説明

変形容器の製造方法

【課題】 別工程への移し変え作業がなく、成形が容易かつ製造時間の短い変形容器の製造方法を提供する。
【解決手段】 有底筒状の容器11を成形した後、該有底筒状の容器の胴部の一端から他端に向って、その胴部の外径を拡大する拡径加工および縮小する縮径加工の一連の胴部成形を一台のネッキングマシンで行う変形容器の製造方法であって、容器11の胴部の成形において、胴部の開口部12にパイロット13を挿入して胴部の途中から上端まで径を拡大する拡径加工を施し、さらに下方に拡径部14を残した状態で、その上方に金型15およびパイロット16を用いて胴部を縮小する絞り加工を施し、ついでネッキング加工及びビード加工を形成する変形容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変形容器の製造方法に関し、さらに詳しくはエアゾール容器、飲料容器等の金属容器の胴部の成形に関する変形容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器、飲料容器等は、製造コストの低減、製造の容易化を考慮して、円筒形で胴部がストレートのものしか生産されていなかった。しかし、最近、化粧品のエアゾール容器等においては、他の容器とデザインの統一化を図る必要があると共に、斬新な容器デザインの追求の要請から、容器の胴部の外観に、種々の変化を与えることにより、意匠性を向上させる試みがなされている。そして、従来は、インパクト成形の時点で胴部を変形する成形方法や、容器内にウレタンゴム等を挿入するバルジ成形法等があったが、いずれも製造コストが高く、かつ複雑な設備を必要とし、製造作業も頗る面倒であった。
そこで、この欠点を解消する変形容器の製造方法として、従来、図9に示す製造方法がある。図9(X)〜図9(W)は、アルミニウム製の有底筒状の容器から、胴部を変形させたエアゾール容器が成形される過程を、その工程順に示したものである。図9(X)は、アルミニウムスラグをインパクト成形して、有底筒状の容器50が成形された断面図である。この容器50にトリミング加工、内面塗装及び外面印刷が施された後、図9(Y)に示すようにこの有底筒状の容器50の開口部51に、金型52及びパイロット53を用いて絞り加工が施される。次に、開口部51にビード部54が形成される(図9(Z))。さらに、最終工程において、金型56、57を用いて、容器50の胴部上方と下方に絞り加工が施されて(図9(W))、変形エアゾール容器が製造されていた。
【特許文献1】特開昭61−193729号公報
【特許文献2】特開平7−317883号公報
【特許文献3】特開昭62−286842号公報
【特許文献4】特開昭61−206533号公報
【特許文献5】特開昭61−193728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図9に示す従来の製造方法においては、図9(X)〜図9(Z)に示す工程までは、一台のネッキングマシンのターンテーブルに取付けられた金型及びパイロットで成形可能であるが、図9(W)に示す、容器50の胴部の一部を拡径して、拡径部55を形成するための加工においては、金型56、57を容器50の胴部上方及び下方の両方向から絞り加工を施す必要がある。したがって、開口部51から底部の一方向のみに絞り加工を行うことができるネッキングマシンでは、この成形は不可能である。したがって、従来、この図9(W)に示す工程のみを、別工程で行っていたが、この容器50をネッキングマシンの各工程の終了後に、別工程に移し変える作業は頗る面倒であり、成形に要する全時間が長くなる共に、別工程における最終の絞り加工に手間を要するため、全体として製造コストが高くなる欠点があった。
【0004】
この発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、別工程への移し変え作業の必要がなく、胴部を変形する成形はすべて一台のネッキングマシンで成形が可能であり、又、成形時間が短く製造が容易かつ製造コストの安い変形容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明に対応する解決手段は、インパクト成形により有底筒状の容器を成形した後、有底筒状の容器の胴部の一端から他端に向って、その胴部の外径を縮小する絞り加工、または拡大する拡径加工の一連の胴部成形を、一台のネッキングマシンで行う変形容器の製造方法であって、容器の胴部の一端から、他端に向ってその胴部に、絞り加工及び拡径加工を施し、次に容器の開口部にネッキング加工を施して開口部を絞り、その後開口端部にビード部を形成することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明に対応する解決手段は、変形容器の胴部の成形において、胴部を縮小する絞り加工を施した後、その上方に胴部を拡大する拡径加工を施し、さらに、その上方に胴部を縮小する再絞り加工を施すことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明に対応する解決手段は、、請求項1記載の変形容器の胴部の成形において、胴部を拡大する拡径加工を施した後、その上方に、胴部を縮小する絞り加工を施すことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明に対応する解決手段は、アルミニウム等の板材を円板状に打ち抜く成形を施した後、打ち抜いた円板をカップ形状の容器に絞り加工する工程と、カップ形状の容器に絞りしごき加工を施す工程と、カップ形状の胴部の一端から、他端に向って、その胴部の外径を縮小する絞り加工、、または拡大する拡径加工の一連の胴部成形を、一台のネッキングマシンで行う変形容器の製造方法であって、カップ形状の容器の胴部の一端から、他端に向ってその胴部に、絞り加工及び拡径加工を施し、次に容器の開口部にネッキング加工を施して開口部を絞り、その後開口端部に、フランジ部を形成することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明に対応する解決手段は、請求項4記載の変形容器の胴部の成形において、胴部を縮小する絞り加工を施した後、その上方に胴部を拡大する拡径加工を施し、さらに、その上方に胴部を縮小する再絞り加工を施すことを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明に対応する解決手段は、請求項4記載の変形容器の胴部の成形において、胴部を拡大する拡径加工を施した後、その上方に、胴部を縮小する絞り加工を施すことを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明に対応する解決手段は、請求項1から6までの、いずれか1項記載の変形容器の製造方法において、絞り加工及び拡径加工に付加して、ネッキングマシンの最終加工工程に転動体を取付け、転動体を容器の表面に押圧し、かつ転動体を容器の縦、斜め又は円周方向に転動させることにより、胴部に転動加工を施すことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、変形エアゾール容器の製造工程、図5〜図7は、変形飲料用容器の製造工程を、各々その工程順に示したものである。図1は、この発明の第1の実施形態を示す図面であり、図1(A)は、アルミニウムスラグをインパクト成形して造られる有底筒状の容器1を示した断面図である。この有底筒状の容器1には、開口部2を切揃えるトリミング加工、洗浄、内面、塗装及び外面印刷が施される。次に、図1(B)はこの有底筒状の容器1の開口部2に、金型3及びパイロット4を用いて最初に絞り加工を施している状態を示す断面図である。図1(C)は、この開口部2に絞り加工を施した後、下方に絞り部5を残した状態で、その上方にパイロット6で拡径加工を施した状態を示す断面図である。この拡径加工によって容器1の胴部を、拡径する比率は、7%〜15%が適する。
さらに、図1(D)は、下方に絞り部5及び拡径部7を残した状態で、その上方に金型8及びパイロット9を用いて、再絞り加工を施した状態を示す断面図である。試作例では、容器1の外径が50φ、絞り部5の外径が45φ、拡径部7の外径が50φであり、拡径率が約11%の変形エアゾール容器を成形することができた。そして、最終工程において、図1(E)に示すように、開口部2にネッキング加工及びビード加工が施されて、ビード部10が形成される。なお、図1(C)に示すパイロット6による拡径加工の際に、拡径部7を外側から規制する金型でガイドされてもよい。
【0013】
図2は、この発明の第2の実施形態を示す図面であり、第1の実施形態と異なるのは、有底筒状の容器11の開口部12に、パイロット13を挿入して拡径加工を施し(図2(G))、次に拡径部14を残した状態で、その上方に金型15及びパイロット16を用いて絞り加工を施すものである(図2(H))。そして、最終工程において開口部12にネッキング加工及びビード加工が施されてビード部17が形成される。その他の成形加工方法は第1の実施形態と同じである。
【0014】
図3は、この発明の第3の実施形態を示す図面であり、この第3の実施形態の特徴は、第1の実施形態と同じ工程に図3(O)に示す工程を、追加したものである。図3(O)に示す工程は、複数のボールが内装された転動体18を、図8(a)(b)に示すように、ネッキングマシン47のターンテーブル48に取付けて転動体18を容器1の開口部2から軸方向に移動せしめることにより、容器1の胴部に、複数の縦リブ19を形成するものである。その他の図3(J)〜図3(N)の工程は、第1の実施形態の図1(A)〜図1(E)の工程と同じである。
【0015】
図4は、この発明の第4の実施形態を示す図面であり、この第4の実施形態の特徴は、第2の実施形態と同じ工程に、図4(T)に示す工程を追加したものである。すなわち、転動体18で容器11の胴部に複数の縦リブ19を形成する工程を追加したものである。その他の図4(P)〜図4(S)の工程は、第2の実施形態における図2(F)〜図2(I)の工程と同じである。なお、転動体18を変えることにより傾斜したリブや横リブを付すことも可能である。
【0016】
図5は、この発明の第5の実施形態を示す図面であり、胴部を変形させた飲料容器が成形される過程をその工程順に示したものである。図5(ア)はアルミニウム等の板材を円板状に打ち抜いた円板20を示した斜視図である。又図5(イ)は、打ち抜いた円板20をカップ形状の容器21に絞り加工して成形されたカップ21を示した断面図である。図5(ウ)は、このカップ形状の容器21を、アイアニングパンチ22と対応するダイリング23を用いて、絞りしごき加工を施すことにより、有底筒状の容器24が成形される工程を示した断面図である。次に図5(エ)は、この容器24の開口部25の内側に、パイロット26を挿入して拡径加工を施している状態を示す断面図である。この拡径する比率は変形エアゾール容器と同様に、7%〜15%が適する。さらに、図5(オ)は下方に拡径部27を残した状態で、その上方に金型28及びパイロット29を用いて、絞りしごき加工を施している状態を示す断面図である。そして、最終工程において開口部25にネッキング加工及びフランジ部30を形成するフランジ出し加工が施され、変形飲料容器が製造される。
【0017】
図6は、この発明の第6の実施形態を示す図面であり、この第6の実施形態の特徴は、第5の実施形態と同じ工程に図6(ス)に示す工程を追加したものである。すなわち、転動体31で、容器24の胴部に複数の縦リブ19を形成する工程を追加したものである。その他図6(キ)〜図6(シ)の工程は第5の実施形態における図5(ア)〜図5(カ)の工程と同じである。なお、縦リブ32の他に傾斜リブ、横リブ等が形成されてもよい。
【0018】
図7は、この発明の第7の実施形態を示す図面であり、有底筒状の容器37を成形するまでの工程は、第5の実施形態と同じである。この第7の実施形態の特徴は、金型39とパンチ40とで、容器37の開口部38に絞り加工を施し(図7(ニ))、その後下方に絞り部41を残した状態で、その上方にパイロット42で拡径加工を施す(図7(ヌ))。次にこの拡径部43を残した状態で、金型44及びパイロット45で再絞り加工を施すものである。そして、最終工程においてフランジ部46を形成する。ネッキング加工及びフランジ加工は、第5の実施形態の工程と同じである。なお、このようにして成形された容器37の胴部に、前記した転動体で複数の縦リブ、傾斜リブ、横リブ等が形成されてもよい(図示せず)。
【0019】
この発明の特徴は、上記した各実施形態において、胴部を変形する成形はすべて図8(a)(b)に示すネッキングマシン47で成形されるものであり、成形毎に別工程に移し変える必要がない。すなわち、ネッキングマシン47のターンテーブル48には、回転する円周方向に順次各工程で使用される金型、パイロット及び転動体が取付けられている。例えば第1の実施形態の容器1を成形する場合は、図8(b)に示すようにターンテーブル48に取付けられた金型3及びパイロット4が、ターンテーブル48がネッキングマシン47に往復接近運動することにより容器1の開口部2に絞り加工を施し、次にターンテーブル48が間欠的に回転して、パイロット6で拡径加工を行い、その後金型8及びパイロット9で再絞り加工を施し、次にネッキング及びビード加工工程を経て、最終工程において転動体18で成形が施され、変形エアゾール容器が造られる。
【0020】
この発明は、上記した第1〜第7の実施形態の他に、最初に絞り加工のみを複数回行い、次に拡径加工を複数回行う製造方法、又はその逆も可能であり、絞り加工及び拡径加工を任意に組み合わせることにより、容器の胴部に各種バリエーションに富んだ変形を施すことができる。なお、容器の材質としてはアルミニウムの他、銅、真鍮、鉄又はこれらを主体とする合金が使用される。
【0021】
[発明の効果]以上説明してきたように、この発明によれば成形において別工程への移し変え作業をする必要がなく、胴部を変形する成形は、一台のネッキングマシンで行うことができ、成形時間が短く、製造が容易かつ製造コストが安価である効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る第1の実施形態を示す図面。
【図2】この発明に係る第2の実施形態を示す図面。
【図3】この発明に係る第3の実施形態を示す図面。
【図4】この発明に係る第4の実施形態を示す図面。
【図5】この発明に係る第5の実施形態を示す図面。
【図6】この発明に係る第6の実施形態を示す図面。
【図7】この発明に係る第7の実施形態を示す図面。
【図8】この発明に係るネッキングマシン(図(a))及びターンテーブル(図(a)のA−A線断面図(図b))を示す図面。
【図9】従来の変形容器の製造方法を示した図面。
【符号の説明】
【0023】
1、11、24、37 容器
2、12、25、38 開口部
10、17 ビード部
18、31 転動体
20 円板
21 カップ形状の容器
30、46 フランジ部
47 ネッキングマシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパクト成形により有底筒状の容器を成形した後、該有底筒状の容器の胴部の一端から他端に向って、その胴部の外径を縮小する絞り加工、または拡大する拡径加工の一連の胴部成形を、一台のネッキングマシンで行う変形容器の製造方法であって、該容器の胴部の一端から、他端に向ってその胴部に、絞り加工及び拡径加工を施し、次に容器の開口部にネッキング加工を施して開口部を絞り、その後開口端部にビード部を形成することを特徴とする変形容器の製造方法。
【請求項2】
前記容器の胴部の成形において、胴部を縮小する絞り加工を施した後、その上方に胴部を拡大する拡径加工を施し、さらに、その上方に縮小する再絞り加工を施すことを特徴とする請求項1記載の変形容器の製造方法。
【請求項3】
前記容器の胴部の成形において、胴部を拡大する拡径加工を施した後、その上方に、胴部を縮小する絞り加工を施すことを特徴とする請求項1記載の変形容器の製造方法。
【請求項4】
アルミニウム等の板材を円板状に打ち抜く成形を施した後、該打ち抜いた円板をカップ形状の容器に絞り加工する工程と、該カップ形状の容器に絞りしごき加工を施す工程と、該カップ形状の胴部の一端から、他端に向って、その胴部の外径を縮小する絞り加工、または拡大する拡径加工の一連の胴部成形を、一台のネッキングマシンで行う容器の製造方法であって、該カップ形状の容器の胴部の一端から、他端に向ってその胴部に、絞り加工及び拡径加工を施し、次に容器開口部にネッキング加工を施して開口部を絞り、その後開口端部に、フランジ部を形成することを特徴とする変形容器の製造方法。
【請求項5】
前記容器の胴部の成形において、胴部を縮小する絞り加工を施した後、その上方に胴部を拡大する拡径加工を施し、さらに、その上方に胴部を縮小する再絞り加工を施すことを特徴とする請求項4記載の変形容器の製造方法。
【請求項6】
前記容器の胴部の成形において、胴部を拡大する拡径加工を施した後、その上方に、胴部を縮小する絞り加工を施すことを特徴とする請求項4記載の変形容器の製造方法。
【請求項7】
前記絞り加工及び拡径加工に付加して、ネッキングマシンの最終加工工程に転動体を取付け、該転動体を容器の表面に押圧し、かつ該転動体を容器の縦、斜め又は円周方向に転動させることにより、胴部に転動加工を施すことを特徴とする請求項1から6までの、いずれか1項記載の変形容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−200755(P2008−200755A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144899(P2008−144899)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【分割の表示】特願平10−180253の分割
【原出願日】平成10年6月26日(1998.6.26)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)