説明

変換器用変圧器

【課題】絶縁ボードまたは絶縁ボード同士の間隙に設けた開口部付近に直流電界が集中することを緩和して絶縁性能の向上を図る。
【解決手段】下部バリア26と中間バリア27との間には直方体状の下部絶縁ピース29a、29bを設置する。中間バリア27と上部バリア25との間には同じく直方体状の上部絶縁ピース30a、30bを設置する。下部絶縁ピースは中間バリアに設けた開口部28の1組の対辺に沿って位置し、上部絶縁ピースは開口部28の別の1組の対辺に沿って位置する。下部絶縁ピースによって挟まれた空間が開口部に絶縁油を流し込むための流入部17aとなる。上部ピースによって挟まれた空間が開口部から絶縁油を流し出すための流出部17bとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流電圧が加わる部位の絶縁構成を改良した変換器用変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流送電は、大容量、長距離送電および異周波連係など、系統運用上多くのメリットを有している。そのため、直流送電は多方面で使用されている。例えば、国内の一部地域では交流系統を連携する±250kV直流送電が実施されている。さらに外国では、±800kVの直流送電が実施されようとしている。
【0003】
直流送電を実施するためには、交流を直流に変換する交直変換所、あるいは直流を交流に変換する交直変換所が必要となる。例えば、図9に示した交直変換所では、交流線路1から交流電圧を取り込み、変換用変圧器2およびサイリスタバルブ3を用いて交流電圧を直流電圧に変換している。
【0004】
さらに、交直変換所では、直流リアクトル4を介して直流電圧を直流線路5に送電している。なお、図9中の符号は、7がバルブホール、8が変圧器用避雷器、9が直流リアクトル用避雷器、10がサイリスタバルブ3のアノード−カソード間避雷器である。
【0005】
サイリスタバルブ3は現在のところ、運用実績や保守点検の面から空気絶縁方式を多用されている。これに対して、変換器用変圧器2は絶縁液である絶縁油と固体絶縁物である絶縁ボードによる複合絶縁方式が主流となっている(特許文献1など)。
【0006】
絶縁油と絶縁ボードによる複合絶縁方式において、絶縁油の直流耐圧は絶縁ボードのそれに比べて約1桁小さい。絶縁物の電圧分担は絶縁物の体積抵抗率の大きさによって決まるので、変換器用変圧器2に直流電圧を印加した場合、絶縁油に比べて体積抵抗率の大きい絶縁ボードが直流電圧のほとんどを分担することになる。
【0007】
絶縁ボードが直流電圧のほとんどを分担する例としては、次のような場合がある。変換器用変圧器2は交流巻線および直流巻線を有しているが、工場試験にて、直流巻線に直流電圧を印加する一方で、交流巻線を接地することがある。このとき、体積抵抗率の大きい絶縁ボードに大きな電界が加わるが、体積抵抗率の小さい絶縁油にはあまり電界が加わることはない。
【0008】
このため、変換器用変圧器2には交流電圧に対する絶縁設計だけではなく、直流電圧に対する絶縁設計も要求される。特に、直流電圧に関しては絶縁ボードがこれを負担するため、絶縁ボードは直流電圧の絶縁構成において重要な役割を果たすことになる。
【0009】
ここで、絶縁油および絶縁ボードを用いた複合絶縁方式の変換器用変圧器について、図10を参照して具体的に説明する。図10は変圧器巻線部の垂直方向の断面図である。
[概要]
図10に示すように、変換器用変圧器2は交流線路1(図9に示す)に結合される交流巻線11と、サイリスタバルブ3(図9に示す)に結合される直流巻線12を備えている。交流巻線11および直流巻線12は変圧器タンク(図示せず)に同心円状に収納されている。
【0010】
各巻線11、12の上端部には電界緩和用の静電シールド13a、13bが取り付けられている。さらに、巻線11、12上方にはプレスボード製のクランプリング18が配置されている。巻線11、12はクランプリング18によって上方向から押さえつけられることで変圧器タンク内に固定されている。
【0011】
[絶縁油]
絶縁油14は変圧器タンク内に充填されており、巻線11、12の冷却媒体としても利用される。特に、電力用の大型の油入り変圧器などでは巻線11、12を効率よく冷やすために、絶縁油14を変圧器タンク内に循環させる構成になっている。
【0012】
図10中の矢印19は絶縁油14の流れる方向を示している。図10中の符号16a〜16cは絶縁油14を巻線12の外部方向に流出させるための流出口である。これら流出口16a〜16cは、隣接する絶縁ボード15同士が接続することなく、切れた状態にすることで形成されている。
【0013】
[絶縁ボード]
絶縁ボード15は、巻線11、12周囲の絶縁油14の油隙に複数挿入されている。これは絶縁油14の体積を絶縁ボード15によって区分するためである。絶縁油14の体積抵抗率は絶縁ボード15に比べて非常に小さい。したがって、絶縁油14の破壊電界は絶縁油14の体積に対して負の依存性がある。
【0014】
そこで、複数の絶縁ボード15により絶縁油14の体積を細分化することで絶縁油14の耐圧を高めている。図10に示した例では、絶縁ボード15として、垂直方向に伸びる垂直ボード15aと、水平方向に伸びる水平ボード15bと、水平面と垂直面を有するL字のアングルボード15cとを設置している。これらの絶縁ボード15は全て、固体絶縁物製のプレスボードなどからなる。
【0015】
垂直ボード15aと水平ボード15bは互いに独立しているが、巻線11、12付近の垂直ボード15aはその上端部にアングルボード15cの垂直面を接続している。これらのアングルボード15cは静電シールド13a、13bおよび巻線11、12の上端部を取り囲むようになっている。つまり、アングルボード15cの水平面が静電シールド13a、13bを重層的に覆っており、巻線11、12に対する絶縁を強化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−9623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来の変換器用変圧器には次のような課題が指摘されている。すなわち、変換器用変圧器が絶縁油と絶縁ボードによる複合絶縁方式を採用する場合、絶縁ボードの一部あるいは絶縁ボード同士の間隙に、絶縁油を流すための開口部を設けている。
【0018】
絶縁油の直流耐圧は絶縁ボードのそれに比べて約1桁小さいので、開口穴付近では絶縁油自体または絶縁油と絶縁ボードの界面において絶縁破壊が起き易くなる。すなわち、絶縁油と絶縁ボードからなる複合絶縁構成では、絶縁油を流すために設けた開口穴が絶縁上の弱点となっていた。
【0019】
このような絶縁上の弱点を克服するために、図10に示した変換器用変圧器2ではプレスボード製の絶縁リング20(点線にて示す)をアングルボード15cの表面に設置してアングルボード15c同士を接続することが提案されている。
【0020】
だが、絶縁油を流す開口穴は開けたままなので、絶縁上の弱点が無くなったわけではない。このため、従来の変換器用変圧器は、絶縁性能を確保するために絶縁寸法を大きくするほかない。その結果、変換器用変圧器が大形化するといった不具合を招いていた。
【0021】
実施形態の変換器用変圧器は、上記課題を解決するために提案されたものであり、絶縁ボードまたは絶縁ボード同士の間隙に絶縁油を流すための開口部を設けたとしても、開口部付近に直流電界が集中することを緩和して絶縁性能の向上を図り、コンパクト化および高信頼性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、実施形態の変換器用変圧器は、次の点を特徴とする。実施形態の変換器用変圧器は、
(a)絶縁油を充填したタンク内に直流巻線および交流巻線を収納する。
(b)前記交流巻線と前記直流巻線間、及びこれらの巻線とタンク間に固体絶縁物からなる絶縁ボードを複数配置する。
(c)前記絶縁ボードまたは前記絶縁ボード同士の間隙には前記絶縁油を流すための開口部を形成する。
(d)前記開口部には固体絶縁物製の絶縁ピースを設置する。
(e)前記絶縁ピースはその先端部が前記開口部に対向する前記絶縁ボードに向かって突出する。
(f)前記絶縁ピースには前記絶縁油を流すための流通部を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態の斜視図。
【図2】第1の実施形態の一部分解斜視図。
【図3】第1の実施形態の構成を示す断面図。
【図4】第1の実施形態の直流等電位線分布を示す正面図。
【図5】第1の実施形態の直流等電位線分布を示す側面図。
【図6】第1の実施形態の作用効果を説明するための直流等電位線分布の正面図。
【図7】第2の実施形態の構成を示す断面図。
【図8】他の実施形態の断面図。
【図9】一般的な交直変換所の配置図。
【図10】従来の変換器用変圧器の構成を示す断面図。
【発明の実施するための形態】
【0024】
(1)第1の実施形態
[構成]
以下、第1の実施形態に係る変換器用変圧器の構成について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。第1の実施形態に係る変換器用変圧器は、図10にて示した従来例と同じく、絶縁油14と絶縁ボード15による複合絶縁方式を採用しており、絶縁ボード15は静電シールド13a、13bおよび巻線11、12の上端部を取り囲むアングルボード15cを含んでいる。
【0025】
図3に示すように、上下方向に重なる3層のアングルボード15cの水平部分を、上部バリア25、下部バリア26、中間バリア27とする。このうち、中間バリア27には絶縁油14を流すための正方形状の開口部28が形成されている。
【0026】
また、下部バリア26と中間バリア27との間には直方体状の下部絶縁ピース29a、29bが設置されている。さらに、中間バリア27と上部バリア25との間には同じく直方体状の上部絶縁ピース30a、30bが設置されている。図1では、上部バリア25(2点鎖線にて図示)、下部バリア26、中間バリア27のみを示している。また、図2では中間バリア27を点線にて示し、これに設置された絶縁ピース29a、29b、30a、30bを敢えて中間バリア27から離した状態で示している。
【0027】
絶縁ピース29a、29b、30a、30bは開口部28の周縁部に沿って設けられている。下部絶縁ピース29a、29bは開口部28の1組の対辺に沿って平行に設置され、上部絶縁ピース30a、30bは開口部28の別の1組の対辺に沿って平行に設置されている。
【0028】
つまり、下部絶縁ピース29a、29bの長手方向と上部絶縁ピース30a、30bの長手方向とは直交しており、2組の絶縁ピースが中間バリア27を挟んで井桁状になっている。絶縁ピース29a、29b、30a、30bの長手方向の寸法は開口部28の一辺の長さ寸法と同一である。
【0029】
2枚の下部絶縁ピース29a、29bによって挟まれた空間が開口部28に対し絶縁油14を流し込むための流入部17aとなっている。また、2枚の上部絶縁ピース30a、30bによって挟まれた空間が開口部28から絶縁油14を流し出すための流出部17bとなっている。
【0030】
すなわち、絶縁ピース29a、29b、30a、30bによって形成される流入部17aおよび流出部17bが、絶縁油14を流すための流通部となっている。下部絶縁ピース29a、29bの長手方向と上部絶縁ピース30a、30bの長手方向とは直交しているので、流入部17aおよび流出部17aを流れる絶縁油14の流れ方向も互いに直交している。
【0031】
下部バリア26には開口部28の開口面と対向して下部補強板31が固定されている。この下部補強板31により開口部28に対向する部位の下部バリア26が厚く設定される。下部補強板31には下部絶縁ピース29a、29bの下端部が接続される。
【0032】
上部バリア25には開口部28の開口面と対向して上部補強板32が固定されている。この上部補強板32により開口部28に対向する部位の上部バリア25は厚く設定される。上部補強板32には上部絶縁ピース30a、30bの上端部が接続される。補強板31、32はこれを垂直方向から見た場合、開口部28の開口面を覆う大きさに設定されている。なお、絶縁ピース29a、29b、30a、30bおよび補強板31、32は全てプレスボード製である。
【0033】
[絶縁油の流れる方向]
ここで、上部バリア25、下部バリア26および中間バリア27を流れる絶縁油14の流れる方向について説明する。まず、絶縁油14は、下部バリア26と中間バリア27の間を流れ、下部絶縁ピース29a、29bに挟まれた流入部17aから開口部28に入る(矢印20a)。
【0034】
続いて、絶縁油14は開口部28を通り抜けて、上部絶縁ピース30a、30bに挟まれた流出部17bを通過し、中間バリア27と上部バリア25間に流れ出る(矢印20b)。流入部17aと流出部17aとは直交しているため、絶縁油14は開口部28を通り抜ける際、90度捻るようにして流れることになる。
【0035】
[作用効果]
以上の構成を有する第1の実施形態の作用効果について、図4〜図6を用いて説明する。図4および図5は、第1の実施形態における開口部28付近の直流電界解析結果(等電位線分布)を示している。図4は開口部28の正面部分の解析結果、図5は開口部28の側面部分の解析結果である。
【0036】
図4に示すように、中間バリア27内を通る等電位線24は、開口部28において下部絶縁ピース29a、29bを通って、下部バリア26と下部補強板31内に移っている。また、図5に示すように、中間バリア27内を通る等電位線24は、上部絶縁ピース30a、30bを通って上部バリア25と上部補強板32内に移っている。
【0037】
このように、等電位線24が絶縁ピース29a、29b、30a、30bを通過するので、絶縁ピース29a、29b、30a、30bがない場合と比べて、絶縁油14中の等電位線24の間隔を粗くすることができる。したがって、開口部28における絶縁油14中の電界の増加が抑制されている。
【0038】
本実施形態において等電位線24の間隔が粗いことを説明するために、絶縁ピース29a、29b、30a、30bを除いた場合の変換器用変圧器の直流等電位線分布について、図6を用いて説明する。直流電圧を印加した時、絶縁油14よりも抵抗率の高いバリア25、26、27が直流電圧を負担している。そのため、等電位線24はバリア25、26、27に集中する。
【0039】
また、等電位線24は、中間バリア27の開口部28では絶縁油14中に出て、開口部28付近の上下のバリア25、26に乗り移る。これは、バリア25、26の方が、絶縁油14よりも抵抗率が高く、電界が集中し易いためである。このような等電位線24の乗り移りが生じる場所は、絶縁油14中や、絶縁油14と絶縁ボード15との界面であり、これらの部位は他部位に比べて電界が高くなりやすい。
【0040】
その結果、絶縁油14中の等電位線24が局所的に密になる。繰り返し述べるように絶縁油14の直流耐圧は、絶縁ボード15に比べて約1桁小さいため、開口部28付近では絶縁油14や絶縁油14と絶縁ボード15との界面にて絶縁破壊が起きやすく、これが絶縁上の弱点となる。
【0041】
そこで本実施形態では、プレスボードからなる絶縁ピース29a、29b、30a、30bによってバリア25〜27間を接続することで、絶縁油14中に出た等電位線24が上下のバリア25、26に乗り移ることを防いでいる。しかも、下部絶縁ピース29a、29bと上部絶縁ピース30a、30bとは互いに直交している。したがって、下部絶縁ピース29a、29bを通過する等電位線24と、上部絶縁ピース30a、30bを通過する等電位線24とは、90度ずれており、垂直方向から見て重なることがない。
【0042】
このため、絶縁油14中の等電位線24の間隔は粗くなり、絶縁油14中や絶縁油14と絶縁ボード15界面の電界上昇を抑えることが可能となる。これにより、開口部28付近でも絶縁破壊は起こり難く、優れた絶縁性能を確保することができる。
【0043】
さらに本実施形態では、下部補強板31と上部補強板32を配置したことで、開口部28に対向した部位についてはバリア26、29の厚さ寸法を増やしている。このため、仮に中間バリア27の等電位線24が開口部28にて下部バリア26および上部バリア25に移ったとしても、移り先のバリア26、29内の直流電界は高くならない。したがって、バリア26、29内の電界上昇を抑制することができ、バリア26、29での絶縁破壊を確実に防止することが可能となる。
【0044】
上記のような本実施形態によれば、直流巻線12端部を取り囲むアングルボード15cに絶縁油14を流す開口部28が設けられていても、開口部28付近の絶縁油14や絶縁ボード15自体、更には絶縁油14と絶縁ボード15との界面に対する直流電界集中を緩和することが可能である。これにより、変換器用変圧器2の巻線耐圧が向上し、優れた絶縁信頼性を獲得することができる。さらには、変換器用変圧器2の絶縁寸法を縮小可能であり、変圧器のコンパクト化に寄与することができる。
【0045】
(2)第2の実施形態
[構成]
次に、第2の実施形態について、図7を参照して説明する。第2の実施形態は、直流巻線12とその静電シールド13bは、3本の円筒形状のボード34と3層のアングルボード35a〜35cによって多重に取り囲まれている。
【0046】
アングルボード35a〜35cにはそれぞれ、絶縁油14が流れる開口部36a〜36cが設けられている。開口部36a〜36cは、隣接するアングルボード35a〜35cの開口部36a〜36cの開口面同士が重ならないように形成されている。図7では、開口部36a〜36cは垂直方向にジグザク配置されている。ただし、直流巻線12は円筒形状であるため、円周方向(図6の奥行き方向)にずらせて配置させることも可能である。
【0047】
なお、開口部36a〜36cは第1の実施形態における開口部28と同一の構成である。また、図7では省略しているが、絶縁ピース29a、29b、30a、30b並びに上下の補強板31、32については、上記第1の実施形態と同じく、第2の実施形態も備えている。
【0048】
[作用効果]
以上の構成を有する第2の実施形態では、アングルボード35a〜35cにおける開口部36a〜36cの位置を垂直方向から見て重ねていない。このため、アングルボード35a〜35cの開口部36a〜36cから絶縁油14に向かって等電位線24が出たとしても、絶縁油14中の電界を低く抑えることができ、優れた絶縁耐圧を確保することが可能である。
【0049】
したがって、巻線12上端部にアングルボード35a〜35cを多重に設置し、各アングルボード35a〜35cに絶縁油14流出入用の開口部36a〜36cを設けた場合であっても、第1の実施形態と同様、開口部36a〜36c付近の直流電界集中を緩和して絶縁性能の向上並びにコンパクト化を実現することができる。
【0050】
(3)他の実施形態
なお、上記の実施形態は、本明細書において一例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。例えば、絶縁油を流すための開口部絶縁ボードについては、形状や設置数、設置箇所などは適宜選択自由である。
【0051】
具体的な他の実施形態としては、次のようなものがある。
[1]絶縁ピース
絶縁ピースは、開口部と向かい合う絶縁ボードに接する必要はなく、絶縁ボードとの間に僅かな隙間があってもよい。また、絶縁ピースの形状や材質、設置数や設置角度などに関して、いずれも適宜変更可能である。さらに、絶縁ピースに設けられる絶縁油の流通部についても、形状や設置数などは適宜選択可能である。
【0052】
図8に示す実施形態では、中空で四角柱状の絶縁ピース38が上部バリア25と下部バリア26との間に接続されている。絶縁ピース38は下部バリア26側に形成した開口部28を囲むようにして取り付けられている。また、絶縁ピース38において巻線12から見て外方向に位置する面には絶縁油14を流すための流通口37が設けられている。このような実施形態によれば、2枚の絶縁ピースを取り付ける場合に比べて、取り付け作業が容易であり、製造コストの低減化が可能である。
【0053】
[2]絶縁ボードの厚さ
開口部に対向する部位の絶縁ボードの厚さ寸法を厚くする構成としては、上記第1の実施形態のように補強板を設置するのではなく、該当部位をあらかじめ厚く設定した絶縁ボードを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…交流線路
2…変換器用変圧器
3…サイリスタバルブ群
4…直流リアクトル
5…直流線路
7…バルブホール
8…変圧器用避雷器
9…直流リアクトル用避雷器
10…アノード−カソード間避雷器
11…交流巻線
12…直流巻線
13a、13b…静電シールド
14…絶縁油
15…絶縁ボード
15a…垂直ボード
15b…水平ボード
15c…アングルボード
16a〜16c…絶縁油の流出口
17a…流入部
17b…流出部
18…クランプリング
19、20a、20b…絶縁油の流れ
24…等電位線
25…上部バリア
26…下部バリア
27…中間バリア
28、36a〜36c…開口部
29a、29b…下部絶縁ピース
30a、30b…上部絶縁ピース
32…下部補強板
33…上部補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁油を充填したタンク内に直流巻線および交流巻線を収納し、前記交流巻線と前記直流巻線間、及びこれらの巻線とタンク間に固体絶縁物からなる絶縁ボードを複数配置し、前記絶縁ボードまたは前記絶縁ボード同士の間隙には前記絶縁油を流すための開口部を形成した変換器用変圧器において、
前記開口部には固体絶縁物製の絶縁ピースを設置し、
前記絶縁ピースはその先端部が前記開口部に対向する前記絶縁ボードに向かって突出しており、
前記絶縁ピースには前記絶縁油を流すための流通部を設けることを特徴とする変換器用変圧器。
【請求項2】
前記絶縁ピースの先端部は前記開口部に対向する前記絶縁ボードに接することを特徴とする請求項1に記載の変換器用変圧器。
【請求項3】
前記絶縁ボードにおいて前記開口部に対し前記絶縁油が流れ込む側の面を流入面、前記開口部から前記絶縁油が流れ出す側の面を流出面として、前記流入面および前記流出面に前記絶縁ピースを設置し、
これらの絶縁ピースは、前記流入面と前記流出面とで前記絶縁油の流れる方向が変わるように、前記流入面側と前記流出面側とで捻って設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の変換器用変圧器。
【請求項4】
前記開口部を四角形状として、前記流入面側の前記絶縁ピースを前記開口部の1組の対辺に設置し、前記流出面側の前記絶縁ピースを前記開口部の別の1組の対辺に設置したことを特徴とする請求項3項に記載の変換器用変圧器。
【請求項5】
前記開口部に対向する部位の前記絶縁ボードの厚さ寸法を厚くしたことを特徴する請求項1〜4のいずれか1項に記載の変換器用変圧器。
【請求項6】
前記絶縁ボードが複数積層するとき、前記開口部を通過する前記絶縁油が一直線状に流れないように、前記開口部の位置をずらしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の変換器用変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−69717(P2013−69717A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205038(P2011−205038)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】