説明

売上データ処理装置及びプログラム

【課題】売上データの登録に応じて印刷物を発行する場合に、予め登録した顧客に限らず、顧客が誰であってもその属性に合った印刷物を発行できるようにする。
【解決手段】ECR本体ユニット部1のCPU11は、客側カメラ25により撮影された登録待ち顧客の撮影画像を解析することにより顧客属性(例えば、性別、年齢層)を特定し、この顧客属性に基づいて、印刷部17により発行される印刷物の印刷内容(例えば、文字サイズ、文字種)を変更することにより、顧客属性に応じた印刷内容(文字サイズ、文字種)の印刷物(例えば、クーポン付きレシート)を発行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、売上データを取引毎に登録処理する売上データ処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、店舗においては、ECR(Electronic Cash Register)、POS(Point of sale)端末などの売上データ処理装置により登録処理された売上データを分析したり、その顧客(購入者)の属性(買物頻度、リピート率、性別、年齢層など)を分析したりするようにしている。例えば、顧客の買物頻度やリピート率、性別や年齢層などを分析する場合には、予め発行した会員カードから読み取ったカードデータに基づいてその顧客(会員ID)を特定して、購入履歴として記録して分析するようにしているが、会員カードを媒体とした顧客分析では、会員カードの発行やコスト、更には会員加入率に課題が残るほか、非会員にあっては顧客分析を行うことはできない。
そこで、従来では、顧客の顔を撮影するカメラを備え、このカメラによる撮影画像から顔の特徴を抽出して、その抽出結果と顧客データベースの内容(顔の特徴点データ)とを照合することにより顧客を特定し、それに対応付けられている顧客データ(氏名、住所、電話番号など)をデータベースから読み出して表示するようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−325433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術にあっても、予め会員登録した顧客を対象としたものであり、会員以外の誰でも顔を認識して顧客を特定するようにしたものではなかった。
ところで、ECRなどの売上データ処理装置にあっては、一取引の終了時に売上データを印刷したレシートを発行するようにしているが、レシートの印刷内容は画一的で面白みに欠け、顧客に与える印象が薄く、顧客に対するサービスや宣伝媒体としての付加価値も少なかった。
【0005】
本発明の課題は、売上データの登録に応じて印刷物を発行する場合に、予め登録した顧客に限らず、顧客が誰であってもその属性に合った印刷物を発行できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明の一つの態様は、
売上データを取引毎に登録処理する売上データ処理装置であって、
登録待ちの顧客を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により登録待ちの顧客を撮影した画像データを解析することにより顧客属性を特定する属性特定手段と、
売上データの登録に応じて顧客用の印刷物を発行する印刷手段と、
前記属性特定手段により特定された顧客属性に基づいて、前記印刷手段により発行される印刷物の印刷内容を変更する印刷制御手段と、
を具備したことを特徴とする売上データ処理装置である。
【0007】
上述した課題を解決するために本発明の他の態様は、
コンピュータに対して、
売上データを取引毎に登録処理する機能と、
登録待ちの顧客を撮影する撮像手段により撮影された画像データを解析することにより顧客属性を特定する機能と、
売上データの登録に応じて顧客用の印刷物を発行する機能と、
前記特定された顧客属性に基づいて、前記発行される印刷物の印刷内容を変更する機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、売上データの登録に応じて印刷物を発行する場合に、予め登録した顧客に限らず、顧客が誰であってもその属性に合った印刷物を発行することができ、発行する印刷物をとおして顧客サービスの向上や販売促進を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】売上データ処理装置として適用したECRの基本的な構成要素を示したブロック図。
【図2】ECR(ECR本体ユニット部1)をその前方斜め(顧客側)から見た状態の外観斜視図。
【図3】客側カメラ25によって撮影した登録待ち行列の顧客画像を例示した図。
【図4】(1)は、ECR本体ユニット部1側に記憶管理されているレシートテーブルRTを説明するための図、(2)は、クーポンテーブルCTを説明するための図。
【図5】(1)〜(4)は、顧客属性(性別、年齢層)に応じて発行されるクーポン付きレシートの印刷内容を例示した図。
【図6】モードスイッチMSが「登録(REG)」モードに切り換えられている場合の登録モードでの動作を説明するためのフローチャート。
【図7】図6に続く動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図7を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、売上データ処理装置として適用したECR(Electronic Cash Register)の基本的な構成要素を示したブロック図である。
このECR(売上データ処理装置)は、ECR本体ユニット部1とカメラユニット部2とに分離された構成で、ECR本体ユニット部1とカメラユニット部2とは、ケーブル3を介して着脱自在に接続されている。ECR本体ユニット部1は、ECRとしての基本的な機能(標準機能)として、入力された一取引分の売上データを登録処理すると共に、一取引分の登録終了時に顧客から渡された金種に応じた種類の締め処理を行う売上データ登録機能などを備えている。また、本実施形態においては、更にECR本体ユニット部1には各種のキー操作やドロアオープン/クローズなどに応じてイベントコードを発生させて、そのイベントコードをジャーナルデータとしてカメラユニット部2に対して転送する機能を有している。
【0011】
カメラユニット部2は、登録待ち(精算待ち)をしている顧客を撮影したり、担当者(オペレータ)及びその操作状況を撮影したりするカメラ機能のほか、このカメラ機能により撮影された顧客画像に基づいてその顧客属性を特定する顧客属性特定機能などを有し、各種の機能をモジュール化した構成となっている。このカメラユニット部2は、ケーブル3を介してECR本体ユニット部1に着脱自在に接続されており、故障などにより何時でも自由に交換可能となっている。なお、ECR本体ユニット部1とカメラユニット部2とは、必要に応じて協動して各種の処理を行うようにしている。
【0012】
ECR本体ユニット部1は、CPU11を中核とするもので、各種プログラムにしたがってこのECR本体ユニット部1の全体動作を制御する中央演算処理装置である。記憶部12は、例えば、ROM、RAM、フラッシュメモリなどの記憶媒体やその駆動系を有し、後述する図6及び図7に示した動作手順に応じて本実施形態を実現するためのプログラムや各種のアプリケーションなどを記憶したり、データベース、文字フォントデータなどを記憶したりする。なお、上述の記憶媒体は固定的に設けた内蔵型の記憶媒体に限らず、着脱可能な可搬型の外部記憶媒体であってもよく、また、プログラム/データは、他の機器から有線伝送路あるいは無線伝送路を介して記憶媒体にインストールしたり、プログラム/データを記憶管理するサーバなどをアクセスして使用したりするようにしてもよい。メモリ13は、計時データ、フラグデータなど、このECR本体ユニット部1が動作するために必要な各種のデータを一時的に記憶するワーク領域である。
【0013】
また、CPU11には、その入出力周辺デバイスである操作部14、スキャナ15、操作者用表示部16、印刷部17、ドロア駆動部18、COMポート19がバスラインを介して接続されており、入出力プログラムにしたがってCPU11はそれらの動作を制御する。操作部14は、押しボタン式の各種キーが配列されているキーボードを有し、このキーボード上には図示省略したが、テンキー、登録キー、小計キー、現金/預かり金キーなどの締めキーのほか、本実施形態では、顧客の属性(性別、年齢層)を指定する顧客属性キーAKが配設されていると共に、モードスイッチMSが配設されている。なお、顧客属性キーAKは、顧客の属性の種類に対応して複数個配設されているが、キー操作回数によってその種類を指定したり、ロータリー式であれば、その切り換え位置によってその種類を指定したりするキー構成であってもよい。
【0014】
モードスイッチMSは、その切り換え位置に応じて「登録(REG)」、「RF(戻し)」、「Z(精算)」などの各種の動作モード(プログラム種)を切り換えるロータリー式のスイッチである。CPU11は、「登録(REG)」モードに切り換えられている状態において、各種のキー操作に応じてその操作に応じたイベントコードを生成すると共に、入力された売上データを表示させたり、売上合計を更新したりする登録処理を実行し、一取引の登録終了時に締めキーが押下されると、ドロアを開放させたり、レシートを発行させたりする。
【0015】
イメージスキャナ15は、例えば、CCDやCMOSなどの画像センサ(イメージセンサ)を有し、商品の登録時のスキャニング動作時にその商品に添付されているバーコードや二次元コードを撮影することにより読み取るもので、CPU11は、イメージスキャナ15により撮影された画像データを解析することによってバーコードなどのコードデータをデコードして商品を特定するようにしている。操作者用表示部16は、担当者(オペレータ)用として、金額や商品に関するデータ、メッセージなどを表示するもので、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどにより構成されている。印刷部17は、例えば、熱転写やインクジェットなどのノンインパクトプリンタあるいはドットインパクトプリンタであり、印刷物(例えば、クーポン付きのレシート)の印刷を行う。ドロア駆動部18は、キー操作に応じてドロア18Aの開閉を制御するもので、CPU11は、ドロア18Aの開閉に応じてドロアオープン/クローズイベントを生成する。COMポート19は、カメラユニット部2との接続用のシリアルポートである。
【0016】
カメラユニット部2は、CPU21を中核とするもので、各種プログラムにしたがってこのカメラユニット部2の全体動作を制御する中央演算処理装置である。記憶部22は、例えば、ROM、RAM、フラッシュメモリなどの記憶媒体やその駆動系を有し、本実施形態を実現するためのプログラムや各種のアプリケーションなどを記憶する。メモリ23は、このカメラユニット部2が動作するために必要な各種のデータを一時的に記憶するワーク領域である。
【0017】
また、CPU21には、その入出力周辺デバイスである客用表示部24、客側カメラ25、操作側カメラ26、カードインターフェイス部27、COMポート29がバスラインを介して接続されており、入出力プログラムにしたがってCPU21はそれらの動作を制御する。客用表示部24は、登録待ち(精算待ち)の顧客用としてその画面を顧客側に対面させたもので、例えば、7セグメントLED(発光ダイオード)などにより構成され、商品単価、個数、小計金額、預かり金額などを数値表示する。
【0018】
客側カメラ25は、客用表示部24に接近配設されたもので、登録待ちしている顧客の顔を中心として撮影し、また、操作側カメラ26は、操作部14の全体及び操作中のオペレータの顔を撮影可能なもので、担当者(オペレータ)及びその操作状況を撮影する監視カメラである。なお、客側カメラ25、操作側カメラ26の詳細は、図示省略したが、レンズ部、撮像素子、A/D(アナログ/デジタル)変換部などを有し、動画像を撮影可能な構成で、レンズ部からの被写体像が撮像素子(CCD又はCMOS)に結像されることにより被写体を高精細に撮影可能な構成となっている。
【0019】
カードインターフェイス部27は、記録媒体としてのSDカード28が挿入接続されるもので、このSDカード28には、後述する各種のファイルが格納されている。なお、カメラユニット部2には、カードインターフェイス部27に挿入接続されたSDカード28の盗難などを防ぐために錠前(図省略)が配設されており、例えば、責任者が所持する専用鍵を使用して、錠前を開いてSDカード28を取り出すようにしている。また、SDカード28に限らず、その他の外部記録媒体であってもよい。COMポート29は、ECR本体ユニット部1との接続用のシリアルポートである。
【0020】
図2は、上述のように構成されたECR(ECR本体ユニット部1)をその前方斜め(顧客側)から見た状態の外観斜視図である。
ECR本体ユニット部1の上面部には、操作者用表示部16が配設されていると共に、操作部14を構成するキーボード及びモードスイッチMSが配設されている。また、ECR本体ユニット部1の上面部には、印刷部17から送出されるレシート(例えば、クーポン付きレシート)を取り出すためのレシート発行口(図示省略)が配設されている。
【0021】
カメラユニット部2は、客用表示部24の筐体2Aと、その筐体2Aを支持するポール状の支持部材(支持ポール)2Bとを有している。支持ポール2Bは、客用表示部24の筐体2Aを支持するもので、その下端部はECR本体ユニット部1の背面側の垂直に固定されている。また、支持ポール2Bの上端部は客用表示部24の筐体2Aが装着され、その長さを調整可能な構造となっていると共に、客用表示部24の筐体2Aは、支持ポール2Bに対して回転可能となっている。つまり、筐体2Aの高さとその向きを調整可能となっており、それに応じて客用表示部24、客側カメラ25の高さとその向きも調整可能となっている。
【0022】
客側カメラ25は、図2に示すように筐体2Aの前面において客用表示部24の一端部(図中、左側端部)に接近配設され、その撮影方向は、登録待ちしている顧客方向で、その画角は、登録待ち行列の顧客を撮影可能な範囲となっている。図3は、客側カメラ25によって撮影した登録待ち行列の顧客画像を例示したもので、先頭の顧客の後ろに次の顧客が並んでいる状態を示している。カメラユニット部2は、客側カメラ25により登録待ち行列の顧客を撮影した顧客画像を解析することによりその顧客の属性として例えば、性別、年齢層を特定するようにしている。そして、ECR本体ユニット部1は、カメラユニット部2により特定された顧客属性に基づいて、一取引の終了時(締め時)に発行される印刷物(例えば、クーポン付きレシート)に対する印刷内容(文字サイズ、文字種)を変更するようにしている。
【0023】
図4は、ECR本体ユニット部1側に記憶管理されているレシートテーブルRT及びクーポンテーブルCTを説明するための図である。
図4(1)は、レシートテーブルRTの構成を示し、「顧客属性(性別、年齢層)」に対応して、どのような「印刷内容(文字サイズ、文字種)」でレシートを印刷するかを記憶するテーブルで、顧客属性は、男性、女性に対応して“小学生以下”、“若年層”、“中間層”、“熟年者層”に分類され、各分類に対応してレシートの印刷内容を記憶する構成となっている。なお、“小学生以下”、“若年層”については、男性、女性に応じて異なる「印刷内容(文字サイズ、文字種)」が記憶されているが、“中間層”、“熟年者層”
については、男性、女性に共通する「印刷内容(文字サイズ、文字種)」が記憶されている。
【0024】
図4(2)は、クーポンテーブルCTの構成を示し、「顧客属性(性別、年齢層)」に対応して、どのような「印刷内容(文字サイズ、文字種)」でクーポンを印刷するかを記憶する構成となっている。この場合においてもレシートテーブルRTと同様に、男性、女性に対応して“小学生以下”、“若年層”、“中間層”、“熟年者層”に分類され、各分類に対応してクーポンの印刷内容(文字サイズ、文字種)が記憶されている。また、“小学生以下”、“若年層”については、男性、女性に応じて異なる「印刷内容(文字サイズ、文字種)」が記憶されているが、“中間層”、“熟年者層”
については、男性、女性に共通する「印刷内容(文字サイズ、文字種)」が記憶されている。
【0025】
図5(1)〜(4)は、性別、年齢層に応じて発行されるクーポン付きレシートの印刷内容を例示したもので、図5(1)は、標準タイプのクーポン付きレシートを示し、また、図5(2)は、熟年者層向けのクーポン付きレシート、図5(3)は、若い女性向けのクーポン付きレシート、図5(4)は、若い男性向けのクーポン付きレシートを示している。この場合、例えば、標準タイプのクーポン付きレシートは、特別に印刷内容を変更しない通常のレシートであるのに対して、熟年者層向けレシートは、遠視対策などのために大きな文字サイズで太字のフォントを使用して印刷したレシートであり、標準タイプに比べてその分、レシートも長くなっている。若い女性向けレシートは、若い女性が好む丸文字などのフォントを使用して印刷したレシート、若い男性向けレシートは、標準タイプに比べて文字サイズの小さいフォントを使用して印刷したレシートで、標準タイプに比べてその分、レシートも短くなっている。
【0026】
次に、本実施形態におけるECRの動作概念を図6及び図7に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、これらのフローチャートに記述されている各機能は、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されており、このプログラムコードにしたがった動作が逐次実行される。また、ネットワークなどの伝送媒体を介して伝送されてきた上述のプログラムコードに従った動作を逐次実行することもできる。すなわち記録媒体のほかに、伝送媒体を介して外部供給されたプログラム/データを利用して本実施形態特有の動作を実行することもできる。
なお、図6及び図7は、ECRの全体動作のうち、本実施形態の特徴部分の動作概要を示したフローチャートであり、この図6及び図7のフローから抜けた際には、全体動作のメインフロー(図示省略)に戻る。
【0027】
図6及び図7は、モードスイッチMSが「登録(REG)」モードに切り換えられている場合の登録モードでの動作を説明するためのフローチャートである。なお、ECR本体ユニット部1は、必要に応じてカメラユニット部2と協動して各種の処理を行うようにしている。
先ず、ECR本体ユニット部1のCPU11は、商品登録操作が行われた際に(ステップS1でYES)、一取引の最初の操作か、つまり、商品からバーコードなどを読み取るためにスキャナ15によるスキャニング動作が行われたか、金額データの値数入力後に商品キーなどが操作されたかを調べる(ステップS2)。
【0028】
いま、一取引の最初の操作が行われたときには(ステップS2でYES)、カメラユニット部2側に対して顧客属性の特定を指示するが、カメラユニット部2側では、この指示に応じて客側カメラ25から撮影画像(1フレーム分の顧客画像)を抽出し(ステップS3)、この顧客画像(静止画像)をデジタルズーム処理により所定の大きさに拡大処理したり、顔部分を中心とした画像を抽出したりした後、画像解析を行って顧客属性として性別を特定する(ステップS4)。更に画像解析を行って顧客属性として年齢層を特定する(ステップS5)。この場合、髪型、化粧の有無、服装、皺の状態などを総合的に判断して性別及び年齢層を特定するようにしているが、性別及び年齢層を特定は、カメラなどの技術において一般的に用いられている技術であり、本実施形態ではその周知技術を利用するようにしているため、その具体的な説明については省略するものとする。
【0029】
ここで、画像解析の結果、その評価値が基準値(属性判定値)を越えたことを条件に顧客属性を特定するようにしている。この場合に、その評価値が属性判定値付近であってその判定値を越えていなければ、顧客属性の特定を不実行(特定不能)としている。このように顧客属性の特定が不実行(特定不能)の場合には(ステップS6でYES)、特定不能メッセージを操作者用表示部16に表示させる(ステップS7)。ここで、オペレータは、顧客属性の入力待ち状態において顧客の属性(性別、年齢層)を指定するために顧客属性キーAKを操作すると、ECR本体ユニット部1側では、指定された顧客属性を入力する属性入力処理を行う(ステップS8)。
【0030】
上述のようにして画像解析により顧客属性を特定したり(ステップS5)、顧客属性キーAKの操作により顧客属性が入力されたりすると(ステップS8)、次のステップS9に移り、商品登録処理を行い、入力された売上データを表示させたり、入力された売上データに基づいて、図示省略の商品別合計ファイルや部門別合計ファイルの内容を更新したりする。そして、一取引分の小計金額を更新(累計)した後(ステップS10)、図7のフローに移り、小計キーが操作されたかを調べたり(図7のステップS11)、一取引分の登録を終了させる締めキーが操作されたかを調べたり(ステップS13)、その他のキーが操作されたかを調べたり(ステップS14)、登録モードが解除されたかを調べたりする(ステップS16)。
【0031】
いま、小計キーK2が操作されたときには(図7のステップS11でYES)、現時点までの小計金額を操作者用表示部16及び客用表示部24に表示させる(ステップS12)。また、その他のキー、例えば、訂正キーなどが操作されたときには(ステップS14でYES)、操作に応じた処理として、訂正処理などを実行した後(ステップS15)、登録モードが解除されたかを調べる(ステップS16)。ここで、登録モードのままであれば(ステップS16でNO)、図6のステップS1に戻るが、登録モードが解除されたときには(ステップS16でYES)、図6及び図7のフローの終了となる。また、一取引分の登録終了時に現金/預かり金キーなどの締めキーが操作されたときには(ステップS13でYES)、顧客から渡された金種に応じた種類の締め処理を行う(ステップS17)。
【0032】
そして、上述のように特定した顧客属性あるいは入力された顧客属性に基づいて、レシートテーブルRT及びクーポンテーブルCTを検索し、その顧客属性に対応するレシート印刷内容(文字サイズ、文字種)及びクーポン印刷内容(文字サイズ、文字種)を特定する(ステップS18)。そして、この特定したレシート印刷内容(文字サイズ、文字種)及びクーポン印刷内容(文字サイズ、文字種)でレシート印刷を行ったり、クーポン部分の印刷を行ったりして(ステップS19)、クーポン付きレシートを発行する(ステップS20)。例えば、顧客が若年層で女性の場合には、若い女性が好む丸文字などのフォントを使用して印刷した若い女性向けのクーポン付きレシートを発行する。これによって、顧客属性に応じて例えば、図5(1)〜(4)に示すようなクーポン付きレシートが発行されることになる。その後、次の取引に対する登録を開始するために図6のステップS1に戻る。
【0033】
以上のように、本実施形態においては、客側カメラ25により撮影された登録待ち顧客の撮影画像を解析することにより顧客属性を特定し、この顧客属性に基づいて、印刷部17により発行される印刷物の印刷内容を変更するようにしたので、売上データの登録に応じて印刷物を発行する場合に、予め会員登録した顧客に限らず、顧客が誰であってもその属性に合った印刷物(例えば、クーポン付きレシート)を発行することができ、顧客に与える印象を強くし、宣伝媒体などとしての付加価値も高めることができ、発行する印刷物をとおして顧客サービスの向上や販売促進を図ることが可能となる。
【0034】
顧客属性として、年齢層、性別を特定するようにしたので、顧客の年齢層、性別に応じて印刷内容を変更することができ、顧客が誰であってもその年齢層、性別に合った印刷物を発行することができる。
【0035】
画像解析の結果を評価した評価値が属性判定値付近であってその判定値を越えていなければ、顧客属性の特定を不実行として、その旨をオペレータに報知するようにしたので、オペレータによる顧客属性の入力が可能となり、画像解析による特定を補助することが可能となる。
【0036】
印刷物の印刷内容として、文字サイズ、文字種を変更するようにしたので、例えば、老眼(老視)対策として大きな太いフォントを使用して印刷したり、若い女性向きには、丸文字風のフォントを使用して印刷したりすることができる。
【0037】
客側カメラ25は、登録待ち顧客が視認する客用表示部24に搭載されていると共に登録待ち顧客の顔を対面撮影することが可能な向きに設置されているので、顧客の顔を正面から撮影することができ顔認識を適切に行うことが可能となる。
【0038】
なお、上述した実施形態においては、顧客属性に基づいて変更される印刷内容として文字サイズ、文字種を示したが、文字サイズ、文字種に限らず、文字色、背景であってもよい。ここで、背景とは、文字以外の領域であり、背景全体の色(背景色)や背景全体の模様(背景模様)を変更したり、花、葉、星、動物などの図形や記号をワンポイント付加したりして背景の印刷内容を変更するようにしてもよい。これによって、例えば、小学生以下の男の子には、マンガのキャラクタを付加した印刷内容に変更することができ、小学生以下の女の子には、花の模様を背景とした印刷内容に変更することができ、更に顧客サービスの向上や販売促進を図ることが可能となる。
【0039】
また、上述した実施形態においては、顧客属性として年齢層、性別を特定するようにしたが、これに限らず、例えば、顧客属性として派手好き度、お洒落度を特定するようにしてもよい。この場合、例えば、画像解析により髪型、髪の色、服装、化粧の仕方などを総合的に考慮して派手好み度、お洒落度を特定するようにすればよい。これによって、派手好み度、お洒落度に合った印刷内容とすることができる。例えば、文字サイズ、文字種のほかに、文字色、背景色、背景模様などを変更することができ、顧客の嗜好に合わせた印刷物を発行することができ、更に顧客サービスの向上や販売促進を図ることが可能となる。
【0040】
上述した実施形態においては、顧客属性として年齢層、性別を特定するようにしたが、顧客属性として過去の購入実績(例えば、購入高、購入個数)、来店実績(例えば、来店回数、来店頻度)のうち、少なくともそのいずれかを特定するようにしてもよい。この場合、顧客毎に購入実績、来店実績を記憶管理する顧客データベース(図示省略)を設けると共に、顧客の新規来店時にその顔画像の特徴点データを画像照合用として登録する顔画像ファイルを設け、「顧客認識出力ID」を介して顧客データベースと顔画像ファイルとをリンクしておく。
【0041】
この状態において、次回の来店時に今回の撮影画像を解析してその特徴点データと顔画像ファイルに登録されている登録済みの特徴点データとを比較して特徴的に一致するか否かを判別することにより顧客の特定を行う。これによって特定した顧客の「顧客認識出力ID」に基づいて、顧客データベースを検索して、その顧客の購入実績、来店実績を更新すればよい。これによって顧客の購入実績、来店実績に応じて印刷内容を変更することができ、例えば、上得意客に対して高級感を持った印刷を行ったり、新規な顧客に対しては、印象の強い印刷を行ったりするができ、更に顧客サービスの向上や販売促進を図ることが可能となる。
【0042】
上述した実施形態においては、顧客属性に基づいて印刷内容を変更するようにしたが、更に時間的要素に基づいて印刷内容を変更するようにしてもよい。この場合、印刷時に、現在日時を計時する時計(図示省略)を参照し、現在日時に基づいて印刷内容を変更するようにすればよい。例えば、時間帯に応じて印刷内容を星空風に変更したり、期間などに応じて印刷内容をクリスマス風に変更したり、季節に応じて印刷内容を夏風に変更したりするようにしてもよい。これによって時間帯、期間、季節に合った印刷物を発行することができ、更に顧客サービスの向上や販売促進を図ることが可能となる。
【0043】
上述した実施形態においては、印刷物としては、クーポン付きレシートを例にしたが、これに限らず、クーポン、領収書などであってもよい。
【0044】
上述した実施形態においては、操作部14のキーボードに顧客属性キーAKを設けたが、スキャナ15の筐体側面などに設けるようにしてもよい。これによって顧客に気付かれずに顧客属性を指定入力することが可能となる。
【0045】
上述した実施形態においては、顧客属性を特定不可の場合にその旨をオペレータに報知するようにしたので、顧客属性を特定することができた場合でもその顧客属性をアイコン表示などで報知するようにしてもよい。
【0046】
上述した実施形態においては、ECR(売上データ処理装置)をECR本体ユニット部1とカメラユニット部2とに分離した構成としたが、それらを統合した構成であってもよい。また、売上データ処理装置としてECRに適用した場合を示したが、構内専用回線に接続したPOS端末に適用するようにしてもよい。また、インターネットを介して本部のPCに接続した売上データ処理システムに適用するようにしてもよい。
【0047】
また、上述した各実施形態において示した“装置”や“部”とは、機能別に複数の筐体に分離されていてもよく、単一の筐体に限らない。また、上述したフローチャートに記述した各ステップは、時系列的な処理に限らず、複数のステップを並列的に処理したり、別個独立して処理したりするようにしてもよい。
【0048】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、
売上データを取引毎に登録処理する売上データ処理装置であって、
登録待ちの顧客を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により登録待ちの顧客を撮影した画像データを解析することにより顧客属性を特定する属性特定手段と、
売上データの登録に応じて顧客用の印刷物を発行する印刷手段と、
前記属性特定手段により特定された顧客属性に基づいて、前記印刷手段により発行される印刷物の印刷内容を変更する印刷制御手段と、
を具備したことを特徴とする売上データ処理装置である。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の売上データ処理装置において、
前記属性特定手段は、顧客属性として年齢層、性別、派手好き度、お洒落度のうち、少なくともそのいずれかを特定する、
ようにしたことを特徴とする売上データ処理装置である。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の売上データ処理装置において、
前記属性特定手段は、顧客属性として過去の購入実績、来店実績のうち、少なくともそのいずれかを特定する、
ようにしたことを特徴とする売上データ処理装置である。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の売上データ処理装置において、
前記属性特定手段は、画像データの解析結果を評価した評価値が属性判定値を越えたことを条件に顧客属性を特定する場合に、その評価値が属性判定値付近であってその判定値を越えていなければ、顧客属性の特定を不実行とし、
前記属性特定手段により顧客属性の特定が不実行の場合に、その旨をオペレータに報知する報知手段を更に備える、
ようにしたことを特徴とする売上データ処理装置である。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の売上データ処理装置において、
前記印刷制御手段は、印刷物の印刷内容として文字サイズ、文字種、文字色、背景のうち、少なくともそのいずれかを変更する、
ようにしたことを特徴とする売上データ処理装置である。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の売上データ処理装置において、
現在日時を計時する計時手段を更に備え、
前記印刷制御手段は、前記特定手段により特定された顧客属性と前記計時手段により計時された現在日時に基づいて、前記印刷手段により発行される印刷物の印刷内容を変更する、
ようにしたことを特徴とする売上データ処理装置である。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の売上データ処理装置であって、
前記撮像手段は、登録待ち顧客が視認する客用表示部に搭載されていると共に登録待ち顧客の顔を対面撮影することが可能な向きに設置されている、
ことを特徴とする売上データ処理装置である。
(請求項8)
コンピュータに対して、
売上データを取引毎に登録処理する機能と、
登録待ちの顧客を撮影する撮像手段により撮影された画像データを解析することにより顧客属性を特定する機能と、
売上データの登録に応じて顧客用の印刷物を発行する機能と、
前記特定された顧客属性に基づいて、前記発行される印刷物の印刷内容を変更する機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0049】
1 ECR本体ユニット部
2 カメラユニット部
11、21 CPU
12、22 記憶部
14 操作部
15 スキャナ
16 操作者用表示部
19、29 COMポート
24 客用表示部
25 客側カメラ
RT レシートテーブル
CT クーポンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
売上データを取引毎に登録処理する売上データ処理装置であって、
登録待ちの顧客を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により登録待ちの顧客を撮影した画像データを解析することにより顧客属性を特定する属性特定手段と、
売上データの登録に応じて顧客用の印刷物を発行する印刷手段と、
前記属性特定手段により特定された顧客属性に基づいて、前記印刷手段により発行される印刷物の印刷内容を変更する印刷制御手段と、
を具備したことを特徴とする売上データ処理装置。
【請求項2】
前記属性特定手段は、顧客属性として年齢層、性別、派手好き度、お洒落度のうち、少なくともそのいずれかを特定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1に記載の売上データ処理装置。
【請求項3】
前記属性特定手段は、顧客属性として過去の購入実績、来店実績のうち、少なくともそのいずれかを特定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1に記載の売上データ処理装置。
【請求項4】
前記属性特定手段は、画像データの解析結果を評価した評価値が属性判定値を越えたことを条件に顧客属性を特定する場合に、その評価値が属性判定値付近であってその判定値を越えていなければ、顧客属性の特定を不実行とし、
前記属性特定手段により顧客属性の特定が不実行の場合に、その旨をオペレータに報知する報知手段を更に備える、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の売上データ処理装置。
【請求項5】
前記印刷制御手段は、印刷物の印刷内容として文字サイズ、文字種、文字色、背景のうち、少なくともそのいずれかを変更する、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の売上データ処理装置。
【請求項6】
現在日時を計時する計時手段を更に備え、
前記印刷制御手段は、前記特定手段により特定された顧客属性と前記計時手段により計時された現在日時に基づいて、前記印刷手段により発行される印刷物の印刷内容を変更する、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の売上データ処理装置。
【請求項7】
前記撮像手段は、登録待ち顧客が視認する客用表示部に搭載されていると共に登録待ち顧客の顔を対面撮影することが可能な向きに設置されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の売上データ処理装置。
【請求項8】
コンピュータに対して、
売上データを取引毎に登録処理する機能と、
登録待ちの顧客を撮影する撮像手段により撮影された画像データを解析することにより顧客属性を特定する機能と、
売上データの登録に応じて顧客用の印刷物を発行する機能と、
前記特定された顧客属性に基づいて、前記発行される印刷物の印刷内容を変更する機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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