説明

変圧器

【課題】タップ切換装置に植物油を用いた場合にも、植物油の性状の変化を抑制し、タップ切換装置の性能維持を図ることができる変圧器を提供する。
【解決手段】変圧器1は、タップ切換装置5が収容される切換装置タンク5aと、当該タンク5a内に注入された菜種油5cと、当該タンク5aから流入した菜種油5cが貯留される油膨張室10と、油膨張室10内の菜種油5c以外の空間部分を塞ぐように設けられ、内部が油膨張室10外と連通するゴム袋12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップ切換装置を有する変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器の環境性能を向上させる観点から、絶縁液体として植物油を注入した変圧器が提案されてきている。例えば、下記特許文献1に示す変圧器では、変圧器本体の内部に酸化防止剤を添加した植物油を注入している。
【0003】
かかる変圧器では、空気中の酸素が溶け込んだ水分が植物油に吸収されたとしても、酸化防止剤により植物油の酸化が抑制されるため、酸化による植物油の劣化を抑え、ひいては植物油の交換寿命を延長し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2000−502493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機械的な摺動が繰り返されるタップ切換装置に植物油を注入した場合には、植物油に吸収された水分により生成されたスラッジ(沈殿物)が、タップ切換装置内部の電極や摺動機構の凹凸部分に付着する。そのために、付着したスラッジによる摺動抵抗の増大や摩擦粉の増加等のように、植物油自体の性状の変化に伴ってタップ切換装置自体の性能が損なわれ兼ねない。
【0006】
一方で、変圧器の環境性能を向上させる観点からは、変圧器本体のみならず、タップ切換装置についても、鉱油に代わり、植物油が用いられることが望まれている。
【0007】
以上の事情に鑑みて、本発明は、タップ切換装置に植物油を用いた場合にも、植物油の性状の変化を抑制し、タップ切換装置の性能維持を図ることができる変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の変圧器は、タップ切換装置を有する変圧器であって、前記タップ切換装置が収容される容器と、前記容器内に注入された絶縁液体としての植物油と、前記植物油と空気との接触を遮断するように該植物油の表面を覆う遮蔽体とを備えることを特徴とする。
【0009】
第1発明の変圧器によれば、タップ切換装置が収容される容器内に注入された植物油は、その表面が遮蔽体により覆われるため、空気中の水分によりスラッジが生成されることが抑制される。これにより、植物油に吸収された水分によりスラッジが生成するという植物油自体の性状の変化、およびそれに伴うタップ切換装置自体の機能が損なわれることがない。
【0010】
このように、第1発明の変圧器によれば、タップ切換装置に植物油を用いた場合にも、植物油の性状の変化を抑制し、タップ切換装置の性能維持を図ることができる。
【0011】
第2発明の変圧器は、第1発明の変圧器において、前記容器に接続され、該容器から流入した前記植物油が貯留される油膨張室を備え、前記遮蔽体は、前記油膨張室内に貯留された前記植物油以外の空間部分を塞ぐように設けられ、内部が該油膨張室外と連通する袋体であることを特徴とする。
【0012】
第2発明の変圧器によれば、タップ切換装置が収容される容器に注入された植物油は、該容器内を充満して油膨張室に流入するため、該容器内に空気と接触する表面を持つことがない。そして、植物油は、油膨張室内で、植物油以外の空間部分を塞ぐように設けられた袋体により、その表面が覆われる。袋体は、その内部が膨張室外と連通しているため、植物油の膨張および収縮に伴う前記空間の変化に対応して収縮および膨張することで、植物油の表面を覆い続けることができる。これにより、空気中の水分が植物油に吸収されることが抑制されるため、タップ切換装置に植物油を用いた場合にも、植物油の性状の変化を抑制し、タップ切換装置の性能維持を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】変圧器の全体的な構成を示す図。
【図2】油膨張室の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、本実施形態の変圧器1について説明する。
【0015】
変圧器1は、図1に模式的に示すように、タンク2内に変圧器本体3を収容し、内部に絶縁液体としての菜種油4を注入含浸した状態で密封された構造となっている。変圧器本体3は、鉄心3aに一次、二次のコイル3bを巻装して構成されている。さらに、変圧器1は、タンク2内に収容されたタップ切換装置5を備え、タップ切換装置5が、一次、二次コイル3bにそれぞれ接続されている。
【0016】
タップ切換装置5は、切換装置タンク5a(本発明の容器に相当する)内に、任意のタップを選択するタップ選択器と、負荷時に負荷電流を遮断して隣接するタップに電流を流す切換開閉器と備える切換装置本体5bが収納されている。切換タンク5a内には、タンク2内に注入された菜種油4と同様の菜種油5cが注入されており、切換装置本体5bは、菜種油5cに浸された状態となっている。
【0017】
切換装置タンク5aは、切換装置本体5bが収納された状態で、タンク2の上側を密閉する上部隔壁2aに設けられた開口部2bを介して、タンク2内に挿入されている。切換装置タンク5aの上部には、切換開閉器を駆動するためのモータ6aの駆動軸に連結された駆動機構6bが設けられており、駆動装置6bによりモータ6aの回転が減速された上で、切換開閉器が摺動して接点(電極)が切り換わる。なお、本実施形態において、接点の切換時のアークにより発生するカーボンの油汚損を防止すべく、接点部分を真空状態にした真空バルブを採用している。
【0018】
次に、図2を参照して、切換装置タンク5a内に接続された油膨張室10について説明する。
【0019】
油膨張室10は、切換装置タンク5aと油膨張室10とを連通させる連通管11と、油膨張室10内に設けられたゴム袋12(本発明の遮蔽体としての袋体に相当する)と、ゴム袋12の内部と連通した接続管13と、接続管13の端部に設けられた吸湿呼吸器14と、油膨張室10内の菜種油5cの油量を測るオイルレベルゲージ15を備える。
【0020】
連通管11は、切換装置タンク5aと油膨張室10との間で菜種油5cを流出入させるための管路であって、絶縁油の注入時には、切換装置タンク5aに充填された菜種油5cが該連通管11を介して油膨張室10内に所定量流入する。一方、通常の変圧器1の使用時には、変圧器1およびタップ切換装置5の温度上昇に伴う菜種油5cの体積変化により、菜種油5cが切換装置タンク5cと油膨張室10との間で流出入する。
【0021】
油膨張室10は、円筒形状の筐体であって、下部で連通管11が接続されると共に、上部で接続管13に接続されている。
【0022】
そして、油膨張室10内の上側には、接続管13に接続されたゴム袋12が油膨張室10内の菜種油5c以外の空間部分を塞ぐように設けられている。ゴム袋12内には接続管13および吸湿呼吸器14を介して大気圧が掛かるため、ゴム袋12は、この内部圧力と、菜種油5cによる外部圧力との圧力差に応じて収縮若しくは膨張する。
【0023】
ここで、油膨張室10の上方には、図示しない空気抜き弁が設けられており、絶縁油の注入時に空気抜き弁を開弁させることにより、切換装置タンク5cから油膨張室10内に流入した菜種油5cが油膨張室10内のゴム袋12以外の空間すべてに充満し、やがて、空気抜き弁から菜種油5cが吐出する。この状態で、空気抜き弁を閉弁させることで、油膨張室10内の菜種油5cは、空気と接触する表面部分が無い状態に維持されている。
【0024】
吸湿呼吸器14は、その内部に乾燥剤(シリカゲル)が封入され、外気の除湿を行う装置であって、吸湿呼吸器104の下部には乾燥剤を常時外気に晒さないように図示しないオイルポット等が設けられている。
【0025】
オイルレベルゲージ15は、ゴム袋下端部に接触する接点部15aが先端に取り付けられたアーム部15bにより、油膨張室10内の菜種油5cの高さ変化をアーム部15bの角度変化として検出する。
【0026】
上記構成の変圧器1によれば、切換装置タンク5a内の菜種油5cが収縮すると、外気が吸湿呼吸器14に吸収されて乾燥空気となり、該乾燥空気が接続管13を介してゴム袋12に取り込まれて、ゴム袋12が膨張する。一方、切換装置タンク5a内の菜種油5cが膨張すると、ゴム袋12内の乾燥空気が接続管13を介して吸湿呼吸器14に押し出されて、外気に放出される。
【0027】
そして、かかる菜種油5cの膨張および収縮において、油膨張室10内の菜種油5cが外気等に触れることなないため、空気中の水分が植物油に吸収されることが抑制される。さらに、ゴム袋12内の空気も吸湿呼吸器14を通過した乾燥空気であるため、ゴム袋12を介して外気中の水分が菜種油5cに吸収されることも抑制される。これにより、菜種油5cに吸収された水分によりスラッジが生成されて菜種油5c自体の性状が変化し、ひいてはタップ切換装置自体の機能が損なわれることもない。
【0028】
このように、本実施形態の変圧器1によれば、タップ切換装置5に植物油としての菜種油5cを用いた場合にも、菜種油5cの性状の変化を抑制し、タップ切換装置5の性能維持を図ることができる。
【0029】
なお、本実施形態において、絶縁油としての植物油を、菜種油として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ベニバナ油、ホホバ油、レスケレラ油およびベロニア油等であってもよい。
【0030】
また、本実施形態において、遮蔽体としてゴム袋12を油膨張室10に備える構成について説明したが、これに限定されるものではなく、遮蔽体は切換装置タンク5a内に注入された菜種油5cの表面を覆うものであればよい。例えば、油膨張室10を設けることなく、切換装置タンク5a内の菜種油5cの表面全体を覆う空気袋等を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…変圧器、2…タンク、3…変圧器本体、4,5c…菜種油(植物油)、5…タップ切換装置、5a…切換装置タンク(容器)、5b…切換装置本体、10…油膨張室、12…ゴム袋(袋体、遮蔽体)、14…吸湿呼吸器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ切換装置を有する変圧器であって、
前記タップ切換装置が収容される容器と、
前記容器内に注入された絶縁液体としての植物油と、
前記植物油と空気との接触を遮断するように該植物油の表面を覆う遮蔽体と
を備えることを特徴とする変圧器。
【請求項2】
請求項1記載の変圧器において、
前記容器に接続され、該容器から流入した前記植物油が貯留される油膨張室を備え、
前記遮蔽体は、前記油膨張室内に貯留された前記植物油以外の空間部分を塞ぐように設けられ、内部が該油膨張室外と連通する袋体であることを特徴とする変圧器。

【図1】
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【図2】
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