説明

増強された安定性を有するイソチアゾロン含む保存剤

【課題】増強された安定性を有するイソチアゾロンを含む保存剤の提供。
【解決手段】グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む混合物にイソチアゾロンを添加することにより得た保温剤は貯蔵の間、輸送の間及び使用の際に、高温であっても安定化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソチアゾロンを含む保存剤に、並びにグリコール、尿素、およびホルムアルデヒドの混合物の濃縮物に関する。本発明は、さらに、原体における保存剤の使用に、原体に、およびイソチアゾロンを安定化するための濃縮物の使用に関する。本発明の保存剤は、5-クロロ2-メチルイソチアゾロンを含まず、2-メルカプトピリジンN-オキシドおよびこれらの誘導体を含まない。
【背景技術】
【0002】
イソチアゾリン-3-オン(イソチアゾロン)は、たとえば金属工作のための潤滑剤を冷却する際の活性な殺菌性および殺真菌性の化合物として既知である。しかし、金属工作液体中のある成分および高いpHにより、イソチアゾロンを破壊し、したがってこれらの微生物活動を無くす傾向を有する。これは、特に金属工作の液体が濃縮形態で存在する時の場合である。従って、イソチアゾロンのための安定剤を提案する試みはなかった。
【0003】
EP 0 425 143、US 4,150,026 A、およびUS 4,241,214Aは、イソチアゾロンの金属塩錯体が、これらの熱安定性を増強するために使用することができ、一方でイソチアゾロンの生物活性は保持されることを開示する。EP 0 315 464Aは、オルソエステルを開示し、EP 0 342 852Aは、安定剤としてのエポキシドを開示する。
【0004】
US-A-4,129,448およびUS-A-4,165,318は、イソチアゾロン、ホルムアルデヒド、または塩基性条件下でホルムアルデヒドを放出する化合物の安定剤としての使用を提案する。ホルムアルデヒドを放出する化合物として、種々の四級塩化アンモニウムが提案されている。これらの物質は、比較的高価な化学製品であるという事実は別として、塩素を含む保存剤は、往々にして望ましくない。イソチアゾロンを含む保存剤の濃縮物は、開示されていない。
【0005】
さらに、イソチアゾロンを安定化するために、硫黄化合物を使用することが既知である(SF 0 777 966、GB 2 208 474 A、US-A-5,725,806、GB 2 230 190 A、およびUS 5,210,094 A1、US 5,210,094 A)。DE 195 34 532A、は、硫黄を含む安定剤に加えて、可溶化剤の使用を提案する。SF 0 530 986 A2は、窒素を含み、硫黄を含まない化合物、たとえばピリジンN-オキシド,2-ピロリドン、s-トリアジン、またはジメチルオキシムでの付加体形成によってイソチアゾロンを安定化することを提案する。
【0006】
また、N-ホルマル(N-formals)と組み合わせたイソチアゾロンの安定性は、不十分である。たとえば、高温での貯蔵、輸送、または使用は、イソチアゾロンの破壊を生じ、したがって、十分な殺菌活性をもはや有さない保存剤を生じる。従って、US 199 61 621 A1は、N-ホルマル含有の場合には、イソチアゾロンを安定化するために2-メルカプトピリジンN-ホルマルまたはこれらの塩が存在することを規定している。
【0007】
DE 28 00 766Aは、5-クロロ-2-メチルイソチアゾロンに加えて、以下を含む保存剤を開示する:20〜30%のジメチロール尿素、50〜75%の2molのホルムアルデヒドの1つまたは複数の付加物、並びに2〜8炭素原子を有する脂肪族のグリコールおよび/またはエーテルラジカル中に1〜6炭素原子を有するこれらのグリコールのモノアルキルエーテルの混合物。これらの付加物は、O-ホルマルであり、その存在は、高温で高いホルムアルデヒドを放出すること、および匂いが迷惑であるために、不利である。
【0008】
さらに、Kathon 886(すなわち、約14%の濃度水溶液中に3:1の比率で5-クロロ2-メチルイソチアゾロンと2-メチルイソチアゾロン)のグリコール、尿素、およびホルムアルデヒドの濃縮物との組み合わせが商品として既知である。しかし、本組み合わせは、高温で非常に安定性が限られており(たとえば、30℃以上)、pH効果に感受性であり、従って、2,2'-ジチオビス(ピリジンN-オキシド)(ピリオンジスルフィド:Pyrion disulfide)などの化合物で安定化される。
【0009】
したがって、本発明の根底にある目的は、
−イソチアゾロンおよびイソチアゾロンを含む混合物を貯蔵の間、輸送の間、および使用の際に、高温であっても、変色または匂いの迷惑を生じずに、安定化し、
−公定のラベリング規則に関して利点を有し、
−濃縮物の形態でさえもイソチアゾロンを安定化し、
−イソチアゾロンのその殺菌活性を補助し、および、
−安価である、
物質を提供することであった。
【0010】
本目的は、驚くべきことに、グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む混合物の濃縮物によって達成されることが今回見いだされた。
【0011】
したがって、本発明は、
a)イソチアゾロンと、
b)グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む混合物の濃縮物と、
を含む保存剤であって、
5-クロロ2-メチルイソチアゾロンを含まず、2-メルカプトピリジンN-オキシドおよびこれらの誘導体を含まない保存剤に関する。
【0012】
本発明は、なかでも、2-メルカプトピリジン-N-オキシドおよびこれらの誘導体さえも添加することなく(たとえば、ナトリウム塩、Pyrion-Naなしで、およびジチオエーテルなしで、Pyrionジスルフィドなしで)、イソチアゾロン(5-クロロ-2-メチルイソチアゾロンとは異なる)組み合わせて、グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドの混合物を含む濃縮物の使用がなされる場合に、特に安定なイソチアゾロンを含む保存剤を得ることができることを見いだしたという事実に基づいている。
【0013】
イソチアゾロン
本発明に従って使用されるイソチアゾロンは、2-n-オクチルイソチアゾロン、たとえば純粋な活性化合物(Kathon 893T)または1,2-プロピレングリコール(Kathon 893)の45%の濃度溶液、2-メチルイソチアゾロン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチルイソチアゾロン、2-n-ブチルイソチアゾロン、およびベンゾイソチアゾロンから選択されることが好ましく、2-n-オクチルイソチアゾロンが特に好ましい。
【0014】
好ましい態様において、保存剤は、濃縮物として存在し、イソチアゾロンの0.25〜5重量%、好ましくはイソチアゾロンの0.5〜3重量%、たとえば0.7〜1.4重量%、例えば1.1重量%を含む。
【0015】
濃縮産物
本発明によれば、安定剤として、グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む混合物の濃縮物の使用がなされる。驚くべきことに、これらの濃縮物により、非常に安定なおよび特に熱的に安定な組成物、すなわち濃縮物を生じ、イソチアゾロン(5-クロロ-2-メチルイソチアゾロンとは異なる)を有する原体が保存されることを見いだした。この安定性の増加は、輸送および記憶の間または処理の間に生じ得るような、温熱ストレス下での貯蔵の際に特に目立つ方法で証明される。利点は、濃縮物においてだけではなく、保存された原体でも観察され、驚くべきことに、安定化のためには、2-メルカプトピリジンN-オキシドまたはこれらの誘導体が存在しないことが必要である。
【0016】
好ましい態様において、保存剤は、濃縮物として存在し、濃縮物の99.75〜95重量%、好ましくは99.5〜97重量%、たとえば濃縮物の99.3〜98.6重量%、例えば98.9重量%を含む。
【0017】
好ましい態様において、グリコールは、モノエチレングリコールである。別の好ましい態様では、混合物は、少量の炭酸カリウムをさらに含む。特に好ましい態様において、混合物は、ブチルジグリコールを含まないが、このような保存剤は、特に良好な安定性を有する。
【0018】
特に好ましい態様において、濃縮物を与えるようにプロセスされた混合物は、モノエチレングリコール、少量の炭酸カリウム、尿素、およびホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドとして使用される)を含む。混合物は、約14重量%の尿素、約34重量%のモノエチレングリコール、少量の炭酸カリウム、および約52重量%のパラホルムアルデヒド(91%の濃度)からなることが好ましい。
【0019】
好ましい混合物は、以下の量(重量%)のグリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む。
【0020】
好ましい 好ましい 特に
グリコール 24〜44 29〜39 32〜36
(たとえば、モノエチレングリコール)
尿素 17〜32 20〜28 23〜25.5
ホルムアルデヒド 33〜60 40〜55 45〜50。
構成要素は、種々の方法で混合物に添加することができる。変種Aにおいて、ウレアホルムアルデヒド付加物(たとえばジメチロール尿素)と、グリコールおよびホルムアルデヒドの反応生成物とを含む混合物が調製される。変種Bにおいて、ウレアホルムアルデヒド付加物(たとえば、ジメチロール尿素)とアルキレングリコールホルマルを含む混合物が調製される。変種Cにおいて、尿素、ホルムアルデヒド、およびホルムアルデヒドとグリコールの反応生成物を含む混合物が調製される。特に好ましい変種Dにおいて、ホルムアルデヒド、尿素、エチレングリコール、および適切な場合は少量の炭酸カリウムを含む混合物が調製される。変種Eにおいて、尿素の付加伴ったグリコールとホルムアルデヒドの反応生成物を含む混合物が調製される。
【0021】
混合物の調製後、これをプロセスして濃縮物を得る。濃縮は、少なくとも約40℃の温度で、好ましくは少なくとも約50で、より好ましくは70〜105℃で、特に好ましくは90〜100℃で行われ、95〜100℃での濃縮温度が特に好ましい。濃縮反応の終了後、好ましくは水を取り去らない。好ましい態様において混合物の濃縮は、3時間の期間95℃で行われる。
【0022】
好ましい態様において、保存剤は、濃縮物として存在し、おそらくイソチアゾロンと共に導入される少量のもの、たとえば3重量%未満、好ましくは2重量%未満のものは別にして、有機溶媒は添加されない。好ましいは、発明の濃縮物は、45重量%未満、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜15重量%、例えば10重量%の含水量を有する。
【0023】
濃縮物の形態で存在する発明の防腐剤は、好ましくは:
a)0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、たとえば約1.1重量%のイソチアゾロン
b)99.75〜95重量%、好ましくは99.5-97重量%、たとえば約98.9重量%の濃縮物、
を含む。
【0024】
本質的にこれらの2つの成分からなる濃縮物が好ましいく、適切であるならば、少量の香りを添加することができる。
【0025】
本発明は、さらに、原体、特に作物保護薬、種材料を処理するための薬剤、工業防腐剤、特に容器防腐剤、冷却潤滑剤、燃料添加物、消毒薬、特に低泡消毒薬、切創を制御するための薬剤、寄生虫および植物を保存するための発明の組成物の使用、剪定損傷を治療するための薬剤、屋外でのおよび特に屋内でのフィルム防腐剤、セクター、増大されたカビの攻撃が予想される領域の消毒薬、具体的な添加物を保存するための薬剤、熱帯のための工業防腐剤、並びに木材防腐剤に関する。原体中の濃縮物の好ましい量は、0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%、特に0.1〜0.3重量%、たとえば0.15重量%である。
【0026】
本発明は、さらに、2-メルカプトピリジンN-オキシドおよびこれらの誘導体を添加することなくイソチアゾロン(5-クロロ-2−メチル-イソチアゾロンとは異なる)を安定化するために、グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む混合物の濃縮物の使用に関する。
【0027】
本発明の利点は、特に以下の実施例によって証明される。
【0028】
実施例
2-n-オクチルイソチアゾロンの内容物は、HPLCによって決定し、それぞれ0.5gの試料を50mlのメスフラスコで重さを量り、50%の濃度のH3PO4(0.1濃度)/50%のアセトニトリルで作製した。次いで、溶液を計量器に注入した。参照試料として、100mgのKathon 893を100mlのメスフラスコ内で重さを量り、85%の濃度H3PO4(0.1%の濃度)/50%のアセトニトリルを補って、次いで計量器に注入する。使用した計量器は、ポンプ(ウォーターズ600)、検出器(ウォーターズPDA 996)、吹込システム(ウォーターズ・オートサンプラWISP 717)、カラム(Nucleosil 100、C 18.5、10μm、100×4mmのi.d.、溶出剤A= H3PO40.1%濃度(g/g))およびB=アセトニトリルのHPLCの組み合わせであった。溶出は、10分で90%のA/10%のB〜20%のA、80%のB、次いで7分で〜10%のA、90%のBを使用して行い、カラムを洗浄して調節した。流速1.0ml/分、波長:273nm、注入体積10μl。
【0029】
以下の構成を使用して濃縮物を調製し、これらの貯蔵安定性について試験した:
-濃縮物Aは、24.82重量%のブチルジグリコール、21.15重量%のモノエチレングリコール、1.10重量%の炭酸カリウム、12.00重量%の尿素、および40.93重量%のパラホルムアルデヒド(90%純粋)の混合物を95℃で3時間加熱することによって調製した。
【0030】
-濃縮物Bは、33.76重量%のモノエチレングリコール、0.20重量%の炭酸カリウム、24.21重量%の尿素、5および1.83重量%のパラホルムアルデヒド(91%純粋)の混合物を95℃で3時間加熱することによって調製した。
【0031】
-メチレンビスメチルオキサゾリジン、トリメチルトリアジン-トリエタノール、およびトリアジントリエタノールは、商業的に従来のN-ホルマルである。
【0032】
-OIT = Kathon 893として2-n-オクチルイソチアゾロン(重量%の形態)。
【表1】

【表2】

これらの結果は、N-ホルマルが室温でさえイソチアゾロンを安定化することができないことを証明する(de 199 61 621の教示によれば、ピリオン-ナトリウムなどの安定剤の添加が必要である)。対照的に、2-n-オクチルイソチアゾロンは、温熱ストレス下でも発明の濃縮物によって非常に貯蔵に安定となり、濃縮物B(ブチルジグリコールのない混合物)を使用する安定化は、濃縮物A使用するよりも良好である(60度での貯蔵の結果を参照されたい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)イソチアゾロンと
b)グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む混合物の濃縮物と、
を含む保存剤であって、
前記保存剤は、5-クロロ2-メチルイソチアゾロンを含まず、かつ2-メルカプトピリジンN酸化物およびこれらの誘導体を含まない保存剤。
【請求項2】
イソチアゾロンが2-n-オクチルイソチアゾロン、2-メチルイソチアゾロン、ベンゾ-イソチアゾロン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチルイソチアゾール-オン、2-n-ブチルベンゾイソチアゾロン、およびこれらの混合物から選択され、好ましくは2-n-オクチルイソチアゾロンであることを特徴とする、請求項1に記載の保存剤。
【請求項3】
グリコールが1エチレングリコールであることを特徴とする、請求項1または2に記載の保存剤。
【請求項4】
混合物がブチルジグリコールを含まないことを特徴とする、前述の請求項のいずれか1項に記載の保存剤。
【請求項5】
a)0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、たとえば約1.1重量%のイソチアゾロンと、
b) 99.75〜95重量%、好ましくは99.5〜97重量%、たとえば約98.9重量%の前記濃縮物と、
を含む、前述の請求項のうちの1つに従って保存剤。
【請求項6】
a)0.5〜3重量%の2-n-オクチルイソチアゾロンと、
b)99.5〜97重量%のモノエチレングリコール、炭酸カリウム、尿素、およびパラホルムアルデヒドの混合物の濃縮物と、
から本質的になる保存剤。
【請求項7】
原体を保存するための、前述の請求項のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
組成物が0.01〜1重量%の濃度で使用されることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
5-クロロ-2-メチルイソチアゾロンとは異なるイソチアゾロンを安定化するための、グリコール、尿素、およびホルムアルデヒドを含む混合物の濃縮物の使用。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の保存剤を含む原体。

【公開番号】特開2006−193506(P2006−193506A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−319754(P2005−319754)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(399035504)エール・リキード・サンテ(アンテルナスィオナル) (26)
【Fターム(参考)】