説明

壁面手入れ機

【課題】被手入れ物の被手入れ面に対して均一かつ低ダメージの回転運動を回転ヘッドに与えて被手入れ物を手入れ可能な壁面手入れ機具を提供する。
【解決手段】円形パフ13の表面側を自動車のボディの表面に押し付けることで、ワックスをボディの表面に塗布する。このとき、円形パフ13は自転を伴わない円運動を行っているので、円形パフ13の手入れ作用面全域において、回転体の押し付けによるボディ表面のダメージが、従来の自転を伴う円運動に比べて均一かつ小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は壁面手入れ機、詳しくは自動車、バイクなどの車両のボディや建物のフローリングなどの被手入れ物の被手入れ面を手入れ可能な壁面手入れ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のボディの表面にワックスを塗布する車両ボディ用手入れ機(壁面手入れ機)として、例えば特許文献1が知られている。
特許文献1の車両ボディ用手入れ機は、ケーシング(機体)に電動モータが内設され、電動モータの外方配置された出力軸に円盤形状の回転ヘッドが固定され、回転ヘッドには、ワックス掛け用のパフが着脱自在に装着された構成を備えている。このとき、回転ヘッドは、その回転中心線を前記回転軸の軸線に合致している。
使用時には、回転中のパフにワックスを付着させ、出力軸を介して回転モータによりパフを自転させながら、パフを自動車のボディに押し付ける。これにより、パフのワックスが自動車のボディの表面に塗布される。
【特許文献1】特開平8−294416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の回転ヘッドの回転は、回転ヘッドの中心線上に配置された回転モータの出力軸を中心とした自転であった。そのため、回転ヘッドの回転速度は、回転ヘッドの半径方向の外側に向かうほど速まるとともに、回転ヘッドの外周縁の回転半径は大きかった。
その結果、回転ヘッドに装着されたパフをボディに押し当ててワックス掛けすると、パフの内周部ではボディに優しい回転半径が小さくて低速の円運動が得られるものの、パフの外周部では回転半径が大きくて高速の円運動となり、ボディの表面を傷めやすく、パフに付いた洗剤や泡を周辺に飛び散らしていた。
以上のことは、例えば、回転ヘッドを回転モータにより単に偏心回転させた場合も同様であった。
【0004】
そこで、発明者は、回転ヘッドに対して、回転ヘッドの表面上に存在する全ての点(仮想点)が、回転ヘッドの表面上で同じ半径rの軌跡を描く「自転を伴わない円運動」をさせれば、ワックスを飛び散らさず、回転ヘッドの全域でボディの表面に優しい(摩擦力が小さい)回転運動を行わせることができることを知見し、この発明を完成させた。
この発明は、被手入れ物の被手入れ面に対して均一かつ低ダメージの回転運動を回転ヘッドに与えて被手入れ物を手入れすることができる壁面手入れ機を提供することを目的としている。
また、この発明は、塗布剤を周辺に飛び散らさず塗布することができる壁面手入れ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、回転ヘッドと、該回転ヘッドに固定状態または着脱自在に設けられ、車両のボディおよび建物のフローリングを含む被手入れ物の被手入れ面に押し付けられてこの面を手入れする手入れ部と、前記回転ヘッドに連結され、該回転ヘッドに自転を伴わない円運動をさせる回転手段と、該回転手段が設けられる機体とを備えたことを特徴とする壁面手入れ機である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、回転手段により回転ヘッドを回転させ、この状態のまま、回転ヘッドに装着された手入れ部を被手入れ物の被手入れ面に押し付けることで、この面を手入れする。
手入れ時(使用時)には、回転ヘッド(手入れ部)に自転を伴わない円運動をさせる。これにより、回転ヘッドは、自転することなく、自己の中心線から所定の距離(半径r)偏心した状態を保持して旋回する一種の揺動運動(以下、この自転を伴わない円運動を「円揺動」という場合がある)を行う。その結果、回転ヘッドの表面上の全ての点が、同じ半径の軌跡を描く円運動をする。よって、回転ヘッドの中心線からの離間距離に関係なく、その回転速度は回転ヘッドの全位置で常に一定となる。これにより、被手入れ物の被手入れ面に対して均一かつ低ダメージとなる回転運動を回転ヘッドに与えながら被手入れ物を手入れすることができる。
【0007】
これに対して従来法では、回転ヘッドに自転を伴う円運動をさせていた。そのため、回転ヘッドの中心線から半径方向に離れるほど回転速度(遠心力)が高まっていた。これにより、被手入れ物の被手入れ面の手入れ作業時、被手入れ面を均一かつ高精度に仕上げるには作業者に熟練が必要であった。
【0008】
車両とは、自動車、バス、トラック、二輪車、鉄道車両などをいう。その他、本願発明は、飛行機の機体、船の船体、フローリングの床面の手入れにも適用することができる。すなわち、被手入れ物の被手入れ面は任意である。
手入れ部は、直接、被手入れ物の被手入れ面に押し付けてもよいし、布帛などの介在物を介して間接的に押し付けてもよい。
手入れ部を被手入れ物の被手入れ面に押し付ける際には、例えば、水、油、洗浄液、ワックス、UVカット剤、消毒剤、徐菌剤、防臭剤、塩、各種ミネラル(粒体または粉体の鉱石を含む)などの塗布剤を被手入れ面に塗り付け(擦り付け)てもよい。塗布剤は、液体でも固形物(半固形物を含む)でもよい。塗布剤が液体の場合には、ゾル状またはゲル状を含むものとする。
【0009】
手入れ部の素材としては、例えば、各種の合成樹脂(ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、PEEK、PET、ABSなど)、各種のゴム(天然ゴム、合成ゴム)、各種の金属(鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、銀、金、チタンなど)、各種のセラミックスを採用することができる。各種の布帛(織布、不織布、編布)を採用することができる。
手入れ部が合成樹脂の場合には、軟質の合成樹脂(発泡性を含む)でもよいし、硬質の合成樹脂(発泡性を含む)でもよい。
手入れ部の全体形状としては、例えば、正面視して円形、楕円形、三角形以上の多角形でもよいし、任意の形状でもよい。
手入れ部の大きさは任意である。
【0010】
手入れ部としては、ブラシ、パッド、パフ(布帛、スポンジを含む)、サンドペーパーの他、バキュームノズル液体または気体の吹き出しノズル、発光体、発熱体、冷却体、磁石体(電磁石を含む)、放射線発生体、振動発生体などを採用することができる。その他、吸盤、スポンジ、刃、ハツリでもよい。手入れ部がサンドペーパーの場合、壁面手入れ機は、例えば建物の壁や床などを仕上げるサンダーとなる。
【0011】
回転ヘッドの素材、形状、大きさは限定されない。
手入れ部は、回転ヘッドに固定しても、着脱自在でもよい。
手入れ部を回転ヘッドに着脱自在にする構造としては、例えば嵌合構造、螺合構造、係止構造(フックによる掛止、磁石による磁着を含む)を採用することができる。
回転手段は、主に、駆動部と、自転を伴わない円運動機構部(円揺動機構部)とにより構成される。ただし、ハンドルを回転させるなどして円運動機構部を動かす手動式のものでもよい。
回転手段により自転を伴わない円運動を行わされる回転ヘッドの数は1つでもよいし、複数でもよい。
回転ヘッドには、1つの手入れ部のみを設けてもよいし、複数の手入れ部を併設してもよい。このような複数の場合には、全ての手入れ部を同じ機能のものとしてもよいし、少なくとも1対の手入れ部の関係において互いに異なる機能を有したもの同士としてもよい。
【0012】
駆動部としては、例えば電動モータ、油圧モータ、ガス圧モータ(空気圧モータを含む)などを採用することができる。
円運動機構部の構造は任意である。例えば、カムおよびカムフロアを使用して回転ヘッドに自転を伴わない円運動を行わせるものを採用してもよい。その他、円運動機構部の構造としては、1本または複数本(2本、3本、4本以上)の円揺動ピンを自己の軸線回りに回転自在として回転ヘッドに連結し、駆動部により円揺動ピンを、その軸線から平行に所定距離だけ離間した1本または複数本の回転軸を中心にして回転させるものなどを採用することができる。回転軸が複数の場合には、各回転軸を、対応する駆動部を用いて個別に回転させてもよいし、連動機構(ギヤ構造、ベルトまたはチェーン連結構造など)により一括して連動させてもよい。
【0013】
なお、前記円揺動ピンが複数本の場合、各円揺動ピンの軸線と、対応する回転軸との距離は全て略等しくする必要がある。しかも、各円揺動ピンは同期回転させなければ回転ヘッドがスムーズに円揺動しない。また、円揺動ピンが1本の場合には、回転ヘッドの円揺動がガタつき、不安定になり易い。その際には、手入れ部に対して、平面内で円滑な円揺動を行わせるスライドガイド構造(例えばガイド板、ガイド枠、ガイド棒、ガイド溝など)を設けた方が好ましい。スライドガイド構造は、円揺動ピンを複数本使用する場合にも適用した方が好ましい。
さらに、円揺動の大きさ(円揺動の半径の大小)は、回転ヘッドの中心線から偏心した距離(半径r)は、駆動部の回転軸から円揺動ピンまでの距離を、断続的(例えば一定ピッチ)または連続的に移動させることで、任意に変更することができる。例えば、前記回転軸から半径方向に所定間隔ごとに形成された複数のピン差し孔のうち、現状とは異なるピン差し孔に円揺動ピンを差し込むことで、回転ヘッドの円揺動の大きさ(揺れ幅)を任意に変更することができる。また、この回転軸から半径方向に長さ方向を向けて形成された長孔(ピン差し孔)において、円揺動ピンの固定位置を移動させることで、回転ヘッドの円揺動の大きさ(揺れ幅)を任意に変更することができる。
壁面手入れ機は、機体(ケーシングなど)に回転手段を取り付け、回転手段の出力軸を機体の先端から突出させ、その突出部分に回転ヘッドを設けてもよい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記手入れ部は、ブラシ、パッド、パフ、サンドペーパーのうち、少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項1に記載の壁面手入れ機である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記手入れ部は、ワックス、洗浄水および洗浄液を含む塗布剤を塗布するものである請求項1または請求項2に記載の壁面手入れ機である。
ワックスの種類は任意である。例えば、カーワックス、床用ワックスを採用することができる。ワックスの性状としては、例えば半固形状でもよいし、液状でもよい。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記機体と前記回転ヘッドとの間には、前記回転ヘッドの自転を伴わない円運動が可能なように、前記機体と前記回転ヘッドとの隙間を外方から被う環状カバーが設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載の壁面手入れ機である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、機体と回転ヘッドとの間に環状カバーを設けたので、回転ヘッド(手入れ部)の回転時、例えば水、手入れ部に付着した前記塗布剤、ごみ、埃などが、機体と回転ヘッドとの隙間に侵入し難い。そのため、これらの侵入物を原因とした回転ヘッドの回転障害を解消することができる。しかも、その際、環状カバーは回転ヘッドの円運動を妨げない。その結果、手入れ部によるボディの手入れは、環状カバーを用いない場合と略同程度の円滑さで行える。
【0018】
回転ヘッドの自転を伴わない円運動ができるように、環状カバーにより機体と回転ヘッドとの隙間を外方から被うとは、環状カバーに伸縮性を持たせたり、環状カバーを回転ヘッドの回転範囲の全体を被う大きさにすることで、回転ヘッドが自転を伴わない円運動をしても、その回転に支障が生じないように上記隙間を外から被うことをいう。
環状カバーの素材は限定されない。例えば弾性素材(ゴム、軟質合成樹脂など)でもよいし、弾性を有しない湾曲自在な素材(合成樹脂、布帛など)でもよい。また、剛体でもよい。ただし、剛体の場合には、環状カバーは機体または回転ヘッドの何れか一方のみに固定されるものとする。環状カバーは、短尺な蛇腹管タイプのカバーでもよい。
機体に設けられる回転手段は1つでもよいし、複数でもよい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、回転手段により回転ヘッドを回転させ、この状態のまま、回転ヘッドに装着された手入れ部を被手入れ物の被手入れ面に押し付けることで、この面を手入れする。
手入れ時には、回転ヘッドに自転を伴わない円運動をさせる。これにより、回転ヘッドは、自転することなく、自己の中心線から所定の距離(半径r)偏心した状態を保持して旋回する一種の揺動運動(以下、この自転を伴わない円運動を「円揺動」という場合がある)を行う。その結果、回転ヘッドの表面上の全ての点が、同じ半径の軌跡を描く円運動をする。よって、回転ヘッドの中心線からの離間距離に関係なく、その回転速度は回転ヘッドの全位置で常に一定となる。これにより、被手入れ物の被手入れ面に対して均一かつ低ダメージとなる回転運動を回転ヘッドに与えながら被手入れ物を手入れすることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、機体と回転ヘッドとの間に環状カバーを設けたので、回転ヘッドの回転時、例えば水、手入れ部に付着した前記塗布剤、ごみ、埃などが、機体と回転ヘッドとの隙間に侵入し難い。そのため、これらの侵入物を原因とした回転ヘッドの回転障害を解消することができる。しかも、その際、環状カバーは回転ヘッドの円運動を妨げない。その結果、手入れ部によるボディの手入れは、環状カバーを用いない場合と略同程度の円滑さで行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、自動車のボディの表面へのワックスの塗布、ボディ表面の洗浄、ボディ表面の布拭き、ボディ表面の磨きを回転ヘッドヘ着脱自在に装着されるパフ(手入れ部)の変更を行うことで実現させるカーポリッシャを例とする。
【実施例1】
【0022】
図1および図2において、10はこの発明の実施例1に係る壁面手入れ機で、この壁面手入れ機10は、本体となる機体11と、回転ヘッド12と、回転ヘッド12に着脱自在に設けられ、自動車のボディ(被手入れ物)の表面(被手入れ面))に押し付けられてボディ表面を手入れする円形パフ(手入れ部)13と、回転ヘッド12に、自転を伴わない円運動をさせる回転手段14とを備えている。
以下、これらの部品を具体的に説明する。
【0023】
機体11は、先部(図1中の上部)が一方へ略45°だけ屈曲した略円筒形状のケーシングである。機体11は合成樹脂製で、その元部は1対のバッテリ15が収納されたバッテリ収納部16となっている。また、機体11の先部には電動モータ17が1対の支持板により位置決め状態で収納されている。さらに、機体11の先端部は、電動モータ17の出力軸17aの回転運動を、回転ヘッド12に対しての自転を伴わない回転運動(円揺動)に変換する円揺動ギヤ部18が設けられている。機体11の屈曲部の外周側には、スイッチ19が設けられている。このスイッチ19は、回転ヘッド12の正転と逆転との切り換え機能付きとしてもよい。
【0024】
機体11の元側の端部には、前記バッテリ収納部16の蓋体20が取り付けられている。
また、機体11の先端部には、頭蓋板21が一体形成されている。頭蓋板21の中心部には、電動モータ17の出力軸17aの軸孔21aが形成されている。出力軸17aは、その先端部が軸孔21aを通過して外方まで突出し、その突出部分に駆動ギヤ22が固着されている。また、頭蓋板21の軸線を中心とした線対称位置には、後述する従動ギヤ23の回転軸24の軸孔21bがそれぞれ形成されている。両軸孔21bには、頭蓋板21の表裏両側に配置された1対のワッシャ25を軸受板として、従動ギヤ23の回転軸24が、出力軸17aと互いの軸線を平行にして回転自在にそれぞれ挿着されている。両従動ギヤ23は、駆動ギヤ22の両側にそれぞれ噛合されている。両従動ギヤ23の外周部の表側には、対応する回転軸24の軸線と軸線を平行にして、円揺動ピン26の元部がそれぞれ軸支されている。このとき、両従動ギヤ23の表面上における円揺動ピン26の軸支位置は、対応する回転軸24の軸線を中心とした同じ角度位置となっている(図3a)。両円揺動ピン26の先部の外周側には、環状突起26aが1条ずつ形成されている。
なお、各従動ギヤ23の表側に、例えば回転軸24の軸線から半径方向に一定ピッチで図示しない複数のピン固定孔を形成し、このうち、何れかのピン固定孔に円揺動ピン26を抜き差し自在に挿着可能にすれば、回転ヘッド12の円揺動の回転半径(大きさ、振れ幅)を任意に変更することができる。その他、各従動ギヤ23の表側に、例えば回転軸24の軸線から半径方向に長い図示しない長孔を形成し、この長孔の任意位置に円揺動ピン26を固定可能な構造(例えばボルトナットによる締結構造)としても、回転ヘッド12の円揺動の回転半径を変更することができる。
【0025】
また、機体11の先端部には、円形キャップ27が螺合されている。円形キャップ27の上板には、その中心線を中心とした線対称位置に、円揺動ピン26の回転を阻害しない大きさを有した1対のピン孔27aがそれぞれ形成されている。両円揺動ピン26は、対応するピン孔27aに挿通状態でそれぞれ外方に突出している。回転手段14は、電動モータ17と円揺動ギヤ部18とを有している。なお、回転手段14に公知の多段変速ギヤ構造を組み込むことで、回転ヘッド12の回転速度(円揺動速度)を可変としてもよい。
円形キャップ27の表側には、両円揺動ピン26を介して、合成樹脂製の厚肉な円板形状の回転ヘッド12が自転を伴わない円運動自在に設けられている。すなわち、回転ヘッド12の裏側には、その外周部の両側部分に、対応する円揺動ピン26が若干の隙間を介してそれぞれ挿着される1対のピン穴12aが形成されている。両ピン穴12aには、対応する円揺動ピン26の環状突起26aが掛止される環状凹部12bが形成されている。
【0026】
円形キャップ27の周側板の先部と、回転ヘッド12の外周部の元部との間には、回転ヘッド12の自転を伴わない円運動が可能なように、円形キャップ27と回転ヘッド12との隙間(機体11と回転ヘッド12との隙間)を外方から被うシリコーンゴム製の環状カバー28が設けられている。
回転ヘッド12の先部には、軟質ポリウレタン製の円形パフ13が掛止されている。具体的には、円形パフ13の裏側には円形の掛止キャップ29が固着され、この掛止キャップ29を回転ヘッド12の先部に着脱可能に被せることで、回転ヘッド12に円形パフ13が掛止される。円形パフ13は、布帛製のパフでもよい。その他、円板形のスポンジ(芯材)の表面に毛足の長いタオル地の布帛を被せたものでもよい。また、回転ヘッド12には、円形パフ13に代えて、例えばブラシ、ウレタンパッド、サンドペーパーを、それぞれ掛止キャップ29を介して使用することができる。
【0027】
次に、この発明の実施例1に係る壁面手入れ機10による自動車のボディ(ボディの表面)手入れ方法を説明する。
図1に示すように、円形パフ13の表面(手入れ作用面)側にワックスを付け、スイッチ19を入れる。これにより、電動モータ17によって出力軸17aが回転し、駆動ギヤ22を介して、両従動ギヤ23が回転軸24を中心にして同じ方向に同じ速度で回転する。これにより、両円揺動ピン26を介して、回転ヘッド12に掛止された円形パフ13が、自転することなく、自己の中心線aから半径rだけ偏心した状態を保持して旋回する一種の揺動運動を行う。その結果、円形パフ13の表面上の全ての点が、同じ回転半径rの軌跡を描くような円運動を行う(図3a)。よって、円形パフ13の中心線からの離間距離に関係なく、その回転速度は円形パフ13の全位置で常に一定となる。これにより、ボディの表面に対して均一かつ低ダメージとなる回転運動を回転ヘッドに与えながら自動車のボディを手入れすることができる。しかも、回転ヘッド12の回転速度を高めても、円形パフ13の外周部において大きな遠心力は作用しない。
【0028】
その後、円形パフ13の表面側を自動車のボディの表面に押し付けることで、ワックスをボディの表面に塗布する。このとき、円形パフ13は自転を伴わない円運動を行っているので、円形パフ13の手入れ作用面全域において、回転体の押し付けによるボディ表面のダメージが、従来の自転を伴う円運動に比べて均一かつ小さくなる。しかも、前述したように円形パフ13の回転速度は円形パフ13の全位置で常に一定となるため、円形パフ13の外周部に大きな遠心力は作用しない。その結果、使用時において、円形パフ13の表面上のワックスは、採用する半固形状のものでなく、液状ワックスであっても飛散し難い(液状のワックスの場合にはこの効果が顕著)。そのため、使用者の服および使用者の周辺の物を汚すおそれが少ない(図3b)。これに対して、従来の壁面手入れ機では、円形パフに自転を伴う円運動を行わせていたので(図3c)、円形パフの外周部には大きな遠心力が作用し、使用時にワックスが飛散し、周辺を汚し易かった(図3d)。
【0029】
また、ここでは回転ヘッド12と円形キャップ27との間に環状カバー28を設けたので、使用時において、ワックス、ごみ、埃などが、回転ヘッド12と円形キャップ27との間に侵入し難くなる。その結果、これらの侵入物を原因とした回転ヘッド12の回転障害を解消することができる。しかも、環状カバー28は回転ヘッド12の円運動を妨げない軟らかさを有している。その結果、円形パフ13による自動車のボディの表面の手入れは、環状カバー28を用いない場合と略同程度の円滑さで行うことが可能となる。
【0030】
なお、円形パフ13を別の手入れ部(ブラシやパッドなど)に交換としたい場合には、回転ヘッド12から掛止キャップ29を外し、プラシやパッドが固定された所望の手入れ部の掛止キャップを回転ヘッド12に掛止すればよい。
また、この壁面手入れ機10は、その機体11の形状を略ドングリ形に変更し、機体11の周側壁の一部に第1のグリップG1を設け、機体11の周側壁のうち、第1のグリップG1と略90度の異相位置に、第2のグリップG2を固定したものを採用してもよい。その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるので説明を省略する(図4)。
また、壁面手入れ機10は、自動車のボディ用に代えて、フローリング用の壁面手入れ機10Aとしてもよい(図5)。壁面手入れ機10Aは、回転ヘッド12を床に向けて配置し、機体11の上端面の中央部に操作ロッドの元部が固定され、操作ロッドの先部が屈曲されて第1のグリップG1となっている。
使用時には、出力が大きい電動モータ17により出力軸17aが回転し、駆動ギヤ22を介して、両従動ギヤ23が回転軸24を中心にして同じ方向に同じ速度で回転する。その他の構成および作用は実施例1から推測可能な範囲であるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施例1に係る壁面手入れ機の縦断面図である。
【図2】この発明の実施例1に係る壁面手入れ機の斜視図である。
【図3a】この発明の実施例1に係る壁面手入れ機における手入れ部の円揺動運動を示す平面図である。
【図3b】この発明の実施例1に係る壁面手入れ機における手入れ部の円揺動運動を示す側面図である。
【図3c】従来手段に係る壁面手入れ機における手入れ部の円運動を示す平面図である。
【図3d】従来手段に係る壁面手入れ機における手入れ部の円運動を示す側面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る別の壁面手入れ機の斜視図である。
【図5】この発明の実施例1に係るさらに別の壁面手入れ機の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10,10A 壁面手入れ機
12 回転ヘッド
13 円形パフ(手入れ部)
14 回転手段
17 電動モータ(回転手段)
11 機体
28 環状カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ヘッドと、
該回転ヘッドに固定状態または着脱自在に設けられ、車両のボディおよび建物のフローリングを含む被手入れ物の被手入れ面に押し付けられてこの面を手入れする手入れ部と、
前記回転ヘッドに連結され、該回転ヘッドに自転を伴わない円運動をさせる回転手段と、
該回転手段が設けられる機体とを備えたことを特徴とする壁面手入れ機。
【請求項2】
前記手入れ部は、ブラシ、パッド、パフ、サンドペーパーのうち、少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項1に記載の壁面手入れ機。
【請求項3】
前記手入れ部は、ワックス、洗浄水および洗浄液を含む塗布剤を塗布するものである請求項1または請求項2に記載の壁面手入れ機。
【請求項4】
前記機体と前記回転ヘッドとの間には、前記回転ヘッドの自転を伴わない円運動が可能なように、前記機体と前記回転ヘッドとの隙間を外方から被う環状カバーが設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載の壁面手入れ機。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−200457(P2008−200457A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73591(P2007−73591)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(597148460)
【Fターム(参考)】