説明

変色性積層体

【課題】 水等の媒体による繰り返しの使用において、有色不透明から有色透明に変色する機能を永続して示すと共に、汚染の虞がなく、実用性と安全性を満足させる変色性積層体を提供する。
【解決手段】 支持体上に、多孔質低屈折率白色顔料と、前記多孔質低屈折率白色顔料とは色調が異なる有色顔料とをバインダー樹脂に分散状態に固着させてなり、多孔質低屈折率白色顔料の平均細孔直径A(μm)と有色顔料の平均粒子径B(μm)が下記関係式(1)を満たす、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる変色性積層体。
0.02μm≦2A<B≦10μm (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色性積層体に関する。更に詳細には、水等の液体を吸液して常態とは異なる様相に変化し、乾燥により再び常態に復する変色性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体上に低屈折率顔料と一般の着色剤を含有する多孔質層を設け、前記多孔質層に液体を吸液させることにより多孔質層が透明化して、乾燥状態とは異なる様相に色調が視認される変色性積層体(シート状物)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記した変色性積層体は、乾燥状態(非吸液状態)においては多孔質層中の低屈折率顔料が光を散乱させることから、該層中に含まれる着色剤による色調が視認され、前記多孔質層に水等の液体を吸液させると低屈折率顔料による光の散乱が抑制されて、前記着色剤の色調が明瞭に視認されたり、或いは、下層の色調と着色剤の色調が混色となった様相を視認できるものである。
しかし、前記変色性積層体は、水を適用した際、多孔質層に含まれる着色剤が層中から流出して所望の変色効果を発現できなかったり、汚染の原因になることがあった。これは、着色剤のバインダー樹脂に対する固着性が十分でないことに起因するものである。
【特許文献1】実開昭49−130913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記した従来の変色性積層体の不具合を解消しようとするものであって、即ち、水等の媒体の適用により多孔質層が有色不透明から有色透明に変色する機能を永続して示すことができ、しかも、使用者や使用場所を汚染する虞のない変色性積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、支持体上に、多孔質低屈折率白色顔料と、前記多孔質低屈折率白色顔料とは色調が異なる有色顔料とをバインダー樹脂に分散状態に固着させてなり、多孔質低屈折率白色顔料の平均細孔直径A(μm)と有色顔料の平均粒子径B(μm)が下記関係式(1)を満たす、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる変色性積層体を要件とする。
0.02μm≦2A<B≦10μm (1)
更には、前記多孔質層中に、多孔質低屈折率白色顔料1重量部に対してバインダー樹脂が0.5〜2重量部存在してなり、且つ、有色顔料が0.0001〜1重量部存在してなることを要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、水等の媒体による繰り返しの使用において、有色不透明から有色透明に変色する機能を永続して示すと共に、汚染の虞がなく、実用性と安全性を満足させる変色性積層体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記支持体上に形成される多孔質層は、多孔質低屈折率白色顔料と有色顔料とをバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層である。
前記多孔質低屈折率白色顔料としては、珪酸及びその塩、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液状組成物を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
又、前記多孔質低屈折率白色顔料は2種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる多孔質低屈折率白色顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、実用性を満たす。
この点を説明すると、珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別されるが、本発明の意図する多孔質層として機能させるためには、湿式法珪酸が最適である。
これは、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、前記本発明の多孔質層においては、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
尚、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の汎用の多孔質低屈折率白色顔料を併用することもできる。
【0007】
前記多孔質層中の湿式法珪酸は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1g/m2 〜30g/m2 であることが好ましく、より好ましくは、5g/m2 〜20g/m2 である。1g/m2 未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/m2 を越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
【0008】
前記多孔質低屈折率白色顔料と共に用いられる顔料は、多孔質低屈折率白色顔料と色調が異なる顔料である。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、金属粉顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
【0009】
前記多孔質低屈折率白色顔料及び有色顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、基材に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記多孔質低屈折率白色顔料と、バインダー樹脂の混合比率は、多孔質低屈折率白色顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、好ましくは、0.8〜1.5重量部である。多孔質低屈折率白色顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、従来より公知の一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本発明においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分重量比率で30%以上含有させることが好ましい。前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0010】
前記多孔質層に含まれる多孔質低屈折率白色顔料と有色顔料については、以下の関係式(1)を満たすことにより、従来の変色性積層体の不具合を解消できる。
0.02μm≦2A<B≦10μm (1)
ここで、Aは多孔質低屈折率白色顔料の平均細孔直径(μm)であり、Bは有色顔料の平均粒子径(μm)である。
本発明において何故、多孔質低屈折率白色顔料の平均細孔直径と有色顔料の平均粒子直径が関係式(1)を満たす必要があるのかを説明すると、有色顔料による汚染、即ち、層中から有色顔料が流出するのは、バインダー樹脂によって前記顔料が固着されていないことが要因として挙げられる。
これは、多孔質低屈折率白色顔料が乾燥状態で光を散乱させ、吸液状態で透明化する現象を生じさせるために、該顔料に微細な孔(細孔)を有することに起因する。
前記多孔質低屈折率白色顔料と有色顔料を含む多孔質層を形成する際、水等の溶媒中に低屈折率白色顔料、有色顔料、バインダー樹脂を分散したインキを調製し、支持体上に塗工した後、溶媒を蒸発させて多孔質層が形成されるが、その過程において多孔質低屈折率白色顔料の細孔に有色顔料が入り込むと、バインダー樹脂に固着することなく、多孔質層中に存在することになる。よって、多孔質層に水等の媒体を適用して変色させる際、細孔に入り込んだ有色顔料が系外に流出し易くなり、使用者の手や服に付着したり、机等の使用場所に付着して汚染を生じることになる。また、顔料の流出により繰り返しの使用により色濃度が低下して十分な変色機能を示さなくなることもある。
従って、有色顔料の平均粒子径(B)を多孔質低屈折率白色顔料の平均細孔直径(A)の2倍以上とすることにより、一般的な正規分布からなる有色顔料の大多数が低屈折率白色顔料の細孔内に入り込むことを抑制し、前記した有色顔料の流出を防止するものである。
なお、多孔質低屈折率白色顔料の細孔径(A)が0.01μm未満では、水等の媒体の吸液に乏しくなる。また、有色顔料の平均粒子径が10μmを越えると、インキの調製や多孔質層中での均質な分散が困難になり、変色機能を損ない易くなる。
また、多孔質層中に、多孔質低屈折率白色顔料1重量部に対して、有色顔料は0.0001〜1重量部存在していることが好ましく、より好ましくは多孔質低屈折率白色顔料1重量部に対して、有色顔料は0.001〜0.5重量部存在してなる。
有色顔料が0.0001重量部未満では乾燥状態における有色効果を発現でき難く、また、1重量部を越えると、吸液した際の色相変化が判別し難くなる。
【0011】
前記多孔質層の上層、下層、近傍には着色層を配設して様相変化を更に多様化させることができる。
前記多孔質層及び着色層は、ベタ印刷状のものに限らず、文字、記号、図柄等の像であってもよい。
前記多孔質層及び着色層は、従来より公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【0012】
前記支持体としては、織物、編物、組物、不織布等の布帛以外に、紙、合成紙、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、木材、石材等が挙げられ、すべて有効である。
【0013】
本発明の変色性積層体は平面状に限らず、線状、凹凸状、立体状等、様々な形態が有効である。
前記変色性積層体の具体的な実施形態としては、例えば、ぬいぐるみ、人形、レインコート等の人形用衣装、傘や鞄等の人形用付属品、水鉄砲の標的、車や船を模した模型、人間と人形の手形や足形等の形跡を現すボード等の玩具類、水筆紙、水筆シート等の教習具類、文房具類、ドレス、水着、レインコート等の衣類、雨靴等の靴類、防水加工を施した本、カレンダー等の印刷物類、スタンプカード、パズル、各種ゲーム等の娯楽用具類、ウェットスーツ、浮袋、水泳用浮板等の遊泳又は潜水用具類、コースター、コップ等の台所用具類、その他、傘、造花、当りくじ等が挙げられる。
又、各種インジケーターとして適用することもでき、例えば、配管、パイプ、水槽、タンク等の液洩れ検知、禁水性薬品の輸送や保管場所での水濡れ検知、結露、降雨等の検知、使い捨ておむつの尿の検知、各種容器やプールの液量、水深検知、土壌中の水分検知等が挙げられる。
【0014】
前記多孔質層に水を付着させる方法としては、手や指を水で濡らして多孔質層に接触させる方法、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、或いは、スポンジに水を含浸させて多孔質層に接触させる方法、水を収容した容器を多孔質層に近接又は接触させ、容器内から水を導出して付着させる方法、印面に連続気泡又は独立気泡を有する発泡体を固着したスタンプ具に水を含浸させて多孔質層に付着させる方法、プラスチックやゴムの印面を粗面に形成したスタンプ具に水を付着させ、多孔質層に接触させる方法が挙げられる。
尚、水を収容した容器を多孔質層に近接又は接触させ、容器内から水を導出して付着させる方法としては、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けて水を塗布する方法、容器内に水を収容し、且つ、噴霧装置を設けて、水をスプレーする方法、注射器のように容器内の水を押圧して、水を噴出させる方法等が挙げられる。
前記水を付着させる手段としては、筆記又は塗布具、スポンジ、スタンプ具、スプレー装置、注射器を例示できる。
なお、好ましい水付着手段としては、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具、或いは、スタンプ具であり、任意の筆記像又は印像を簡便に形成でき、実用性を高めることができる。
前記における連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体は、水を適宜量、吸収し、吐出させるものであればよく、従来より汎用のポリオレフィン系、ポリウレタン系、その他各種プラスチックの連続気孔体や繊維を集束させた毛筆状のもの、繊維の樹脂加工又は熱溶着加工によるもの、フェルト、不織布形態のものを挙げることができ、形状、寸法は目的に応じて任意に設定できる。
更には、前記積層体にステンシルを組み合わせて所望の像を簡易に形成することもできる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。尚、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1
支持体として白色のナイロンタフタ生地を用いて、前記生地上に多孔質低屈折率白色顔料として平均細孔直径が0.02μmの湿式法微粒子状珪酸13部、平均粒子径が2.0μmのピンク色顔料2部、バインダー樹脂として固形分30%の水性ウレタン樹脂50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤2部を均一に混合攪拌してなるスクリーン印刷用インキにて、180メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥、硬化させて、乾燥状態で淡ピンク色の多孔質層を形成して変色性積層体を得た。
前記変色性積層体は乾燥状態で淡ピンク色を呈しているが、水で濡らすと鮮やかな濃ピンク色に速やかに変色した。
水に濡れた状態では濃ピンク色を呈していたが、室温下に放置して乾燥させると水が蒸発するに従い、徐々に元の淡ピンク色に戻った。
この現象は何度も繰り返し行うことができた。
なお、前記変色性積層体に水を適用した際の多孔質層からの有色顔料の流出も一切なく、繰り返しの使用によって色調が薄くなったり、適用した水で手や服が汚染されることはなかった。
【0016】
実施例2
実施例1の平均粒子径が2.0μmのピンク色顔料を平均粒子径0.05μmのピンク色顔料に変えた以外は同様にして変色性積層体を得た。
前記変色性積層体は実施例1と同様に乾燥状態では淡ピンク色を呈しているが、水で濡らすと鮮やかなピンク色に速やかに変色した。水に濡れた状態では濃ピンク色を呈していたが、室温下に放置して乾燥させると水が蒸発するに従い、徐々に元の淡ピンク色に戻った。
この現象は何度も繰り返し行うことができた。
なお、前記変色性積層体に水を適用した際の多孔質層からの有色顔料の流出も一切なく、繰り返しの使用によって色調が薄くなったり、適用した水で手や服が汚染されることはなかった。
【0017】
実施例3
支持体として青色合成紙を用いて、前記支持体上に多孔質低屈折率白色顔料として平均細孔直径が0.025μmの湿式法微粒子状珪酸14部、平均粒子径が0.08μmのピンク色顔料1部、バインダー樹脂として固形分30%の水性ウレタン樹脂50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合攪拌してなるスクリーン印刷用インキにて、180メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷し、70℃で30分間乾燥、硬化させて、乾燥状態で淡ピンク色の多孔質層を形成して変色性積層体を得た。
前記変色性積層体は乾燥状態で淡ピンク色を呈しているが、水で濡らすと多孔質層が透明な濃ピンク色に変化し、濃ピンク色と支持体の青色が混色になった紫色に速やかに変色した。
水に濡れた状態では紫色を呈していたが、室温下に放置して乾燥させると水が蒸発するに従い、徐々に元の淡ピンク色に戻った。
この現象は何度も繰り返し行うことができた。
なお、前記変色性積層体に水を適用した際の多孔質層からの有色顔料の流出も一切なく、繰り返しの使用によって色調が薄くなったり、適用した水で手や服が汚染されることはなかった。
【0018】
実施例4
支持体として白色のT/Cブロード生地を用いて、前記生地上にピンク色蛍光顔料10部、水性アクリル酸エステルエマルジョン樹脂(固形分50%)50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤5部、レベリング剤1部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合攪拌してなる蛍光ピンク色のスクリーン印刷用インキにて、150メッシュのスクリーン版を用いて全面にベタ印刷を行い、130℃で5分間乾燥、硬化させて非変色層を形成した。
次いで、多孔質低屈折率白色顔料として平均細孔直径が0.01μmの湿式法微粒子状珪酸15部、平均粒子径が0.03μmの青色顔料0.5部、バインダー樹脂として固形分30%の水性ウレタン樹脂50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤2部を均一に混合攪拌してなるスクリーン印刷用インキにて、100メッシュのスクリーン版を用いて、前記非変色層上の全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥、硬化させて、乾燥状態で淡青色の多孔質層を形成して変色性積層体を得た。
前記変色性積層体は乾燥状態で淡青色を呈しているが、水で濡らすと多孔質層が透明な濃青色に変化し、濃青色と非変色層のピンク色が混色になった紫色に速やかに変色した。水に濡れた状態では紫色を呈していたが、室温下に放置して乾燥させると水が蒸発するに従い、徐々に元の淡青色に戻った。
この現象は何度も繰り返し行うことができた。
なお、前記変色性積層体に水を適用した際の多孔質層からの有色顔料の流出も一切なく、繰り返しの使用によって色調が薄くなったり、適用した水で手や服が汚染されることはなかった。
【0019】
実施例5
支持体として、白色のレーヨンツイル生地上に、青色顔料5部、水性アクリル酸エステルエマルジョン樹脂(固形分50%)50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤5部、レベリング剤1部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合攪拌してなる蛍光ピンク色のスクリーン印刷用インキにて、150メッシュのスクリーン版を用いて全面にベタ印刷を行い、130℃で5分間乾燥、硬化させて非変色層を形成した。
次いで、多孔質低屈折率白色顔料として平均細孔直径が0.03μmの湿式法微粒子状珪酸10部、平均粒子径が0.5μmの黄色顔料5.0部、バインダー樹脂として固形分40%の水性ウレタン樹脂37.5部、水42.5部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤2部を均一に混合攪拌してなるスクリーン印刷用インキを100メッシュのスクリーン版を用いて、前記非変色層上に全面にベタ印刷し、130℃にて5分間乾燥硬化させて、乾燥状態で淡黄色の多孔質層を形成し、変色性積層体を得た。
前記変色性積層体は乾燥状態で淡黄色を呈しているが、水で濡らすと多孔質層が透明な濃黄色に変化し、濃黄色と非変色層の青色が混色となった緑色に速やかに変色した。
水に濡れた状態では緑色を呈していたが、室温下に放置して乾燥させると水が蒸発するに従い、徐々に元の淡黄色に戻った。
この現象は何度も繰り返し行うことができた。
なお、前記変色性積層体に水を適用した際の多孔質層からの有色顔料の流出も一切なく、繰り返しの使用によって色調が薄くなったり、適用した水で手や服が汚染されることはなかった。
【0020】
実施例6
支持体として青色に着色されたポリエステルシート(厚み50μm)上に、多孔質低屈折率白色顔料として平均細孔直径が0.02μmの湿式法微粒子状珪酸15部、平均粒子径が0.1μmのピンク色顔料1部、バインダー樹脂として固形分30%の水性ウレタン樹脂50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、イソシアネート系架橋剤2部を均一に混合攪拌してなるスクリーン印刷用インキにて、180メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷し、150℃で3分間乾燥、硬化させて、乾燥状態で淡ピンク色の多孔質層を形成して変色性積層体を得た。
前記変色性積層体は乾燥状態で淡ピンク色を呈しているが、水で濡らすと多孔質層が透明な濃ピンク色に変化し、濃ピンク色と支持体の青色が混色になった紫色に速やかに変色した。
水に濡れた状態では紫色を呈していたが、室温下に放置して乾燥させると水が蒸発するに従い、徐々に元の淡ピンク色に戻った。
この現象は何度も繰り返し行うことができた。
なお、前記変色性積層体に水を適用した際の多孔質層からの有色顔料の流出も一切なく、繰り返しの使用によって色調が薄くなったり、適用した水で手や服が汚染されることはなかった。
【0021】
比較例1
実施例1の平均粒子径が2.0μmのピンク色顔料を平均粒子径が0.03μmのピンク色顔料に替えた以外は同様にして、変色性積層体を得た。
【0022】
比較例2
実施例3の平均粒子径が0.08μmのピンク色顔料を平均粒子径が0.03μmのピンク色顔料に替えた以外は同様にして、変色性積層体を得た。
【0023】
着色試験
実施例1乃至3、及び、比較例1、2で作製した変色性積層体の多孔質層上に、20℃の環境下にて1mlの水を滴下し、多孔質層中に完全に浸透させた。
多孔質層上に、白色の濾紙〔東洋アドバンテック製〕を載置して浸透した水を吸液させ、前記濾紙を乾燥させた後、目視により着色(汚染)の程度を観察した。
なお、目視による評価は濾紙に付着した着色顔料のAATCCの9ステップクロミックトランスファーレンススケールを用いた評価であり、以下に評価の基準を示す。
5級:濾紙に全く着色(汚染)がみられない。
4〜5級:濾紙に僅かな着色(汚染)がみられるがものの、実用上問題ない。
3〜4級:濾紙に着色(汚染)がみられる。
2〜3級:濾紙に著しい着色(汚染)がみられる。
1〜2級:濾紙に非常に著しい着色(汚染)がみられる。
その結果を以下の表に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
前記試験結果にみられるように、本発明の変色性積層体は比較例の変色性積層体と比較して、多孔質層からの有色顔料の流出が一切なく、適用した水で着色(汚染)されることがないことが判明した。
従って、繰り返しの使用による変色性積層体の変色効果を損なうこともない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、多孔質低屈折率白色顔料と、前記多孔質低屈折率白色顔料とは色調が異なる有色顔料とをバインダー樹脂に分散状態に固着させてなり、多孔質低屈折率白色顔料の平均細孔直径A(μm)と有色顔料の平均粒子径B(μm)が下記関係式(1)を満たす、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる変色性積層体。
0.02μm≦2A<B≦10μm (1)
【請求項2】
前記多孔質層中に、多孔質低屈折率白色顔料1重量部に対してバインダー樹脂が0.5〜2重量部存在してなり、且つ、有色顔料が0.0001〜1重量部存在してなる請求項1記載の変色性積層体。

【公開番号】特開2006−43971(P2006−43971A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226347(P2004−226347)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】