説明

変性されたガラス表面を有するアルカリ金属含有ガラスおよびその製造法

本発明は、変性されたガラス表面を有するアルカリ金属含有ガラスに関する。本発明の技術的課題は、体積からのナトリウム再拡散をよりいっそう高い温度でも、殊に火炎での後加工の際に十分に回避させるように変性されたガラス表面を安定化することである。
意外なことに、変性されたガラス表面内での化学組成が体積に対して明らかに高められたアルミニウム濃度を有する場合に、アルカリ金属含有ガラスの変性されたガラス表面は、体積からのナトリウム再拡散に対してよりいっそう高い温度で十分に耐性を有することが見出された。この誘因は、曹長石相の極めて高い負の形成エンタルピーにある。本発明による方法は、このガラスの表面を高められた濃度のアルミニウムと接触させ、熱処理することによって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性されたガラス表面を有するアルカリ金属含有ガラスおよびその製造法に関する。
【0002】
ガラスの使用において、表面特性は、環境との相互作用に関連して本質的な役割を演じ、この場合ここでは、殊に化学的性質および機械的性質を挙げることができる。なかんずく、溶融可能性および溶融技術における種々の理由から、しばしば比較的高いアルカリ金属含有量が望まれているが、しかし、このアルカリ金属含有量は、別の面で加水分解安定性および機械的性質の低減をまねく。このジレンマからのこれまでの通常の解決は、一般に脱アルカリ化処理によって記載される表面処理であり、例えばこの脱アルカリ化処理は、[1:Glastechnische Fabrikationsfehler, H.J. Jebsen-Marwedel, R. Brueckner: Springer-Verlag 1980, 第507-508頁]および[2:ドイツ連邦共和国特許出願第10246928.8号、Verfahren zur Herstellung von Emails]に記載されている。例えば、硫化水蒸気等による脱アルカリ化の前記問題の場合には、高い反応性のために、一般に高い反応温度が必要とされるが、しかし、表面上への体積からのナトリウム再拡散をまねきうるという理由に基づく原則的な問題が想起される。殊に、後の処理過程、例えば高い温度に関連している火炎の下での後処理の場合には、体積から熱的に励起されるナトリウム再拡散は、元々達成された性質の重大な劣化をまねく。
【0003】
本発明の技術的課題は、公知技術水準とは異なり、体積からのナトリウム再拡散をよりいっそう高い温度でも、殊に火炎での後加工の際に十分に回避させるように変性されたガラス表面を安定化することである。
【0004】
意外なことに、変性されたガラス表面内での化学組成が体積に対して明らかに高められたアルミニウム濃度を有する場合に、アルカリ金属含有ガラスの変性されたガラス表面は、体積からのナトリウム再拡散に対してよりいっそう高い温度で十分に耐性を有することが見出された。この誘因は、曹長石相の極めて高い負の形成エンタルピーにある。本発明による方法は、このガラスの表面を高められた濃度のアルミニウムと接触させ、熱処理することによって特徴付けられる。それによって、形成されたアルミノケイ酸ナトリウムと表面付近の範囲内で熱的に引き起こされたナトリウム再拡散に対して耐性を有する、熱的に安定した表面層を得ることができる。それというのも、濃度勾配は、全く存在せず、ナトリウムは、アルミニウムで変性された前記構造体内で堅固に結合されているからである。
【0005】
前記層を形成させるための方法は、特にアルミニウム含有溶液、例えば塩化アルミニウムおよび/またはミョウバンの水溶液を、例えば浸漬法または噴霧法によってガラスの表面上にもたらし、この場合には、引続きガラス表面を変態温度の範囲になるまで数分間加熱することによって、実現される。この場合、アルミニウム化合物は、表面積m当たり少なくとも0.1gの量、特に表面積m当たり1〜10gの量で使用される。それぞれの上限は、溶液中でのアルミニウム化合物の飽和濃度から生じる。それぞれの上限は、溶液中のアルミニウム化合物の飽和濃度から明らかである。ガラス表面は、特に±150Kの変態温度の範囲内で加熱される。アルミニウム含有溶液を用いての作業は、湿潤挙動のために部分的に目視的損傷をまねく。
【0006】
高い温度でアルミニウム含有材料がガス相からガラス表面上に沈殿し、その際の同時に必要とされる化合物が到達する場合に、前記の目視的損傷は、回避されうる。この場合、塩化アルミニウムは、少なくとも接触する体積1m当たり0.1g、有利に1m当たり1〜10gの量で使用される。上限は、飽和蒸気圧によって定められる。塩化アルミニウム化合物の温度は、170℃の昇華温度とガラスの変態温度を超えて600Kになるまでの温度との間にある。ガラスとガス相からなる塩化アルミニウム化合物との接触時間は、高い温度で少なくとも0.1秒間であり、低い温度で1時間までである。ガラス表面の試料温度は、下向きにガラスの温度交換安定性によって制限されている。ガス相中で塩化アルミニウムで作業する場合には、予想される薄い残留物は、簡単に洗浄除去することができる。塩化アルミニウムを使用する場合には、結晶水を用いての使用と結晶水を用いない使用とは、区別することができる。結晶水を用いた場合には、目視的損傷なしによりいっそう強い表面変性および加水分解安定性の上昇ならびにガラスのマイクロ硬度を確認することができる。無水の塩化アルミニウムを使用する場合には、むしろ確認可能な目視的損傷を観察することができる。
【0007】
また、本発明による方法は、有利に管状ガラスの製造の際に使用されてもよい。この管状ガラスの製造の場合には、吹込媒体として過圧でベロ法(Velloverfahren)またはダンナー法(Dannerverfahren)の場合には、空気がガラス管の内面上にもたらされる。蒸発されたAlClが存在し、170℃を超える加熱された空気を使用することが提供される。それによって、最初に縮合が回避される。次に、このガスは、ドローイングオニオン(Ziehzwiebel)の形成後にガラスの熱い内部表面と接触させることができ、この場合には、さらにガラス表面の変態を行なうことができる。更に、このガスは、管ストランドの冷たい端部に接して管の開口部から流出し、それと同時に高い温度(Tgを上廻る600Kまで)で数分間からガラスの切断のためにガラス表面と反応する時間に亘るまでの時間を有する。この場合には、縮合を回避させるために、管の切断温度を170℃を超える温度に維持することが必要である。
【0008】
実施例
例1
典型的な結果としては、図1において、次の組成:SiO71.0%、Al1.7%、Fe0.02%、KO1.3%、NaO15.5%、CaO9.4%、MgO2.7%およびSO0.25%を有するソーダ石灰珪酸塩ガラスからなる白色の瓶の加水分解安定性が示されており、この場合には、種々の量で試料AlCl*6HOを炉中で550℃の温度にもたらし、次にそこで冷却した。容器中に導入された塩化アルミニウム量は、3814mmのガラス表面積および20mlの体積に対するものであり、この場合無水の塩化アルミニウムは、180℃で蒸気相に移行するかまたは固有のDTA測定後に、材料は、結晶水で203℃の温度で初めて分解する。この容器を試料材料上に被せ、15分間の処理時間後にマッフル炉中で冷却した。第1表中には、加水分解安定性に対する作用の点で種々の処理工程が記載されている。
【0009】
【表1】

【0010】
【表2】

【0011】
図2a(未処理のガラス)および図2b(本発明により処理したガラス)は、マイクロプローブで記録されたラインスキャンを、30μmの長さに亘って、前記の試験された白色ガラスの元素特異的信号強さで示している。表面上でのアルミニウム増加は、本発明による方法により1μm未満の範囲内にあることが明らかになる。
【0012】
前記層の熱的安定性は、図3中に明示されており、この図3から処理工程も明らかになる。この処理の終結後、ガラスを冷たい状態で火炎処理に掛ける。明らかに改善された加水分解安定性は、再現可能であるようにそのままであることが判明した。
【0013】
例2
鉛結晶ガラスの場合には、マッフル炉中に定義された量(0.05gおよび0.15g)のAlClをコランダムるつぼ中の25cmのガラス試料と一緒に入れ、この場合このコランダムるつぼは、アルミニウム箔で被覆されていた。470℃の加熱後およびマッフル炉のスイッチを最終的に切った際の15分間の保持時間後およびるつぼ中での試料の冷却後に、ガラスをマイクロ硬さに関連して分析した。結果は、図4中に示されており、100nmの針入深さの後に良好に100%高められたマイクロ硬さを示し、このマイクロ硬さは、なお僅かな針入深さの場合には、むしろ遙かに高い値を取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】AlCl*6HO粉末で550℃で接触された白色の瓶の加水分解安定性を示す線図。
【図2a】30μmの長さに亘る、マイクロプローブで記録されたラインスキャンの試験された、未処理の白色瓶の元素特異的信号強さを示す線図。
【図2b】30μmの長さに亘る、マイクロプローブで記録されたラインスキャンの試験された、本発明により550℃で蒸気相からのAlCl(無水)で処理した白色瓶の元素特異的信号強さを示す線図。
【図3】550℃で15分間、接触される蒸気相からのAlCl*6HO粉末(0.01g)で処理した白色瓶(20ml)の加水分解安定性を示す略図。
【図4】470℃でAlClで処理した鉛ガラスに対する針入深さに依存するマイクロ硬さの経過曲線を示す略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性されたガラス表面を有するアルカリ金属含有ガラスにおいて、このアルカリ金属含有ガラスの化学組成が表面内で体積に対して明らかに高められたアルミニウム濃度を有することを特徴とする、変性されたガラス表面を有するアルカリ金属含有ガラス。
【請求項2】
変性されたガラス表面を有するアルカリ金属含有ガラスの製造法において、このガラスの表面を高められた濃度のアルミニウムと接触させ、熱処理することを特徴とする、変性されたガラス表面を有するアルカリ金属含有ガラスの製造法。
【請求項3】
このガラスの表面を、結晶水を用いておよび結晶水を用いずにミョウバン(K Al (SO) × 12 HO)および/またはAlClと接触させ、熱処理する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アルミニウム化合物を溶解された形でこのガラスの表面上に浸漬または噴霧によってもたらし、引続き熱処理する、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
使用されるアルミニウム化合物がガラスの表面積1m当たり少なくとも0.1gの量に相当し、引続きこのガラスの表面を±150Kの変態温度の範囲内で加熱する、請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラスの表面を蒸気相からなる塩化アルミニウム化合物と0.1秒ないし1時間接触させる、請求項2記載の方法。
【請求項7】
使用される塩化アルミニウム化合物が接触される体積1m当たり少なくとも0.1gの量に相当し、ガラスの表面の下限の試料温度をガラスの温度交換安定性によって制限し、ガラスの表面の上限の試料温度をガラスの変態温度を超えて600Kになるまでにする、請求項2または6記載の方法。
【請求項8】
塩化アルミニウム化合物の温度が170℃の昇華温度とガラスの変態温度を超えて600Kまでの温度との間にある、請求項2または6記載の方法。
【請求項9】
管ガラス製品の場合に内部吹込圧力を、塩化アルミニウム化合物を含むガス状相により実現させ、このガス状相をベロ法(Velloverfahren)またはダンナー法(Dannerverfahren)の場合の空気と同様に管を通して圧縮する、請求項2または6記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525211(P2006−525211A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505352(P2006−505352)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004642
【国際公開番号】WO2004/096724
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(399052372)
【氏名又は名称原語表記】Heiko Hessenkemper
【出願人】(505409351)
【氏名又は名称原語表記】Heide Landfermann−Hessenkemper
【住所又は居所原語表記】Am Hasenborn 22, D−09603 Grossschirma, Germany
【Fターム(参考)】