説明

変色性金属超微粒子含有組成物及び消臭判定方法

【課題】吸着効果を視認可能な変色性金属超微粒子含有組成物を提供することである。
【解決手段】300乃至700nmにプラズモン吸収を有する金属超微粒子が分散されて成る組成物であって、前記金属超微粒子が硫黄含有成分と反応することにより、変色することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属超微粒子含有樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、金属超微粒子が硫黄含有成分と反応することにより変色し、吸着効果の判定を行うことが可能な金属超微粒子含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より熱可塑性樹脂に配合して成形品に消臭機能を付加させるための消臭物質は種々提案されている。
例えば、活性炭や、多孔質ゼオライトやセピオライト等の無機フィラーや、或いは光触媒作用を応用した酸化チタンは、広範な臭気成分を消臭可能であると共に熱可塑性樹脂との溶融混練も可能な耐熱性を有している(特許文献1)。
しかしながら、従来の無機フィラーや、光触媒作用を応用した消臭剤、或いは多孔性物質を利用したものは、消臭(吸着)効果が発現されているか否かを容易に確認することができず、その消臭(吸着)効果の終了時期を簡単且つ明確に知ることができることが望まれている。
【0003】
このような問題を解決するためにインジケータ付きの消臭組成物も知られており、例えば下記特許文献2には、消臭繊維を含有する繊維基材の表面に、有臭ガス吸着に伴って変色する前記繊維基材の色と基準色表示部の色との差異により消臭能力の変化が視認できるようにしたものが提案されている。
また本出願人等は、脂肪酸の銀や金塩と樹脂との混合物を当該脂肪酸金属塩の熱分解開始温度以上且つ樹脂の劣化温度未満の温度で加熱成形して、平均粒径1〜100nmである金属超微粒子が分散生成されて成る樹脂成形物を提案し(特許文献3)、このような金属超微粒子がメチルメルカプタン等の悪臭成分、或いはホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds 以下「VOC」という)に対する吸着性能を有すると共に、抗菌性、アレルゲン物質などの微小蛋白質を不活性化する性質を有することが明らかにされている(特願2006−237898及び特願2006−332077)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−75434号公報
【特許文献2】特開2003−301356号広報
【特許文献3】特開2006−348213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記金属超微粒子からなる吸着性樹脂組成物においても、吸着性能の持続期間は、使用環境等によって変化するため、吸着効果の終了時期が目視により簡単に確認できれば、金属超微粒子の吸着性能をより効果的に利用することが可能となる。
従って本発明の目的は、吸着効果を視認可能な変色性金属超微粒子含有組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、金属超微粒子が硫黄含有成分と反応することにより変色し、吸着効果の判定を行うことが可能な吸着性能判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、300乃至700nmにプラズモン吸収を有する金属超微粒子が分散されて成る組成物であって、前記金属超微粒子が硫黄含有成分と反応することにより、変色することを特徴とする金属超微粒子含有組成物が提供される。
本発明の金属超微粒子含有組成物においては、
1.金属超微粒子が、有機酸成分と金属間で結合を有するものであること、
2.金属超微粒子が、1×10−6乃至20重量%の量で含有されていること、
3.金属が、銀であること、
4.硫黄含有成分が、臭気成分であること、
が好適である。
【0007】
本発明によればまた、上記金属超微粒子含有組成物の変色により、消臭性能を判定することを特徴とする消臭判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属超微粒子含有組成物においては、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル等の硫黄成分を含有する臭気成分を吸着することにより金属超微粒子自体が変色し、吸着開始或いは吸着初期の色との差異によって吸着効果の終了を知ることが可能となる。
本発明の金属超微粒子含有組成物では、金属超微粒子が、吸着機能及びインジケータ機能の両方を兼ね備えているため、特別な変色剤を必要とせず、簡単な組成でインジケータ機能を有する吸着剤を成形することができる。
更に本発明の消臭判定方法によれば、金属超微粒子含有組成物の消臭性能が一目で確認することができ、消臭剤の交換時期等を容易に知ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
金属超微粒子は特定の波長の光を吸収するプラズモン吸収という現象を示し、この現象の結果、金属種に固有の発色を示すことが知られている。
本発明においては、300乃至700nmの範囲のプラズモン吸収を有する金属超微粒子が、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル等の一般に悪臭成分と認識される硫黄含有成分を吸着することにより、明らかな色変化が生じることを見出し、かかる金属超微粒子自体の変色を利用し、吸着効果の終了を目視により容易に確認し得る金属超微粒子含有組成物を提供することが可能となる。
また本発明の金属超微粒子含有組成物の変色変化を目視で容易に判断し得るためには、金属超微粒子が樹脂中、或いは分散媒中に1×10−6乃至20重量%の量で含有されていることが望ましい。
【0010】
本発明のこのような作用効果は、後述する実施例の結果からも明らかである。すなわち、銀超微粒子を含有するフィルム(実施例1〜3)においては、硫黄含有成分の吸着を開始する前は、分光透過率の測定の300乃至700nmの波長範囲においてプラズモン吸収に起因する明確なピークが確認されると共に、黄色を呈していた銀超微粒子含有フィルム組成物が、硫黄含有成分の吸着が飽和に達したときに、上記範囲の波長に生じていた、明確なピークが不明瞭になると共に、フィルムの色は赤茶色に変色しており、このような肉眼により識別可能な色変化により、金属超微粒子含有組成物の吸着効果が終了したことが一目で明らかになっている。
【0011】
本発明における金属超微粒子は、有機酸成分と金属間で結合を有する金属超微粒子であって、前記有機酸成分と金属間の結合に由来する1518cm−1付近赤外吸収ピークを有するものであり、これにより金属超微粒子が有する優れた表面活性及び大きな表面積による臭気成分への優れた反応性、高い吸着速度及び大きな吸着量を具備しながら、通常の金属超微粒子のように、樹脂中に配合された場合に生じる、樹脂の分解を促進し、樹脂の成形性を著しく阻害する、ということが有効に防止されている。
すなわち本発明で用いる金属超微粒子においては、金属超微粒子表面に有機酸成分を存在させることにより、金属表面と樹脂との直接接触を低減させることが可能となり、樹脂の分解を有効に抑制することができ、樹脂の分子量の低下等を低減することができるため、成形性が阻害されない。
【0012】
(金属超微粒子)
本発明の変色性金属微粒子含有組成物において、金属超微粒子の金属成分は、300乃至700nmにプラズモン吸収を有すると共に、硫黄と反応して変色するものであることが重要であり、Ag、Au、Cu等を挙げることができ、中でもAgを好適に用いることができる。
また上記金属を主成分とする限り、吸着性能は有するが硫黄と変色反応を生じない他の金属、Id、Pd、Pt、Fe、Ni、Co、Zn、Nb、Ru、Rh等を組合せで用いることもできる。
本発明においては、かかる金属が有機酸と結合を有していることが重要な特徴であり、有機酸としては、ミリスチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,パルミチン酸,n−デカン酸,パラトイル酸,コハク酸,マロン酸,酒石酸,リンゴ酸,グルタル酸,アジピン酸、酢酸等の脂肪族カルボン酸、フタル酸,マレイン酸,イソフタル酸,テレフタル酸,安息香酸、ナフテン酸等の芳香族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸等を挙げることができる。
本発明においては、用いる有機酸が、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸であることが特に好ましく、また、炭素数の多いものであることにより、有機酸成分自体も臭気成分を吸着することができ、消臭効果をより向上することが可能となる。
【0013】
金属超微粒子の好適な出発物質である有機酸金属塩としては、特にミリスチン酸銀、ステアリン酸銀等を挙げることができ、これらの脂肪酸金属塩は、含水率が200ppm以下のものであることが、樹脂中或いは分散媒中で金属超微粒子化とその均一分散される上で望ましい。
本発明の金属超微粒子は、金属超微粒子の出発物質である、有機酸金属塩を不活性ガス雰囲気で熱処理することにより、金属超微粒子単体を生成することができるが、好適には、後述するように、有機酸金属塩を熱可塑性樹脂、塗料、或いは分散媒と混合し、熱処理を経ることによって、これらの中で均一分散された金属超微粒子を生成したものであることが特に望ましい。
本発明の金属超微粒子は、その最大径が1μm以下、特に1乃至100nmの範囲にあることが望ましい。
【0014】
(金属超微粒子含有組成物)
上述したように、本発明の金属超微粒子含有組成物は、成形加工等の際の熱処理によって、組成物中で金属超微粒子を形成し均一分散させ、組成物中に上述した作用効果を金属超微粒子を存在させたものであることが好ましい。
尚、本明細書において、金属超微粒子含有組成物とは、ペレット、フィルム、シート等の樹脂成形体や、塗料(コーティング剤)から形成された塗膜、或いは分散媒中に金属超微粒子を分散した分散液をも含む概念である。以下、本発明の金属超微粒子含有樹脂組成物を、樹脂成形体、塗膜、分散液に分けて説明する。
【0015】
[樹脂成形体]
本発明の金属超微粒子を含有する樹脂としては、溶融成形が可能な熱可塑性樹脂であれば従来公知のものをすべて使用でき、例えば、低−,中−,高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタエート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
樹脂成形体としては、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルを用いることが好適である。
また樹脂成形体においては、その用途に応じて、それ自体公知の各種配合剤、例えば、充填剤、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って樹脂に含有することもできる。
【0016】
本発明の金属超微粒子含有組成物として樹脂成形体とする場合、金属超微粒子の原料である有機酸金属塩は、樹脂100重量部当り0.1乃至20重量部、特に1乃至10重量部の量で配合することが好ましく、これにより上述した硫黄含有成分の効果的な吸着及び変色反応が目視可能になる。上記範囲よりも少ないと金属超微粒子が有する吸着効果を十分に得ることができず、一方上記範囲よりも多いと金属粒子が凝集し、均一分散が困難になるおそれがあるので好ましくない。
本発明においては、二本ロール法、射出成形、押出成形、圧縮成形等の従来公知の溶融成形に賦することにより、最終成形品の用途に応じた形状、例えば、粒状、ペレット状、繊維状、フィルム、シート、容器等の樹脂成形体を成形することができる。
樹脂成形体への成形温度は、成形方法や用いる樹脂及び有機酸金属塩の種類によって一概に規定できないが、有機酸金属塩が樹脂中で熱分解する温度以上、且つ樹脂の熱劣化温度以下の温度範囲内であることが必要である。
また本発明の金属超微粒子含有樹脂成形体は、有機酸金属塩を含有する樹脂単独で樹脂成形品を構成することもできるが、他の樹脂との組み合わせで多層構造とすることもできる。
【0017】
[塗膜]
また上述した有機酸金属塩を用いて調製されたコーティング剤により、上述した金属超微粒子を含有する塗膜を形成することができる。
有機酸金属塩は、塗膜の焼付けの際の熱処理によって、塗料成分中で金属超微粒子を形成し均一分散させ、塗膜中に金属超微粒子が存在することが可能になる。
有機酸金属塩は、塗料成分(樹脂分)100重量部に対して0.1乃至20重量部の量で配合させることが好ましく、これにより上述した硫黄含有成分の効果的な吸着及び変色反応が目視可能になる。上記範囲よりも少ないと金属超微粒子が有する効果を十分に発現させることができず、一方上記範囲よりも多いと金属超微粒子が凝集するおそれがあるので好ましくない。
【0018】
有機酸金属塩を含有させる塗料成分としては、加熱により塗膜形成が可能なものであれば種々のものを使用することができる。例えば、これに限定されないが、アクリル系塗料、エポキシ系塗料、フェノール系塗料、ウレタン系塗料、ポリエステル系塗料、アルキド樹脂塗料等の従来公知の塗料組成物を用いることができる。
また塗膜形成のためのコーティング剤においても、樹脂成形体の場合と同様に、その用途に応じて、それ自体公知の各種配合剤、例えば、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を公知の処方に従って含有することができる。
塗膜形成のための熱処理条件は、用いる塗料成分及び有機酸金属塩の種類によって一概に規定できないが、有機酸金属塩が塗料中で熱分解する温度以上、且つ塗料成分の熱劣化温度以下の温度範囲内で、60乃至600秒間加熱処理を行うことが必要である。
【0019】
[分散液]
金属超微粒子分散液は、有機酸金属塩を分散媒中に分散し、脂肪酸金属塩が分散媒中で熱分解する温度以上、且つ分散媒の沸点以下の温度で混合加熱することにより、金属超微粒子が分散媒中に分散して成る分散液を調製することができる。
本発明の分散液の製造方法に用いる分散媒としては、多価アルコールを好適に用いることができる。多価アルコールは、有機酸金属塩が分散媒中で熱分解する温度よりも高い沸点を有するものであることが好ましく、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロールを挙げることができるが、特にポリエチレングリコールを好適に用いることができる。
ポリエチレングリコールは、平均分子量200乃至20000、特に400乃至10000の範囲のものを好適に使用することができ、また異なる分子量のものを複数種混合して用いることもできる。
【0020】
本発明の分散液においては、分散液中に有機酸金属塩を1×10−6乃至20重量%、特に1×10−5乃至10重量%の量で配合することが好ましく、これにより上述した硫黄含有成分の効果的な吸着及び変色反応の目視が可能になる。上記範囲よりも有機酸金属塩の量が少ないと充分な量の金属超微粒子を分散させることができず、吸着効果及び明確な変色効果に劣るようになる。その一方上記範囲よりも多いと金属超微粒子の凝集を招くおそれがある。
また保護剤として酸化防止剤を配合することが好ましく、酸化防止剤を配合することにより、加熱時の熱劣化を防止することが可能となる。
用いる酸化防止剤としては、これに限定されないが、トコフェロール (ビタミンE)類、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、エチレンビスステアリン酸アミド等従来より公知のものを挙げることができるが、特にIrganox1010(登録商標:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を好適に使用することができる。酸化防止剤は、分散媒中に0.01乃至20重量%の量で配合することが好ましい。
【0021】
本発明の分散液においては、分散媒中に有機酸金属塩、必要により酸化防止剤を配合した後、有機酸金属塩が分散媒中で熱分解する温度以上、且つ分散媒の沸点以下の温度で加熱しながら攪拌混合して、分散媒中で金属超微粒子を生成させる。
加熱時間は、用いる分散媒の種類及び有機酸金属塩の配合量などによって異なり、一概に規定できないが、1乃至1800秒、特に5乃至300秒の範囲で加熱することが好適である。
加熱混合後、室温で冷却し、分散液の濾過を行う。これにより分散液中の遊離有機酸を脱離させることができ、本発明の平均粒径1乃至100nmの金属超微粒子が溶液中に均一分散された分散液を得ることができる。
【0022】
本発明の製造方法により得られた分散液は、そのまま吸着剤(消臭剤)として使用することもできるが、溶媒で希釈して用いることが好ましい。
希釈に用いる溶媒としては、これに限定されないが、精製水、イオン交換水等の水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;メタノール変性、ベンゾール変性、トリオール変性、メチルエチルケトン変性、安息香酸デナトニウム変性、香料変性等の一般変性アルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、クロロホルム、炭酸ジエチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン、工業用エチルエーテル等の変性アルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール系溶剤等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いても又2種以上併用しても良い。
本発明においては、特に水又はエタノール等の沸点100℃以下の低沸点溶媒を好適に使用することができ、特に1乃至30%の濃度のエタノール水溶液を好適に使用できる。
【0023】
(吸着性能の判定)
本発明の金属超微粒子含有組成物においては、金属超微粒子が硫黄含有成分を吸着することにより、金属超微粒子自体が変色し、金属超微粒子の吸着性能を明示することが可能となるので、例えば、吸着開始前の色と同じ色に着色した樹脂成形体を成形し、その表面の一部を残した全面に、本発明の金属超微粒子含有塗膜や金属超微粒子含有フィルム等を形成しておくことにより、本発明の金属超微粒子含有塗膜又はフィルムが形成されていない部分との比較により変色変化がより明らかになり、吸収効果の有無を容易に判定することが可能となる。
また分散液においては、空調機器、織布、不織布等の繊維製品、マスク、フィルター等の濾過部材に、噴霧、塗布、含浸等させて用いることにより、これらの交換時期等が容易に判断することが可能となる。
更に、金属超微粒子含有組成物の変色を利用して、金属超微粒子の含有量に応じた吸着性能と色変化とを対応させることにより、金属超微粒子含有組成物の色に応じて消臭性能を判定することも可能となる。
【実施例】
【0024】
1.分光透過率の測定
金属粒子含有フィルムの吸光度を分光光度計(島津製作所UV-3100PC)を用いて、分光透過率を測定した。
【0025】
[実施例1]
低密度ポリエチレン樹脂3kgに、ステアリン酸銀を1wt%の含有率になるように配合し、押出成形温度200℃で二軸押出機にて押し出し厚み50μmのフィルムを作製し金属超微粒子含有フィルムを得た。フィルムの分光透過率を測定し、300〜700nmにおけるプラズモン吸収に起因するピークの有無を確認した。フィルムを50mm四方に切り出し、窒素ガス置換した500mlガラス製瓶内に入れてゴム栓で密封した後、所定濃度に調整した硫黄含有成分であるメチルメルカプタン5μLをマイクロシリンジにて注入し、室温(25℃)で1日放置し反応させた。放置前後のフィルムの分光透過率を測定し、変色を目視で確認した。
【0026】
[実施例2]
ミリスチン酸銀の含有率を1wt%とした以外は、実施例1と同様に測定と確認を行った。
【0027】
[実施例3]
硫黄含有成分として所定ガス濃度の硫化水素を5cc注入した以外は、実施例1と同様に測定と確認を行った。
【0028】
[比較例1]
硫黄含有成分ではないジメチルアミンを用いた以外は、実施例1と同様に測定と確認を行った。
【0029】
[比較例2]
硫黄含有成分ではない酢酸を用いた以外は、実施例1と同様に測定と確認を行った。
【0030】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の反応前後の分光透過率曲線を示す。
【図2】比較例1の反応前後の分光透過率曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
300乃至700nmにプラズモン吸収を有する金属超微粒子が分散されて成る組成物であって、前記金属超微粒子が硫黄含有成分と反応することにより、変色することを特徴とする金属超微粒子含有組成物。
【請求項2】
前記金属超微粒子が、有機酸成分と金属間で結合を有するものである請求項1記載の金属超微粒子含有組成物。
【請求項3】
前記金属超微粒子が、1×10−60.1乃至20重量%の量で含有されている請求項1又は2記載の金属超微粒子含有組成物。
【請求項4】
前記金属が、銀である請求項1乃至3の何れかに記載の金属超微粒子含有組成物。
【請求項5】
前記硫黄含有成分が、臭気成分である請求項1乃至4の何れかに記載の金属超微粒子含有組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の金属超微粒子含有組成物の変色により、消臭性能を判定することを特徴とする消臭判定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−209200(P2009−209200A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50986(P2008−50986)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000229874)東罐マテリアル・テクノロジー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】