変復調方法
【課題】複数の電力増幅器を高効率が可能な飽和領域で動作可能とし、電力消費量を低減でき、電源の低容量化、熱制御の簡単化により通信システムの送信系構築を経済的に達成できる変復調方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのQPSK波と1つのBPSK波を重畳合成して形成される信号空間配置であり、電力を正規化したとき、信号点間の最小の幾何距離が最大になるようにQPSK波とBPSKの信号振幅と、QPSK波とBPSK波の相対位相関係を決定する。
【解決手段】少なくとも1つのQPSK波と1つのBPSK波を重畳合成して形成される信号空間配置であり、電力を正規化したとき、信号点間の最小の幾何距離が最大になるようにQPSK波とBPSKの信号振幅と、QPSK波とBPSK波の相対位相関係を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信に使用する変調・復調に関して、特に帯域が制限された伝送路において高速通信を実現する場合に有効な多値変調波を、高効率に電力増幅を実現する変復調(変調・復調)の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の多値変調方式の1つである32値振幅位相変調(32APSK)の32種の信号の振幅と位相を示す信号点配置を示している。多重リング状に32の信号点が配置されている。一方、図2は、従来の32値直交振幅変調(32QAM)波の信号点配置図であり、信号点が格子状に配置されている。これらの32値振幅位相変調及び32値直交振幅変調のいずれも変調の単位である1シンボルで5ビットの伝送が可能であり、(25)=32種の情報データが伝送可能である多値変調信号波である。
【0003】
図3は、ワイヤレス通信のシステム構成例を示している。図3(a)に示す送信側では、伝送すべき情報をencoderにて符号化し、さらに誤り訂正符号によりチャネル符号化される。その後、情報ビットをModulatorで変調し、周波数を変換した後、電力増幅器(HPA)で電力を高めてアンテナから送信する。図3(b)に示す受信側では、低雑音増幅器(LNA)で増幅後、復調器(Demodulator)でベースバンド信号を取り出し、Decoderで符号化された情報の復号を行い、伝送された情報を取り出す。
【0004】
図4は、従来技術の32APSKのシステム構成例を示している。この例では、送信部において、送信データである5ビットの情報をS/Pで並列分割し、誤り訂正符号化を行った後、MAPPER、CONSTELLATION GENERATORで図1に示す3重の同心円上に信号点を配置し、Iチャネル信号とQチャネル信号用の2チャネルの信号を出力する。その後、帯域制限・整形フィルタ(SRRC filter)を通過後に、直交する2つの搬送波(cos(wt),−sin(wt))でIチャネル信号とQチャネル信号の積を取り、周波数を変換した後、電力増幅器(HPA)で増幅し、アンテナから送信する構成である。また、受信部では、低雑音増幅器(LNA)で増幅後、搬送波を掛けて、baseband信号を取り出し、SRRC filterで帯域制限・整形を施し、Demodulatorにて復調する。その後、Decoderで復号し、P/Sで並列・直列変換を行い、伝送情報を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許7,239,668号明細書
【特許文献2】米国特許7,123,663号明細書
【特許文献3】米国特許7,961,813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5と図6は電力増幅器(HPA)の特性例を示している。図5は、入力信号電力(Pin(単位dB))に対する出力信号電力(Pout(単位dB))と電力効率(Efficiency)を示している。図5に示すように、入力電力が大きくなるにつれて出力電力が大きくなり、電力効率も増加する。出力が飽和を呈する領域の直前近傍で効率は最大となる。
【0007】
図6は、入力信号電力(Pin)に対する出力信号電力(Pout、AM/AM変換)(図6(a))と、位相(Phase)の変化(AM/PM変換)(図6(b))を示している。効率を高めるために入力信号電力を高めると、出力信号電力が圧縮される(AM/AM変換)こと、及び、通過位相が変化(AM/PM変換)することが分かる。
【0008】
32APSK信号波や32QAM信号は、振幅の値が一定ではなく、時間的に変動するために、図6に示すHPAのAM/AM変換およびAM/PM変換を受けて、信号点配置が変形する。図7にHPAの高効率動作が期待できる出力バックオフ点OBO=1.5dBにおける受信側での信号点配置を示す。熱雑音はなく、HPAの非線形特性の影響のみを示している。このため、受信側では、正しく元の信号を復調することができずに誤り率が増加する問題点がある。
【0009】
多値変調信号を電力増幅する際、増幅器の非線形特性による伝送性能劣化を抑えるために、図5に示す飽和点から十分出力を下げ(出力バックオフ)、線形性が良好となる動作点で運用することが行われている。しかし、図5に示したように、この場合には電力増幅器の効率が低下する欠点がある。さらに所望の出力を得るためには、より高出力の電力増幅器が必要となり、また消費電力が増加すること、電源が大容量となること、熱対策のハードウエアが必要となる等、システムが高価になる欠点がある。
【0010】
そこで本発明は、複数の電力増幅器を高効率が可能な飽和領域で動作可能とし、電力消費量を低減でき、電源の低容量化、熱制御の簡単化により通信システムの送信系構築を経済的に達成できる変復調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の変復調方法は、従来技術の上記課題を解決するために考案したものであって、少なくとも1つのQPSK波と1つのBPSK波を重畳合成して形成される信号空間配置であり、電力を正規化したとき、信号点間の最小の幾何距離が最大になるようにQPSK波とBPSKの信号振幅と、QPSK波とBPSK波の相対位相関係を決定することを特徴としている。
【0012】
より具体的には、電力増幅器の非線形特性の影響を抑えるために、図1の32APSK又は図2に示す32QAM等の信号空間配置に変えて、少なくとも1つの4相位相変調(QPSK)波又はオフセットQPSK(OQPSK)波と、1つの2相位相変調(BPSK)波又はオフセットBPSK(OBPSK)波で重畳合成して形成する構成として、多値変調波を従来技術の図3、4に示すようにHPAで一括に電力増幅する代わりに、複数の振幅変動の小さいQPSK変調波とBPSK変調波に分割し、各々を個別に高効率電力増幅する構成をなし、重畳合成している。このため、増幅器の非線形特性により信号空間配置の変形を受けにくく、高効率電力増幅が可能となる。
【0013】
空間で電力合成する場合には、受信側が一点ではなく、広い地域をカバーする場合には、利得と位相に重畳誤差を伴う。これらの影響を小さくするために、変調側では、重畳するQPSK波とBPSK波の信号レベルを調整し、復調側では、利得と位相誤差を推測する機能を備え、利得誤差と位相誤差を算出し、変調時の信号空間配置に対して、推測した利得誤差、位相誤差をもとに変形した信号空間配置を求め、この配置に基づいて復調を行うようにした。
【0014】
本発明の変復調方法においては、QPSK波をオフセットQPSK波に、BPSK波をオフセットBPSK波に変更した構成とすることを特徴とする。
【0015】
本発明の変復調方法においては、QPSK変調又はBPSK変調する前に、情報ビットストリームに誤り訂正符号を適用したことを特徴とする。
【0016】
本発明の変復調方法においては、2種以上の誤り訂正符号を使用し、1つの誤り訂正符号器ともう1つの誤り訂正符号器の間に、インターリーバを設置し、符号を撹拌する機能を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の変復調方法においては、隣接する信号点間の符号間距離が最少となるように符号変換を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明の変復調方法においては、変調後の電力増幅器の非線形特性を考慮して前置歪補償を施した信号配置とすることを特徴とする。
【0019】
本発明の変復調方法においては、電力増幅器非線形特性の歪を受けた後に最小の幾何距離が最大になるように、信号配置の半径と相対位相関係を伝送特性が最適となるように調整することを特徴とする。
【0020】
本発明の変復調方法においては、受信側において、既知信号を送信して空間重畳に伴う振幅あるいは位相誤差を推定して、この推定誤差をもとに修正した信号空間配置を用いて復調することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、複数の電力増幅器を高効率が可能な飽和領域で動作可能とし、電力消費量を低減でき、電源の低容量化、熱制御の簡単化により通信システムの送信系構築を経済的に達成できる。また、変形した信号配置、重畳誤差を推測する機能を追加することにより、重畳誤差の影響が小さくなり、誤り率が低下し、送信電力の低減、低消費電力化に一層効果がある。さらに、従来の多重円上に信号点を配置した信号空間配置に比べて、電力増幅器の非線形特性に起因する伝送特性劣化が減少し、電力増幅器を高効率動作が可能となり、低消費電力化を大幅に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多重リング状に配置した従来の32APSKの信号空間配置の例を示す図である。
【図2】格子状に配置した従来の32QAMの信号空間配置の例を示す図である。
【図3】ワイヤレス通信システムの全体構成図である。
【図4】従来技術のシステム構成図である。
【図5】典型的な電力増幅器の入出力特性と電力効率特性を示す図である。
【図6】電力の非線形特性例を示す図である。
【図7】従来技術の32APSK信号波がHPAの非線形特性による信号点配置の変形を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る32APSKの信号空間配置を示す図である。
【図9】本発明の実施形態において2つのQPSK信号と1つのBPSK信号の合成による信号空間配置を実現する形成方法を示す図である。
【図10】電力で正規化したときのQPSK−1の半径r1、QPSK−2の半径r2、とBPSKの半径r3の値と、信号点の幾何最小距離の関係を示すグラフである。
【図11】QPSK−1に対してQPSK−2とBPSKの位相を同時に回転させたときの(Dp^2)/Poutとそのときの振幅比r2/r1とr3/r1の関係を示すグラフである。
【図12】QPSK−1に対してQPSK−2の位相角Th2=14度, BPSKの位相角Th3を独立に回転させたときの(Dp^2)/Poutとそのときの振幅比r2/r1とr3/r1の関係を示すグラフである。
【図13】QPSK−1に対してQPSK−2とBPSKを共に14度反時計まわりに回転させ,Dp^2/Poutが改善される信号空間配置を示す図である。
【図14】3波を個別に送信して空間重畳合成して32APSKを実現するシステム構成例を示す図である。
【図15】QPSK−1、QPSK−2、及び、BPSKに割り当てる信号点配置の実施例を示す図である。
【図16】アンテナ間の距離による受信点における位相誤差の発生を説明する図である。
【図17】空間重畳誤差を小さく抑えることが可能なフェーズドアレイアンテナシステムの構成例とアンテナ前方からの角度に対する3波空間重畳合成の利得誤差と位相誤差を示す図である。
【図18】QPSK信号の振幅変動を低下させるOQPSK信号の原理と信号点の遷移状況を示す図である。
【図19】OBPSK波の原理を示す図である。
【図20】OBPSKの信号点の軌跡を示すグラフである。
【図21】OQPSK波とOBPSK波を送信する送信系の構成の実施例を示す図である。
【図22】重畳誤差の少ないフェーズドアレイアンテナを用いた空間重畳合成技術による32APSK変調の構成例を示す図である。
【図23】連接誤り訂正符号とインターリーバを使用したシステムの構成例を示す図である。
【図24】重畳誤差による信号点配置の変形を示す図である。
【図25】重畳誤差を考慮して振幅を修正した信号点配置を示す図である。
【図26】重畳誤差を推定するために使用する受信点L点とM点の例を示す図である。
【図27】本発明の実施形態を適用した32APSKと従来方法の線形動作時と非線形動作時の伝送特性を比較して示す図である。
【図28】電力増幅後の出力スペクトラムを比較して示す図である。
【図29】本発明の実施形態に係る8PSKの実施例を示す図である。
【図30】本発明の実施形態に係る128APSKの実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る変復調方法について図面を参照しつつ詳しく説明する。
<構成>
図8は、本発明の実施形態に係る32値の信号空間配置を示している。図9は、本実施形態において2つのQPSK信号と1つのBPSK信号の合成による信号空間配置を実現する形成方法を示している。
【0024】
図9に示すように、図8に示した信号空間配置は、2つのQPSK変調器(QPSK−1、QPSK−2)の出力と、1つのBPSK変調器の出力(BPSK1又はBPSK2)と、を重畳合成することで実現できる。3つの信号波の複素数表示を次式に示す。
【0025】
【数1】
【0026】
この式において、ri、φi(i=1、2、3)は各QPSK信号とBPSK信号の振幅と位相を示す。各々のQPSKとBPSKの出力信号S1、S2、S3はほぼ一定の振幅を有しており、AM変動が小さくなるために、この信号を別々に電力増幅器に入力すると図6に示す電力増幅器の非線形特性であるAM/AM変換、AM/PM変換の影響を受け難くなる。
【0027】
<信号配置の最適化>
図8に示すような信号点配置による伝送誤りは、伝送上の干渉波、熱雑音等により、伝送した信号点が隣接の信号点に変位するために、受信側で正しい信号点が識別できずに信号誤りが発生する。信号誤りを小さくするためには、同じ送信電力において、信号点配置における幾何学上の最小距離Dpを大きくすることが重要である。図8に示す信号点配置における送信電力Poutは次式で与えられる。
【0028】
【数2】
【0029】
図10は、電力で正規化したときのQPSK−1の半径r1、QPSK−2の半径r2、及びBPSKの半径r3の値と信号点の幾何最小距離との関係を示す図である。図10(a)は、r2/r1を変化させたときの(Dp2)/Poutを、図10(b)は、r3/r1を変化させたときの(Dp2)/Poutを示している。
【0030】
r2/r1、r3/r1を調整することにより、(Dp2)/Poutを最大にすることが可能である。
QPSK−1、QPSK−2、BPSKの相対的な位相関係を変化させ、(Dp2)/Poutを最大とする最適な振幅比r2/r1とr3/r1、ならびにそのときの最大(Dp2)/Poutを図11、図12に示す。図11は、QPSK−1に対してQPSK−2の位相角(Th2)とBPSKの位相角(Th3)を同時に同量回転させたときの(Dp2)/Poutとそのときの振幅比r2/r1とr3/r1を示している。図11よりQPSK−1に対してQPSK−2とBPSKの位相を反時計回りに14度回転したときに、(Dp2)/Poutが最大となる。
【0031】
図12は、QPSK−2をQPSK−1に対してTh2=14度反時計回りに回転させ、BPSKの位相角Th3を独立に回転させたときの(Dp2)/Poutを示している。QPSK−2とBPSKをQPSK−1に対して共に14度反時計回りに回転したときの配置が、(Dp2)/Poutが最大となる。
このように、振幅比と相対位相関係を調整することにより、(Dp2)/Poutを高めることができる。このときの信号空間配置図を図13に示す。
【0032】
表1は従来の技術である32APSKと本発明の実施形態に係る変調方法について、最適に信号配置を調整したときの(Dp2)/Poutを比較したものである。また、表1は、32値変調方式の送信電力を正規化したときの幾何最小距離を比較して示す図である。表1から、本実施形態の方が、(Dp2)/Poutが高く、伝送特性が良好であることが分かる。
【0033】
【表1】
【0034】
<3波の信号波の重畳合成方法>
各QPSK変調出力を合成する際に、マイクロ波回路による重畳では回路損失を伴うが、別々のアンテナを用いて空間で重畳合成することにより回路損失を伴わないで、重畳可能となる。
【0035】
図14は、3波を個別に送信して空間重畳合成して32APSKを実現する本実施形態のシステムの構成例である。図14(a)に示す送信側は、QPSK−1、QPSK−2とBPSKの3個の変調器と3個の個別の電力増幅器とアンテナを有し、個別にHPAで電力増幅した後に、別々のアンテナから送信し、3ビームを空間で重畳合成して、実現できる。伝送すべき入力情報ビット列をS/Pで直並列変換し、Encoderにおいて符号化し、さらに必要に応じて誤り訂正符号によりチャネル符号化される。その後、情報ビット列をMapperおよびModulatorにおいて、図9に示すように重畳して信号点空間配置を形成するように変換する。
【0036】
このとき、MapperおよびModulatorにおいて、隣接する信号点間の符号間距離(“0”と“1”の異なる数)が最小となるように符号変換する。
この際、図9に示すように、BPSK波は、オフセット位相として、±(π/4)、±(3π/4)を有する複数のBPSK波を発生させる。5ビットうちの1ビットは、このBPSK変調用ビットであり、他の4ビットの状態に応じて、先のオフセット位相から最適な位相を選択して出力する。
【0037】
図15は、QPSK−1、QPSK−2とBPSKに割り当てる信号点配置の実施例を示すであり、MapperおよびModulatorにおいて行う具体的な符号配置を示す。QPSK−2の信号点配置(図15(b))をQPSK−1のビット(図15(a))に応じて変化させ、さらにBPSKの信号点配置(図15(a))についても、QPSK−1のビットに応じて変化させている。
【0038】
HPAのAM/PM変換による位相回転は、変調器ごとに設けた可変位相器V−Phase)およびAM/AM変換による利得変化を可変利得器で調整することにより、理想状態の信号空間配置を実現できる。
【0039】
その後、搬送波と積算を行い、周波数変換と同時に、搬送波を変調する。その後、電力増幅器(HPA)で電力を高めてアンテナから送信する。図14(b)に示す受信側は従来技術と同様な構成であり、重畳合成された波を一括受信して復調し、伝送情報を取り出す。
【0040】
理想的な送信側の信号Cは、各QPSKの信号波S1、S2とBPSKの信号波S3を用いると、次式のように表すことができる。
C=S1+S2+S3
現実には、合成する際に誤差が伴うために、送信信号Tは以下の式で表される。
【0041】
【数3】
【0042】
ここで、α2、β2、α3、β3は、S1とS2、S3を合成する際の相対利得誤差、相対位相誤差を示す。
これらの誤差のうち、利得誤差および位相誤差を調整するために、図14にある可変利得器(V−ATT)、可変位相器(V−Phase)を使用することが可能である。可変利得器と可変位相器は、また図6に示したHPAのAM/AM変換、AM/PM変換による利得変化、位相変化を調整する目的でも使用可能である。
【0043】
<空間重畳誤差>
空間重畳では、図16に示すように、上記の3個のアンテナが距離dを置いて設置される場合には、それらの距離に応じて、受信側では経路長の差に基づく重畳誤差が発生する、特に位相に誤差が発生する。ここで、図16は、空間重畳誤差を小さく抑えることが可能なフェーズドアレイアンテナシステムの構成例とアンテナ前方からの角度(theta)に対する3波空間重畳合成の利得誤差と位相誤差を示す図である。
送信点と受信点の伝搬距離の差による位相誤差、放射パターンによる利得と位相誤差が発生すると、次式で示すように、受信信号が変化する。
【0044】
【数4】
【0045】
ここで、α2、β2、α3、β3が空間重畳に伴う利得誤差、位相誤差を示し、nは雑音を示す。このため、アンテナの形式として、広い受信エリアにおいて、位相誤算が少ないものが望まれる。
【0046】
このようなアンテナを実現するモデルとして、図17(a)に示すフェーズドアレイアンテナが考案されている(特許文献3)。3ビームを送信するアレイアンテナが同心円状に配置され、等価的に円の中心がアンテナの基準点となることから、3個のアンテナと受信点の距離がほぼ等しくなるために、重畳誤差が小さくなる特徴がある。図17(b)は、アンテナ前方からの角度(Theta)を変化させたときの利得誤差を示し、図17(c)はそのときの位相誤差を示している。Thetaが±15度の範囲で、利得誤差、位相誤差15度以内を実現している。
【0047】
<オフセット変調波の適用>
図18はOBPSK波の原理を示す図であって、(a)、(b)、(c)は4相位相変調波(QPSK)の信号振幅(半径)の軌跡を示している。情報に応じて信号点が変化するために、振幅が原点を通過する場合があり、大きく変動する。
【0048】
これに対して、Iチャネルの信号とQチャネルの信号を半シンボル遅延(オフセット)させると、図18(d)、(e)、(f)に示すように、オフセットQPSK(OQPSK)波では、信号軌跡は対角線状に移動することがなくなり、振幅変動が抑えられる。
【0049】
同様に、2相位相変調波(BPSK)の信号波に対しても、図19(a)に示すようにオフセット位相角を有するBPSKに対して、図19(b)のようにIチャネルの信号とQチャネルの信号を半シンボル遅延(オフセット)させると、図20に示すように信号波の軌跡は中止を通過しないために振幅変動が抑えられる。ここで、図20は、OBPSKの信号点の軌跡を示す図、図19は、OQPSK波とOBPSK波を送信する送信系の実施例の構成を示す図である。
【0050】
図21は、32APSK変調の構成例を示す図であって、OQPSK波とOBPSK波を用いて送信系を構成する実施例を示している。各変調器において、I−chに半シンボルの遅延回路(Delay)を設置している。
【0051】
図22は、重畳誤差の少ないフェーズドアレイアンテナを用いた空間重畳合成技術による32APSK変調の構成例を示す図であって、図17に示すアンテナを適用した本実施形態の実施例である。QPSK−1、QPSK−2とOBPSKの3個の変調器を有し、それぞれその出力を複数に分配し、複数のHPAで増幅した後に、複数のアレイアンテナ素子に給電される。各信号経路には、振幅と位相を調整して、ビームの方向と指向性を制御してアレイアンテナを実現している。
【0052】
図23は、重畳誤差による信号点配置の変形を示す図であって、連接誤り訂正符号とインタリーバ(Interleaver)を使用したシステムの構成の実現例を示している。2種の誤り訂正符号(Encoder−1、−2)を用いた連接符号化である、2種の誤り訂正符号器の間に、符号を撹拌するインターリーバを配置し、誤り訂正能力を向上している。
【0053】
表2は各種変調波の振幅変動の度合いを比較したものであり、各変調方式のBaseband信号のPAPR値を比較して示す表である。
【0054】
【表2】
【0055】
表2は、各変調信号を帯域制限フィルタ(Squared Root Raised Cosine roll−off filter:SRRC)を用いて帯域制限・整形した信号の振幅x(t)の変動を次式に示す各信号波の最大電力値と平均電力値との比であるPAPR値を用いて評価したものである。ただし、roll−off率=0.35としたときの値を示している。
【0056】
【数5】
【0057】
表2から、従来の32APSKが5.1dBであるのに対して、QPSK信号は3.8dB、BPSK信号は3.8dB、OQPSK波は3.5dB、OBPSK信号は3.1dBであることが分かる。したがって、従来の32APSKのPAPRに比べて、QPSK、OQPSK、BPSK、OBPSK信号はPAPR値が小さい。このことは、本実施形態の変調方法が、従来技術に比べて、HPAをより効率の良好な飽和点に領域で動作させることを可能としていることを示している。
【0058】
<重畳誤差を考慮した信号配置>
図24は、重畳誤差を考慮して振幅を修正した信号点配置を示す図である。空間での重畳合成時に位相誤差が発生すると図24に示すようにQPSK−1に対してQPSK−2、BPSKが位相回転するために、図24の最小間隔であったB点とC点の間隔が増加し、B点とD点、F点の距離が接近する。QPSK−1とQPSK−2、BPSKの間に位相誤算が発生しても信号点間の距離を保つために図25に示すようにQPSK−1、QPSK−2、とBPSKの振幅r1、r2、r3を調整することにより信号点間の最小の幾何距離を調整することにより、B点とD点、F点の距離が保たれることを示している。
【0059】
<重畳誤差推定機能を有した変形信号空間配置による復調>
受信側での復調前に、図26に示すL点とM点の2つの既知のシンボルを一定期間送信し、受信側でそれらの信号配置点(次式)を観測する。図26は、重畳誤差を推定するために使用する受信点L点とM点の例を示す図である。
【0060】
【数6】
【0061】
次式に示すように、L点とM点の2点を観測することにより、QPSK−1に対する相対変化分として、重畳時に発生した利得と位相誤差α’、β’、α’’β’’を推定する。
QPSK−1、QPSK−2およびBPSK波は、位相誤差Δφを受けて、次式のように表すことができる。
【0062】
【数7】
【0063】
ここでL点とM点は、以下に示すBPSK波の位相が互いに180度異なる。
【0064】
【数8】
【0065】
【数9】
【0066】
したがって、図26に示すL点とM点は次の2式で与えられる。
【0067】
【数10】
【0068】
これらの2式を用いてQPSK−1の受信波に対する相対的変化をみる。ここで、QPSK−2の振幅相対変化、位相相対変化分をα’、β’と定義し、BPSK波の相対変化分をα’’β’’と定義すると、次の2式で与えられる。
【0069】
【数11】
【0070】
これらの両式から、α’、β’とα’’β’’の値を次の4式のように求めることができる。
【0071】
【数12】
【0072】
これらの推測値α’、β’、α’’β’’を用いて送信側で設定している信号空間配置に対して、QPSK−1に対してQPSK−2、BPSKを位相回転β’、β’’すると同時に利得(振幅)α’、α’’を変化させることで、次式に示す変形信号空間配置を形成することが可能となる。
【0073】
【数13】
【0074】
受信側で、この変形信号空間配置を用いて、受信シンボルがどの信号点に最も近いかを判断し、復調を行う。
【0075】
<実施例>
以下に本実施形態の実施例(適用例)を示し、本実施形態に係る変復調方法の性能を評価する。
【0076】
<伝送特性の評価>
図27は、伝送特性の比較をした図であって、空間重畳誤差がないときの、HPAを線形動作させたときと、1.5dB出力バックオフした点[1.5dB OBO]で動作させたときの従来方式と本考案の方式の誤り率(BER)と1ビット当たりのエネルギ対雑音電力密度比(Eb/N0)との関係を示している。参考のために、理想状態である線形時の特性も併せて示している。
【0077】
線形動作時の従来技術と本実施形態のBER特性の差は非常に小さいことが分かる、これは、表1に示したように、信号点の最小距離と電力比の値(Dp2)/Poutに大差がないことを裏付けている。
【0078】
一方、電力増幅器の効率の良好な1.5dB OBOで動作させたとき、従来方式は、誤り率が大幅に劣化するのに対して、本実施形態の変調方法の特性は、線形動作時からの劣化が非常に少ないことが分かる。このことより、本実施形態の変調復調方法では、電力増幅器の非線形特性の影響を受け難く、電力増幅器の非線形領域で運用可能となる。
【0079】
<低消費電力の具体的な効果>
表3は、同一の電力増幅器を使用して算出した電力増幅器での消費電力を比較したものである。
【0080】
【表3】
【0081】
同一の雑音(AWGN)環境(Eb/N0=13dB)下で、同一のビット誤り率(6E−3)を実現するようにHPAの出力バックオフの値を変化させて評価したものである。本実施形態の変調技術を用いるとHPAの動作点を出力バックオフ1.5dBから1.6dB程度の飽和点近傍で動作可能である。
これに対して、従来方法では、出力バックオフを9dBとなる線形領域に設定しないと実現できない。この結果、従来技術では、十分に線形領域で動作させるために、電力効率が低下する結果、消費電力が増加する。
従来技術を1とすると、本実施形態では、消費電力を4分の1に低減可能である。
【0082】
<帯域外スプリアスレベルの低減効果>
電力増幅器から出力されるスプリアスレベルは信号波のスペクトラムとHPAの動作点で決定される。
特に、他のシステムへの干渉を抑える観点から、使用周波数帯域近傍の帯域外のレベルが低いことが求められる。
【0083】
図28は本実施形態による32PSKの実施例であって、HPAの出力スペクトラムを示している。電力増幅器を線形動作させたときと、1.5dB OBO(出力バックオフ)時の高効率動作時のスペクトラムを比較したものである。線形動作時のスペクトラムに大差がないが、1.5dB OBOの非線形領域で動作させると従来方法では、帯域外のスペクトラム(図28中、正規化周波数が0.5以上の領域)が上昇している。本考案の方法(QPSKとBPSKを使用時)の場合、このスペクトラムの上昇の割合が小さく良好な特性を示している。
【0084】
<その他の実施例>
以上は、32値(=25)多値変調について説明しているが、図29は、本実施形態による8APSKの実施例であって、8=23値多値変調波に適用した構成例を示す。1波のQPSKと1波のBPSKの出力を重畳合成して得られる。これは従来技術の8PSKに相当する。32APSKと同様にHPAの低消費電力化の効果が期待できる。
【0085】
さらに、図30は、128=(27)値多値変調に適用した構成例を示している。QPSK−1、QPSK−2、QPSK−3、BPSK信号を重畳合成して実現する構成である。32APSKと同様な効果が期待できる。
【0086】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る変復調方法は、信号空間配置の変形を受けにくく、高効率電力増幅が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信に使用する変調・復調に関して、特に帯域が制限された伝送路において高速通信を実現する場合に有効な多値変調波を、高効率に電力増幅を実現する変復調(変調・復調)の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の多値変調方式の1つである32値振幅位相変調(32APSK)の32種の信号の振幅と位相を示す信号点配置を示している。多重リング状に32の信号点が配置されている。一方、図2は、従来の32値直交振幅変調(32QAM)波の信号点配置図であり、信号点が格子状に配置されている。これらの32値振幅位相変調及び32値直交振幅変調のいずれも変調の単位である1シンボルで5ビットの伝送が可能であり、(25)=32種の情報データが伝送可能である多値変調信号波である。
【0003】
図3は、ワイヤレス通信のシステム構成例を示している。図3(a)に示す送信側では、伝送すべき情報をencoderにて符号化し、さらに誤り訂正符号によりチャネル符号化される。その後、情報ビットをModulatorで変調し、周波数を変換した後、電力増幅器(HPA)で電力を高めてアンテナから送信する。図3(b)に示す受信側では、低雑音増幅器(LNA)で増幅後、復調器(Demodulator)でベースバンド信号を取り出し、Decoderで符号化された情報の復号を行い、伝送された情報を取り出す。
【0004】
図4は、従来技術の32APSKのシステム構成例を示している。この例では、送信部において、送信データである5ビットの情報をS/Pで並列分割し、誤り訂正符号化を行った後、MAPPER、CONSTELLATION GENERATORで図1に示す3重の同心円上に信号点を配置し、Iチャネル信号とQチャネル信号用の2チャネルの信号を出力する。その後、帯域制限・整形フィルタ(SRRC filter)を通過後に、直交する2つの搬送波(cos(wt),−sin(wt))でIチャネル信号とQチャネル信号の積を取り、周波数を変換した後、電力増幅器(HPA)で増幅し、アンテナから送信する構成である。また、受信部では、低雑音増幅器(LNA)で増幅後、搬送波を掛けて、baseband信号を取り出し、SRRC filterで帯域制限・整形を施し、Demodulatorにて復調する。その後、Decoderで復号し、P/Sで並列・直列変換を行い、伝送情報を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許7,239,668号明細書
【特許文献2】米国特許7,123,663号明細書
【特許文献3】米国特許7,961,813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5と図6は電力増幅器(HPA)の特性例を示している。図5は、入力信号電力(Pin(単位dB))に対する出力信号電力(Pout(単位dB))と電力効率(Efficiency)を示している。図5に示すように、入力電力が大きくなるにつれて出力電力が大きくなり、電力効率も増加する。出力が飽和を呈する領域の直前近傍で効率は最大となる。
【0007】
図6は、入力信号電力(Pin)に対する出力信号電力(Pout、AM/AM変換)(図6(a))と、位相(Phase)の変化(AM/PM変換)(図6(b))を示している。効率を高めるために入力信号電力を高めると、出力信号電力が圧縮される(AM/AM変換)こと、及び、通過位相が変化(AM/PM変換)することが分かる。
【0008】
32APSK信号波や32QAM信号は、振幅の値が一定ではなく、時間的に変動するために、図6に示すHPAのAM/AM変換およびAM/PM変換を受けて、信号点配置が変形する。図7にHPAの高効率動作が期待できる出力バックオフ点OBO=1.5dBにおける受信側での信号点配置を示す。熱雑音はなく、HPAの非線形特性の影響のみを示している。このため、受信側では、正しく元の信号を復調することができずに誤り率が増加する問題点がある。
【0009】
多値変調信号を電力増幅する際、増幅器の非線形特性による伝送性能劣化を抑えるために、図5に示す飽和点から十分出力を下げ(出力バックオフ)、線形性が良好となる動作点で運用することが行われている。しかし、図5に示したように、この場合には電力増幅器の効率が低下する欠点がある。さらに所望の出力を得るためには、より高出力の電力増幅器が必要となり、また消費電力が増加すること、電源が大容量となること、熱対策のハードウエアが必要となる等、システムが高価になる欠点がある。
【0010】
そこで本発明は、複数の電力増幅器を高効率が可能な飽和領域で動作可能とし、電力消費量を低減でき、電源の低容量化、熱制御の簡単化により通信システムの送信系構築を経済的に達成できる変復調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の変復調方法は、従来技術の上記課題を解決するために考案したものであって、少なくとも1つのQPSK波と1つのBPSK波を重畳合成して形成される信号空間配置であり、電力を正規化したとき、信号点間の最小の幾何距離が最大になるようにQPSK波とBPSKの信号振幅と、QPSK波とBPSK波の相対位相関係を決定することを特徴としている。
【0012】
より具体的には、電力増幅器の非線形特性の影響を抑えるために、図1の32APSK又は図2に示す32QAM等の信号空間配置に変えて、少なくとも1つの4相位相変調(QPSK)波又はオフセットQPSK(OQPSK)波と、1つの2相位相変調(BPSK)波又はオフセットBPSK(OBPSK)波で重畳合成して形成する構成として、多値変調波を従来技術の図3、4に示すようにHPAで一括に電力増幅する代わりに、複数の振幅変動の小さいQPSK変調波とBPSK変調波に分割し、各々を個別に高効率電力増幅する構成をなし、重畳合成している。このため、増幅器の非線形特性により信号空間配置の変形を受けにくく、高効率電力増幅が可能となる。
【0013】
空間で電力合成する場合には、受信側が一点ではなく、広い地域をカバーする場合には、利得と位相に重畳誤差を伴う。これらの影響を小さくするために、変調側では、重畳するQPSK波とBPSK波の信号レベルを調整し、復調側では、利得と位相誤差を推測する機能を備え、利得誤差と位相誤差を算出し、変調時の信号空間配置に対して、推測した利得誤差、位相誤差をもとに変形した信号空間配置を求め、この配置に基づいて復調を行うようにした。
【0014】
本発明の変復調方法においては、QPSK波をオフセットQPSK波に、BPSK波をオフセットBPSK波に変更した構成とすることを特徴とする。
【0015】
本発明の変復調方法においては、QPSK変調又はBPSK変調する前に、情報ビットストリームに誤り訂正符号を適用したことを特徴とする。
【0016】
本発明の変復調方法においては、2種以上の誤り訂正符号を使用し、1つの誤り訂正符号器ともう1つの誤り訂正符号器の間に、インターリーバを設置し、符号を撹拌する機能を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の変復調方法においては、隣接する信号点間の符号間距離が最少となるように符号変換を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明の変復調方法においては、変調後の電力増幅器の非線形特性を考慮して前置歪補償を施した信号配置とすることを特徴とする。
【0019】
本発明の変復調方法においては、電力増幅器非線形特性の歪を受けた後に最小の幾何距離が最大になるように、信号配置の半径と相対位相関係を伝送特性が最適となるように調整することを特徴とする。
【0020】
本発明の変復調方法においては、受信側において、既知信号を送信して空間重畳に伴う振幅あるいは位相誤差を推定して、この推定誤差をもとに修正した信号空間配置を用いて復調することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、複数の電力増幅器を高効率が可能な飽和領域で動作可能とし、電力消費量を低減でき、電源の低容量化、熱制御の簡単化により通信システムの送信系構築を経済的に達成できる。また、変形した信号配置、重畳誤差を推測する機能を追加することにより、重畳誤差の影響が小さくなり、誤り率が低下し、送信電力の低減、低消費電力化に一層効果がある。さらに、従来の多重円上に信号点を配置した信号空間配置に比べて、電力増幅器の非線形特性に起因する伝送特性劣化が減少し、電力増幅器を高効率動作が可能となり、低消費電力化を大幅に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多重リング状に配置した従来の32APSKの信号空間配置の例を示す図である。
【図2】格子状に配置した従来の32QAMの信号空間配置の例を示す図である。
【図3】ワイヤレス通信システムの全体構成図である。
【図4】従来技術のシステム構成図である。
【図5】典型的な電力増幅器の入出力特性と電力効率特性を示す図である。
【図6】電力の非線形特性例を示す図である。
【図7】従来技術の32APSK信号波がHPAの非線形特性による信号点配置の変形を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る32APSKの信号空間配置を示す図である。
【図9】本発明の実施形態において2つのQPSK信号と1つのBPSK信号の合成による信号空間配置を実現する形成方法を示す図である。
【図10】電力で正規化したときのQPSK−1の半径r1、QPSK−2の半径r2、とBPSKの半径r3の値と、信号点の幾何最小距離の関係を示すグラフである。
【図11】QPSK−1に対してQPSK−2とBPSKの位相を同時に回転させたときの(Dp^2)/Poutとそのときの振幅比r2/r1とr3/r1の関係を示すグラフである。
【図12】QPSK−1に対してQPSK−2の位相角Th2=14度, BPSKの位相角Th3を独立に回転させたときの(Dp^2)/Poutとそのときの振幅比r2/r1とr3/r1の関係を示すグラフである。
【図13】QPSK−1に対してQPSK−2とBPSKを共に14度反時計まわりに回転させ,Dp^2/Poutが改善される信号空間配置を示す図である。
【図14】3波を個別に送信して空間重畳合成して32APSKを実現するシステム構成例を示す図である。
【図15】QPSK−1、QPSK−2、及び、BPSKに割り当てる信号点配置の実施例を示す図である。
【図16】アンテナ間の距離による受信点における位相誤差の発生を説明する図である。
【図17】空間重畳誤差を小さく抑えることが可能なフェーズドアレイアンテナシステムの構成例とアンテナ前方からの角度に対する3波空間重畳合成の利得誤差と位相誤差を示す図である。
【図18】QPSK信号の振幅変動を低下させるOQPSK信号の原理と信号点の遷移状況を示す図である。
【図19】OBPSK波の原理を示す図である。
【図20】OBPSKの信号点の軌跡を示すグラフである。
【図21】OQPSK波とOBPSK波を送信する送信系の構成の実施例を示す図である。
【図22】重畳誤差の少ないフェーズドアレイアンテナを用いた空間重畳合成技術による32APSK変調の構成例を示す図である。
【図23】連接誤り訂正符号とインターリーバを使用したシステムの構成例を示す図である。
【図24】重畳誤差による信号点配置の変形を示す図である。
【図25】重畳誤差を考慮して振幅を修正した信号点配置を示す図である。
【図26】重畳誤差を推定するために使用する受信点L点とM点の例を示す図である。
【図27】本発明の実施形態を適用した32APSKと従来方法の線形動作時と非線形動作時の伝送特性を比較して示す図である。
【図28】電力増幅後の出力スペクトラムを比較して示す図である。
【図29】本発明の実施形態に係る8PSKの実施例を示す図である。
【図30】本発明の実施形態に係る128APSKの実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る変復調方法について図面を参照しつつ詳しく説明する。
<構成>
図8は、本発明の実施形態に係る32値の信号空間配置を示している。図9は、本実施形態において2つのQPSK信号と1つのBPSK信号の合成による信号空間配置を実現する形成方法を示している。
【0024】
図9に示すように、図8に示した信号空間配置は、2つのQPSK変調器(QPSK−1、QPSK−2)の出力と、1つのBPSK変調器の出力(BPSK1又はBPSK2)と、を重畳合成することで実現できる。3つの信号波の複素数表示を次式に示す。
【0025】
【数1】
【0026】
この式において、ri、φi(i=1、2、3)は各QPSK信号とBPSK信号の振幅と位相を示す。各々のQPSKとBPSKの出力信号S1、S2、S3はほぼ一定の振幅を有しており、AM変動が小さくなるために、この信号を別々に電力増幅器に入力すると図6に示す電力増幅器の非線形特性であるAM/AM変換、AM/PM変換の影響を受け難くなる。
【0027】
<信号配置の最適化>
図8に示すような信号点配置による伝送誤りは、伝送上の干渉波、熱雑音等により、伝送した信号点が隣接の信号点に変位するために、受信側で正しい信号点が識別できずに信号誤りが発生する。信号誤りを小さくするためには、同じ送信電力において、信号点配置における幾何学上の最小距離Dpを大きくすることが重要である。図8に示す信号点配置における送信電力Poutは次式で与えられる。
【0028】
【数2】
【0029】
図10は、電力で正規化したときのQPSK−1の半径r1、QPSK−2の半径r2、及びBPSKの半径r3の値と信号点の幾何最小距離との関係を示す図である。図10(a)は、r2/r1を変化させたときの(Dp2)/Poutを、図10(b)は、r3/r1を変化させたときの(Dp2)/Poutを示している。
【0030】
r2/r1、r3/r1を調整することにより、(Dp2)/Poutを最大にすることが可能である。
QPSK−1、QPSK−2、BPSKの相対的な位相関係を変化させ、(Dp2)/Poutを最大とする最適な振幅比r2/r1とr3/r1、ならびにそのときの最大(Dp2)/Poutを図11、図12に示す。図11は、QPSK−1に対してQPSK−2の位相角(Th2)とBPSKの位相角(Th3)を同時に同量回転させたときの(Dp2)/Poutとそのときの振幅比r2/r1とr3/r1を示している。図11よりQPSK−1に対してQPSK−2とBPSKの位相を反時計回りに14度回転したときに、(Dp2)/Poutが最大となる。
【0031】
図12は、QPSK−2をQPSK−1に対してTh2=14度反時計回りに回転させ、BPSKの位相角Th3を独立に回転させたときの(Dp2)/Poutを示している。QPSK−2とBPSKをQPSK−1に対して共に14度反時計回りに回転したときの配置が、(Dp2)/Poutが最大となる。
このように、振幅比と相対位相関係を調整することにより、(Dp2)/Poutを高めることができる。このときの信号空間配置図を図13に示す。
【0032】
表1は従来の技術である32APSKと本発明の実施形態に係る変調方法について、最適に信号配置を調整したときの(Dp2)/Poutを比較したものである。また、表1は、32値変調方式の送信電力を正規化したときの幾何最小距離を比較して示す図である。表1から、本実施形態の方が、(Dp2)/Poutが高く、伝送特性が良好であることが分かる。
【0033】
【表1】
【0034】
<3波の信号波の重畳合成方法>
各QPSK変調出力を合成する際に、マイクロ波回路による重畳では回路損失を伴うが、別々のアンテナを用いて空間で重畳合成することにより回路損失を伴わないで、重畳可能となる。
【0035】
図14は、3波を個別に送信して空間重畳合成して32APSKを実現する本実施形態のシステムの構成例である。図14(a)に示す送信側は、QPSK−1、QPSK−2とBPSKの3個の変調器と3個の個別の電力増幅器とアンテナを有し、個別にHPAで電力増幅した後に、別々のアンテナから送信し、3ビームを空間で重畳合成して、実現できる。伝送すべき入力情報ビット列をS/Pで直並列変換し、Encoderにおいて符号化し、さらに必要に応じて誤り訂正符号によりチャネル符号化される。その後、情報ビット列をMapperおよびModulatorにおいて、図9に示すように重畳して信号点空間配置を形成するように変換する。
【0036】
このとき、MapperおよびModulatorにおいて、隣接する信号点間の符号間距離(“0”と“1”の異なる数)が最小となるように符号変換する。
この際、図9に示すように、BPSK波は、オフセット位相として、±(π/4)、±(3π/4)を有する複数のBPSK波を発生させる。5ビットうちの1ビットは、このBPSK変調用ビットであり、他の4ビットの状態に応じて、先のオフセット位相から最適な位相を選択して出力する。
【0037】
図15は、QPSK−1、QPSK−2とBPSKに割り当てる信号点配置の実施例を示すであり、MapperおよびModulatorにおいて行う具体的な符号配置を示す。QPSK−2の信号点配置(図15(b))をQPSK−1のビット(図15(a))に応じて変化させ、さらにBPSKの信号点配置(図15(a))についても、QPSK−1のビットに応じて変化させている。
【0038】
HPAのAM/PM変換による位相回転は、変調器ごとに設けた可変位相器V−Phase)およびAM/AM変換による利得変化を可変利得器で調整することにより、理想状態の信号空間配置を実現できる。
【0039】
その後、搬送波と積算を行い、周波数変換と同時に、搬送波を変調する。その後、電力増幅器(HPA)で電力を高めてアンテナから送信する。図14(b)に示す受信側は従来技術と同様な構成であり、重畳合成された波を一括受信して復調し、伝送情報を取り出す。
【0040】
理想的な送信側の信号Cは、各QPSKの信号波S1、S2とBPSKの信号波S3を用いると、次式のように表すことができる。
C=S1+S2+S3
現実には、合成する際に誤差が伴うために、送信信号Tは以下の式で表される。
【0041】
【数3】
【0042】
ここで、α2、β2、α3、β3は、S1とS2、S3を合成する際の相対利得誤差、相対位相誤差を示す。
これらの誤差のうち、利得誤差および位相誤差を調整するために、図14にある可変利得器(V−ATT)、可変位相器(V−Phase)を使用することが可能である。可変利得器と可変位相器は、また図6に示したHPAのAM/AM変換、AM/PM変換による利得変化、位相変化を調整する目的でも使用可能である。
【0043】
<空間重畳誤差>
空間重畳では、図16に示すように、上記の3個のアンテナが距離dを置いて設置される場合には、それらの距離に応じて、受信側では経路長の差に基づく重畳誤差が発生する、特に位相に誤差が発生する。ここで、図16は、空間重畳誤差を小さく抑えることが可能なフェーズドアレイアンテナシステムの構成例とアンテナ前方からの角度(theta)に対する3波空間重畳合成の利得誤差と位相誤差を示す図である。
送信点と受信点の伝搬距離の差による位相誤差、放射パターンによる利得と位相誤差が発生すると、次式で示すように、受信信号が変化する。
【0044】
【数4】
【0045】
ここで、α2、β2、α3、β3が空間重畳に伴う利得誤差、位相誤差を示し、nは雑音を示す。このため、アンテナの形式として、広い受信エリアにおいて、位相誤算が少ないものが望まれる。
【0046】
このようなアンテナを実現するモデルとして、図17(a)に示すフェーズドアレイアンテナが考案されている(特許文献3)。3ビームを送信するアレイアンテナが同心円状に配置され、等価的に円の中心がアンテナの基準点となることから、3個のアンテナと受信点の距離がほぼ等しくなるために、重畳誤差が小さくなる特徴がある。図17(b)は、アンテナ前方からの角度(Theta)を変化させたときの利得誤差を示し、図17(c)はそのときの位相誤差を示している。Thetaが±15度の範囲で、利得誤差、位相誤差15度以内を実現している。
【0047】
<オフセット変調波の適用>
図18はOBPSK波の原理を示す図であって、(a)、(b)、(c)は4相位相変調波(QPSK)の信号振幅(半径)の軌跡を示している。情報に応じて信号点が変化するために、振幅が原点を通過する場合があり、大きく変動する。
【0048】
これに対して、Iチャネルの信号とQチャネルの信号を半シンボル遅延(オフセット)させると、図18(d)、(e)、(f)に示すように、オフセットQPSK(OQPSK)波では、信号軌跡は対角線状に移動することがなくなり、振幅変動が抑えられる。
【0049】
同様に、2相位相変調波(BPSK)の信号波に対しても、図19(a)に示すようにオフセット位相角を有するBPSKに対して、図19(b)のようにIチャネルの信号とQチャネルの信号を半シンボル遅延(オフセット)させると、図20に示すように信号波の軌跡は中止を通過しないために振幅変動が抑えられる。ここで、図20は、OBPSKの信号点の軌跡を示す図、図19は、OQPSK波とOBPSK波を送信する送信系の実施例の構成を示す図である。
【0050】
図21は、32APSK変調の構成例を示す図であって、OQPSK波とOBPSK波を用いて送信系を構成する実施例を示している。各変調器において、I−chに半シンボルの遅延回路(Delay)を設置している。
【0051】
図22は、重畳誤差の少ないフェーズドアレイアンテナを用いた空間重畳合成技術による32APSK変調の構成例を示す図であって、図17に示すアンテナを適用した本実施形態の実施例である。QPSK−1、QPSK−2とOBPSKの3個の変調器を有し、それぞれその出力を複数に分配し、複数のHPAで増幅した後に、複数のアレイアンテナ素子に給電される。各信号経路には、振幅と位相を調整して、ビームの方向と指向性を制御してアレイアンテナを実現している。
【0052】
図23は、重畳誤差による信号点配置の変形を示す図であって、連接誤り訂正符号とインタリーバ(Interleaver)を使用したシステムの構成の実現例を示している。2種の誤り訂正符号(Encoder−1、−2)を用いた連接符号化である、2種の誤り訂正符号器の間に、符号を撹拌するインターリーバを配置し、誤り訂正能力を向上している。
【0053】
表2は各種変調波の振幅変動の度合いを比較したものであり、各変調方式のBaseband信号のPAPR値を比較して示す表である。
【0054】
【表2】
【0055】
表2は、各変調信号を帯域制限フィルタ(Squared Root Raised Cosine roll−off filter:SRRC)を用いて帯域制限・整形した信号の振幅x(t)の変動を次式に示す各信号波の最大電力値と平均電力値との比であるPAPR値を用いて評価したものである。ただし、roll−off率=0.35としたときの値を示している。
【0056】
【数5】
【0057】
表2から、従来の32APSKが5.1dBであるのに対して、QPSK信号は3.8dB、BPSK信号は3.8dB、OQPSK波は3.5dB、OBPSK信号は3.1dBであることが分かる。したがって、従来の32APSKのPAPRに比べて、QPSK、OQPSK、BPSK、OBPSK信号はPAPR値が小さい。このことは、本実施形態の変調方法が、従来技術に比べて、HPAをより効率の良好な飽和点に領域で動作させることを可能としていることを示している。
【0058】
<重畳誤差を考慮した信号配置>
図24は、重畳誤差を考慮して振幅を修正した信号点配置を示す図である。空間での重畳合成時に位相誤差が発生すると図24に示すようにQPSK−1に対してQPSK−2、BPSKが位相回転するために、図24の最小間隔であったB点とC点の間隔が増加し、B点とD点、F点の距離が接近する。QPSK−1とQPSK−2、BPSKの間に位相誤算が発生しても信号点間の距離を保つために図25に示すようにQPSK−1、QPSK−2、とBPSKの振幅r1、r2、r3を調整することにより信号点間の最小の幾何距離を調整することにより、B点とD点、F点の距離が保たれることを示している。
【0059】
<重畳誤差推定機能を有した変形信号空間配置による復調>
受信側での復調前に、図26に示すL点とM点の2つの既知のシンボルを一定期間送信し、受信側でそれらの信号配置点(次式)を観測する。図26は、重畳誤差を推定するために使用する受信点L点とM点の例を示す図である。
【0060】
【数6】
【0061】
次式に示すように、L点とM点の2点を観測することにより、QPSK−1に対する相対変化分として、重畳時に発生した利得と位相誤差α’、β’、α’’β’’を推定する。
QPSK−1、QPSK−2およびBPSK波は、位相誤差Δφを受けて、次式のように表すことができる。
【0062】
【数7】
【0063】
ここでL点とM点は、以下に示すBPSK波の位相が互いに180度異なる。
【0064】
【数8】
【0065】
【数9】
【0066】
したがって、図26に示すL点とM点は次の2式で与えられる。
【0067】
【数10】
【0068】
これらの2式を用いてQPSK−1の受信波に対する相対的変化をみる。ここで、QPSK−2の振幅相対変化、位相相対変化分をα’、β’と定義し、BPSK波の相対変化分をα’’β’’と定義すると、次の2式で与えられる。
【0069】
【数11】
【0070】
これらの両式から、α’、β’とα’’β’’の値を次の4式のように求めることができる。
【0071】
【数12】
【0072】
これらの推測値α’、β’、α’’β’’を用いて送信側で設定している信号空間配置に対して、QPSK−1に対してQPSK−2、BPSKを位相回転β’、β’’すると同時に利得(振幅)α’、α’’を変化させることで、次式に示す変形信号空間配置を形成することが可能となる。
【0073】
【数13】
【0074】
受信側で、この変形信号空間配置を用いて、受信シンボルがどの信号点に最も近いかを判断し、復調を行う。
【0075】
<実施例>
以下に本実施形態の実施例(適用例)を示し、本実施形態に係る変復調方法の性能を評価する。
【0076】
<伝送特性の評価>
図27は、伝送特性の比較をした図であって、空間重畳誤差がないときの、HPAを線形動作させたときと、1.5dB出力バックオフした点[1.5dB OBO]で動作させたときの従来方式と本考案の方式の誤り率(BER)と1ビット当たりのエネルギ対雑音電力密度比(Eb/N0)との関係を示している。参考のために、理想状態である線形時の特性も併せて示している。
【0077】
線形動作時の従来技術と本実施形態のBER特性の差は非常に小さいことが分かる、これは、表1に示したように、信号点の最小距離と電力比の値(Dp2)/Poutに大差がないことを裏付けている。
【0078】
一方、電力増幅器の効率の良好な1.5dB OBOで動作させたとき、従来方式は、誤り率が大幅に劣化するのに対して、本実施形態の変調方法の特性は、線形動作時からの劣化が非常に少ないことが分かる。このことより、本実施形態の変調復調方法では、電力増幅器の非線形特性の影響を受け難く、電力増幅器の非線形領域で運用可能となる。
【0079】
<低消費電力の具体的な効果>
表3は、同一の電力増幅器を使用して算出した電力増幅器での消費電力を比較したものである。
【0080】
【表3】
【0081】
同一の雑音(AWGN)環境(Eb/N0=13dB)下で、同一のビット誤り率(6E−3)を実現するようにHPAの出力バックオフの値を変化させて評価したものである。本実施形態の変調技術を用いるとHPAの動作点を出力バックオフ1.5dBから1.6dB程度の飽和点近傍で動作可能である。
これに対して、従来方法では、出力バックオフを9dBとなる線形領域に設定しないと実現できない。この結果、従来技術では、十分に線形領域で動作させるために、電力効率が低下する結果、消費電力が増加する。
従来技術を1とすると、本実施形態では、消費電力を4分の1に低減可能である。
【0082】
<帯域外スプリアスレベルの低減効果>
電力増幅器から出力されるスプリアスレベルは信号波のスペクトラムとHPAの動作点で決定される。
特に、他のシステムへの干渉を抑える観点から、使用周波数帯域近傍の帯域外のレベルが低いことが求められる。
【0083】
図28は本実施形態による32PSKの実施例であって、HPAの出力スペクトラムを示している。電力増幅器を線形動作させたときと、1.5dB OBO(出力バックオフ)時の高効率動作時のスペクトラムを比較したものである。線形動作時のスペクトラムに大差がないが、1.5dB OBOの非線形領域で動作させると従来方法では、帯域外のスペクトラム(図28中、正規化周波数が0.5以上の領域)が上昇している。本考案の方法(QPSKとBPSKを使用時)の場合、このスペクトラムの上昇の割合が小さく良好な特性を示している。
【0084】
<その他の実施例>
以上は、32値(=25)多値変調について説明しているが、図29は、本実施形態による8APSKの実施例であって、8=23値多値変調波に適用した構成例を示す。1波のQPSKと1波のBPSKの出力を重畳合成して得られる。これは従来技術の8PSKに相当する。32APSKと同様にHPAの低消費電力化の効果が期待できる。
【0085】
さらに、図30は、128=(27)値多値変調に適用した構成例を示している。QPSK−1、QPSK−2、QPSK−3、BPSK信号を重畳合成して実現する構成である。32APSKと同様な効果が期待できる。
【0086】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る変復調方法は、信号空間配置の変形を受けにくく、高効率電力増幅が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのQPSK波と1つのBPSK波を重畳合成して形成される信号空間配置であり、電力を正規化したとき、信号点間の最小の幾何距離が最大になるように前記QPSK波と前記BPSKの信号振幅と、前記QPSK波と前記BPSK波の相対位相関係を決定することを特徴とする変復調方法。
【請求項2】
前記QPSK波をオフセットQPSK波に、前記BPSK波をオフセットBPSK波に変更した構成とすることを特徴とする請求項1に記載の変復調方法。
【請求項3】
QPSK変調又はBPSK変調する前に、情報ビットストリームに誤り訂正符号を適用したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変復調方法。
【請求項4】
2種以上の誤り訂正符号を使用し、1つの誤り訂正符号器ともう1つの誤り訂正符号器の間に、インターリーバを設置し、符号を撹拌する機能を備えたことを特徴とする請求項3に記載の変復調方法。
【請求項5】
隣接する信号点間の符号間距離が最少となるように符号変換を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変復調方法。
【請求項6】
変調後の電力増幅器の非線形特性を考慮して前置歪補償を施した信号配置とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変復調方法。
【請求項7】
電力増幅器非線形特性の歪を受けた後に最小の幾何距離が最大になるように、信号配置の半径と相対位相関係を伝送特性が最適となるように調整することを特徴とする請求項6に記載の変復調方法。
【請求項8】
受信側において、既知信号を送信して空間重畳に伴う振幅あるいは位相誤差を推定して、この推定誤差をもとに修正した信号空間配置を用いて復調することを特徴とする請求項1に記載の変復調方法。
【請求項1】
少なくとも1つのQPSK波と1つのBPSK波を重畳合成して形成される信号空間配置であり、電力を正規化したとき、信号点間の最小の幾何距離が最大になるように前記QPSK波と前記BPSKの信号振幅と、前記QPSK波と前記BPSK波の相対位相関係を決定することを特徴とする変復調方法。
【請求項2】
前記QPSK波をオフセットQPSK波に、前記BPSK波をオフセットBPSK波に変更した構成とすることを特徴とする請求項1に記載の変復調方法。
【請求項3】
QPSK変調又はBPSK変調する前に、情報ビットストリームに誤り訂正符号を適用したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変復調方法。
【請求項4】
2種以上の誤り訂正符号を使用し、1つの誤り訂正符号器ともう1つの誤り訂正符号器の間に、インターリーバを設置し、符号を撹拌する機能を備えたことを特徴とする請求項3に記載の変復調方法。
【請求項5】
隣接する信号点間の符号間距離が最少となるように符号変換を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変復調方法。
【請求項6】
変調後の電力増幅器の非線形特性を考慮して前置歪補償を施した信号配置とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変復調方法。
【請求項7】
電力増幅器非線形特性の歪を受けた後に最小の幾何距離が最大になるように、信号配置の半径と相対位相関係を伝送特性が最適となるように調整することを特徴とする請求項6に記載の変復調方法。
【請求項8】
受信側において、既知信号を送信して空間重畳に伴う振幅あるいは位相誤差を推定して、この推定誤差をもとに修正した信号空間配置を用いて復調することを特徴とする請求項1に記載の変復調方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2013−48354(P2013−48354A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185983(P2011−185983)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】
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