説明

壁構造体の製造方法

【課題】レンガを積み上げることにより、平面視円弧状部分を有する任意形状の壁構造体を提供する。また、堅牢で物理的に安定な壁構造体を提供する。
【解決手段】平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成し、段Aと段Bは、レンガ1と、レンガ1の水平方向に隣り合って配置する補助部材2により形成する。最上段から数えて2段目以下の段の補助部材2は、レンガ1を配置する工程と、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填する工程とにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視円弧状部分を有する任意形状の花壇及び塀等の壁構造体の製造方法に関する。特に、壁構造体を構成する補助部材を、型枠内にモルタルを充填することにより形成する壁構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンガを積み上げて形成する従来の壁構造体の施工技術には、馬踏み積み法、イギリス積み法及びフランス積み法等がある。これらの施工技術は、いずれも1段目のレンガを、直方体状のレンガの長辺が壁面に平行になるように横長に積む。次に、1段目のレンガの長辺と2段目のレンガの長辺とが半分ずつ重なるようにずらしながら2段目のレンガを積み上げ、同様に3段目以上のレンガを積み上げる。このようにして、壁面が千鳥模様の壁構造体を形成する技術であるが、形成される壁構造体はいずれも平面視直線状であるため、デザインに変化が少なく、独創性が小さくて、飽きられやすい。
【0003】
一方、レンガを積み上げて平面視円形状の壁構造体を形成しようとすると、レンガは直方体状であるため、同じ段の水平方向に隣り合って配置するレンガとレンガとの間には、外周部分に大きな隙間が生じる。従って、下段のレンガの直上に上段のレンガを配置するように積み上げていくと、外周方向に生じる大きな隙間により、水平方向の強度が不十分な構造体となる。一方、下段にあるレンガ同士の隙間の直上に上段のレンガを配置するように積み上げ、高さ方向でレンガを互い違いに配置すると、外周部分に大きな隙間があるため、下段のレンガと上段のレンガとの接合面積が狭くなり、やはり強度が不十分な構造体となる。
【0004】
平面視円形状の壁構造体が有する強度上の問題を改良した花壇が知られている(特許文献1参照)。この円形花壇は、一般家庭におけるガーデニングでも比較的容易に形成することができる。図9は、特許文献1に示す従来の円形花壇の斜視図である。図9に示すように、この円形花壇は、レンガ91とレンガ91との間に補助部材92を配置し、補助部材92として、平面視二等辺三角形状で、レンガ91と同等の高さを有し、二等辺三角形の長さが等しい2辺がレンガ91の長辺より短い部材を使用する。レンガ91と補助部材92との間は、モルタル等の接着剤により接合する(特許文献1参照)。しかし、レンガ91と補助部材92との部材間をモルタル等の接着剤で接合するのみでは強度的に不十分であり、強度的に安定な構造体が得られない点で、改良の余地がある。
【0005】
一方、図9に示す例では、段Aと段Bとを交互に積み上げ、各段は14枚のレンガ91と、14枚の補助部材92とから構成されるため、1個のレンガ及び補助部材あたり、
360度÷14枚÷2≒13度
となる。従って、段Aと段Bを13度ずらして配置することにより、段Aと段Bのうち、下段にある補助部材92の直上にレンガ91が配置し、下段にあるレンガ91の直上に補助部材92が配置する円形花壇を形成することができる。この花壇は、外壁面に凹凸を有するため、デザイン的価値が高い。
【0006】
しかし、図9に示す方法では、平面視円形状以外の壁構造体、即ち平面視半円状、平面視四分の一円状、平面視楕円形状等の壁構造体を形成することはできない。外壁面の意匠性を高めるために、下段にある補助部材92の直上に上段のレンガ91を配置し、下段にあるレンガ91の直上に上段の補助部材92を配置するように構成するのが好ましい。しかし、かかる構成とすると、上段と下段とを所定の角度ずらして配置する必要があるため、平面視円弧状部分の末端で角度の半端が生じ、均一に積み上げることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3135792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
平面形状が優雅な曲線を有する壁構造体や、曲線と直線を組み合わせた更にデザイン性の高い壁構造体へのニーズは大きく、特にガーデニングの分野では、円形状、半円形状、楕円形状等の平面視円弧状部分を有する花壇への関心が高い。本発明の課題は、レンガを積み上げることにより、平面視円弧状部分を有する任意形状の壁構造体の製造方法を提供することにある。また、レンガを多数段積み上げた場合でも、耐震強度が大きく、堅牢で物理的に安定な壁構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、平面視円弧状部分を有する壁構造体の製造方法であって、
(i)平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成し、段Aと段Bとは、レンガ1と、レンガ1の水平方向に隣り合って配置する補助部材2とにより形成し、段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直上に上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直上に上段の補助部材2を配置し、
(ii)レンガ1は、サイズが長辺y×短辺t×高さhの直方体状であり、長辺の方向が円弧の半径方向となるように配置する。
【0010】
(iii)補助部材2は、平面視二等辺三角形状補助部材2aを備え、平面視二等辺三角形状補助部材2aは、高さhの三角柱状であり、平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺の長さがレンガ1の長辺yより短く、長さの等しい2辺が作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、長さの等しい2辺は、レンガ1の長辺と水平方向に隣り合って配置する壁構造体の製造方法であり、
(iv)最上段から数えて2段目以下の段の補助部材2は、レンガ1を配置する工程と、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填する工程とにより形成する。
【0011】
(v)型枠は、鉛直方向に起立する長方形状平面と、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、長方形状平面は、高さがレンガ1の高さhに等しく、型枠の長方形状平面を壁構造体の壁面側に配置する。平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺の作る角度が2θ度であるとき、
2tan-1(t/2y)−5≦2θ≦2tan-1(t/2y)+5
である態様が好ましい。
【0012】
本発明の方法により製造する壁構造体は、段Aが、補助部材2として、さらに平面視台形状補助部材2bを円弧状部分の両末端に備え、平面視台形状補助部材2bは高さhの四角柱状であり、平面視台形状補助部材2bにおける台形の下底はレンガ1の短辺tより短く、上底は下底より短く、上底および下底以外の2辺の長さがいずれもレンガ1の長辺yより短く、上底と下底以外の2辺のうちの1辺と、上底および下底とのなす角度がともに90度であり、上底を壁構造体の内壁面側に配置し、台形の4辺のうち互いに平行な上底と下底以外の2辺の少なくとも一方がレンガ1の長辺と水平方向に隣り合って配置する。平面視台形状補助部材2bにおける台形の4辺のうち、上底および下底以外の2辺と、上底との作る角度が、90度と、(90+α)度であるとき、
θ−5≦α≦θ+5
である態様が好ましい。
【0013】
本発明の他の態様は、平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する壁構造体の製造方法であって、
(i)補助部材2として、さらに平面視長方形状補助部材2cを備え、
(ii)平面視直線状部分は、レンガ1と、レンガ1の水平方向に隣り合って配置する平面視長方形状補助部材2cとからなる段を積み上げて形成し、下段の平面視長方形状補助部材2cの直上に上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直上に上段の平面視長方形状補助部材2cを配置し、
(iii)レンガ1は、長辺の方向が、壁構造体の壁面に直交するように配置する。
【0014】
(iv)平面視長方形状補助部材2cは、高さhの直方体状であり、平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1の長辺と水平方向に隣り合って配置する2辺の長さがレンガ1の長辺yより短く、長方形の4辺のうち、レンガ1の長辺と隣り合って配置する2辺以外の2辺の長さがレンガ1の短辺tと等しい壁構造体の製造方法であり、
(v)最上段から数えて2段目以下の段の平面視長方形状補助部材2cは、レンガ1を配置する工程と、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填する工程とにより形成し、
(vi)型枠は、鉛直方向に起立する長方形状平面と、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、長方形状平面は、高さがレンガ1の高さhに等しく、型枠の長方形状平面を壁構造体の壁面側に配置する。
【0015】
型枠としては、鉛直方向に起立する長方形状の板状体と、長方形状の板状体の最下部に連結する水平な板状体とからなり、鉛直な板状体と水平な板状体の連結部がL字状である型枠を使用することができる。また、三角柱または四角柱の天面を深さ方向に削り取ったようなU字状の凹部を有する型枠を使用することができる。さらに、倒立した四角錐状体であり、四角錐状体の底面が、型枠の鉛直方向に起立する長方形状平面となり、四角錐状体の1つの角錐面が、型枠の水平面となるように偏心した形状を有する型枠を使用することができる。一方、壁構造体の外壁面側に配置する部材と、内壁面側に配置する部材とを、線状体で連結した構造を有する型枠を使用することができる。また、穴部を有するレンガ1を用いることにより、最上段から数えて2段目以下の段と土台を高さ方向に連結する補強用支持部材を内蔵する壁構造体を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、平面視円弧状部分を有する壁構造体、または平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有するデザイン性の高い壁構造体を提供することができる。また、堅牢で機械的安定性が高く、容易に製造できる壁構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の方法により製造する壁構造体の構成単位である段Aと段Bとを例示する平面図である。
【図2】本発明の方法により製造する壁構造体を構成するレンガ1の斜視図である。
【図3】本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視二等辺三角形状補助部材2aの斜視図である。
【図4】本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視二等辺三角形状補助部材2aと、その上に積むレンガ1の配置を示す平面図である。
【図5】本発明の製造方法において使用する型枠6の使用時における斜視図である。
【図6】本発明の製造方法における型枠6の配置を示す図である。
【図7】本発明の製造方法における型枠6の配置を示す図である。
【図8】本発明の方法により製造する壁構造体の構成単位である段Aと段Bとを例示する平面図である。
【図9】特許文献1に示す従来の円形花壇の斜視図である。
【図10】本発明の方法により塀3の側面に形成した壁構造体の斜視図である。
【図11】本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視台形状補助部材2bの斜視図である。
【図12】本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視台形状補助部材2bと、その上に積むレンガ1の配置を示す平面図である。
【図13】本発明の製造方法における型枠6の配置を示す図である。
【図14】平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有し、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段の平面図である。
【図15】平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有し、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段の平面図である。
【図16】平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有し、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段の平面図である。
【図17】平面視円弧状部分X1,X2に連結する平面視直線状部分Uを有し、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段の平面図である。
【図18】本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段であって、最上段から数えて2段目以下に配置する段の平面図である。
【図19】本発明の製造方法における型枠6と、その配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本実施形態において製造する壁構造体は平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に複数段積み上げて形成する。図1は、本発明の方法により製造する壁構造体の構成単位である段Aと段Bとを例示する平面図であり、図1(a)は、段Aの平面図であり、図1(b)は、段Bの平面図である。図1に示す例では、段Aと段Bは、同じ大きさの平面視円形状である。本明細書において、円弧は、四分の一円、三分の一円、半円等のほか、円を含む。段Aと段Bとは、レンガ1と、レンガ1の水平方向に隣り合って配置する補助部材とにより形成し、図1に示す例では、補助部材として、平面視二等辺三角形状補助部材2aを使用する。壁構造体を積み上げる際には、段Aと段Bのうち、下段にある方の平面視二等辺三角形状補助部材2aの直上に上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直上に上段の平面視二等辺三角形状補助部材2aを配置する。従って、製造する壁構造体の外壁面には、高さ方向及び水平方向においてレンガ1が突出し、またレンガ1が千鳥状に配置するため、デザイン的価値の高い優美な壁構造体を提供することができる。
【0019】
図2は、本発明の方法により製造する壁構造体を構成するレンガ1の斜視図である。図2に示すように、レンガ1は、長辺Yと短辺Tと高さHとを有する直方体状であり、レンガ1のサイズは、長辺y×短辺t×高さhである。図1に示すように、レンガ1は、長辺Yの方向が円弧の半径方向CZとなるように配置する。レンガ1は、サイズがJIS規格で定められた「JISレンガ」(長辺y=210mm、短辺t=100mm、高さh=60mm)を使用することができる。また、長辺の長さがJISレンガの半分である「半マスサイズ」(長辺y=105mm、短辺t=100mm、高さh=60mm)、短辺の長さがJISレンガの半分である「ヨウカンサイズ」(長辺y=210mm、短辺t=50mm、高さh=60mm)、高さhがJISレンガの半分である「ハンペンサイズ」(長辺y=210mm、短辺t=100mm、高さh=30mm)等の各種のレンガを使用することができる。
【0020】
レンガは、粘土と砂を混ぜ、成形し、乾燥し、焼成して製造した赤茶色の「赤レンガ」を使用することができる。また、セメントと砂を混ぜて製造した「セメントレンガ」、焼きムラを付けた「焼き過ぎレンガ」、大理石若しくは花崗岩をレンガサイズに切断したもの、直方体の頂点を切り取ったレンガ、直方体の頂点に自然な丸みを付けたレンガ、直方体の面に凹凸のあるレンガ等を使用することができる。これらのレンガを使用することにより、意匠的価値の高い花壇等の壁構造体を製造することができる。
【0021】
図3は、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視二等辺三角形状補助部材2aの斜視図である。図3に示すように、平面視二等辺三角形状補助部材2aは、高さhの三角柱状であるため、レンガ1と平面視二等辺三角形状補助部材2aの高さを揃えることができ、段の積み上げを容易にすることができる。また、平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺2aS,2aTは、図1(a)に示すように、レンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置する。また、平面視二等辺三角形状補助部材2aは、図1(a)に示すように、等しい2辺2aS,2aTが作る頂点が、円弧の内側を向くように配置する。一方、長さの等しい2辺2aS,2aTの長さがレンガ1の長辺yより短い。このため、壁構造体の外壁面では、水平方向に凹凸を形成することができる。
【0022】
図4は、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視二等辺三角形状補助部材2aと、その上に積むレンガ1の配置を示す平面図である。段の積み上げは、下段の補助部材の直上に上段のレンガを配置し、下段のレンガの直上に補助部材を配置する。平面視二等辺三角形状補助部材2aの辺2aS,2aTは、水平方向に隣り合って配置する2個のレンガ(図示していない。)の長辺yより短いため、空洞Mが生じる。平面視二等辺三角形状補助部材2a上に配置するレンガ1の短辺Tの下方が空洞Mとなるように配置すると、形成する壁構造体の外壁面では、レンガの側面と空洞Mとが水平方向と高さ方向で千鳥状に現れ、一層優美で意匠的価値を高めることができる。
【0023】
レンガ1のサイズは、長辺y×短辺t×高さhであり、平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺2aS,2aTの作る角度を2θ度とする。図4に示すように、平面視二等辺三角形状補助部材2a上に配置するレンガ1の短辺Tの下方がちょうど空洞Mとなるようにするには、
tanθ=(t/2)/y
=t/2y
θ=tan-1(t/2y)・・・・・・(式1)
となる。
【0024】
レンガ1と平面視二等辺三角形状補助部材2aの形状の変動等を考慮すると、
2tan-1(t/2y)−5≦2θ≦2tan-1(t/2y)+5 が好ましく、
2tan-1(t/2y)−3≦2θ≦2tan-1(t/2y)+3 がより好ましく、
2tan-1(t/2y)−1≦2θ≦2tan-1(t/2y)+1 が特に好ましい。
JISレンガとヨウカンサイズのレンガを例に取り、θ(度)と好ましい2θ(度)を表1に示す。表中、±5とは、2tan-1(t/2y)±5の範囲を示す。同様に、±3とは、2tan-1(t/2y)±3の範囲、±1とは、2tan-1(t/2y)±1の範囲を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
平面視二等辺三角形状補助部材2aは、花壇または塀等の壁構造体を構成する部材であり、園芸用、土木用または建築用の部材であるから、必ずしも幾何学上の正確な三角柱である必要はなく、頂点の角を切り取った部材、角に自然な丸みを付けた部材、または正確に面取りしていない部材等とすることができる。
【0027】
壁構造体の製造方法において、最上段から数えて2段目以下の段の補助部材2は、型枠により形成する。図5は、本発明の製造方法において使用する型枠の使用時における斜視図である。図5に例示する型枠は、鉛直方向に起立する長方形状平面と、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備える。また、長方形状平面は、高さがレンガ1の高さhに等しい。図5(a)に示す型枠6は、鉛直方向に起立する長方形状の板状体51と、板状体51の最下部に連結する水平な板状体52とからなり、鉛直な板状体51と水平な板状体52の連結部がL字状である。この型枠は、たとえば長方形状の板状体51に、L字状の部材を接合することにより形成することができる。
【0028】
図5(b)に示す型枠6は、倒立した四角錐状体であり、四角錐状体の底面53(図5(b)に示す立体の背面に該当する。)が、型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面となり、四角錐状体の1つの角錐面54(図5(b)に示す立体の底面に該当する。)が、型枠6の水平面となるように偏心した形状を有する。図5(b)に示す例では、頭頂点が切り取られ、平面57を有する例が示されているが、頭頂点を切断しない型枠も有効に使用することができる。図5(c)と図5(d)に示す例では、切り欠き部分58を有する。かかる態様は、切り欠き部分58に補強用支持部材を配置することが容易であるため、穴部を有するレンガ1を用いることにより、最上段から数えて2段目以下の段と土台を高さ方向に連結する補強用支持部材を内蔵する壁構造体を製造する上で有効に利用することができる。
【0029】
型枠の材質は、発泡スチロール、発泡ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、プラスチックス、石綿、石膏、陶磁、セメント、モルタル、コンクリート、大理石若しくは花崗岩等の石材、レンガ、金属または金属酸化物が好適である。発泡ポリオレフィンとしては、発泡ポリエチレン、または発泡ポリプロピレン等を使用することができる。発泡ポリエチレンは、ソフトで、しなやかであり、耐薬品性に優れ、繰り返し使用することができる。発泡ポリプロピレンは、発泡ポリエチレンに比べて耐熱性に優れる。合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム等を使用することができる。プラスチックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等を使用することができる。セメントとしては、たとえばパーライトを骨材とするセメント材料を使用し、必要に応じて無機顔料を配合した材料を使用することができる。金属または金属酸化物としては、ステンレス、アルミニウム、アルミナ等を使用することができる。また、他の材料からなる母材の表面を金属または金属酸化物で被覆した型枠も使用することができる。
【0030】
最上段から数えて2段目以下の段の平面視二等辺三角形状補助部材2aは、レンガ1を配置する工程と、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填する工程とにより形成する。図5(b)に示す型枠を用いた場合を例に取り上げ、平面視二等辺三角形状補助部材2aの形成方法を具体的に説明する。まず、図1に示すように、レンガ1を配置する。次に、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する。図6は、本発明の製造方法における型枠6の配置を示す図である。図6(a)は斜視図であり、図6(b)は平面図である。図6に示すように、鉛直方向に起立する型枠6の長方形状平面6aがレンガ1の側面に接するように型枠6を配置する。また、型枠6の長方形状平面6aを壁構造体の壁面側に配置する。
【0031】
次に、レンガ1と型枠6との間にモルタルを充填することにより補助部材を形成する。かかる工法で製造することにより、従来のように、レンガと補助部材との部材間をモルタル等の接着剤で接合する方法に比べて、レンガと一体化した補助部材を形成できるため、接合強度が増加し、レンガとの継ぎ目を自然な態様とすることができる。また、モルタルの充填後、乾燥することにより補助部材を形成するが、下段の形成時に充填したモルタルが乾燥する前に上段のレンガを配置することにより、上下段間の接合強度を一層高めることができる。モルタルは、セメント又は石灰と、砂とを混ぜて水で練った素材であり、たとえば砂3:セメント1の割合のものを使用することができる。
【0032】
図6に示す態様では、モルタルをレンガ1と型枠6内に充填した後、乾燥することにより、レンガ1と型枠6とが一体化した補助部材を形成する。一方、図7は、本発明の製造方法における型枠6の配置を示す図であり、図7に示す例では、型枠6を配置し、レンガ1と型枠6との間にモルタルを充填し、乾燥した後、型枠6を除去することにより補助部材を形成する。図6に示す態様のみならず、図7に示す態様によっても、従来のようなレンガと補助部材との部材間をモルタル等の接着剤で接合する方法に比べて、レンガと一体化した補助部材を形成できるため、レンガと補助部材との接合強度が増加し、レンガとの継ぎ目を自然な態様とすることができる。なお、最上段も同様に型枠により形成することができるが、型枠が壁構造体の天面に現れる態様を避ける場合には、予め所定の形状に調製した補助部材とレンガとをモルタル等の接合剤で積み上げる態様が好ましい。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態の方法により製造する壁構造体は、平面視半円状部分を有し、平面視半円状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成する。図8は、本発明の方法により製造する壁構造体の構成単位である段Aと段Bを例示する平面図であり、図8(a)は、段Aの平面図であり、図8(b)は、段Bの平面図である。図8に示すように、段Aと段Bは、同様の大きさの平面視円弧状部分Xを有し、実施形態2では、平面視円弧状部分Xは半円形状である。図10は、本発明の方法により塀3の側面に形成した壁構造体の斜視図である。図10に示すように、平面視半円形状の構造体であるため、デザイン的価値が高く、優美な花壇等を提供することができる。
【0034】
図8(a)に示すように、段Aは、レンガ1と、レンガ1と水平方向に隣り合って配置する補助部材2とにより形成する。レンガ1は、実施形態1に述べるレンガと同様のものを使用し、長辺Yの方向が、円弧の半径方向CZとなるように配置する。図8(a)に示すように、段Aは、補助部材2として、平面視二等辺三角形状補助部材2aのほかに、さらに平面視台形状補助部材2bを円弧状部分Xの両末端に備える。平面視二等辺三角形状補助部材2aは、実施形態1と同様にして形成し、長さの等しい2辺2aS,2aTが作る頂点が円弧の内側を向くように形成する。2辺2aS,2aTは、レンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置する。
【0035】
図11は、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視台形状補助部材2bの斜視図である。図11に示すように、平面視台形状補助部材2bは高さhの四角柱状であるため、レンガ1と水平方向に隣り合って配置すると、レンガ1と平面視台形状補助部材2bの高さを揃えることができ、段の積み上げが容易となる。また、図11に示すように、平面視台形状補助部材2bにおける台形は、互いに平行な上底2bJと下底2bKを有し、上底2bJが下底2bKより短く、下底2bKはレンガ1の短辺tより短い。この台形は、上底2bJと下底2bK以外に、2辺2bS,2bTを有し、2辺2bS,2bTの長さはいずれもレンガ1の長辺yより短く、2辺2bS,2bTのうちの1辺と、上底2bJおよび下底2bKとのなす角度がともに90度である。
【0036】
平面視台形状補助部材2bとレンガ1との配置は、図8(a)に示すように、上底2bJが壁構造体の内壁面側に配置し、上底と下底以外の2辺2bS,2bTの少なくとも一方がレンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合うように配置する。図8(a)に示す例では、辺2bSがレンガ1の長辺Yと隣り合って配置しているが、壁構造体の構造により、辺2bSと辺2bTの双方がレンガ1の長辺Yと向かい合って配置することがある。
【0037】
図8(b)に示すように、段Bは、レンガ1と、レンガ1と水平方向に隣り合って配置する平面視二等辺三角形状補助部材2aとにより構成する。段Bにおけるレンガ1は、図8(b)に示すように、長辺Yの方向が円弧の半径方向CZとなるように配置する。段Bにおける平面視二等辺三角形状補助部材2aは、段Aにおける平面視二等辺三角形状補助部材2aと同様に形成し、長さの等しい2辺2aS,2aTが作る頂点が円弧の内側を向くように配置する。また、2辺2aS,2aTは、レンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置する。
【0038】
図10は、平面視半円形状を有する壁構造体を塀3等の側面に形成した花壇の斜視図である。図10に示すように、壁構造体は、段Aと段Bとを交互に配置して複数段積み上げて形成する。また、段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直上に、上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直上に、上段の補助部材2を配置する。たとえば、図8(a)に示す段Aを下段に形成した後、段Aにおける補助部材2の直上に、段Bにおけるレンガ1を配置し、段Aにおけるレンガ1の直上に、段Bにおける補助部材2を配置するように積み上げる。段Aの代わりに段Bを下段とする場合も同様である。レンガ1と補助部材2とが高さ方向で隣り合っているため、壁構造体の外壁面に千鳥状に凹凸が配置し、意匠的価値の高い壁構造体を提供することができ、特に花壇として有用である。
【0039】
平面視台形状補助部材2bは、図8(a)に示すように平面視円弧状部分Xの両末端に配置する。また、平面視台形状補助部材2bは、上底と下底以外の2辺のうち1辺と、上底および下底とのなす角度がともに90度である。図11に示す例では、上底2bJと下底2bK以外の2辺のうちの1辺2bTと、上底2bJおよび下底2bKとのなす角度がともに90度である。壁構造体は、段Aと段Bとを上記の配置構成により複数段積み上げて形成するため、段A中の平面視台形状補助部材2bは、段B中のレンガ1と高さ方向で隣り合う。レンガ1は直方体状であるから、平面視台形状補助部材2bにおいて、上底と下底以外の2辺のうち1辺と、上底および下底とのなす角度がともに90度とすることにより、段A中の平面視台形状補助部材2bと段B中のレンガ1とを高さ方向に揃えて配置することができ、滑らかな平面視円弧状部分を有する壁構造体を形成することができる。かかる観点から、90度とは、厳密に90度である必要はなく、90±10度以内が好ましく、90±5度以内がより好ましい。
【0040】
図12は、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する平面視台形状補助部材2bと、その上に積むレンガ1の配置を示す平面図である。平面視台形状補助部材2bの辺2bSは、水平方向に隣り合って配置するレンガ1(図示していない。)の長辺yより短いため、空洞Mが生じる。図12に示すように、平面視台形状補助部材2b上に配置するレンガ1の短辺T1の下方がちょうど空洞Mとなるように配置すると、形成する壁構造体の外壁面に現れるレンガ1の直下にちょうど同じ大きさの空洞Mが現れるため、高さ方向及び水平方向に形成される凹凸が千鳥状となり、外壁面の意匠的価値が高まる。
【0041】
図12に示すように、平面視台形状補助部材2bにおける台形の4辺のうち、上底2bJおよび下底2bK以外の2辺2bS,2bTと、上底2bJとの作る角度が、90度と(90+α)度であるとし、平面視台形状補助部材2b上に配置するレンガ1の短辺T1の下方がちょうど空洞Mとなるようにするための角度αの値を検討する。図8(b)に示す例では、段Bは、合計9個のレンガ1と、合計8個の二等辺三角形状補助部材2aとにより構成される。また、段Bにおける円弧状部分の両末端にはレンガ1が配置し、レンガ1とレンガ1との間に平面視二等辺三角形状補助部材2aが配置するため、
段Bにおける平面視二等辺三角形状補助部材2aの個数n=レンガ1の個数−1
である。
【0042】
平面視二等辺三角形状補助部材2aにおいて、辺2aSと辺2aTとが作る角は2θであり、円弧の中心をCとすると、辺2aSとCWは平行であり、辺2aTとCZは平行であるから、
∠WCZ=2θ
であり、
円弧の中心角=2θ×段Bにおける平面視二等辺三角形状補助部材2aの個数
=2θ×n ・・・・・(式2)
となる。段Aと段Bとは、高さ方向に交互に重ねて配置し、下方にある段の補助部材2の直上に、上段のレンガ1を配置し、下方にある段のレンガ1の直上に、上段の補助部材2を配置するように積み上げる。したがって、段Aにおいては、段Bのn個の平面視二等辺三角形状補助部材2a上にレンガ1を配置するため、段Aの円弧状部分に配置するレンガ1はn個となり、n個のレンガ1の間に平面視二等辺三角形状補助部材2aを配置する。したがって、段Aにおける平面視二等辺三角形状補助部材2aはn−1個となる。
【0043】
図8(b)の場合と同様に、図8(a)においても、平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺が作る頂角は2θであり、
∠WCZ=2θ
である。したがって、段Aにおいて、
二等辺三角形状補助部材2aにより形成される中心角=2θ×補助部材2aの個数
=2θ×(n−1)
となる。上記の(式2)より、段Aと段Bにより形成される円弧の中心角は等しく、2θ×nであるから、
2θ×n−2θ×(n−1)=2θ
の角度を、段Aの両端に配置する台形状補助部材2bにより調整することになる。
【0044】
下段のレンガ1の直上に補助部材2を配置し、下段の補助部材2の直上にレンガ1を配置するように積み上げ、壁構造体の側面に同様の凹凸を形成するため、円弧の両端に配置する平面視台形状補助部材2bは同一形状とする態様が好ましい。このため、図8(a)に示すように、
α×2=2θ
α=θ
となる態様が好ましく、レンガ1と補助部材2の形状の変動等を考慮すると、
θ−5≦α≦θ+5 が好ましく、
θ−3≦α≦θ+3 がより好ましく、
θ−1≦α≦θ+1 が特に好ましい。
【0045】
外壁面の意匠性を高めるために、下段にある補助部材2の直上に上段のレンガ1を配置し、下段にあるレンガ1の直上に上段の補助部材2を配置するように構成すると、上段と下段とを所定の角度ずらして配置する必要があり、平面視円弧状部分の末端で角度の半端が生じるため、レンガ1を均一に配置することができない。本発明においては、αとθとの関係を調整し、平面視台形状補助部材2bを構成要素とすることにより、角度の半端を調整し、平面視円弧状部分を有する壁構造体を提供することができる。図12は、平面視台形状補助部材2bにおける台形の上底2bJと、高さ方向で隣り合うレンガ1の短辺T2が重なっている。かかる態様は、レンガ1と平面視台形状補助部材2bとの接合面積が広く、強固な壁構造体を形成できる点で好ましい。一方、レンガ1と平面視台形状補助部材2bとの接合強度が十分であるときは、図12において、上底2bJを図面の左方向に平行移動したような高さの低い平面視台形状補助部材2bとすることができる。
【0046】
次に、図12に示すように、平面視台形状補助部材2bにおける台形の上底2bJと、高さ方向で隣り合うレンガ1の短辺T2が重なるときの上底2bJの長さjについて検討する。
tanα=(t−j)/y
α=tan-1{(t−j)/y} ・・・・・(式3)
であり、上記の(式1)より、
θ=tan-1(t/2y)
であり、上記の(式3)より、
α=tan-1{(t−j)/y}
である。
【0047】
α=θより、
t/2y=(t−j)/y
t=2(t−j)
t=2t−2j
j=t/2
となる。したがって、レンガ1と補助部材2の形状の変動等を考慮すると、
(t/2)×0.9≦j≦(t/2)×1.1
即ち、t×0.45≦j≦t×0.55が好ましく、
(t/2)×0.92≦j≦(t/2)×1.08
即ち、t×0.46≦j≦t×0.54がより好ましく、
(t/2)×0.95≦j≦(t/2)×1.05
即ち、t×0.475≦j≦t×0.525が特に好ましい。
【0048】
平面視台形状補助部材2bは、花壇または塀等の壁構造体を構成する部材であり、園芸用、土木用または建築用の部材であるから、必ずしも幾何学上の正確な四角注である必要はなく、頂点の角を切り取った態様、角に自然な丸みを付けた態様、または正確に面取りしていない態様等とすることができる。
【0049】
壁構造体の製造方法において、最上段から数えて2段目以下の段の平面視二等辺三角形状補助部材2aは、実施形態1と同様の方法により形成することができる。また、最上段から数えて2段目以下の段の平面視台形状補助部材2bは、レンガ1を配置する工程と、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填する工程とにより形成する。使用する型枠は、図5に示すように、鉛直方向に起立する長方形状平面と、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、長方形状平面は、高さがレンガ1の高さhに等しいものを使用する。図5(a)に示す型枠を使用して、最上段から数えて2段目以下の段Aにおける平面視台形状補助部材2bを作成する方法を例示する。まず、図8(a)に示すように、レンガ1を配置する。次に、平面視円弧状部分Xの両末端に平面視台形状補助部材2bを形成するために、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する。
【0050】
図13は、本発明の製造方法における型枠6の配置を示す図である。図13に示すように、レンガ1の側面に接するように型枠6を配置する。たとえば、図13(a)に示すように、2つの型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面6aを壁構造体の内壁面側と外壁面側に各々配置する。次に、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填することにより補助部材を形成する。かかる方法で製造することにより、従来のようなレンガと補助部材との部材間をモルタル等の接着剤で接合する方法に比べて、レンガと一体化した補助部材を形成できるため、接合強度が大きく、レンガとの継ぎ目を自然な態様にすることができる。また、モルタルの充填後、乾燥することにより補助部材を形成するが、下段の形成時に充填したモルタルが乾燥する前に上段のレンガを配置することにより、上下段間の接合強度を一層高めることができる。
【0051】
図5(b)に示す型枠を使用して、平面視台形状補助部材2bを作成する方法を例示する。まず、図8(a)に示すように、レンガ1を配置する。次に、平面視円弧状部分Xの両末端に平面視台形状補助部材2bを形成するために、図13(b)に示すように、レンガ1の側面に接するように型枠6を配置する。2つの型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面6aを壁構造体の内壁面側と外壁面側に各々配置する。次に、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填することにより、図13(a)の場合と同様に補助部材を形成することができる。また、図13(c)と図13(d)に示すように、型枠6が、壁構造体の外壁面側に配置する部材と、内壁面側に配置する部材とを、鉄線等の線状体6bで連結した構造を有する場合は、モルタルの充填時に型枠6の配置が安定する点で好ましい。
【0052】
実施の形態1と同様に、モルタルをレンガと型枠内に充填した後、乾燥することにより、モルタルとレンガと型枠とが一体となった補助部材を形成することができる。また、型枠を配置し、レンガと型枠との間にモルタルを充填し、乾燥した後、型枠を除去する方法により補助部材を形成することができる。なお、最上段も同様に型枠により形成することができるが、型枠が壁構造体の天面に現れる態様を避ける場合には、予め所定の形状に調製した補助部材とレンガとをモルタル等の接合剤で積み上げる態様が好ましい。
【0053】
穴部を有するレンガ1を用いることにより、最上段から数えて2段目以下の段と土台を高さ方向に連結する補強用支持部材を内蔵する壁構造体を形成することができ、耐震性の大きい花壇等を提供できる。また、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填して補助部材2を形成するため、鉄筋をモルタルで十分に包み込むことができ、レンガと鉄筋と一体化した補助部材を形成することができる。このため、堅牢で機械的に安定した壁構造体を形成でき、他の実施形態においても同様である。
【0054】
図18は、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段であって、最上段から数えて2段目以下に配置する段の平面図を示す。図18(a)に示す段Aと、図18(b)に示す段Bとを交互に積み上げると、平面視円弧状部分を有する壁構造体を形成することができる。図18に示すように、最上段から数えて2段目以下に配置する段のレンガ1は穴部を有し、たとえば土台に補強用支持部材4を鉛直方向に形成した後、補強用支持部材4にレンガ1の穴部を通過させながらレンガ1を配置し、レンガ1の穴部にモルタル等を注入する。次に、レンガ1の側面に接するように型枠を配置した後、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填することにより堅牢な壁構造体を形成することができる。
【0055】
(実施形態3)
本実施形態の方法により製造する壁構造体は、平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する。図14と図15は、平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有し、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段の平面図であり、図14に示す段と、図15に示す段とを交互に積み上げて形成することにより、平面視楕円形状の壁構造体を容易に形成することができる。図14に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図8(b)に示す段Bの構成であり、図15に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図8(a)に示す段Aの構成である。壁構造体は、平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成するから、図14と図15に示す例のほかに、同一段の一方の平面視円弧状部分Xが段Aの構成であり、同一段の他方の平面視円弧状部分Xが段Bの構成である態様とすることも可能である。
【0056】
平面視直線状部分Uは、補助部材2として、さらに平面視長方形状補助部材2cを備え、レンガ1と、レンガ1と水平方向に隣り合って配置する平面視長方形状補助部材2cとからなる段を積み上げて形成する。また、下段の平面視長方形状補助部材2cの直上に上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直上に上段の平面視長方形状補助部材2cを配置する。レンガ1は、長辺Yの方向が、壁構造体の壁面に直交するように配置する。また、平面視長方形状補助部材2cは高さhの四角柱状であるため、積み上げた後、レンガ1と平面視長方形状補助部材2cとは高さが同等となり、段の積み上げを容易にすることができる。平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置する2辺2cS,2cTの長さは、レンガ1の長辺yより短いため、形成する壁構造体の壁面には、平面視長方形状補助部材2cの部位に空洞が生じる。
【0057】
長方形の4辺のうち、2辺2cS,2cT以外の2辺の長さは、レンガ1の短辺tと等しい。また、図14に示す段と、図15に示す段とを交互に積み上げ、下段の平面視長方形状補助部材2cの直上に上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直上に上段の平面視長方形状補助部材2cを配置する。従って、形成する壁構造体の壁面は、平面視長方形状補助部材2cとレンガ1とが高さ方向で交互に配置するため、平面視長方形状補助部材2cの所に生じる空洞も千鳥状に配置し、デザイン的価値の高い壁構造体を提供することができる。また、レンガを切断加工する必要がなく、一般家庭でも容易に優美な壁構造体を形成できる。
【0058】
図16は、平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有し、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段の平面図である。図16(a)に示す段と、図16(b)に示す段とを交互に積み上げて形成することにより、図16に示す平面視四分円状のコーナー(図16におけるXに該当する。)を4個有する平面視略長方形状の壁構造体を容易に形成することができる。同様にして、平面視略多角形状であり、コーナーが平面視円弧状の壁構造体を容易に形成することができる。図17は、平面視円弧状部分X1,X2に連結する平面視直線状部分Uを有し、本発明の方法により製造する壁構造体を構成する段の平面図である。図17において、X1とX2とを交換した構成を有する段と、図17に示す段とを交互に積み上げて形成する壁構造体は、塀3等の側面に平面視半楕円形状に突き出した構造を有し、優美でデザイン的価値が高く、花壇等として有用である。
【0059】
最上段から数えて2段目以下の段の平面視円弧状部分における平面視二等辺三角形状補助部材2aと平面視台形状補助部材2bとは、実施形態1及び実施形態2と同様の方法で形成することができる。平面視長方形状補助部材2cは、レンガ1を配置する工程と、レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填する工程とにより形成することができる。型枠は、鉛直方向に起立する長方形状平面と、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、長方形状平面の高さがレンガ1の高さhに等しく、型枠の長方形状平面を壁構造体の壁面側に配置して形成する。従って、平面視長方形状補助部材2cは、実施形態2の平面視台形状補助部材2bと同様の方法で形成することができるが、本実施形態では、他の態様の型枠を用いる製造方法を例示する。
【0060】
図19は、本発明の製造方法における型枠6と、その配置を示す図であり、図19(a)は型枠6の斜視図であり、図19(b)はレンガ1と型枠6の配置を示す斜視図である。型枠6は、図19(a)に示すように、鉛直方向に起立する長方形状平面6aと、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、長方形状平面の高さはレンガ1の高さhに等しい。また、型枠6は、四角柱の天面を深さ方向に削り取ったようなU字状の凹部6cを有する。かかるU字状の凹部6cを有することにより、後の工程でモルタルを充填すると、レンガ1と型枠6と一体化した平面視長方形状補助部材2cを形成することができる。このため、従来のようなレンガと補助部材との部材同士をモルタル等で接合する方法に比べて、接合強度を増加させることができる。同様にして、三角柱又は四角柱の天面を深さ方向に削り取ったようなU字状の凹部を有する型枠により、平面視二等辺三角形状補助部材2aまたは平面視台形状補助部材2bを形成することができる。また、穴部を有するレンガ1と穴部を有する型枠6とを用いることにより、最上段から数えて2段目以下の段と土台とを高さ方向に連結する補強用支持部材を内蔵する壁構造体を製造することができる。
【0061】
図19(a)に示す型枠を使用して、最上段から数えて2段目以下の段における平面視長方形状補助部材2cを形成する方法を例示する。まず、図14に示すように、平面視直線状部分Uにレンガ1を配置する。次に、図19(b)に示すように、レンガ1の側面に接するように型枠6を配置する。また、型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面6aが、壁構造体の内壁面側と外壁面側を向くように配置する。次に、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填することにより平面視長方形状補助部材2cを形成する。図19に示すようにして、平面視台形状補助部材2bを形成することができる。また、三角柱の天面を深さ方向に削り取ったようなU字状の凹部を有する型枠を用いることにより平面視二等辺三角形状補助部材2aを形成することができる。図15に示す段についても同様の方法で形成することができる。また、モルタルの充填後、乾燥することにより補助部材を形成するが、下段の形成時に充填したモルタルが乾燥する前に上段のレンガを配置することにより、上下段間の接合強度を一層高めることができる。最上段は、型枠により形成することができるが、型枠が壁構造体の天面に現れる態様を避ける場合には、予め所定の形状に調製した補助部材とレンガとをモルタル等の接合剤で積み上げる態様が好ましい。
【0062】
(実施例1)
本実施例においては、平面視円形状で5段積みの花壇を形成した。レンガ1は、図2に示すように、長辺Y(y=210mm)、短辺T(t=100mm)、高さH(h=60mm)とを有する直方体状のJISレンガ(赤レンガ)を使用した。最初に、花壇を形成する場所にモルタルを厚さ100mm形成し、水平となるように調整し、乾燥して、土台とした。モルタルは、砂3:セメント1の割合で作成した。次に、形成した土台上に直径500mmの円を描き、描いた線に沿って、円の外側に第1段目のレンガ1を配置した。第1段目は、図1(a)に示すような段Aの構成にしようと考え、レンガ1は、図1(a)に示すように、長辺Yの方向が円弧の半径方向CZとなるように配置した。
【0063】
最上段から数えて2段目以下の段の平面視二等辺三角形状補助部材2aは、型枠により形成した。使用した型枠の使用時における斜視図を図5(b)に示す。図5(b)に示す型枠6は、倒立した四角錐状体であり、四角錐状体の底面53(図5(b)に示す立体の背面に該当する。)が、型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面となり、四角錐状体の1つの角錐面54(図5(b)に示す立体の底面に該当する。)が型枠6の水平面となるように偏心した形状を有するものを使用した。従って、この型枠は、鉛直方向に起立する長方形状平面と、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを有していた。また、長方形状平面は、高さが60mmであり、図5(b)に示すように、頭頂点が切り取られ、平面57を有するものを使用した。型枠は、発泡スチロール製であり、セメント調に灰色で塗装したものを使用した。
【0064】
平面視二等辺三角形状補助部材2aは、レンガ1を配置した後、レンガ1の側面に接するように型枠を配置し、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填して形成した。具体的には、レンガ1を配置した後、図6に示すように、鉛直方向に起立する型枠6の長方形状平面6aがレンガ1の側面に接するように配置し、型枠6の長方形状平面6aを壁構造体の壁面側に配置した。次に、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填し、平面視二等辺三角形状補助部材2aを形成した。平面視二等辺三角形状補助部材2aは、長さの等しい2辺が作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、長さの等しい2辺はレンガ1の長辺と水平方向に隣り合って配置する構成を有していた。
【0065】
続いて、段A上に、図1(b)に示すような段Bを段Aと同様の方法で形成した。即ち、レンガ1を配置した後、レンガ1の側面に接するように型枠を配置し、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填することにより、平面視二等辺三角形状補助部材2aを形成した。レンガ1及び型枠は、段Aと同様のものを使用し、下段にある段Aの平面視二等辺三角形状補助部材2aの直上に上段の段Bのレンガ1を配置し、下段にある段Aのレンガ1の直上に上段の段Bの平面視二等辺三角形状補助部材2aを配置した。図1(b)に示すように、平面視二等辺三角形状補助部材2aは、長さの等しい2辺が作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、長さの等しい2辺は、レンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置する構成を有していた。
【0066】
このようにして段Aと段Bとを交互に4段積み上げた後、最上段に段Aを形成した。最上段に形成した段Aは、図1(a)に示すような配置とし、下段と同様のレンガ1を使用した。また、下段で形成した平面視二等辺三角形状補助部材2aと同様の形状の部材を、モルタルにより別途製造し、製造した部材とレンガ1とを、モルタルを接合剤にして積み上げた。その結果、段Aと段Bとは、レンガ1と、レンガ1の水平方向に隣り合って配置する平面視二等辺三角形状補助部材2aとにより構成され、段Aと段Bのうち、下段にある方の平面視二等辺三角形状補助部材2aの直上に上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直上に上段の平面視二等辺三角形状補助部材2aを配置した。
【0067】
製造した壁構造体は、内径500mm、外径920mmの平面視円形状の花壇であり、外壁面は、高さ方向及び水平方向においてレンガ1が千鳥状に配置するため、デザイン的価値の高い優美な花壇であった。また、かかる方法で製造することにより、従来のようなレンガと補助部材との部材間をモルタル等で接合する方法に比べて、レンガと一体化した補助部材を形成できるため、接合強度が大きく、堅牢で安定した壁構造体を提供することができた。また、レンガ1との継ぎ目が自然な態様となり、見栄えが改善した。
【0068】
形成した平面視二等辺三角形状補助部材2aは、高さ60mmの三角柱状であり、図4に示すように、二等辺三角形の長さの等しい2辺2aS,2aTの長さが171mmであり、レンガ1の長辺Y(y=210mm)より短かった。平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺2aS,2aTの作る角2θは22.5度であった。
【0069】
一方、tan-1(t/2y)の値は、
tan-1(t/2y)
=tan-1(100/2×210)
=13.4
2tan-1(t/2y)−5=21.8
2tan-1(t/2y)+5=31.8
21.8<22.5<31.8
であるから、
2tan-1(t/2y)−5<2θ<2tan-1(t/2y)+5
であった。
【0070】
(実施例2)
本実施例では、平面視半円形状で5段積みの花壇を塀の側面に形成した。まず、実施例1と同様に、花壇を形成する場所に厚さ100mmの土台を形成した。次に、レンガで形成した塀の側面に直径500mmの半円を描き、描いた線に沿って、半円の外側に第1段目のレンガ1を配置した。第1段目は、図8(a)に示すように段Aの構成とし、レンガ1は、実施例1と同様のものを使用し、長辺Yの方向が円弧の半径方向CZとなるように配置した。平面視二等辺三角形状補助部材2aは、実施例1と同様に形成した。
【0071】
平面視台形状補助部材2bは、レンガ1を配置した後、レンガ1の側面に接するように型枠を配置し、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填することにより形成した。使用した型枠の斜視図を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、型枠は、鉛直方向に起立する長方形状の板状体51と、長方形状の板状体51の最下部に連結する水平な板状体52とからなり、鉛直な板状体51と水平な板状体52の連結部がL字状であった。従って、この型枠は、鉛直方向に起立する長方形状平面と、長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、長方形状平面の高さが60mmであった。図5(a)に示す型枠は、セメント製の長方形状板状体51に、ステンレス製でL字状に屈曲した板状体を接合して形成した。次に、図8(a)に示すように円弧状部分Xの両末端に平面視台形状補助部材2bを形成するために、レンガ1の側面に接するように型枠を配置した。
【0072】
型枠は、図13(a)に示すように、型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面6aが、レンガ1の側面に接するように配置し、2つの型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面6aを壁構造体の内壁面側と外壁面側に各々配置した。次に、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填することにより平面視台形状補助部材2bを形成した。次に、段A上に段Bを形成した。図8(b)は、段Bの平面図であり、レンガ1は実施例1と同様のものを使用し、レンガ1の長辺Yが円弧の半径方向CZを向くように配置した。また、平面視二等辺三角形状補助部材2aは、実施例1と同様に形成した。
【0073】
このようにして段Aと段Bとを交互に4段積み上げた後、最上段に段Aを形成した。最上段に形成した段Aは、図8(a)に示すような配置とし、下段と同様のレンガ1を使用した。また、下段で形成した平面視二等辺三角形状補助部材2aと平面視台形状補助部材2bと同様の形状の部材を各々別途形成した後、図8(a)に示すように積み上げた。最上段に積み上げた補助部材2は、パーライトを骨材とするセメント材料に無機顔料を配合し、濃いグレー調とした部材を使用し、レンガ1とこれらの部材を、モルタルを接合剤にして積み上げた。その結果、段Aと段Bとは、レンガ1と、レンガ1の水平方向に隣り合って配置する補助部材2とにより構成され、段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直上に上段のレンガ1が配置し、下段にある方のレンガ1の直上に上段の補助部材2が配置する平面視円形状の壁構造体が得られた。
【0074】
製造した壁構造体は、内径500mm、外径920mmの平面視半円形状部分を有し、外壁面は、高さ方向及び水平方向においてレンガ1と空洞部分が千鳥状に配置するため、デザイン的価値の高い優美な花壇であった。また、従来の花壇に比べ、レンガと一体化した補助部材を形成できるため、接合強度が大きく、堅牢で安定した花壇を提供することができた。特に、本実施例では下段の形成時に充填したモルタルが乾燥する前に上段のレンガを配置したため、上下段間の接合強度を一層高めることができた。また、図10に示すように、塀3等の側面に、平面視半円形状で、デザイン的価値が高い、優美な花壇を形成することができた。
【0075】
平面視二等辺三角形状補助部材2aは、高さ60mmの三角柱状であり、図4に示すように、二等辺三角形の長さの等しい2辺2aS,2aTの長さが170mmであり、レンガ1の長辺Y(y=210mm)より短いものであった。また、二等辺三角形の長さの等しい2辺2aS,2aTの作る角2θは24度であり、θは12度であった。一方、実施例1と同様のサイズのレンガ1を使用したため、
θ=tan-1(t/2y)=13.4
であり、
2tan-1(t/2y)−3=23.8
2tan-1(t/2y)+3=29.8
23.8<24<29.8
であるから、
2tan-1(t/2y)−3<2θ<2tan-1(t/2y)+3
であった。
【0076】
また、平面視台形状補助部材2bは高さ60mmの四角柱状であり、図12に示すように、台形の各辺の長さが、上底2bJ(j=50mm)、下底2bK(84mm)、辺2bT(168mm)、辺2bS(171mm)であった。したがって、台形の上底2bJが下底2bKより短く、上底および下底以外の2辺2bS,2bTの長さ寸法がいずれもレンガ1の長辺(y=210mm)より短く、上底2bJ(j=50mm)とレンガ1の短辺T(t=100mm)との長さ関係は、
t×0.475≦j≦t×0.525
であった。また、上底と下底以外の2辺のうちの1辺2bTと、上底2bJおよび下底2bKとのなす角度がともに90度であり、角αは11.3度であり、角θは12度より、
θ−1<α<θ+1であった。
【0077】
段Aでは、図8(a)に示すように、平面視台形状補助部材2bは、上底2bJが円弧の内側を向くように、円弧状部分Xの両末端に配置し、互いに平行な上底と下底以外の2辺のうち1辺2bSがレンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置した。平面視二等辺三角形状部材2aは、長さの等しい2辺2aS,2aTが作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、また長さの等しい2辺2aS,2aTは、レンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置した。段Bでは、図8(b)に示すように、レンガ1と平面視二等辺三角形状補助部材2aとは、水平方向で隣り合って配置した。レンガ1は、長辺Yの方向が円弧の半径方向CZとなるように配置した。また、平面視二等辺三角形状補助部材2aの二等辺三角形における長さが等しい2辺2aS,2aTの作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、2辺2aS,2aTがレンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置した。また、下段にある段の補助部材2の直上にレンガ1が配置し、下段にある段のレンガ1の直上に補助部材2が配置した。
【0078】
(実施例3)
本実施例においては、平面視楕円形状で6段積みの花壇を形成した。この花壇は、平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する。最初に、図15に示す段を形成した後、その上に図14に示す段を積み上げ、その後、図15に示す段と図14に示す段とを交互に積み上げた。第1段目を形成するときは、図15に示すように、予め土台に直径D500mmの半円と、長さL800mmの直線を描き、描いた線に沿って、線の外側にレンガ1を配置した。図14に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図8(b)に示す段Bの構成であり、図15に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図8(a)に示す段Aの構成である。また、平面視円弧状部分は、段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直上に上段のレンガ1が配置し、下段にある方のレンガ1の直上に上段の補助部材2が配置するように形成した。最上段から数えて2段目以下の段の平面視円弧状部分は、実施例2と同様の方法で形成した。
【0079】
平面視直線状部分における平面視長方形状補助部材2cは、レンガ1を配置する工程と、図19(b)に示すように、レンガ1の側面に接するように型枠6を配置する工程と、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填する工程とにより形成した。型枠は、図19(a)に示すように、鉛直方向に起立する長方形状平面6aと、長方形状平面6aの最下部に連結する水平な底面とを備え、長方形状平面6aの高さが60mmのものを使用した。型枠6は、図19(b)に示すように、鉛直方向に起立する長方形状平面6aが、壁構造体の内壁面側と外壁面側を向くように配置した。また、四角柱の天面を深さ方向に削り取ったようなU字状の凹部6cを有する型枠6を使用した。天面にU字状の凹部6cを有する型枠を使用することにより、後の工程でモルタルを充填すると、レンガ1と型枠6とをモルタルで一体化し、補助部材を形成するため、従来のようなレンガと補助部材との部材間をモルタル等の接着剤で接合する方法に比べて接合強度が大きく、堅牢で安定した壁構造体を提供できた。また、レンガとの継ぎ目が自然な態様となり、意匠的価値が高められた。
【0080】
平面視直線状部分Uは、図14と図15に示すように、レンガ1と平面視長方形状補助部材2cとが水平方向で隣り合うように配置し、レンガ1は、長辺Yの方向が壁構造体の壁面に直交するように配置した。平面視長方形状補助部材2cは、高さ60mmの直方体状であり、レンガ1と同じ高さを有するため、積み上げた後、レンガ1と平面視長方形状補助部材2cとは、高さが同等となり、壁構造体の形成が容易であった。平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1の長辺と水平方向で隣り合って配置する2辺2cS,2cTの長さは168mmであり、レンガ1の長辺Y(y=210mm)より短いため、形成する壁構造体の壁面に空洞が生じた。
【0081】
長方形の4辺のうち、レンガ1の長辺Yと水平方向に隣り合って配置する2辺2cS,2cT以外の2辺の長さは、レンガ1の短辺T(t=100mm)と同じであり、図14に示す段と、図15に示す段とを交互に積み上げ、下段の補助部材2の直上に上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直上に上段の補助部材2を配置した。その他の点は、実施例2と同様とした。図14に示す段と、図15に示す段とを交互に5段積み上げた後、図14に示す段を最上段に形成した。最上段に形成した段は、下段と同様のレンガ1を使用して形成した。また、下段で形成した補助部材2と同様の形状の部材を予め別途形成し、積み上げた。補助部材2は、パーライトを骨材とするセメント材料に無機顔料を配合し、濃いグレー調としたものを用いた。また、レンガ1と補助部材2との部材間をモルタルで接合して、形成した。その結果、各段は、レンガ1と、レンガ1と水平方向に隣り合って配置する補助部材2とにより構成され、下段の補助部材2の直上に上段のレンガ1が配置し、下段のレンガ1の直上に上段の補助部材2が配置する壁構造体が得られた。
【0082】
この壁構造体は、平面視円弧状部分が、内径500mm、外径920mmであり、平面視直線状部分が、長さL800mmであり、6段積みの平面視楕円形状の花壇であった。本実施例のレンガ1と補助部材2との配置構成によれば、堅牢で安定した構造体が得られ、積み上げ施工が容易であった。また、形成した壁構造体の壁面には、補助部材2を配置する部分に空洞Mが生じ、空洞Mは、水平方向と高さ方向に千鳥状に現れるため、優美でデザイン的価値の高い花壇が得られた。
【0083】
(実施例4)
本実施例においては、平面視半円形状で7段積みの壁構造体である花壇を塀の側面に形成した。この花壇は、穴部を有するレンガ1を使用し、最上段から数えて2段目以下の段と土台とを高さ方向に連結する補強用支持部材を設置した。レンガ1は、図2に示す中央部Frに直径20mmの穴部を高さ方向に形成したレンガを使用した。第1段目の段構成は、図18(a)に示すように段Aの構成とし、第2段目の段構成は、図18(b)に示すように段Bの構成とし、段Aと段Bとを交互に合計6段積み上げた。
【0084】
補強用支持部材4として、長さ400mmの節のある異型鉄筋D10(公称直径9.53mm、最大外径11.13mm)を使用した。この鉄筋の下部40mmを土台に埋設し、図18に示すように、鉛直方向に17本配置した後、鉄筋にレンガ1の穴部を通過させながらレンガ1を配置し、レンガ1の穴部にモルタルを注入した。次に、レンガ1の側面に接するように型枠を配置した後、レンガ1と型枠の間にモルタルを充填することにより補助部材2を形成した。平面視二等辺三角形状補助部材2aは、レンガ1と型枠とからなる隙間に鉄筋が配置するようにして、実施例1と同様に形成した。
【0085】
平面視台形状補助部材2bの形成に使用した型枠と、レンガとの配置を図13(d)に示す。図13(d)に示すように、型枠6は、鉛直方向に起立する長方形状平面6aと、長方形状平面6aの最下部に連結する水平な底面を備え、長方形状平面の高さは60mmであった。また、図13(d)に示すように、型枠6は、壁構造体の外壁面側に配置する部材と、内壁面側に配置する部材とを鉄線等の線状体6bで連結した構造を有する。鉄筋(図示していない。)が、型枠6とレンガ1の隙間に配置するように調整した。型枠は、図13(d)に示すように、型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面6aが、レンガ1の側面に接するように配置し、2つの型枠6の鉛直方向に起立する長方形状平面6aを壁構造体の内壁面側と外壁面側に各々配置した。次に、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填することにより平面視台形状補助部材2bを形成した。次に、段A上に段Bを形成した。他の点は、実施例2と同様にした。
【0086】
その結果、内径500mm、外径920mmの平面視円弧状部分を有し、7段積みの花壇を塀3の側面に形成することができた。本実施例の壁構造体は、最上段から数えて2段目以下の段と土台を高さ方向に連結する補強用支持部材を内蔵する。また、レンガ1と型枠6の間にモルタルを充填する工法により補助部材2を形成したため、鉄筋をモルタルで十分に包み込むことができ、レンガと鉄筋と一体化した補助部材を形成することができた。このため、堅牢で機械的に安定した壁構造体を形成できた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
平面視円弧状部分を有する任意形状の壁構造体を提供することができる。この壁構造体は、堅牢で機械的に安定であり、花壇及び塀等として有用であり、レンガを切断加工することなく、平易に形成することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 レンガ、2 補助部材、2a 平面視二等辺三角形状補助部材、2b 平面視台形状補助部材、2c 平面視長方形状補助部材、3 塀、6 型枠、U 平面視直線状部分、X 平面視円弧状部分、Y 長辺。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円弧状部分を有する壁構造体の製造方法であって、
(i)前記平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成し、
前記段Aと段Bとは、レンガ1と、該レンガ1の水平方向に隣り合って配置する補助部材2とにより形成し、
前記段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直上に上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直上に上段の補助部材2を配置し、
(ii)前記レンガ1は、サイズが長辺y×短辺t×高さhの直方体状であり、長辺の方向が前記円弧の半径方向となるように配置し、
(iii)前記補助部材2は、平面視二等辺三角形状補助部材2aを備え、
該平面視二等辺三角形状補助部材2aは、
高さhの三角柱状であり、平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺の長さがレンガ1の長辺yより短く、
長さの等しい前記2辺が作る頂点が前記円弧の内側を向くように配置し、
長さの等しい前記2辺は、レンガ1の長辺と水平方向に隣り合って配置する壁構造体の製造方法であり、
(iv)最上段から数えて2段目以下の段の補助部材2は、
レンガ1を配置する工程と、
前記レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、
前記レンガ1と前記型枠の間にモルタルを充填する工程と
により形成し、
(v)前記型枠は、
鉛直方向に起立する長方形状平面と、該長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、前記長方形状平面は、高さがレンガ1の高さhに等しく、
型枠の前記長方形状平面を壁構造体の壁面側に配置する壁構造体の製造方法。
【請求項2】
前記平面視二等辺三角形状補助部材2aにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺の作る角度が2θ度であるとき、
2tan-1(t/2y)−5≦2θ≦2tan-1(t/2y)+5
である請求項1に記載の壁構造体の製造方法。
【請求項3】
前記段Aは、補助部材2として、さらに平面視台形状補助部材2bを前記円弧状部分の両末端に備え、
該平面視台形状補助部材2bは、
高さhの四角柱状であり、平面視台形状補助部材2bにおける台形の下底はレンガ1の短辺tより短く、上底は下底より短く、上底および下底以外の2辺の長さがいずれもレンガ1の長辺yより短く、
上底と下底以外の2辺のうちの1辺と、上底および下底とのなす角度がともに90度であり、
上底を壁構造体の内壁面側に配置し、
台形の4辺のうち互いに平行な上底と下底以外の2辺の少なくとも一方がレンガ1の長辺と水平方向に隣り合って配置する請求項1または2に記載の壁構造体の製造方法。
【請求項4】
前記平面視台形状補助部材2bにおける台形の4辺のうち、上底および下底以外の2辺と、上底との作る角度が、90度と、(90+α)度であるとき、
θ−5≦α≦θ+5
である請求項1〜3のいずれかに記載の壁構造体の製造方法。
【請求項5】
前記平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する壁構造体の製造方法であって、
(i)補助部材2として、さらに平面視長方形状補助部材2cを備え、
(ii)前記平面視直線状部分は、
レンガ1と、該レンガ1の水平方向に隣り合って配置する平面視長方形状補助部材2cとからなる段を積み上げて形成し、
下段の平面視長方形状補助部材2cの直上に上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直上に上段の平面視長方形状補助部材2cを配置し、
(iii)前記レンガ1は、長辺の方向が、壁構造体の壁面に直交するように配置し、
(iv)前記平面視長方形状補助部材2cは、
高さhの直方体状であり、平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1の長辺と水平方向に隣り合って配置する2辺の長さがレンガ1の長辺yより短く、
前記長方形の4辺のうち、レンガ1の長辺と隣り合って配置する前記2辺以外の2辺の長さがレンガ1の短辺tと等しい壁構造体の製造方法であり、
(v)最上段から数えて2段目以下の段の平面視長方形状補助部材2cは、
レンガ1を配置する工程と、
前記レンガ1の側面に接するように型枠を配置する工程と、
前記レンガ1と前記型枠の間にモルタルを充填する工程と
により形成し、
(vi)前記型枠は、
鉛直方向に起立する長方形状平面と、該長方形状平面の最下部に連結する水平な底面とを備え、前記長方形状平面は、高さがレンガ1の高さhに等しく、
型枠の前記長方形状平面を壁構造体の壁面側に配置する請求項1〜4のいずれかに記載の壁構造体の製造方法。
【請求項6】
前記型枠は、鉛直方向に起立する長方形状の板状体と、該長方形状の板状体の最下部に連結する水平な板状体とからなり、鉛直な板状体と水平な板状体の連結部がL字状である請求項1〜5のいずれかに記載の壁構造体の製造方法。
【請求項7】
前記型枠は、三角柱または四角柱の天面を深さ方向に削り取ったようなU字状の凹部を有する請求項1〜6のいずれかに記載の壁構造体の製造方法。
【請求項8】
前記型枠は、倒立した四角錐状体であり、四角錐状体の底面が、型枠の鉛直方向に起立する長方形状平面となり、四角錐状体の1つの角錐面が、型枠の水平面となるように偏心した形状を有する請求項1〜7のいずれかに記載の壁構造体の製造方法。
【請求項9】
前記型枠は、壁構造体の外壁面側に配置する部材と、内壁面側に配置する部材とを、線状体で連結した構造を有する請求項1〜8のいずれかに記載の壁構造体の製造方法。
【請求項10】
穴部を有するレンガ1を用いることにより、最上段から数えて2段目以下の段と土台を高さ方向に連結する補強用支持部材を内蔵する請求項1〜9のいずれかに記載の壁構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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