説明

増幅用光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、並びに、ファイバレーザ装置

【課題】 増幅用光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、並びに、ファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の増幅用光学部品AOPは、活性元素が添加されるコア31、及び、前記活性元素を励起するための励起光が入射されるクラッド32を含む増幅用光ファイバ30と、前記増幅用光ファイバ30の一端36と他端37との間のクラッド部分61に対して光学的に結合され、クラッド32を伝播する励起光の一部を往来させる迂回伝播用光ファイバ50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅用光ファイバを用いて、簡易な構成で励起光を効率的に吸収することができる増幅用光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、並びに、ファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅用光ファイバを用いたファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高い小さなビームスポットが得られ、更に、非接触加工が可能であることから、レーザ加工分野、医療分野などの様々な分野で用いられている。特に、加工分野や医療分野で用いられるファイバレーザ装置は、高出射化となっている。
【0003】
ファイバレーザ装置に用いられる増幅用光ファイバは、活性元素が添加されたコアと、コアの外周面を覆うクラッドとを備えている。このクラッドを伝播する励起光が活性元素に吸収された場合、活性元素が励起状態となることで、増幅用光ファイバのコアを伝播する被増幅光が増幅される。従って、活性元素に無駄なく励起光を吸収させることが望ましい。しかし、増幅用光ファイバに入射される励起光には、コアに添加される活性元素に吸収されながら伝播するものと、コアを通過することなく伝播するものとがある。一般に、コアを通過することなく伝播する励起光は、スキュー光と呼ばれている。
【0004】
このようなスキュー光を抑制する増幅用光ファイバとして、下記特許文献1又は特許文献2が提案されている。特許文献1の増幅用光ファイバでは、励起光が伝播するクラッド(第2コアと記載されている)の断面における外形が四角形にされている。また、特許文献2の増幅用光ファイバでは、増幅ファイバの一部に設けられる圧迫素子によってその一部のクラッドに小さな曲げが形成されている。これら増幅用光ファイバでは、励起光の伝播モードが乱れることでスキュー光が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3479219号公報
【特許文献2】特開2002−237637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1又は特許文献2に記載の増幅用光ファイバは、上記のようにクラッドを特別な形状に形成する必要があり、増幅用光ファイバを製造するための母材作製段階からスキュー光を抑制する特別な設計をする必要がある。また、特許文献2の増幅用光ファイバでは、圧迫素子の圧迫方向などに応じて、増幅用光ファイバの入力端に励起光が戻ることで励起光の損失が生じ、かえって、増幅用光ファイバでの励起光の増幅効率が低下してしまう。このため、増幅用光ファイバを用いて効率よく増幅可能な簡易な構成の増幅用光学部品が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、増幅用光ファイバでの励起光の増幅効率を簡易な構成で向上し得る増幅用光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、並びに、ファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の増幅用光学部品は、活性元素が添加されるコア、及び、前記活性元素を励起するための励起光が入射されるクラッドを含む増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの一端と他端との間のクラッド部分に対して光学的に結合され、前記クラッドを伝播する励起光の一部を往来させる迂回伝播用光ファイバとを備えることを特徴とするものである。
【0009】
この増幅用光学部品では、増幅用光ファイバのクラッド部分と、迂回伝播用光ファイバの光伝播路とが光学的に結合されているため、増幅用光ファイバのクラッドにおける光伝播条件は、光学的に結合されている部分と、それ以外の部分とで相違する。したがって、光結合部分では、クラッドを伝播するスキュー光の伝播モードに変化が生じ、この変化によって、クラッドを伝播するスキュー光が、コアを通過するものとして改善され低減することになる。また、光結合部分は、増幅用光ファイバの中間部位に形成されているため、増幅用光ファイバの端部に形成する場合に比べて、クラッドに対するスキュー光の伝播距離を短くしつつも、コアを通過するよう改善された励起光の伝播距離を長くすることができる。したがって、コアに対する励起光の通過効率が高められる。これに加えて、増幅用光ファイバを曲げることなく光結合部分が形成可能であるため、増幅用光ファイバでの励起光の強度分布の変移や、増幅用光ファイバの入力端に励起光が戻ることなどに起因する励起光の損失が大幅に抑制可能である。こうして、増幅用光ファイバでの励起光の増幅効率が向上される。一方、迂回伝播用光ファイバは、一般に用いられる光ファイバでも良いので、増幅用光ファイバに対する特別な設計をその母材作成段階から要することなく、増幅用光学部品が簡易に構成可能である。
【0010】
なお、本明細書において、「光学的に結合」とは、光が伝播可能な状態にあることを意味する。
【0011】
また、前記迂回伝播用光ファイバは、長手方向へ非端状態として連なるループ構造とされ、前記迂回伝播用光ファイバの一部は、前記クラッド部分の長手方向に沿う状態で、そのクラッド部分に対して光学的に結合されることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、迂回伝播用光ファイバを経由する励起光は、増幅用光ファイバから光結合部分を介して迂回伝播用光ファイバに入射するときと、迂回伝播用光ファイバから光結合部分を介して増幅用光ファイバに出射するときの少なくとも2回にわたって、光結合部分を通る。したがって、このような増幅用光学部品によれば、スキュー光の低減効率がより一段と向上される。
【0013】
或いは、前記迂回伝播用光ファイバの一端は、前記クラッドを伝播する励起光の伝播方向に対向する状態で、前記クラッド部分に対して光学的に結合され、前記迂回伝播用光ファイバの他端は、前記クラッドを伝播する励起光の伝播方向に沿う状態で、前記迂回伝播用光ファイバの一端が結合されるクラッド部分と、前記増幅用光ファイバの出力端との間のクラッド部分に対して光学的に結合されることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、迂回伝播用光ファイバの一端側の光結合部分においてスキュー光が低減され、他端側の光結合部分において、一端側の光結合部分において改善できなかったスキュー光や、新たに生じたスキュー光が低減される。したがって、このような増幅用光学部品によれば、低減効率がより一段と向上される。
【0015】
或いは、前記迂回伝播用光ファイバの一端は、前記クラッドを伝播する励起光の伝播方向に対向する状態で、前記クラッド部分に対して光学的に結合され、前記迂回伝播用光ファイバの他端は、前記迂回伝播用光ファイバの一端が結合されるクラッド部分と、前記増幅用光ファイバの入力端との間のクラッド部分に対して光学的に結合されることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、迂回伝播用光ファイバを伝播する励起光は、迂回伝播用光ファイバの一端側の光結合部分から、その光結合部分よりも増幅用光ファイバの入力端寄りとなる他端側の光結合部分に戻されることになる。このため、迂回伝播用光ファイバを伝播する励起光は、一端と他端との間を増幅用光ファイバを介して回帰的にループし、複数にわたって光結合部分を通る。したがって、このような増幅用光学部品によれば、スキュー光の低減効率がより一段と向上される。
【0017】
また、前記ループ構造とされる迂回伝播用光ファイバは、複数有し、各前記迂回伝播用光ファイバの一部は、前記増幅用光ファイバの一端と他端との間において互いに異なる複数のクラッド部分に対して、当該クラッド部分の長手方向に沿う状態で光学的に結合されることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、増幅用光ファイバのクラッドに対して迂回伝播用光ファイバの光結合部分が複数存在することになるため、そのクラッドを伝播する励起光の伝播モードが変化する機会が、光結合部分を単一とする場合に比べて増加することになる。したがって、このような増幅用光学部品によれば、光結合部分を単一とする場合に比べて、より一段とスキュー光が低減される。
【0019】
また、前記ループ構造とされる迂回伝播用光ファイバにおける複数の部分が、前記増幅用光ファイバの一端と他端との間において互いに異なる複数のクラッド部分に対して、当該クラッド部分の長手方向に沿う状態で光学的に結合されることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、増幅用光ファイバのクラッドに対して迂回伝播用光ファイバの光結合部分が複数存在することになる。これに加えて、迂回伝播用光ファイバがループ構造であるため、迂回伝播用光ファイバを伝播する励起光は、複数の光結合部分のいずれかを介して様々なループ経路で回帰的にループし、複数にわたって光結合部分を通ることになる。したがって、このような増幅用光学部品によれば、光結合部分を単一とする場合に比べて、より一段とスキュー光が低減される。
【0021】
また、前記迂回伝播用光ファイバの一端と、前記迂回伝播用光ファイバの他端とには、前記迂回伝播用光ファイバの軸に対して斜めとなる傾斜面が形成され、前記傾斜面が前記クラッド部分の外周面に対向されることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、傾斜面が非形成である場合に比べて、増幅用光ファイバのクラッドに対する、光ファイバの一端及び他端の対向面積が増加する。このため、傾斜面が非形成である場合に比べて、光結合部分でのクラッドの光伝播条件と、結合部分以外でのクラッドの光伝播条件とが相違の程度が大きいことにより、光結合部分においてクラッドを伝播する励起光の進行方向がより大きく変化することになる。したがって、このような増幅用光学部品によれば、傾斜面が非形成である場合に比べて、より一段とスキュー光が低減される。
【0023】
また、前記光学的に結合される部分は、融着により一体として形成されることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、単に当接する場合などに比べて、光結合部分の乱れが大きく生じることにより、光結合部分においてクラッドを伝播する励起光の伝播モードがより大きく変化することになる。したがって、このような増幅用光学部品によれば、単に当接する場合などに比べて、より一段とスキュー光が低減される。
【0025】
本発明の光ファイバ増幅器は、上記いずれかに記載の増幅用光学部品と、前記クラッドに対して前記励起光を出射する励起光源とを備えることを特徴とするものである。
【0026】
このような光ファイバ増幅器によれば、増幅用光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収することができるので、同じパワーの励起光源であっても、より高い増幅率とすることができる。
【0027】
本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかに記載の増幅用光学部品と、前記クラッドに対して前記励起光を出射する励起光源と、前記コアに対して種光を出射する種光源とを備えることを特徴とするものである。
【0028】
このようなファイバレーザ装置は、増幅用光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収するとこができるため、種光の増幅効率が高いMO−PA(Master Oscillator - Power Amplifier)型のファイバレーザ装置とすることができる。
【0029】
或いは、本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかに記載の増幅用光学部品と、前記クラッドに対して前記励起光を出射する励起光源と、前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ、前記活性元素が放出する光の少なくとも一部を反射するミラーと、前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ、前記第1ミラーが反射する光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーとを備えることを特徴とするものである。
【0030】
このようなファイバレーザ装置は、増幅用光学部品において、上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバが効率よく励起光を吸収するとこができるため、増幅効率が高い共振型のファイバレーザ装置とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、増幅用光ファイバでの励起光の増幅効率を簡易な構成で向上し得る増幅用光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、及び、ファイバレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図2】図1の増幅用光ファイバの長手方向に垂直となる断面図である。
【図3】図1の迂回伝播用光ファイバの長手方向に垂直となる断面図である。
【図4】図1の光結合部の拡大図である。
【図5】図4のV−V線を通る断面図である。
【図6】増幅用光ファイバの長さに応じた励起光吸収量を、光結合部がある場合とない場合とで実験した結果を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る増幅用光学部品を示す図である。
【図8】図7の光結合部の拡大図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る増幅用光学部品を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る増幅用光学部品を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る増幅用光学部品を示す図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【図13】増幅用光学部品の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、ファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置を示す式である。
【0035】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、例えばMO−PA型のファイバレーザ装置であり、種光を出射する種光源10と、種光を増幅する光ファイバ増幅器5とを備えている。
【0036】
光ファイバ増幅器5は、励起光を出射する励起光源20と、種光及び励起光が入射される増幅用光学部品AOPと、増幅用光学部品AOPに種光及び励起光を入射するためのコンバイナ40と、を主な構成として備えている。増幅用光学部品AOPは、増幅用光ファイバ30と、増幅用光ファイバ30の中間部位に結合される迂回伝播用光ファイバ50とからなる。
【0037】
種光源10は、例えば、レーザダイオードから成るレーザ光源や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。この種光源10から出射される種光は、特に制限されるものではないが、例えば、後述のように増幅用光ファイバ30にイッテルビウム(Yb)が添加される場合、波長が1070nmのレーザ光とされる。また、種光源10は、コア、及び、コアを被覆するクラッドから構成される種光用ファイバ15に接続されており、種光源10から出射される種光は、種光用ファイバ15のコアを伝播する。種光用ファイバ15としては、例えば、シングルモードファイバが挙げられ、この場合、種光は種光用ファイバ15をシングルモード光として伝播する。
【0038】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成される。それぞれのレーザダイオード21から出射される励起光は、特に制限されるものではないが、例えば、後述のように増幅用光ファイバ30にYbが添加される場合、波長が915nmのレーザ光とされる。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は、励起光用ファイバ22に接続されており、レーザダイオード21から出射される励起光は、励起光用ファイバ22を伝播する。励起光用ファイバ22としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、励起光は励起光用ファイバ22をマルチモード光として伝播する。
【0039】
図2は、図1の増幅用光ファイバ30の長手方向に垂直となる断面図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ30は、コア31と、コア31を被覆するクラッド32と、クラッド32を被覆する外部クラッド33と、外部クラッド33を被覆する被覆層34とから構成される。また、本実施形態では、コア31、外部クラッド33、及び、被覆層34の断面における外形は円形とされ、クラッド32の断面における外形は非円形とされている。なお、本実施の形態では、クラッド32の断面における外形は略正多角形とされる。
【0040】
クラッド32の屈折率はコア31の屈折率よりも低く、外部クラッド33の屈折率はクラッド32の屈折率よりもさらに低くされている。このような、コア31を構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等の元素、及び、励起光源20から出射される励起光により励起されるYb等の活性元素が添加された石英が挙げられる。活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等を挙げることができる。また、クラッド32を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英を挙げることができる。なお、コア31の材料に屈折率を上昇させるGe等の元素が添加されない場合、クラッド32の材料には、屈折率を低下させるフッ素(F)等が添加される。一方、外部クラッド33を構成する材料としては例えば樹脂が挙げられ、具体的には、紫外線硬化樹脂が挙げられる。他方、被覆層34を構成する材料としては、例えば、外部クラッド33を構成する樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0041】
コンバイナ40は、増幅用光ファイバ30の一端36において、種光用ファイバ15及びそれぞれの励起光用ファイバ22と、増幅用光ファイバ30とを接続している。具体的には、コンバイナ40において、種光用ファイバ15のコアが、増幅用光ファイバ30のコア31に端面接続され、さらに、それぞれの励起光用ファイバ22のコアが、クラッド32に端面接続されている。従って、種光源10から出射する種光、及び、励起光源20から出射する励起光は、増幅用光ファイバ30の一端36を入射端として、それぞれ、コア31及びクラッド32に入射する。なお、増幅用光ファイバ30の他端37は、出射端とされている。
【0042】
図3は、図1の迂回伝播用光ファイバ50の長手方向に垂直となる断面図である。図3に示すように、迂回伝播用光ファイバ50は、コア51と、コア51を被覆するクラッド52とから構成される。このクラッド52の断面における外形は、増幅用光ファイバ30のクラッド32と異なり、円形とされる。
【0043】
コア51の屈折率は、増幅用光ファイバ30のクラッド32の屈折率と同等とされ、迂回伝播用光ファイバ50のクラッド52の屈折率よりも高くされている。このようなコア51を構成する材料として、例えば、上述した増幅用光ファイバ30のクラッド32と同じものを挙げることができる。
【0044】
また、迂回伝播用光ファイバ50は、図1に示すように、長手方向へ非端状態として連なるループ構造とされており、その一部は、増幅用光ファイバ30の中間部位と一体化された光結合部61として形成されている。
【0045】
図4は、図1の光結合部61の拡大図であり、図5は、図4のV−V線を通る断面図である。図4、図5に示すように、光結合部61では、迂回伝播用光ファイバ50のクラッド52と、増幅用光ファイバ30の外部クラッド33及び被覆層34とが剥離され、迂回伝播用光ファイバ50のコア51と、増幅用光ファイバ30のクラッド32とが露出している。
【0046】
これらコア51の露出部分とクラッド32の露出部分とが沿った状態で、これら露出部分の少なくとも一部が融着され、露出部分同士が一体として結合されている。従って、光結合部61では、コア51とクラッド32とを相互に光が伝播可能になっている。この露出部分の長さLは、例えば数mm〜数十mmの範囲で選定される。ただし、この範囲外であっても良い。
【0047】
また、コア51及びクラッド32双方の露出部分は、樹脂69により被覆されている。樹脂69の屈折率は、クラッド32の屈折率よりも低くされ、このような樹脂69としては、例えば、外部クラッド33と同様の樹脂を挙げることができる。
【0048】
次にファイバレーザ装置1の動作について説明する。
【0049】
まず、種光源10から被増幅光としての種光が出射されると共に、励起光源20から励起光が出射される。上述のように、種光の波長は、例えば1070nmとされ、励起光の波長は、例えば915nmとされる。
【0050】
種光源10から出射した種光は、種光用ファイバ15を介してコンバイナ40に入射し、コンバイナ40によって増幅用光ファイバ30の一端36からコア31に入射され、コア31を伝播する。一方、各励起光源20から出射した励起光は、励起光用ファイバ22を介してコンバイナ40に入射し、コンバイナ40によって増幅用光ファイバ30の一端36からクラッド32に入射され、クラッド32を伝播する。
【0051】
上述したように、クラッド32の中間部位では、迂回伝播用光ファイバ50のコア51の一部が光学的に結合する光結合部61が形成されている。この結合に起因して、光結合部61でのクラッド32の光伝播条件は、光結合部61以外のクラッド32での光伝播条件と異なっている。特に、本実施形態の光結合部61は、クラッド32とコア51とを融着により一体として結合したものであるため、その結合部分には乱れが大きく生じているものである。したがって、クラッド32とコア51とを単に当接する場合などに比べて、光結合部61でのクラッド32の光伝播条件と、光結合部61以外のクラッド32での光伝播条件とは、より一段と大きく異なっている。
【0052】
このため、光結合部61のクラッド32を伝播する励起光はその伝播モードが変化し、この変化に起因して、クラッド32の入力端から光結合部61までの間に発生したスキュー光が、コア31を通過する励起光として改善される。この結果、クラッド32を伝播する励起光に含まれるスキュー光は低減することになる。
【0053】
また、光結合部61のクラッド32を伝播する励起光の一部は迂回伝播用光ファイバ50のコア51に入射する。この迂回伝播用光ファイバ50はループ構造とされているため、コア51に入射した励起光は少なくとも1回以上周回した後に光結合部61からクラッド32の出力端側へ出射する。したがって、迂回伝播用光ファイバ50のコア51を伝播する励起光は、少なくとも入射時と出射時の2回にわたって光結合部61を通る。この結果、迂回伝播用光ファイバ50を経由する励起光に含まれるスキュー光は、非経由の励起光に比べてより一段と低減することになる。
【0054】
一方、増幅用光ファイバ30のコア31を伝播する種光は、そのコア31に添加されている活性元素の誘導放出により増幅され、出射光として増幅用光ファイバ30の他端37から出射される。なお、活性元素の誘導放出は、コア31を通過する励起光により引き起こされる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の増幅用光学部品AOPによれば、増幅用光ファイバ30のクラッド32の一部に対して、迂回伝播用光ファイバ50のコア51が融着により一体に結合され、光結合部61が形成されている。このため、光結合部61でのクラッド32の光伝播条件と、光結合部61以外のクラッド32での光伝播条件とが相違することになる。したがって、光結合部61のクラッド32を伝播する励起光の伝播モードが変化し、この変化によって、光結合部61に到達するまでに発生したスキュー光が低減されることになる。これに加えて、増幅用光ファイバ30を曲げることなく光結合部61が形成可能であるため、増幅用光ファイバ30での励起光の強度分布の変移や、増幅用光ファイバ30入力端に励起光が戻ることなどに起因する増幅用光ファイバ30での励起光の損失が未然に防止される。こうして、増幅用光ファイバ30での増幅効率が向上される。
【0056】
また、光結合部61は、中間部位に形成されている。このため、増幅用光ファイバ30の端部に光結合部61を形成する場合に比べて、クラッド32に対するスキュー光の伝播距離を短くしつつも、コア31を通過するよう改善された励起光の伝播距離を長くすることができる。これに加えて、増幅用光ファイバ30に形成すべき光結合部61の位置に応じて、クラッド32に対する、スキュー光の伝播距離と、コア31を通過するよう改善された励起光の伝播距離との調整が可能となる。
【0057】
さらに、光結合部61として、増幅用光ファイバ30の中間部位に光結合される迂回伝播用光ファイバ50は、ループ構造とされている。このため、迂回伝播用光ファイバ50のコア51を伝播する励起光は、少なくとも入射時と出射時の2回にわたって光結合部61を通る。この結果、迂回伝播用光ファイバ50を経由する励起光に含まれるスキュー光は、非経由の励起光に比べてより一段と低減される。なお、このことは、迂回伝播用光ファイバ50のクラッド32の外形を特別な形状にすることなく実現可能である。
【0058】
なお、増幅用光ファイバ30の長さに応じた励起光吸収量を、光結合部61がある場合とない場合とで実験した結果を図6に示す。この実験では、増幅用光ファイバ30における被覆層34の外径が650μmとされ、クラッド32の径が400μmとされ、コア31にはYbが添加された。一方、迂回伝播用光ファイバ50のクラッド52の径が250μmとされ、コア51の径が105μmとされた。また、光結合部61は、増幅用光ファイバ30の全長の半分となる位置に形成され、その光結合部61におけるコア51の露出部分とクラッド32の露出部分との長さLは10mmとされ、励起光の波長は915nmとされた。この図6からも明らかなように、光結合部61を形成した場合には、非形成の場合に比べてスキュー光が低減され、その低減量については増幅用光ファイバ長が長いほど顕著に大きくなることが確認されている。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7及び図8を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図7は、本発明の第2実施形態に係る増幅用光学部品を示す図であり、図8は、図7の光結合部62A,62Bの拡大図である。
【0060】
本実施形態の増幅用光学部品AOPは、第1実施形態の増幅用光学部品AOPに代えて備えられるものであり、第1実施形態と同様の増幅用光ファイバ30と、迂回伝播用光ファイバ55とを有している。この迂回伝播用光ファイバ55は、図7に示すように、非ループ構造とされている点で、ループ構造とされた第1実施形態の迂回伝播用光ファイバ50とは異なっている。
【0061】
また、この迂回伝播用光ファイバ55の一端は、増幅用光ファイバ30の中間部位と一体化された光結合部62Aとして形成され、他端は、光結合部62Aよりも増幅用光ファイバ30の出力端側となる他の中間部位と一体化された光結合部62Bとして形成されている。
【0062】
図8に示すように、光結合部62A,62Bにおける増幅用光ファイバ30のクラッド32は、第1実施形態と同様に、外部クラッド33及び被覆層34が剥離されて露出している。これに対し、光結合部62A,62Bにおける迂回伝播用光ファイバ55のコア51は、第1実施形態と異なっている。
【0063】
すなわち、光結合部62Aでは一方の端部のクラッド52が剥離されてコア51が露出し、光結合部62Bでは他方の端部のクラッド52が剥離されてコア51が露出している。これら双方の露出部分にはコア51の軸AXに対して斜めとなる傾斜面IFA,IFBが形成されている。
【0064】
そして、光結合部62Aでは、コア51の傾斜面IFAがクラッド32の露出部分の外周面に対向し、かつ、コア51の先端が増幅用光ファイバ30のクラッド32を伝播する励起光の伝播方向SDに対向する状態で、コア51及びクラッド32の露出部分の少なくとも一部が融着される。従って、光結合部62Aでは、クラッド32からコア51へ光が伝播可能になっている。
【0065】
一方、光結合部62Bでは、コア51の傾斜面IFBがクラッド32の露出部分の外周面に対向し、かつ、コア51の先端がクラッド32を伝播する励起光の伝播方向SDに沿う状態で、コア51及びクラッド32の露出部分の少なくとも一部が融着される。従って、光結合部62Bでは、コア51からクラッド32へ光が伝播可能になっている。
【0066】
なお、傾斜面の傾斜角度θは特に限定されないが、クラッド32からコア51へ効率よく光を伝播する観点では、コア51の軸AXに対して浅い角度であるほうが好ましい。また、光結合部62A,62Bにおける露出部分は、第1実施形態と同様に、クラッド32よりも低い屈折率となる樹脂69により被覆される。
【0067】
以上のように本実施形態の増幅用光学部品AOPによれば、増幅用光ファイバ30のクラッド32の中間部位に対して、迂回伝播用光ファイバ55のコア51の一端が融着により一体に結合され、光結合部62Aが形成される。また、光結合部62Aと、増幅用光ファイバ30の出力端との中間部位に対して、迂回伝播用光ファイバ55のコア51の他端が融着により一体に結合され、光結合部62Bが形成されている。
【0068】
このため、光結合部62A,62Bでのクラッド32の光伝播条件と、光結合部62A,62B以外のクラッド32での光伝播条件とが相違し、これにより光結合部62A,62Bのクラッド32を伝播する励起光の伝播モードが変化する。したがって、光結合部62Aにおいてスキュー光が低減され、光結合部62Bにおいて、光結合部62Aで改善できなかったスキュー光や、新たに生じたスキュー光が低減される。なお、迂回伝播用光ファイバ55のコア51を伝播する励起光は、入射時には光結合部62Aを通り出射時には光結合部62Bを通るため、迂回伝播用光ファイバ55を経由する励起光に含まれるスキュー光は、非経由の励起光に比べてより一段と低減される。
【0069】
これに加えて、増幅用光ファイバ30を曲げることなく光結合部62A,62Bが形成可能であるため、増幅用光ファイバ30での励起光の強度分布の変移や損失が未然に防止される。こうして、増幅用光ファイバ30での増幅効率が向上される。
【0070】
さらに、光結合部62Aとして、増幅用光ファイバ30の中間部位に光結合される迂回伝播用光ファイバ55の一端は、クラッド32の伝播方向SDに対向する状態で融着されている。また、光結合部62Bとして、増幅用光ファイバ30の中間部位に光結合される迂回伝播用光ファイバ55の他端は、クラッド32の伝播方向SDに沿う状態で、その一端は、クラッド32の伝播方向SDに沿う状態で融着されている。
【0071】
このため、光結合部62A,62Bでの励起光の逆伝播が低減され、この結果、光ファイバ30の入力端に戻ることに起因する励起光の損失が低減される。
【0072】
増幅用光ファイバ30に融着される迂回伝播用光ファイバ55の一端及び他端には、コア51の軸AXに対して斜めとなる傾斜面IFA,IFBが形成され、その傾斜面IFA,IFBが迂回伝播用光ファイバ55のクラッドの外周に対向されている。
【0073】
このため、増幅用光ファイバ30のクラッド32に対する、迂回伝播用光ファイバ55の一端及び他端の接合面積が増加することになる。したがって、傾斜面IFA,IFBを非形成とする場合に比べて、光結合部62A,62Bのクラッド32を伝播する励起光に対する進行方向の変化の程度を大きくすることができ、この結果、より一段とスキュー光が低減される。これに加えて、傾斜面IFA,IFBを非形成とする場合に比べて、光ファイバ30の入力端に戻ることに起因する励起光の損失がより一段と低減される。なお、本実施形態の増幅用光学部品AOPの場合にも、第1実施形態と同程度にスキュー光が低減したことが確認されている。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図9を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図9は、本発明の第3実施形態に係る増幅用光学部品を示す図である。
【0075】
本実施形態の増幅用光学部品AOPは、第1実施形態の増幅用光学部品AOPに代えて備えられるものである。本実施形態の増幅用光学部品AOPでは、増幅用光ファイバ30の中間位置に形成される光結合部62A,62Bの形成位置が、第2実施形態の増幅用光学部品AOPと異なっている。
【0076】
すなわち、第2実施形態の増幅用光学部品AOPでは、上述したように、増幅用光ファイバ30の入力端寄りに光結合部62Aが形成され、増幅用光ファイバ30の出力端寄りに光結合部62Bが形成されていた。これに対し、本実施形態の増幅用光学部品AOPでは、図9に示すように、増幅用光ファイバ30の出力端寄りに光結合部62Aが形成され、増幅用光ファイバ30の入力端寄りに光結合部62Bが形成されている。
【0077】
光結合部62Aでは、第2実施形態と同様に、コア51の傾斜面IFAがクラッド32の露出部分の外周面に対向し、かつ、コア51の先端がクラッド32を伝播する励起光の伝播方向SDに対向する状態で、コア51及びクラッド32の露出部分の少なくとも一部が融着される。一方、光結合部62Bでも、第2実施形態と同様に、コア51の傾斜面IFBがクラッド32の露出部分の外周面に対向し、かつ、コア51の先端がクラッド32を伝播する励起光の伝播方向SDに沿う状態で、コア51及びクラッド32の露出部分の少なくとも一部が融着される。
【0078】
以上のように本実施形態の増幅用光学部品AOPによれば、増幅用光ファイバ30のクラッド32の中間部位に対して、迂回伝播用光ファイバ55のコア51の一端が融着により一体に結合され、光結合部62Aが形成される。また、光結合部62Aと、増幅用光ファイバ30の入力端との中間部位に対して、迂回伝播用光ファイバ55のコア51の他端が融着により一体に結合され、光結合部62Bが形成されている。
【0079】
このため、光結合部62A,62Bでのクラッド32の光伝播条件と、光結合部62A,62B以外のクラッド32での光伝播条件とが相違し、これにより光結合部62A,62Bのクラッド32を伝播する励起光の伝播モードが変化する。したがって、光結合部62Aまでに発生したスキュー光が低減される。
【0080】
なお、迂回伝播用光ファイバ55のコア51を伝播する励起光は、増幅用光ファイバ30の光結合部62Aから、その光結合部62Aよりも入力端側に存在する光結合部62Bを経るため、増幅用光ファイバ30の出力端側から入力端側に戻されることになる。したがって、迂回伝播用光ファイバ55のコア51を伝播する励起光は、光結合部62Aと62Bとの間を増幅用光ファイバ30を介して回帰的にループし、複数にわたって光結合部を通る。この結果、光結合部62Aまでに発生したスキュー光がより一段と低減されるのみならず、光結合部62Bから62Aまでの間で新たに発生したスキュー光も低減される。なお、このことは、迂回伝播用光ファイバ55のクラッド32の外形を特別な形状にすることなく実現可能である。なお、本実施形態の増幅用光学部品AOPの場合にも、第1実施形態と同程度にスキュー光が低減したことが確認されている。
【0081】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図10を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図10は、本発明の第4実施形態に係る増幅用光学部品を示す図である。
【0082】
本実施形態の増幅用光学部品AOPは、第1実施形態の増幅用光学部品AOPに代えて備えられるものであり、第1実施形態における増幅用光学部品AOPの増幅用光ファイバ30に形成される光結合部61を複数有している。
【0083】
すなわち、図10に示すように、増幅用光ファイバ30のクラッド32の中間部位には、迂回伝播用光ファイバ50のコア51の一部と光学的に結合する光結合部61A〜61Cが、一定の間隔ごとに形成されている。ただし、光結合部61を形成すべき間隔が任意の間隔とされていても良い。
【0084】
このような増幅用光学部品AOPによれば、増幅用光ファイバ30のクラッド32を伝播する励起光の伝播モードが変化する機会が、増幅用光ファイバ30の出力端に至るまでに複数存在することになる。したがって、第1実施形態の場合に比べて、より一段とスキュー光が低減される。
【0085】
なお、本実施形態の増幅用光学部品AOPの場合、第1実施形態よりも顕著にスキュー光が低減したことが確認されている。具体的には、例えば、全長10mである増幅用光ファイバ30の一端36から3mの位置と6mの位置に光結合部61を形成し、それ以外については、上記図7に示す場合と同一条件で測定された励起光の吸収量は20dBであった。これに対し、全長10mである増幅用光ファイバ30の中間部位に1つの光結合部61を形成した場合の吸収量は、図7に示すように、15dBであった。
【0086】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図11を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図11は、本発明の第5実施形態に係る増幅用光学部品を示す図である。
【0087】
本実施形態の増幅用光学部品AOPは、第1実施形態の増幅用光学部品AOPに代えて備えられるものであり、第4実施形態における複数の光結合部61A〜61Cそれぞれの迂回伝播用光ファイバ50を連結して1本のループ構造としたものとなっている。
【0088】
すなわち、図11に示すように、この実施形態の迂回伝播用光ファイバ56は、長手方向へ非端状態として連なるループ構造とされる。また、迂回伝播用光ファイバ56におけるコア51と、増幅用光ファイバ30におけるクラッド32の中間部位とは所定間隔ごとに露出される。そして、各露出部分同士の少なくとも一部が融着されて、それぞれの露出部分同士が一体に結合された光結合部61A〜61Cが形成されている。ただし、光結合部61A〜61Cを形成すべき間隔が任意の間隔とされていても良く、コア51の露出間隔とクラッド32の露出間隔の双方又は一方が任意の間隔とされても良い。
【0089】
以上のように本実施形態の増幅用光学部品AOPによれば、第4実施形態と同様に、増幅用光ファイバ30のクラッド32を伝播する励起光の伝播モードが変化する機会が、増幅用光ファイバ30の出力端に至るまでに複数存在することになる。したがって、第1実施形態の場合に比べて、より一段とスキュー光が低減される。
【0090】
また、各光結合部61A〜61Cとして、増幅用光ファイバ30に光結合される迂回伝播用光ファイバ56は1本のループ構造となっている。このため、各光結合部61A〜61Cを介して迂回伝播用光ファイバ56のコア51を伝播する励起光の伝播経路は多岐にわたる。
【0091】
例えば、迂回伝播用光ファイバ56のコア51を伝播する励起光は、増幅用光ファイバ30の最も出力端側にある光結合部61Cから、その光結合部62Cよりも入力端側に存在する光結合部61A又は61Bのいずれかを経て増幅用光ファイバ30に戻される。したがって、迂回伝播用光ファイバ56のコア51を伝播する励起光は、光結合部61A〜61Cのいずれかを介して様々なループ経路で回帰的にループし、複数にわたって光結合部を通る。この結果、光結合部62Aまでに発生したスキュー光がより一段と低減されるのみならず、各光結合部間で新たに発生したスキュー光も低減される。なお、このことは、迂回伝播用光ファイバ56のクラッド32の外形を特別な形状にすることなく実現可能である。なお、本実施形態の増幅用光学部品AOPの場合にも、第4実施形態と同程度以上にスキュー光が低減したことが確認されている。
【0092】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図12を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図12は、本発明の第6実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0093】
図12に示すように、本実施形態のファイバレーザ装置2は、光ファイバ増幅器5と、増幅用光ファイバ30の一端36側に接続される第1共振用ファイバ16と、第1共振用ファイバ16に設けられる第1ミラーとしての第1FBG(Fiber Bragg Grating)81と、増幅用光ファイバ30の他端37側に接続される第2共振用ファイバ17と、第2共振用ファイバ17に設けられる第2ミラーとしての第2FBG82とを主な構成として備える。このように、本実施形態のファイバレーザ装置2は、共振型のファイバレーザ装置とされる。
【0094】
第1共振用ファイバ16は、例えば、第1実施形態における種光用ファイバ15と同様の構成とされ、一端が種光用ファイバ15と同様にして、コンバイナ40で増幅用光ファイバ30に接続されている。また、第1共振用ファイバ16の他端には、無反射終端19が設けられている。さらに、第1共振用ファイバ16のコアには、第1FBG81が形成されている。こうして第1FBG81は、増幅用光ファイバ30の一端36側に設けられている。第1FBG81は、第1共振用ファイバ16の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG81は、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ30の活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長を反射するように構成されている。第1FBG81は、上述のように活性元素がYbである場合、例えば1070nmにおいて反射率が100%とされる。
【0095】
また、増幅用光ファイバ30の他端37には、第2共振用ファイバ17が接続されている。第2共振用ファイバ17は、例えば、第1共振用ファイバと同様の構成とされ、第2共振用ファイバ17のコアが増幅用光ファイバ30のコアと結合している。第2共振用ファイバ17のコアには、第2FBG82が設けられている。こうして第2FBG82は、増幅用光ファイバ30の他端37側に設けられている。第2FBG82は、第2共振用ファイバ17の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG81が反射する光と同じ波長の光を第1FBG81よりも低い反射率で反射するように構成され、例えば、第1FBG81が反射する光と同じ波長の光が50%の反射率で反射されるように構成されている。
【0096】
このようなファイバレーザ装置2においては、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出射されると、この励起光がコンバイナ40において、増幅用光ファイバ30のクラッド32に入射する。そして、第1実施形態と同様にして、増幅用光ファイバ30のコア31に添加されている活性元素を励起状態とする。そして励起状態とされた活性元素は、特定の波長の自然放出光を放出する。このときの自然放出光は、例えば、中心波長が1070nmで一定の帯域を有する光である。この自然放出光は、増幅用光ファイバ30のコア31を伝播して、第1共振用ファイバ16のコアに形成さているいる第1FBG81により反射され、反射された光が、増幅用光ファイバ30のコア31を介して、第2共振用ファイバ17に形成されている第2FBG82まで伝播し、第2FBG82で反射されて、光の共振が生じる。そして、光が、増幅用光ファイバ30のコア31を伝播するときに増幅されて、一部の光が第2FBG82を透過して、第2共振用ファイバ17から出射される。
【0097】
本実施形態のファイバレーザ装置2によれば、光ファイバ増幅器5の増幅用光学部品AOPにおいて上述のようにスキュー光が低減され、増幅用光ファイバ30が効率よく励起光が吸収される。このため、増幅効率が高い共振型のファイバレーザ装置とすることができる。なお、本実施形態において、第1ミラー、第2ミラーとして、第1FBG81、第2FBG82を例に説明したが、第1ミラー、第2ミラーは、FBGに限定されない。また、本実施形態の増幅用光学部品AOPに代えて、第2〜第5実施形態の増幅用光学部品AOPのいずれかが適用されても良い。
【0098】
以上、本発明について、第1〜第6実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
例えば、第1〜第5実施形態において、それぞれ異なる増幅用光学部品AOPを示したが、本発明の増幅用光学部品は、第1〜第5実施形態として示すものに限らない。例えば、図13に示す増幅用光学部品AOPが、第1実施形態で説明したMO−PA型のファイバレーザ装置1、及び、第6実施形態で説明した共振型のファイバレーザ装置2のどちらにも適用可能である。
【0100】
図13は、増幅用光学部品の変形例を示す図である。図13に示すように、本変形例の増幅用光学部品AOPでは、増幅用光ファイバ30の中間部位に対して光結合部63が形成されている。この光結合部63では、ループ構造でなる3つの迂回伝播用光ファイバ50A〜50Cの一部のコア51がそれぞれ剥離され、各コア51の露出部分と、クラッド32の露出部分とが互いに沿った状態で融着され、露出部分同士が一体として光学的に結合されている。本変形例の増幅用光学部品AOPによれば、各迂回伝播用光ファイバ50A〜50Cはループ構造とされているため、コア51に入射した励起光は少なくとも1回以上周回した後に光結合部63からクラッド32の出力端側へ出射する。また、各迂回伝播用光ファイバ50A〜50Cがそれぞれループ構造となっているため、光結合部63を介して迂回伝播用光ファイバ50A〜50Cへ伝播する励起光の伝播経路は多岐にわたる。したがって、光結合部63に対する、迂回伝播用光ファイバ50A〜50Cを伝播する励起光の通過回数が多くなる。この結果、迂回伝播用光ファイバ50を経由する励起光に含まれるスキュー光はより一段と低減される。なお、本変形例の増幅用光学部品AOPの場合にも、第4実施形態と同程度にスキュー光が低減したことが確認されている。
【0101】
あくまで、上記変形例又は第1〜第5実施形態として示した増幅用光学部品AOPは例示である。要するに、増幅用光ファイバ30と、増幅用光ファイバ30の長さ方向の中間となるクラッド32の一部に対して光学的に結合される迂回伝播用光ファイバとを備えていれば、本発明の増幅用光学部品として適用できる。
【0102】
また、上記実施形態、及び、上記変形例に示す増幅用光学部品AOPでは、迂回伝播用光ファイバのコア51と、増幅用光ファイバ30のクラッド32とが、融着により光学的に結合された。しかし、コア51とクラッド32とが光学的に結合されてさえいれば、融着以外の結合手法が適用されていても良い。
【0103】
また、上記実施形態、及び、上記変形例に示す増幅用光学部品AOPでは、光増幅用光ファイバのクラッド32が非円形とされたが、円形であっても良い。
【0104】
また、上記実施形態、及び、上記変形例に示す増幅用光学部品AOPでは、迂回伝播用光ファイバ50,55,56のコア51が円形とされたが、非円形であっても良い。また、迂回伝播用光ファイバ50,55,56が、光増幅用光ファイバに代替されていても良い。なお、このように代替する場合、増幅用光ファイバ30のクラッド32と光学的に結合される光伝播路は、代替される光増幅用光ファイバのコアではなくクラッドとなる。また、このように代替される光増幅用光ファイバのクラッドは、上記実施形態のように非円形に限らず、円形としても良い。
【0105】
また、上記実施形態におけるファイバレーザ装置は、励起光を増幅用光ファイバ30の一端36から入射し他端37から出射する前方励起型とされた。しかしながら、上記実施形態におけるファイバレーザ装置は、励起光を増幅用光ファイバ30の他端37から入射し一端36から出射する後方励起型とされても良く、励起光を増幅用光ファイバ30の一端36及び他端37の双方から入出射する双方励起型とされても良い。なお、このような前方励起型、後方励起型、又は、双方励起型のファイバレーザ装置の伝搬経路には光アイソレータが介在されていても良い。
【0106】
また、上記実施形態、又は、上記変形例に示す増幅用光学部品AOPと、上記実施形態の励起光源20及びコンバイナ40とが、光通信用増幅装置の一部として用いられても良い。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明したように、本発明によれば、増幅用光ファイバでの励起光の増幅効率を簡易な構成で向上し得る増幅用光学部品、及び、これを用いた光ファイバ増幅器、並びに、ファイバレーザ装置が提供される。
【符号の説明】
【0108】
1、2・・・ファイバレーザ装置
5・・・光ファイバ増幅器
10・・・種光源
15・・・種光用ファイバ
16・・・第1共振用ファイバ
17・・・第2共振用ファイバ
19・・・無反射終端
20・・・励起光源
21・・・レーザダイオード
22・・・励起光用ファイバ
30・・・増幅用光ファイバ
31・・・コア
32・・・クラッド
33・・・外部クラッド
34・・・被覆層
40・・・コンバイナ
50、50A〜50C、55、56・・・迂回伝播用光ファイバ
61、61A〜61C、62A、62B、63・・・光結合部
69・・・樹脂
81・・・第1FBG
82・・・第2FBG
AOP・・・増幅用光学部品
AX・・・軸
IFA,IFB・・・傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性元素が添加されるコア、及び、前記活性元素を励起するための励起光が入射されるクラッドを含む増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバの一端と他端との間のクラッド部分に対して光学的に結合され、前記クラッドを伝播する励起光の一部を往来させる迂回伝播用光ファイバと
を備えることを特徴とする増幅用光学部品。
【請求項2】
前記迂回伝播用光ファイバは、長手方向へ非端状態として連なるループ構造とされ、
前記迂回伝播用光ファイバの一部は、前記クラッド部分の長手方向に沿う状態で、そのクラッド部分に対して光学的に結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の増幅用光学部品。
【請求項3】
前記迂回伝播用光ファイバの一端は、前記クラッドを伝播する励起光の伝播方向に対向する状態で、前記クラッド部分に対して光学的に結合され、
前記迂回伝播用光ファイバの他端は、前記クラッドを伝播する励起光の伝播方向に沿う状態で、前記迂回伝播用光ファイバの一端が結合されるクラッド部分と、前記増幅用光ファイバの出力端との間のクラッド部分に対して光学的に結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の増幅用光学部品。
【請求項4】
前記迂回伝播用光ファイバの一端は、前記クラッドを伝播する励起光の伝播方向に対向する状態で、前記クラッド部分に対して光学的に結合され、
前記迂回伝播用光ファイバの他端は、前記迂回伝播用光ファイバの一端が結合されるクラッド部分と、前記増幅用光ファイバの入力端との間のクラッド部分に対して光学的に結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の増幅用光学部品。
【請求項5】
前記ループ構造とされる迂回伝播用光ファイバは、複数有し、
各前記迂回伝播用光ファイバの一部は、前記増幅用光ファイバの一端と他端との間において互いに異なる複数のクラッド部分に対して、当該クラッド部分の長手方向に沿う状態で光学的に結合される
ことを特徴とする請求項2に記載の増幅用光学部品。
【請求項6】
前記ループ構造とされる迂回伝播用光ファイバにおける複数の部分が、前記増幅用光ファイバの一端と他端との間において互いに異なる複数のクラッド部分に対して、当該クラッド部分の長手方向に沿う状態で光学的に結合される
ことを特徴とする請求項2に記載の増幅用光学部品。
【請求項7】
前記迂回伝播用光ファイバの一端と、前記迂回伝播用光ファイバの他端とには、前記迂回伝播用光ファイバの軸に対して斜めとなる傾斜面が形成され、
前記傾斜面が前記クラッド部分の外周面に対向される
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の増幅用光学部品。
【請求項8】
前記光学的に結合される部分は、融着により一体として形成される
ことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の増幅用光学部品。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の増幅用光学部品と、
前記クラッドに対して前記励起光を出射する励起光源と
を備えることを特徴とする光ファイバ増幅器。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の増幅用光学部品と、
前記クラッドに対して前記励起光を出射する励起光源と、
前記コアに対して種光を出射する種光源と
を備えることを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の増幅用光学部品と、
前記クラッドに対して前記励起光を出射する励起光源と、
前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ、前記活性元素が放出する光の少なくとも一部を反射するミラーと、
前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ、前記第1ミラーが反射する光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーと
を備えることを特徴とするファイバレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−209430(P2012−209430A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74070(P2011−74070)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】