説明

変性放出製剤の吸収増強

吸収時間帯の制限される薬学的活性剤で処置した患者における血漿プロファイルを改善するための生成物及び方法が開示される。前記生成物及び方法は、マルチ粒子型で活性剤を経口的に投与することを含み、そのため患者が摂食状態において最低その一部が腸に送達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2003年12月24日に出願された合衆国仮出願60/532772号の優先権を主張し、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、制限された吸収時間帯を持つ薬学的活性剤を含む薬学的生成物と、前記薬学的生成物で患者を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
活性成分として、制限された吸収時間帯を持つ薬剤を含む薬学的生成物に対するこの分野における継続的要求、及び市場における継続的需要があり、より特に、一日に一回の製剤における活性成分等の送達が可能な薬学的生成物に対する要求がある。要求及び需要にもかかわらず、狭いあるいは制限された時間帯の吸収活性成分(薬物動態学的必要性に基づく活性成分は、通常一日に2回以上、そして複数回に至るまで投与される)を包含する一日一回の製剤の製剤設計は、現在まで薬剤作成者にとって重要な課題であり続けている。任意の製剤処方の安全性及び効果に非常に重要なことは、活性成分の治療濃度範囲内で薬学的活性剤の標的血中濃度を維持する能力である。この分野において知られているとおり、治療範囲は下端で治療効果を引き出すのに必要な薬学的活性剤の最低濃度に境界され、上端で有毒な副作用が制限となる血中濃度に境界される。特定の活性剤の吸収を低下あるいは抑制する消化管の吸収障壁は、さらに作成者を制限し、前記吸収の抑制された活性剤のより望ましい一日一回の製剤への有効な製剤設計を妨げる。一日一回の製剤を開発する際に評価しなければならないさらなる薬物動態学的パラメータは、濃度曲線下面積(AUC);得られる最高血中濃度であるCmax;血中濃度がCmaxに到達する時間として知られるTmax;及び変性放出製剤のin vivo能力を明らかにするのに有用となり得るいくつかのさらなるパラメータを含むがこれらに制限されない。前記さらなるパラメータは、部分的濃度曲線下面積、平均吸収時間、平均滞留時間、吸収定数、消失定数、及びこの分野における通常の知識を有する者に知られた他の手段あるいは評価指標である。
【0004】
従来の変性放出一日一回製剤による制限された吸収時間帯を持つ薬剤を投与する場合の重大な欠点は、一日に複数回投与される同じ制限された吸収時間帯を持つ薬剤の製剤と比べて、濃度曲線下面積(AUC)の減少を示す傾向にあることである。通常、多くの活性剤において、濃度曲線下面積の消失が前記従来の変性放出製剤の薬物動態学的側面に見ることができる。しばしばこのような濃度曲線下面積の消失から、活性剤への露出の増加から毒性が増加する可能性について十分に研究して初めてではあるが、作成者は制御された放出製剤の開発の希望を断念するか、あるいは即時放出部の投与量を増加させた製剤を再処方するか、若しくは必要とされる全体日用量を増加させるように促されるであろう。しかし、即時放出投与量の増加はしばしばより高いCmaxの原因となり、そのため望ましくない副作用の可能性の増加をもたらす。さらに、吸収時間帯の制限された薬剤が、排出半減期が短いというさらなる特徴を持つ場合には、例えより多い用量が投与されたとしても、変性放出を用いた適切な治療域の血中濃度、一日一回の処方計画を維持することは特に困難である。不適切な治療域の血中濃度は、消化管の特定のポイント後に吸収されるべき薬剤因子の制限された能力と合わせて、薬学的活性剤の急速な排除(clearance)が原因である。
【0005】
吸収時間帯の制限は、これらの化合物の有効な変性放出製剤の開発に深刻な課題をもたらす。送達が効果的な吸収をもたらすことができる時間の長さが制限された時間帯に限定されるため、変性放出製剤による前記制限された時間帯を過ぎた前記薬剤の継続的な送達は、無価値であり、生物学的利用能の消失をもたらす。
【0006】
広く知られたこれらの薬剤の吸収の悪さあるいは吸収の低下は、種々の障壁に起因するものであると考えられる。狭量のあるいは制限された吸収時間帯をもたらす障壁は、事実上生物学的あるいは物理化学的であり、溶解性の悪さ、低い透過性、及び可飽和活性吸収あるいは担体輸送等の流入機構であり得るがこれらに限定されない。
【0007】
広い範囲のpHにわたる溶解性の悪さは、吸収、及び化合物の数に対する生物学的利用能全体を抑制する別のよく知られた障壁である。さらに、溶解性が抹消消化管に見られるより高いpHで制限された場合、吸収時間帯の制限は効率的に築かれる。
【0008】
制限された吸収時間帯の深刻な結果は、吸収時間帯の外側限界、通常3から4時間あるいはそれ以下を過ぎた時間にTmaxを得ることができないことである。Tmaxは、活性剤の血流への吸収速度(率)が血流からの排出速度(率)と等しくなる時間であり、Cmaxに達する時間の印となる。したがって、活性薬剤因子の吸収時間帯が特定の時間、通常3から4時間に制限される場合には、観察される吸収時間帯外では吸収ができないかあるいは大きく減少するため、その時間を過ぎてTmaxを得ることはできない。これらの制限された吸収時間帯は、生物学的利用能と、この分野において知られた従来の変性放出製剤を用いてTmaxを延ばすことができる程度は、著しく抑えられる。
【発明の開示】
【0009】
(発明の簡単な要約)
本発明は吸収時間帯の制限された薬学的活性剤を送達するための改良された薬学的生成物及びその使用法に関し、ここで少なくとも前記薬学的生成物の一部は変性放出製剤を含む。本発明のさらなる態様にしたがって、患者が摂食している状態で患者を前記薬学的生成物で処置することで、改善が得られた。本発明のまたさらなる態様にしたがって、前記薬学的生成物は、患者が摂食している状態で前記薬学的生成物が投与あるいは摂取されるべきであるという指示を含む。本発明のまたさらなる態様にしたがって、変性放出製剤は、製剤が粒子として胃から腸に放出される形で、また薬学的活性剤の少なくとも一部が粒子から小腸に放出される形で処方される製剤である。
【0010】
本発明の変性放出製剤の態様は遅延放出製剤であり、そのためそれらからの活性剤の放出は最初、製剤が小腸に到達するまで遅延し、到達したときに活性剤の即時放出がある。代わりに又は同時に、本発明の変性放出製剤の態様は持続放出製剤であり、そのためそれらからの活性剤の放出は最初、製剤が小腸に到達するまで遅延し、到達したときに長期間にわたる活性剤の放出がある。本発明の一実施例において、前記薬学的生成物は、最低一つが前述のあるいは後述する変性放出製剤である製剤の組み合わせを含む。さらなる製剤は、即時放出製剤、遅延放出製剤及び又は持続放出製剤を含み得る。これらのさらなる製剤は、この分野において知られた用語としての制限された吸収時間帯を持つ活性剤を含み得るか、あるいは含まないかもしれない。
【0011】
変性放出製剤を含む粒子は、単一の薬学的生成物に整形することができ、例えばカプセルに整形され、あるいは錠剤に埋め込まれ、又は経口投与用の液体に懸濁され得る。変性放出製剤を含む粒子を包含することに加えて、前記単一の薬学的生成物はまた、前述のように製剤の組み合わせを含む本発明の実施例において、さらなる製剤を含み得る。又は、前記薬学的生成物の製剤がそれぞれ錠剤として製剤設計され、錠剤のそれぞれが単一の薬学的生成物を作成するためにカプセルに投入される。又は、変性放出製剤を含む粒子は、アップルソース等の食物に添加される粉状であり得る。薬学的生成物が錠剤あるいはカプセルの場合、胃で分解されるように設計され、処方される。前記薬学的生成物は、治療上有効な量の薬学的活性剤を含み、その全部あるいは一部が変性放出製剤中にあり得る。治療上有効な量は、使用する薬学的活性剤、処置する疾患あるいは感染症、及び組成物が一日に送達されるべき回数に伴って変化するであろう。一実施例において、前記薬学的生成物は細菌感染を処置するのに有効な量で宿主に投与される。
【0012】
ここで用いられるように、またこの分野において通常知られているように、“制限された吸収時間帯”を持つと表現された薬学的活性剤は、薬学的活性剤が基本的に小腸でのみ吸収されるものであることを意味する。より特に、この分野においてさらに知られているように、ほとんどの製剤が、それが錠剤、丸薬、カプセル、粒子あるいは液剤であろうと、小腸を横断するのに約3から4時間かかり(G.Chawla et al.、“胃滞留 腸内薬剤吸収の局所変動を解決するための方法(Gastroretention A Means to Address Regional Variability in Intestinal Drug Absorption)”、Pharmaceutical Technology,2003年7月)、そのため、制限された吸収時間帯を持つ薬学的活性剤は、胃からの薬学的活性剤の放出後3から4時間あるいはそれ以下の期間内にのみ吸収することができる。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、制限された吸収時間帯を持つ薬学的活性剤を用いて患者を処置するための薬学的生成物及びその使用法に向けられる。前記薬学的生成物は、即時放出部を伴うかあるいは伴わない変性放出製剤を含む経口投与ユニット(あるいは複数のユニット)と、前記経口投与ユニットが、患者が摂食している状態で患者に投与あるいは摂取されるべきであることを使用者に告げる指示を含む。前記製剤の変性放出部は、粒子として胃から腸に放出されるように設計され、またそうすることを目的としている。これらの粒子は、小腸内で制限された吸収時間帯を持つ薬学的活性剤の少なくとも一部を放出する。
【0014】
一態様において、制限された吸収時間帯を持つ薬学的活性剤の変性放出製剤を用いて患者を処置するための本発明の薬学的生成物及び方法は、制限された吸収時間帯を持つ薬剤のTmaxを増加させ、本発明の一態様にしたがった前記Tmaxの増加は、生物学的利用能の減少を伴わずに得られる。遅れたTmaxの獲得は、活性剤の血中濃度がCmaxに到達する時が、活性剤の制限された吸収時間帯の外側限界の時よりも遅い時に得られることを意味する。
【0015】
より特に、本発明は、薬学的活性剤が胃からマルチ粒子(multiparticular)型で放出される変性放出製剤中にあり、ここで薬学的活性剤の最低一部が腸に放出される場合に、主に消化管の限定された領域、好ましくは上部消化管あるいは小腸において吸収される薬学的活性剤(すなわち制限された吸収時間帯を持つ薬剤)を摂食条件で患者に投与することにより、処置された患者における薬学的活性剤の変性放出製剤の血漿分析結果(プロファイル)の改善を可能にする。
【0016】
一態様において、ここまで説明した本発明によれば、生物学的利用能の重大な消失を伴わずに、制限された吸収時間帯を持つ薬剤についてのTmaxを絶食状態における場合よりも遅い時点で得ることが可能となる。本発明によってもたらされるTmaxの遅延獲得は、他の方法によって可能なものよりもより長い期間最低治療濃度を獲得し、維持する特有の薬学的活性剤をもたらす。多くの治療の効果は、一定期間最低治療濃度(MTC)あるいはそれ以上で維持される活性剤の濃度、あるいはまた治療範囲内での濃度の維持に依存するため、本発明による活性剤濃度がMTCあるいはそれ以上である時間の延長は、効果を獲得し、維持するためにより少ない頻度の投与を必要とする。本発明の一態様にしたがって、Tmaxを延長することができ、Cmaxを増加させずに生物学的利用能を維持することができる。したがって、改善された安全性及び副作用プロファイルを提供することができる。
【0017】
本発明の一態様にしたがって、マルチ粒子型に組み込まれる薬学的活性剤及び薬学的許容担体を含む変性放出製剤を含む経口投与薬学的生成物が提供され、ここで、前記活性剤は能動輸送体の基質であり、あるいはここで前記活性剤はそうでなければ制限された吸収時間帯を示すが、能動輸送体の基質ではない。変性放出製剤は、薬学的活性剤及び薬学的許容担体のマルチ粒子組み合わせの最低一部が腸に送達される。本発明のさらなる態様において、患者が摂食している状態で、薬学的生成物が患者に投与される。
【0018】
本発明にしたがって、薬学的活性剤がマルチ粒子型で腸に送達される。一実施例において、薬学的活性剤のマルチ粒子型は、カプセル製剤として経口投与される。一実施例において、薬学的活性剤のマルチ粒子型は、急速分解錠剤、又は摂取後の分解が迅速に行われるかあるいは遅延するカプセル製剤として経口投与される。さらなる実施例において、薬学的活性剤のマルチ粒子型は、アップルソース等のように食事や液体中に振りかけることにより投与され、また懸濁液として摂取される。
【0019】
好ましい実施例において、活性剤は微粒子型である。
【0020】
通常、本発明の薬学的生成物を摂食状態で患者に投与することは、薬学的、臨床的あるいは医療的慣習において現在解釈されている投与を行うことを意味するものである。他の実施例において、本発明の薬学的生成物は、患者が食事をする前30分からした後2時間までの間に患者に投与されるものとする。また別の実施例において、本発明の薬学的生成物は、業界向けガイダンス(Guidance for industry):Food−Effect Bioavailability and Fed Bioequivalence Studies;U.S.Department of Health and Human Services、Food and Drug Administration、Center for Drug Evaluation and Research(CDER)2002年12月、これは引用例としてここに組み込まれている、に開示されるような高脂肪、高カロリー食と共に患者に投与されるものとする。
【0021】
一実施例において、薬学的活性剤は制限された吸収時間帯、通常6から8時間以内、を持つ。好ましい実施例において、薬学的活性剤は3から4時間、あるいはそれより短い吸収時間帯を持つ。より好ましい実施例において、薬学的活性剤は能動輸送体の基質であり、あるいは担体介在プロセスによって吸収される。特に好ましい実施例において、前記活性剤はPEPT1の基質である。
【0022】
一実施例において、薬学的活性剤は抗感染薬である。好ましい実施例において、薬学的活性剤は抗生物質である。より好ましい実施例において、薬学的活性剤はβラクタム系抗生物質である。特に好ましい実施例において、薬学的活性剤はアモキシシリン及び又はその薬学的に許容される塩である。他の特に好ましい実施例において、薬学的活性剤はセフォレキシン及び又はその薬学的に許容される塩である。
【0023】
一実施例において、本発明はPULSYSTM、一日一回のパルス投与を可能にする経口薬送達技術にしたがって実施され、この技術は合衆国特許第6544555 B2に開示、具体化されており、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。別の実施例において、本発明は遅延放出製剤として実施される。別の実施例において、本発明は持続放出製剤として実施される。
【0024】
一実施例において、薬学的生成物は一つ以上の薬学的活性剤及び又はアジュバントを含む。一実施例において、最低一つの薬学的活性剤が阻害剤である。一実施例において、最低一つの薬学的活性剤が抗生物質である。好ましい実施例において、最低一つの薬学的活性剤がβラクタム系抗生物質である。他の好ましい実施例において、阻害剤が存在し、前記阻害剤がβラクタマーゼ阻害剤である。より好ましい実施例において、最低一つの薬学的活性剤がアモキシシリン及び又はその薬学的に許容される塩である。
【0025】
本発明は、Tmaxを延長することにより、同じような濃度曲線下面積(絶食状態で投与される同様の処方計画のものと同様である)を維持する一方で生物学的利用能が減少してしまう先行技術の欠点を克服し、それにより薬学的活性剤が必要な治療領域内に維持される時間をより長く患者に提供する。従来の一日一回の製剤は生物学的利用能を消失する傾向があり、Tmaxを十分に延長することができない。本発明は、生物学的利用能の消失を伴わずにTmaxを十分に延長し、場合によっては生物学的利用能の増加を伴う。
【0026】
出願人は、特定の抗生物質及び治療薬、いずれかあるいは複数の上述の生物学的及び物理化学的障壁によって減少した吸収を持つことが知られる物質の生物学的利用能及び効果が、患者が摂食状態で、マルチ粒子、変性放出製剤の方法で前記治療薬が患者に投与される場合に、増強することができることを発見した。同様に、いくつかのプロドラッグ等の、腸あるいは肝臓の初回通過代謝によって活性型に変換される化合物もまた、本発明による利点であろう。
【0027】
予想外にも、飽和活性吸収あるいは流入機構を持つ化合物がマルチ粒子変性放出製剤投与から利益を得ることが発見された。これは、これらの治療薬が、腸に吸収される時間が限られている、すなわち制限された吸収時間帯、通常3から4時間あるいはそれ以下を持つためである。例えば、PEPT1腸能動輸送システムの基質として知られる多くのジペプチド及びトリペプチド模倣化合物は、3から4時間の吸収された時間帯を示す。抗生物質アモキシシリン、PEPT1腸能動輸送システムの基質は、制限された吸収時間帯を持つことが報告されている。市販用の製品であるオウグメンチンXR中のアモキシシリンについて報告されている1.5時間のTmaxによって十分に示されているように、制限された吸収時間帯は、変性放出アモキシシリン製剤の効果に重大な課題を提示する。
【0028】
前述及び後述の発明にしたがって、マルチ粒子変性放出製剤の投与のさらなる利点は、改善された安全性である。前述のように、吸収時間帯制限化合物についての従来の変性放出システムは、制限された吸収時間帯内に大部分の放出が起こるように初期段階に力を入れなければならない。そのため、24時間全体にわたる複数のIR投与と比較した場合に、望ましくない毒性副作用の原因となり得る血漿プロファイルにおける高いCmaxを引き起こす。シプロフロキサシン等の化合物は、Tmaxが延長されCmaxが減少するであろうため、本発明から恩恵を受けるであろう。シプロフロキサシンの高いCmaxが、心不全(heart failure)の原因となり得るQT延長等の深刻な副作用を引き起こすことがこの分野において知られている。マルチ粒子変性放出製剤を用いた投与により、AUCは他の従来の変性放出システムを用いた投与に対し、減少しないであろう。
【0029】
ここに開示された方法及び生成物は、従来一日一回の製剤に加えていなかった活性剤を利用した一日一回の製剤の開発を可能にするであろう。また、前記製剤は治療計画及び患者の薬剤服用順守の利益を増加させるであろう。また、明らかに種々の経口薬学的生成物の開発費を抑えるであろう。
【0030】
したがって、前述及び後述の発明は、能動輸送される薬剤の変性放出製剤、あるいは前述した吸収時間帯を示す他の製剤、及び濃度曲線下面積(AUC)で測定した生物学的利用能の深刻な消失を伴わずにTmaxを延長させるそれらの改良された送達方法についてのこの分野における必要性に取り組む。また、前述及び後述の発明は、ペニシリン、セファロポリン及びカルバペネム等のβラクタム系抗生物質及びそのサブクラスの変性放出製剤についての、また現在利用できる前記製剤の不足及び文献に開示されているようなこれらの生成に関連する問題を考慮したそれらの改良された送達方法についてのこの分野における特定の必要性に取り組む。
【0031】
前述及び後述の発明は、錠剤、カプセル、あるいはこの分野における通常の知識を有する者に知られた他の剤形等の単一ユニット服用として投与された場合に、あるいは食事に振りかける(すなわちアップルソースに振りかける)粒子や、液体懸濁液中のビーズ等のマルチ粒子型で投与された場合に、若しくはこの分野における通常の知識を有する者に知られた他の剤形で投与された場合に、効果的である。したがって本発明は、小児科あるいは高齢者の患者がしばしば経験するように、飲み込むことが困難な患者に対し、先行技術によって提供されない追加の有用性を提供する。
【0032】
本発明は、生物学的あるいは物理化学的であり得る吸収障壁、またさらに溶解性の悪さ、低い透過性、可飽和活性吸収あるいは担体輸送等の流入機構であり得るがこれらに限定されない吸収障壁といった種々の吸収障壁、若しくは狭量のあるいは制限された吸収時間帯をもたらすこの分野における通常の知識を有する者に知られた他の障壁に起因する、制限された吸収時間帯を持つことが知られた薬学的活性剤を利用する。さらに、いくつかのプロドラッグ等の腸代謝を介して活性型に変換される化合物もまた、前述及び後述の発明において有効に投与することができる。本発明は、能動輸送体の基質であること、あるいは担体介在性吸収プロセスの対象であることが知られた薬学的活性剤を利用する。本発明は、吸収時間帯を増大させることにより前記基質の全てを利用する。この分野における通常の知識を有する者は、多くの抗感染薬及び他の治療薬の範囲での利用が制限された吸収時間帯を持つと判断されたことを十分理解するであろう。好ましい実施例において、薬学的活性剤は能動輸送システムの基質である。本発明の薬学的活性剤が基質として働き得る能動輸送体の限定されない例としては、言及されたPEPT1、PEPT2、大型中性アミノ酸輸送体、有機陽イオン輸送体(有機カチオントランスポータ)、モノカルボン酸輸送体、リン酸輸送体、及びこの分野における通常の知識を有するものに知られた他の能動輸送体であり得る。本発明に好ましい薬学的活性剤は、PSPT1及びPEPT2能動輸送システムの基質である。前記薬学的活性剤の限定されない例としては、抗生物質のβラクタム系クラス、βラクタム系サブクラス、ペニシリン、セファロスポリン、及びカルバペネム及びそれらの類似体、バラシクロビル、一部のACE阻害剤、及び能動輸送システムの基質としてこの分野における通常の知識を有する者に知られる他の薬理学的活性剤であり得る。
【0033】
本発明はまた、以下の限定されない抗感染症薬類を利用することができる:フルオロキノロン類及びそれらの類似体、アミノグリコシド及びそれらの類似体、マクロライド/ケトライド及びそれらの類似体、テトラサイクリン及びそれらの類似体、オキサゾリジノン(oxazolidinones)及びそれらの類似体、及びスルホンアミド及びそれらの類似体。以下のものは本発明に有用な抗生物質のさらなる限定されない例である:セファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セファクロール、セファプロジル、セフラジン、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフロキシム、セフロキシム アキセチル、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフポドキシム プロキセチル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフメタゾール、セフォテタン、セフォキシチン、ロラカルベフ、イミペネム、エリスロマイシン(及びエストレート、エチルコハク酸、グルセプト酸、ラクトビオン酸、ステアリン酸等のエリスロマイシン塩)、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、ペニシリンV、ペニシリン塩及び複合体、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アモキシシリン、アモキシシリン及びクラブラン酸カリウム、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン インダニル ナトリウム(及びカルベニシリンの他の塩)、メズロシリン、ピペラシリン、ピペラシリン及びタキソバクタム、チカルシリン、チカルシリン及びクラブラン酸カリウム、クリンダマイシン、リンコマイシン(lincomycin)、バンコマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ノボビオシン、アミノサリチル酸、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトールHCl及び他の塩、エチオナミド、イソニアジド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、モキシフロキサシン、塩酸モキシフロキサシン(及びモキシフロキサシンの他の塩)、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン(gemifloxacin)、ゲミフロキサシン メシラート(及びゲミフロキサシンの他の塩)、スルファシチン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメチキソール、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、スルファピリジン、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、リネゾリド、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリン、ミノサイクリン、デメクロサイクリン、クロルテトラサイクリン、メトロニダゾール、メテナミン、ホスホマイシン、ニトロフラントイン、トリメトプリム、クロファジミン、トリモキサゾール、ペンタミジン、チゲサイクリン、及びトリメトレキサート。
【0034】
本発明はまた、以下の限定されない抗ウイルス剤のプロテアーゼ阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(RTI)類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤の非ヌクレオチドRTI類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のヌクレオチドRTI類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のウイルス細胞阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のウイルスインテグラーゼ阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のウイルス/細胞融合及び細胞侵入の阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のDNAポリメラーゼ阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のDNA合成阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤の免疫賦活剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のウイルス核酸放出阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のノイラミニダーゼ阻害剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のヌクレオシド類似体抗ウイルス剤類及びそれらの類似体、抗ウイルス剤のヒト化モノクローナル抗体類及びそれらの類似体、ネオマイシン、アシクロビル、ガンシクロビル(gancyclovir)、シドフォビル(cydofovir)、アンプレナビル、ホスアンプレナビル(fosanprenavir)、アタナザビル、サクイナビル、インディナビル、ネルフィナビル、アバカビル、リトナビル、ロピナビル(lopinavir)、ファムシクロビル(famciclovir)、アデフォビル(adefovir)、エムトリシタビン(emtricitabine)、エファビレンツ(efavirenz)、デラビルジン、ネビラピン(nevirapine)、テノホビル、フマル酸テノホビルジソプロキシル、オセルタミビル、ザナマビル(zanamavir)、ディタノシン、ホスカネット、ジドブジン、ラミブジン、スタブジン、ヒドロキシクレア、エンフュービルタイド(enfuvirtide)、T−20、T−1249、PRO−542、SCH−351125、S−1360、インターフェロン、インターフェロン−α2b、インターフェロン−α2a、インターフェロン−アルファコン(alfacon)−1、フルマンチジン(flumantidine)、アマンチジン(amantidine)、リバビリン、リバビリン及びインターフェロン−α2b、パリビズマブ(palivizumab)、抗真菌剤のアゾール類、アゾールサブクラス、イミダゾール、トリアゾール、及びそれらの類似体、抗真菌剤のアリラミン類及びそれらの類似体、抗真菌剤のポリエン類及びそれらの類似体、抗真菌剤のエチノカンジン(echinocandin)類及びそれらの類似体、イトラコナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、ブトコナゾール、エコノゾール(econozole)、スルコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、ビフォナゾール(bifonazole)、クロコナゾール(croconazole)、フェンチコナゾール(fenticonazole)、イソコナゾール、オモコナゾール(omoconazole)、テルコナゾール(terconazole)、ビブナゾール(vibunazole)、ナフチフィン、ブテナフィン(butenafine)、ナイスタチン、ナタマイシン、トルナフテート、ハロプロジン、ウンデシレン酸、クロロキシレノール(chloroxylenol)、シクロピロックス、石炭酸フクシン、クリオキノール、メチルロザニリン、硫化セレン、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール(voriconazole)、ポサコナゾール(posaconazole)、カスポファンギン(caspofungin)、アニデュロファンギン(anidulofungin)、ミカファンギン(micafungin)、テルビナフィン、アンフォテリシン、フルシトシン、グリセオフルビン、エピラゾリド(epirazolide)を利用することができる。
【0035】
本発明はまた、pH溶解プロファイルを示し、そのためpHの上昇とともに溶解度が減少する薬学的活性剤を利用する。あるいは低い溶解度又は低溶解速度に起因した吸収時間帯を持つ薬学的活性剤を利用する。これらの薬剤の吸収時間帯は、効果的に制御された放出システムの開発を可能にするために、最終的には十分に延長することができる。前記化合物の限定されない例は、クラリスロマイシン、シプロフロキサシン、ケトコナゾール、アトバクオン、及びこの分野における通常の知識を有するものに知られた他のBCS類IIあるいはIV化合物である。
【0036】
低い透過性あるいは他の可飽和吸収プロセス等の透過性限界に起因した制限された吸収時間帯を示す薬学的活性剤は、本発明による利点であろう。本発明は、Tmaxの獲得を遅延させることにより、これらの化合物を効果的に制御された放出送達システムに発展させる方法を提供する。in vivoで高度に帯電し、そのため主に傍細胞経路で吸収される活性剤は、本発明に特に適している。前記活性剤の限定されない例は、第四アンモニウム化合物、ネオマイシン、アシクロビル、ガンシクロビル、イトラコナゾール、エピラゾリド、ドキシサイクリン、及びこの分野における通常の知識を有するものに知られた他のBCS類IIIあるいはIV化合物である。
【0037】
アモキシシリンは、3から4時間あるいはそれ以下の吸収時間帯を持つことが知られており、またさらに小腸におけるPEPT1能動輸送システムの基質であることが知られている。予想外にも、本発明が、絶食状態でアモキシシリンの製剤を投与する場合と比較して、変性放出製剤が摂食状態で投与された場合に、アモキシシリンのAUCの増加をもたらすことが分かった。本発明は、絶食状態で大よそ3時間から、摂食状態における6時間よりも大きく倍加させ、また一方で絶食状態を超えてAUCを増加させる;以下の実施例1における薬物動態パラメータの表を参照。したがって、本発明は、AUCの増加により示されるように、アモキシシリンの生物学的利用能を改善する。通常、Tmaxの実質的な(相当の)増加は生物学的利用能の減少(AUCの減少)につながり、そのため一層本発明の発見は予想外であった。
【0038】
変性放出製剤の変性放出態様は、pH依存性あるいは非pH依存性の塗膜の使用により達成することができる。適切な非pH感受性遅延放出物質としては、4000ダルトン以上の分子量を持つポリエチレングリコール(PEG)(カルボワックス(Carbowax)、ポリオックス)、白ろうあるいは蜜ろう等のワックス、パラフィン、アクリン酸誘導体(オイドラギットRLあるいはRS)、酢酸セルロース、及びエチルセルロースがあり得る。適切なpH感受性(腸溶性)遅延放出物質としては、酢酸フタル酸セルロース、オイドラギットLあるいはS、及びセルロース誘導体の他のフタル酸塩及び酢酸コハク酸塩があり得る。変性放出製剤の変性放出態様はまた、持続放出塗膜あるいはマトリクス製剤の使用により達成することができる。適切な持続放出物質としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、オイドラギットRS及びオイドラギットRL、カルボポール、あるいは8000ダルトン以上の分子量を持つポリエチレングリコールがあり得る。
【0039】
前述及び後述のとおり、本発明の実施例は、変性放出製剤に加えて製剤を含み得る。これらのさらなる製剤は、即時放出製剤であり、そのため薬学的活性剤あるいはそれらのアジュバントの放出の開始は、薬学的生成物の投与後実質的に遅延しない。適切な即時放出物質としては、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose)、コーンスターチ、アルファ化デンプン、ジャガイモデンプン、米デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、キトサン、ヒドロキシキトサン、ヒドロキシメチル化キトサン、交差結合(cross−linked)キトサン、交差結合ヒドロキシメチルキトサン、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、マルトース、フルクトース、グルコース、果糖、スクロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、低分子量PEGs(PEG2000−8000)等のポリエチレングリコール、及び塩化ナトリウム、硫酸カルシウム等の可溶性及び不溶性無機塩、及びクエン酸及びクエン酸ナトリウム等の有機酸及びその塩があり得る。
【0040】
前述及び後述のとおり、本発明の実施例は、変性放出製剤に加えて製剤を含み得る。これらのさらなる製剤は、遅延放出製剤であり、そのため薬学的活性剤あるいはそれらのアジュバントの放出の開始は、薬学的生成物の投与後実質的に遅延する。前記遅延放出は、pH依存性あるいは非pH依存性の塗膜の使用により達成することができる。適切な非pH感受性遅延放出物質としては、4000ダルトン以上の分子量を持つポリエチレングリコール(PEG)(カルボワックス、ポリオックス)、白ろうあるいは蜜ろう等のワックス、パラフィン、アクリン酸誘導体(オイドラギットRLあるいはRS)、酢酸セルロース、及びエチルセルロースがあり得る。適切なpH感受性(腸溶性)遅延放出物質としては、酢酸フタル酸セルロース、オイドラギットLあるいはS、及びセルロース誘導体の他のフタル酸塩があり得る。
【0041】
前述及び後述のとおり、本発明の実施例は、変性放出製剤に加えて製剤を含み得る。これらのさらなる製剤は持続(延長)放出製剤であり、そのため薬学的活性剤あるいはそれらのアジュバントの放出の開始は、薬学的生成物の投与後即時であり得るか、あるいは実質的遅延し得る。しかしながらここで、必然的に延長された期間全体で薬学的活性剤あるいはそれらのアジュバントの放出がある。適切な持続放出物質としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、オイドラギットRS、及びオイドラギットRL、カルボポール、あるいは8000ダルトン以上の分子量を持つポリエチレングリコールがあり得る。
【0042】
さらに、摂取あるいは投与後の薬剤の分解、あるいは成分の崩壊を補助するためにこのシステムに他の成分を用いることは有用であり得る。これらの成分は、ラウリル硫酸ナトリウム、モノグリセリン酸ナトリウム、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、モノ酪酸グリセリン、界面活性剤のプルロニック系(Pluronic line)等の非イオン界面活性剤の一つ、あるいは界面活性特性を持つ他の物質、若しくは上記のものの任意の組合せ等の界面活性剤であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明はさらに、以下の実施例に関して開示されるが、しかしながら、本発明の範囲はこれらによって限定されない。
【実施例1】
【0044】
臨床研究で、摂食及び絶食状態におけるアモキシシリンの二つの遅延放出マルチ粒子組成物(処方B及び処方A)の250mgの投与を比較した。この研究はTmaxの延長をもたらす一方で、摂食状態において、予想外のAUCの増加及びそれにしたがった生物学的利用能の増加を明らかにした。現在の科学文献はアモキシシリンのごくわずかなあるいは負の食物効果を報告しているため、吸収の増加は特に予想外であった。前記製剤は、遅延放出をもたらすためのpH依存性塗膜を伴うペレット(pellet)化した製剤より構成されていた。各製剤の製造手順は以下に開示される。
【0045】
処方B及びAペレットは、最初に中核(core)ペレット包含アモキシシリン三水和物を作成することにより製造される。中核ペレットは、最初にアモキシシリン三水和物粉末77%、アビセルPH101 6%、Ac−di−sol4%より成る粉末混合物を適切なプラネタリーあるいは高剪断ミキサー中で混合し、続いて20%の結合溶液を包含する湿塊を作成するために、PVP−K30 4%、N−メチル−2−ピロリドン3%、カプリロカプロイル マクロゴールグリセリド(caprylocaproyl Macrogolglycerides)タイプ40 6%より成る結合溶液を適量の注射用蒸留水と共に徐々に添加することにより湿塊を形成して、湿粉末塊を作成することにより作られる。続いて0.6mmのふるいを通して湿塊を押し出す。その後押し出し物が、ほぼ円形のペレットが得られるまで球形化される。続いてペレットを、生成物温度が42℃に到達するまで、吸気温度60℃の流動床乾燥機中で乾燥させる。続いて乾燥したペレットを20メッシュ及び40メッシュふるいを通してふるいにかけ、40メッシュふるい上に残ったペレットをさらなる処理のために回収する。
【0046】
続いて前述の中核ペレットに機能性フィルムコーティングを塗布することにより、処方Bペレットが作成される。処方Bフィルムコーティングは、水88.75%、Aqoat HF6.75%、タルク2%、クエン酸トリエチル2.3%、及びラウリル硫酸ナトリウム0.2%より成る分散剤を作成することにより製造される。分散剤は、溶解するまで水にTEC及びSLSを添加することにより調製される。その後、Aquot HFを添加し、30分間混合する。次に、タルクを添加し、分散剤をペレットへの吹き付け前に一時間混合する。ウルスターカラム(wurster column)を備えた流動床中で、吸気温度70℃、噴霧空気圧2バールで分散剤をペレットに塗布した。分散剤は、生成物温度である大よそ40℃を維持するのに十分な速度で塗布する。前述の実施例においては、コーティング分散剤の40%の重量増加が中核ペレットに加えられる。続いてこれらのペレットをさらに2%重量増加のオパドライ クリア(Opadry clear)YS−1−7006より成るトップコートで塗装する。コーティングの終了後、ペレットをふるいにかけ、20から40メッシュの画分を回収する。最後にペレットをアモキシシリンの総量125mgとなるようにサイズ0硬ゼラチンカプセルに封入する。
【0047】
処方Aペレットは、前述の中核ペレットに異なる機能性フィルムコーティングを塗布することにより作成される。処方Aフィルムコーティングは、水74%、オイドラギットS100 12%、1N水酸化アンモニウム6%、クエン酸トリエチル6%及びタルク2%を包含する。分散剤は、最初にオイドラギットS100を水に添加し、最低5分間混合することで調製する。次に、ポリマーを中和するために1N水酸化アンモニウムを添加し、15分間混合する。続いてクエン酸トリエチル添加し30分間混合する。そして最後にタルクを添加し10分間混合する。その後ウルスターカラムを備えた流動床中で、吸気温度55℃、噴霧空気圧1.8バールで分散剤をペレットに塗布する。噴霧速度を32℃±5℃の生成物温度に維持するように調節する。総量40%の重量増加が中核ペレットに加えられる。そして20から40メッシュの画分を得るためにふるいにかける。この画分をその後、アモキシシリンの総量125mgとなるようにサイズ0硬ゼラチンカプセルに封入する。
【0048】
食物と併せた製剤の投与は、予想外のTmaxの延長と、さらに予想外のAUC(生物学的利用能)の増加を引き起こした。表1の平均薬物動態パラメータ及び以下の図1の平均血漿プロファイルのグラフに示されるとおり、両製剤(処方B及び処方A)について摂食状態における6時間以上のTmaxの延長からも明らかなように、本発明は吸収時間帯の延長を可能にした。
【0049】
【表1】

【0050】
さらに、製薬産業において通常用いられる薬物動態モデル化ツールであるGastro Plusを用いた上記データのモデル化の結果として、摂食状態の吸収時間が絶食状態の場合よりも極めて長かった。最適なデータが得られた絶食状態吸収時間は3.3時間か、あるいは観察された両製剤の絶食状態のTmaxよりもわずかに大きいものであった。また、最適なデータが得られたモデルの摂食状態吸収時間は、6.5時間であった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】平均血漿プロファイルを示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の処置方法であって、摂食状態の患者を薬学的生成物で処置することを含み、前記薬学的生成物が、薬学的活性剤を包含する変性放出製剤を含み、前記薬学的活性剤が、制限された吸収時間帯を持ち、前記変性放出製剤が、粒子として胃から腸に放出される製剤であり、前記粒子が、小腸に最低でも前記薬学的活性剤の一部を放出することを特徴とする処置方法。
【請求項2】
請求項1に記載の処置方法において、前記活性剤が、6から8時間あるいはそれ以下の制限された吸収時間帯を示すことを特徴とする処置方法。
【請求項3】
請求項1に記載の処置方法において、前記活性剤が、2から3時間あるいはそれ以下の制限された吸収時間帯を示すことを特徴とする処置方法。
【請求項4】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的生成物が、カプセルの形状であることを特徴とする処置方法。
【請求項5】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的生成物が、懸濁液の形状であることを特徴とする処置方法。
【請求項6】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的生成物が、粉状薬学的生成物の形状であることを特徴とする処置方法。
【請求項7】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的生成物が、急速分解錠剤であることを特徴とする処置方法。
【請求項8】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的生成物が、遅発性分解錠剤であることを特徴とする処置方法。
【請求項9】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的活性剤が、アモキシシリンであることを特徴とする処置方法。
【請求項10】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的活性剤が、シプロフロキサシンであることを特徴とする処置方法。
【請求項11】
請求項1に記載の処置方法において、前記薬学的活性剤が、セファレキシンであることを特徴とする処置方法。
【請求項12】
請求項1に記載の処置方法において、前記摂食状態の患者を薬学的生成物で処置することが、前記患者の一日一回の処置であることを特徴とする処置方法。
【請求項13】
患者の処置用生成物であって、(a)薬学的活性剤を包含する変性放出製剤を含む薬学的生成物を含み、前記薬学的活性剤が、制限された吸収時間帯を持ち、前記変性放出製剤が、粒子として胃から腸に放出される製剤であり、前記粒子が、小腸に最低でも前記薬学的活性剤の一部を放出することを含み、また(b)前記薬学的生成物が、前記患者が摂食している状態で前記患者に投与されるべきであることを示す指示を含むことを特徴とする生成物。
【請求項14】
請求項13に記載の生成物において、前記活性剤が、6から8時間あるいはそれ以下の制限された吸収時間帯を示すことを特徴とする生成物。
【請求項15】
請求項13に記載の生成物において、前記活性剤が、2から3時間あるいはそれ以下の制限された吸収時間帯を示すことを特徴とする生成物。
【請求項16】
請求項13に記載の生成物において、前記薬学的生成物が、カプセルの形状であることを特徴とする生成物。
【請求項17】
請求項13に記載の生成物において、前記薬学的生成物が、懸濁液の形状であることを特徴とする生成物。
【請求項18】
請求項13に記載の生成物において、前記薬学的生成物が、粉状薬学的生成物の形状であることを特徴とする生成物。
【請求項19】
請求項13に記載の生成物において、前記薬学的生成物が、急速分解錠剤であることを特徴とする生成物。
【請求項20】
請求項13に記載の生成物において、前記薬学的生成物が、遅発性分解錠剤であることを特徴とする生成物。
【請求項21】
請求項13に記載の生成物において、前記活性剤が、アモキシシリンであることを特徴とする生成物。
【請求項22】
請求項13に記載の生成物において、前記活性剤が、シプロフロキサシンであることを特徴とする生成物。
【請求項23】
請求項13に記載の生成物において、前記活性剤が、セファレキシンであることを特徴とする生成物。
【請求項24】
請求項13に記載の生成物において、前記薬学的生成物が、一日一回の薬学的生成物であることを特徴とする生成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517039(P2007−517039A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547321(P2006−547321)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/043158
【国際公開番号】WO2005/062898
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(503139061)アドバンシス ファーマスーティカル コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】