説明

壁パネル及びその製造方法

【課題】 工事現場での配管・配線類の敷設を無くし、施工コストを低減し、工期を短縮するとともに、施工に伴う汚染物質の放出がなく、清潔性の高い工事を行うことができる壁パネルを提供する。
【解決手段】 一対の表面材12,12間に断熱材13を充填した壁パネル11において、前記断熱材に配管又は配線15と内部が中空のボックス16とを埋め込み、前記配管又は配線の一方の端部15bは前記ボックスの内部に露出し、前記配管又は配線の他方の端部15aは前記壁パネルの端部から露出した。この壁パネル11は、一対の表面材12,12間に施工現場側からの仕様に対応した配管又は配線15を配置し、該配管又は配線の一方の端部を内部が中空のボックス16の内部に挿入し、前記一対の表面材間に断熱材13を充填して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の表面材間に断熱材を充填した断熱パネル等の壁パネルに係り、特に上記壁パネル内部に配管又は配線等を配置した壁パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンルームや食品工場等において、恒温の環境が要求されるスペースが増大する傾向にあり、このようなスペースの建設にあたっては、一対の金属板材(表面材)間にウレタンフォーム発泡材等の断熱材を充填した断熱パネルが壁面を形成するパネルとして広く用いられている。すなわち、恒温の環境が要求されるスペースの建設にあったては、上記断熱パネルを多数並べて配置することで、上記スペースの壁面が構成される。
【0003】
しかしながら、恒温の環境が要求されるスペースの建設にあたっては、少なくとも空調設備や照明設備を配置する必要がある。また、そのスペースに配置される設備を運転するために、電力や冷温水等を供給する必要がある。このため、電力ケーブルや信号ケーブル等の配線、および冷温水や燃料ガス等の供給のための配管の敷設が不可欠となるが、これらを壁パネル内部に配置し、室内に露出させないようにすることが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−285710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、壁パネルの断熱材に予め中空部を設け、該中空部に配管・配線類を施工現場で挿入して敷設するようにしたものである。このため、配管・配線類を断熱パネル内部に配置することができるが、工事に当たっての作業性や汚染物質を放出しないという工事の清潔性は必ずしも十分なものではない。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、工事現場での配管・配線類の敷設を無くし、施工コストを低減し、工期を短縮するとともに、施工に伴う汚染物質の放出がなく、清潔性の高い工事を行うことができる壁パネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁パネルは、一対の表面材間に断熱材を充填した壁パネルにおいて、前記断熱材に配管又は配線と内部が中空のボックスとを埋め込み、前記配管又は配線の一方の端部は前記ボックスの内部に露出し、前記配管又は配線の他方の端部は前記壁パネルの端部から露出したことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の壁パネルの製造方法は、一対の表面材間に施工現場側からの仕様に対応した配管又は配線を配置し、該配管又は配線の一方の端部を内部が中空のボックスの内部に挿入し、前記一対の表面材間に断熱材を充填し、前記配管又は配線とボックスとを前記断熱材に埋め込むことを特徴とするものである。
【0008】
これにより、工事現場では、一切の敷設工事を行うことなく、配管・配線類を断熱パネル内部に配置することができる。従って、施工現場での配管・配線類の敷設作業を無くし、施工コストを低減し、工期を短縮することができる。また、敷設作業に伴う汚染物質の放出がなく、清潔性の高い工事を行うことができる。
【0009】
ここで、工場出荷の段階で、ボックスを埋め込んだ部分の表面材に開口を設け、前記ボックスの内部を露出しておくことが好ましい。これにより、金属板材等からなる表面材を切削することなく、室内側の機器との配管・配線類の接続を直接行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工事現場での配管・配線類の敷設を無くし、施工コストを低減し、工期を短縮するとともに、施工に伴う汚染物質の放出がなく、清潔性の高い工事を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、各図中、同一の作用または機能を有する部材または要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
図1及び図2は、本発明の一実施形態の壁パネル構造を示す。断熱パネル11は、一対の表面材12,12間に断熱材13が充填されて構成されている。ここで、表面材12としては、カラー鋼板、ステンレス鋼板、塩ビ板、アルミ板等が用いられる。断熱材13としては、断熱性を有する素材、例えば、硬質ウレタンフォーム発泡材、ポリイソシアヌレートフォーム発泡材、ロックウール保温材(繊維素断熱材)等が用いられる。
【0013】
断熱パネル11の上下端には、枠体14,14が配置され、板枠14は、アルミ材、ステンレス材、樹脂材等により構成され、図示するように凸部を備え、上端側は天井パネル17に嵌合して固定され、下端側は樹脂又は金属材からなる床止めレール18に嵌合して固定されるようになっている。
【0014】
断熱パネル11のパネル厚は42−200mm程度であり、パネル幅は最大で900mm程度であり、パネル高は最大で7000mm程度であり、任意の寸法のものを製作することができる。
【0015】
この断熱パネル11には、配管・配線類15が予め工場で断熱材13に埋め込まれて製作されている。配管・配線類15は、電力ケーブルや信号ケーブル等の配線、給排液用や給排気用の配管等である。また、この断熱パネル11には、内部が中空のボックス16が同様に断熱材13に埋め込まれて製作されている。
【0016】
断熱材13に埋め込まれた配管・配線類15の一方の端部15aは、枠体14から断熱パネル11の外部に露出している。配管・配線類15の他方の端部15bは、ボックス16の内部に露出している。
【0017】
図3は、ボックスを埋め込んだ部分の表面材に開口を設け、ボックスの内部を露出した状態を示す。ボックス16は、例えば鉄板や樹脂板などからなる内部が中空の箱体であり、この開口16aを介して配管・配線類15がその内部に延伸し、箱体内部に端部15bが露出している。ボックス16の表面材12に面した開口部分に合わせて、表面材12に開口部12aが設けられている。なお、ボックス16のサイズは、一例として、高さ120mm、幅120mm、深さ30mmである。従って、ボックス16の表面材12に面した開口部分のサイズは、120mm×120mm程度である。
【0018】
このため、予め断熱パネル11の工場出荷時に表面材12にボックス16の開口部分に合わせた開口部12aを設けておくか、施工現場で開口部12aを設けることで、断熱パネルの組立施工現場では、ボックス16内に露出した配管・配線類の端部15bに対して、室内側の機器、又は室内側の機器に接続する配管・配線類を直接接続することができる。例えば、室内側の機器が照明や動力機器をオン・オフするスイッチである場合には、直接、そのスイッチに配線端部15bを接続することができる。例えば、室内側の機器が水道の蛇口である場合には、エルボなどの管継手を介して、直接、その蛇口に配管端部15bを接続することができる。
【0019】
なお、表面材12に開口部12aに対応した、開口部12aを簡単に形成するための切り欠きを予め断熱パネル11の工場出荷時に設けておき、施工現場でその部分を簡単に取り外せるようにしてもよい。これによっても、断熱パネルの組立施工現場では、表面材12の切削作業が必要なくなるので、施工の手間を軽減できるとともに、切削作業に伴う汚染物質の発生を防止できる。
【0020】
配管・配線類15が電力ケーブルや信号ケーブル等の配線である場合には、端部15aは一般に天井側に配置された母線に接続される。配管・配線類15が給排液用の配管、或いは給排気用の配管である場合には、端部15aは一般に天井側に配置されたヘッダ、或いは循環流路のT字管等に接続される。
【0021】
次に、この断熱パネルの製造方法について説明する。まず、施工現場側からの仕様に対応した表面材12,断熱材13,枠体14,配管・配線類15,ボックス16を準備する。そして、片側の表面材12に、施工現場側からの仕様に対応した位置に、配管・配線類挿通のための開口16aを有するボックス16を仮固定し、上下端の枠体14,14を溶接或いはネジ止め等の手段により固定し、配管・配線類15を上側の枠体の挿通孔とボックス16の挿通孔16aを挿通して固定する。
【0022】
そして、反対側の表面材12を上下端の枠体14,14に溶接或いはネジ止め等の手段により固定し、さらに、表面材12の左右端に枠体を配置して閉空間を形成する。そして、注入孔14aより発泡樹脂材を注入する。これにより、硬質ウレタンフォーム発泡材やポリイソシアヌレートフォーム発泡材等の断熱材13が、枠体及び表面材で囲まれた閉空間に形成され、配管・配線類15及びボックス16が断熱材13に埋め込まれ、配管・配線類の端部15a、15bが露出した状態となる。
【0023】
そして、ボックス16の開口部分に対応した表面材12の部分に開口12aを設けることが好ましい。これにより、施工現場側では、露出した配管・配線類15の端部15bに直接室内側機器を接続することができる。なお、上述したように、開口12aを施工現場で容易に形成できるように、工場で予め開口部12aの形成部分に切り込み等を入れておいても良い。
【0024】
なお、図1に示す断熱パネル11が、左右の枠体が無い場合のものである場合には、発泡樹脂材の充填に用いた左右の枠体は、発泡樹脂材の充填後に取り除かれる。しかしながら、断熱パネル11が左右の枠体を備えたものである場合には、そのまま工場から出荷される。
【0025】
本発明の断熱パネル11は、そのサイズ、断熱材素材の種類、挿通される配管・配線類の種類及びサイズ、ボックス16の配置位置等については、施工現場側の要求仕様に従って決定される。このため、上記施工現場側の要求仕様に基づいて製作された断熱パネル11は、施工現場において、複数のパネルを並べて壁面を形成すると、配管・配線類14はそのまま直接断熱パネルの内部に敷設される。このため、施工現場では配管・配線類の敷設作業を一切要さない。そして、施工現場では、配管・配線類の端部が要求仕様位置に設けられているので、これを直接室内側機器に接続することができる。
【0026】
従って、上記断熱パネル11を用いることで、施工現場において、以下の利点がある。
配管・配線類が断熱パネル内部に埋め込まれているので、施工現場では、一切の敷設工事を行うことなく、配管・配線類を断熱パネル内部に配置することができる。従って、施工現場での配管・配線類の敷設作業を無くし、施工コストを低減し、工期を短縮することができる。また、敷設作業に伴う汚染物質の放出がなく、清潔性の高い工事を行うことができる。すなわち、従来の配管・配線類の敷設工事中に出ていた、切りくず等の異物の発生を抑えることができるので、クリーンな、汚染物質の発生しない衛生的な工事を行える。このことは、特に食品工場等においては、工事中に発生する異物は、工場稼働時の汚染物質となる可能性があり、工場稼働時の生産の安全性に寄与する。
【0027】
図4は、本発明の他の実施形態の壁パネル構造を示す。この実施形態においては、ボックス16から室内側の機器に配管・配線類の端部を直接接続するのに代えて、断熱パネルの下端側から床下側の配管・配線類に接続するようにしたものである。すなわち、断熱パネルの断熱材に配管・配線類を埋め込み、断熱パネルの上下両端から露出した配管・配線類の端部を有するようにしたものである。これにより、天井側の配管・配線類と床下側の配管・配線類とを断熱パネル内部に埋め込んだ配管・配線類を用いて接続することができ、上述したのと同様に、工事現場での配管・配線類の敷設を無くし、施工コストを低減し、工期を短縮するとともに、施工に伴う汚染物質の放出がなく、清潔性の高い工事を行うことができる。
【0028】
ここで、これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の壁パネル構造を示す斜視図である。
【図2】図1の側断面図である。
【図3】図2のボックス周辺の拡大図である。
【図4】本発明の他の実施形態の壁パネル構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
11 断熱パネル
12 表面材
12a 開口部
13 断熱材
14 枠体
14a 樹脂注入孔
15 配管・配線類
15a,15b 配管・配線類の端部
16 ボックス
16a 挿通孔(開口)
17 天井パネル
18 床止めレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の表面材間に断熱材を充填した壁パネルにおいて、
前記断熱材に配管又は配線と内部が中空のボックスとを埋め込み、
前記配管又は配線の一方の端部は前記ボックスの内部に露出し、
前記配管又は配線の他方の端部は前記壁パネルの端部から露出したことを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
前記ボックスを埋め込んだ部分の表面材に開口を設け、前記ボックスの内部を露出したことを特徴とする請求項1記載の壁パネル。
【請求項3】
一対の表面材間に施工現場側からの仕様に対応した配管又は配線を配置し、
該配管又は配線の一方の端部を内部が中空のボックスの内部に挿入し、
前記一対の表面材間に断熱材を充填し、前記配管又は配線とボックスとを前記断熱材に埋め込むことを特徴とする壁パネルの製造方法。
【請求項4】
前記ボックスを埋め込んだ部分の表面材に開口を設け、前記ボックスの内部を露出することを特徴とする請求項3記載の壁パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−328664(P2006−328664A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150162(P2005−150162)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(505189718)協和冷熱工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】