説明

壁排水型ターントラップ式水洗便器

【課題】手洗い器の手洗側排水経路への便器排水の逆流の恐れを低減できる壁排水型ターントラップ式水洗便器を提供する。
【解決手段】室排水口7を設けたトラップ筒収納室6の後壁6aに、手洗い器30から至る手洗側排水経路31の出口31aが接続される接続部8を設ける。接続部8に、正面視で手洗側排水経路31の出口31aを覆う遮蔽部9と、手洗側排水経路31の出口31aから上記遮蔽部9を廻りこんでトラップ筒収納室6に連通する迂回流路部10とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁排水型ターントラップ式水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、手洗い器は便器後部に載設されるロータンクの上部に設けられ、便器の洗浄水として使用する水で用便後の手洗いを可能にしていたが、使い勝手の良い広い手洗い器30を形成することは難しいと共に、手洗い排水はその後便器の洗浄水として使用されるため洗剤等で手洗いをするのには抵抗もあり、またすっきりとした外観からロータンクを備えないタイプの便器も普及するようになり、近年ではトイレルーム32には図6のように水洗便器1´の他に別体の手洗い器30を併設するケースが増えている。
【0003】
この場合、便器の便器排水を流す便器側排水経路11と、手洗い器30の手洗い排水を流す手洗側排水経路31とは、建物内に配設した排水管に個別に至る配管構造を採るのが普通であるが(たとえば特許文献1参照)、建物内の配管工事も必要であって施工が大変であるため、トイレルーム32内に位置する便器の便器側排水経路11に手洗側排水経路31を接続させて、手洗い排水を便器排水と一緒に排水できるようにするのが好ましい。
【0004】
ところで、近年では、トイレルーム32の床下空間が広く採れないマンションなどで、壁排水型ターントラップ式水洗便器1が水洗便器として広く普及している。この壁排水型ターントラップ式水洗便器1は、便器本体2の前部に設けた便器ボウル3の下部に後方に開口するボウル排水口4を設け、このボウル排水口4に上流側開口5aが接続されたトラップ筒5を設け、このトラップ筒5を、回動先端となる下流側開口5bが上方に向く状態から後方に向く状態に上下に回動自在にして、便器本体2の後部に配設したトラップ筒収納室6に収納配置し、トラップ筒5の下流側開口5bからの便器排水を建物壁20に設けた壁排水口21に流す室排水口7をトラップ筒収納室6の後壁6aに設けて構成されたものである(図4参照)。
【0005】
本出願人は、壁排水型ターントラップ式水洗便器1と手洗い器30とをトイレルーム32に併設した場合に、手洗い器30から至る手洗側排水経路31を便器側排水経路11となるトラップ筒収納室6に接続させて、手洗排水を便器排水と一緒に排水させる(図5参照)ことを考えたが、以下の理由により実現されていない。
【0006】
洗浄方式がターントラップ式のものは、従来一般の洗い落とし式やサイホン式と違って便器の構造自体で洗浄力を確保するものではなく、トラップ筒5を回転させて便器ボウル3の溜水を落下させることで、つまり溜水の位置エネルギーを利用することで、洗浄力が確保されるのであるが、壁排水型ターントラップ式水洗便器1はトラップ筒5の下流側開口5bが上方を向く状態から横方向になる状態にまでしか回動しないのであり、床に設けた排水口に排水するためにトラップ筒5が上方を向く状態から下方に向く状態にまで回動される床排水型ターントラップ式水洗便器に比べてその洗浄力は小さくならざるを得ない。このように洗浄力が小さくなりがちな壁排水型ターントラップ式水洗便器1における便器側排水経路11では便器排水に含まれる汚物などが付着して堆積し易く、特にトラップ筒収納室6の後壁6aの室排水口7付近に汚物が堆積して便器側排水経路11を塞いでしまうと、これによって便器側排水経路11の便器排水の流れが阻害されることとなって、この阻害された便器排水がトラップ筒収納室6に接続させた手洗側排水経路31に逆流してしまうという恐れが大きいのである。
【特許文献1】特開2000−170234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、手洗い器の手洗側排水経路への便器排水の逆流の恐れを低減できる壁排水型ターントラップ式水洗便器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る壁排水型ターントラップ式水洗便器1にあっては、便器本体2の前部に設けた便器ボウル3の下部に後方に開口するボウル排水口4を設け、このボウル排水口4に上流側開口5aが接続されたトラップ筒5を設け、このトラップ筒5を、回動先端となる下流側開口5bが上方に向く状態から後方に向く状態に上下に回動自在にして、便器本体2の後部に配設したトラップ筒収納室6に収納配置し、トラップ筒5の下流側開口5bからの便器排水を建物壁20に設けた壁排水口21に流す室排水口7をトラップ筒収納室6の後壁6aに設け、このトラップ筒収納室6の後壁6aに手洗い器30から至る手洗側排水経路31の出口31aが接続される接続部8を設け、この接続部8に、正面視で手洗側排水経路31の出口31aを覆う遮蔽部9と、手洗側排水経路31の出口31aから上記遮蔽部9を廻りこんでトラップ筒収納室6に連通する迂回流路部10とを設けたことを特徴とする。
【0009】
これによると、トラップ筒5の下流側開口5bからの便器排水が流れる室排水口7と同じ壁の部位であるトラップ筒収納室6の後壁6aに手洗い器30から至る手洗側排水経路31の接続部8があるので、室排水口7付近に付着した汚物に対して上記接続部8から供給される手洗排水を当てて上記付した汚物を剥がすように流すことができるのであり、つまり便器ボウル3から壁排水口21に至る便器側排水経路11に堆積した汚物を無くするようにできるから、便器側排水経路11に堆積した汚物が便器排水の流れを阻害することに起因する手洗側排水経路31への便器排水の逆流の恐れを低減することができる。また、たとえ便器側排水経路11に堆積した汚物で流れが阻害された便器排水が手洗側排水経路31に逆流しようとしても、接続部8に設けた正面視で手洗側排水経路31の出口31aを覆う遮蔽部9によって、逆流する便器排水が勢い良く手洗側排水経路31に流入することを防止できるのであり、これによっても手洗側排水経路31への便器排水の逆流の恐れを低減することができる。
【0010】
また、請求項2に係る壁排水型ターントラップ式水洗便器1にあっては、請求項1において、トラップ筒5の下流側開口5bと室排水口7とを左右方向の略同位置に位置させると共に、このトラップ筒5の下流側開口5b及び室排水口7と接続部8とを左右方向にずらして位置させたことを特徴とする。
【0011】
これによると、回動中のトラップ筒5の下流側開口5bからは少量の便器排水が後方に飛び出る場合もあるが、トラップ筒5の下流側開口5bと左右方向の略同位置に位置された室排水口7には上記飛び出た便器排水を速やかに排水できると共に、室排水口7と左右方向にずらして位置させた接続部8にはこの飛び出た便器排水が直接ひっかかる恐れを低減できるのであり、手洗側排水経路31への便器排水の逆流の恐れを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、手洗い器の手洗側排水経路に便器排水が逆流する恐れを低減できる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
本例の壁排水型ターントラップ式水洗便器1は、図4のように、便器本体2の前部に設けた便器ボウル3の下部に後方に開口するボウル排水口4が設けられ、このボウル排水口4に上流側開口5aを接続させたトラップ筒5が設けられ、このトラップ筒5が、回動先端となる下流側開口5bを上方に向く状態から後方に向く状態に上下に回動自在にさせて、便器本体2の後部に配設したトラップ筒収納室6に収納配置されており、トラップ筒5の下流側開口5bからの便器排水を建物壁20に設けた壁排水口21に流す室排水口7がトラップ筒収納室6の後壁6aに設けられている。
【0015】
詳しくは、便器本体2の後部には脚部16によってトイレルーム32の床面に載設されるユニット状のターントラップ装置12が設けられており、このターントラップ装置12に上記トラップ筒5及びトラップ筒収納室6、またトラップ筒5を回動駆動させる駆動装置15が設けられている。なお、トラップ筒5は可撓性を有する円筒部材であり、その下流側開口5bが上方に向いた状態では便器ボウル3に溜水が溜められる溜水状態(待機状態)であり、洗浄動作時には下流側開口5bを室排水口7に向けるように下方に回動されるのであり、回動下端である下流側開口5bが後方横向きに向いた状態では、下流側開口5bが室排水口7に略対向するように位置して、下流側開口5bから上記溜水が便器排水として排水される排水状態となる。
【0016】
トラップ筒収納室6は、前壁6b、底壁6c、天井壁6d、左右一対の側壁6e及び後壁6aで囲まれた水密的な部屋空間であり、便器ボウル3から建物壁20の排水口に至る便器側排水経路11の一部を構成する部位である。ここで、便器側排水経路11は便器ボウル3のボウル排水口4からトラップ筒5、トラップ筒収納室6の室排水口7を経て壁排水口21に至る流路である。上下動するトラップ筒5と室排水口7とは縁切りがされているが、トラップ筒5の下流側開口5bから排水された便器排水はトラップ筒収納室6で受けると共に室排水口7に集められて、壁排水口21に至るようになっている。なお、上記室排水口7はトラップ筒収納室6の後壁6aの下端部に設けられており、トラップ筒収納室6の底壁6cには室排水口7に排水を滞りなく集めて流すため縦断面U字状の集水溝17が形成されている。
【0017】
ここで、上記室排水口7が設けられたトラップ筒収納室6の後壁6aには、図1乃至3のように、本例の壁排水型ターントラップ式水洗便器1と一緒にトイレルーム32に併設される手洗い器30(図5)から至る手洗側排水経路31の出口31aが接続される接続部8が設けられている。詳しくは、接続部8は少なくとも室排水口7よりも上方位置である後壁6aの上部域に設けられている。このようにトラップ筒5の下流側開口5bからの便器排水が流れる室排水口7と同じ壁の部位であるトラップ筒収納室6の後壁6aに手洗い器30から至る手洗側排水経路31の接続部8があるので、室排水口7付近に付着した汚物に対して上記接続部8から供給される手洗排水を当てて上記付した汚物を剥がすように洗い流すことができるのであり、つまり便器側排水経路11に堆積した汚物を無くするようにできるから、便器側排水経路11に堆積した汚物が便器排水の流れを阻害することに起因する手洗側排水経路31への便器排水の逆流の恐れを低減することができるようになっている。なお、手洗い器30での手洗いは洗剤や石鹸等を用いて行うこともでき、この場合、トラップ筒収納室6に排水された手洗排水には洗剤成分が含まれるから、この洗剤成分によって便器側排水経路11に堆積した汚物を良好に洗浄することができる。
【0018】
そして、この接続部8には、正面視で手洗側排水経路31の出口31aを覆う遮蔽部9と、手洗側排水経路31の出口31aから上記遮蔽部9を廻りこんでトラップ筒収納室6に連通する迂回流路部10とが設けられている。詳しくは、トラップ筒収納室6の後壁6aには後方に凹没した段部13が形成されると共に、この段部13における後面13aの上部域に手洗側排水経路31の出口31aが開口しており、後壁6aにおける段部13の上縁部分から垂下壁部14を垂設して手洗側排水経路31の出口31aの前方に位置させることで遮蔽部9が形成されており、垂下壁部14の下面14aと段部13における段面となる下面13bとの間の隙間Sが迂回流路部10を構成している。このように接続部8に設けた遮蔽部9によると、たとえ便器側排水経路11に堆積した汚物で流れが阻害された便器排水が手洗側排水経路31に逆流しようとしても、手洗側排水経路31に流入しようとする便器排水を当ててその勢いを減ずることができるのであり、手洗側排水経路31への便器排水の逆流の恐れを低減することができるようになっている。なお、接続部8に迂回流路部10を設けたことによると、手洗い排水のトラップ筒収納室6への流入経路を確保できたものである(矢印A)。
【0019】
更に言うと、トラップ筒5からの便器排水を極力滞りなく室排水口7に流すために、トラップ筒5の下流側開口5bと室排水口7とは左右方向の略同位置に位置するように設定されているのであるが、上記接続部8の位置は上記トラップ筒5の下流側開口5b及び室排水口7の位置と左右方向にずれた位置に設定されている。換言すると、手洗側排水経路31の出口31aの芯軸a(中心点)と室排水口7の芯軸b(中心点)とが左右方向にずれた位置に設定されている。なお詳しくは、本例の接続部8は、図3のようにターントラップ装置12の後方から見て、室排水口7のやや左上に位置するように設けられている。
【0020】
下方回動中のトラップ筒5の下流側開口5bからは少量の便器排水が後方に飛び出る場合があって、この飛び出た便器排水はトラップ筒収納室6の後壁6aにひっかかることとなる(矢印B)。ここで、この飛び出た便器排水は、トラップ筒5の下流側開口5bと左右方向の略同位置に位置する室排水口7から滞りなくスムーズに排出されるのであり、汚物等が便器側排水経路11に付着する恐れが低減されている。また、一方、接続部8の位置は上述のようにトラップ筒5の下流側開口5b及び室排水口7の位置に比べて左右方向にずれた位置に設定されているので、回動中のトラップ筒5の下流側開口5bから飛び出た便器排水が接続部8に直接ひっかかる恐れが低減されている。つまり、これによっても手洗側排水経路31への便器排水の逆流の恐れが低減されることとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の例の壁排水型ターントラップ式水洗便器の要部の断面斜視図である。
【図2】図1の他の方向から見た断面斜視図である。
【図3】同上のターントラップ装置を後方から見た斜視図である。
【図4】同上の壁排水型ターントラップ式水洗便器のトイレルームへの設置状態を示す概略の側断面図である。
【図5】同上のトイレルームの斜視図である。
【図6】従来技術の例のトイレルームの斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 壁排水型ターントラップ式水洗便器
2 便器本体
3 便器ボウル
4 ボウル排水口
5 トラップ筒
5a 上流側開口
5b 下流側開口
6 トラップ筒収納室
6a 後壁
7 室排水口
8 接続部
9 遮蔽部
10 迂回流路部
11 便器側排水経路
12 ターントラップ装置
21 壁排水口
30 手洗い器
31 手洗側排水経路
31a 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の前部に設けた便器ボウルの下部に後方に開口するボウル排水口を設け、このボウル排水口に上流側開口が接続されたトラップ筒を設け、このトラップ筒を、回動先端となる下流側開口が上方に向く状態から後方に向く状態に上下に回動自在にして、便器本体の後部に配設したトラップ筒収納室に収納配置し、トラップ筒の下流側開口からの便器排水を建物壁に設けた壁排水口に流す室排水口をトラップ筒収納室の後壁に設け、このトラップ筒収納室の後壁に手洗い器から至る手洗側排水経路の出口が接続される接続部を設け、この接続部に、正面視で手洗側排水経路の出口を覆う遮蔽部と、手洗側排水経路の出口から上記遮蔽部を廻りこんでトラップ筒収納室に連通する迂回流路部とを設けたことを特徴とする壁排水型ターントラップ式水洗便器。
【請求項2】
トラップ筒の下流側開口と室排水口とを左右方向の略同位置に位置させると共に、このトラップ筒の下流側開口及び室排水口と接続部とを左右方向にずらして位置させたことを特徴とする請求項1記載の壁排水型ターントラップ式水洗便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−291612(P2008−291612A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141093(P2007−141093)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】