説明

壁面清掃装置

【課題】低層かつ壁面に凹凸のある建物にも好適に使用できて壁面の清掃が可能になる壁面清掃装置を提供する。
【解決手段】作業者Pによって把持される柄部3と、柄部3の先端に取り付けられたヘッド部7と、を備え、ヘッド部7は、並んで設置された一対のブラシ5と、一対のブラシ5を互いに逆回転させる直流モータと、を有する壁面洗浄装置1である。この壁面洗浄装置1では、壁面Sfの汚れに対応する位置にヘッド部7がくるように作業者Pが柄部3を把持し、ヘッド部7に設置された一対のブラシ5を回転させることで壁面Sfの汚れを簡易に落とすことができる。特に、ヘッド部7の一対のブラシ5は、互いに逆回転するので、壁面Sfにブラシ5が当接した際にブラシ5のブレが生じにくく清掃作業が行い易い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するブラシによって建物などの壁面を洗浄等するための壁面清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の壁面に付着した汚れ等を洗浄する為の装置が種々開発されている。例えば、特許文献1には、屋上に設置した吊下装置から吊り下げたワイヤーにより壁面に沿って上下方向に移動する壁面洗浄機の記載がある。また、特許文献2には、壁面に沿って昇降するゴンドラに乗った作業者が把持して使用する洗浄装置の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−206259号公報
【特許文献2】特開2007−229597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの装置は、単調な壁面が連続する中高層の建物においては有用である。しかしながら、低層(2階建程度、壁面の最も高い位置が地上から6m程度)の住宅の外壁面を洗浄するには大掛かり過ぎるものであり、しかも、壁面の形状が部分的に大きく変化して凹凸を形成するような場合には、壁面との干渉を避ける必要もあって装置に様々な工夫が必要であって実用面で課題が残るという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題を解決し、低層かつ壁面に凹凸のある建物にも好適に使用することができる壁面清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、建物の壁面を回転するブラシによって清掃する壁面清掃装置であって、作業者によって把持される柄部と、柄部の端部に取り付けられたヘッド部と、を備え、ヘッド部は、並んで設置された一対のブラシと、一対のブラシを互いに逆回転させる駆動部と、を有することを特徴とする。
【0007】
この壁面清掃装置では、壁面の汚れに対応する位置にヘッド部がくるように作業者が柄部を把持し、ヘッド部に設置された一対のブラシを回転させることで壁面の汚れを簡易に落とすことができる。特に、ヘッド部に並んで設置された一対のブラシは、互いに逆回転するので、壁面にブラシが当接した際にブラシのブレが生じにくく清掃作業が行い易い。その結果、低層かつ壁面に凹凸のある建物にも好適に使用することができる。
【0008】
さらに、上記のヘッド部は、ブラシがそれぞれに取り付けられた一対のブラシ装着部と、駆動部の駆動力を一対のブラシ装着部それぞれに伝達する伝達機構と、を備え、ブラシ装着部は、ブラシを回転自在に支持するブラシ支持部と、伝達機構を介して伝達された駆動力を受けてブラシ支持部を回転させる回転軸部と、を有し、ブラシの回転軸線は、回転軸部の回転軸線に対して偏心していると好適である。
【0009】
上記構成では、ブラシの回転軸線は、回転軸部の回転軸線に対して偏心しているので、回転軸部がブラシ支持部を回転させると、その回転に伴ってブラシは一定方向に円運動(公転運動)する。ここで、ブラシは、ブラシ支持部に回転自在に支持されており、公転運動に伴って自転もする。その結果、ブラシは、自転しながら公転運動するので両運動の相乗的な清掃効果を期待できる。さらに、ブラシを壁面に押し付ける押力を増すと、壁面から受ける摩擦抵抗が増してブラシの自転に伴う回転速度が減少するため、洗浄作用を適宜に調節することが可能になる。その結果、壁面に押し当てるブラシの押力を変化させるだけで、ブラシの動き(自転)を変化させることができ、汚れの状態や成分、あるいは壁面の形状等に応じた適切な動きをスイッチ等の操作によらずブラシに与えることができる。
【0010】
さらに、本発明に係る壁面清掃装置は、柄部とヘッド部とを連結する仰角可変機構を備え、この仰角可変機構は、柄部に対するヘッド部の傾き角度が変更自在となるように柄部とヘッド部とを接続するヒンジ部と、柄部に対するヘッド部の傾き角度を所定角度に保持すると共に、所定角度からの角度変位に応じた弾性力をヘッド部に付与する弾性部と、を有すると好適である。この構成では、ヘッド部が柄部に対して傾くので、ブラシを壁面に押し当てた際にヘッド部の傾き角度が変化し、ブラシが壁面に対面する適当な位置で保持されので清掃ムラが生じ難く、効率よく清掃作業を行うことができる。さらに、弾性部の作用により、ヘッド部の角度変位に応じた弾性力がヘッド部に付与されるので、ヘッド部がいたずらに揺れ動くことが抑制され、壁面に対してブラシを安定して押し当てることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る壁面清掃装置は、駆動部の本体部を収容すると共に、本体部に連結する駆動軸が貫通して外部に突き出す筐体を備え、上記の伝達機構は、筐体の外側に配置されると共に、駆動軸に着脱自在に固定された駆動プーリーと、筐体の外側に配置されると共に、回転軸部に着脱自在に固定された従動プーリーと、駆動プーリーと従動プーリーとに掛け回された無端ベルトと、を有すると好適である。例えば、洗浄液を噴射しながらブラシを回転させて壁面を洗浄するような構成であっても、上記の構成では駆動部の本体部を収容する筐体を備えているので、本体部を洗浄液などの液体から保護することができる。また、伝達機構の駆動プーリーは、筐体を貫通して外部に突き出す駆動軸に着脱自在であり、さらに、従動プーリーは回転軸部に着脱自在であり、そして、無端ベルトは駆動プーリーと従動プーリーとに掛け回されているので、取替えや交換が容易である。その結果、径の異なる他の駆動プーリーや従動プーリーに変更することで、容易に所望のトルクや回転速度に変更することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低層かつ壁面に凹凸のある建物にも好適に使用することができて、壁面を適宜に清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る壁面洗浄装置に係り、ヘッド部を拡大して示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】ヘッド部を真横から見た状態を示し、一部を破断して示す部分断面図である。
【図5】ブラシユニットを拡大して示す断面図である。
【図6】柄部に対してヘッド部を傾けた状態を示し、柄部とヘッド部とを連結する仰角可変機構の断面図である。
【図7】本実施形態に係る壁面洗浄装置の使用状態を示す図である。
【図8】ブラシの公転運動と自転との関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1、及び図7に示されるように、本実施形態に係る壁面洗浄装置(壁面清掃装置)1は、作業者Pが把持する柄部3と、柄部3の先端に取り付けられ、回転する一対のブラシ5を備えるヘッド部7と、ヘッド部7に洗浄液を圧送するポンプ9と、洗浄液を蓄える洗浄液タンク11と、洗浄液タンク11からの洗浄液をヘッド部7まで移送する洗浄液ホース13と、ポンプ9及びヘッド部7に電流を供給する電源コード15と、を備えている。なお、洗浄液ホース13や電源コード15は、コイル状に巻かれており、可撓性、及び伸縮性を有する。
【0016】
壁面洗浄装置1は、作業者Pが携行可能となるようにコンパクトな構成でまとめられており、ポンプ9及び洗浄液タンク11はベルト付きの専用ケース17に収められ、ウエストポーチ風に作業者Pの腰に装着されて携行可能に構成されている。なお、本実施形態では、ウエストポーチ風に作業者Pの腰に装着された態様を例に説明するが、洗浄液タンク11やポンプ9を地面に据え置く形式や、作業者Pが背中に背負う形式であってもよい。
【0017】
柄部3は、FRPからなるパイプ状の部材を三脚のように入れ子状に組み合わせて伸縮自在に構成したものであり、任意の長さに設定することができる。さらに、各パイプ状部材同士は、例えば、一方を他方に対して正回転させることで任意の伸縮位置で固定でき、逆回転させることで固定が解除されて伸縮させることができるツイストロック機構によって連結されている。なお、本実施形態では、コイル状に巻かれた洗浄液ホース13や電源コード15は柄部3の外に出されているが、柄部3の内部に収容可能な形態であれば、柄部3の内部に通すように配置することもできる。
【0018】
図2〜図4に示されるように、ヘッド部7は、アルミニウム板からなるベースプレート21を備えており、ベースプレート21の上面(内面)の略中央には、直流モータ(駆動部)23の本体部23aがねじ止めされている。また、直流モータ23の両脇には、従動軸(回転軸部)27A,27Bを回転自在に支持する従動軸支持部25がそれぞれ固定されている。ベースプレート21の周縁21aは、上面側に屈曲されており、この周縁21aには、ベースプレート21の上面を箱状に覆うカバー22が固定されている。カバー22は、塩化ビニルからなる。直流モータ23の本体部23a、及び従動軸支持部25はカバー22に覆われており、ベースプレート21、及びカバー22によって筐体20が構成される。
【0019】
従動軸支持部25(図5参照)は、ベースプレート21に固定された略筒状のハウジング25aと、ベースプレート21を貫通してハウジング25a内に挿入された段付きの従動軸27A,27Bと、ハウジング25a内で従動軸27A,27Bの細軸部27aを環状に囲み、間座25bを介して離間して上下2列に構成されたボールベアリング25c,25dと、ハウジング25aの上端にねじ止めされ、上側のボールベアリング25cに当接する環状の天板25eと、従動軸27A,27Bの細軸部27aに螺合して上側のボールベアリング25cを押圧するナット27fと、を備えている。なお、ボールベアリング25c,25dの配置を上下2列とすることで、従動軸27A,27Bのブレは抑えられ、安定した保持に有効である。
【0020】
また、ベースプレート21の上面には、洗浄液を洗浄液噴射ノズル29に導くエルボ管31(図3、図4参照)が固定されている。洗浄液噴射ノズル29は、ベースプレート21の下面(外面)に固定されており、洗浄液噴射ノズル29とエルボ管31とは、ベースプレート21の連通孔を介して連通している。エルボ管31には、カバー22を貫通する洗浄液ホース13が直流モータ23を避けるように迂回して接続されている。なお、カバー22を貫通する電源コード15は、直流モータ23に通電可能に接続されている。
【0021】
直流モータ23の本体部23aに連結された駆動軸23b(図2、図3参照)は、ベースプレート21を貫通して外部に突き出している。駆動軸23bには、筐体20の外部において駆動プーリー24が着脱自在な構成によって固定されている。この着脱自在な構成は、例えば、六角穴付きボルトなどによって実現可能である。駆動軸23bには、上下二段のV字溝V,Vが形成されており、ベースプレート21に近い側の一方のV字溝は第1のV字溝Vであり、他方のV字溝は第2のV字溝Vである。なお、駆動軸23bに対して駆動プーリー24が着脱自在な構成なので、駆動プーリー24を径の異なる他の駆動プーリーに適宜、且つ簡単に交換できる。
【0022】
一対の従動軸支持部25によって回転自在に支持された一対の従動軸27A,27Bは、それぞれベースプレート21を貫通して外部に突き出している。一方の従動軸27Aには、筐体20の外部において、駆動プーリー24の第1のV字溝Vに対応する第1の従動プーリー32Aが着脱自在な構成によって固定されている。また、他方の従動軸27Bには、筐体20の外部において、駆動プーリー24の第2のV字溝Vに対応する第2の従動プーリー32Bが着脱自在な構成によって固定されている。この着脱自在な構成は、例えば、六角穴付きボルトなどによって実現可能である。なお、各従動軸27A,27Bに対して第1の従動プーリー32Aまたは第2の従動プーリー32Bは着脱自在な構成なので、第1の従動プーリー32Aまたは第2の従動プーリー32Bを径の異なる他の従動プーリーに適宜、且つ簡単に交換できる。
【0023】
第1の従動プーリー32Aの外周にはV字溝Vaが形成されており、駆動プーリー24の第1のV字溝Vと第1の従動プーリー32AのV字溝Vaとには、無端状の第1のVベルト33Aが掛け回されている。同様に、第2の従動プーリー32Bの外周にもV字溝Vbが形成されており、駆動プーリー24の第2のV字溝Vと第2の従動プーリー32BのV字溝Vbとには、無端状の第2のVベルト33Bが掛け回されている。
【0024】
第1のVベルト33A及び第2のVベルト33Bのうちの一方、例えば、第1のVベルト33Aは、180度ひねられ、途中で交差するようにして掛け回されている。他方のVベルト、例えば、第2のVベルト33Bはひねられることなく環状に掛け回されている。従って、駆動軸23bが正回転した際に、第2の従動プーリー32Bは正回転し、第1の従動プーリー32Aは逆回転するようになる。つまり、第1の従動軸27A及び第2の従動軸27Bは、両従動プーリー32A,32Bが同一の径なので、駆動軸23bの回転に追従し、同一の回転数、同一のトルクで、且つ逆回転するように構成されている。
【0025】
駆動プーリー24、第1のVベルト33A、第2のVベルト33B、第1の従動プーリー32A、第2の従動プーリー32B、第1の従動軸27A、及び第2の従動軸27Bにより、直流モータ23の駆動力を一対のブラシ装着部37A,37Bそれぞれに伝達する伝達機構35が構成される。続いて、一対のブラシ装着部37A,37Bについて説明する。なお、一対のブラシ装着部37A,37Bは、実質的に同一の構成からなるため、図5を参照して第2の従動軸27Bに固定された一方のブラシ装着部37Bを中心に詳細を説明し、第1の従動軸27Aに固定された他方のブラシ装着部37Aの説明は省略する。
【0026】
図5に示されるように、第2の従動軸27Bには、第2の従動プーリー32Bよりも先端側において回転力を伝達するための切り欠き27bが形成されている。この切り欠き27bは、第2の従動軸27Bの回転軸線Saを挟んで両側部に形成され、切り欠き27bが形成された軸端部27cには、ブラシ支持部39が嵌め込まれてねじ止めされている。
【0027】
ブラシ支持部39は、軸端部27cに嵌合する根元部39aと、根元部39aから回転軸線Saに直交する方向に突き出したアーム部39bと、アーム部39bの先端に設けられた反動おもり部39c、とを備えている。
【0028】
根元部39aには、回転軸線Saを挟んで反動おもり部39cの反対側となる位置に偏心軸部41が螺合されている。偏心軸部41は半ねじボルトからなり、円柱状に軸部の周りにはボールベアリング43が配置されており、頭部41aは環状の押え板45と協同してボールベアリング43を挟みつけて保持している。環状の押え板45は、ブラシホルダー47にねじ止めされている。
【0029】
ブラシホルダー47は円形のブラシ固定板47aと、ブラシ固定板47aの中央に立設された円筒状の内壁部47bと、反動おもり部39cの周回軌道の全域を囲むように形成された円筒状の外壁部47cと、を備えている。内壁部47bは、偏心軸部41、及びボールベアリング43を囲むように配置され、内壁部47bの端面が環状の押え板45に当接して複数のねじで締結固定されている。偏心軸部41の中心線Sbは、ブラシ固定板47aの中心を通り、ブラシ5の回転軸線Sbとなる。なお、ブラシ5の回転軸線Sbは従動軸27Bの回転軸線Saに対して5mm程度偏心している。
【0030】
アーム部39bは、従動軸27Bの回転軸線Sbを基準にして偏心軸部41の中心線(ブラシ5の回転軸線)Sb側に向く方向とは正反対の方向に向かうように延在し、その先端に反動おもり部39cが設けられている。反動おもり部39cを、従動軸27Bの回転軸線Saを基準としてブラシ5の回転軸線Sbとは反対となるように配置することで、重心位置をずらして使用時(ブラシ5の回転時)に生じる振動を低減する。
【0031】
ブラシホルダー47には、面ファスナー構造にてブラシ5が着脱自在に固定されている。具体的には、ブラシホルダー47のブラシ固定板47aの裏面、すなわち、内壁部47bが立設された面の裏側には、面ファスナーの一方が接着固定されている。一方で、ブラシ5は、樹脂性、その他の材料からなる多数の線状部材5aが円形基板5bから突き出すように形成されており、円形基板5bには、ブラシ固定板47aに取り付けられる面ファスナーの他方が接着固定されている。なお、本実施形態では、面ファスナー構造によって、ブラシ5がブラシホルダー47に着脱自在に装着される態様を説明するが、ブラシ5は、接着固定やねじ止めなどでブラシホルダー47に固定される態様であってもよい。
【0032】
ヘッド部7(図2、図3、及び図6参照)は、仰角可変機構50を介して柄部3の先端に連結されている。仰角可変機構50は、柄部3に固定されるパイプホルダー50aと、パイプホルダー50aに固定される柄部固定プレート50bと、柄部固定プレート50bとベースプレート21とを連結するバネ蝶番51と、を備えている。
【0033】
パイプホルダー50aはフランジ付き短管からなり、柄部3の先端に挿入されてねじ止めされており、パイプホルダー50aのフランジ部分は柄部固定プレート50bにねじ止めされている。柄部固定プレート50bはアルミニウム板からなり、パイプホルダー50aが固定された中央部分には、洗浄液ホース13及び電源コード15が通る中央孔Hが形成されている。
【0034】
バネ蝶番51は、左右に設けられており、各バネ蝶番51は、蝶番部(ヒンジ部)53にトーションバネ(弾性部)55が取り付けられて構成されている。蝶番部53は、トーションバネ55の作用により、両方の片部53aが直角(所定角度)になる所定位置で保持されており、一方の片部53aは柄部固定プレート50bにねじ止めされ、他方の片部53aはベースプレート21にねじ止めされている。
【0035】
蝶番部53により、柄部3に対するヘッド部7の傾き角度が変更自在となるように柄部3とヘッド部7とは接続される。さらに、トーションバネ55により、柄部3に対するヘッド部7の傾き角度が所定角度に保持されると共に、所定角度からの角度変位に応じた弾性力がヘッド部7に付与される。なお、柄部3に対するヘッド部7の傾き角度が変更自在となるので、筐体20のカバー22には、柄部3の傾きに起因した干渉を避けるための切り込みKが形成されている。
【0036】
また、壁面洗浄装置1(図7参照)は、直流モータ23やポンプ9に電力を供給するバッテリー(電源手段)を備える。バッテリーは、例えば、フック付きのバッテリーホルダーに搭載され、作業者Pのズボンのベルトなどに引っ掛けて持ち運び自在な状態で使用される。なお、バッテリーは、洗浄液タンク11と同様に、地面に据え置く形式であったり、ウエストポーチ風に作業者Pの腰に装着する態様であったりしても良い。また、バッテリーを用いずに交流電源を用いるようにしてもよく、その場合には、適宜にACアダプターを介在させてヘッド部7の直流モータ23に電力を供給するようにしてもよい。
【0037】
また、壁面洗浄装置1は、直流モータ23やポンプ9に無線または有線にて制御信号を送受信可能に接続されたスイッチボックス(制御手段)を備えており、作業者Pの操作入力を受け付けて、ON・OFF信号を直流モータ23やポンプ9に送信可能に構成されている。なお、本実施形態では、洗浄液タンク11が収容された専用ケース17に取り付けられているが、持ち運び自在なリモコンなどであってもよい。
【0038】
次に、図7を参照して、壁面洗浄装置1の使用方法、壁面洗浄装置1の作用、及び効果について説明する。
【0039】
壁面洗浄装置1を使用する際には、壁面Sfに対し、予め水道用のホースを利用して散水し、汚れを落とし易くしておく。次に、作業者Pが洗浄の対象となる壁面位置に合わせて柄部3を伸ばす。その後、作業者Pは柄部3の下端付近を把持し、ヘッド部7が上になるように柄部3を起立させ、壁面Sfの洗浄対象位置にブラシ5を当接させる。この際、ヘッド部7の自重或いは作業者Pが加える軽い力で仰角(ヘッド部7と柄部3とのなす傾き角度)が変化し、ブラシ5の当接面が壁面Sfに対して対向するように当接される。
【0040】
次に、直流モータ23の電源を入れて、ブラシ5を回転させる。さらに、ポンプ9を駆動して洗浄液を適宜に噴射させ、ブラシ5を上下あるいは左右方向に適宜に移動させながら洗浄作業を行う。
【0041】
なお、ブラシ洗浄の際には、汚れや壁面Sfの状態に応じて、壁面Sfにブラシ5を押し当てる力を適宜加減し、ブラシ5の自転と公転運動とのバランスを変える。例えば、公転運度に対して早い自転や遅い自転、さらには、自転を完全に停止させて公転運動のみを行わせるようにしてもよい。洗浄作業終了後には、壁面Sfに浮いた状態で残った汚れを散水等によって洗い流す。
【0042】
次に、図8を参照して、従動軸27A,27Bの回転軸線Saに対してブラシ5の回転軸線Sbが偏心していることで奏される作用、及び効果について説明する。図8は、従動軸27A,27Bの回転軸線Saとブラシ5の回転軸線Sbとの関係を模式的に示す図である。
【0043】
図8に示されるように、直流モータ23の駆動を受けて従動軸27A,27Bが回転すると、この回転に従ってブラシ55は従動軸27A,27Bの回転軸線Sa回りに公転運動をする。このとき、ブラシ5(ブラシホルダー47)がブラシ装着部37A,37Bの偏心軸部41に固定されていると自転しないが、ブラシ5は偏心軸部41に対して回転自在であるため、慣性力によって公転周期よりも早い周期で、偏心軸部41を中心にして自転運動する。例えば、従動軸27A,27Bが回転角度θ1ほど回転すると、ブラシ5の外周のA点はθ1よりも大きな回転角度θaだけ自転してAa点に至り、また、従動軸27A,27Bが回転角度θ2ほど回転すると、ブラシ5の外周のA点はθ2よりも大きな回転角度θbだけ自転してAb点に至る。
【0044】
以上のように、ブラシ5は、自転しながら従動軸27A,27Bの回転軸線Sa回りで公転運動するので両運動の相乗的な洗浄効果を期待できる。さらに、ブラシ5を壁面Sfに押し付ける押力を増すと、壁面Sfから受ける摩擦抵抗が増してブラシ5の自転に伴う回転速度が減少するため、洗浄作用を適宜に調節することが可能になる。その結果、壁面Sfに押し当てるブラシ5の押力を変化させるだけで、ブラシ5の動き(自転)を変化させることができ、汚れの状態や成分、あるいは壁面Sfの形状等に応じた適切な動きをスイッチ等の操作によらずブラシ5に与えることができる。
【0045】
以上、本実施形態に係る壁面清掃装置では、壁面Sfの汚れに対応する位置にヘッド部7がくるように作業者Pが柄部3を把持し、ヘッド部7に設置された一対のブラシ5を回転させることで壁面Sfの汚れを簡易に落とすことができる。特に、ヘッド部7に並んで設置された一対のブラシ5は、互いに逆回転するので、壁面Sfにブラシ5が当接した際にブラシ5のブレが生じにくく洗浄作業を行い易い。その結果、低層かつ壁面Sfに凹凸のある建物にも好適に使用することができる。
【0046】
さらに、壁面洗浄装置1は、柄部3とヘッド部7とを連結する仰角可変機構50を備え、ヘッド部7が柄部3に対して傾くので、ブラシ5を壁面Sfに押し当てた際にヘッド部7の傾き角度が変化し、ブラシ5が壁面Sfに対面する適当な位置で保持されので洗浄ムラが生じ難く、効率よく洗浄作業を行うことができる。さらに、トーションバネ(弾性部)55の作用により、ヘッド部7の角度変位に応じた弾性力がヘッド部7に付与されるので、ヘッド部7がいたずらに揺れ動くことが抑制され、壁面Sfに対してブラシ5を安定して押し当てることができる。
【0047】
さらに、壁面洗浄装置1は、直流モータ(駆動部)23の本体部23aを収容する筐体20を備えているので、本体部23aを洗浄液などの液体から保護することができる。また、伝達機構35の駆動プーリー24は、筐体20を貫通して外部に突き出す駆動軸23bに着脱自在であり、さらに、第1の従動プーリー32A及び第2の従動プーリー32Bは各従動軸27A,27Bに着脱自在であり、そして、第1のVベルト33A、及び第2のVベルト33Bは、駆動プーリー24と各従動プーリーとに掛け回されているので、取替えや交換が容易である。その結果、径の異なる他の駆動プーリーや従動プーリーに変更することで、容易に所望のトルクや回転速度に変更することができる。
【0048】
以上、本発明について実施形態に係る壁面洗浄装置1を例に説明したが、本発明は、以上の実施形態のみに限定されるものではなく、たとえば、壁面塗装を回転するブラシで剥がすような清掃目的で使用される清掃装置に係る態様なども含まれる。また、上記の実施形態では、柄部とヘッド部とを連結する仰角可変機構を備えた形態を例示したが、ヘッド部が柄部に対して可変ではなく、固定されていてもよい。また、上記の実施形態では、伝達機構としてVベルトとVプーリー(駆動プーリーや従動プーリー)とを用いた構成を例示したが、丸ベルトと丸ベルト用プーリーとを用いた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…壁面洗浄装置(壁面清掃装置)、3…柄部、5…ブラシ、7…ヘッド部、20…筐体、23…直流モータ(駆動部)、23a…本体部、23b…駆動軸、24…駆動プーリー、27A,27B…従動軸(回転軸部)、32A…第1の従動プーリー、32B…第2の従動プーリー、33A…第1のVベルト(無端ベルト)、33B…第2のVベルト(無端ベルト)、35…伝達機構、37A,37B…ブラシ装着部、39…ブラシ支持部、50…仰角可変機構、53…蝶番部(ヒンジ部)、55…トーションバネ(弾性部)、P…作業者、Sf…建物の壁面、Sa…従動軸の回転軸線、Sb…ブラシの回転軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁面を回転するブラシによって清掃する壁面清掃装置であって、
作業者によって把持される柄部と、
前記柄部の端部に取り付けられたヘッド部と、を備え、
前記ヘッド部は、並んで設置された一対の前記ブラシと、前記一対のブラシを互いに逆回転させる駆動部と、を有することを特徴とする壁面清掃装置。
【請求項2】
前記ヘッド部は、前記ブラシがそれぞれに取り付けられた一対のブラシ装着部と、前記駆動部の駆動力を前記一対のブラシ装着部それぞれに伝達する伝達機構と、を備え、
前記ブラシ装着部は、前記ブラシを回転自在に支持するブラシ支持部と、前記伝達機構を介して伝達された駆動力を受けて前記ブラシ支持部を回転させる回転軸部と、を有し、
前記ブラシの回転軸線は、前記回転軸部の回転軸線に対して偏心していることを特徴とする請求項1記載の壁面清掃装置。
【請求項3】
前記柄部と前記ヘッド部とを連結する仰角可変機構を更に備え、
前記仰角可変機構は、前記柄部に対する前記ヘッド部の傾き角度が変更自在となるように前記柄部と前記ヘッド部とを接続するヒンジ部と、
前記柄部に対する前記ヘッド部の傾き角度を所定角度に保持すると共に、前記所定角度からの角度変位に応じた弾性力を前記ヘッド部に付与する弾性部と、を有することを特徴とする請求項1または2記載の壁面清掃装置。
【請求項4】
前記駆動部の本体部を収容すると共に、前記本体部に連結する駆動軸が貫通して外部に突き出す筐体を更に備え、
前記伝達機構は、前記筐体の外側に配置されると共に、前記駆動軸に着脱自在に固定された駆動プーリーと、前記筐体の外側に配置されると共に、前記回転軸部に着脱自在に固定された従動プーリーと、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとに掛け回された無端ベルトと、を有することを特徴とする請求項2記載の壁面清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−29975(P2012−29975A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173565(P2010−173565)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(504082025)株式会社イング (29)
【Fターム(参考)】