説明

変性植物油潤滑剤

再生可能な供給材料に基づく潤滑剤、及びそれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動物性又は植物性の油又は脂肪のような再生可能な供給材料から誘導される潤滑剤は、外国の油に対する米国の依存度の減少を助けるために望ましい。植物性及び動物性の油及び脂肪のような再生可能な源をベースとする潤滑油は数多くの有利性を有する。
【背景技術】
【0002】
植物性及び動物性の油又は脂肪は、エステルカルボニル基を有するトリグリセリドを含む。これらのエステルカルボニル基の極性によって、非常に薄い膜としての金属面上への強い吸着作用が導かれるので、トリグリセリドベースの潤滑剤の膜形成特性は油圧系統において特に有利である。植物油及び動物油は通常高い粘度指数を有しており、このため広い温度範囲にわたるそれらの使用が容易になる。更に、これらは、通常、高い発煙点(例えば約200℃)及び高い引火点(例えば約300℃)を有している。
【0003】
更に、植物性及び動物性の油及び脂肪ベースの潤滑剤は、化石由来の炭化水素の枯渇の低減を助ける。更に、植物油ベースの潤滑剤は通常は生物分解性であり、これにより廃潤滑剤の環境中への導入の減少が促進される。現時点においては、世界中で用いられる無機潤滑剤の約50%が埋め立てなどによって処理されている。
【0004】
しかしながら、植物油(即ち大豆油及び他の植物油)又は動物源から誘導される油又は脂肪(例えばメンヘーデン、ラード、バター脂肪、及び他の動物由来の油)のような再生可能な供給材料からの油を潤滑剤として用いることには、(1)低い酸化安定性;(2)比較的低い粘度;及び(3)比較的高い流動点(それ以下ではもはや流動しない温度)によって示される低い運転温度において固化する傾向;などの主要な問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、所望の特性を与えるように変性することができる再生可能な供給材料をベースとする潤滑剤に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は潤滑剤の製造方法である。本方法は、(a)変性バイオ油の水素化エポキシ化脂肪酸を、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物とエステル化してモノエステルを形成するか;又は(b)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をカルボン酸無水物とエステル化してジエステルを形成するか;又は(c)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をカルボン酸と反応させてβ−エステルアルコールを形成し、β−エステルアルコールを、第2のカルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物と反応させてジエステルを形成するか;又は(d)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をジオールに加水分解し、ジオールを、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物と反応させてジエステルを形成する;ことによって変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルを形成することを含み;変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルは、2−ブタノール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−(トリメチロール)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン、又はネオペンチルグリコールでエステル化されており;変性バイオ油は、高オレイン組成、中オレイン組成、90%オレイン組成、高リノール組成、又は低飽和度の組成を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、植物性又は動物性の油又は脂肪のジエステルを製造するための2種類の一般的な経路を示す。図は、具体的には、エポキシド付加反応による大豆油からのエポキシ化大豆油を経由する大豆油ジエステルの製造を示す。
【図2】図2は、植物性又は動物性の油又は脂肪のモノエステルを製造するための一般的な経路を示す。図は、具体的には、水素化及びアシル化反応による大豆油のエポキシ化大豆油を経由する大豆油モノエステルの製造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
骨格変性モノエステル又はジエステルは、C〜C18カルボン酸から選択される酸基を含んでいてよい。酸基としては、酢酸、プロパン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、又はこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0009】
反応は触媒の存在下で行うことができる。変性バイオ油の水素化エポキシ化脂肪酸とカルボン酸とのエステル化のために好適な触媒は、スズ塩、次亜リン酸ナトリウムのような次亜リン酸塩、又は硫酸のような酸であり、一方、酸無水物及び酸塩化物と共に用いるためにはピリジン又は4−ジメチルアミノピリジンが好適である。エポキシ化脂肪酸の水素化のために好適な触媒は、炭素上に堆積させたパラジウムのような遷移金属である。変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸を酸無水物と反応させるために好適な触媒は、金属炭酸塩(カルボン酸と共に用いるか又はカルボン酸なしで用いる)、又はトリエチルアミンのような第3級アミンである。変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をカルボン酸と反応させてβ−エステルアルコールを形成するために好適な触媒は、第4級塩及びイミダゾールである。β−エステルアルコールを第2のカルボン酸と反応させるために好適な触媒は、スズ塩、次亜リン酸ナトリウムのような次亜リン酸塩、又は硫酸のような酸であり、一方、酸無水物又は酸塩化物と共に用いてジエステルを形成するためにはピリジン又は4−ジメチルアミノピリジンが好適である。変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をジオールに加水分解するために好適な触媒は第2銅塩である。ジオールをカルボン酸と反応させるために好適な触媒は、スズ塩、次亜リン酸ナトリウムのような次亜リン酸塩、又は硫酸のような酸であり、一方、酸無水物又は酸塩化物と反応させてジエステルを形成するためにはピリジン又は4−ジメチルアミノピリジンが好適である。
【0010】
所望の場合には、1以上の機能性成分をモノエステル又はジエステルに加えることができる。好適な機能性成分としては、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、ベースストック、希釈剤、極圧添加剤、及び酸化防止剤が挙げられる。
【0011】
モノエステル及びジエステルは複数のカルボン酸の混合物を用いて製造することができる。変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をカルボン酸と反応させてβ−エステルアルコールを形成し、β−エステルアルコールを第2のカルボン酸と反応させる場合には、カルボン酸は同一であっても異なっていてもよい。
【0012】
本発明の他の形態は潤滑剤組成物である。本潤滑剤組成物は、(a)変性バイオ油の水素化エポキシ化脂肪酸と、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物との反応によるモノエステル生成物;又は(b)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸とカルボン酸無水物との反応によるジエステル生成物;又は(c)エポキシ化脂肪酸と第1のカルボン酸との反応生成物であるβ−エステルアルコールと、第2のカルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物との反応によるジエステル生成物;又は(d)エポキシ化脂肪酸の加水分解生成物であるジオールと、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物との反応によるジエステル生成物;である1種類以上の変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルの混合物を含み;変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルは、2−ブタノール、1,2−プロピレングリコール、又は2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−(トリメチロール)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン、又はネオペンチルグリコールでエステル化されており;変性バイオ油は、高オレイン組成、中オレイン組成、90%オレイン組成、高リノール組成、又は低飽和度の組成を有する。
【0013】
潤滑剤組成物は、加える流動点降下剤の不存在下で約−10℃未満、又は−15℃未満、又は−20℃未満、又は−25℃未満、又は−30℃未満、又は−35℃未満の流動点を有していてよい。
【0014】
本発明の他の形態は、下記に示す式:
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
を有する1種類以上の変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステル(オレイン酸及びリノール酸から誘導される)の混合物を含み;変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルは、2−ブタノール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−(トリメチロール)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン、又はネオペンチルグリコールでエステル化されており;変性バイオ油は、高オレイン組成、中オレイン組成、90%オレイン組成、高リノール組成、又は低飽和度の組成を有し;上式において、R’及びRは、C〜C17の範囲のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環式基、及びこれらの混合物を含み、同じ分子内の異なる鎖長の異なるアルキル基の組合せを含み、それぞれのR’は同一であっても異なっていてもよく、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい潤滑剤組成物である。
【0020】
油及び脂肪という用語は、ここでは互換的に使用される関連する用語である。油という用語を用いる場合には、これは脂肪も含み、逆も成立する。また、油及び脂肪は、植物又は動物のいずれか、或いはこれらの組合せから誘導することができる。
【0021】
典型的な再生可能な供給材料油は大豆油によって代表される。大豆油は、容易に入手でき、比較的低コストであるので望ましい油である。議論を容易にするために、本明細書においては大豆油という用語を用いる。しかしながら、本発明は大豆油に限定されるものではなく、任意の植物性又は動物性の油又は脂肪を包含することを理解すべきである。
【0022】
大豆油などの個々の植物油は、トリグリセリド構造の中にランダムに分配されている特徴的な量の個々の脂肪酸を含むトリグリセリドである。代表的な大豆油組成物は、以下の脂肪酸組成(全てのパーセントは重量%である):リノール酸(二重不飽和)=54%;オレイン酸(モノ不飽和)=23%;リノレン酸(三重不飽和)=8%;パルミチン酸=11%及びステアリン酸=4%(いずれも飽和);を有する。
【0023】
「植物性及び動物性の油及び脂肪から誘導される潤滑剤」と題された2005年8月10日出願のWO−2006/020716(2004年8月10日出願の米国仮出願60/600,346の利益を主張)(参照として本明細書中に包含する)に記載されているように、トリグリセリド構造を変性して油の酸化安定性を向上させることができる。
【0024】
動物性及び植物性油の酸化不安定性は、それらの多数の二重結合(例えば、大豆油は大豆トリグリセリド分子あたり約4.7の二重結合を有する)に隣接する活性メチレン基における酸素の攻撃に起因する。リノール酸及びリノレン酸において見られる2つの二重結合に隣接するメチレン基は特に攻撃されやすい。これらの油を潤滑剤として改良する1つのアプローチは、大量の種々の酸化防止剤を加えてそれらの酸化不安定性を克服することである。他方において、水素化のようなプロセスによって油中のこれらの二重結合を変性又は除去することによってそれらの酸化安定性が大きく向上するが、流動点の望ましくない非常に大きな上昇も導かれる。
【0025】
動物性及び植物性油並びにそれらの誘導体中の二重結合を、それらの流動点及び粘度プロファイルを保持し、幾つかの場合においてはそれを向上させながらそれらの酸化安定性を大きく増加させるように変性する。したがって、図1及び2に示す方法によって数多くの構造的に異なる潤滑剤試料を製造した。これらの図において、「分子の残部」とは、リノール酸、オレイン酸、リノレン酸、及び他の脂肪酸のような種々の脂肪酸を通常含む大豆油中の一般的なトリグリセリドの残部を指す。トリグリセリド中の不飽和脂肪酸は、通常はジエステル又はモノエステル誘導体に転化される。加水分解及び熱攻撃を克服する方法は、立体障害エステル基を変性トリグリセリド中に含ませることである。立体障害エステル基の代表例としては、イソブチレート及び2−エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0026】
リノール酸及びリノレン酸のようなトリグリセリド脂肪酸中のオレイン基及び特に二重アリルメチレン基のようなトリグリセリド脂肪酸中のアリルメチレン基は酸化を受けやすいが、この傾向は、トリグリセリド不飽和脂肪酸の二重結合の実質的に全部に2つのエステル基を付加する(ジエステルを形成する)か、又はエステル及び水素原子を付加する(モノエステルを形成する)ことのいずれかによって克服される。かかるエステル基の特定配向は、元々は脂肪酸二重結合の一部であった炭素原子に酸素原子を直接付加し、かかる酸素原子にカルボニル基を付加するようなものである。向上した酸化安定性を有するのに加えて、これらの誘導体の幾つかは、低下した流動点、流動点降下剤に対する増加した応答性、及び増加した(又は減少度合いが最小の)粘度指数を有利に有することを特徴とする可能性がある。
【0027】
ここで図1を参照すると、この図は本発明の一態様を示しており、図においては(リノール酸が大豆油トリグリセリド中の主たる脂肪酸であるので)エポキシ化大豆油をエポキシ化リノール脂肪酸腕によって示している。これらのトリグリセリド中の他のエポキシド構造は、オレイン酸及びリノレン酸から誘導することができる。
【0028】
図1を参照すると、反応Aにおいては、要約すると、エポキシ化大豆油、酸無水物{(RCO)O}、トリエチルアミンのような第3級アミン、及びジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)を、オートクレーブ内で通常は15〜20時間加熱して大豆油ジエステルを得る。エポキシ化プロピレングリコールジ大豆油酸エステル、エポキシ化メチル大豆油酸エステル、又は他のエポキシ化脂肪酸エステルのために同じ反応が有効である。図1の反応Bにおいては、要約すると、エポキシ化大豆油、酸無水物−{(RCO)O}−、及び無水炭酸カリウムを、プロトン核磁気共鳴分光法によって示されるように全てのエポキシド官能基が消費されるまで約210℃以下の温度において加熱する。幾つかの場合においては、激しい発泡の停止によってこの反応が完了またはほぼ完了状態であることが示される。この反応は、R基の寸法が大きくなった場合に適用できると考えられる。反応A及びBはいずれも、RがC〜C17の範囲である大豆油ジエステルを製造するのに用いた。エポキシ化プロピレングリコールジ大豆油酸エステル又はエポキシ化メチル大豆油酸エステル、或いは他のエポキシ化脂肪酸エステルのために同じ反応が有効である。
【0029】
図2に示す一般的なアプローチは、Pd(C)、Pd(Al)、ラネーニッケル、又は他の水素化触媒の存在下での通常は水素によるエポキシ化大豆油の初めの還元を包含する。次に、ヒドロキシル化腕のアセチル化によって水素化材料を反応させる。図2に示すように、水素化エポキシ化大豆油は、通常は、ピリジンのようなアシル化触媒、或いはトリエチルアミンのような塩化水素トラップの存在下で、酸無水物{(R’CO)O}又は酸塩化物(R’COCl)のようなアシル化剤と反応させて最終生成物を得る。エポキシ化プロピレングリコールジ大豆油酸エステル、エポキシ化メチル大豆油酸エステル、又は他のエポキシ化脂肪酸エステルのために同じ反応シーケンスが有効である。
【0030】
図2において「他の位置異性体」という用語は、水素原子及びエステル基を互いに対して配向することから得られる類縁構造体を指す。言い換えれば、エステル基及び水素原子のそれぞれの対は図2に示す配向を有することができ、或いはいずれか又は両方を互いに交換することができる。
【0031】
WO−2006/020716においては、大豆油を反応させてモノエステル又はジエステルを形成している。しかしながら、これらの材料の粘度はグリース用及び岩石掘削流体用のベースストックとしては適用可能であったが、粘度は一般に、エンジンオイル及び油圧流体のような他の高容量潤滑剤用途において用いるためには高すぎた。
【0032】
大豆油から製造される潤滑剤の特性を変化させる1つの方法は、油の脂肪酸組成を変化させることである。大豆油は、大豆植物の育種又は遺伝子工学によって好都合に変性することができる。或いは、異なる油及び/又は脂肪酸をブレンドして、油中の脂肪酸の所望の量を得ることができる。
【0033】
本発明者らは、異なる脂肪酸の量を変化させることによって、油の特性を有益に変化させることができることを見出した。本発明者らは、飽和酸(例えばパルミチン酸及び/又はステアリン酸)の量を低下させると油の流動点が低下することを発見した。また、リノール酸及び/又はリノレン酸の量を増加させると、油の粘度が増加し、油の流動点が上昇する可能性がある。逆に、オレイン酸の量を増加させると、油の粘度が減少し、油の流動点が概して低下する。
【0034】
最近の研究によって、育種及び遺伝子操作によってパーム油の脂肪酸組成を変化させて50〜85%の範囲のオレイン酸の高いレベルを得ることができることが示されている。高いオレイン酸、並びに非常に低いリノール及びリノレン脂肪酸の含量を有するパーム油は、ここで記載する変性のための理想的な候補物質である。
【0035】
表1に、一定範囲の個々の脂肪酸組成を有する種々の大豆ベースのオイルの脂肪酸組成を示す。低飽和度及び高リノールの両方が標準の飽和度よりも低い飽和脂肪酸レベルを有し、これらの変化は主として増加したリノール含量とバランスが取れていることが分かる。高リノール大豆油中のリノール含量は55〜65%の範囲であり、低飽和度及び高リノールの大豆油中の飽和脂肪酸含量は4〜12%の範囲である。中オレイン、高オレイン、及び90%オレインは増加した量のオレイン酸を含み、これらの変化は主としてリノール酸及びリノレン酸の両方の減少とバランスが取れている。低飽和度大豆油中のオレイン含量は、標準の飽和度の大豆油中のものとほぼ同等である。中オレイン酸大豆油中のオレイン含量は40〜70%の範囲であり、高オレイン大豆油中のオレイン含量は70〜85%の範囲であり、90%オレイン酸中のオレイン含量は85〜95%の範囲である。
【0036】
本発明の種々の態様は、大豆油を、許容しうる流動点も有するか、或いは適当な流動点降下剤を加えることによって流動点の低下を受けやすい酸化安定性の油に転化させることに関する。一般的なアプローチは、大豆油トリグリセリド脂肪酸の二重結合、及び他のポリオール又はモノオールとエステル化している大豆油誘導脂肪酸の二重結合に対してエステル官能基を付加して、元のアリル及び二重アリルメチレン基の酸化安定性を大きく向上させることを含む。この効果を達成するために、下記(リノール酸及びオレイン酸から誘導される構造を示すが、リノレン酸から誘導される類似の構造を包含すると理解される)に示すように、全ての二重結合に対して1つのエステル基及び1つの水素を付加する(骨格モノエステル)化学物質、並びに全ての二重結合に対して2つのエステル基を付加する(骨格ジエステル)化学物質を用いる。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
モノエステル及びジエステルの両方における骨格に沿ったエステル基によって、これらの材料が対応する脂肪酸誘導体よりも金属表面に対するより強い結合及びより高い潤滑性を示すようになると考えられる。
【0042】
大豆油の骨格変性「モノエステル」、並びにポリオール及びモノオールの骨格変性脂肪酸エステルは、対応するエポキシ化誘導体を水素化し、次にカルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物とアシル化反応させることによって製造した。対応する骨格変性「ジエステル」は、3種類の一般的方法によって製造することができる。1つは、重炭酸カリウムのような塩基性塩又は第3級アミンのいずれかの存在下で対応するエポキシ化誘導体をカルボン酸無水物でアシル化することを含む。他のものは、エポキシ化誘導体を反応させてβ−エステルアルコールを形成し、次にこれを第2のカルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物とエステル化することを含む。更に他のものは、エポキシ化誘導体を加水分解してβ−ジアルコールを形成し、次にこれをカルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物とエステル化することを含む。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は本発明を例示することを意図するものであり、いかなるようにも本発明の範囲を限定することを意図しない。
実施例1:
本実施例は、オレフィン系脂肪酸又は脂肪酸エステルをエポキシ化するための代表的な手順を示す。
【0044】
150.10gの中オレイン大豆油を、9.69gのギ酸の存在下で52gの50%過酸化水素と反応させた。エポキシ化を55℃において4時間行った。混合物を600mLのジエチルエーテル中に溶解し、分液漏斗内で150mLの飽和重炭酸ナトリウムを用いて分配し、次に150mLの水で2回洗浄した。次に、硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥し、濾過した。得られた溶液をまずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて、30℃及び0.20Torrにおいて全ての残りの溶媒を真空留去した。最終油生成物(155.93g)は、H−NMRによって分析してエポキシ化中オレイン大豆油であることが示された。
【0045】
実施例2:
本実施例は、脂肪酸のエステル化のための代表的な手順を示す。
溶媒として200mLのトルエンを用いて、90.27gの90%オレイン酸を0.67gのp−トルエンスルホン酸の存在下で48.75gの2−ブタノールと反応させた。反応はフィッシャーエステル化条件を用いて行った。分離器内において、混合物を100mLの10%wt/wt炭酸カリウムを用いて分配した。次に、硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥し、濾過した。得られた溶液を、まずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて残りの溶媒を真空留去した。最終油生成物(99.30g)は、H−NMRによって分析して2−ブチルオレエートであることが示された。
【0046】
実施例3:
本実施例は、脂肪酸のエステル化のための他の代表的な手順を示す。
190.44gの標準飽和度の大豆油脂肪酸を、エステル化触媒として5.60gの次亜リン酸ナトリウムの存在下で30.01gの2−メチル−1,3−プロパンジオールと反応させた。反応系を220℃において3時間加熱し、次にアスピレーター減圧を行いながら220℃において4時間加熱した。混合物を酢酸エチル中に溶解し、分離器内において10%wt/wt水酸化カリウムを用いて分配し、次に水で2回洗浄した。次に、硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥し、セライト(celite)を通して濾過した。得られた油及び少量の固体をヘキサン中に溶解し、濾過した。得られた溶液を、まずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて残りの溶媒を90℃及び0.10Torrにおいて真空留去した。最終油生成物(167.65g)は、H−NMRによって分析して2−メチル−1,3−プロパンジオールジ大豆油酸エステルであることが示された。
【0047】
実施例4:
本実施例は、エポキシ化脂肪酸又は脂肪酸エステルを水素化するための代表的な手順を示す。
【0048】
溶媒として900mLのエタノールを用いて、168.66gのエポキシ化した標準飽和度のプロピレングリコールジ大豆油酸エステル(EPGDS)を50.50gのアルミナ上5%パラジウム触媒の存在下で水素と反応させた。反応は、雰囲気温度、60psiにおいて、H−NMRによって全てのエポキシドが消失するまで行った。セライトを通して混合物を濾過し、ジクロロメタンですすいだ。得られた溶液を、まずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて残りの溶媒を真空留去した。最終油生成物(144.46g)は、H−NMRによって分析してモノヒドロキシル化プロピレングリコールジ大豆油酸エステルであることが示された。
【0049】
実施例5:
本実施例は、モノヒドロキシル化脂肪酸又は脂肪酸エステルからモノエステル潤滑剤を製造するための代表的な手順を示す。
【0050】
溶媒として550mLのジエチルエーテルを用いて、138.27gのモノヒドロキシル化中オレイン大豆油を61.3mLのピリジンの存在下で85.21gの塩化ヘキサノイルと反応させた。温度を保持するために氷浴を用いて、10℃において、塩化ヘキサノイルを、油、ピリジン、及び溶媒を含む反応器に滴加した。添加が完了したら、水浴を取り外し、混合物を3時間還流した。次に、濁った混合物を濾過し、ロータリーエバポレーターによって溶媒を除去した。次に、残りの濁りを帯びた油を酢酸エチル中に溶解し、水酸化物水溶液、次に酸水溶液、次に重炭酸塩水溶液、最後に水を用いて分配した。硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥し、次に濾過した。得られた溶液を、まずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて残りの溶媒を真空留去した。最終油生成物(175.20g)は、H−NMRによって分析して中オレイン大豆油のモノヘキサノエートエステルであることが示された。
【0051】
実施例6:
本実施例は、エポキシ化脂肪酸又は脂肪酸エステルからジエステル潤滑剤を製造するための代表的な手順を示す。
【0052】
触媒として6.86gの炭酸カリウムを用いて、100.03gのエポキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ大豆油酸エステル(MePGDS)を2.85gのヘキサン酸の存在下で138.00gの無水ヘキサン酸と反応させた。無水ヘキサン酸、ヘキサン酸、及びMePGDSを、フラスコ内において撹拌しながら180℃に加熱した。次に、炭酸カリウムを混合物に加え、温度を1.5時間保持した。H−NMRによって反応が完了したことが示された。混合物を1Lの酢酸エチル中に溶解し、水酸化物水溶液、次に酸水溶液、次に重炭酸塩水溶液、最後に水を用いて分配した。硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥し、次に濾過した。得られた溶液を、まずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて残りの溶媒を真空留去した。最終油生成物(177.35g)は、H−NMRによって分析してエポキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ大豆油酸エステルのジヘキサノエートエステルであることが示された。
【0053】
実施例7:
本実施例は、エポキシ化脂肪酸又は脂肪酸エステルからジエステル潤滑剤を製造するための他の代表的な手順を示す。
【0054】
触媒として5.53gの炭酸カリウムを用いて、100.01gのエポキシ化プロピレングリコールジ大豆油酸エステル(EPGDS)を2.32gのヘキサン酸の存在下で257.18gの無水ヘキサン酸と反応させた。無水ヘキサン酸、ヘキサン酸、及びEPGDSを、フラスコ内において撹拌しながら130℃に加熱した。次に、炭酸カリウムを混合物に加え、温度を11時間保持した。H−NMRによって反応が完了したことが示された。混合物を600mLの酢酸エチル中に溶解し、水酸化物水溶液、次に酸水溶液、次に重炭酸塩水溶液、最後に水を用いて分配した。硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥し、次に濾過した。得られた溶液を、まずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて残りの溶媒を真空留去した。最終油生成物(130.67g)は、H−NMRによって分析してエポキシ化プロピレングリコールジ大豆油酸エステルのジヘキサノエートエステルであることが示された。
【0055】
実施例8:
本実施例は、エポキシ化脂肪酸エステルを加水分解して、変性バイオ油の骨格変性ジエステルを製造するために用いるジアルコール誘導体を形成することを示す。
【0056】
触媒として0.32gのテトラフルオロホウ酸銅(II)一水和物を用いて、20.03gのエポキシ化2−メチル−1,3−プロピレングリコールジ高オレイン大豆油酸エステル(E2−MePGDHOS)を175mLのテトラヒドロフランの存在下で2.16gの水と反応させた。混合物を60℃において108.5時間撹拌し、この時点で反応はH−NMRによって96%完了していることが示された。溶媒をロータリーエバポレーター上で蒸発させ、残余量の水を、3×150mLのトルエンを用いて共沸蒸留によって除去した。次に、混合物を200mLの酢酸エチル中に溶解し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、次に濾過した。得られた溶液を、まずロータリーエバポレーター上で蒸発させ、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を用いて残りの溶媒を真空留去した。最終油生成物(21.33g)は、H−NMRによって分析して2−メチル−1,3−プロピレングリコールジ高オレイン大豆油酸エステルのジヒドロキシル誘導体であることが示された。
【0057】
実施例9:
本実施例は、実施例8からのジヒドロキシル化生成物をエステル化して、変性バイオ油の骨格変性ジエステルを製造するために用いる方法を示す。
【0058】
触媒として0.04重量%の酸化スズ(II)の存在下において、ジヒドロキシ2−メチル−1,3−プロピレングリコールジ高オレイン大豆油酸エステルを、200℃において撹拌しながら全てのヒドロキシル基がエステル化されるまでヘキサン酸(1.05当量)と反応させる。次に、生成物を酢酸エチル中に溶解し、炭酸塩水溶液を用いて分配し、次に水で洗浄する。次に、硫酸マグネシウムのような乾燥剤を用いて有機層を乾燥する。濾過した溶液を、まずロータリーエバポレーター上での蒸発によって精製し、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)上で減圧下において更に精製して痕跡量の溶媒を除去する。最終油生成物はその後に潤滑剤として用いることができ、これをH−NMRによって分析する。
【0059】
実施例10:
本実施例は、組成変性したエポキシ化脂肪酸誘導体をβ−ヒドロキシエステルに転化させ、これを更に、ジエステルを形成するために2種類の異なるエステルを用いてエステル化して変性バイオ油の骨格変性ジエステルを製造するために用いる方法を示す。
【0060】
エポキシド開環触媒として用いる約3重量%の2−メチルイミダゾール(ヘキサン酸と比較)の存在下において、ヘキサン酸(1.05当量)を(高オレイン大豆油の)エポキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ大豆油酸エステルと反応させて、対応するβ−ヒドロキシエステルを形成する。この反応は、最適には溶媒を用いずに約100℃の温度において行い、H−NMR分光法によって示して殆ど全部のエポキシド官能基が反応するまで継続する。場合によっては、生成物を水不溶性溶媒中に溶解し、次に酸性水溶液(好ましくは5%塩酸)と接触させることによって、2−メチルイミダゾールを除去することができる。この溶液を水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸留法によって完全にストリッピングする。
【0061】
この中間体を、ジエチルエーテルのような溶媒中、ピリジンの存在下において1.05当量の塩化ノナノイルと反応させることによって第2のカルボン酸であるノナン酸とエステル化して、骨格変性ジエステルを生成させる。ピリジン塩酸塩の沈殿物を濾過し、溶媒を蒸留によって除去する。生成物を酢酸エチル中に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液、次に酸水溶液、次に重炭酸塩水溶液、最後に水で抽出する。有機層を乾燥剤上で乾燥し、溶媒を蒸留によって除去する。最終生成物の構造をH−NMR分光法によって確認する。
【0062】
表2〜4に、実施例1〜7における種々の油の特性に関する試験結果を示す。
表2に、1,2−プロピレングリコール(PG)ジ大豆油酸エステルからのジヘキサノエートエステル及びモノヘキサノエートエステル潤滑剤を示す。全ての試料に関して結晶化開始温度(COT)を測定し、概してCOTは流動点の値と相関していることが確認された。試料1と3を比較すると、1,2−プロピレングリコールジ大豆油酸エステルジヘキサノエートの高オレイン組成は、標準的な油候補物質からの1,2−プロピレングリコールジ大豆油酸エステルヘキサノエートと比較して、より低い粘度、より低い結晶化開始温度、及びより低い流動点(試料3に関しては流動点はなかった)を有していたことが示される。試料3と5を比較すると、2−メチル−1,3−プロパンジオール誘導化合物を用いてより低い流動点が得られたという、1,2−プロピレングリコール官能化脂肪酸エステルと比較した2−メチル−1,3−プロパンジオールの有益な効果が示される。試料3と6を比較すると、増加したリノール酸及び減少した飽和脂肪酸によって増加した粘度及び低下した流動点が得られることが示される。試料7と8を比較するとトリグリセリド官能化脂肪酸エステルと比較した1,2−プロピレングリコールの効果が示され、それによると1,2−プロピレングリコールエステルは相当に減少した粘度を有するが上昇した流動点を有する。
【0063】
表3は、アルキル大豆油酸エステルからのジヘキサノエートエステル潤滑剤を示す。試料1と2を比較すると、2−ブチル脂肪酸エステルにおける高オレイン組成によるより低い粘度及びより低い結晶化開始温度が示される。試料2と3を比較すると、2−エチルヘキシル大豆油酸エステルと比較した2−ブチル大豆油酸エステルによるより低い粘度及びより低い結晶化開始温度が示される。
【0064】
表4は、大豆油トリグリセリドからのジエステル及びモノエステル潤滑剤を示す。試料2と1を比較すると、標準飽和度の大豆脂肪酸と比較した中オレインを用いて達成されるより低い粘度が示される。試料3と1を比較すると、減少した飽和度の脂肪酸及び増加したリノール酸濃度による低飽和度の大豆油に関する増加した粘度が示される。試料5と4を比較すると、ここでも減少した飽和度の脂肪酸及び増加したリノール酸濃度に関する増加した粘度が示される。試料7と8を比較すると、標準飽和度の大豆脂肪酸と比較した中オレインを用いて達成される減少した粘度が示される。
【0065】
ここに開示した本発明の幾つかの形態は現在好ましい態様を構成するが、多くの他の態様が可能である。ここでは、本発明の可能な同等の形態又は関連する形態の全てを言及することは意図していない。ここで用いる用語は限定ではなく単に説明のためのものであり、発明の範囲の精神から逸脱することなく種々の変更を行うことができると理解すべきである。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)変性バイオ油の水素化エポキシ化脂肪酸を、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物でエステル化してモノエステルを形成するか;又は
(b)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をカルボン酸無水物でエステル化してジエステルを形成するか;又は
(c)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をカルボン酸と反応させてβ−エステルアルコールを形成し、β−エステルアルコールを、第2のカルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物と反応させてジエステルを形成するか;又は
(d)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸をジオールに加水分解し、ジオールを、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物と反応させてジエステルを形成する;
ことによって変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルを形成することを含み;
変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルが、2−ブタノール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−(トリメチロール)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン、又はネオペンチルグリコールでエステル化されており;
変性バイオ油が、高オレイン組成、中オレイン組成、90%オレイン組成、高リノール組成、又は低飽和度の組成を有する、潤滑剤の製造方法。
【請求項2】
骨格変性モノエステル又はジエステルがC〜C18カルボン酸から選択される酸基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸基が、酢酸、プロパン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、又はこれらの組合せである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反応を触媒の存在下で行う、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
流動点降下剤、耐摩耗添加剤、希釈剤、極圧添加剤、及び酸化防止剤から選択される1種類以上の更なる成分をモノエステル又はジエステルに加えることを更に含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
複数のカルボン酸の混合物を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(a)変性バイオ油の水素化エポキシ化脂肪酸と、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物との反応によるモノエステル生成物;
(b)変性バイオ油のエポキシ化脂肪酸とカルボン酸無水物との反応によるジエステル生成物;又は
(c)エポキシ化脂肪酸と第1のカルボン酸との反応生成物であるβ−エステルアルコールと、第2のカルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物との反応によるジエステル生成物;
(d)エポキシ化脂肪酸の加水分解生成物であるジオールと、カルボン酸、酸無水物、又は酸塩化物との反応によるジエステル生成物;
である1種類以上の変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルの混合物を含み、
変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルが、2−ブタノール、1,2−プロピレングリコール、又は2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−(トリメチロール)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン、又はネオペンチルグリコールでエステル化されており;
変性バイオ油が、高オレイン組成、中オレイン組成、90%オレイン組成、高リノール組成、又は低飽和度の組成を有する潤滑剤組成物。
【請求項8】
骨格変性モノエステル又はジエステルがC〜C18カルボン酸から選択される酸基を含む、請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
酸基が、酢酸、プロパン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、又はこれらの組合せである、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
潤滑剤組成物が、加える流動点降下剤の不存在下で約−10℃未満の流動点を有する、請求項7〜9のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
流動点降下剤、耐摩耗添加剤、希釈剤、極圧添加剤、及び酸化防止剤から選択される1種類以上の更なる成分を更に含む、請求項7〜10のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
次式:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

を有する1種類以上の変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルの混合物を含み、
変性バイオ油の脂肪酸の骨格変性モノエステル又はジエステルが、2−ブタノール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−(トリメチロール)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン、又はネオペンチルグリコールでエステル化されており;
変性バイオ油が、高オレイン組成、中オレイン組成、90%オレイン組成、高リノール組成、又は低飽和度の組成を有し;
上式において、R’及びRは、C〜C17の範囲のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環式基、及びこれらの混合物を含み、同じ分子内の異なる鎖長の異なるアルキル基の組合せを含み、それぞれのR’は同一であっても異なっていてもよく、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい、潤滑剤組成物。
【請求項13】
骨格変性モノエステル又はジエステルがC〜C18カルボン酸から選択される酸基を含む、請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
酸基が、酢酸、プロパン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、又はこれらの組合せである、請求項13に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
潤滑剤組成物が、加える流動点降下剤の不存在下で約−10℃未満の流動点を有する、請求項12〜14のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項16】
流動点降下剤、耐摩耗添加剤、希釈剤、極圧添加剤、及び酸化防止剤から選択される1種類以上の更なる成分を更に含む、請求項12〜15のいずれかに記載の潤滑剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520377(P2012−520377A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554054(P2011−554054)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/000775
【国際公開番号】WO2010/104609
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(504306714)バテル・メモリアル・インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】