説明

壁紙およびその貼着方法

【課題】簡単な構成により壁紙と壁紙の紙継ぎ部分に発生する目開きを有効に防止することができると共に、建築物等の内壁面や天井面等における貼着作業も迅速かつ容易にして、しかも低コストに達成することができる壁紙およびその貼着方法を提供する。
【解決手段】紙基材11と化粧紙12とを積層してなる所定幅の長尺シートからなる壁紙10において、この壁紙の長手方向一側縁部を、前記化粧紙の端縁12aが紙基材の端縁より若干長くなるよう形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の内壁面や天井面等に貼着する壁紙に係り、特に壁紙と壁紙の紙継ぎ部分に発生する目開きを有効に防止することができるように構成した壁紙およびその貼着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の内装材として、建築物等の内壁面や天井面等に対する装飾性を高めるために、意匠的審美性に優れたシート状の壁紙が広く使用されている。そして、この種の壁紙としては、壁面等への貼着の便宜性等を考慮して、その基材として不燃紙等の紙基材が使用され、またその表面には絵柄の印刷を施した化粧紙を積層させた構成からなるものが知られている。さらに、前記化粧紙に対する絵柄の印刷以外にも、壁紙の表面における対汚染性、耐擦傷性等の表面物性の付与や、エンボスによる立体的な装飾性の付与、発泡による柔軟性の付与等の目的から、例えばポリ塩化ビニル樹脂またはアクリル系樹脂等からなる樹脂層を設けた構成とすることも知られている。
【0003】
しかるに、前述した構成からなる壁紙を、建築物等の内壁面や天井面等に対して糊付け貼着する場合、壁紙と壁紙の紙継ぎ部分において、貼着時には継ぎ目が全く目立たないように仕上げることができるが、壁紙が乾燥してくると紙継ぎ部分の目開きを生じ、この目開き部分に塵埃が蓄積して線状の汚れを発生する。従って、このような汚れは、内壁面や天井面等の外観的美観すなわち意匠的審美性を害するばかりでなく、カビや細菌の発生原因ともなり、衛生的にも好ましくない。
【0004】
このような観点から、壁紙と壁紙の紙継ぎ部分において、前記壁紙の目開きを防止するため、一方の壁紙の一側縁部を他方の壁紙の他側縁部の上に一定の幅で重ね合せることが提案されるが、この壁紙の重ね合せ部分は、壁紙の2倍の厚さとなるために、隆起が生じて内壁面や天井面等の体裁を悪くするばかりでなく、この隆起部分において壁紙の紙基材の端縁が外部に一部露呈(外気と接触)するため、壁紙が剥離し易くなる等の難点がある。特に、多層に形成された厚さの増大する壁紙の場合には、これらの現象の発生が著しくなる難点がある。
【0005】
また、前記壁紙の紙継ぎ部分における目開きを防止する手段として、壁紙の端部断面において、表面側よりも裏面側が壁紙の中央部に対して短くなるように裁断することにより、
厚みのある壁紙であっても、その糊付け貼着時における目開きの問題を解消する提案もなされている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−107197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者は、鋭意研究並びに試作を重ねた結果、例えば紙基材と化粧紙とを積層した長尺シートからなる壁紙において、この壁紙の長手方向一側縁部を、前記化粧紙の端縁が紙基材の端縁より若干長く(約5mm程度)なるよう形成することにより、壁紙と壁紙の紙継ぎ部分で、一方の壁紙の延長された化粧紙部分を他方の壁紙の他側縁部の化粧紙上に重ね合せることができ、これにより紙基材は全く外部へ露呈させることなく、しかも化粧紙の重ね合せ部分の厚さも余り増大させることがなく、前述した従来の壁紙の目開きによる問題点を、一挙に解消することができることを突き止めた。
【0008】
この場合、前記壁紙の他側縁部については、前記とは逆に紙基材の端縁が化粧紙の端縁より若干長く(約5mm程度)なるよう形成することにより、壁紙と壁紙の紙継ぎに際して、紙基材の継ぎ目と化粧紙の継ぎ目との位置をずらすことができ、紙基材の端縁を外部に露呈(外気と接触)させることなく、しかも化粧紙を相互に重ね合せることなく、壁紙の紙継ぎを達成することができ、従って壁紙の目開きを確実に防止できることを突き止めた。
【0009】
従って、本発明の目的は、簡単な構成により壁紙と壁紙の紙継ぎ部分に発生する目開きを有効に防止することができると共に、建築物等の内壁面や天井面等における貼着作業も迅速かつ容易にして、しかも低コストに達成することができる壁紙およびその貼着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の壁紙は、紙基材と化粧紙とを積層してなる所定幅の長尺シートからなる壁紙において、この壁紙の長手方向一側縁部を、前記化粧紙の端縁が紙基材の端縁より若干長くなるよう形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載の壁紙は、前記構成からなる壁紙を使用し、この壁紙の紙継ぎに際し、一方の壁紙の前記化粧紙の延長端部側の紙基材の一端と他方の壁紙の紙基材の他端とを突き合わせ、前記一方の壁紙の化粧紙の延長端部を他方の壁紙の化粧紙上に重ね合わせて貼着することにより、壁紙相互の目開きを防止することができる壁紙の紙継ぎを容易に達成することができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の壁紙は、前記の壁紙において、その長手方向他側縁部を、前記紙基材の端縁が化粧紙の端縁より若干長くなるよう形成することもできる。
【0013】
本発明の請求項4に記載の壁紙の貼着方法は、この場合、一方の壁紙の前記化粧紙の延長端部側の紙基材の一端と他方の壁紙の前記紙基材の延長端部側の紙基材の他端とを突き合わせると共に、前記一方の壁紙の化粧紙の延長端部を他方の壁紙の紙基材の延長端部上に重ね合わせて貼着することによっても、壁紙相互の目開きを防止することができる壁紙の紙継ぎを容易に達成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1ないし4に記載の壁紙およびその貼着方法によれば、紙基材と化粧紙とを積層してなる所定幅の長尺シートからなる壁紙において、この壁紙の長手方向一側縁部を、前記化粧紙の端縁が紙基材の端縁より若干長くなるよう形成することにより、この壁紙を使用して紙継ぎを行うに際し、一方の壁紙の前記化粧紙の延長端部側の紙基材の一端と他方の壁紙の紙基材の他端とを突き合わせ、前記一方の壁紙の化粧紙の延長端部を他方の壁紙の化粧紙上に重ね合わせて貼着することにより、壁紙の貼着も簡便かつ迅速に行うことができるばかりでなく、壁紙相互の目開きを有効に防止することができる。
【0015】
特に、本発明においては、前記壁紙の長手方向他側縁部を、前記紙基材の端縁が化粧紙の端縁より若干長くなるよう形成することにより、一方の壁紙の前記化粧紙の延長端部側の紙基材の一端と他方の壁紙の前記紙基材の延長端部側の紙基材の他端とを突き合わせると共に、前記一方の壁紙の化粧紙の延長端部を他方の壁紙の紙基材の延長端部上に重ね合わせて貼着することによって、壁紙の外観を損なうことなく、壁紙相互の目開きを有効に防止することができる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る壁紙およびその貼着方法の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明に係る壁紙10の一実施例を示す要部拡大平面図である。すなわち、図1において、参照符号11は原紙ないしは裏打紙としての紙基材を示すと共に、参照符号12は従来の壁紙等においても採用されている公知の印刷適性を有する化粧紙を示すものであり、これらの紙基材11と化粧紙12とは、従来公知の糊材を使用した貼り合せ法によって積層し、所定幅の長尺シートとして構成したものである。
【0018】
なお、本実施例において、前記紙基材11は、従来公知のセルロース繊維を主体として、必要に応じて合成繊維、無機繊維、合成パルプ等を適宜配合し、自己消火性填料、その他の填料、乾燥紙力増強剤、防カビ剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等を適宜添加して抄紙することにより得ることができる。なお、セルロース繊維とは、公知の木材パルプを主体とし、麻、こうぞ、雁皮のジン皮繊維、コットンリンター、竹、藁等の非木材パルプ等を適宜混合したものであって、これらのセルロース繊維の単独あるいは混合物に、必要に応じて合成繊維、ガラス繊維、無機繊維、合成パルプ等の繊維物質を適宜配合して使用することができる。
【0019】
しかるに、図1に示す実施例においては、壁紙10の長手方向の一側縁部を、化粧紙12の端縁が紙基材11の端縁より若干長く(例えば、所定幅w1 =5mm±2〜3mm延長)するよう設定したことを特徴とするものである。
【0020】
図1に示すように、化粧紙12の一端に延長端部12aを設けた壁紙10を使用して、建築物等の壁部20の内壁面に前記壁紙10を貼着するに際し、壁紙10の紙継ぎを行う場合において、図2に示すように、一方の壁紙10Aの前記化粧紙12の延長端部12a側の紙基材11の一端と、他方の壁紙10Bの紙基材11の他端とを突き合わせ、前記一方の壁紙10Aの化粧紙12の延長端部12aを他方の壁紙10Bの化粧紙12上に重ね合わせて貼着することにより、壁紙10A、10B相互の目開きを有効に防止することができる。
【実施例2】
【0021】
図3は、本発明に係る壁紙10の別の実施例を示す要部拡大平面図である。すなわち、本実施例においては、前記実施例1に記載の壁紙10に対し、壁紙10の長手方向の他側縁部を、紙基材11の端縁が化粧紙12の端縁より若干長く(例えば、所定幅w2 =5mm±2〜3mm延長)するよう設定したものである。なお、説明の便宜上、図1に示す構成要素と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する(以下の実施例についても同様とする)。
【0022】
図3に示すように、壁紙10の長手方向の一側縁部において、化粧紙12の一端に延長端部12aを設けると共に、壁紙10の長手方向の他側縁部において、紙基材11の他端に延長端部11bを設けた壁紙10を使用して、建築物等の内壁面に前記壁紙10を貼着するに際し、壁紙10の紙継ぎを行う場合において、図4に示すように、一方の壁紙10Aの前記化粧紙12の延長端部12a側の紙基材11の一端と、他方の壁紙10Bの前記紙基材11の延長端部11b側の紙基材11の他端とを突き合わせると共に、前記一方の壁紙10Aの化粧紙12の延長端部12aを、他方の壁紙10Bの紙基材11の延長端部11b上に重ね合わせて貼着することができる。また、この場合、前記化粧紙12の延長端部12aの幅w1 と、前記紙基材11の延長端部11bの幅w2 とを、同一寸法に設定しておくことにより、前記一方の壁紙10Aの化粧紙12の延長端部12aの一端と、他方の壁紙10Bの化粧紙12の他端とを突き合わせて貼着することができ、これにより壁紙10A、10B相互の目開きを有効に防止することができる。
【0023】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前記実施例に限定されることなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内において、多くの設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る壁紙の一実施例を示す要部平面図である。
【図2】図1に示す壁紙の紙継ぎ部分の貼着状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】本発明に係る壁紙の別の実施例を示す要部平面図である。
【図4】図3に示す壁紙の紙継ぎ部分の貼着状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 壁紙
10A 一方の壁紙
10B 他方の壁紙
11 紙基材(原紙、裏打紙)
11b 延長部分
12 化粧紙
12a 延長部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と化粧紙とを積層してなる所定幅の長尺シートからなる壁紙において、この壁紙の長手方向一側縁部を、前記化粧紙の端縁が紙基材の端縁より若干長くなるよう形成することを特徴とする壁紙。
【請求項2】
紙基材と化粧紙とを積層してなる所定幅の長尺シートからなる壁紙の長手方向一側縁部を、前記化粧紙の端縁が紙基材の端縁より若干長くなる延長端部を形成した壁紙を使用し、この壁紙の紙継ぎに際し、一方の壁紙の前記化粧紙の延長端部側の紙基材の一端と他方の壁紙の紙基材の他端とを突き合わせ、前記一方の壁紙の化粧紙の延長端部を他方の壁紙の化粧紙上に重ね合わせて貼着することを特徴とする壁紙の貼着方法。
【請求項3】
前記壁紙の長手方向他側縁部を、前記紙基材の端縁が化粧紙の端縁より若干長くなるよう形成することを特徴とする請求項1記載の壁紙。
【請求項4】
紙基材と化粧紙とを積層してなる所定幅の長尺シートからなる壁紙の長手方向一側縁部を、前記化粧紙の端縁が紙基材の端縁より若干長くなる延長端部を形成すると共に、前記壁紙の長手方向他側縁部を、前記紙基材の端縁が化粧紙の端縁より若干長くなるよう形成した壁紙を使用し、この壁紙の紙継ぎに際し、一方の壁紙の前記化粧紙の延長端部側の紙基材の一端と他方の壁紙の前記紙基材の延長端部側の紙基材の他端とを突き合わせると共に、前記一方の壁紙の化粧紙の延長端部を他方の壁紙の紙基材の延長端部上に重ね合わせて貼着することを特徴とする壁紙の貼着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−31928(P2007−31928A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217865(P2006−217865)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【分割の表示】特願2000−242855(P2000−242855)の分割
【原出願日】平成12年8月10日(2000.8.10)
【出願人】(593056886)株式会社フェニクス (1)
【Fターム(参考)】