説明

変化するねじ山断面形状を備えているねじ込み体を製造する方法

【課題】特別なねじ山をCNC機械で製作する。
【解決手段】本発明は、変化するねじ山断面形状を備えたねじ込み体を製造する方法に関する。ねじ山の長さ方向に沿って、ねじ山歯の高さの特定の推移を具体化するために、ねじ込み方向を向いているねじ山歯のフランクは一定の角度で製作し、ねじ山歯の他方のフランクは変化する角度で製作することが提案される。これに加えて、ねじ山列に、ランプと階段からなる一種の階段関数を重ね合わせ、そのようにして、ねじ山歯の逃げ角と露出した位置とをそれぞれ具体化することが提案される。本方法を実際に実用化するには、いわゆるB軸を備えるCNC機械、好ましくはCNC旋盤と、プログラミングに関する特定の方策が必要である。本発明に基づくねじ山形態は、特にタッピン式の設計の場合に、強靭な素材へねじ込むときに必要な力の低下につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分領域で非線形の、特に屈曲または湾曲した外套面と、ねじ山歯とねじ山溝で構成された変化するねじ山断面形状を備える少なくとも該部分領域に位置するねじ山とを備え、ねじ込み方向に位置しているねじ山歯のフランクは一定の角度を有しているねじ込み体を製造する方法に関するものである。さらに本発明は、少なくとも部分領域で変化するねじ山断面形状を備えるねじ山をCNC機械で、好ましくはCNC旋盤で、切削により製造する方法に関するものであり、ねじ山は少なくとも該部分領域で少なくとも2つの製造工程ないし製造サイクルにより加工される。
【背景技術】
【0002】
ねじ山は、一般的な機械工作の設計要素として広く普及している。通常、ねじ山は円筒状に構成されている。そのほか、たとえば送油パイプ用の円錐状のねじ山も普及している。多数の様々なねじ山断面形状が知られており、規格に定められている。1つの工作物のねじ山断面形状は変化していないのが普通であり、すなわち、ねじ山先頭部におけるねじ山断面形状は、ねじ山終端部におけるねじ山断面形状と同一である。しかしながら、たとえばナットのねじ山にネジのねじ山を挿入するのを容易にするために、ねじ山溝とねじ山歯で構成されるねじ山断面形状の、ねじ山の少なくとも部分領域で流れるように変化している形状構成が好都合になり得るような例外も考えられる。
【0003】
しかしながら、ねじ山に関わる特殊な幾何学的状況がとりわけ生じるのは、特に、ねじ込み可能な人工股関節カップなどで生じるような、湾曲している面のねじ山の場合である。この場合、シェル本体の外套形状に関しては、たとえば内球、半球、超球、円錐球、放物線、円環、楕円、およびこれらに類似する幾何学形状が知られている。このような種類のねじ付きカップを製造するための切削による製造方法では、部分的に、必然的に流れるように変化していくねじ山断面形状の歪みが生じるが、このような歪みは多くのケースでは意図されておらず、望ましいものでもない。特に、部分フランク角(ねじ山歯のそれぞれの辺の角度)が非対称なねじ山歯を利用する場合、その結果として生じるねじ山歯の傾斜方向によっては、カップ赤道部からカップ極部へと向かう方向で、歯の高さが流れるように増加ないし減少するという現象が起こり、その結果、極部に近いねじ山先頭部で大きすぎるねじ山歯が生じるか、または、ほとんど消滅状態に近いねじ山歯が生じるかのいずれかとなる。前者の場合、極端に大きいねじ山歯は、カップをねじ込むために非常に大きい力が必要となり、ないしは、インプラントを完全に骨と接触するまでねじ込めないということにつながる。後者の場合、きわめて不十分な一次固定しか実現されないことになる。いずれの場合にもインプラントが緩むという危険があり、このような緩みは、結果的に、患者の再度の手術を意味することになる。
【0004】
仏国特許出願第2548012号明細書より、出願書類の中では外側形状が円筒球面と表現されているねじ付きカップが公知である。このねじ付きカップは、外側の長さ全体にわたって延び、ねじ山断面形状がカップ赤道部からカップ極部に向かって流れるように変化する単純なねじ山を備えている。このような断面形状変化は、カップ極部に向う方向で歯の高さが減少していき、歯面長さの不均等が増していくというかたちで現れる。このねじ山は、60°のフランク角が形成される従来型のISOねじ山として製作される。そのうち図面には、通常の工具(たとえばねじ切りチップ)による最終的な切削の結果が示されている。ねじ山歯の先端に関して一定なねじ山ピッチを実現するために、CNC機械での製造中に、1回転ごとに変化するピッチを有する軌道上で工具を移動させることが提案されている。その都度のピッチを調べるための幾何学的な背景は、前掲の出願書類の図6に図示されている。一見したところ、ここに記載されている手順は妥当であり、容易に実施可能であるように思われる。
【0005】
詳細に分析してみると、まず第1に、ねじ山先端とそれぞれのねじ山底面は、二次元の図面で見て円弧上に位置しているものの、これらは各々の回転中心がカップ軸と一致していないことに気がつく。したがって、ねじ山底面を包絡する幾何学的な外套についても、歯の先端を包絡する幾何学上の外套についても、円形は具体化されていない。CADシステムを用いて厳密な図面を作図してみると、ここで検討している製造方法では、図示されているねじ山断面形状を具体化することは決してできないことが証明される。すなわち、カップ極部に向かってねじ山溝の深さが増すにつれて、ねじ山歯の高さの極端な変動という形で影響を及ぼす、重大な幾何学現象が生じるのである。手作業で作成されている出願書類の図面には、こうした深刻な欠陥を見ることができない。図面の数多くの不正確さが積み重なることによって、このような欠陥が隠されているからである。
【0006】
しかし実際には、ねじ山を切る工具の変化しないねじ山断面形状を用いて、単一工程の最終的な切削で、互いに独立した複数の法則性に従うことは不可能である。
【0007】
これに加えて、ISO断面形状を備える提案されているねじ山は、意図されている目的にはもともと不向きである。なぜならこのねじ山は、一方では、骨とインプラント素材の間の強度比率を考慮しておらず、他方では、移植のときに非常に高いねじ込み力を必要とするからである。たとえば台形の断面形状をもち、それに伴ってねじ山歯が狭まっている旋盤工具を使用することによって、ねじ山断面形状を一部変化させたとしても、単一工程の製造方法では、ねじ山底面が階段によって表されることになる。このことは、ねじ込みをするときのデッドロック現象に結びつくばかりでなく、骨の支持面との接触領域における好ましくない間隙形成とも結びついている。このような問題は、一方で、少なくとも部分領域で湾曲した外套面を備え、他方で、ねじ込み体の強度よりも明らかに低い強度をもつ素材へのねじ込みのために用いられる多くの種類のねじ込み体に原理的に存在している。
【0008】
上に述べたような事実関係は欧州特許第0687165号明細書の対象となっており、したがって一般に周知である。同文献では、特定のねじ山断面形状を得るために、異なるピッチをもつねじ山を加工することが提案されている。この方法は、すでに医療技術の分野において、骨用ねじや人工股関節カップを製造するために適用されており、成果を挙げている。この場合、対応するパテントファミリーの保護権は、各製造者によってそれぞれの製品グループに関して独占使用されている。しかしながら、この方法で利用することができる形態可能性の幅は、異なるねじ山ピッチの使用だけに限定されている。ねじ山歯の傾斜角に何らかの種類の影響を及ぼすことは不可能である。
【0009】
独国特許出願公開第3325448号明細書より、シェル外套に沿って引いた接線上で、それぞれ垂直に位置決めされたねじ山歯の原則的に一定の断面形状を有しているタッピンねじと、シェル外套の波形輪郭とを備える股関節カップが公知である。それに応じて、ねじ山歯の両方のフランクには、カップ極部に向う方向で同期して増えていく傾斜が生じている。この場合、歯の先端は、角の二等分線上で、それぞれ同じ高さだけシェル状外套から突き出ている。このようなねじ山は、多軸フライス盤を用いて製作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許出願第2548012号明細書
【特許文献2】欧州特許第0687165号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3325448号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述したねじ付きカップにおいて生じるねじ込み状況を、2Dシミュレーションを用いてコンピュータで入念に検討してみると、このような種類のねじ山形態は、最善に機能することができないことが示される。主な欠点は、ねじ山歯と、骨の支持面との間に、少なくとも片側の隙間が生じることにある。なぜなら、ねじ込みプロセスの途中で、ねじ山歯の断面形状そのものよりも幅広い溝が生成されるからである。
【0012】
したがって、ねじ山歯の非対称なフランクと、ねじ山の長さ方向に沿って適合化可能なねじ山歯の高さとを備える、少なくとも部分領域で湾曲または屈曲した外套面上に位置するねじ山をもつ、CNC旋盤で切削により製造可能である新たな(たとえば骨用ねじや股関節カップの形態の)ねじ込み体を想定し、上記およびその他の用途のために、このような特別なねじ山をCNC機械で、好ましくはCNC旋盤で製作する方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
少なくとも部分領域で非線形の、特に屈曲または湾曲した外套面と、ねじ山歯とねじ山溝で構成された変化するねじ山断面形状を備える少なくとも該部分領域にあるねじ山とを備え、ねじ込み方向に位置しているねじ山歯のフランクは一定の角度を有しているねじ込み体において、本発明の要部となるのは、ねじ山歯の他方のフランクに前記部分領域で角度変化が生じていることである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、ねじ込み方向に位置しているねじ山歯のフランクは、ねじ込み体の軸に対して略鉛直であり、好ましくは垂直である。さらに、他方のフランクの角度変化は連続的に、特に実質的に流れるように行われるのが好都合である。ねじ山歯は、ねじ山歯の形状に、少なくとも1つのランプ関数と階段関数でそれぞれ構成される幾何学関数が重ね合わされるように構成されているのが好ましい。さらに、1つの有利な実施形態の要諦は、ねじ込み体の外套面に対して相対的なねじ山歯断面形状の高さが、それぞれ切削エッジの後側に位置する領域で減少していることにある。それぞれの歯の切削エッジは、先行する歯の切削エッジに比べて、赤道側で突出するように構成されているのが好ましい。側方のオフセットによって優れた切削挙動が得られる。このねじ込み体はインプラントとして、特に好ましくは人口股関節カップとして、具体化されているのが好ましい。
【0015】
さらに、少なくとも部分的に湾曲または屈曲しているねじ込み体の外套面に位置しているねじ山のねじ山溝は、少なくとも2つの帯状の部分面に分割されており、そのうち第1の部分面はカップ極部のほうを向いているねじ山歯のフランクによって形成されるとともに、第2の部分面はカップ赤道部のほうを向いているねじ山歯のフランクによって形成されており、第1のフランクはねじ山の長さ方向に沿ってその角度に関して変化しないのに対して、第2のフランクは少なくとも部分領域でねじ山の長さ方向に沿って角度変化を有しており、それにより、設計上の設定事項に合わせたねじ山歯の高さおよび/または傾斜角が適合化されているのが好都合である。さらに本発明により、好ましくは工具駆動装置を備えているCNC機械で、たとえばCNC旋盤で、このような特別なねじ山を製造する方法が提供される。
【0016】
少なくとも部分領域で変化するねじ山断面形状を備えるねじ山をCNC機械で、好ましくはCNC旋盤で、切削により製造する本発明の方法は、ねじ山が少なくとも該部分領域で少なくとも2つの製造工程ないし製造サイクルにより加工され、これらの製造工程ないし製造サイクルの1つではねじ山歯フランクを切削する旋盤工具のエッジが一定の角度を有しており、他の製造工程ないし製造サイクルでは他方のねじ山歯フランクを切削する旋盤工具のエッジがその角度に関してねじ山溝の通過中に変化することを特徴としている。
【0017】
本発明による方法の別の実施形態では、1つの加工工程ないし加工サイクルは、実質的に、ねじ山歯の一方のフランクならびにこれに隣接するねじ山底面の一部を対象としてお
り、他の加工工程ないし加工サイクルは、実質的に、ねじ山歯の他方のフランクならびにこの他方のフランクに隣接するねじ山底面の一部を対象としている。ねじ山が3つの異なる加工工程ないし加工サイクルによって加工され、そのうち第3の加工工程ないし加工ステップにより実質的にねじ山溝の中央が加工され、その際には、他の両方の加工工程ないし加工サイクルのために利用される角度設定の間に位置している旋盤工具の角度設定が利用されると格別に好都合である。第3の加工工程が最初に実行されるのが格別に好ましい。プロセス工学の面からは、他方のねじ山歯フランクを切削する旋盤工具の角度変化が、ねじ山溝の通過中に連続的に、特に実質的に流れるように行われるのも好都合である。1つの別の側面の要諦は、旋盤工具の角度変化がCNC機械の、特にCNC旋盤のB軸の回転によって具体化されることにある。本方法の1つの特別な実施形態の要諦は、最初に、ねじ山溝底面の形態で具体化されるべき、製造されるべきねじ込み体の外套面の通過中に旋盤工具の切れ刃半径中心点によって描かれるべき軌道が算出され、この軌道が、複式刃物台のB軸の回転中心点から旋盤工具の切れ刃半径中心点までの距離に関してはXおよびYの各オフセットを用いて、および旋盤工具の切れ刃とB軸のゼロ位置との間の角度差に関してはBのオフセットを用いて換算されてCNCプログラムで適用され、工作物を表現するときには数値に関して旋盤工具の切れ刃半径に相当している等距離線が利用されることにある。本方法のさらに別の側面の要諦は、工作物と工具の間の相対運動に、歯のシーケンスと同期化されたランプ関数および階段関数が重ね合わされることにある。この切削加工は、フライス削り技術で行われるのが好都合である。
【0018】
このとき、ねじ山溝を、ねじ込み体の外套によって形成される輪郭(これは原則としてねじ山溝の底面である)に沿って、ねじ山断面形状の適合化のために意図される領域で少なくも2つの製造工程で加工し、一方の加工工程は、実質的に、カップ極部のほうを向いたフランクを生成するとともに、他方の加工工程は、実質的に、カップ赤道部のほうを向いているねじ山歯のフランクを生成し、このときカップ赤道部のほうを向いたフランクについて、ねじ山の長さ方向の少なくとも部分領域で部分フランク角が変更されることが提案される。
【0019】
たとえばCNC旋盤で本方法を実際に遂行するには、選択的に、同一の工具を使用するか、または2つないしそれ以上の工具を使用することができる。ただ1つの工具を使用するときには、切削をするエッジはその角度に関して、当該角度がねじ山歯の部分フランク角に相当するようにそのつど位置決めされていなくてはならない。通常、このような種類の加工には、工具として、規格化された幾何学形状に基づいて特定の有効切削角(たとえば35°、55°、または75°)をなしている、ソリッド超硬合金からなるスローアウェイチップが用いられる。その場合、スローアウェイチップは、ニュートラルなホルダの上では、その角の二等分線がねじ山の軸に対して垂直に延びることになる。したがって、この角の二等分線に対して相対的に切削をするエッジの角度は、有効切削角の半分になる。切削エッジ角を固定的に適合化する公知の手法の要諦は、ホルダを相応にフライス削りするか、スペーサを下に挟むか、またはホルダを斜めに挟み込むことにある。たとえば複式刃物台の制御可能なB軸を備えるCNC旋盤を利用すれば、本発明により、上記よりもはるかに洗練された手法を適用可能である。その場合、B軸の相応のプログラミングによって、ホルダをスローアウェイチップとともに所望の角度位置へ移すことができる。このような、静的として分類されるべき角度位置を、たとえばねじ切りの際の個々の通過が終わるたびに、別の角度値へ変えることができる。ただし、本発明に基づく動的な角度変位を具体化するためには、工具がねじ山溝を通過している間にB角度を変えることが必要である。たとえば、ねじ山歯の1つの部分フランク角は、ねじ山の先頭部では20°の値を有しており、終端部では12°の値を有していることが可能である。右側および/または左側のねじ山歯フランクに関して選択的な、かつ連続的から飛躍的に至るまでプログラミング可能なこの角度の旋回によって、ねじ山歯の高さだけでなく傾斜角もほぼ任意の仕方で、すなわち流れるような仕方も含めて、設計上の設定事項に合わせて適合化するという可能性が開かれる。
【0020】
このとき本発明は、断面形状に関してねじ山溝のもっとも狭い個所における断面形状に呼応している工具を使用するか、または、ねじ山溝よりも全体的に細い工具を使用するかの選択を可能にする。後者の場合、ねじ切りのために、少なくとも1つの変化する部分フランク角を加工工程に利用するほかにも、これに加えて、ピッチ軸の相応に適合化されたオフセット値を考慮に入れて、工具幅とねじ山溝幅の間の差を補正することができる。このような方策が格別に好ましい理由は、それによって、たとえば加工工具の先端の丸みを減らすことが可能になるからである。それにより、ねじ切りサイクルの1回の工程が終わるたびに工具の小さな相対的オフセットをそのつど適用すれば、ねじ山底面の解像度をいっそう細かくして、湾曲または屈曲した外套面に合わせて、より良く適合化させることができる。
【0021】
さらに本発明により、ねじ山加工を2つ以上の製造工程で、ないし2つまたはそれ以上の工具で行うという選択の可能性が提供される。たとえば3つの製造工程を適用するときは、これらの製造工程のうち1つでは基本的にねじ山溝の一方の側を加工し、別の加工工程では基本的にねじ山溝の他方の側を加工し、第3の製造工程では基本的にねじ山底面を加工することが推奨される。この場合、ねじ山溝のそれぞれの側、およびこれに伴うねじ山歯のそれぞれのフランクを切削する工具については、そのつどの部分フランク角を生じさせる位置決めが選択されるのに対して、実質的にねじ山底面の中央を切削する工具については、その角度に関して、これら両方の位置決めの間にある位置決めを採用することが提案される。こうして加工工程ないし工具の数が増えるにつれて、それぞれの工具先端の相応に少ない丸みで、ねじ山歯脚部の比較的小さい丸みを実現するとともに、このような種類のねじ込み体の外套面の要求される輪郭に合わせた、いっそう良好なねじ山底面の適合化を実現することが可能である。
【0022】
本発明による方法は、コンピュータ制御される機械、特にCNC旋盤で適用することが意図されている。このような種類の機械でねじ山旋削をする場合、ねじ山溝を旋盤工具により複数の工程で加工するのが普通である。その場合、製造工程はねじ切りサイクルと呼ばれる。1回の工程ではわずかな材料しか剥離されないが、その代わりに大きい送りで作業を進めることができる。それに対して、ねじ山フライス削りにおける製造工程はただ1回の過程で構成することができるが、その代わりに、小さい送りが必要となるために、旋削に比べて明らかに高い時間コストが生じるのが通例である。本発明によるねじ山の製造には、いずれの場合でも、工具の縦軸(Z)と半径方向の軸(X)とで形成される平面に工具の旋回軸を備えているCNC機械ないしCNC旋盤だけが適している。相応のCNCプログラムには、そのつどの工具によって、ないしそのつどのサイクルについて、工作物に対して相対的に進むべき軌道が保存されていなくてはならない。製造工程ないし工具の同期化のために、個々の製造工程ないし切削サイクルについて、異なる開始点を正確に算出して入力することが必要である。プログラムセットには、通常のパラメータのほか、上に述べた旋回軸(B)の角度に基づく値が、追加的に保存されていなくてはならない。
【0023】
本発明に基づくねじ込み体のCNC旋盤での製造にあたっては、特定の作業手順が予定される。そのために、まず適当な切断工具によって大まかにねじ山溝を穿つ。次いで、第1の短いねじ山サイクルを進行させることができ、このねじ山サイクルでは仕上工具が奥行き方向に向かってX軸で、ねじ山底面に(好ましくはその中心に)達するまで送られる。引き続いて、この仕上工具がZ軸で、ねじ山溝の相応のフランクが完全に製作されるまで、ねじ切りサイクルの1回の切削ごとに切屑厚みの値だけ送られる。このとき、旋盤工具の切削をするフランクは、その角度位置に関して、ねじ山歯フランクの角度位置に呼応していなくてはならない。ねじ山溝の他の側についても、そこにあるねじ山歯フランクについて同様のことが当てはまる。この角度は、旋盤工具の切削をするエッジに関して、B軸のプログラミングを通じてきわめて容易に設定可能である。それにより、加工されるべき両方の側について、同一の旋盤工具を使用することができる。このことは、2つの工具の場合に必要となるような、高いコストのかかる工具先端の同期化を省略できるという利点も有している。
【0024】
CNC旋盤の場合、従来技術では、ねじ切りをするときに切れ刃半径の自動的な補正は不可能なので、ねじ山溝底面として形成される工作物外套の輪郭を歪みなく製造できるようにするために、コツをつかんで作業を行わなくてはならない。そのために、そのつどの工具の切れ刃半径中心点が工具ファイルに書き込まれ、切れ刃半径の距離を含む等距離線の分だけ拡大された工作物の輪郭がプログラミングされる。
【0025】
動的に旋回するB軸(これは一部ではATC(automatical tool correction自動工具補正)と呼ばれる)の場合に、工具位置を自動的に修正するための関数が機械のプログラムに存在していないときも、同様の手順を踏まなくてはならない。このような修正をしないと、B角度が変動するために、旋盤工具先端の位置が絶えず変化して正しい位置から離れてしまうことになる。すると工作物は奇妙な形状を有することになり、目標幾何学形状には呼応しないことになる。したがって、プログラミングのときには、機械の複式刃物台のB軸の回転中心点を利用し、通常のように旋盤工具の切れ刃半径中心点を利用するのではないことが提案される。そのために、旋盤工具のそれぞれの切れ刃半径中心点からこの回転中心点までの距離を求め、この二等辺三角形の斜辺をもとにして、一方および他方の等辺の長さを算出する。こうして形成される修正三角形を、さらに、旋盤工具の切削をするフランクと、複式刃物台のX軸とにはさまれた修正角の分だけ旋回させなくてはならない。このようにして、他方の等辺と斜辺との間の交点を用いて、B軸の回転中心の正しい位置を求める。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術に基づくねじ山を備えた人工股関節カップである。
【図2】極側の歯面の一定の長さを有している同様の股関節カップである。
【図3】ねじ山歯の間に位置する角の二等分線が一定の高さを有している、好ましい実施形態である。
【図4】旋回する部分フランク角を備えたねじ山列の2つのねじ山歯の模式的な展開図である。
【図5】ランプ関数/階段関数が重ね合わされた同様の状況を示す図である。
【図6】従来技術に基づくねじ山を備えた人工股関節カップである。
【図7】カップ極部に向かって傾斜したねじ山歯断面形状と、切屑溝の負の斜角とを有している本発明の股関節カップである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、より良い理解のために、本発明に基づくねじ込み体および本発明に基づく方法について、模式的な例を参照しながら5つの図面を用いて詳しく説明する。ここでは、湾曲した外套面を備えるねじ込み体の例として、簡略化して図示された股関節カップを援用している。
【0028】
図1は、ねじ山歯の傾斜した断面形状をもつ回転体の外套面が湾曲している場合、ねじ山歯の高さの比較的大きな変動が生じるという、冒頭近くで説明した現象を明示するための図である。図面を見やすくするために、従来式に製作されたねじ山を備える平均的なサイズの半球状の人工股関節カップの若干簡略化した実施例を、片方の側だけ描かれた断面図として、ほぼ2.5:1の縮尺で援用している。ここでは、ねじ山ピッチについては5.2mmの値が選択されている。細部がよくわかるようにするために、ねじ山歯は明らかに誇張した高さで図示されている。さらにねじ山歯は、単純化のために、歯の頭部に向かって尖った状態で終わっており、歯の脚部の面取りがないように図示されているが、実際の施工形態では歯の頭部は切り落とされており、歯の脚部は移行半径を備えている。
【0029】
この股関節カップ1は、半球状をした外側形態をもつシェルから形成されており、このシェルは、その内側輪郭に関して、球欠2および球欠3の領域に分かれている。この内側領域は、インサートを収容するために設けられたものである。5つのねじ山歯4,5,6,7,8は、非対称の断面形状を有している。カップの極部のほうを向いているフランクは0°の角度を有しており、カップの赤道部のほうを向いているフランクは24°の角度を有している。これに応じて形成されるフランク角αは24°であり、それにより、カップ極部へ向う方向で、角の二等分線の傾斜角は12°になっている。このねじ山歯の傾斜方向は、人工股関節カップで求められる用途にとって格別に好都合である。所定の主荷重方向に基づいて、人間の骨盤へのより良い力導入状況が得られるからである。
【0030】
図示した例では、カップシェルの外套は高い精度で球形に準じている。しかしこの球形は、ねじ山溝の領域でしか現れていない。このような種類の構成は特殊な加工方法を必要とし、端面および/または側辺の角度が異なる、および軌道ないし各旋盤工具位置の相対的な変位が異なる、2つまたはそれ以上の旋盤工具による手順が必要であることが普通である。このような種類の方法は、たとえば欧州特許出願公開第0480551B1号明細書や欧州特許出願公開第0687165B1号明細書から公知である。しかしながらこの場合、一定のピッチと一定の部分フランク角でねじ山が切られるので、ねじ山歯の傾斜角の結果として、ねじ山歯の高さの流れるような変化が生じる。図1によく見ることができるように、半径方向で測ったときの極部に近いねじ山歯の高さh2は、赤道部に近いねじ山歯の高さh1のほぼ2倍に近い大きさとなっている。ねじ山歯の高さの流れるような増加または減少は、特に、人工股関節カップの場合にはある程度まで十分に意図的なものである場合があり、これについては種々の議論もなされているものの、このように激しいねじ山歯の高さの増大は明らかに欠点である。なぜなら、そのために骨の材質へ不必要に深く食い込むことになるからである。しかも、極部に近いねじ山先頭部におけるこのように大きいねじ山歯は、特にタッピング式のねじ付きカップの場合、ねじ込み力が非常に大きくなることにつながる。ねじ山開始部におけるねじ山歯の高さが急激に増大する領域で、骨盤へねじ込むときの切削の仕事が、少数の切削エッジにしか分散されないからである。そのため、完全に骨と接触するまで股関節カップをねじ込めるかどうかが問題になる場合がある。
【0031】
図2は、図1と同じ図面の描き方で、本発明によるねじ山を備えた人工股関節カップの実際とは若干異なる簡略化した実施例を示している。図示した股関節カップ9は、球欠10と円錐状の領域11からなる内側輪郭に関して、ならびにねじ山歯12,13,14,15,16の本数に関して、図1に示す内側輪郭に呼応している。股関節カップの赤道部に近いねじ山歯12は、その形状および高さh1の値に関して、図1に示す対応するねじ山歯4と同一である。それぞれの歯の間に位置しているねじ山底面は、先ほどと同じく、シェル外套の球形を表している。2つの製造工程による本発明に基づいたねじ山の加工がなされており、赤道部のほうを向いているねじ山歯のフランクは流れるように変化する角度で切られているので、極部に近いねじ山歯16について、赤道部に近い歯12の歯の高さh1に呼応する、半径方向で測ったときの歯の高さh3が具体化されている。ただしこの場合、形成されるねじ山歯のフランク角αは24°から約46°に増えている。このようなフランク角の明らかに過剰な増大は、ここでは単に、本発明に基づく形態と加工の原理をより良く図示できるようにする目的で選択されたものにすぎない。
【0032】
図3には、実際の施工形態に明らかに近づいている人工股関節カップの変形例が示されている。この図面は、前出の各図面からすでに周知となっている仕方で、半球状の形態のねじ付きカップ17の断面図を示しており、その内部空間は、球欠18と、これに続く円錐状の領域19とで形成されている。このねじ付きカップはねじ山を備えており、そのうち、この断面図では5つのねじ山歯20,21,22,23,24が見えている。それぞれの歯の断面形状に、角の二等分線が一点鎖線として描き込まれている。形成された24°のフランク角をもつねじ山歯20の歯の断面形状については、極部に向う方向で、この角の二等分線の傾斜角は12°である。形成される約30°のフランク角αを有しているねじ山歯24では、極部に向う方向で、角の二等分線の傾斜角は相応に約15°に増えている。いずれの場合でも、カップ極部のほうを向いているねじ山歯のフランクは、それぞれカップ軸に対して垂直に延びている。図中ではH1のねじ山歯20とh2のねじ山歯24の両方について図示されている、角の二等分線に沿って測ったときの歯の高さは、それぞれ等しい大きさである。
【0033】
図2と図3では、本発明に基づく方法によって、歯の断面形状の特定の区間が一定の長さにされた実施例を示している。しかしながら、提案される方法はこれに限定されるものではない。逆にこの方法は、旋盤工具の切削をするエッジが跳躍および/または摺動するように旋回するような特定の設定によって、および、それに応じてCNC機械のB軸をプログラミングすることによって、数多くの変形の可能性を開くものであり、それにより、ねじ山歯の高さの正確に設定可能な増大または減少だけでなく、ねじ山歯における好都合な逃げ角および/または切削角も具体化することができる。このような改良形は、ねじ山の部分領域で部分的に適用することも可能である。
【0034】
このような種類のねじ山の改良の例として、図4と図5を援用することにする。この両方の図面は非常に模式的であり、縮尺が拡大されて、幾何学的な効果に関して著しく誇張して図示されており、それにより、特別な加工の作用を見てとれるようになっている。ここでは、仮想的な股関節カップのそれぞれのねじ山のうち連続する2つの歯だけが示されており、ねじ山底面は簡略化のために省略されている。
【0035】
それに応じて図4は、ねじ山歯25を含むねじ山列の部分片を示しており、このねじ山歯には、ねじ込み方向で続くねじ山歯26が後続している。両方のねじ山歯は、幾何学的には、見ることのできない股関節カップの誇張して湾曲したシェル外套の上に載っている。両方のねじ山歯の極部のほうを向いているフランクは、シェル外套に対して垂直に延びているのに対して、赤道側のフランク27,28はそれぞれの傾きを有している。歯の頭部が切り落とされているために、両方のねじ山歯はそれぞれ端面29,30を有している。個々のねじ山歯は、ねじ山列からそれぞれ切屑溝を切り欠くことによって生じており、その中央部が図面では一点鎖線31,32,33として示唆されている。切屑溝は斜めに延びているので、それぞれの歯の前面には、正のすくい角をもつ切削エッジ34,35が形成されている。一定のねじ山ピッチにもかかわらず、ねじ山歯の角の二等分線の均等に保たれた高さを得るために、カップ赤道部のほうを向いている部分フランク角は、本発明に基づき、その長さ方向に沿って(たとえばいわゆるB軸の)旋回運動と重ね合わされなくてはならない。それにより、連続して変化するねじ山歯断面形状が生成される。図面では、切断線36,37および38,39に沿って、両方のねじ山歯のそれぞれ2つの断面図である40,41および42,43が示されている。シェル外套の極端な湾曲が選択されているために、曲がっている歯の基部48,49,50,51は、その傾きに関して、股関節カップの極部に向かって次第に大きく傾斜している。図面では、赤道部のほうを向いているねじ山歯フランク44,45,46,47の個々の傾斜角は、誇張された図面にもかかわらず、26.25°,26.91°,27.61°および28.37°で具体化されており、それにより、それぞれ各々の差異は肉眼ではほとんど見分けることができない。当然ながら、本発明に基づく種類の実際に具体化されるねじ山では、角度変化増分が小さいにもかかわらず、加算をすれば明瞭な規模の大きさが実現される。典型的な部分フランク形状は、たとえば約9°の大きさの部分フランク変化を、ねじ山領域全体にわたって示している。
【0036】
上に説明したねじ山形態は、それ自体、単独で満足のいくものではない。なぜなら、ねじ山歯に逃げ角がないために、ねじ込みプロセスの途中でデッドロック現象が起こることが予想され、しかも、それぞれねじ山歯フランクに対して突出していない切削エッジが、効力を発揮できないからである。この問題を取り除くために、さらに別の発明では、ねじ山列の形状に、歯のシーケンスと同期化された関数をランプおよび階段等の形態で重ね合わせて、歯の前面に形成されるそれぞれの切削エッジの後側で、選択的に中立角または逃げ角が形成されると同時に、切削エッジの露出した位置が形成されるようにすることが提案される。この改良例が図5に示されている。
【0037】
図5は図4に大幅に依拠しており、図示している寸法および幾何学的効果は、より良い理解を得る目的のために、ここでも明らかに誇張して図示されている。図4と同様に、斜めのフランク54,55と、端面56,57とを備える2つのねじ山歯52,53が示されている。先ほどの場合と同じく、これらのねじ山歯は、ここでは一点鎖線の中心線58,59,60で示唆されている切屑溝を刻むことによって、互いに分離されている。切断線63,64,65,66が同じく描き込まれており、これに対応する断面図67,68,69,70が示されている。それぞれの歯の基部75,76,77,78は、その角度位置に関して(それがまだ存在している限りにおいて)図4の角度位置と同一である。また、赤道部のほうを向いているフランク71,72,73,74も、その部分フランク角と旋回する形状が維持されている。ただし、この形状には階段関数が重ね合わされており、ねじ山歯断面形状がそれぞれの切削エッジ61,62を備える歯の前面の後側で、股関節カップのシェル外套に対して相対的に、連続する狭隘化と高さ減少を生じるようになっている。赤道部のほうを向いているねじ山歯の個々のフランクの間の側方の飛躍的変化、ならびにそれぞれの歯の頭部の高さの飛躍的変化は、切削による製造に関して、およびそれに伴って完成製品においても、それぞれの切屑溝の領域で行われており、図面では、先行するねじ山歯に対してそれぞれの切削エッジが露出していることから明らかである。それによって初めて切削エッジの効率的な切削が実現され、ねじ込み中におけるねじ山歯のデッドロックが確実に防止される。
【0038】
ねじ込み方向に位置しているねじ山歯のフランクが一定の角度を有しており、ねじ山歯の他方のフランクが前記部分領域で角度変化を有していることを特徴とする本発明のねじ込み体は、特に、左巻きのねじ山との組み合わせにおいて好都合である。一定のねじ山ピッチで極部に向かって歯が傾斜していると、赤道側のフランクが推進をするエッジとなる。その場合、赤道側のフランクに切削エッジが構成されていることも好都合である。それによって左巻きのねじ山が得られる。
【0039】
上に説明した、ねじ山列に重ね合わされたランプおよび階段の跳躍関数は、通常の旋削方法によっては製造することができない。したがって、切削加工を少なくとも2つのステップに分割することが提案される。この場合、最初にCNC旋削によって、たとえば図4に見られるように、相応のねじ山歯フランクの流れるような輪郭を製作する。これに続いて、それぞれランプと階段から構成される、重ね合わされた関数を生成するために、比較的少ない材料しか剥離しなくてよいフライス削り工程が行われる。原則としてこのような加工は、欧州特許出願公開第1051131A1号明細書や欧州特許出願公開第1318803号明細書に記載されているような、出願人の命名によるHumpel旋削法によっても実施することができる。
【0040】
本発明の実際の具体化に関しては、歯の断面形状(歯の高さ、形成されるフランク角、傾斜角、歯の頭部の形と角度)やその推移(ねじ山ピッチ、相対的な高さ減少、部分フランク角の変化)といった面で、きわめて広い幅がある。それにより、特殊なねじ山の、特に長さ方向で湾曲または屈曲する特殊なねじ山の、最善の適合化を得るために非常にフレキシブルに適用可能な手段が本発明によって提供される。
【0041】
図6は、従来技術に基づく人工股関節カップ79の模式的な図面を、若干拡大した縮尺で示している。図示した例は、湾曲したシェル外套の球形の輪郭を有している。ただ1つの切屑溝86によって中断された、4つの周回する歯リブ81,82,83および84を見ることができる。他の切屑溝は簡略化の理由から省略してある。この股関節カップの中心軸は一点鎖線80で図示されており、切屑溝の中心は一点鎖線85で図示されている。この両者の間には負の斜角αが形成されている。この斜角は、その角度の大きさに関して、ねじ山のピッチ角に呼応しており、その結果、切屑溝によってねじ山歯に形成される切削エッジは、ねじ込みのときの送り方向に関して、ねじ山リブの長さ方向に対して横向きに延びており、すなわちニュートラルに延びている。
【0042】
図7には、本発明に基づく同じ大きさと形の人工股関節カップ87が示されている。先ほどと同じく、簡略化の理由からただ1つの切屑溝94しか描き込まれていない。ねじれの図示も、図面製作上のコストを省くために省略してある。4つの周回部89,90,91および92で構成されるねじ山は、カップ極部に向かって傾いた非対称の歯断面形状を有している。この傾斜方向は、かなり前のところで説明したように、インプラントと骨の支持部との間で伝達されるべき力の均等化をもたらす。切屑溝は、その角度に関して、ねじ山ピッチの角度と反対方向を向いている。切屑溝は、一点鎖線で示されたその中心線93により、股関節カップの軸88に対して45°の角度αをなしている。ねじ山リブに形成される切削エッジは、ねじ山リブの後側で、カップ赤道部のほうを向いたねじ山歯フランクに位置しており、切屑溝が大きく傾いて延びていることにより、それぞれ大幅に正のすくい角を有している。従来技術に比べて好都合な切削エッジの配置によって、この切削エッジは正のすくい角との関連で完全な有効性を発揮し、そのようにして、ねじ込みトルクの明らかな低下をもたらすと同時に、締め過ぎに対する余裕の増大をもたらす。
【0043】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0044】
10 球欠、11 円錐状の領域、12,13,14,15,16 ねじ山歯、17 ねじ付きカップ、18 球欠、19 円錐状の領域、20,21,22,23,24 ねじ山歯、25 ねじ山歯、26 ねじ山歯、27,28 (赤道側の)フランク、29,30 端面、31,32,33 一点鎖線、34,35 切削エッジ、36,37,38,39 切断線、40,41,42,43 断面図、44,45,46,47 ねじ山歯フランク、48,49,50,51 (曲がっている歯の)基部、52,53 ねじ山歯、54,55 フランク、56,57 端面、58,59,60 中心線、61,62 切削エッジ、63,64,65,66 切断線、67,68,69,70 断面図、71,72,73,74 フランク、75,76,77,78 (それぞれの歯の)基部、79 (従来技術に基づく)人工股関節カップ、80 一点鎖線、81,82,83,84 歯リブ、85 一点鎖線、86 切屑溝、87 人工股関節カップ、88 股関節カップの軸、89,90,91,92 周回部、93 中心線、94 切屑溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分領域で変化するねじ山断面形状を備えるねじ山をCNC機械で、好ましくはCNC旋盤で、切削により製造する方法であって、前記ねじ山は少なくとも該部分領域で少なくとも2つの製造工程ないし製造サイクルにより加工される、そのような方法において、
これらの製造工程ないし製造サイクルの1つではねじ山歯フランクを切削する旋盤工具のエッジが一定の角度を有しており、他の製造工程ないし製造サイクルでは他方のねじ山歯フランクを切削する旋盤工具のエッジがその角度に関してねじ山溝の通過中に変化することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1つの加工工程ないし加工サイクルは、実質的に、前記ねじ山歯の一方のフランクならびにこれに隣接するねじ山底面の一部を対象としており、前記他の加工工程ないし加工サイクルは、実質的に、前記ねじ山歯の他方のフランクならびにこの他方のフランクに隣接するねじ山底面の一部を対象としていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ねじ山が3つの異なる加工工程ないし加工サイクルによって加工され、そのうち第3の加工工程ないし加工ステップにより実質的にねじ山溝の中央が加工され、その際には、他の両方の加工工程ないし加工サイクルのために利用される角度設定の間に位置している旋盤工具の角度設定が利用されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第3の加工工程が最初に実行されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記他方のねじ山歯フランクを切削する旋盤工具の角度変化はねじ山溝の通過中に連続的に行われることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
旋盤工具の角度変化はCNC機械の、好ましくはCNC旋盤の、B軸の回転によって具体化されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
最初に、ねじ山溝底面の形態で具体化されるべき、製造されるべきねじ込み体の外套面の通過中に旋盤工具の切れ刃半径中心点によって描かれるべき軌道が算出され、この軌道が、複式刃物台のB軸の回転中心点から旋盤工具の切れ刃半径中心点までの距離に関してはXおよびYの各オフセットを用いて、および旋盤工具の切れ刃とB軸のゼロ位置との間の角度差に関してはBのオフセットを用いて換算されてCNCプログラムで適用され、工作物を表現するときには数値に関して旋盤工具の切れ刃半径に相当している等距離線が利用されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工作物と工具の間の相対運動に、歯のシーケンスと同期化されたランプ関数および階段関数が重ね合わされることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
切削はフライス削り技術で行われることを特徴とする請求項8に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−214137(P2010−214137A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141847(P2010−141847)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【分割の表示】特願2007−539453(P2007−539453)の分割
【原出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(500304800)
【Fターム(参考)】