壁高欄遊間部カバー
【課題】桁どうしの接続状態により生じる様々な形状の壁高欄遊間部に対応できる汎用性に優れた壁高欄遊間部カバーを提供する。
【解決手段】間隔をあけて並列したそれぞれの金属板2a〜2cを並列状態で一体に連結する加硫ゴム3が、壁高欄遊間部7の形状に対応するように屈曲位置および角度を変えて変形して壁高欄遊間部7を塞ぐように壁高欄遊間部カバー1が設置される。
【解決手段】間隔をあけて並列したそれぞれの金属板2a〜2cを並列状態で一体に連結する加硫ゴム3が、壁高欄遊間部7の形状に対応するように屈曲位置および角度を変えて変形して壁高欄遊間部7を塞ぐように壁高欄遊間部カバー1が設置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁高欄遊間部カバーに関し、さらに詳しくは、道路橋の連結部に形成される様々な形状の壁高欄遊間部に対応できる汎用性に優れた壁高欄遊間部カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋の桁の継ぎ目には伸縮装置が設置され、桁の気温変化による伸縮を吸収するようにしている。この桁の伸縮に対応するために、桁の幅方向両側に立設される壁高欄(落下防止柵)の継ぎ目には遊間部が形成されている。この壁高欄遊間部は、そのすき間から物が落下したり、壁高欄に衝突した走行車両が壁高欄遊間部に挟まって大きな衝撃を受けることを防止するためにカバーで覆われるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10の側面視で示すように、橋台10の上に設置された支承11により端部が支持された前後一対の道路橋の桁9、9どうしは上下方向に段差を有して接続されたり、図11の平面視で示すように、桁端が幅方向に斜線に区分されて接続されたり、また、これら側面視と平面視との関係が複合して接続される場合がある。そのため、同じ桁9、9どうしを接続する場合であっても、接続状態により桁9、9の間に形成される壁高欄遊間部7の形状は様々に異なる形状となる。
【0004】
従来の壁高欄遊間部カバー7は、このような様々な形状に対応するために、設置現場の壁高欄遊間部の形状を採寸し、その形状に合わせて複雑な設計や加工を行なって製造していた。そのため各設置現場毎に専用仕様の壁高欄遊間部カバーをストックしておかなければ、破損した場合に迅速な修理を行なうことができないという問題があり、部品管理も複雑になるため、コスト低減が非常に困難であった。
【特許文献1】実開平6−43014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、桁どうしの接続状態により生じる様々な形状の壁高欄遊間部に対応できる汎用性に優れた壁高欄遊間部カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の壁高欄遊間部カバーは、複数の剛体芯部材を間隔をあけて並列し、これら剛体芯部材を並列状態のまま弾性材により一体に連結して構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の壁高欄遊間部カバーによれば、複数の剛体芯部材を間隔をあけて並列し、これら剛体芯部材を並列状態のまま弾性材により一体に連結して構成したので、剛体芯部材の間の弾性材を自由に屈曲位置および角度を変えて変形させることができる。これにより、桁どうしの接続状態の違いにより生じる種々の壁高欄遊間部の形状に対応させて壁高欄遊間部カバーを変形させることが可能になり、1種類の壁高欄遊間部カバーであっても、種々の異なる形状の壁高欄遊間部に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の壁高欄遊間部カバーを図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1に例示する実施形態の壁高欄遊間部カバー1は、平面展開状態で3枚の四角形状の金属板2a、2b、2cをそれぞれ間隔P1、P2をあけて並列し、これらの金属板2a〜2cを剛体芯部材として加硫ゴム3に埋設して構成されている。
【0009】
それぞれの金属板2a〜2cを加硫ゴム3により一体に連結している壁高欄遊間部カバー1は、例えば、2枚の未加硫ゴムシートの間に金属板2a〜2cを介挿した成形品を加硫金型の中で加硫することにより製造することができ、金属板2a〜2cと加硫ゴム3とが加硫接着により強固に接合される。
【0010】
それぞれの金属板2a〜2cは、並列方向と直交する方向の長さ寸法Lを、壁高欄遊間部7を十分に覆うことのできる所定長さに設定され、並列方向の幅寸法W1〜W3を設置する壁高欄6a、6bの形状に合わせて形成されている。また、金属板2a〜2cの長さ方向一端部には、取付け穴4が設けられている。この取付け穴4は加硫工程の後で設けることもできるが、予め、金属板2a〜2cに設けておくことが好ましい。
【0011】
金属板2a〜2cの形状は、平面視で四角形状以外にすることもできるが、四角形状にすることにより隣り合う金属板2a〜2cの幅方向の間隔P1、P2を長さ方向に均一にすることができ、製造も容易になるので平面視で四角形状にすることが好ましい。また金属板2a〜2cの材質は、鉄やアルミニウム合金等の種々の金属を使用することができるが、防錆性と強度に優れたステンレス鋼を用いることが好ましい。金属板2a〜2cの厚さは例えば2mm〜10mm程度であり、壁高欄遊間部カバー1の厚さは例えば、8mm〜16mm程度である。
【0012】
剛性芯部材の材料としては、金属の他に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、これら樹脂の繊維強化物を例示することができる。また、剛性芯部材の形状としては、板状の他に棒状中実体、棒状中空体、断面形状を山形鋼状や溝形鋼状にしたものを例示することができる。これらの形状を用いる場合も平面視で四角形状にすることが好ましい。これらの形状を用いることにより、板状に比べて曲げ剛性を向上させることができる。
【0013】
加硫ゴム3のゴム種としては、クロロプレンゴム(CR)系、スチレンブタジエンゴム(SBR)系、天然ゴム(NR)系等を例示することができる。
【0014】
それぞれの金属板2a〜2cの間の加硫ゴム3の部分では、二点鎖線で例示するように屈曲線BLの位置および角度を任意に変えて加硫ゴム3が屈曲できるようになっている。この加硫ゴム3の屈曲の自由度と、この部分の加硫ゴム3の強度とを考慮して、金属板2a〜2cの間隔P1、P2は、加硫ゴム3の厚さによっても異なるが、例えば、20mm〜30mm程度に設定する。それぞれの間隔P1、P2は、同一にしてもよく、異なるように設定することもできる。
【0015】
この壁高欄遊間部カバー1の設置は、図2に例示するように、それぞれの金属板2a〜2cの間の加硫ゴム3を壁高欄遊間部7の形状に合わせて屈曲させ、取付け穴4に挿通した取付けボルト5を、壁高欄6aの端部に設けられたボルト穴に螺合してそれぞれの金属板2a〜2cを固定する。壁高欄遊間部カバー1の他方の端部はフリーの状態で壁高欄6bに重なった状態にして、壁高欄6a、6bの上端部から伸縮装置8の近傍までの壁高欄遊間部7を塞ぐように壁高欄遊間部カバー1を設置する。
【0016】
金属板2a〜2cと壁高欄6aとの固定は、取付けボルト5によるものだけでなく、他の固定手段を用いてもよい。
【0017】
本発明では、桁どうしの接続状態によって異なる壁高欄遊間部7の形状に対応するように、それぞれの金属板2a〜2cの間に適度の大きさの間隔P1、P2が設けられ、その間隔P1、P2を連結する加硫ゴム3が屈曲位置や角度を変えて変形するので、1種類の壁高欄遊間部カバー1であっても、種々の異なる形状の壁高欄遊間部7に対応することができる。
【0018】
このように汎用性が高くなるので、破損した場合に、その壁高欄遊間部7の形状に合わせた専用仕様の壁高欄遊間部カバー1をストックしていなくても、容易に入手ができ、迅速な修理が可能になる。また、量産できるのでコストを大幅に低減することも可能となる。
【0019】
この実施形態では、金属板2a〜2cの表面が加硫ゴム3により覆われているので、金属板2a〜2cと加硫ゴム3との接着劣化を防止することができ、また、走行車両等が衝突した際の衝撃を緩和することができる。さらに、ゴム表面の外観形状を自由にデザインすることができる。
【0020】
それぞれの金属板2a〜2cを連結するには加硫ゴム3だけでなく、その他の弾性材を用いることができ、例えば、形状記憶樹脂を用いることもできる。形状記憶樹脂は、可逆相軟化温度以上に加熱すると軟化して容易に任意の形状に変形することができ、可逆相軟化温度よりも低温に冷却することで、その形状を維持することのできる樹脂であり、例えば、トランスポリイソプレン、ポリノルボルネン、架橋ウレタン等を例示することができる。可逆相軟化温度は、トランスポリイソプレンでは60〜80℃程度、ポリノルボルネンでは、35〜45℃程度となる。
【0021】
加硫ゴム3に替えて形状記憶樹脂を用いる場合も、上記した加硫ゴム3の場合と同様の手順で壁高欄遊間部カバー1を製造することができる。この壁高欄遊間部カバー1を設置する際には、それぞれの金属板2a〜2cの間の形状記憶樹脂をヒータ等を用いて可逆相軟化温度以上に加熱する。これにより、形状記憶樹脂を壁高欄遊間部7の形状に合うように容易に変形させることができる。
【0022】
次いで、それぞれの金属板2a〜2cを取付けボルト5aにより壁高欄6aに固定し、形状記憶樹脂を、自然にもしくは強制的に可逆相軟化温度よりも低温に冷却させる。これにより壁高欄遊間部カバー1の形状を壁高欄遊間部7に合った形状に維持することができる。形状記憶樹脂の形状を修正する場合は、再度、可逆相軟化温度以上に加熱して適切な形状に変形させてればよい。弾性材として形状記憶樹脂を使用した場合、加硫ゴム3のように、屈曲による復元力が作用しないため形状が安定するとともに、取付けボルト5aに作用する負荷も小さくすることができる。
【0023】
図3は別の実施形態の壁高欄遊間部カバー1を示す。この壁高欄遊間部カバー1と先に例示した実施形態との相違は、金属板2a〜2cの全体を弾性材(加硫ゴム3)に埋設することなく、それぞれの金属板2a〜2cが表面に露出するように構成されている点であり、その他は同じ構成となっている。このように、それぞれの金属板2a〜2cの一方或いは両方の表面を露出させるようにしてもよい。
【0024】
この実施形態によれば、加硫ゴム3などの弾性材の使用量を最小限にすることができるので、コストを低減することが可能となり、特に、形状記憶樹脂などの高価な材料を使用する場合には、コストの低減効果を大きくすることができる。
【0025】
また、図4に示す実施形態の壁高欄遊間部カバー1のように、それぞれの金属板2a〜2cの周縁部までを加硫ゴム3などの弾性材で覆うように構成することもできる。この実施形態では、弾性材の使用量を低減しつつ、金属板2a〜2cと弾性材との接着強度を安定して維持することができる。
【0026】
図5は更に他の実施形態の壁高欄遊間部カバー1を示す。この壁高欄遊間部カバー1は、すべての金属板2が四角形状で同じ大きさに形成され、その幅寸法Wが40mm以上200mm以下に設定されている。
【0027】
壁高欄遊間部カバー1を設置する壁高欄6の断面形状は、図6(a)、(b)に例示するように幾つかのタイプがある。このような種々の形状の壁高欄6に対して、その断面形状の最小辺長さW1、W2よりも金属板2の幅寸法Wを小さくすることで、壁高欄遊間部カバー1を、壁高欄6の種々の断面形状に沿うように変形させ易くなる。
【0028】
そこで、代表的なタイプの壁高欄6の最小辺長さよりも金属板2の幅寸法Wが小さくなるように、金属板2の幅寸法Wを40mm以上200mm以下に設定している。尚、幅寸法Wの下限値を40mmとしているのは、金属板2を取付けボルトで固定するために十分な固定強度を確保するためである。
【0029】
この実施形態では、さらに汎用性が高まり、1種類の壁高欄遊間部カバー1であってもタイプの異なる複数種類の壁高欄6に対して、特別な加工をすることなく設置することが可能になる。金属板2、2の間の加硫ゴム3などの弾性材には、図6(b)に示すように屈曲溝Dを設けると屈曲する際の歪みを小さくすることができる。この屈曲溝Dは、弾性材の表裏少なくとも一方の面の金属板2、2の間に設ければよく、この屈曲溝Dによって壁高欄遊間部カバー1を屈曲変形し易くなるので、取付けや巻取る際の作業性が向上する。
【0030】
図7〜図9は更に別の実施形態の壁高欄遊間部カバー1を示す。この実施形態は、図5に示した実施形態に対して主に剛体芯部材の形状を変形したものであり、剛体芯部材として図8に示すように断面が溝形鋼状で同形状の金属チャネル2dを多数並列状態のまま加硫ゴム3により一体に連結して構成している。この金属チャネル2dは、図7に示すように平面視で四角形状であり、図9に示すように正面視で円弧状に形成されている。
【0031】
この壁高欄遊間部カバー1は、金属チャネル2dの断面コ字状の開口している側、即ち、円弧状側の面を表面側にし、屈曲溝Dを設けた面を壁高欄6側にして設置する。これにより壁高欄遊間部カバー1に走行車両が衝突した場合に、金属チャネル2dの円弧状側の面が車両の滑動を阻害しないようにして衝撃を緩和することができる。また、金属チャネル2dが表面側を開口し、壁高欄6側を閉じたコ字状になっているので、壁高欄遊間部カバー1が受けた衝撃を壁高欄6側へ広く分散させることができる。
【0032】
この屈曲溝Dは、壁高欄遊間部カバー1の表裏少なくとも一方の面の金属チャネル2dと金属チャネル2dとの間に設けるようにし、加硫ゴム3が容易に屈曲できる程度に薄ければ省略することもできる。金属チャネル2dは、壁高欄遊間部カバー1の表面に一部を露出させることもでき、すべてを加硫ゴム3に埋設するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の壁高欄遊間部カバーの実施形態を例示する平面展開図である。
【図2】図1の壁高欄遊間部カバーの使用例を示す斜視図である。
【図3】本発明の壁高欄遊間部カバーの別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図4】本発明の壁高欄遊間部カバーのさらに別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図5】本発明の壁高欄遊間部カバーのさらに別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図6】図5の壁高欄遊間部カバーの使用例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の壁高欄遊間部カバーのさらに別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】図7の正面図である。
【図10】道路橋の桁の接続部を例示する側面図である。
【図11】道路橋の桁の接続部を例示する平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 壁高欄遊間部カバー
2、2a〜2c 金属板(剛体芯部材)
2d 金属チャネル(剛体芯部材)
3 加硫ゴム
4 取付け穴
5 取付けボルト
6、6a、6b 壁高欄
7 壁高欄遊間部
8 伸縮装置
9 桁
10 橋脚
11 支承
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁高欄遊間部カバーに関し、さらに詳しくは、道路橋の連結部に形成される様々な形状の壁高欄遊間部に対応できる汎用性に優れた壁高欄遊間部カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋の桁の継ぎ目には伸縮装置が設置され、桁の気温変化による伸縮を吸収するようにしている。この桁の伸縮に対応するために、桁の幅方向両側に立設される壁高欄(落下防止柵)の継ぎ目には遊間部が形成されている。この壁高欄遊間部は、そのすき間から物が落下したり、壁高欄に衝突した走行車両が壁高欄遊間部に挟まって大きな衝撃を受けることを防止するためにカバーで覆われるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10の側面視で示すように、橋台10の上に設置された支承11により端部が支持された前後一対の道路橋の桁9、9どうしは上下方向に段差を有して接続されたり、図11の平面視で示すように、桁端が幅方向に斜線に区分されて接続されたり、また、これら側面視と平面視との関係が複合して接続される場合がある。そのため、同じ桁9、9どうしを接続する場合であっても、接続状態により桁9、9の間に形成される壁高欄遊間部7の形状は様々に異なる形状となる。
【0004】
従来の壁高欄遊間部カバー7は、このような様々な形状に対応するために、設置現場の壁高欄遊間部の形状を採寸し、その形状に合わせて複雑な設計や加工を行なって製造していた。そのため各設置現場毎に専用仕様の壁高欄遊間部カバーをストックしておかなければ、破損した場合に迅速な修理を行なうことができないという問題があり、部品管理も複雑になるため、コスト低減が非常に困難であった。
【特許文献1】実開平6−43014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、桁どうしの接続状態により生じる様々な形状の壁高欄遊間部に対応できる汎用性に優れた壁高欄遊間部カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の壁高欄遊間部カバーは、複数の剛体芯部材を間隔をあけて並列し、これら剛体芯部材を並列状態のまま弾性材により一体に連結して構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の壁高欄遊間部カバーによれば、複数の剛体芯部材を間隔をあけて並列し、これら剛体芯部材を並列状態のまま弾性材により一体に連結して構成したので、剛体芯部材の間の弾性材を自由に屈曲位置および角度を変えて変形させることができる。これにより、桁どうしの接続状態の違いにより生じる種々の壁高欄遊間部の形状に対応させて壁高欄遊間部カバーを変形させることが可能になり、1種類の壁高欄遊間部カバーであっても、種々の異なる形状の壁高欄遊間部に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の壁高欄遊間部カバーを図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1に例示する実施形態の壁高欄遊間部カバー1は、平面展開状態で3枚の四角形状の金属板2a、2b、2cをそれぞれ間隔P1、P2をあけて並列し、これらの金属板2a〜2cを剛体芯部材として加硫ゴム3に埋設して構成されている。
【0009】
それぞれの金属板2a〜2cを加硫ゴム3により一体に連結している壁高欄遊間部カバー1は、例えば、2枚の未加硫ゴムシートの間に金属板2a〜2cを介挿した成形品を加硫金型の中で加硫することにより製造することができ、金属板2a〜2cと加硫ゴム3とが加硫接着により強固に接合される。
【0010】
それぞれの金属板2a〜2cは、並列方向と直交する方向の長さ寸法Lを、壁高欄遊間部7を十分に覆うことのできる所定長さに設定され、並列方向の幅寸法W1〜W3を設置する壁高欄6a、6bの形状に合わせて形成されている。また、金属板2a〜2cの長さ方向一端部には、取付け穴4が設けられている。この取付け穴4は加硫工程の後で設けることもできるが、予め、金属板2a〜2cに設けておくことが好ましい。
【0011】
金属板2a〜2cの形状は、平面視で四角形状以外にすることもできるが、四角形状にすることにより隣り合う金属板2a〜2cの幅方向の間隔P1、P2を長さ方向に均一にすることができ、製造も容易になるので平面視で四角形状にすることが好ましい。また金属板2a〜2cの材質は、鉄やアルミニウム合金等の種々の金属を使用することができるが、防錆性と強度に優れたステンレス鋼を用いることが好ましい。金属板2a〜2cの厚さは例えば2mm〜10mm程度であり、壁高欄遊間部カバー1の厚さは例えば、8mm〜16mm程度である。
【0012】
剛性芯部材の材料としては、金属の他に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、これら樹脂の繊維強化物を例示することができる。また、剛性芯部材の形状としては、板状の他に棒状中実体、棒状中空体、断面形状を山形鋼状や溝形鋼状にしたものを例示することができる。これらの形状を用いる場合も平面視で四角形状にすることが好ましい。これらの形状を用いることにより、板状に比べて曲げ剛性を向上させることができる。
【0013】
加硫ゴム3のゴム種としては、クロロプレンゴム(CR)系、スチレンブタジエンゴム(SBR)系、天然ゴム(NR)系等を例示することができる。
【0014】
それぞれの金属板2a〜2cの間の加硫ゴム3の部分では、二点鎖線で例示するように屈曲線BLの位置および角度を任意に変えて加硫ゴム3が屈曲できるようになっている。この加硫ゴム3の屈曲の自由度と、この部分の加硫ゴム3の強度とを考慮して、金属板2a〜2cの間隔P1、P2は、加硫ゴム3の厚さによっても異なるが、例えば、20mm〜30mm程度に設定する。それぞれの間隔P1、P2は、同一にしてもよく、異なるように設定することもできる。
【0015】
この壁高欄遊間部カバー1の設置は、図2に例示するように、それぞれの金属板2a〜2cの間の加硫ゴム3を壁高欄遊間部7の形状に合わせて屈曲させ、取付け穴4に挿通した取付けボルト5を、壁高欄6aの端部に設けられたボルト穴に螺合してそれぞれの金属板2a〜2cを固定する。壁高欄遊間部カバー1の他方の端部はフリーの状態で壁高欄6bに重なった状態にして、壁高欄6a、6bの上端部から伸縮装置8の近傍までの壁高欄遊間部7を塞ぐように壁高欄遊間部カバー1を設置する。
【0016】
金属板2a〜2cと壁高欄6aとの固定は、取付けボルト5によるものだけでなく、他の固定手段を用いてもよい。
【0017】
本発明では、桁どうしの接続状態によって異なる壁高欄遊間部7の形状に対応するように、それぞれの金属板2a〜2cの間に適度の大きさの間隔P1、P2が設けられ、その間隔P1、P2を連結する加硫ゴム3が屈曲位置や角度を変えて変形するので、1種類の壁高欄遊間部カバー1であっても、種々の異なる形状の壁高欄遊間部7に対応することができる。
【0018】
このように汎用性が高くなるので、破損した場合に、その壁高欄遊間部7の形状に合わせた専用仕様の壁高欄遊間部カバー1をストックしていなくても、容易に入手ができ、迅速な修理が可能になる。また、量産できるのでコストを大幅に低減することも可能となる。
【0019】
この実施形態では、金属板2a〜2cの表面が加硫ゴム3により覆われているので、金属板2a〜2cと加硫ゴム3との接着劣化を防止することができ、また、走行車両等が衝突した際の衝撃を緩和することができる。さらに、ゴム表面の外観形状を自由にデザインすることができる。
【0020】
それぞれの金属板2a〜2cを連結するには加硫ゴム3だけでなく、その他の弾性材を用いることができ、例えば、形状記憶樹脂を用いることもできる。形状記憶樹脂は、可逆相軟化温度以上に加熱すると軟化して容易に任意の形状に変形することができ、可逆相軟化温度よりも低温に冷却することで、その形状を維持することのできる樹脂であり、例えば、トランスポリイソプレン、ポリノルボルネン、架橋ウレタン等を例示することができる。可逆相軟化温度は、トランスポリイソプレンでは60〜80℃程度、ポリノルボルネンでは、35〜45℃程度となる。
【0021】
加硫ゴム3に替えて形状記憶樹脂を用いる場合も、上記した加硫ゴム3の場合と同様の手順で壁高欄遊間部カバー1を製造することができる。この壁高欄遊間部カバー1を設置する際には、それぞれの金属板2a〜2cの間の形状記憶樹脂をヒータ等を用いて可逆相軟化温度以上に加熱する。これにより、形状記憶樹脂を壁高欄遊間部7の形状に合うように容易に変形させることができる。
【0022】
次いで、それぞれの金属板2a〜2cを取付けボルト5aにより壁高欄6aに固定し、形状記憶樹脂を、自然にもしくは強制的に可逆相軟化温度よりも低温に冷却させる。これにより壁高欄遊間部カバー1の形状を壁高欄遊間部7に合った形状に維持することができる。形状記憶樹脂の形状を修正する場合は、再度、可逆相軟化温度以上に加熱して適切な形状に変形させてればよい。弾性材として形状記憶樹脂を使用した場合、加硫ゴム3のように、屈曲による復元力が作用しないため形状が安定するとともに、取付けボルト5aに作用する負荷も小さくすることができる。
【0023】
図3は別の実施形態の壁高欄遊間部カバー1を示す。この壁高欄遊間部カバー1と先に例示した実施形態との相違は、金属板2a〜2cの全体を弾性材(加硫ゴム3)に埋設することなく、それぞれの金属板2a〜2cが表面に露出するように構成されている点であり、その他は同じ構成となっている。このように、それぞれの金属板2a〜2cの一方或いは両方の表面を露出させるようにしてもよい。
【0024】
この実施形態によれば、加硫ゴム3などの弾性材の使用量を最小限にすることができるので、コストを低減することが可能となり、特に、形状記憶樹脂などの高価な材料を使用する場合には、コストの低減効果を大きくすることができる。
【0025】
また、図4に示す実施形態の壁高欄遊間部カバー1のように、それぞれの金属板2a〜2cの周縁部までを加硫ゴム3などの弾性材で覆うように構成することもできる。この実施形態では、弾性材の使用量を低減しつつ、金属板2a〜2cと弾性材との接着強度を安定して維持することができる。
【0026】
図5は更に他の実施形態の壁高欄遊間部カバー1を示す。この壁高欄遊間部カバー1は、すべての金属板2が四角形状で同じ大きさに形成され、その幅寸法Wが40mm以上200mm以下に設定されている。
【0027】
壁高欄遊間部カバー1を設置する壁高欄6の断面形状は、図6(a)、(b)に例示するように幾つかのタイプがある。このような種々の形状の壁高欄6に対して、その断面形状の最小辺長さW1、W2よりも金属板2の幅寸法Wを小さくすることで、壁高欄遊間部カバー1を、壁高欄6の種々の断面形状に沿うように変形させ易くなる。
【0028】
そこで、代表的なタイプの壁高欄6の最小辺長さよりも金属板2の幅寸法Wが小さくなるように、金属板2の幅寸法Wを40mm以上200mm以下に設定している。尚、幅寸法Wの下限値を40mmとしているのは、金属板2を取付けボルトで固定するために十分な固定強度を確保するためである。
【0029】
この実施形態では、さらに汎用性が高まり、1種類の壁高欄遊間部カバー1であってもタイプの異なる複数種類の壁高欄6に対して、特別な加工をすることなく設置することが可能になる。金属板2、2の間の加硫ゴム3などの弾性材には、図6(b)に示すように屈曲溝Dを設けると屈曲する際の歪みを小さくすることができる。この屈曲溝Dは、弾性材の表裏少なくとも一方の面の金属板2、2の間に設ければよく、この屈曲溝Dによって壁高欄遊間部カバー1を屈曲変形し易くなるので、取付けや巻取る際の作業性が向上する。
【0030】
図7〜図9は更に別の実施形態の壁高欄遊間部カバー1を示す。この実施形態は、図5に示した実施形態に対して主に剛体芯部材の形状を変形したものであり、剛体芯部材として図8に示すように断面が溝形鋼状で同形状の金属チャネル2dを多数並列状態のまま加硫ゴム3により一体に連結して構成している。この金属チャネル2dは、図7に示すように平面視で四角形状であり、図9に示すように正面視で円弧状に形成されている。
【0031】
この壁高欄遊間部カバー1は、金属チャネル2dの断面コ字状の開口している側、即ち、円弧状側の面を表面側にし、屈曲溝Dを設けた面を壁高欄6側にして設置する。これにより壁高欄遊間部カバー1に走行車両が衝突した場合に、金属チャネル2dの円弧状側の面が車両の滑動を阻害しないようにして衝撃を緩和することができる。また、金属チャネル2dが表面側を開口し、壁高欄6側を閉じたコ字状になっているので、壁高欄遊間部カバー1が受けた衝撃を壁高欄6側へ広く分散させることができる。
【0032】
この屈曲溝Dは、壁高欄遊間部カバー1の表裏少なくとも一方の面の金属チャネル2dと金属チャネル2dとの間に設けるようにし、加硫ゴム3が容易に屈曲できる程度に薄ければ省略することもできる。金属チャネル2dは、壁高欄遊間部カバー1の表面に一部を露出させることもでき、すべてを加硫ゴム3に埋設するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の壁高欄遊間部カバーの実施形態を例示する平面展開図である。
【図2】図1の壁高欄遊間部カバーの使用例を示す斜視図である。
【図3】本発明の壁高欄遊間部カバーの別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図4】本発明の壁高欄遊間部カバーのさらに別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図5】本発明の壁高欄遊間部カバーのさらに別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図6】図5の壁高欄遊間部カバーの使用例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の壁高欄遊間部カバーのさらに別の実施形態を例示する平面展開図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】図7の正面図である。
【図10】道路橋の桁の接続部を例示する側面図である。
【図11】道路橋の桁の接続部を例示する平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 壁高欄遊間部カバー
2、2a〜2c 金属板(剛体芯部材)
2d 金属チャネル(剛体芯部材)
3 加硫ゴム
4 取付け穴
5 取付けボルト
6、6a、6b 壁高欄
7 壁高欄遊間部
8 伸縮装置
9 桁
10 橋脚
11 支承
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の剛体芯部材を間隔をあけて並列し、これら剛体芯部材を並列状態のまま弾性材により一体に連結して構成した壁高欄遊間部カバー。
【請求項2】
前記複数の剛体芯部材を平面視で四角形状に形成した請求項1に記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項3】
前記複数の剛体芯部材を同じ大きさに形成し、かつ並列方向の幅寸法を40mm以上200mm以下とした請求項2に記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項4】
前記複数の剛体芯部材を前記弾性材で被覆するように埋設した請求項1〜3のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項5】
前記剛体芯部材に取付け穴を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項6】
前記弾性材が加硫ゴムである請求項1〜5のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項7】
前記弾性材が形状記憶樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項1】
複数の剛体芯部材を間隔をあけて並列し、これら剛体芯部材を並列状態のまま弾性材により一体に連結して構成した壁高欄遊間部カバー。
【請求項2】
前記複数の剛体芯部材を平面視で四角形状に形成した請求項1に記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項3】
前記複数の剛体芯部材を同じ大きさに形成し、かつ並列方向の幅寸法を40mm以上200mm以下とした請求項2に記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項4】
前記複数の剛体芯部材を前記弾性材で被覆するように埋設した請求項1〜3のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項5】
前記剛体芯部材に取付け穴を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項6】
前記弾性材が加硫ゴムである請求項1〜5のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【請求項7】
前記弾性材が形状記憶樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の壁高欄遊間部カバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−7956(P2008−7956A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176434(P2006−176434)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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