FAMおよびRED蛍光が測定されうる。各SNPから得られた結果は、「パス(pass)」(緑色)、「ミスコール(mis-call)」(ピンク色)、または「ノーコール(no-call)」(白色)として、表において色分けされうる(下記のPCRプライマー設計実施例2を参照)。
【0088】
いくつかの態様において、PCR反応は、約1回から約10回までの反応である。いくつかの態様において、PCR反応は、約10回から約50回までの反応である。さらなる態様において、PCR反応の数は、約50回から約100回までである。追加的態様において、PCR反応の数は100回より多い。
【0089】
本発明はまた、多重PCR反応を最適化するための方法を提供する(例えば、プライマーセットが作製されると、各プライマーまたはプライマー対の濃度が最適化されうる)。例えば、プライマーセットが作製されかつ等モル濃度での多重PCRにおいて使用されたら、プライマーは、多重プライマーセットがより良く働くように最適プライマー濃度が決定されるために、別々に評価されうる。
【0090】
多重PCR反応は、標準的な一重PCR反応と比較して、可能性として時間効率的かつより費用のかからない核酸情報を得る手段として、科学、研究、臨床およびバイオテクノロジー産業において認識されつつある。反応容器(例えば、チューブまたは複数ウェルのプレートのウェル)につき単一の増幅反応のみを行う代わりに、多数の増幅反応が単一の反応容器において行われる。
【0091】
標的あたりの費用は、アッセイ設定およびデータ分析における専門技術者時間を削除すること、および実質的な試薬の節約(特に酵素費用)により、理論上、低下している。多重方法のもう一つの利点は、はるかに少量の標的試料が要求されることである。何十万という一塩基多型(SNPs)を含むゲノム全体の関連研究において、標的または試験試料の量は大量分析に対して制限があるため、例えば100個の結果を得るために1つの試料一定分量を使用することに対して、同じデータセットを得るために100個の試料一定分量を使用することの単一反応を行うという概念は、魅力的な選択である。
【0092】
多重PCR反応を成功させるためのプライマーを設計するために、プライマー間の異常型の相互作用の論点に注意を向けねばならない。たとえ少数塩基長のみであったとしても、プライマーダイマーの構成は、両方のプライマーが標的配列へ正しくハイブリダイズするのを阻害する可能性がある。さらに、ダイマーがそのプライマーの3'末端においてまたは近くで構成される場合には、3'末端はプライミング事象のために必要とされるため、増幅は起こらない、または非常に低レベルの増幅が起こるであろう。明らかに、多重反応あたりプライマーの使用が多くなればなるほど、多くの異常型のプライマー相互作用が起こる可能性がある。本救済の方法、システムおよびアプリケーションは、多数のプライマーセットにおけるプライマーダイマーを防ぎ、高度に多重化されたPCRに適したセットを作製する。
【0093】
多数の部位(例えば、1つの多重PCR反応において100個の部位)に対するプライマー対を設計する場合、プライマー対が設計される順序により、1つの反応についての適合性のあるプライマー対の総数が左右されうる。例えば、プライマーの第一のセットが、偶然にもA/T豊富な領域である第一の標的領域に対して設計される場合には、これらのプライマーはA/T豊富になると考えられる。選択された第二の標的領域もまた、偶然にもA/T豊富な標的領域である場合には、これらの2つのセットに対して設計されるプライマーは、プライマーダイマーのような異常型相互作用のせいで、不適合になる可能性がよりはるかに高い。しかしながら、選択された第二の標的領域がA/T豊富でない場合には、第一のA/T豊富なセットと相互作用しようとしないプライマーセットが設計されうる可能性がよりずっと高くなる。入力標的配列の任意の与えられるセットに対して、本発明は、プライマーセットが設計される順序をランダム化する(図4参照)。さらになお、いくつかの態様において、本発明は、任意の所与の多重反応に対して、適合性のあるプライマーセットの数を最大化するように、入力標的配列のセットを多数の異なるランダムな順序に設計し直す(図4参照)。特定の態様において、プライマーは、GC豊富およびAT豊富な領域が避けられるように設計される。
【0094】
本発明は、多重設計において反応標的の所与のセットに対して適合性のあるプライマー対の数を最大化する一方で、3'相互作用を最小化する(例えば、プライマーダイマー構成の可能性を減らすためにプライマーの3'相補性を避ける)プライマー設計についての判定基準を提供する。5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'のように記載されるプライマーについて、N[1]はAまたはCである(代替の態様において、N[1]はGまたはTである)。設計されたフォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]は、任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[2]-N[1]に相補的であるべきではない。特定の態様において、N[3]-N[2]-N[1]は、任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[3]-N[2]-N[1]に相補的であるべきではない。好ましい態様において、所与のN[1]でこれらの判定基準を満たさない場合には、フォワードプライマーについての5'方向の次の塩基またはリバースプライマーについての3'方向の次の塩基がN[1]部位として評価されうる。標的配列のすべて、または大多数に関してすべての判断基準が満たされるまで(例えば、標的配列の95 %が、これらの判定基準を満たすプライマーセットとして作製されたプライマー対をもちうる)、標的ランダム化と共に、この段階が繰り返される。
【0095】
多重プライマー設計において克服されるべきもう一つの問題は、実際に必要なヌクレオチド配列、配列の長さ、およびオリゴヌクレオチド融解温度(Tm)制約間のバランスである。重要なことには、1つの反応における1つの多重プライマーセットのプライマーは、緩衝液、塩および温度の同じ反応条件下で機能することになるため、それゆえ、それらは、関心対象の領域のGC豊富性またはAT豊富性にかかわらず、実質的に類似したTmをもつ必要がある。本発明は、最小のTmおよび最大のTmの必要条件ならびに最小および最大の長さの必要条件を満たすプライマー設計を可能にする。例えば、各プライマーについての式5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'において、xは、プライマーがあらかじめ決められた融解温度をもつように選択される(例えば、プライマーが摂氏約50度の計算された融解温度をもつまでプライマーに塩基を含める)。特定の態様において、セットの各プライマーは、同じ融解温度をもつ。
【0096】
PCR反応産物は、ハイブリダイゼーション型検出アッセイ法、または例えばインベーダー反応アッセイ法のような別の核酸検出手段のための標的材料として用いられることが多い。第二次反応がうまく起こるようにさせるためのプライマー配置の位置に考慮するべきであり、かつ再び、増幅プライマーと第二次反応オリゴヌクレオチドとの間の異常型相互作用は、正確な結果およびデータのために、最小限度にさせるべきである。選択判定基準は、多重プライマーセットとして設計されたプライマーが検出アッセイ法のオリゴヌクレオチド構成要素と反応しない(例えば、ハイブリダイズしない、または反応を誘発しない)ように用いられうる。例えば、プライマーが二重インベーダーアッセイ法のFRETオリゴヌクレオチドと反応することを防ぐために、特定の相同性判定基準が用いられる。特に、セットの各プライマーが5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'として定義される場合には、その後、N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'がFRETまたはインベーダーオリゴヌクレオチドと90 %未満の相同性があるように選択される。その他の態様において、N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'がFRETまたはインベーダーオリゴヌクレオチドと80 %未満の相同性があるように各プライマーについて選択される。特定の態様において、N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'がFRETまたはインベーダーオリゴヌクレオチドと70 %未満の相同性があるように各プライマーについて選択される。
【0097】
プライマーセットを開発するために本発明の判定基準を使用する一方で、いくつかのプライマー対がその定まった判定基準のすべてを満たしえない場合がある(これらはエラーとして拒絶されうる)。例えば、100個の標的のセットにおいて、30個は設計されかつすべての列挙される判定基準を満たすが、セット31番は失敗する。本発明の方法において、セット31番は失敗としてフラグ付けされうり、本方法は、判定基準を満たさないセットに再びフラグ付けしながら、100個の標的のリストの終わりまで続けることができる(図4参照)。100個の標的すべてがプライマー設計の機会をもったら、本方法は不成功のセットの数を書き留め、新しいランダムな順序で100個の標的を再整列させ、設計段階を繰り返す(図4参照)。設定可能な回数を実行したら、最も合格した回数の多いプライマー対(不成功のセットの最小数)をもつセットがその多重PCR反応について選択される(図4参照)。
【0098】
図4は、本発明の方法およびソフトウェアアプリケーションの特定の態様の基本的な流れについてのフローチャートを示す。好ましい態様において、図4において詳細に示される段階は、使用の簡便さのためにソフトウェアアプリケーションへ組み入れられる(とはいえ、その方法は、ガイドとして、例えば図4を用いて、手作業でも行なわれうる)。
【0099】
標的配列および/またはプライマー対は、図4に示されるシステムへ入力される。最初の四角のセットは、他の配列は、プライマーセットのプールへ(例えば、PDパス(PDPass)、以前に処理され、かつプライマーダイマーを構成することまたはFRET配列への反応性を有することなしに、いっしょに働くことが示された配列)、およびダイマーテスト(Dimer Test)エントリーへ(例えば、ユーザーが使用することを望んでいるが、プライマーダイマーまたはFRET反応性についてまだ試験されたことがない対またはプライマー)とすぐに移される一方で、どのようにして標的配列が決定されたフットプリント(図4の「B」を参照)を有する配列のリストに加えられるのかを示す。言い換えると、「入力の終わり」へ次第に導く最初の四角のセットは、後でそれらが正確に処理されることができるように、その配列を分類する。
【0100】
図4の「A」で開始して、プライマープールは基本的に、新たなラン(run)を開始するためにクリアされるまたは「空にされる」。その後、その標的配列は、「B」へ送られて処理され、ダイマーテスト対は、「C」へ送られて処理される。標的配列は「B」へ送られ、そこで、ユーザーまたはソフトウェアアプリケーションがその標的配列についてフットプリント領域を決定する(例えば、そこで、その標的配列において突然変異(例えば、SNP)を検出するためにアッセイプローブがハイブリダイズする)。この領域は、一般的に、図2Bのように、図において大文字で示される。設計されるプライマーがこの領域を完全に含むようにこの領域(ユーザーがそのハイブリダイゼーション領域を越してさらなる塩基が付加されるように定めることによりさらに拡張する場合がある)を設計することが重要である。(任意の型のシステムのプログラムを用いて、ユーザーがプローブを設計すること、およびこのように標的配列上にフットプリント領域を決定することに関心を示している任意の型のプローブを作製するために使用することができたが、)図4において、ソフトウェアアプリケーションのインベーダークリエイター(INVADER CREATOR)は、標的領域とハイブリダイズするであろうインベーダーオリゴヌクレオチドおよび下流プローブを設計するために用いられる。このように、コアのフットプリント領域はその後、標的上におけるこれらの2つのアッセイプローブの位置により限定される。
【0101】
次に、システムは、フットプリントの5'端から開始し、第一塩基に到達するまで、または第一のAもしくはC(またはGもしくはT)に到達するまで、5'方向に移動する。これは、フォワードプライマーの配列を限定するための最初の開始点として設定される(すなわち、これは最初のN[1]部位として供する)。この最初のN[1]部位から、フォワードプライマーとしてのプライマーの配列は、標的領域上で遭遇されるそれらの塩基と同じである。例えば、プライマーのデフォルトサイズが12塩基として設定される場合には、システムはN[1]として選択される塩基から開始し、その後、標的配列中に見出される次の11個の塩基を加える。この12merのプライマーは、その後、融解温度について(例えば、インベーダークリエイターを用いて)試験され、その配列がユーザーにより指定される融解温度(例えば、摂氏約50度、かつ摂氏55度を越さない)をもつまで、その標的配列から追加的塩基が付加される。例えば、システムは、式5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'を使用し、xは最初は12である。その後、システムは前もって設定された融解温度が見出されるまで、xをより大きい数(例えば、より長い配列)へと調節する。
【0102】
図4における次の四角は、これまでに設計されたプライマーがプライマーダイマーおよび/またはFRET反応性を引き起こすかどうかを決定するために用いられる(例えば、残りの配列はすでにそのプールにある)。この決定のために用いられる判定基準は、上記で説明されている。プライマーがこの段階を合格する場合には、そのフォワードプライマーはプライマープールへ加えられる。しかしながら、そのフォワードプライマーがこの判定基準を欠いている場合には、図4に示されるように、開始点(N[1])が5'方向に1ヌクレオチド(または次のAもしくはC、または次のGもしくはTへ)移動される。システムは、まず、越えて移動することがプライマーを作製することに成功するための十分な余地をその標的配列上に残しているかを確かめるためにチェックする。イエス(Yes)の場合には、システムは折り返して、この新しいプライマーを融解温度についてチェックする。しかしながら、配列が設計されることができない場合には、その時、その標的配列はエラーとしてフラグ付けされる(例えば、この標的に対してフォワードプライマーが作製されることができないことを示す)。
【0103】
図4に示されるように、その後、この同じ段階がリバースプライマーを設計するために繰り返される。リバースプライマーの作製に成功した場合には、その対またはプライマーはプライマープールへと入れられ、システムは「B」へ戻る(処理する標的配列がさらにある場合)、またはダイマーテスト対を試験するために「C」へ進む。
【0104】
図4の「C」を開始することは、どのようにして、プライマー(ダイマーテスト(Dimer Test))としてエントリーされたプライマー対がシステムにより処理されるかを示している。ダイマーテスト対がない場合には、図4に示されるように、システムは「D」へ進む。しかしながら、ダイマーテスト対がある場合には、これらは、上記のように、プライマーダイマーおよび/またはFRET反応性について試験される。ダイマーテスト対がこれらの判定基準を欠く場合には、それらはエラーとしてフラグ付けされる。ダイマーテスト対が判定基準に合格する場合には、それらはプライマーセットプールへ加えられ、その後、システムは、評価されるダイマーテスト対がさらにある場合には「C」へ戻る、または評価されるダイマーテスト対がそれ以上ない場合には「D」へ進む。
【0105】
図4の「D」から開始して、作製されたプライマーのプールが評価される。この項における第一段階は、配列のこの特定のランダム化されたランにより生じたエラー(失敗)の数を調べることである。エラーがない場合には、このセットは、ユーザーへ出力されうる最良のセットである。ゼロを上回るエラーがある場合には、システムは、どのランが最も少ないエラーを生じたかを見るために、このランを任意のその他の以前のランとも比較する。現行のランがより少ないエラーをもつ場合には、現行の最良セットとして指定される。この時点において、システムは「A」に戻り、同じ配列の別のランダム化されたセットについてランをもう一度開始してもよく、またはあらかじめ設定されたランの最高数(例えば、5ラン)に、このランで到達してもよい(例えば、これは第5番目のランであり、ランの最高数が5として設定されていた)。最高数に到達された場合には、その最良のセットが最良セットとして出力される。この最良のプライマーセットは、その後、多重PCR反応が実施されうるような物質的オリゴヌクレオチドのセットとして作製するために使用されうる。
【0106】
多重PCR反応について克服されるべきもう一つの問題は、標準的多重反応において結果として生じる不均等な単位複製配列の濃度である。増幅について標的とされる異なる遺伝子座は、増幅反応においてそれぞれ異なった挙動を示し、異なる単位複製配列産物それぞれの大いに異なる濃度を生じうる。本発明は、プライマー濃度を最初の検出アッセイの読み取り値(例えば、インベーダーアッセイの読み取り値)に関連して調整し、その後、バランスのとれたプライマー濃度で、異なる単位複製配列の実質的に均等な濃度に接近させるために用いられうる方法、システム、ソフトウェアアプリケーション、コンピューターシステム、およびコンピューターデータ記憶媒体を提供する。そのような多重最適化についての一般化したプロトコールは図4に提示されている。
【0107】
様々なプライマー対についての濃度は、実験に基づいて決定されうる。いくつかの態様において、最初のランは、すべてのプライマーを等モル濃度にして実施される。その後、時間の読み取りが実施される。時間の読み取りに基づき、各単位複製配列についての相対的増幅因子が決定される。その後、統一化する補正方程式に基づき、同じ時点内でより接近したシグナルを得るために、プライマー濃度がどれくらいであるべきかの推定値を獲得した。これらの検出アッセイ法は、異なるサイズのアレイにおいて可能である(384ウェルプレート)。
【0108】
本発明を検出アッセイおよび検出アッセイのアレイと組合わせることが実質的処理効率を与えることが認識されている。本発明を用いて作製されたプライマーまたはプライマー対のバランスのとれた混合物を使用して、1点読み取りを行うことができ、平均的ユーザーが高感度および異なる標的のアレイにわたる高特異性を必要とする試験を実施するにおいて高い効率を得ることができるようになる。
【0109】
単一の反応容器において最適化されたプライマー対濃度にすることにより、ユーザーが単一の反応容器で、かつ単一の段階で、多数のまたは多種の増幅標的について増幅を行うことが可能になる。その1段階の段階の生成物は、その後、例えば、数百のアッセイについての試験結果データを首尾良く得るために使用される。例えば、384ウェルプレート上の各ウェルは、その上で異なる検出アッセイを行うことができる。1段階の多重PCR反応の結果は、ゲノムDNAの384個の異なる標的を増幅しており、各プレートについて384個の試験結果を提供する。各ウェルが多数のアッセイを行っている所においては、よりいっそう高い効率を得ることができる。
【0110】
それゆえ、本発明は、各PCR産物の偏らない増幅を達成するためにパラメーターとして、高度に多重化されたPCRにおける各プライマーセットの濃度の使用を提供する。いずれのPCRもプライマーアニーリングおよびプライマー伸長段階を含む。標準的PCR条件下において、1 μMのオーダーでのプライマーの高濃度により、プライマーアニーリングの速い反応速度が保証されるが、一方、プライマー伸長段階の最適時間は、増幅産物の量に依存し、アニーリング段階よりかなり長くなりうる。プライマー濃度を下げることにより、プライマーアニーリング反応速度が律速段階になることができ、PCR増幅因子は、プライマー濃度、プライマーの結合反応速度定数、およびアニーリング時間に強く依存することになる。
【0111】
プライマーPの標的Tとの結合は、以下のモデルにより記載されうる。
【数1】
Kaはプライマーアニーリングの結合反応速度定数である。アニーリングはプライマー融解より低い温度で起こり、かつ逆反応を無視することができることを仮定している。
【0112】
プライマー過剰の条件下でのこの反応速度についての解式は、よく知られている。
【数2】
[PT]はプライマーと結合した標的分子の濃度であり、T0は最初の標的濃度、cは最初のプライマー濃度、およびtはプライマーアニーリング時間である。プライマーと結合した各標的分子は完全なサイズのPCR産物を産生するために複製され、単一PCRサイクルにおける標的増幅因子は以下のとおりである。
【数3】
【0113】
nサイクル後の全PCR増幅因子は、以下の式により与えられる。
【数4】
方程式4から導かれるように、プライマーアニーリング反応速度がPCRの律速段階である条件下において、増幅因子は、プライマー濃度に強く依存することになる。このように、偏りのある遺伝子座の増幅は、それが個々の結合反応速度定数、プライマー伸長段階、またはいくつかの他の因子により引き起こされているにせよ、多重PCRにおける各プライマーセットについてのプライマー濃度を調整することにより補正されうる。調整されたプライマー濃度はまた、PCR前増幅された遺伝子座の分析に用いられるインベーダーアッセイ法の偏りのある実行を補正するためにも使用されうる。この基本的原理を用いて、本発明は、増幅効率とプライマー濃度との間の直線的関係を実証し、この方程式を異なる単位複製配列のプライマー濃度のバランスをとるために用いて、その結果として、PCRプライマー設計実施例1において10個の異なる単位複製配列が均等に増幅された。この技術は、複数のプライマー対の任意の大きさのセットに用いられうる。いくつかの態様において、PCRプライマーは最適化されず、かつインベーダーアッセイ法がその増幅産物を検出するために使用される(参照として本明細書に組み入れられている、Ohnishiら、J. Hum. Genet. 46: 471〜477、2001を参照)。
【0114】
i. PCRプライマー設計 実施例1
以下の実験例は、多重増幅反応、およびその後のインベーダーアッセイ法による単位複製配列の検出のための増幅プライマーの手作業での設計を記載する。
【0115】
TWT社内オリゴヌクレオチドオーダーエントリーデータベースにおいて入手可能な、あらかじめ確証されたSNP含有配列のセットから、10個の標的配列が選択された(図4参照)。各標的は、以前にインベーダーアッセイ法が設計されたことのある一塩基多型(SNP)を含む。インベーダーアッセイオリゴヌクレオチドは、インベーダークリエイターソフトウェア(Third Wave Technologies社、Madison、WI)により設計され、このように、本実施例におけるフットプリント領域がインベーダー「フットプリント」、またはインベーダーおよびプローブオリゴヌクレオチドによりカバーされ、関心対象の塩基、この場合は一塩基多型の検出のために最適に位置される塩基として、定義される(図5参照)。10個の標的配列それぞれの約200ヌクレオチドは、増幅プライマー設計分析のために分析され、SNP塩基がその配列の中心あたりに存在するようにする。配列は図5に示される。
【0116】
最大および最小のプローブの長さ(それぞれ、30ヌクレオチドおよび12ヌクレオチドのデフォルト)の判定基準は、50℃〜60℃のプローブ融解温度Tmのための範囲であるように定義される。本実施例において、前もって選ばれた反応温度で最適に実行するだろうプローブ配列を選択するために、オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)は、隣接モデルおよびDNA二重鎖構成のための公表されているパラメーターを用いて計算される(AllawiおよびSantaLucia、Biochemistry、36: 10581 [1997]、これは参照として本明細書に組み入れられている)。アッセイの塩濃度は隣接パラメーターが得られる溶液条件(1 M NaClおよび二価金属なし)とは異なるため、および酵素の存在および濃度が最適反応温度に影響を及ぼすため、反応を行う最適温度を決定するために、計算されたTmに調整が施されるべきであることが多い。これらの因子について補正する一つの方法は、融解温度計算内の塩濃度について与えられる値を変えることである。この調整は「塩補正」と呼ばれる。「塩補正」という用語は、二重鎖に影響を及ぼす塩以外のパラメーターまたは条件の核酸二重鎖についてのTm計算に効果を反映する目的のために、塩濃度について与えられる値に施される変動を指す。鎖濃度について与えられる値の変動もまた、これらの計算の出力に影響を及ぼすであろう。280 nM NaClの値(SantaLucia、Proc Natl Acad Sci USA、95: 1460 [1998]、これは参照として本明細書に組み入れられている)およびプローブ約10 pMおよび標的1 fMという鎖濃度を用いることにより、プローブ-標的融解温度を計算するために使用されるアルゴリズムを最適プライマー設計配列を予測することに使用するために適応させた。
【0117】
次に、フットプリント領域に隣接した、上流および下流両方のの配列両方がスキャンされ、そして、プライマーについて、N[1]がAまたはCである5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'として記載されるように、最初のAまたはCが設計開始として選択された。所与のオリゴヌクレオチドのN[2]-N[1]は任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[2]-N[1]とも相補的であるべきではなく、かつN[3]-N[2]-N[1]は任意のその他のオリゴヌクレオチドのN[3]-N[2]-N[1]とも相補的であるべきではないという規則を用いることにより、プライマー相補性は回避された。所与のN[1]においてこれらの判定基準が満たされない場合には、フォワードプライマーについては5'方向での次の塩基、またはリバースプライマーについては3'方向での次の塩基が、N[1]部位として評価される。手作業の分析の場合では、A/C豊富な領域が、3'末端の相補性を最小化するために標的とされた。
【0118】
本実施例において、インベーダーアッセイ法は、多重増幅反応後に行われた。それゆえ、二次インベーダー反応オリゴヌクレオチドの部位(FRETオリゴヌクレオチド配列)もまたプライマー設計のための判断基準として組み込まれたが、増幅プライマー配列はFRETオリゴヌクレオチドの特定された領域に対して80 %未満の相同性であるべきである。
【0119】
10重の多重設計についての出力プライマーは図5に示される。すべてのプライマーは、標準的オリゴヌクレオチド化学に従って合成され、(標準的方法により)脱塩され、A260での吸光度により定量化されて、50 μM濃縮貯蔵液へと希釈された。その後、以下の条件下で、等モル量のプライマー(0.01 uM/プライマー)を使用する10重のPCRを用いて、多重PCRが行われた:50 μl反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl2、10 mM トリスpH 8.0、200 uM dNTP、2.5 U taq、およびヒトゲノムDNA(hgDNA)鋳型10 ng。反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で30サイクル、インキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は水で1:10に希釈され、インベーダーアッセイFRET検出プレート(INVADER Assay FRET Detection Plates)、96ウェルゲノム二重(genomic biplex)、100 ngCLEAVASE VIIIを用いるインベーダー分析に供され、インベーダーアッセイは、以下のような、15 ul反応として構築された:PCR反応物の1:10希釈液1 ul、PPI混合物3 ul、22.5 mM MgCl2 5 ul、dH2O 6 ul、Chillout 15 ulでカバーする。試料は、95 Cで5分間のインキュベーションによりインベーダー二重において変性され、引き続いて、63 Cでのインキュベーション、および様々な時点においてCytofluor 4000で蛍光を測定した。
【0120】
正確に遺伝子型判定コール(call)が作成されるように次の判定基準を用いると(FOZ_FAM + FOZ_RED-2 > 0.6)、10個のインベーダーアッセイコールのうち2個のみを63Cで10分間のインキュベーション後に作成することができ、10個のコールのうち5個のみを63 Cでのさらなる50分間のインキュベーション(60分間)後に作成することができた(図6A参照)。60分の時点で、検出可能なFOZ値間の変動は、最強シグナル(図6A、41646、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 54.2、これはまた、リーダーのダイナミックレンジのはるか外側にある)と最弱シグナル(図6A、67356、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 0.2)との間で100倍を超える。ヒトゲノムDNAの100 ngに対して直接的に同じインベーダーアッセイ法を用いると(各標的の等モル量が利用可能であろう)、すべての読み取り値をリーダーのダイナミックレンジ内で作成することができ、FOZ値での変動はアッセイの最強(図6、53530、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 3.1)と最弱(図6、53530、FAM_FOZ + RED_FOZ-2 = 0.43)の間で約7倍であった。これは、同じ多重PCR反応において異なる単位複製配列間に見られるFOZ値での劇的な不一致が偏りのある増幅の作用であり、インベーダーアッセイ法に帰する変動性ではないことを示唆する。これらの条件下において、異なるインベーダーアッセイにより生じたFOZ値は、お互いに直接的に比較でき、単位複製配列の効率性の指標として信頼性をもって使用されることができる。
【0121】
FOZ値を用いる所与の単位複製配列の増幅因子の推定
所与の単位複製配列の増幅因子(F)を推定するために、インベーダーアッセイのFOZ値は、単位複製配列存在量を推定するために使用されうる。所与の時間(FOZm)で未知の濃度をもつ所与の単位複製配列のFOZを、時間の定められた点(FOZ240、240分)での標的の既知量(例えば、ゲノムDNA 100 ng = 1個の遺伝子 30,000コピー)のFOZと直接的に比較し、未知の単位複製配列のコピー数を計算するために用いることができる。方程式1において、FOZmは、所与の時間量(m)の間、インベーダーアッセイにおいてインキュベートされる標的の未知の濃度のRED_FOZおよびFAM_FOZの合計を表す。FOZ240は、240分間での標的の既知のコピー数
について用いられる、経験的に決定されたRED_FOZ値(インベーダーアッセイ41646を用いる)を表す。
【数5】
【0122】
方程式1aは、プライマー濃度と増幅因子Fとの間の直線的関係を決定するために用いられるが、方程式1a'は10重のPCRについての増幅因子Fの計算において用いられ(プライマーの等モル量およびプライマーの最適化濃度の両方について)、D値はPCR反応の希釈因子を表す。50 ul多重PCR反応の1:3希釈の場合。D = 0.3333。
【数6】
【0123】
方程式1aおよび1a'は10重の多重PCRの記述に用いられるだろうが、この方程式のさらに補正適応が、107重PCRでのプライマー濃度の最適化に用いられた。この場合、標的としてhgDNAを用いる全インベーダーMAPプレートにわたる、FOZ240 = FAM_FOZ240 + RED_FOZ240の平均(FOZ240 = 3.42)、および希釈因子Dは0.125に設定されている。
【数7】
【0124】
より正確である増幅因子Fの推定のために、FOZ値が、読み取り値が得られる装置のダイナミックレンジ内であるべきであるということは、留意されるべきである。この研究に用いられたCytofluor 4000の場合、ダイナミックレンジは、約1.5 FOZと約12 FOZの間であった。
【0125】
第3項 増幅因子とプライマー濃度との間の直線的関係
プライマー濃度と増幅因子(F)との間の関係を決定するために、4つの別個の1重PCR反応をプライマー1117-70-17および1117-70-18を使用して、それぞれ、0.01 uM、0.012 uM、0.014 uM、0.020 uMの濃度で、実行した。その4つの独立したPCR反応は、以下の条件下で行われた:100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mMトリスpH 8.0、200 uM dNTP、鋳型としてhgDNAを10 ng使用する。インキュベーションは、(94 C/30秒、50 C/20秒)で30サイクル行なわれた。PCR後、反応物は水で1:10に希釈され、インベーダーアッセイFRETフレット検出プレート、96ウェルゲノム二重、100 ng CLEAVASE VIII酵素を使用して標準的条件下で実行された。各15 ul反応物は次のように設定された:1:10希釈PCR反応物1ul、3 ulのPPI混合物SNP番号47932、5 ulの22.5 mM MgCl2、水 6 ul、Chillout 15 ul。プレート全体を、95 Cで5分間およびその後63 Cで60分間インキュベートし、その時点においてCytofluor 4000蛍光プレートリーダー上で単一の読み取り値を得た。4つの異なるプライマー濃度(0.01 uM、0.012 uM、0.014 uM、0.020 uM)それぞれについて、60分間におけるFOZm = FOZ_FAMとFOZ_REDの合計、m = 60、およびFOZ240 = 1.7として、方程式1aを用いて増幅因子Fを計算した。増幅因子の対数Log(F)に対して各反応のプライマー濃度をプロットすると、顕著な直線的関係が示された(図7)。図7のデータ点を用いて、増幅因子とプライマー濃度間の直線的関係を表す式は方程式2に記載される。
Y' = 1.684X + 2.6837 (方程式2a)
【0126】
方程式2を用いて、所与の単位複製配列の増幅因子Log(F) = Y'をプライマーの既知の濃度(X)を使用する予想可能な形で操作できた。逆の方法において、多重PCRでの等モルのプライマー濃度の条件下で観察される増幅の偏りをその増幅因子Fに基づく「見かけの」プライマー濃度(X)として測定することができた。多重PCRにおいて、異なる単位複製配列間の「見かけの」プライマー濃度の値は、異なる遺伝子座の増幅を均等にするために必要とされる各単位複製配列のプライマーの量を推定するために使用されうる。
X = (Y'-2.6837)/1.68 (方程式2b)
【0127】
第4項 バランスのとれた複数混合物からの見かけのプライマー濃度の計算
前の項で記載されるように、プライマー濃度は所与の単位複製配列の増幅因子に直接的に影響を及ぼすことができる。プライマーの等モル量の条件下でのFOZmの読み取り値を、方程式2を用いて各単位複製配列の「見かけの」プライマー濃度を計算するために用いることができる。方程式2のY'を所与の増幅因子のlog(F)に置き換えて、Xについて解くことにより、多重反応における所与の単位複製配列の相対的存在量に基づく「見かけの」プライマー濃度が得られる。多重反応におけるすべてのプライマー(等モル濃度として供給される)の「見かけの」プライマー濃度を計算するために方程式2を用いることにより、お互いに対するプライマーセットを標準化する手段が提供される。「最適化された」多重プライマー混合物Rへと加えられるべき各プライマーの相対的量を導くために、その「見かけの」プライマー濃度のそれぞれで、最大の見かけのプライマー濃度(Xmax)を割ればよく、最強の単位複製配列が1の値に設定され、残っている単位複製配列は等しいまたは1より大きい値に設定される。
R[n] = Xmax/X[n] (方程式3)
【0128】
R[n]の値を相対的プライマー濃度の任意の値として用いて、R[n]の値に一定のプライマー濃度を掛け算すると、所与の多重反応における各プライマーについての作業濃度が提供される。示される実施例において、SNPアッセイ41646に対応する単位複製配列は、1に等しいR[n]値をもつ。R[n]値のすべてに0.01 uM(等モル多重PCR反応における最初の開始プライマー濃度)を掛け算すると、最低のプライマー濃度は、1に設定されている41646のR[n]、つまり0.01 uMである。プライマーセットの残りもまた、図8に示されるように、比例して増加した。「最適化された」プライマー混合物をもつ多重PCRの結果は下記に記載されている。
【0129】
第5項 多重PCRにおいて最適化されたプライマー濃度を用いると、10個のインベーダーアッセイ間のFOZでの変動は大きく低下する。
多重PCRは、図8に示される容量に基づく様々な量のプライマーを使用する10重のPCRを用いて行われた(X[max]はSNP41646であり、1x = 0.01 uM/プライマーに設定)。多重PCRは、等モルのプライマー混合物で用いられたのと同一の条件下において行われた:50 ul反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mMトリスpH 8.0、200 uM dNTP、2.5 U taqおよびhgDNA鋳型10 ng。反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で30サイクル、インキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は、水で1:10に希釈され、インベーダー分析に供された。インベーダーアッセイFRET検出プレート、(96ウェルゲノム二重、100 ng CLEAVASE VIII酵素)を用いて、反応物は、以下のように、15 ul反応物として構築された:PCR反応物の1:10希釈液1 ul、適当なPPI混合物3 ul、22.5 mM MgCl2 5 ul、dH2O 6 ul。CHILL OUT 15 ulを更に各ウェルへ添加し、引き続いて、95 Cで5分間のインキュベーションを行った。プレートは、63 Cでインキュベートされ、10分間の時点で、Cytofluor 4000上で蛍光が測定された。
【0130】
正確に遺伝子型判定コールが作成されるように次の判定基準を用いると(FOZ_FAM + FOZ_RED-2>0.6)、10個のうちの10個すべて(100 %)のインベーダーコールを、63 Cにおけるインキュベーションの10分後に作成することができる。さらに、FAM + RED-2の値(増幅因子に直接的に関係する、総合的なシグナル産生の指標(方程式2を参照))は、最低シグナル(図9、67325、FAM + RED-2 = 0.7)と最高(図9、47892、FAM + RED-2 = 4.3)の間を7倍未満までで変動した。
【0131】
ii. PCRプライマー設計 実施例2
TWTオリゴオーダーエントリーデータベース(TWT Oligo Order Entry Database)を用いて、SNPが各配列についてSNP位置を示すために角型括弧を使用して注釈をつけられている、200ヌクレオチド長未満の144個の配列が得られた(例えば、NNNNNNN[N(wt)/N(mt)]NNNNNNNN)。関心対象のSNPに隣接する配列データを拡張するために、配列は、BLAST分析を用いて、長さ約1 kB(SNPの各側に隣接する500ヌクレオチド)まで拡張された。144個の出発配列のうち、16個はBLASTにより拡張されることができず、結果として、長さ約1 kBまで拡張された128個の配列の最終セットが生じた(図10を参照、29043および34573のみが示されている)。これら拡張された配列は、各配列について次の情報をエクセル(Excel)形式でユーザーに提供された:(1)TWT番号、(2)短縮識別名、および(3)配列(図10を参照、SNP29043番および34573番のみが示されている)。エクセルファイルはコンマ区切り形式へ変換され、プライマーデザイナーインベーダークリエイター(Primer Designer INVADER CREATOR)v1.3.3ソフトウェア(このバージョンのプログラムは、FRET反応性についてスクリーニングせず、またユーザーにプライマーの最大長を条件として指定させない)についての入力ファイルとして使用された。インベーダークリエイタープライマーデザイナー(INVADER CREATOR Primer Designer)v1.3.3は、60 Cに設定されたTmlowを除いては、デフォルト条件(例えば、最小プライマーサイズ12、最大プライマーサイズ30)を用いて実行された。出力ファイル(図11を参照、SNP29043番および34573番のみが示されている、各シートの下部はアッパーケース文字でフットプリント領域、および角型括弧でSNPを示している)は、128組のプライマーセット(256個のプライマー、図12を参照)を含み、そのうちの4組は過度に長いプライマー配列のために捨てられ(SNP番号47854、47889、54874、67396)、合成について有効な124個のプライマーセット(248個のプライマー)が残された。残っているプライマーは、200 nmolのスケールで標準的方法を用いて合成され、脱塩することにより精製された。合成失敗の後、107組のプライマーセットが等モルの107重のプライマー混合物の集合(214個のプライマー、図12を参照)として有効であった。増幅に有効な107組のプライマーセットのうち、101組のみが、増幅因子を評価するためのインベーダーMAPプレート上に存在した。
【0132】
多重PCRは、次の条件下で、等モル量(0.025 uM/プライマー)のプライマーを使用する101重のPCRを用いて行われた:50 ul反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mM トリスpH 8.0、200 uM dNTP、およびヒトゲノムDNA(hgDNA)鋳型10 ng。95 Cで10分間の変性後、Taq 2.5単位が添加され、反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で50サイクルインキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は、水で1:24に希釈され、インベーダーMAP検出プラットフォームを使用するインベーダーアッセイ分析に供された。各インベーダーMAPアッセイは、次のように、6 ulの反応物として実行された:PCR反応物(D = 0.125に等しい総希釈度1:8)の1:24希釈液3 ul、15 mM MgCl2 3 ul、CHILLOUT 6 ulでカバーされている。試料は、95 Cで5分間のインキュベーションによりインベーダーMAPプレートにおいて変性され、引き続いて、63 Cでインキュベーション、そして160分間の間の様々な時点においてCytofluor 4000(384ウェルリーダー)上で蛍光が測定された。10分、20分、40分、80分、160分において計算されたFOZ値の分析は、正しいコール(同じDNA試料のゲノムのコールと比較して)がインベーダーMAPプラットフォームにより検出可能な101個の単位複製配列のうちの94個について行われたことを示している(図13および図14)。これは、インベーダークリエイタープライマーデザイナーソフトウェアが、高度に多重化されたPCRにおいて機能するプライマーセットを作製できることの証拠を提供している。
【0133】
160分間を通して得られたFOZ値の使用において、増幅因子FおよびR[n]を101個の単位複製配列それぞれについて計算した(図15)。R[nmax]は1.6に設定されたが、160分において十分なFOZmシグナルを与えることができなかった単位複製配列について、R[n]に12という任意の値を割り当てて、低い端の補正を行った。10分でのFOZm値が読まれる単位複製配列についての高い端の補正は、1というR[n]値が任意に割り当てられた。101重の最適化されたプライマー濃度は、10重の実施例および方程式1bにおいて概略を示されている基本的原理を用いて計算され、0.025 uMプライマーにR[n]の1が対応している。多重PCRは次の条件下であった:50 ul反応物において、100 mM KCl、3 mM MgCl、10 mM トリスpH 8.0、200 uM dNTP、およびヒトゲノムDNA(hgDNA)鋳型10 ng。95 Cで10分間の変性後、Taq DNAポリメラーゼ2.5単位が添加され、反応物は、(94 C/30秒、50 C/44秒)で50サイクル、インキュベートされた。インキュベーション後、多重PCR反応物は水で1:24に希釈され、インベーダーMAP検出プラットフォームを使用するインベーダーアッセイ分析に供された。各インベーダーMAPアッセイは、次のように、6 ulの反応物として実行された:PCR反応物(D = 0.125に等しい総希釈度1:8)の1:24希釈液3 ul、15 mM MgCl2 3 ul、これはCHILLOUT 6 ulでカバーされている。試料は、95 Cで5分間のインキュベーションによりインベーダーMAPプレートにおいて変性され、引き続いて、63 Cでインキュベーション、そして160分間の様々な時点においてCytofluor 4000(384ウェルリーダー)上で蛍光が測定された。FOZ値の分析は、10分、20分、および40分において行われ、ゲノムDNAに対して直接的に作成されるコールと比較された。図13に示されているのは、等モルのプライマー濃度での101重PCRについて10分に作成されるコール対最適化されたプライマー濃度下で実行される101重PCRについて10分で作成されたコールの間での比較である。本実施例についての追加データは図16a、図16bおよび図17に示されている。等モルのプライマー濃度下では、多重PCRは、10分の時点において50個のみの正しいコールを生じるのだが、最適化されたプライマー濃度下では、多重PCRは71個の正しいコールを生じ、結果として、21個(42 %)の新しいコールの増加を生じた。101個すべてのコールが10分の時点で作成されることはできなかったが、94個のコールが40分の時点で作成されることができ、これは単位複製配列の大多数の増幅効率が向上したことを示唆する。1ラウンドの最適化を必要としただけの10重の最適化とは違って、より複雑な多重化された反応については、すべての遺伝子座の増幅のバランスをとるために、複数ラウンドの最適化が必要とされうる。
【0134】
CYP2D6についての追加プライマーは図18に示されている。図19は、多重最適化についての一つのプロトコールを示す。
【0135】
III. プールされた試料における対立遺伝子頻度の測定
特定の態様において、本発明は、集団における複数の個体(例えば、10個、50個、100個、または500個の個体)から、または核酸配列が一度にアッセイされる大量の細胞由来である1つの対象から合同されるプールされた試料において多型の検出を可能にする。このことについては、本発明は、プールされた試料においてまれな突然変異の頻度を検出すること、および集団についての対立遺伝子頻度を確証することを可能にする。いくつかの態様において、この対立遺伝子頻度は、その後、インベーダー検出アッセイをその多型についての個体の頻度に適用した(例えば、インベーダーアッセイ法を用いて測定された)結果を統計的に分析するために用いられうる。このことについては、見出される変異体の割合(%)に頼る突然変異(例えば、ヘテロ接合性突然変異の減少)が分析されうり、疾患の重症度または疾患の進行が決定されうる(例えば、あらゆる目的のために参照として本明細書に組み入れられる、ラピダス(Lapidus)による米国特許第6,146,828号および第6,203,993号を参照、遺伝子の試験および統計的分析が、疾患原因性突然変異を見出すことまたは患者の試料の疾患原因性突然変異を含むことを同定するために使用されている)。
【0136】
本発明のいくつかの態様において、広い集団スクリーニングが行われる。いくつかの好ましい態様において、数百個体または数千個体由来のプールしているDNAが最適である。そのようなプールにおいて、例えば、任意の1つの個体由来のDNAは検出可能ではなく、任意の検出可能なシグナルがより広い集団において検出される対立遺伝子の頻度の測定を提供するものである。例えば、使用されるDNA量は、プールにおける個体数によるのではなく、実施例3に記載される15人のプールで行われたように、むしろ、検出される対立遺伝子頻度により設定されるものである。例えば、96ウェル形式でのアッセイ法は、90分の反応において、20 ng〜40 ngのDNAから十分なシグナルを与えるものである。このレベルの感度において、高複雑性プール由来のDNA 1 μgの分析は、集団の約3 %〜5 %だけに存在する対立遺伝子から比較可能なシグナルを産生するものと思われる。いくつかの態様において、反応は、各分析に必要とされるDNAがより少なくなるように、より少ない容量において実行するよう設定される。いくつかの好ましい態様において、反応はマイクロウェルプレート(例えば、384ウェルのアッセイプレート)において行われ、各反応ウェルにおいて少なくとも2つの対立遺伝子または遺伝子座が検出される。特に好ましい態様において、各ウェルにおいて該2つまたはそれ以上の対立遺伝子または遺伝子座のそれぞれから測定されるシグナルが比較される。
【0137】
プールされた試料 - 実施例1
本実施例は、APOC4遺伝子における多型の検出を記載する。特に、本実施例は、プールされた試料においてAPOC4遺伝子における突然変異を検出するためのインベーダーアッセイ法の使用を記載する。
【0138】
本実施例において、ゲノムDNAは、数人の個々の供与者由来の血液試料から単離され、APOC4遺伝子のコドン96におけるT/C多型に対して侵入型切断により特徴付けられた(参照として本明細書に組み入れられる、Allanら、Genomics 1995年7月20日; 28(2): 291〜300を参照)。APOC4アッセイは、侵入型オリゴヌクレオチドとして
ならびに、T(Leu96)およびC(Pro96)の対立遺伝子それぞれに対する一次シグナルプローブとして
または
のいずれかを使用した。二次標的およびプローブはそれぞれ、
および
であった。
【0139】
すべてのオリゴヌクレオチドは標準的ホスホラミダイト化学を用いて合成された。一次プローブオリゴヌクレオチドは標識されなかった。FRETプローブは、Cy3ホスホラミダイトおよび蛍光ホスホラミダイトの取り込みにより標識された(Glen Research、Sterling、VA)。5'末端の使用のために設計される一方で、Cy3ホスホラミダイトは、その色素上に、さらなる合成的鎖の延長を可能にするために除去することができる付加的モノメトキシトリチル(MMT)基をもち、結果として、オリゴヌクレオチドの糖-リン酸骨格におけるギャップを架橋する色素での内部標識を生じる。一次プローブおよび二次標的オリゴヌクレオチドの3'末端において、それらが侵入型オリゴヌクレオチドとして使用されないように、表示されているようなアミンまたはリン酸修飾が用いられた。二次標的オリゴヌクレオチドにおける2'-O-メチル塩基は下線により表示されているが、同じく、3'末端の酵素認識を最小にするために用いられた。大体のプローブ融解温度(Tm)は、Oligo 5.0ソフトウェア(National Bioscience、Plymouth、MN)を用いて計算され、非相同的領域を計算から排除した。
【0140】
プールされた試料は、ヘテロ接合性(het)DNAをこの遺伝子座においてホモ接合性T(L96)であるDNAへ希釈することにより構築された。試験反応は反応あたりT(L96)ゲノムDNAを0.08 μg〜8 μg含み、かつhet DNAは0.08 μgで保持され、これにより、het DNAが試料中の総DNAの50 %から下は1 %までを表示する一連の混合物が作製された(図20を参照)。C(P96)対立遺伝子の実際の表示は、混合試料中のこの遺伝子のコピーの25 %から下は0.5 %までの範囲にわたった。対照は、様々なDNAレベルそれぞれにおけるT(L96)DNAすべて、または80 ngレベルにおけるhet DNAすべてのいずれかを有する反応物を含んだ。さらに、C(P96)対立遺伝子についてホモ接合性であるDNAの試料を試験した(図20)。
【0141】
すべてのインベーダーアッセイ反応について、侵入型プローブ4 pmol、FRETプローブ40 pmol、および二次標的オリゴヌクレオチド20 pmolを1.6 % PEG含有10 mM MOPS(pH 7.5)34 μlにおいてゲノムDNAと結合させた。APOC4遺伝子のC(Pro96)対立遺伝子との反応物は、この対立遺伝子にヘテロ接合性DNA 80 ngを含み、かつその指示された比率でT(Leu96)についてホモ接合性DNAを含んだ。試料は、Chill-Out液体ワックス15 μlで表面を覆われ、DNAを変性させるために95℃まで5分間加熱された。67℃まで冷めたらすぐ、Cleavase VIII酵素400 ng、T(Leu96)またはC(Pro96)いずれかの一次シグナルプローブ15 pmol、および最終濃度7.5 mMまでのMgCl2により、反応を開始させた。プレートは、67℃で2時間インキュベートされ、二次(FRET)反応を開始するために54℃まで冷却され、そしてさらに2時間インキュベートされた。その後、反応はTE 60 μlの添加により停止された。蛍光シグナルは、Cytofluor蛍光プレートリーダー上で、励起485/20、放出530/25、増加(gain)65、温度25℃において測定された。各反応および標的非含有対照について、3回の反復実験を行った各標的DNAについての平均シグナルを計算し、標的非含有対照由来の平均バックグラウンドを差し引き、マイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)を用いて、データをプロットした。
【0142】
本実施例の結果は、図20に示されている。この図に示されているように、C(P96)対立遺伝子は、それが混合物に存在するAPOC4対立遺伝子の0.5 %だけ存在している反応を含む、すべての反応において容易に検出された。これらのデータは、その侵入型切断反応がプールされたDNA試料を使用する集団分析について用いられうることを示す。これは、新しいSNPを実証するために必要とされるアッセイの数を引き下げること、および多数の試験のためにプールされた1つのDNAの大量調製の使用を可能にして、それらにより、DNA純度における試料間の変動の影響を低減させることの二倍の利点をもつ。
【0143】
上記実施例は、インベーダーアッセイ法が集団をスクリーニングするために用いられうることを実証している。分析されるべき混合DNAの試料は、低頻度の対立遺伝子を検出可能な範囲に、例えば、これら40 μl反応物における変種ゲノム量を80 ng〜100 ngにするのに十分な多さであるべきである。本実施例において上記で示されるように、混合されたDNA 8 μg〜10 μgの試料は、これらの条件下において、集団の0.5 %〜1 %で存在する対立遺伝子の検出を可能にする。さらに、任意の1つの個体からのDNAは、理想的には、そのプールの分割量が試験される場合、検出可能なシグナルを産生するために十分な大量で存在しない方がいい。数百個体のプールを作製することは、どの検出されるシグナルもそのプールにおける複数の個体からの寄与を反映していることを保証するべきである。最後に、内部標準として設定される第二プローブの使用は、シグナルが反応から反応へ標準化されることを可能にし、かつどんなSNPの普及率もより正確に測定されることを可能にするものと思われる。
【0144】
プールされた試料 - 実施例2
本実施例は、CFTR遺伝子における多型の検出を記載する。特に、本実施例は、プールされた試料においてCFTR遺伝子におけるΔF508突然変異を検出するためのインベーダーアッセイ法の使用を記載する。
【0145】
ΔF508突然変異のインベーダーアッセイ分析について、一次プローブセットは、侵入型オリゴヌクレオチドとして
ならびに野生型および変異型の対立遺伝子についてのシグナルプローブとして
または
のいずれかを含んだ。二次反応構成要素は、一次反応温度より少なくとも5度低い温度で最適に機能するように設計された。
【0146】
すべてのオリゴヌクレオチドは、標準的ホスホラミダイト化学を用いて合成された。一次プローブオリゴヌクレオチドは標識されなかった。FRETプローブは、Cy3ホスホラミダイトおよび蛍光ホスホラミダイトの取り込みにより標識された(Glen Research、Sterling、VA)。5'末端の使用のために設計される一方で、Cy3ホスホラミダイトは、その色素上に、さらなる合成的鎖の延長を可能にするために除去することができる付加的モノメトキシトリチル(MMT)基をもち、結果として、オリゴヌクレオチドの糖-リン酸骨格におけるギャップを架橋する色素での内部標識を生じる。その色素に適応させるためにこの位置で1つのヌクレオチドを削除した。一次プローブ、二次標的および停止(arrestor)オリゴヌクレオチドの3'末端において、それらが侵入型オリゴヌクレオチドとして使用されないように、アミン修飾が用いられた。2'-O-メチル塩基は、下線を施して表示されているが、同じく、3'末端の酵素認識を最小にするために用いられている。大体のプローブ融解温度は、Oligo 5.0ソフトウェア(National Bioscience、Plymouth、MN)を用いて計算され、非相同的領域を計算から排除した。
【0147】
CFTR遺伝子型として特徴付けられたDNA試料は、コリエル医学研究所(Coriell Institute for Medical Research)(Camden、NJ)、カタログ番号NA07469番(ΔF508およびR553Xの両方の突然変異についてのCFTR遺伝子におけるヘテロ接合性)およびNA01531番(ホモ接合性ΔF508)から購入された。FRET経時的侵入型切断方法を用いて変異体のどのくらいの用量がプールされた試料内で検出されることができるのかを決定するために、CFTR遺伝子におけるΔF508突然変異についてのヘテロ接合体であるDNAは、その遺伝子座においてホモ接合性の野生型であるDNAへ希釈された。試験反応には、反応あたり総ゲノムDNA 0.1 μg〜2.6 μgが含まれ、かつ変異体 DNAは0.1 μgで保持され、このようにして、変異体DNAが試料中における総DNAの50 %から下は4 %までを表示する混合物のセットを作製した。変異体DNAは508遺伝子座においてヘテロ接合性であるため、実際の対立遺伝子の表示は、混合された試料においてそのDNAの25 %から下は2 %までの範囲にわたった。対照は、様々なDNAレベルそれぞれにおいてすべて、または100 ngレベルにおいてすべてのヘテロ接合性変異体DNAのいずれかを有する反応物を含んだ。さらに、ΔF508突然変異についてホモ接合性であるDNAの試料を試験した。
【0148】
DNA濃度は、ピコグリーン(PicoGreen)法を用いて推定された。インベーダープローブ4 pmol、FRETプローブ40 pmol、および二次標的オリゴヌクレオチド20 pmolを、4 % PEG含有10 mM MOPS(pH 7.5)34 μlにおいてゲノムDNAと組合せた。試料は、Chill-Out液体ワックス15 μlで表面を覆われ、DNAを変性させるために95℃で5分間加熱された。62℃まで冷めたらすぐ、AfuFEN1酵素の400 ng、野生型または変異型のいずれかの一次プローブ15 pmol、および最終濃度7.5 mMまでのMgCl2の添加により、反応を開始させた。プレートは、62℃で2時間、インキュベートされ、二次(FRET)反応を開始するために54℃まで冷却され、そしてさらに2時間インキュベートされた。その後、反応はTE 60 μlの添加により停止された。蛍光シグナルは、Cytofluor蛍光プレートリーダー上で、励起485/20、放出530/25、増加65、温度25℃において測定された。各反応についておよび標的非含有対照について、3回の反復実験を行った。各標的DNAについての平均シグナルを計算し、標的非含有対照由来の平均バックグラウンドを差し引き、その後マイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)を用いてデータをプロットした。
【0149】
本実施例の結果は、図21に提示されている。変異体対立遺伝子由来のシグナルの分析は、野生型DNAの量における実質的増加により顕著には阻害されないことを示し、ΔF508変異体DNAが、混合物の2 %のみとして存在する場合、容易に検出されることができた(図21)。これらのデータは、侵入型切断反応がプールされたDNA試料を使用する集団分析のために用いられうることを示す。これは、新しいSNPを実証するために必要とされるアッセイの数を引き下げること、および多数の試験のために使用されるプールされた1つのDNAの大量調製の使用を可能にして、それらにより、DNA純度における試料間の変動の影響を低減させることの二倍の利点をもつ。
【0150】
本実施例において結果が提示されたことを考慮すれば、集団をスクリーニングするためにインベーダーアッセイ法を適用することは可能である。好ましい態様において、集団スクリーニングについて、各個体からのDNAの寄与は均等であるべきであり、かつプールの分割量が試験される場合、任意の1つの個体由来のDNAも、検出可能なシグナルを産生するために十分な大量で存在しない方がいい。例えば、このシステムについては、任意の1人が各反応に対して1 ng未満(例えば、0.5 ng)を寄与する十分大きなプールを作製することにより、どの検出されるシグナルもプールにおける複数の個体からの寄与を反映していることが保証されるだろう。その他の検出系について、任意の1つの個体由来のDNAをそのシステムの検出限界より少ない量、例えば、検出限界の1/5〜1/10に制限することにより、望ましい効果が生じるだろう。内部標準として設定される二次プローブの使用は、例えば、シグナルが反応から反応へ標準化されることを可能にし、かつどんなSNPの普及率もより正確に測定されることを可能にするものと思われる。
【0151】
プールされた試料 - 実施例3
本実施例は、プールされた試料におけるコンソーシアム(Consortium)番号:TSC 0006429(SNP 1831)突然変異の検出を記載する。15個の個体由来のDNAはコリエル細胞貯蔵所(Coriell Cell Repository)から購入され、各試料は、SNPコンソーシアム番号:TSC 0006429(SNP 1831)遺伝子座における遺伝子型を同定するために試験された。各反応は、7.5 mM MgCl2を含有する10 mM MOPS(pH 7.5)緩衝液中の、各個体由来DNA 40 ng、0.366 μM一次プローブ、0.0366 μMインベーダーオリゴヌクレオチド、0.183 μMFRETプローブおよび100 ngCLEAVASE VIII酵素を含んだ。
【0152】
使用されるプローブは以下のとおりである(5'から3'へ)。
【0153】
アッセイは、ホール(Hall)ら、PNAS、97(15): 8272 (2000)に記載されているように行われた。簡単に述べると、反応物は、65℃の一定温度でインキュベートされた。リアルタイム反応検出のためのABI7700装置を使用して作製された、各試料についてのデータは、図22および図23の15個のパネルに示され、ここでG対立遺伝子由来のシグナルは薄い色の線として示され、かつT対立遺伝子由来のシグナルは濃い色の線として示されている。混合物に存在する各対立遺伝子由来のシグナルは、シグナル蓄積の二次式的性質を反映する上昇曲線として産生され、どんな対立遺伝子も存在しないところからのシグナルは、本質的に直線である。これらのDNAは、その後、いくつかの組合わせでプールされた:試料1〜5、6〜10、11〜15、1〜10、6〜15、および1〜15。データパネルは、図24に示されている。図25は、各反応の終わりに測定された正味の蛍光カウントの比較を提供する。図22および図23における結果から、各混合物における対立遺伝子の表現を計算することができる。図24および図25の両方は、各プールについて集計されたシグナルが混合物における対立遺伝子の最終比率に関して比例していることを実証している。プールされた試料からの正味の蛍光シグナルは、各人からのDNAの量が一定に保持されたため、個体からのそれらよりも大きい。例えば、5個の個体からプールされたDNAにおいて実行されるアッセイは、1個の個体からのDNAにおいて実行されるアッセイの5倍のDNA量を有した。
【0154】
本実施例に見られるように、ABI7700のリアルタイム検出能力は、まれなSNPsの検出における非常に貴重なことを立証できる。反応は2段階カスケードであるため、インベーダーアッセイにおいて蓄積されるシグナルのリアルタイムトレースは二次方程式に適合するが(すなわち、図22、図23および図24に観察される曲線)、バックグラウンドシグナルは、反応の過程の間、直線のままである。従って、ゲノム標的から産生されるシグナルをバックグラウンド蛍光から区別することは、明白である。アッセイのこの特徴は、まれな対立遺伝子由来の低レベルシグナルを、より確実にバックグラウンドから決定することができることを意味する。
【0155】
プールされた試料 - 実施例4
1つの反応内での異なる対立遺伝子の測定により、対立遺伝子頻度の決定において比較される測定に不正確さを持ち込む試料間の変動についての懸念が除去される。二重(反応あたり2つの対立遺伝子または遺伝子座の検出)またはより複雑な多重(反応あたり2つより多い対立遺伝子または遺伝子座の検出)形態の使用により、対立遺伝子頻度決定についての処理量が増加し、異なる集団間での対立遺伝子頻度の比較が容易になる(例えば、特定の形質に影響されているものに対して影響されていないもの)。
【0156】
以下は、DNA試料における2つの対立遺伝子の検出についての一般的プロトコールの例の1つ、およびそのプロトコールが試料における対立遺伝子の決定に適用された数例を提供する。本実施例において、シグナルは蛍光色素(FAM)およびレドモンドレッド(REDMOND RED)色素(Red、Synthetic Genetics、San Diego、CA)から測定され、それぞれは、Z28エクリプス(ECLIPSE)消光剤と組合わされた独立のFRETプローブ上で使用される。このプロトコールは実施例として役に立つように提供され、本発明の方法または構成要素の使用をどんな特定のアッセイプロトコールまたは反応形態にも限定するものではない。多数の蛍光色素およびフルオロフォア/消光剤の組合わせ、およびそのような試薬を単独および核酸へのFRET結合において接着および検出する方法は、当技術分野において公知である。そのような他の試薬の組合わせは、本発明における使用のために企図され、これらの方法におけるその使用は、本発明の範囲内である。
【0157】
a. プールされた試料における対立遺伝子頻度の決定のための手順
1. ピコグリーン(PICOGREEN)試薬を使用する(手順は後に続く)インベーダーアッセイ法において使用される各試料のDNA濃度を測定する。
2. 特定された対立遺伝子頻度でのゲノム試料の模擬プールへ望ましい比率でDNA試料を混合する。
3. ゲノムDNA試料を95℃で10分間インキュベートすることにより変性させる。その後、試料を氷上に置いてもよい(選択的に)。
4. 反応あたり、1.15 μL プローブ/インベーダーオリゴヌクレオチド混合物(各一次プローブ3.5 μMおよび0.35 μMインベーダーオリゴヌクレオチド)と1.85 μL 24 mM MgCl2を混合することによりプローブ/ インベーダーオリゴヌクレオチド/MgCl2混合物を調製する。試料の完全セットの試験のために十分なマスター混合物の調製が好ましい。
5. 384ウェル二重インベーダーアッセイFRET検出プレート(Third Wave Technologies、Madison、WI)の適当なウェルへ、80 ng/μl〜100 ng/μl(ゲノムDNAの約240 ng〜300 ng)での適当な対照または試料DNA標的を3 μl添加する。各プレートウェルは、分配後乾燥された、10 mM MOPS、8 % PEG、4 % グリセロール、0.06 % NP 40、0.06 % ツィーン20、12 ug/ml BSA、50 ng/ul BSA、33.3 ng/ul CLEAVASE VIII酵素、1.17 μM FAM FRETプローブ
および1.17 μM Red FRETプローブ
を含有する溶液3 μlを含む。
6. 次に、384ウェル二重インベーダーアッセイFRET検出プレートの適当なウェルへ、プローブ/ インベーダーオリゴヌクレオチド/MgCl2混合物3 μlをピペットで移す。
7. 各反応物をミネラルオイル6 μlで表面を覆う。
8. プレートを接着性カバーで覆い、プローブおよび標的をウェルの底に移動させるためにベックマン(Beckman)GS-15R遠心分離機(または等価物)で10秒間、1,000 rpmで振とうする。
9. 反応物をサーマルサイクラーまたはBioOven IIIなどのインキュベーターにおいて63℃で3時間〜4時間、インキュベートする。63℃での3時間〜4時間のインキュベーション後、サーマルサイクラーを使用する場合には4℃まで、またはインキュベーターを使用する場合には室温まで、温度を低下させる。
10. 以下のパラメーターを用いる蛍光プレートリーダー上でマイクロタイタープレートを分析する。
【0158】
b. フォールドオーバーゼロマイナス1(fold-over-zero minus 1)(FOZ-1)の計算
各反応からのシグナルは、標的非含有対照(「ゼロ」)からのシグナルとの比較により測定され、「ゼロ」反応物からのシグナルの倍数として表現される。バックグラウンドに対しての実際のシグナルの因子を得るために、因子1が差し引かれる(例えば、ゼロの1.5×シグナルすなわち1.5フォールドオーバーゼロをもつ試料について、固有のシグナルの量は、1.5 - 1、すなわち0.5である)。
【0159】
FOZ-1を以下のように決定する。
FOZ-1 FAMプローブ = ((FAMプローブ1の数の生データ(raw count)、485/530)/(標的非含有対照FAMプローブの数の生データ、485/530))-1
FOZ-1レッドプローブ = ((レッドプローブ2の数の生データ、560/620)/(標的非含有対照レッドプローブの数の生データ、560/620))-1
【0160】
c. 補正因子(Correction Factor)(CF)を以下のように計算
補正因子は、切断反応効率におけるプローブセット間の任意の変動を合わせるために計算されうる。
ヘテロ接合性対照のCFFAM = (FOZFAM-1)/((FOZRed-1);CFRed = (FOZRed-1)/(FOZFAM-1)
FAM対立遺伝子頻度計算について:
レッド対立遺伝子頻度計算について:
【0161】
d. DNA定量の手順(Molecular Probes PICOGREENアッセイ法)
ピコグリーン(PICOGREEN)試薬は、非対称のシアニン染料である(モレキュラープローブズ(Molecular Probes)、OR)。遊離染料は蛍光を発しないが、dsDNAに結合すると同時に、>1000倍の蛍光増加を示す。ピコグリーン(PICOGREEN)は、UV吸光度法より10,000倍も感度が高く、かつssDNAおよびRNAに比較してdsDNAに対する選択性が高い。
【0162】
1. 結果を読む前に少なくとも10分間蛍光プレートリーダー上で回転させる。ピコグリーン(PICOGREEN)結果を読むために以下の設定を用いる。
2. ピコグリーン(PICOGREEN)キットに供給されている20×TE保存液から1×TE緩衝液(10 mM トリスHCl、1 mM EDTA、pH 7.5)を調製する(50 mlを作製するためには、DNase非含有滅菌蒸留水47.5 mlへ20×TEを2.5 ml添加する)。50 mlは、250アッセイに対して十分な量である。
3. DNA標準を1×TEで100 μg/mlから2 μg/mlまでに希釈する。2つの標準曲線のために、100 μg/ml保存液8 μlを392 μlの1×TEへ添加することにより2 μg/ml保存液を400 μl調製する。
4. 表1に示されるように、マイクロタイタープレート内の2つの標準曲線を調製する。
【0163】
【表1】
【0164】
5. 各未知試料について、マイクロプレートウェル内で試料2 μlを1×TE 98 μlへ添加する。ピペットで上下することにより混合する。
6. 1×TE中でピコグリーン(PICOGREEN)試薬の1:200希釈を調製する。各標準および各未知試料について、100 μlの容量が必要とされる。例えば、それぞれ8点をもつ2つの標準曲線は、1.6 mlを要求することになる。必要とされる希釈されたピコグリーン(PICOGREEN)試薬の総容量を計算するために、試験されるであろう試料および未知の総数を決定し、この数に100 μlを掛ける(マルチチャンネルピペットを使用する場合には、さらなる試薬を作製する)。ピコグリーン(PICOGREEN)試薬は光感受性であり、解凍中および希釈された状態においては、ホイルで覆っておくべきである。十分にボルテックスする。
7. 希釈ピコグリーン(PICOGREEN)100μlを全標準および試料に添加する。ピペットで上下させて混合する。
8. ホイルでマイクロプレートを覆い、室温で2分間〜5分間、インキュベートする。
9. プレートを読み取る。
10. 標準の平均値を用いて標準曲線を作製し、未知試料におけるDNA濃度を決定する。
【0165】
e. ゲノムDNA試料における対立遺伝子頻度の測定
様々な頻度で対立遺伝子を有するDNA試料は、異なるホモ接合性ゲノムDNA試料を異なる比率で混合することにより作製された。各プールは、合計240 ngのゲノムDNAを含み、反応は、上記のように、63℃で3時間、384ウェルプレートで行われた。測定されたシグナルは図26Aに示されている。対立遺伝子頻度は、FAMおよびRedレポーター色素により産生される相対的シグナルに基づいて計算され、図26Bにおいてグラフで示されている。これらのデータは、インベーダーアッセイデータから計算された対立遺伝子頻度と比較した、理論上または実際の対立遺伝子頻度(DNAの既知量を混合することにより作製されていることを意味される頻度)間の相関関係を示す。
【0166】
異なる個体のゲノムDNAの8通りのプールもまた試験された。8つのDNAのそれぞれは、8個の異なるSNP遺伝子座それぞれについて以前に特徴付けられており、そのプールにおける8個のSNPsそれぞれについての対立遺伝子頻度は知られていた。この試験において、各プールは、合計300 ngのゲノムDNAを含み、反応は、上記のように、63℃で3時間、384ウェルプレートにおいて行われた。FAMチャンネルについて測定されたシグナルは、各場合においてよりまれな対立遺伝子であるが、図27に示されている。グラフは、各対立遺伝子についての既知の頻度をインベーダーアッセイデータから計算された頻度と比較している。
【0167】
2つの異なるSNPs(SNP132505およびSNP131534)それぞれについてホモ接合性DNAは、異なる対立遺伝子頻度をもつゲノムのプールをシミュレートするために様々な比率で組合わされた。各プールは合計240 ngのゲノムDNAを含み、反応は、上記のように、63℃で3時間、384ウェルプレートにおいて行われた。対立遺伝子頻度は、FAMおよびRedレポーター色素により産生される相対的シグナルに基づいて計算され、図28Aおよび図28Bにおいてグラフで示されている。
【0168】
上記の試験に使用されるプローブおよび本発明の方法における使用に適したさらなるプローブセットは、図30A〜図30Cに示されている。
【0169】
上記明細書において挙げられているすべての発行物および特許は、本明細書に特別に述べられているのと同様に、参照として本明細書に組み入れられている。本発明記載の方法およびシステムの様々な改変および修正は、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、当業者にとって明白であると思われる。本発明は、特定の好ましい態様に関して記載されてきたが、主張される本発明がそのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際に、当業者にとって明らかであるような、本発明の実践のために記載された様式の様々な改変は、添付の特許請求の範囲内であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】インベーダー検出アッセイ法の態様の一つを示す。
【図2】入力標的配列ならびに、本発明のシステムおよびルーチンを用いてこの配列 を処理した結果を示す。
【図3】インベーダー医学的関連パネル(INVADER Medically Associated Panel)を用いる高度多重PCRについての基本的な作業の流れの一例を示す。
【図4】多重PCR法に有用なプライマーセットを作製するために行われうる段階の概略を示す流れ図を示す。
【図5】図5は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図6】図6は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図7】図7は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図8】図8は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図9】図9は、PCRプライマー設計実施例1に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図10A】図10Aは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図10B】図10Bは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図11】図11は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図12】図12は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図13−1】図13-1は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図13−2】図13-2は、図13-1の続きを示す図である。
【図13−3】図13-3は、図13-2の続きを示す図である。
【図14】図14は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図15−1】図15-1は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図15−2】図15-2は、図15-1の続きを示す図である。
【図16A】図16Aは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図16B】図16Bは、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図17】図17は、実施例2に関して使用された配列および作製されたデータを示す。
【図18−1】CYP2D6の様々な領域を増幅するために有用な、特定のPCRプライマーを示す。
【図18−2】図18-2は、図18-1の続きを示す図である。
【図19】本発明による多重PCR最適化のためのプロトコールの一つを示す。
【図20】インベーダーアッセイ法が、プールされた試料中のAPOC4遺伝子における突然変異を検出できることを実証するグラフを示す。
【図21】インベーダーアッセイ法が、プールされた試料中のCFTR遺伝子における突然変異を検出できることを実証するグラフを示す。
【図22】図22は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図23】図23は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図24】図24は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図25】図25は、プールされた試料-実施例3に記載された実験の結果のグラフを示す。
【図26】図26Aは、各遺伝子座のコピー数を示された割合(%)で含む対立遺伝子の検出に関するインベーダーアッセイ法において対立遺伝子シグナルを測定するデータを示す。図26Bは、理論上の対立遺伝子頻度を、図5Aに示されたインベーダーアッセイデータから計算される対立遺伝子頻度と比較するエクセル(Excel)グラフを示す。
【図27】8つの異なる個体由来のプールされたゲノムDNAにおいて検出される8個のSN遺伝子座それぞれについての実際のおよび計算された対立遺伝子頻度を比較するエクセル(Excel)グラフおよびデータを示す。
【図28】これらの対立遺伝子の異なる混合物を有するゲノムDNAにおけるSNP遺伝子座132505についてのフォールドオーバーゼロマイナス1(fold-over-zero minus 1)(FOZ-1)測定値と比較して計算された対立遺伝子頻度を示すエクセル(Excel)グラフおよびデータを示す。
【図29】これらの対立遺伝子の異なる混合物を有するゲノムDNAにおけるSNP遺伝子座131534についてのフォールドオーバーゼロマイナス1(fold-over-zero minus 1)(FOZ-1)測定と比較して計算された対立遺伝子頻度を示すエクセル(Excel)グラフおよびデータを示す。
【図30A】図30Aは、プールされた試料-実施例4に記載されたアッセイにおける使用のために構成されたプローブの配列および、各対立遺伝子についての合成標的を示す。「Y」とはアミンブロック基を示す。実施例4に記載された例示的アッセイ構成において使用された際の多型および各プローブについて検出されると考えられる色素が示されている。
【図30B】図30Bは、プールされた試料-実施例4に記載されたアッセイにおける使用のために構成されたプローブの配列および、各対立遺伝子についての合成標的を示す。「Y」とはアミンブロック基を示す。実施例4に記載された例示的アッセイ構成において使用された際の多型および各プローブについて検出されると考えられる色素が示されている。
【図30C】図30Cは、プールされた試料-実施例4に記載されたアッセイにおける使用のために構成されたプローブの配列および、各対立遺伝子についての合成標的を示す。「Y」とはアミンブロック基を示す。実施例4に記載された例示的アッセイ構成において使用された際の多型および各プローブについて検出されると考えられる色素が示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む方法:
a)各標的配列がi)フットプリント領域、ii)該フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)該フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を提供する段階;ならびに
b)プライマーセットが少なくともY個の標的配列それぞれについてのフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列を含み、該フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列それぞれが5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ該フォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]-3'が該プライマーセットにおける該フォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように該標的配列情報を処理する段階。
【請求項2】
プライマーセットが少なくともY個の単位複製配列を増幅する多重PCR反応を行うために構成され、該単位複製配列それぞれがフォワードプライマーおよびリバースプライマーの位置により定義される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プライマーセットがデジタル式のまたは印刷された配列情報として作製される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
プライマーセットが物理的なプライマーオリゴヌクレオチドとして作製される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'が、プライマーセットにおけるフォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[3]-N[2]-N[1]-3'にも相補的でない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
処理段階が、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
処理段階が、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域の相補における最も3'側のAまたはCとして最初に選択する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
フットプリント領域が一塩基多型を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
各標的配列についてのフットプリント領域が、一塩基多型を検出するために構成された1つまたは複数のアッセイプローブにハイブリダイズする標的配列の部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
処理段階が、アッセイ構成要素配列と80パーセント未満の相同性が存在するように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのN[5]-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'を選択する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
Yが2から500の間の整数である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
処理段階が、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度の標的配列に関する融解温度をもつように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのxを選択する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
フォワードプライマーおよびリバースプライマーの対の最適化濃度がプライマーセットについて決定される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法により作製される、プライマーセット。
【請求項15】
以下の段階を含む方法:
a)i)配列データを受け取るように設定されたユーザーインターフェース、およびii)多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションを内部に記憶しているコンピューターシステムを供給する段階;ならびに
b)配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、該標的配列のそれぞれはi)フットプリント領域、ii)該フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)該フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、該配列データを該ユーザーインターフェースから該コンピューターシステムへ送信する段階;ならびに
c)プライマーセットは、i)該Y個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の5'に隣接する該標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)該少なくともY個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の3'に隣接する該標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、該フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列のそれぞれは5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ該フォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]-3'は該プライマーセットにおける該フォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットを作製するために該標的配列情報を該多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションで処理する段階。
【請求項16】
プライマーセットが少なくともY個の単位複製配列を増幅する多重PCR反応を行うために構成され、該単位複製配列それぞれがフォワードプライマーおよびリバースプライマーの位置により定義される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
作製されるプライマーセットがデジタル式のまたは印刷された配列情報である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'が、プライマーセットにおけるフォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[3]-N[2]-N[1]-3'にも相補的でない、請求項15記載の方法。
【請求項19】
処理段階が、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
処理段階が、最初に選択する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項21】
フットプリント領域が一塩基多型を含む、請求項15記載の方法。
【請求項22】
各標的配列についてのフットプリント領域が、一塩基多型を検出するために構成された1つまたは複数のアッセイプローブにハイブリダイズする標的配列の部分を含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
Yが2から500の間の数である、請求項15記載の方法。
【請求項24】
処理段階が、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度の融解温度をもつように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのxを選択する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項25】
請求項15記載の方法により作製される、プライマーセット。
【請求項26】
以下を含むシステム:
a)ユーザーインターフェースが配列データを受け取るように設定され、該配列データが少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、該標的配列のそれぞれがi)フットプリント領域、ii)該フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)該フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、ユーザーインターフェースからデータを受け取るように設定されたコンピューターシステム;
b)多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションがプライマーセットを作製するために該標的配列情報を処理するように設定され、該プライマーセットがi)該Y個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の5'に隣接する該標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)該少なくともY個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の3'に隣接する該標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、該フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列のそれぞれが5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ該フォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]-3'は該プライマーセットにおける該フォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、該ユーザーインターフェースに操作可能に連結された多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーション;ならびに
c)コンピューターメモリーおよびコンピューター処理装置を含む、該多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションを内部に記憶しているコンピューターシステム。
【請求項27】
コンピューターシステムが、プライマーセットをユーザーインターフェースへ戻すように設定される、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度の融解温度をもつようにxが各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについて選択されるように、多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションが標的配列情報を処理するようにさらに設定される、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
以下の段階を含む、多型の対立遺伝子頻度を検出するための方法:
a)i)複数の個体由来の標的核酸配列を含む、プールされた試料、および
ii)多型の有無を検出するように構成されたインベーダー(INVADER)検出試薬
を供給する段階;ならびに
b)検出可能なシグナルを産生するために、該プールされた試料を該インベーダー検出試薬に接触させる段階;ならびに
c)該検出可能なシグナルを測定し、それにより該多型を含む該標的核酸配列の数を決定する段階。
【請求項30】
複数とは少なくとも10個の個体を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
少なくとも10個の個体とは少なくとも1000個の個体を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
以下の段階を含む、多型の対立遺伝子頻度を検出するための方法:
a)i)複数の個体由来の標的核酸配列を含む、プールされた試料、および
ii)該標的核酸配列における多型遺伝子座の各対立遺伝子について独特なシグナルを産生するために構成されたインベーダーアッセイ検出試薬
を供給する段階;ならびに
b)少なくとも1つの独特なシグナルを産生するために該プールされた試料を該インベーダー検出試薬に接触させる段階;ならびに
c)該少なくとも1つの独特なシグナルを測定し、それにより該プールされた試料内の該多型遺伝子座の各対立遺伝子の割合を決定する段階。
【請求項33】
測定段階が蛍光の検出を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
少なくとも2つの独特なシグナルが段階b)において産生され、かつ測定段階が少なくとも2つの独特なシグナルを比較する段階を含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
比較段階が、少なくとも1つの独特なシグナルの測定に補正因子を適用する段階を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
以下の段階を含む、まれな突然変異を検出するための方法:
a)i)少なくとも10,000個の標的核酸配列を含む、単一対象由来の試料、および
ii)野生型対立遺伝子と比較して1:1000またはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる、検出アッセイ法
を供給する段階;ならびに
b)まれな突然変異の有無が検出されるような条件下で、該試料を該検出アッセイ法を用いてアッセイする段階。
【請求項37】
以下の段階を含む、まれな突然変異を検出するための方法:
a)i)少なくとも10,000個の標的核酸配列を含む、単一対象由来の試料、および
ii)野生型対立遺伝子と比較した対立遺伝子頻度1:1000またはそれ未満で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる検出アッセイ法
を供給する段階;ならびに
b)該試料におけるまれな突然変異の対立遺伝子頻度が決定されるような条件下で、該試料を該検出アッセイ法を用いてアッセイする段階。
【請求項1】
以下の段階を含む方法:
a)各標的配列がi)フットプリント領域、ii)該フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)該フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を提供する段階;ならびに
b)プライマーセットが少なくともY個の標的配列それぞれについてのフォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列を含み、該フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列それぞれが5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ該フォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]-3'が該プライマーセットにおける該フォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットが作製されるように該標的配列情報を処理する段階。
【請求項2】
プライマーセットが少なくともY個の単位複製配列を増幅する多重PCR反応を行うために構成され、該単位複製配列それぞれがフォワードプライマーおよびリバースプライマーの位置により定義される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プライマーセットがデジタル式のまたは印刷された配列情報として作製される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
プライマーセットが物理的なプライマーオリゴヌクレオチドとして作製される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'が、プライマーセットにおけるフォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[3]-N[2]-N[1]-3'にも相補的でない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
処理段階が、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
処理段階が、各リバースプライマーについてのN[1]を3'領域の相補における最も3'側のAまたはCとして最初に選択する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
フットプリント領域が一塩基多型を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
各標的配列についてのフットプリント領域が、一塩基多型を検出するために構成された1つまたは複数のアッセイプローブにハイブリダイズする標的配列の部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
処理段階が、アッセイ構成要素配列と80パーセント未満の相同性が存在するように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのN[5]-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'を選択する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
Yが2から500の間の整数である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
処理段階が、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度の標的配列に関する融解温度をもつように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのxを選択する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
フォワードプライマーおよびリバースプライマーの対の最適化濃度がプライマーセットについて決定される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法により作製される、プライマーセット。
【請求項15】
以下の段階を含む方法:
a)i)配列データを受け取るように設定されたユーザーインターフェース、およびii)多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションを内部に記憶しているコンピューターシステムを供給する段階;ならびに
b)配列データは少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、該標的配列のそれぞれはi)フットプリント領域、ii)該フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)該フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、該配列データを該ユーザーインターフェースから該コンピューターシステムへ送信する段階;ならびに
c)プライマーセットは、i)該Y個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の5'に隣接する該標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)該少なくともY個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の3'に隣接する該標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、該フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列のそれぞれは5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ該フォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]-3'は該プライマーセットにおける該フォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、プライマーセットを作製するために該標的配列情報を該多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションで処理する段階。
【請求項16】
プライマーセットが少なくともY個の単位複製配列を増幅する多重PCR反応を行うために構成され、該単位複製配列それぞれがフォワードプライマーおよびリバースプライマーの位置により定義される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
作製されるプライマーセットがデジタル式のまたは印刷された配列情報である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
各フォワードプライマーおよびリバースプライマーのN[3]-N[2]-N[1]-3'が、プライマーセットにおけるフォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[3]-N[2]-N[1]-3'にも相補的でない、請求項15記載の方法。
【請求項19】
処理段階が、各フォワードプライマーについてのN[1]を5'領域における最も3'側のAまたはCとして最初に選択する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
処理段階が、最初に選択する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項21】
フットプリント領域が一塩基多型を含む、請求項15記載の方法。
【請求項22】
各標的配列についてのフットプリント領域が、一塩基多型を検出するために構成された1つまたは複数のアッセイプローブにハイブリダイズする標的配列の部分を含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
Yが2から500の間の数である、請求項15記載の方法。
【請求項24】
処理段階が、各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度の融解温度をもつように各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについてのxを選択する段階を含む、請求項15記載の方法。
【請求項25】
請求項15記載の方法により作製される、プライマーセット。
【請求項26】
以下を含むシステム:
a)ユーザーインターフェースが配列データを受け取るように設定され、該配列データが少なくともY個の標的配列についての標的配列情報を含み、該標的配列のそれぞれがi)フットプリント領域、ii)該フットプリント領域の上流に隣接した5'領域、およびiii)該フットプリント領域の下流に隣接した3'領域を含む、ユーザーインターフェースからデータを受け取るように設定されたコンピューターシステム;
b)多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションがプライマーセットを作製するために該標的配列情報を処理するように設定され、該プライマーセットがi)該Y個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の5'に隣接する該標的配列の少なくとも一部に同一であるフォワードプライマー配列、およびii)該少なくともY個の標的配列それぞれについての該フットプリント領域の3'に隣接する該標的配列の相補的配列の少なくとも一部に同一であるリバースプライマー配列を含み、該フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列のそれぞれが5'-N[x]-N[x-1]-....-N[4]-N[3]-N[2]-N[1]-3'により表される核酸配列を含み、Nはヌクレオチド塩基を表し、xは少なくとも6であり、N[1]はヌクレオチドAまたはCであり、かつ該フォワードプライマーおよびリバースプライマーそれぞれのN[2]-N[1]-3'は該プライマーセットにおける該フォワードプライマーおよびリバースプライマーのどのN[2]-N[1]-3'にも相補的でない、該ユーザーインターフェースに操作可能に連結された多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーション;ならびに
c)コンピューターメモリーおよびコンピューター処理装置を含む、該多重PCRプライマー対ソフトウェアアプリケーションを内部に記憶しているコンピューターシステム。
【請求項27】
コンピューターシステムが、プライマーセットをユーザーインターフェースへ戻すように設定される、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
各フォワードプライマーおよびリバースプライマーが摂氏約50度の融解温度をもつようにxが各フォワードプライマーおよびリバースプライマーについて選択されるように、多重PCRプライマーソフトウェアアプリケーションが標的配列情報を処理するようにさらに設定される、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
以下の段階を含む、多型の対立遺伝子頻度を検出するための方法:
a)i)複数の個体由来の標的核酸配列を含む、プールされた試料、および
ii)多型の有無を検出するように構成されたインベーダー(INVADER)検出試薬
を供給する段階;ならびに
b)検出可能なシグナルを産生するために、該プールされた試料を該インベーダー検出試薬に接触させる段階;ならびに
c)該検出可能なシグナルを測定し、それにより該多型を含む該標的核酸配列の数を決定する段階。
【請求項30】
複数とは少なくとも10個の個体を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
少なくとも10個の個体とは少なくとも1000個の個体を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
以下の段階を含む、多型の対立遺伝子頻度を検出するための方法:
a)i)複数の個体由来の標的核酸配列を含む、プールされた試料、および
ii)該標的核酸配列における多型遺伝子座の各対立遺伝子について独特なシグナルを産生するために構成されたインベーダーアッセイ検出試薬
を供給する段階;ならびに
b)少なくとも1つの独特なシグナルを産生するために該プールされた試料を該インベーダー検出試薬に接触させる段階;ならびに
c)該少なくとも1つの独特なシグナルを測定し、それにより該プールされた試料内の該多型遺伝子座の各対立遺伝子の割合を決定する段階。
【請求項33】
測定段階が蛍光の検出を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
少なくとも2つの独特なシグナルが段階b)において産生され、かつ測定段階が少なくとも2つの独特なシグナルを比較する段階を含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
比較段階が、少なくとも1つの独特なシグナルの測定に補正因子を適用する段階を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
以下の段階を含む、まれな突然変異を検出するための方法:
a)i)少なくとも10,000個の標的核酸配列を含む、単一対象由来の試料、および
ii)野生型対立遺伝子と比較して1:1000またはそれ未満の対立遺伝子頻度で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる、検出アッセイ法
を供給する段階;ならびに
b)まれな突然変異の有無が検出されるような条件下で、該試料を該検出アッセイ法を用いてアッセイする段階。
【請求項37】
以下の段階を含む、まれな突然変異を検出するための方法:
a)i)少なくとも10,000個の標的核酸配列を含む、単一対象由来の試料、および
ii)野生型対立遺伝子と比較した対立遺伝子頻度1:1000またはそれ未満で存在する標的核酸配列集団において突然変異を検出できる検出アッセイ法
を供給する段階;ならびに
b)該試料におけるまれな突然変異の対立遺伝子頻度が決定されるような条件下で、該試料を該検出アッセイ法を用いてアッセイする段階。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【公開番号】特開2007−306918(P2007−306918A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121088(P2007−121088)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【分割の表示】特願2002−547086(P2002−547086)の分割
【原出願日】平成13年11月30日(2001.11.30)
【出願人】(500228791)サード・ウェーブ・テクノロジーズ・インク (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【分割の表示】特願2002−547086(P2002−547086)の分割
【原出願日】平成13年11月30日(2001.11.30)
【出願人】(500228791)サード・ウェーブ・テクノロジーズ・インク (10)
【Fターム(参考)】
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