説明

変圧器

【課題】スイッチング電源などに用いられる変圧器において、1次巻線から2次巻線へのエネルギーの伝達効率を高める。また、変圧器を小型化する。
【解決手段】2個の貫通孔3を備える磁心1と貫通孔3内を通過して磁心1に巻回される1次巻線4および2次巻線5とを備え、1次巻線4および2次巻線5は基板6上に形成され、基板6は貫通孔3の口軸方向に平行な中央片6aと貫通孔3の開口面に平行な脚片6bとを備え、脚片6bに形成された1次巻線4および2次巻線5は、貫通孔3の開口面を含む磁心1の面と対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源などに用いられる小型の変圧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチング電源などに用いられる小型の変圧器が提供されている。この種の変圧器は、磁心1に巻回される1次巻線および2次巻線を基板に平面状に形成することにより薄型化がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示される変圧器について、その概略図である図3を参照して説明を行う。なお、特許文献1においては、1次巻線および2次巻線は、積層される複数個の基板上にそれぞれ形成されているが、図示例では簡略化のため1次巻線4および2次巻線5を同一の基板6’の両面に形成したものを示す。
【0004】
図示例では、磁心1は2個の貫通孔3を備え、1次巻線4および2次巻線5は、矩形状の基板6’上に外形が矩形状である渦巻状に形成され、基板6’を磁心1に取り付けることにより2個の貫通孔3内を通過して磁心1に複数回巻回された状態になっている。したがって、1次巻線4および2次巻線5は、貫通孔3の口軸方向(貫通方向)と平行な部位と、磁心1の外部に露出し、貫通孔の開口面と平行な直線部4a,4bとを備えている。
【特許文献1】特開平7−115024号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載される変圧器について、直線部4aにおいて生じる磁束について説明する。直線部4aは磁心1の外部に露出し、磁心1と離れているので、直線部4で生じる磁束においては磁心1内部を通過しない漏れ磁束が発生している。
【0006】
また、上述したように1次巻線4は渦巻状に形成されているので直線部4aは複数存在し、複数個の直線部4aは貫通孔3の口軸方向に並んでいる。したがって、各直線部4においては磁心1に近い直線部4aと磁心1に遠い直線部4aが存在する。磁心1から遠い直線部4aにおいては、磁心1に近い直線部4aに比べて、磁心1から遠い分だけ更に多くの漏れ磁束が発生している。
【0007】
次に、直線部5aについて説明する。上述したように直線部5aも磁心1の外部にあり磁心1と離れている。したがって、1次巻線4と直線部5aとの磁気的結合は弱くなっている。
【0008】
上述より、特許文献1に記載された変圧器においては、磁心1内部を通過しない漏れ磁束が発生し、また、1次巻線4と2次巻線5の一部において磁気的結合が弱くなっているので、1次巻線4から2次巻線5へのエネルギーの伝達効率が低くなるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、1次巻線から2次巻線へのエネルギーの伝達効率を高めた変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、複数個の貫通孔を備える磁心と貫通孔内を通過して磁心に巻回される1次巻線および2次巻線とを備え、1次巻線および2次巻線は基板上に形成され、基板は貫通孔の口軸に平行な中央片と貫通孔の開口面に平行な脚片とを備え、脚片に形成された1次巻線および2次巻線は、貫通孔の開口面を含む磁心の面と対向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の変圧器においては、1次巻線および2次巻線が形成される基板は貫通孔の口軸方向に平行な中央片と貫通孔の開口面に平行な脚片とを備え、また、1次巻線および2次巻線の一部は磁心外部において貫通孔の開口面を含む磁心の面と対向しているので、基板を平面状に形成した従来構成に比べて、脚片に形成された1次巻線および2次巻線の一部は磁心に近くなる。1次巻線の一部が磁心に近くなることにより、1次巻線で発生する磁束においては磁心1内部を通過しない漏れ磁束が減っている。また、2次巻線の一部が磁心に近くなることにより1次巻線と2次巻線との磁気的結合が強くなっている。したがって、基板を平面状に形成した従来構成に比べ、1次巻線から2次巻線へのエネルギーの伝達効率を高めることができる。
【0012】
また、基板の一部は貫通孔の開口面と対向しているので、基板を平面状に形成した従来構成に比べ、貫通孔の口軸方向における基板の寸法が小さくなっている。したがって、小型化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態で例示する変圧器は、図1に示すように断面矩形状の2個の貫通孔3を備える角柱状の磁心1と、2個の貫通孔3内を通過し磁心1に複数回巻回される1次巻線4および2次巻線5とで構成される。1次巻線4および2次巻線5は、磁心1に取り付けられる基板6に形成される。以下では、貫通孔3の口軸方向(貫通方向)を前後方向とし、2個の貫通孔3が並ぶ方向を左右方向とし、図の上下を上下として説明を行う。
【0014】
磁心1は、断面E字状の2個の半割磁心2を互いの3つの突起部の先端部同士をそれぞれ突き合わせる形で重ね合わせて形成される、いわゆるEE型の磁心1である。2個の半割磁心2のそれぞれの中央の突起部は、付き合わされて中央磁脚1aを形成している。
【0015】
基板6は、前後方向に対向する一対の脚片6bと脚片6bを接続する中央片6aとを備える断面コ字状に形成される。また、基板6は、少なくとも一部が中央片6aに形成される開口6cを備える。中央片6aは、前後方向の寸法が磁心1の前後方向の寸法以上となるように形成され、また、開口6cは、前後方向の寸法が磁心1の前後方向の寸法以上となるように形成される。基板6は、開口6cに中央磁脚1aが挿通される形で磁心1に取り付けられ、基板6を磁心1に取り付けた状態においては、脚片6bは、磁心1の外部に露出し、貫通孔3の開口面と平行になっている。
【0016】
なお、1次巻線4および2次巻線5を形成する基板6をコ字状に形成する方法は、基板6にフレキシブルプリント基板などを用いて1次巻線4および2次巻線5を形成した後に基板6をコ字状に折り曲げる方法でもよいし、断面コ字状に形成した基板6に1次巻線4および2次巻線5を立体配線で形成した立体配線基板を用いる方法でもよい。
【0017】
1次巻線4および2次巻線5は、互いに絶縁された状態で積層され、積層された状態で中央片6aの上面および一対の脚片6bの対向する面に形成される。基板6上において、基板6を展開した場合における1次巻線4および2次巻線5の形状は、基板6の外周縁と平行な直線で形成される渦巻状となる。1次巻線4および2次巻線5の渦巻状の部位において、脚片6bの上端縁と平行な直線部4a,5aは、断面コ字状の基板6を磁心1に取り付けた場合において直線部4a,5aが磁心1の上下方向の幅寸法内となる位置で脚片6bに形成される。1次巻線4および2次巻線5は磁心1に複数回巻回されるので、直線部4a,5aは複数であり、複数個の直線部4a,5aは脚片6bにおいて上下方向に並んでいる。
【0018】
また、一方の脚片6bの先端部は上方に延設されて磁心1の上面より上方に突出し、延設された部位には1次巻線4および2次巻線5のそれぞれの末端部が形成されている。
【0019】
ここで、直線部4aにおいて生じる磁束について、図2を参照して以下に説明する。なお、図においては、前側の脚片6bを2点鎖線で想像線として表している。また、図中の1点鎖線は直線部4aにおいて生じる磁束を表している。直線部4aは、基板6を平面状に形成した従来構成に比べて、脚片6bの下端縁から直線部4aまでの距離の分だけ磁心1に近くなる。したがって、本実施形態では、基板6を平面状に形成した従来構成に比べ直線部4aにおいて生じる磁束のうち磁心1内部を通過しない漏れ磁束が減る。
【0020】
従来構成では、1次巻線4および2次巻線5が複数回巻回されている場合に各周回での直線部4a,5aは磁心1からの距離が異なっているが、本実施形態では、1次巻線4と2次巻線5とのすべての直線部4a,5aは磁心1に等距離になる。したがって、従来構成において磁心1に最も近い直線部4a,5aと本実施形態における直線部4a,5aとの磁心1からの距離が等しいとすると、本実施形態では従来構成における残りの直線部4a,5aを磁心1に近づけた形になる。その結果、本実施形態では、巻回回数が多いほど従来構成に比べて漏れ磁束は減り、かつ、1次巻線4と2次巻線5との磁気的結合が強くなる。すなわち、1次巻線4から2次巻線5へのエネルギーの伝達効率を高めることができる。
【0021】
なお、直線部4aをより磁心1に近づけて漏れ磁束を更に減らすために、中央片6aの前後方向の寸法を磁心1の前後方向の寸法と略同寸法に形成することが望ましい。
【0022】
また、本実施形態では、脚片6bは貫通孔3の開口面と対向しているので、基板6を平面状に形成した場合に比べ、貫通孔3の口軸方向における寸法が小さくなっている。したがって、本実施形態では小型化ができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、基板6は一対の脚片6bを備えているが、これに限るものではなく、脚片6bは一方のみであってもよい。
【0024】
また、1次巻線4および2次巻線5は磁心1に複数回巻回しているが、1回のみ巻回する構成であっても良い。
【0025】
また、1次巻線4および2次巻線5は積層されて基板6の片面に形成されているが、これに限るものではなく、1次巻線4を基板6の片面に、2次巻線5を反対側の面に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態を示す断面図である。
【図3】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 磁心
3 貫通孔
4 1次巻線
5 2次巻線
6 基板
6a 中央片
6b 脚片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の貫通孔を備える磁心と貫通孔内を通過して磁心に巻回される1次巻線および2次巻線とを備え、1次巻線および2次巻線は基板上に形成され、基板は貫通孔の口軸に平行な中央片と貫通孔の開口面に平行な脚片とを備え、脚片に形成された1次巻線および2次巻線は、貫通孔の開口面を含む磁心の面と対向していることを特徴とする変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−177019(P2009−177019A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15342(P2008−15342)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】