説明

変異した不活化IgG2ドメインおよびこれを組み込んだ抗CD3抗体

【課題】現存する抗体よりなお少ない程度で、そして/またはより少数の患者において分裂促進活性を示す、変異した定常領域を有する抗CD3抗体の提供。
【解決手段】EU番号付けシステムにより規定される残基234〜237の間に天然に存在しないアミノ酸セグメントを含む変異したIgG2定常領域であって、該変異したIgG2定常領域に連結した抗CD3抗体の可変領域を含む抗体が、天然のIgG2定常領域に連結した該抗CD3抗体の該可変領域を含む第2の抗体と比較して、ヒトT細胞において減少した分裂促進応答を誘導する、変異したIgG2定常領域。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異した不活化IgG2ドメインおよびこれを組み込んだヒト化抗CD3抗体の設計に、免疫学および分子遺伝学の技術分野を適用する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
T細胞上のCD3複合体は、T細胞レセプター(TCR)ヘテロダイマーと密接に関連し、そして抗原結合の際のT細胞活性化において重要な役割を担う。特定の抗CD3抗体は、抗原の非存在下でT細胞を活性化し得る。このような活性化は、モノクローナル抗体(mAb)のFc部分と、T細胞上のCD3複合体を架橋するための補助細胞上のFcレセプターとの相互作用に依存する。可溶性抗CD3mAbは、インビトロで、それらがプラスチックまたはFcレセプター保有細胞に結合していない場合、T細胞を増殖するようには刺激しない。
【0003】
免疫抑制は、これらの抗体をヒト被験体またはマウスに投与することにより達成され得るが、効力は、しばしば2つの因子により緩和される。1つめは、外来タンパク質の複数注射から生じる抗グロブリン応答であり、そして2つめは、T細胞活性化から生じる第一用量症候群である。症状には、発熱、悪寒、下痢、および嘔吐が挙げられ、そして重篤な場合には死に至る。この症候群は、一過性のT細胞活性化の結果として宿主のサイトカイン放出により引き起こされる(Abramowiczら、Transplantation 47, 606(1989)を参照)。TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−6、およびGM−CSFのようなサイトカインが、これらの重篤な副作用に関連付けられている。マウスにおいて、2つの形態の抗CD3が、マウスT細胞を活性化することなく免疫抑制性であると報告されている:F(ab')形態(Hirschら、Transplantation49, 1117(1990)を参照)、およびマウスIgG3アイソタイプのキメラ形態(Alegreら、J.Immunol. 155, 1544(1995)を参照)。前者は、Fcγレセプターに結合する定常領域の部分を欠失し、そして後者の定常領域は、マウスFcγレセプターに対して低親和性を有する。
【0004】
ヒトの治療において、ヒト化されているだけでなく、免疫原性および毒性を最小化するためにFcγレセプターと相互作用し得ない抗CD3分子を有することが望ましい。3つのFcγレセプター、FcRI、FcRII、およびFcRIIIに対する種々のヒトIgGアイソタイプのそれぞれの親和性が決定された(RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol. 9, 457(1991)を参照)。FcRIは、単量体形態でIgGに結合する高親和性レセプターであり、後者の2つは、多量体形態でのみIgGに結合する低親和性レセプターである。一般に、IgG1およびIgG3の両方は、3つのレセプター全てに対し、IgG4はFcRIに対し、そしてIgG2は、IIaLRと呼ばれるFcRIIの1つのタイプに対して顕著な結合活性を有する(Parrenら、J.Immunol.148, 695(1992); J.Clin.Invest. 90, 1537(1992)を参照)。IIaLRは、白色人種集団の40%において発現される、FcRIIの対立遺伝子である。幾人かの研究者は、種々のアイソタイプのキメラ抗CD3を作製したが、全てが、少なくとも幾人かのドナー由来の分裂促進性PBMC(末梢血単核細胞)であると報告された(Boltら、Eur.J.Immunol.,23, 403(1993);Parrenら、Res.Immunol. 142, 793(1991)を参照)。それ故、天然に存在する形態のFcは、不活化抗CD3mAbを産生するためには不適切である。
【0005】
抗CD3 IgG1およびIgG4の下方ヒンジ/上方CH2領域に作製された変異は、これらの分子をより低い分裂促進性にすることが報告されている(Alegreら、Transplantation57, 1537(1994);Alegreら、J.Immunol. 148, 3461(1992)を参照)。IgG3の235位での変異は、FcRIとの相互作用に影響することが報告され、そして234位および237位の変異は、FcRIIとの相互作用に影響することが報告されている(Lundら、J.Immunol.147, 2657(1991)を参照)。アグリコシル化(aglycosylated)形態の抗CD3もまた、Fcγレセプターへの結合を損なっていることが報告されている(Boltら、Eur.J.Immunol.23, 403(1993)を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの開発にも関わらず、現存する抗体よりなお少ない程度で、そして/またはより少数の患者において分裂促進活性を示す、変異した定常領域を有する抗CD3抗体の必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって以下が提供される:
1.EU番号付けシステムにより規定される残基234〜237の間に天然に存在しないアミノ酸セグメントを含む変異したIgG2定常領域であって、該変異したIgG2定常領域に連結した抗CD3抗体の可変領域を含む抗体が、天然のIgG2定常領域に連結した該抗CD3抗体の該可変領域を含む第2の抗体と比較して、ヒトT細胞において減少した分裂促進応答を誘導する、変異したIgG2定常領域。
2.EU番号付けシステムにより規定される残基234、235、および237が、以下からなる群から選択されるアミノ酸のセグメントを形成する、変異したIgG2定常領域:
ala ala gly、
val ala ala、
ala ala ala、
val glu ala、および
ala glu ala。
3.前記セグメントがala ala alaである、項目2に記載の変異したIgG2定常領域。
4.前記セグメントが、それ以外は天然に存在するヒトIgG2定常領域内に含まれる、項目3に記載の変異したIgG2定常領域。
5.少なくともCH1、ヒンジ、CH2、およびCH3領域を含む、項目2に記載の変異したIgG2定常領域。
6.図4の配列(配列番号9)を含む、項目5に記載のIgG2定常領域。
7.項目1に記載の変異したIgG2定常領域を含む、ヒトCD3に特異的に結合する抗体。
8.項目2に記載の変異したIgG2定常領域を含む、ヒトCD3に特異的に結合する抗体。
9.ヒト化されている、項目8に記載の抗体。
10.ヒト化M291である、項目9に記載の抗体。
11.前記ヒト化軽鎖が、図1C(配列番号6)の成熟アミノ酸配列を含み、そして前記ヒト化重鎖可変ドメインが、前記IgG2定常領域に融合した図1D(配列番号8)の成熟アミノ酸配列を含む、項目10に記載の抗体。
12.由来の前記変異したIgG2定常領域の残基234、235、および237がセグメントalaala alaを形成する、項目11に記載の抗体。
13.ヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含む、項目10に記載のヒト化抗体であって:
(1)該ヒト化軽鎖は、マウスM291免疫グロブリン軽鎖の対応する相補性決定領域由来のアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)、およびヒトκ軽鎖可変領域フレームワーク配列由来の可変領域フレームワークを含み、そして
(2)該ヒト化重鎖は、マウスM291免疫グロブリン重鎖の対応する相補性決定領域由来のアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)、および、H30、H67、H68、H70、H72、およびH74からなる群から選択される少なくとも1つの位置を除き、ヒト重鎖可変領域フレームワーク配列由来の可変領域フレームワークを含み、該アミノ酸位置は、該マウスM291免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの相当位置に存在する同じアミノ酸により占められ;
ここで、該免疫グロブリンは、約10−1の下限および該M291免疫グロブリンの結合親和性の約5倍の上限を有する結合親和性で、T細胞の表面上のCD3抗原に特異的に結合する、ヒト化抗体。
14.前記ヒト化軽鎖可変領域フレームワークが、サブグループIのHF2−1/17抗体の軽鎖可変領域フレームワーク由来であり;
前記ヒト化重鎖領域フレームワークが、前記群から選択される少なくとも1つの位置を除き、そして44位を除いて21/28抗体の重鎖領域可変フレームワーク由来であり、該アミノ酸位置が、ヒト免疫グロブリンサブグループIコンセンサス配列の相当位置に存在する同じアミノ酸により占められる、
項目13に記載のヒト化抗体。
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、EU番号付けシステムにより規定される残基234と残基237との間に天然には存在しないアミノ酸セグメントを含む、変異したIgG2定常領域を提供する。このようなIgG2定常領域を組み込まれている抗CD3抗体は、Fcγレセプターへの特異的な結合を通じてT細胞において分裂促進応答を誘導することなく、T細胞上のCD3抗原に特異的に結合し得る。好適な変異したIgG2定常領域において、残基234、235、および237は、以下のアミノ酸セグメントのうちの1つを形成する:alaala gly、val ala ala、ala ala ala、val glu ala、およびala glu ala。236位(EU番号付けシステムにより規定される)は、野生型IgG2定常領域と同様に、これらの変異した定常領域では占有されていないことに注意。通常、変異したセグメントは、これ以外は天然に存在するヒトIgG2定常領域中に含まれる。本発明はさらに、変異したIgG2定常領域を組み込んだ抗CD3抗体(好ましくは、ヒト化抗体)を提供する。
【0009】
本発明はさらに、変異したIgG2ドメインが組み込まれ得る、マウスM291抗体由来の新規なヒト化抗体を提供する。好ましいヒト化軽鎖は、M291免疫グロブリン軽鎖の対応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)、およびヒトκ軽鎖可変領域フレームワーク配列からの可変領域フレームワークを含む。好ましいヒト化重鎖は、M291免疫グロブリン重鎖の対応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)、ならびに、H30、H67、H68、H70、H72、およびH74からなる群から選択される少なくとも1つの位置(このアミノ酸位置は、マウスM291免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの相当位置に存在する同じアミノ酸により占められる)を除いて、ヒト重鎖可変領域フレームワーク配列からの可変領域フレームワークを含む。免疫グロブリンは、T細胞の表面上のCD3抗原に特異的に結合し、そして通常は、約10−1の下限およびM291免疫グロブリンの結合親和性の約5倍の上限を有する結合親和性を有する。好ましくは、ヒト化軽鎖可変領域フレームワークは、サブグループIのHF2−1/17抗体の軽鎖可変領域フレームワーク由来である。好ましくは、ヒト化重鎖領域フレームワークは、21/28抗体の重鎖領域可変フレームワーク由来である。この場合において、H44位は、ヒト免疫グロブリンサブグループIコンセンサス配列の相当位置に存在する同じアミノ酸と置換され得る。
【0010】
定義
用語IgG2定常領域は、EllisonおよびHood、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79, 1984(1981)によって記載される特定のIgG2定常領域配列、その対立遺伝子改変体、および高度な配列同一性(例えば、EllisonおよびHood(前出)の配列に対して少なくとも90、95、または99%の配列同一性)を有するそれらの他の形態をいう。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。この用語は、全長定常領域およびそのフラグメント(例えば、CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3領域、ならびにこれらの組合せ)を含む。IgG2定常領域は、ヒトおよび霊長類において見出される。
【0011】
配列同一性の割合は、GAPまたはBESTFITプログラムにより、デフォルトギャップ重み(default gap weight)を用いて決定される。
【0012】
定常領域のアミノ酸は、ヒト抗体EUとのアラインメントによって番号付けされる(Cunninghamら、J.Biol.Chem., 9, 3161(1970)を参照)。すなわち、抗体の重鎖および軽鎖を、アミノ酸配列の同一性を最大にするようにEUの重鎖および軽鎖と整列させ、そして抗体の各アミノ酸に、EUの対応するアミノ酸と同じ番号を割り当てる。EUの番号付けシステムは、当該分野において従来より用いられている(一般に、Kabatら、Sequencesof Protein of Immunological Interest, NIH公報第91-3242号、米国保健社会福祉省(1991)を参照)。この慣例に従って、EllisonおよびHood(前出)によって記載される野生型IgG2定常領域は、236位のアミノ酸を欠失する。免疫グロブリンの成熟重鎖および軽鎖の可変領域由来のアミノ酸は、本明細書中でそれぞれHxおよびLxと命名され、ここで、xは、可変領域配列における位置を表す数である。
【0013】
本発明の抗CD3抗体は、ヒトCD3抗原に対する特異的結合を示す。ヒトCD3に対するほとんどの抗体は、下等哺乳動物由来の同族抗原と交差反応しない。
【0014】
アミノ酸置換を保存的または非保存的と分類するために、アミノ酸を以下のように群分けする:群I(疎水性側鎖):ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;群II(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;群III(酸性側鎖):asp、glu;群IV(塩基性側鎖):asn、glu、his、lys、arg;群V(鎖の配向に影響を与える残基):gly、pro;および群VI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は、同一のクラスのアミノ酸間の置換を含む。非保存的置換は、これらのクラスのうちのあるクラスのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することである。
【0015】
N末端からC末端へ、軽鎖および重鎖は共に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。アミノ酸の各ドメインへの割当は、Kabat(1991)(前出)、および/またはChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol. 196:901-917(1987);Chothiaら、Nature342: 878-883(1989)の定義に従う。
【0016】
基本的抗体構造単位は、テトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは、ポリぺプチド鎖の2つの同一な対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を規定する。各軽/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、インタクトな抗体は、2つの結合部位を有する。
【0017】
軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、そして抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEとして規定する。軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は、約12またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約10以上のアミノ酸の「D」領域を含む。(一般に、Fundamental Immunology(Paul,W.編、第2版、Raven Press, N.Y., 1989)、第7章(その全体が全ての目的で参考として援用される)を参照。)
用語エピトープは、免疫グロブリンまたはT細胞レセプターと特異的に結合し得る任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面配置(grouping)からなり、そして通常、特異的な3次元構造的特徴および特異的な電荷的特徴を有する。
【0018】
用語患者は、ヒトおよび動物被験体を含む。
【0019】
試験抗体は、過剰な試験抗体が、競合アッセイにおいて抗原への参照抗体の結合を実質的に阻害する場合、抗原への特異的結合について参照抗体と競合する。実質的に阻害するとは、試験抗体が参照抗体の特異的結合を、通常、少なくとも19%、25%、50%、75%、または90%低減させることを意味する。競合抗体は、参照抗体と同一または類似の抗原上エピトープに結合するか、または参照抗体によって結合されるエピトープに対して、参照抗体の抗原への結合を阻害するに十分近位にあるエピトープに結合する。
【0020】
詳細な説明
本発明は、それらがFcγレセプターに特異的に結合し、そしてそれによりほとんどの患者のT細胞において分裂促進応答を活性化する能力を実質的に失うように変異されたIgG2定常領域を提供する。本発明はまた、変異されたIgG2定常領域が組み込まれ得る、マウスM291抗体に由来する新規なヒト化抗CD3抗体を提供する。変異されたIgG2定常領域はまた、他の抗CD3または他の抗体中へ組み込まれ得る。
【0021】
I.IgG2定常領域の変異
本発明は、Fcγレセプターと相互作用する能力を実質的に欠くC2領域の変異を有するIgG2定常領域を提供する。Fcγレセプター結合の喪失に関連する変異は、IgG2定常領域の残基234〜237内で起こる(残基は、EU慣例によって番号づけられる)。変異は、いくつかの制約に従い選択される。第一に、変異は、IgG2によって天然には認識されない他のFcγレセプターへの結合の獲得を付随して引き起こすことなく、IgG2(FcRII)によって天然に認識されるFcγレセプターへの特異的結合の喪失(すなわち、Ka<10−1)を引き起こすべきである。すなわち、本発明の変異形態のIgG2は、通常、(少なくとも、頻繁に生じる対立遺伝子形態の)任意のFcγレセプターへの特異的結合を示さない。Fcγレセプターへの結合の実質的な喪失は、T細胞の分裂促進活性の実質的な喪失を生じる。
【0022】
第二に、変異したIgG2定常領域を組み込んだ抗CD3抗体は、野生型IgG2定常領域を有するが、その他は同一である第二の抗CD3抗体と、CD3に対して、実質的に同一の結合親和性およびアビディティー(例えば、3、5、または10倍の係数内)を有するべきである。変異はまた、結合の特異性に影響を与えるべきでない(例えば、変異したIgG2定常領域を有する抗体は、ヒトCD3への結合について、非変異形態の抗体と競合するべきである)。第三に、変異は、免疫原性の増大を生じるほど天然の定常領域の構造から離れて、定常領域の構造を乱すべきではない。したがって、本発明の変異された定常領域を有する抗体は、治療的方法において、T細胞免疫応答を抑制するに有用なままである。
【0023】
これらの基準を満たす異なる変異の組合せを含む5つの例示的なIgG2定常領域の単離を、以下に記載する。これらの定常領域において、EU番号付けシステムによって規定される残基234、235、および237は、以下からなる群より選択されるアミノ酸セグメントを形成する:
ala ala gly、
val ala ala、
ala ala ala、
val glu ala、および
ala glu ala。
236位は、野生型IgG2定常領域と同様に、これらの変異体定常領域において占有されていない。
【0024】
同等に、これらの変異体定常領域は、234位と237位との間に、以下の天然に生じないアミノ酸セグメントの1つを含むとして記載され得る:
ala ala gly、
val ala ala、
ala ala ala、
val glu ala、
ala glu ala、
ここで、 は、236位のアミノ酸が存在しないことを表す。
【0025】
これらの例における全ての置換が、上記のアミノ酸分類によって保存的であるわけではないが、これらは、それらを含むIgG2定常領域の電荷分布またはコンホメーションの実質的な変化を導入しない。したがって、T細胞のFcγレセプター結合および分裂促進活性は、相対的に保存的な改変によって実質的に低減され得る。基準を満たし得る他の変異は、アミノ酸234〜237を、別々にまたは一緒に、20の通常アミノ酸の任意のもので置換することによって、あるいはこれらのアミノ酸の任意のものを欠失させることによって作製され得る。
【0026】
変異されたIgG2定常領域は、組換え技術によって抗CD3抗体に組み込まれる。完全にヒトの、もしくはヒト化された抗CD3抗体(例えば、ヒト化M291またはヒト化OKT3)が、最も適切である(Allegreら(1992)前出)。これらの定常領域を組み込んだ抗体は、少なくともほとんど(本明細書中で使用される場合、少なくとも67%、75%、90%、または95%を意味する)の患者において、サイトカインの有害な放出を生じる分裂促進活性を誘導することなく、T細胞の免疫応答を抑制し得る点で、免疫抑制剤としての所望の特性を有する。本発明の変異したIgG2定常領域を組み込んだ抗CD3抗体は、その抗体のF(ab')フラグメント(FcγR結合ドメインを完全に欠く)より、Fcγレセプターに対して顕著に大きな(例えば、2、5、または10倍より大きい)結合を示さない。この結合親和性喪失の結果として、変異したIgG2定常領域を組み込んだ抗CD3抗体は、バックグランドレベルに比較して、T細胞において顕著な増殖活性を刺激しない。さらに、本発明の変異したIgG2定常領域を組み込んだ抗CD3抗体は、対応するF(ab')フラグメントと比較して、抗体によって結合されたT細胞による、サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−2、またはIFN−γ)の放出を顕著に刺激しないし、IL−2レセプターの発現も顕著に誘導しない。すなわち、ほとんどの患者において、またはほとんどのドナー由来の細胞を使用するインビトロで、分裂促進活性(すなわち、誘導された、増殖および/またはサイトカイン放出および/またはレセプター発現)が、変異していないIgG1および/またはIgG2抗CD3抗体で観察される対応する活性から少なくとも2、5、10、または100倍低減され、そして/またはF(ab')フラグメントでの活性の1/2〜2、1/5〜5、または1/10〜10倍以内である。変異したIgG2定常領域を組み込んだ抗体は、より長い血清半減期のF(ab')フラグメントを超える利点を提供する。変異したIgG2領域を組み込んだ抗体はまた、おそらくそれがFcγレセプターと相互作用し得ないことにより、野生型定常領域を有する抗体と比較して、しばしば、より長いインビボ半減期および低減された免疫原性を示す。
【0027】
II.ヒト化抗CD3抗体
本発明は、さらに、変異したIgG2定常領域がその中に組み込まれ得る、マウス抗体M291に由来する新規なヒト化抗CD3抗体を提供する(米国特許出願第08/397,411号(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)もまた参照)。ヒト化抗体はまた、他の定常領域とともに、またはインタクトな定常領域を欠くフラグメントとして使用され得る。ヒト化形態の免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリンと呼ばれる)に実質的に由来する可変フレームワーク領域、およびマウス免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリンと呼ばれる)に実質的に由来する相補性決定領域を有する。定常領域はまた、存在する場合、ヒト免疫グロブリンに実質的に(例えば、85%、90%、95%またはより高く)由来する。ヒト化抗体は、それらのそれぞれの抗原に対して、少なくとも10、10、10、または1010−1の特異的結合親和性を示す。しばしば、ヒト化抗体の結合親和性の上限および下限は、それらが由来したマウス抗体の親和性の3または5または10の係数内である。
【0028】
ヒト化免疫グロブリンのCDRおよびフレームワーク成分が選択されれば、種々の方法が、そのような免疫グロブリンを産生するために利用可能である。コードの縮重のために、種々の核酸配列が、各々の免疫グロブリンアミノ酸配列をコードする。所望の核酸配列は、デノボ固相DNA合成により、または所望のポリヌクレオチドの以前に調製された変異体のPCR変異誘発により産生され得る。本願において記載される抗体をコードする全ての核酸は、明白に、本発明中に包含される。
【0029】
上記のようなヒト化抗体の可変セグメントは、代表的には、上記のように、変異したIgG2定常領域に連結される。しかし、他の定常領域もまた用いられ得る(IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgE、ならびに任意のアイソタイプ(IgG1、天然IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)を含む)。ヒト化抗体が細胞傷害活性を示すことが所望される場合、定常ドメインは通常補体結合定常ドメインであり、そしてクラスは代表的にはIgGである。そのような細胞傷害活性が所望されない場合、定常ドメインは、IgG2クラスまたはIgG4クラスの定常ドメインであり得る。ヒト化抗体は、1つより多いクラスまたはアイソタイプに由来する配列を含み得る。ヒト定常領域DNA配列は、周知の手順に従って、種々のヒト細胞(しかし、好ましくは、不死化B細胞)から単離され得る(Kabatら(前出)およびWO87/02671を参照)。通常、抗体は、軽鎖および重鎖の両方の定常領域を含む。重鎖定常領域は、通常、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、および時にはCH4領域を含む。
【0030】
別の局面において、本発明は、開示される抗体および定常領域をコードするDNAセグメントを包含する。ヒト化軽鎖および重鎖可変領域(必要に応じて定常領域に連結される)をコードする核酸は、発現ベクター中に挿入される。軽鎖および重鎖は、同一かまたは異なる発現ベクター中にクローン化され得る。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、発現ベクターにおいて制御配列(これは免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする)に作動可能に連結される。そのような制御配列としては、シグナル配列、プロモーター、エンハンサー、および転写終結配列が挙げられる(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86, 10029(1989);WO 90/07861;Coら、J.Immunol.148, 1149(1992)、Antibody Engineering, A Practical Guide(Borrebaeck編、Freeman、NY1992)(全ての目的のためにそれらの全体が参考として本明細書中に援用される)を参照)。
【0031】
E.coliは、本発明のDNA配列のクローン化および/または発現のために特に有用な1つの原核生物宿主である。使用のために適切な他の微生物宿主としては、桿菌(例えば、Bacillus subtilis)、および他の腸内細菌(例えば、Salmonella、Serratia、および種々のPseudomonas種)が挙げられる。これらの原核生物宿主においてまた発現ベクターを作製し得る。この発現ベクターは、代表的には、宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製起点)を含む。さらに、任意の数の種々の周知のプロモーターが存在し得る(例えば、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、βラクタマーゼプロモーター系、またはファージλ由来のプロモーター系)。プロモーターは、代表的には、必要に応じてオペレーター配列とともに発現を制御し、そしてリボソーム結合部位配列などを、転写および翻訳を開始および完了するために有する。
【0032】
他の微生物(例えば、酵母)もまた、発現のために使用され得る。Saccharomycesが好ましい宿主であり、適切なベクターは発現制御配列(例えば、プロモーター(3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖系酵素のプロモーターを含む))、ならびに複製起点、終結配列などを、所望により、有する。
【0033】
植物および植物細胞培養物は、本発明のヒト化免疫グロブリンの発現のために使用され得る。(LarrickおよびFry、Hum.Antibodies Hybridomas 2(4):172-89(1991);Benvenutoら、PlantMol.Biol. 17(4):865-74(1991);Durinら、Plant Mol.Biol. 15(2):281-93(1990);Hiattら、Nature342:76-8(1989)(全ての目的のためにそれらの全体が参考として本明細書中に援用される))。好ましい植物宿主としては、例えば以下が挙げられる:Arabidopsis、Nicotiana tabacum、Nicotiana rustica、およびSolanum tuberosum。本発明のヒト化抗CD3抗体をコードするポリヌクレオチド配列を発現させるための好ましい発現カセットは、プラスミドpMOG18であり、ここで、ヒト化免疫グロブリン鎖をコードする挿入されるポリヌクレオチド配列は、二重にされたエンハンサーを有するCaMV 35Sプロモーターに作動可能に連結される;pMOG18は、Sijmonsら、Bio/Technology8:217-221(1990)(全ての目的のためにその全体が参考として本明細書中に援用される)の方法に従って使用される。あるいは、植物におけるヒト化免疫グロブリンの発現のための好ましい実施態様は、Hiattら(前出)により使用される免疫グロブリン配列の、本発明のヒト化抗CD3抗体をコードするポリヌクレオチド配列への置換を有して、Hiattら(前出)の方法に従う。Agrobacterium tumefaciens T−DNAに基づくベクターもまた、ヒト化免疫グロブリン配列を発現させるために使用され得、好ましくはそのようなベクターは、スペクチノマイシン耐性をコードするマーカー遺伝子または他の選択マーカーを含む。
【0034】
昆虫細胞培養物もまた、本発明のヒト化免疫グロブリンを産生するために、代表的には、バキュロウイルスに基づく発現系を用いて使用され得る。ヒト化免疫グロブリンは、Putlitzら、Bio/Technology 8:651-654(1990)(全ての目的のためにその全体が参考として本明細書中に援用される)の方法に従って、ヒト化免疫グロブリンをコードするポリヌクレオチド配列を発現させることにより産生され得る。Putlitzらの方法は、本発明のヒト化抗CD3抗体をコードするポリヌクレオチド配列が、PutlitzらのマウスモノクローナルAb6A4の重鎖および軽鎖のcDNA配列のかわりに挿入される改変を有して従われ得る。
【0035】
微生物および植物に加えて、哺乳動物組織細胞培養物もまた、本発明のポリペプチドを発現および産生するために使用され得る(Winnacker, From Genes to Clones(VCH Publishers, NY, 1987)を参照)(全ての目的のためにその全体が参考として本明細書中に援用される)。インタクトな免疫グロブリンを分泌し得る多数の適切な宿主細胞株が当該分野において開発されているので、哺乳動物細胞が実際に好ましく、そして哺乳動物細胞としては、CHO細胞株、種々のCOS細胞株、HeLa細胞、好ましくはミエローマ細胞株など、または形質転換されたB細胞またはハイブリドーマが挙げられる。これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列(例えば、複製起点、プロモーター、エンハンサー(Queenら、Immunol.Rev.89:49-68(1986)(全ての目的のためにその全体が参考として本明細書中に援用される)))、ならびに必要なプロセシング情報部位(例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列)を含み得る。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターである。一般に、選択マーカー(例えば、neo発現カセット)が、発現ベクター中に含まれる。
【0036】
本発明の抗体は、フラグメントおよびインタクトな抗体を包含する。代表的には、これらのフラグメントは、それらが由来したインタクトな抗体と、抗原結合について競合する。フラグメントは、代表的には、少なくとも10−1、およびより代表的には10−1または10−1の親和性(すなわち、インタクトな抗体と同じ範囲内)で結合する。ヒト化抗体フラグメントは、分離した重鎖、Fab、Fab'、F(ab')、およびFv、ならびに単鎖抗体を包含する。フラグメントは、組換えDNA技術によるか、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的分離により産生される。
【0037】
III.ヒト抗体
本発明の変異したIgG2定常領域はまた、CD3に対する完全ヒト抗体の可変ドメインに、組換え発現技術により連結され得る。ヒト抗体は、下記の種々の技術により産生される。いくつかのヒト抗体は、競合結合実験によるか、あるいはそうでなければ、特定のマウス抗体(例えば、M291もしくはOKT3)と同じか、もしくは重複するエピトープ特異性を有するように選択される。
【0038】
a.トリオーマ法
基本的なアプローチおよびこのアプローチにおける使用のための例示的な細胞融合パートナーSPAZ−4は、Oestbergら、Hybridoma 2:361-367(1983);Oestberg、米国特許第4,634,664号;およびEnglemanら、米国特許第4,634,666号(その各々は、全ての目的のためにその全体が参考として援用される)により記載されている。この方法により得られる抗体産生細胞株は、トリオーマ(trioma)と呼ばれる。なぜなら、それらは3つの細胞(2つのヒトおよび1つのマウス)に由来するからである。最初に、マウスミエローマ株が、ヒトBリンパ球と融合されて、非抗体産生異種ハイブリッド細胞(例えば、Oestberg(前出)により記載されたSPAZ−4細胞株)が得られる。次いで、異種細胞は、免疫されたヒトBリンパ球と融合されて、抗体産生トリオーマ細胞株が生じる。
【0039】
免疫されたB細胞は、ヒトドナーの血液、脾臓、リンパ節、または骨髄から得られる。ヒトT細胞またはCD3での生きているヒトのインビボ免疫は、有害な応答を開始する危険のために、通常望ましくない。したがって、Bリンパ球は通常、インビトロにおいて、T細胞、精製CD3、またはその抗原性フラグメントで免疫される。好ましくは、ヒト形態のCD3が使用される。Bリンパ球は、代表的には、7〜14日間、10%ヒト血漿を補充したRPMI−1640(Engleman(前出)を参照)のような培地において、抗原に曝露される。
【0040】
免疫されたBリンパ球は、SPAZ−4のような異種ハイブリッド細胞に、周知の方法により融合される。例えば、細胞は、40〜50%のMW1000〜4000のポリエチレングリコールで、約37℃にて、約5〜10分間処理される。細胞は融合混合物から分離され、そして所望のハイブリッドについて選択培地(例えば、HATまたはAH)中で増殖させられる。必要とされる結合特異性を有する抗体を分泌するクローンは、トリオーマ培養培地を、CD3またはそのフラグメントに結合する能力についてアッセイすることにより同定される。所望の特異性を有するヒト抗体を産生するトリオーマは、限界希釈技術によりサブクローン化され、そして培養培地中でインビトロで増殖させられる。次いで、得られたトリオーマ細胞株は、CD3またはそのフラグメントに結合する能力について試験される。
【0041】
トリオーマは遺伝的に安定であるが、それらは、抗体を非常に高レベルでは産生しない。発現レベルは、抗体遺伝子をトリオーマから1つ以上の発現ベクター中にクローン化し、そしてこのベクターを、組換え免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンの発現のために、上記で論じた細胞株のような細胞株中に形質転換することにより増大され得る。
【0042】
b.トランスジェニック非ヒト哺乳動物
CD3に対するヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン座の少なくとも1つのセグメントをコードするトランスジーンを有する非ヒトトランスジェニック哺乳動物から産生され得る。通常、このようなトランスジェニック哺乳動物の内因性免疫グロブリン座は、機能的に不活化される。好ましくは、ヒト免疫グロブリン座のセグメントは、重鎖成分および軽鎖成分の再編成されていない配列を含む。内因性免疫グロブリン遺伝子の不活化および外因性免疫グロブリン遺伝子の導入は共に、標的付けられた相同組換え、またはYAC染色体の導入により達成され得る。このプロセスから得られるトランスジェニック哺乳動物は、免疫グロブリン成分配列を機能的に再編成し得、そして内因性免疫グロブリン遺伝子を発現することなく、ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされる種々のアイソタイプの抗体レパートリーを発現し得る。これらの特性を有する哺乳動物の作製および特性は、例えば、Lonbergら、WO93/12227(1993);Kucherlapati、WO91/10741(1991)(これらの各々は、その全体が全ての目的のために参考として援用される)により詳細に記載される。トランスジェニックマウスは特に適切である。抗CD3抗体は、LonbergまたはKucherlapati(前出)により記載されるようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、T細胞、CD3、またはそれらの抗原性フラグメントで免疫することにより得られ得る。モノクローナル抗体は、例えば、従来のKohler-Milstein技術を用いて、このような哺乳動物由来のB細胞を、適切なミエローマ細胞株に融合することにより調製される。
【0043】
c.ファージディスプレイ法
ヒト抗CD3抗体を得るためのさらなるアプローチは、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーを、Huseら、Science 246:1275-1281(1989)により概説される一般的なプロトコルに従ってスクリーニングすることである。CD3またはそのフラグメントに結合する抗体が選択される。次いで、このような抗体(または結合性フラグメント)をコードする配列がクローン化および増幅される。Huseにより記載されるプロトコルは、ファージディスプレイ技術と組み合わされるとより効率的になる。例えば、Dowerら、WO91/17271およびMcCaffertyら、WO92/01047(これらの各々は、その全体が全ての目的のために参考として援用される)を参照。これらの方法において、メンバーが外側表面上に異なる抗体を提示するファージライブラリーが産生される。抗体は、通常、FvまたはFabフラグメントとして提示される。所望の特異性を有する抗体を提示するファージは、CD3またはそのフラグメントに対する親和性富化により選択される。
【0044】
ファージディスプレイ法の変形では、選択されたマウス抗体の結合特異性を有するヒト抗体が産生され得る。Winter、WO92/20791を参照。この方法において、選択されたマウス抗体(例えば、M291)の重鎖または軽鎖いずれかの可変領域が、出発物質として用いられる。例えば、軽鎖可変領域が出発物質として選択される場合、メンバーが同じ軽鎖可変領域(すなわち、マウス出発物質)および異なる重鎖可変領域を提示する、ファージライブラリーが構築される。重鎖可変領域は、再編成されたヒト重鎖可変領域のライブラリーから得られる。CD3に対して強力な特異的結合(例えば、少なくとも10、そして好ましくは、少なくとも10−1)を示すファージが選択される。次いで、このファージ由来のヒト重鎖可変領域は、さらなるファージライブラリーを構築するための出発物質として供される。このライブラリーでは、各ファージは、同じ重鎖可変領域(すなわち、第1のディスプレーライブラリーから同定された領域)および異なる軽鎖可変領域を提示する。軽鎖可変領域は、再編成されたヒト可変軽鎖領域のライブラリーから得られる。再び、CD3に対して強力な特異的結合を示すファージが選択される。これらのファージは、完全にヒトの抗CD3抗体の可変領域を提示する。これらの抗体は、通常、マウス出発物質(例えば、M291)と同一もしくは類似のエピトープ特異性を有する。
【0045】
IV.治療方法
本発明の抗体を含有する薬学的組成物は、所望でない免疫応答を顕現する病的状態を罹っているか、またはその危険にある患者への非経口(すなわち、皮下、筋肉内、そして特に静脈内)投与に有用である。このような病的状態は、自己免疫疾患、移植片拒絶(特に、心臓、肺、腎臓、または肝臓の移植の後)、対宿主性移植片病(骨髄移植の後)、炎症、アレルギー反応、および敗血症を含む。例示的な自己免疫疾患は、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、および炎症性腸疾患である。薬学的組成物は、急性発赤またはこれらもしくは他の自己免疫疾患の悪化の処置に特に有用である。
【0046】
非経口投与のための組成物は、通常、受容可能なキャリア(好ましくは、水性キャリア)中に溶解した抗体の溶液またはそれらのカクテルを含む。種々の水性キャリア(例えば、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなど)が用いられ得る。これらの溶液は無菌であり、そして一般に粒子状物質を含まない。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる、pH調整剤および緩衝化剤、毒性調整剤などのような薬学的に受容可能な補助物質(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム)を含み得る。こらの処方物における抗体の濃度は、広範に(すなわち、約0.01重量%未満から、通常、少なくとも約0.1重量%〜5重量%程度まで)変化し得、そして選択される特定の投与様式に従い、主に液体の容量および粘性に基づいて選択される。
【0047】
静脈内注入のための代表的な組成物は、250mlの滅菌リンゲル溶液および10mg〜100mgの抗体を含むように作製され得る。Remington's Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing Company,Easton, Pennsylvania, 1980)を参照。
【0048】
本発明の抗体を含む組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。治療的適用では、組成物は、既に罹患した患者に、その病的状態および合併症を治癒させるかまたは少なくとも部分的に抑制するに十分な量で投与される。これを達成するに適切な量は、「治療有効用量」として定義される。この使用に有効な量は、病的状態の重篤度および患者自身の免疫系の一般的状態に依存するが、一般に、1用量あたり約0.01〜約100mgの抗体の範囲であり、1患者あたり約0.1〜50mgの投薬量および1〜10mgの投薬量がより通常に用いられる。単回投与または1日毎、1週間毎、または1ヶ月毎のスケジュールでの複数回投与が、実施され得る。用量レベルおよびパターンは、処置医により選択される。
【0049】
予防的適用では、抗体を含む組成物は、疾患状態を進展させる危険にある患者に投与されて患者の抵抗性を増強する。このような量は、「予防有効用量」として定義される。この使用において、正確な量は、再び、患者の健康状態および免疫の一般レベルに依存するが、しかし一般的には、1用量あたり0.1〜100mg、特に1患者あたり1〜10mgの範囲である。
【0050】
IV.診断方法
M291抗体(マウスおよびヒト化形態の両方)はまた、病原性生物に感染した患者の免疫学的モニタリング(例えば、AIDS患者のT細胞数の決定)または免疫系の障害を有する患者の免疫学的モニタリングにおける診断方法に有用である。診断の方法は、インビトロで患者由来の細胞サンプル(例えば、血液サンプル、リンパ節生検または組織)を用いて実施され得るか、またはインビボ画像化により実施され得る。M291抗体はまた、白血球サブタイプを分類することにおける調査目的のために、例えば、抗体パネルの一部として用いられ得る。このような目的のためには、M291は、好ましくは、ELISA、RIA、または他の当該分野で公知のアッセイ形式において用いられる。
【0051】
実施例
1.材料および方法
a.V領域cDNAのクローン化
OKT3のH鎖およびL鎖のVドメインcDNAを、Coら、J.Immunol. 148, 1149(1992)により記載される係留PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法により、OKT3を発現するハイブリドーマ細胞(ATCCCRL 8001)からクローン化した。増幅を、マウスγ鎖およびκ鎖のC領域にそれぞれアニールする3'プライマー、ならびにそのcDNAの付加されたGテイルにアニールする5'プライマーを用いてcDNAについて実施した。VHおよびVLのcDNAを、配列決定のためにpUC19ベクターにサブクローン化した。これらの配列は、Woodleら(Woodleら、J.Immunol.148, 2756(1992)を参照)によって公開された配列と同一であった。
【0052】
b.キメラ抗CD3抗体の発現
OKT3のVおよびVのcDNAから、シグナル配列、Jセグメント、およびスプライスドナー配列を含むエキソンを作製し、そしてXbaI部位により包囲した(Coら、J.Immunol. 148, 1149(1992)を参照)。V配列を発現ベクターpVk.rgのXbaI部位に挿入し、そしてV配列を種々の重鎖発現ベクター(例えば、pVg2.D.Tt)に同様に挿入した。ベクターpVk.rgは、gpt単位の方向が逆転していることを除いて、pVk(Coら、同書)と同様である。ベクターpVg2.D.T.tはpVg1(Coら、同書)と同様であるが、γ1の代わりにγ2定常領域(EllisonおよびHood、前掲書)を含むゲノムフラグメントを含み、そしてヒト補体遺伝子C2の転写ターミネーター(Tt)(C2ポリA部位から+37〜+162bp;Ashfieldら、EMBOJ. 10, 4197(1991)を参照)を含む。種々のヒト重鎖ベクターは、Fcコード配列のみが異なる。1つのプラスミドにおける重鎖および軽鎖の同時発現のためには、hCMVプロモーター、重鎖遺伝子全体、ポリAシグナル、および転写終結シグナルを含むEcoRIフラグメントを重鎖発現ベクターから採取し;そして軽鎖発現プラスミドの唯一のEcoRI部位にクローン化する(図2)。得られる各プラスミドは、1つのベクター中にコードされる重鎖および軽鎖の両方を有する。これらの間に位置する転写終結シグナル(Tt)の存在に起因して、2つの遺伝子は、hCMVプロモーターにより独立して転写される(Boshartら、Cell41, 521(1985)を参照)。1つの場合において、ヒトγ1定常領域遺伝子のC1エキソンおよびヒンジのみを含ませ、そしてヒンジエキソンがロイシンジッパーFosをコードするDNAと融合させてキメラF(ab')Fosを作製した(Tsoら、J.Hematother.4, 389(1995)を参照)。特定の抗体の発現のために、対応するプラスミドを、エレクトロポレーションによりマウスミエローマ細胞株TS0中にトランスフェクトした。TS0細胞は、マウスミエローマNS0細胞(ECACC85110503)から、Satoらの手順(Satoら、J.Exp.Med. 165, 1761(1987)を参照)に従い、無血清培地中で増殖する能力について選択することにより誘導される。各トランスフェクション由来の細胞を、gpt発現について選択した。トランスフェクタントを無血清培地中で増殖させ、そして消費培養物からプロテインGアフィニティークロマトグラフィーにより抗体を精製した。
【0053】
c.γ2およびγ4 C2エキソンの変異誘発
PCR手順を使用して、γ2およびγ4エキソンのC2領域中に変異を導入した。各変異誘発のために、変異させた配列を含む2つの相補的プライマーを合成した。これらのうちの一方を、PCR反応によって5'部分を合成するための上流プライマーと共に使用し、そして他方を、所望のフラグメントの3'部分を合成するための下流プライマーと共に使用した。野生型Fc配列をテンプレートとして使用した。次いで、2つのPCR産物を混合し、アニールさせ、そして上流プライマーおよび下流プライマーを使用して再び増幅した。γ2変異誘発のために、使用した上流プライマーは、5'GGACACCTTCTCTCCTCCC(配列番号10)であり、そして下流プライマーは、5'CCCAAGCTTGGGTGGGCCGAGCCGGCCTCTGTCC(配列番号11)であった。これらのプライマーは、それぞれ、ヒンジエキソンおよびC2エキソンに隣接する。変異体1のための2つの相補的プライマーは、5'GCACCACCTGCGGCAGGACCGTCA(配列番号12)および5'TGACGGTCCTGCCGCAGGTGGTGC(配列番号13)であった。他の全てのIgG2変異体のための相補的プライマーは、変異させたコドンを除いて同様であった。増幅反応産物を、PstIおよびSfiI(ヒンジエキソンおよびC2エキソンに隣接する2つの制限部位)で切断し、そして生じた525bpフラグメントを、IgG2発現ベクターのPstI部位とSfiI部位との間に導入した。同様に、変異誘発させた241bpのPstI−PmlIフラグメントをγ4のC2エキソンについて産生し、そしてIgG4発現ベクター中に導入した。配列分析を、各発現ベクターについて行い、所望の変異のみが導入されたことを確認した。
【0054】
d.T細胞増殖アッセイ
RPMI+10%FCS中の末梢血単核細胞(PBMC)を、96ウェルマイクロタイタープレートに1ウェル当たり2×10細胞でプレートした。種々の濃度で抗体を添加し、そして細胞を37℃にて3日間インキュベートした。[H]チミジンを1ウェル当たり1μCiで添加し、そして収集前にプレートをさらに12時間インキュベートした。細胞を細胞ハーベスターで収集し、そして[H]チミジン取り込みを液体シンチレーションカウンターで測定した。全てのデータを3連の測定の平均として表した。
【0055】
e.FcRII依存性T細胞再標的アッセイ
活性化したヒトT細胞を、10%FCSを補充したRPMI培地中でPBMCをフィトヘマグルチニン(PHA)と共に37℃にて3日間インキュベートし、続いてIL−2を含有する培地中で5日間継代することによって得た。K562細胞(FcRIIを発現する)を、100μCiの51Crを1mlのRPMI培地中の5×10個の標的細胞に添加することにより、51Crで標識した。37℃での1時間のインキュベーション後、細胞を2回洗浄した。T細胞(50ml)および標識したK562標的細胞(50ml中7×10個)を、U底マイクロタイタープレート中に25:1のエフェクター:標的の比でプレートした。次いで、所望の濃度でキメラ抗CD3抗体を添加した。全てのサンプルを3連でプレートした。プレートを遠心し、37℃にて4時間インキュベートし、そして再び遠心した。各サンプルからの100μlの無細胞上清中に放出された51Crの量を測定することによって、細胞溶解を測定した。計数をBeckmanモデル5500ガンマカウンターで行った。特異的な溶解の割合を以下の式によって決定した:(E−S/M−S)×100。ここで、Eは、サンプルについての3連のサンプルカウント/分の平均であり、Sは、標的細胞のみを有するサンプル中の自発放出であり、そしてMは、標的細胞および100μlの1%SDSを有するサンプルについての最大放出である。
【0056】
f.CD3抗原に対するキメラOKT3抗体の相対的なアビディティを比較するための競合アッセイ
ヒトT細胞を、完全RPMI培地に2.5×10細胞/mlで再懸濁した。試験(キメラOKT3)抗体またはコントロール(マウスOKT3)抗体の希釈物を添加し、そして4℃にて1時間インキュベートした。固定した亜飽和量のFITC結合マウスOKT3を添加し、そして細胞を4℃にて1時間インキュベートし、洗浄し、そして1%パラホルムアルデヒド中で再懸濁した。次いで、細胞をフローサイトメトリーを使用して分析した。各サンプルの蛍光強度を、競合抗体を含まないコントロールの蛍光強度と比較した。値を、コントロールの蛍光強度に対する百分率で表す。
【0057】
g.抗CD3媒介性サイトカイン放出およびCD25発現
PBMCおよび抗体を、T細胞増殖アッセイと同様にプレートした。サンプルを、TNF−αおよびIL−2測定のために24時間目に取り出し、そしてINF−γ測定のために72時間目に取り出した。市販のアッセイキットを使用して、培地中のTNF−αおよびINF−γのレベルを測定した。IL−2のレベルを、IL−2依存性細胞株HT−2を使用する増殖アッセイによって測定した。90時間目の活性化マーカーIL−2レセプター−α(CD25)を発現するT細胞の割合を、二色FACSアッセイを使用して測定した。ヒト化FITC結合抗Tac抗体を使用して、T細胞表面上の活性化マーカーCD25を標識し、そしてマウス抗ヒトCD7抗体を、PE結合ヤギ抗マウスIgGと併用して使用し、全T細胞を標識した。2つの細胞数の比をCD25ポジティブであるT細胞の百分率として表す。
【0058】
2.結果
a.IgG2のC2領域における変異
全ての野生型IgGアイソタイプのC2領域における配列を図3に示す。IgG1およびIgG3は、この領域において同一の配列Leu−Leu−Gly−Glyを有し;そしてIgG4は、234位にPhe残基を有することのみが異なる。しかし、IgG2は、この領域に非常に異なる配列を有する。236位のアミノ酸を欠いていることに加えて、IgG2は、残りの3つの位置のうちの2つの位置(234および235)がIgG1、IgG3、およびIgG4の配列と異なる。IgG2の独特な配列ValAla Glyは、FcRIIのみに対する特異性を説明し得る。
【0059】
変異を、一度に一つまたは組合せのいずれかで、この領域の全ての残基をカバーするように導入した。作製した5つのIgG2Fc改変体の234位〜237位の配列を、図3に示す。最初の3つの変異体は、Ala走査変異(scannig mutation)であった。235位は既にAla残基であるので、235位に変化させなかった。変異体4および5においては、235位もGlu残基に変化させた。マウスIgG2bアイソタイプの抗CD3(分裂促進性でない)は、この位置にGlu残基を有する。比較のために、IgG4の234位および235位に2つのAla置換を含む変異体を作製した(Alegreら、Transplantation,57, 1537(1994)を参照)。IgG2変異体3の重鎖定常領域の全体配列を図4に示す。
【0060】
5つのIgG2変異体定常領域を、OKT3可変領域と組み合わせることによってキメラOKT3抗体に組み込んだ。234位および235位に2つのAla置換を有するIgG4改変体および全ての天然ヒトIgGアイソタイプも同様に行った。さらに、IgG1に由来するキメラOKT3F(ab')を、ロイシンジッパー技術(Kostelnyら、J.Immunol., 148, 1547(1992)を参照)によって作製した。組換えF(ab')には、Fcが全くない。これらのOKT3キメラ抗体およびフラグメントの全てを、8人のドナーからのヒトPBMCを使用する分裂促進アッセイでT細胞増殖について試験した。複数のドナーを使用した。なぜなら、PBMCは、Fcレセプターの多型性に起因して、抗CD3に対し異なって応答し得るからである。有用な抗CD3改変体は、好ましくは、ほとんどまたは全てのドナーからのT細胞に対して非分裂促進性であるべきである。異なる濃度の抗体もまた使用して、T細胞活性化が臨床的に関連する用量範囲で生じないことを確かめた。
【0061】
b.抗CD3 IgG2変異体における減少した分裂促進活性
T細胞増殖アッセイの結果を図5に示す。IgG1およびIgG4アイソタイプの抗CD3抗体は、試験したほとんどのドナーにおいて分裂促進性であり、そしてIgG2およびIgG3アイソタイプの抗CD3に対するドナーの応答に変動が存在した。5つ全てのIgG2変異体は、PBMCにおける分裂促進活性を減弱していたが、野生型IgG2は顕著な増殖を与えた。変異体2〜5は、最も少ない増殖を誘導した。ほとんどのドナーサンプルに対して、変異体2〜5の分裂促進活性は、Fcの無いF(ab')の分裂促進活性と同程度に低く、そしてIgG4変異体より分裂促進性が小さかった。1つのドナー(D)においてのみ、高い抗体濃度(1μg/ml)で、著しい増殖がこれらの変異体について観察されたが、これは、サイトカイン放出ともT細胞活性化マーカーCD25の誘導とも関連しなかった。したがって、変異体2〜5は、不活化抗体の特性を有する。詳細には、それらは、IgG4変異体よりずっと増殖を誘導しない。IgG4変異体は、高濃度(1μg/ml)のIgG1および変異していないIgG4と同程度であった。
【0062】
C.抗CD3 IgG2変異体3は、FcとFcRIIとの相互作用に依存する再標的を媒介しない
Fcレセプターを有する細胞およびT細胞を、抗CD3抗体が機能的なFcを有する場合、抗CD3抗体によって架橋し得る。このような架橋は、T細胞がFcレセプターを有する細胞を溶解(逆向溶解)することを誘発し得る。これは、抗CD3IgG2変異体とFcレセプターとの相互作用についてプローブする高感度なアッセイを提供する。変異体3をこのアッセイにおける代表的なIgG2変異体として選んだ。IgG2は主にFcRIIと相互作用するので、K562細胞(これは、その表面上にFcRIIを発現する)を、IgG2変異体3媒介性逆向溶解についての標的細胞として使用した。データを図6に示す。抗CD3IgG2変異体3は、逆向溶解を媒介することにおいて、F(ab')形態の抗体と同程度に不活性であったが、野生型IgG2は、K562細胞の特異的溶解を32%まで媒介し得た。IgG1アイソタイプの活性は、FcRIIに対する低い親和性に起因して低かったが、IgG1アイソタイプはなお、高い抗体濃度でIgG2レベルと等しい溶解を媒介し得た。別の実験において、抗CD3IgG2および変異体3は共に、FcRI依存性逆向溶解を媒介することにおいて効果的でなかった。したがって、IgG2変異体3のFcに導入した変異は、FcRIに対するIgG2の乏しい親和性を逆転しなかった。これらの実験によって、変異体3は、FcRIおよびFcRIIに対する非常に低い親和性を有することを確認した。
【0063】
d.抗原に対するキメラ抗CD3のアビディティは、実質的に、アイソタイプによってもFc変異によっても影響されなかった
OKT3 IgG2変異体3によるT細胞活性化またはFcRII媒介性逆向溶解の欠如が、そのT細胞への結合の欠如に起因する可能性を排除するために、マウスOKT3、キメラOKT3F(ab')、IgG1、IgG2、およびIgG2変異体3のT細胞に対する相対的なアビディティを上記の競合アッセイを使用して評価した。キメラOKT3IgG1は、FITC標識マウスOKT3ならびに非標識OKT3の結合をブロックした(図7)。したがって、この抗体は、マウスのOKT3のアビディティと非常によく似たアビディティを有さなければならない。キメラOKT3IgG2およびIgG2変異体3は、FITC標識マウスOKT3の結合をブロックすることにおいて、非標識OKT3よりわずかに効率的でなかった。それらのアビディティを、キメラIgG1のアビディティと比較して1/2〜2倍から1/3〜3倍までの範囲内であると推定した。したがって、この実験は、IgG2およびその変異体の抗原結合活性が、実質的に維持されたことを示した。類似のアビディティを有する野生型IgG2は、適切なドナー由来のPBMCにおいてT細胞を活性化し得たので、このようなアビディティのわずかな減少は、変異体3におけるアビディティの欠如を説明するに十分ではない。
【0064】
e.抗CD3 IgG2変異体3はサイトカイン放出を誘導しない
次に、T細胞において、サイトカイン放出を誘導し、そしてIL−2レセプターをアップレギュレートするIgG2変異体の能力を試験した。先に試験した8人のドナーのうち6人からのPBMCを、異なる濃度のキメラOKT3F(ab')ならびにキメラOKT3のアイソタイプIgG1、IgG2、およびIgG2変異体3と共に播種し;そして上清を、24時間での活性化マーカーTNF−αおよびIL−2;ならびに72時間でのIFN−γについて試験した。さらに、T細胞を、90時間での活性化マーカーIL−2レセプター−α(CD25)についてアッセイした。結果を図8および9に示す。予測されたとおり、IgG1が、3つのサイトカインの放出およびCD25発現の誘導において最も活性であった。また、6人すべてのドナーにおいて、IgG2により、測定可能な、CD25の誘導およびサイトカイン放出が存在した。一方、IgG2変異体3は、試験した3つの抗体の中で最も活性化が少なかった。全ての場合において、これらの活性化マーカーは、バックグラウンドを超えてかろうじて検出可能であった。IgG2変異体3の高濃度(1μg/ml)で先にいくらかの増殖が観察されたドナーDにおいてさえ(図5)、これらの活性化マーカーの発現は無視し得た。これらのアッセイに基づいて、抗CD3IgG2変異体3は、T細胞活性化において最小限の効果を有するようであり、そしてこれらの実験において試験したすべての抗体の中で最も安全である。
【0065】
3.ヒト化M291抗体の構築
a.マウスM291可変領域cDNAのクローニングおよび配列決定
マウスM291重鎖および軽鎖可変領域cDNAを、ハイブリドーマ細胞から単離したmRNAから、係留PCR(Coら、J.Immunol. 148: 1149(1992))を使用してクローン化した。使用した5'プライマーは、cDNAに付加したポリdGテイルにアニーリングし、そして3'プライマーは、定常領域にアニーリングした。次いで、増幅したDNAフラグメントをpUC19に挿入し、そしていくつかの重鎖および軽鎖クローンを配列決定し、それぞれが同じであることを見出した。これらの可変領域cDNA配列およびそれらに由来するアミノ酸配列を、図1Aおよび図1Bに示す。
【0066】
b.ヒト化M291可変領域の設計
ヒト化抗体においてマウス抗体の結合親和性を保持するために、Queenらの一般手順に従った(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 10029(1989)およびWO90/07861)。フレームワーク残基の選択は、高結合親和性を保持することにおいて重要であり得る。原則的に、任意のヒト抗体由来のフレームワーク配列は、CDR移植のためのテンプレートとして役立つ;しかし、このようなフレームワークへのストレートなCDR置換は、抗原に対する結合親和性の顕著な喪失を導き得ることが実証されている(Glaserら、J.Immunol.149: 2606(1992);Tempestら、Biotechnology 9:266(1992);Shalabyら、J.Exp.Med. 17: 217(1992))。ヒト抗体が元のマウス抗体に対してより相同であればあるほど、ヒトフレームワークが、親和性を低減させ得る歪みを、マウスCDR中へ導入する可能性は減少する。抗体配列データベースに対する配列相同性検索に基づけば、ヒト抗体HF2−1/17は、マウスM291軽鎖可変領域に対して良好なフレームワーク相同性を提供し、そしてヒト抗体21/28は、マウスM291重鎖可変領域に対して良好なフレームワーク相同性を提供する。しかし、他の高度に相同なヒト抗体、特にヒトサブグループI由来のκ軽鎖またはヒトサブグループI由来の重鎖もまた、適切である(Kabatら(前出)によって規定される)。
【0067】
コンピュータープログラムENCAD(Levittら、J.Mol.Biol. 168: 595(1983))を使用して、M291可変ドメインの分子モデルを構築した。これを使用して、M291フレームワークにおいて、それらと潜在的に相互作用するためにそのCDRに充分近接であるアミノ酸を配置した。ヒト化M291軽鎖可変領域および重鎖可変領域を設計するために、マウスM291抗体由来のCDRを、それぞれヒトHF2−1/17および21/28抗体の軽鎖および重鎖のフレームワーク領域に移植した。コンピューターモデルがCDRとの顕著な接触を示唆するフレームワーク位置で、マウス抗体由来のアミノ酸を、元のヒトフレームワークアミノ酸と置換した。ヒト化M291について、これを、重鎖の残基30、67、68、70、72、および74にて行い、そして軽鎖の残基では行わなかった。また、ヒト抗体のデータベースにおいてそれらの位置でまれに存在するフレームワーク残基を、その位置のヒトコンセンサスアミノ酸により置換した。ヒト化M291について、これを重鎖の残基44にて行った。
【0068】
ヒト化M291抗体(HuM291)軽鎖可変領域および重鎖可変領域の最終的な配列を図1Cおよび1Dに示す。しかし、潜在的なCDR接触残基の多くはは、抗体が抗原に対する実質的な親和性をなお保持することを可能にし得る他のアミノ酸の置換を受け入れ得る。以下の表は、代替のアミノ酸が適切であり得るフレームワーク中の多数の位置を列挙する(LC=軽鎖、HC=重鎖):
位置 HuM291 代替物
LC−69 D E、S
HC−30 I T,V,L
HC−44 G R
HC−67 K R
HC−68 A V
HC−70 L I、V
HC−72 A R
同様に、ヒト化M291可変ドメインにおいてCDRと接触しない多くのフレームワーク残基は、ヒト化抗体の親和性または非免疫原性の顕著な損失を伴うことなく、ヒトHF2−1/17および21/28抗体の対応位置由来か、他のヒト抗体由来か、マウスM291抗体由来か、または他のマウス抗体由来のアミノ酸の置換に適応し得る。以下の表は、代替アミノ酸が適切であり得るフレームワーク中の多くのさらなる位置を列挙する:
位置 HuM291 代替物
LC−3 Q V
LC−4 M L
HC−1 Q E
HC−75 S A、T
HC−81 M I、L,V
代替アミノ酸の組合せの選択を使用して、親和性、特異性、非免疫原性、製造の容易さ、および他の所望の特性の種々の組合せを有する形のヒト化M291を生成し得る。したがって、上記の表における例は、例示のために提供されるのであり、限定のために提供されるのではない。
【0069】
c.ヒト化M291の構築
一旦、ヒト化可変領域アミノ酸配列が上記のように設計された後、シグナルペプチド、スプライスドナーシグナル、および適切な制限部位を含み、上記アミノ酸配列をコードするようにDNAセグメントを構築した。それぞれの可変領域コードセグメントを構築し、そして以下の4段階で10個の重複する合成オリゴヌクレオチドを使用して増幅した:(1)重複オリゴヌクレオチドの4つの中央の対を変性させ、アニーリングさせ、そしてDNAポリメラーゼのクレノウフラグメントで伸長させて、8つのより短いオリゴヌクレオチドから4つのより長い重複オリゴヌクレオチドを生成し;(2)これらの4つのオリゴヌクレオチドを変性して、次いで同様に組み合わせて2つのDNAの重複フラグメントを形成し;(3)得られたオリゴヌクレオチド対を、同様に接合しコードセグメントの中央部分を形成し;そして(4)最後の2つの隣接オリゴヌクレオチド(両方ともXbaI制限部位を含む)をPCRで使用して、コードセグメントをの増幅を完了した。
【0070】
ヒト化可変領域コードセグメントを、ヒトCκコードセグメントまたはヒトCγ2変異体3コードセグメント、またはヒトCγ1コードセグメントのいずれかを含むヒト発現ベクター(すなわち、それぞれ、上記のようなpVk.rgおよびpVg2.D.Tt)または類似ベクターpVg1.D.Ttに挿入した。次いで、軽鎖および重鎖をコードするセグメントを、それぞれ、上記のように発現ベクターに挿入した(図2を参照のこと)。2つの発現プラスミドを、トランスフェクションのための準備においてFspIで直線状にした。およそ20μgの各プラスミドを、製造者の指示に従い1500Vおよび3μFでの2つのパルスでGenePulser装置(Bio-Rad)を用いて、1×10個のTS0細胞に別々にトランスフェクトした。細胞を96ウェルの組織培養プレートに播種し、そして2日後に、選択培地(DMEM、10%FCS、1×ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(Gibco)、1×HT補助因子(Sigma)、0.25mg/mlキサンチン、1μg/mlミコフェノール酸)を適用した。
【0071】
およそ2週間後、出現したクローンを、ELISAにより抗体産生についてスクリーニングした。高度にIgG1を産生するクローンおよびIgG2変異体3クローン由来の抗体を、細胞を血清無添加培地においてコンフルエンシーまで細胞を増殖させ、そして細胞が死滅するまで培養することにより調製した。培養上清を、プロテインGセファロースカラム(Pharmacia)上に流し込み;抗体を0.1Mグリシン−HCl、100mM NaCl、pH2.5で溶出し、続いてリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して透析した。抗体の純度は、アクリルアミドゲル上でそれを流すことにより確認し、そしてその濃度は、1.3mgの抗体タンパク質がOD280読み取り値1.0を有すると仮定してOD280読み取りにより決定した。
【0072】
d.ヒト化M291の特性
CD3への結合についてマウスM291抗体と競合するヒト化M291抗体の能力を評価して、それにより結合親和性を測定するために、漸増する抗体濃度を、それぞれ12.5ngのトレーサ125I標識マウス抗体と混合し、そして0.2mlの結合緩衝液(2%仔ウシ血清、0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)中の4×10のIL−2活性化ヒトT細胞とともに氷上で90分間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして遠心分離し、そしてそれらの放射活性を測定した。結合した抗体と遊離抗体との比を計算した。結合親和性をBerzofskyおよびBerkowerの方法に従って計算した(J.A.BerzofskyおよびI.J.Berkower、FundamentalImmunology, W.E.Paul編、Raven Press, New York、1984)。マウスM291およびIgG1 M291抗体は等量の効率で競合し(図10)、そしてK=1.6×10−1という非常に高い計算上の親和性を有しており、それゆえヒト化手順がもとの抗体の結合親和性を有意には変化させなかった。ヒト化IgG2変異体3(IgG2M3)抗体は、わずかにより少なく良好に競合しなかった。これはおそらく、IgG2ヒンジ領域の、より大きい硬直性のためである。しかし、これはなお、K=5×10−1という高い親和性を有していた。
【0073】
種々のドナー由来のPBMCを用いてT細胞増殖およびリンホカイン放出を誘導するヒト化M291IgG2M3抗体の能力は、上記のキメラOKT3 IgG2変異体について上述した実験に類似した実験において評価した。それらの変異体のように、ヒト化M291 IgG2M3抗体は、より少ない増殖を誘導し、そしてほとんどまたは全てのドナーからのサイトカインIFN−γおよびTNF−αならびにIL−2の放出は全くないか低減していた(図11)。
以上に引用したすべての刊行物および特許出願は、本明細書中で参考としてその全体が、各々の刊行物または特許出願が、特異的におよび個々に、そのように参考として援用されると示されるのと同程度の全ての目的のために援用される。本発明は、明瞭さおよび理解の目的で図面および実施例によりいくらか詳細が記載されているが、特定の変化および改変が添付の請求の範囲の範囲内で実施され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1A】マウス(A〜B)またはヒト化(C〜D)M291抗体の軽鎖(A、C)および重鎖(B、D)可変領域のcDNA配列(配列番号:1、3、5、および7)および翻訳アミノ酸配列(配列番号:2、4、6、および8)である。各成熟鎖の第1のアミノ酸を、二重下線により示す。各鎖の3つのCDRに下線を付す。
【図1B】マウス(A〜B)またはヒト化(C〜D)M291抗体の軽鎖(A、C)および重鎖(B、D)可変領域のcDNA配列(配列番号:1、3、5、および7)および翻訳アミノ酸配列(配列番号:2、4、6、および8)である。各成熟鎖の第1のアミノ酸を、二重下線により示す。各鎖の3つのCDRに下線を付す。
【図1C】マウス(A〜B)またはヒト化(C〜D)M291抗体の軽鎖(A、C)および重鎖(B、D)可変領域のcDNA配列(配列番号:1、3、5、および7)および翻訳アミノ酸配列(配列番号:2、4、6、および8)である。各成熟鎖の第1のアミノ酸を、二重下線により示す。各鎖の3つのCDRに下線を付す。
【図1D】マウス(A〜B)またはヒト化(C〜D)M291抗体の軽鎖(A、C)および重鎖(B、D)可変領域のcDNA配列(配列番号:1、3、5、および7)および翻訳アミノ酸配列(配列番号:2、4、6、および8)である。各成熟鎖の第1のアミノ酸を、二重下線により示す。各鎖の3つのCDRに下線を付す。
【図2】キメラ抗CD3抗体を発現するプラスミド構築物。OKT3のVおよびVcDNAから、XbaI部位に隣接したエキソンを作製した。V配列を発現ベクターpVk.rg中に組み込み、そしてV配列を重鎖発現ベクターpVg2.D.Tt中に組み込んだ。次いで、2つのプラスミドを組換え、重鎖および軽鎖を同時発現する1つの単一プラスミドを生成した。PstIおよびSfiI部位は、これらのプラスミドにおいて特有ではない。
【図3】4つのヒトIgGアイソタイプ、5つのIgG2変異体、および1つのIgG4変異体のC2領域における配列。残基について、EU番号付けシステムを使用した。
【図4】IgG2変異体3の重鎖定常領域におけるアミノ酸配列(配列番号9)。C1ドメインは残基118〜215から、ヒンジは残基216〜230から、C2は残基231〜340から、そしてC3は残基341〜447からなる。記号「−」は、EUとの正確なアライメントのために導入されたスペースを示す。野生型IgG2から変異した残基に下線を付す。残基234〜237を除いて、5つのIgG2変異体は全て同一配列を有する。5つの変異体についてのその領域における配列を、図3に示す。全ての残基を、EU番号付けシステムに従って命名する。
【図5】キメラOKT3抗CD3抗体に応答したT細胞増殖。キメラ抗CD3抗体により誘導された8人のヒトドナー(ドナーA〜H)由来のPBMCによる[H]−チミジン取り込みを測定した。PBMCを、各抗CD3抗体と、10ng/ml、100ng/ml、および1μg/mlで72時間インキュベートし、さらに12時間、[H]−チミジンでパルスし、そして同位体の取り込みをシンチレーション計数により測定した。PBSは、リン酸緩衝化生理食塩水コントロールであり、Fosは、ロイシンジッパーFosを含むキメラ抗CD3分子のF(ab')形を表し、M1〜M5は、IgG2変異体1〜5を示し、AAは、IgG4のAla−Ala変異体を示し、そしてVZVIgG1は、コントロールの非関連ヒト化抗体である。
【図6】再標的化T細胞芽球による溶解。[51Cr]−標識化K562細胞およびヒトT細胞芽球を、4時間、種々の濃度のキメラ抗CD3抗体とインキュベートし、51Crの放出を測定した。Fosは、キメラ抗CD3分子のF(ab')形を表す。
【図7】キメラOKT3抗CD3抗体の相対的アビディティーを比較するための競合アッセイ。活性化したヒトT細胞上の亜飽和量(subsaturating amount)のマウスOKT3−FITCを、マウスOKT3もしくはキメラOKT3−IgG1、IgG2、およびIgG2変異体3の量を増加させることによって置き換えた。VZVIgG1は、非関連性ヒト化抗体である。値を、任意の競合抗体を含まないコントロールの蛍光強度と比較したときの蛍光強度阻害率で表す。
【図8】キメラOKT3抗CD3抗体により誘導されるIFN−γおよびTNF−αの放出。6人のヒトドナー(ドナーC〜H)からのPBMCを、3種の濃度の各抗体と共に、T細胞増殖アッセイと同様にプレートした。IFN−γの濃度(上段図)を72時間で、TNF−αの濃度(中段図)を24時間で測定した。記号(★)は、サイトカインの濃度がアッセイの上限を超えることを示す。試験した抗体に対する各ドナーのT細胞増殖プロフィールを図5から得、そして下段図に示す。使用した4つの抗体は、キメラOKT3F(ab')(Fos)、IgG1、IgG2、およびIgG2変異体3(M3)であった。PBSは、任意の抗体を含まないネガティブコントロールである。
【図9】キメラOKT3抗CD3抗体によるT細胞におけるIL−2の放出およびIL−2レセプターα(CD25)の発現の誘導。6人のヒトドナー(ドナーC〜H)からのPBMCを、3種の濃度の各抗体と共に、T細胞増殖アッセイと同様にプレートした。CD25を発現するT細胞(CD7ポジティブ)の割合を、フローサイトメトリーにより90時間で測定し(上段図)、そしてIL−2の濃度を24時間で測定した(中段図)。試験した抗体に対する各ドナーのT細胞増殖プロフィールを図5から得、そして下段図に示す。使用した4つの抗体は、抗CD3F(ab')(Fos)、IgG1、IgG2、およびIgG2変異体3(M3)であった。PBSは、任意の抗体を含まないネガティブコントロールである。
【図10】マウスおよびヒト化M291抗体の競合結合。漸増濃度の非放射性競合体抗体を、放射性標識トレーサーマウスM291抗体の存在下で、T細胞と共に、インキュベートし、そして結合/遊離放射活性の比を測定した。
【図11】ヒト化M291抗CD3抗体により誘導されるTNF−α、IFN−α、およびIL−2の放出。アッセイを、示した抗体濃度を使用して、5人のヒトドナー由来のPBMCを用いて図8と同様に行い、そしてサイトカイン放出を、示した時間で測定した。
【0075】
(配列表)
【0076】
【数1−1】

【0077】
【数1−2】

【0078】
【数1−3】

【0079】
【数1−4】

【0080】
【数1−5】

【0081】
【数1−6】

【0082】
【数1−7】

【0083】
【数1−8】

【0084】
【数1−9】

【0085】
【数1−9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例等に記載される変異したIgG2構築物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−106771(P2007−106771A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332689(P2006−332689)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【分割の表示】特願平9−542664の分割
【原出願日】平成9年5月19日(1997.5.19)
【出願人】(500533422)ピーディーエル バイオファーマ,インコーポレイティド (18)
【出願人】(501366683)フレッド ハッチンソン キャンサー リサーチ センター (1)
【Fターム(参考)】