説明

変調器をモニタする装置および方法

【課題】光変調器を精度よく制御するためのモニタ装置またはモニタ方法を提供する。
【解決手段】外部変調器モニタ装置は、外部変調器により変調された光信号および外部変調器により変調されていない光信号を混合して複数の混合光信号を得る混合部と、複数の混合光信号を対応する複数の電気信号に変換し、複数の電気信号の電圧の差分を得ることで差分信号を得る電気差分部と、差分信号のパワーを検出するパワー検出部、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに係わり、特に、光通信システムの送信器が備える変調器に係わる。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの容量のさらなる増加が必要とされているので、スペクトラムの使用効率を高めることが絶えず要求されている。無線技術の分野で既に成熟している様々な複雑な変調方式が、光通信システムに徐々に導入されつつある。また、高速信号処理チップおよびコヒーレント光通信技術の出現は、複雑な変調方式で光信号を送信することを可能にしている。従来の強度変調技術(例えば、OOK:on-off key)と比較すると、いくつかの新しい変調方式は、光の位相および/または偏波情報に情報を載せることができ、変調信号を多値信号とすることができる。マッハツェンダ(MZ:Mach-Zehnder)変調器は、これらの変調方式を実現するための要部である。
【0003】
図1は、従来のMZ変調器の構成を示す図である。図1(a)に示す単一ブランチMZ変調器101は、所定のバイアス電圧の下で、駆動電圧に含まれている情報を、入力光信号の位相または強度に載せることができる。また、図1(b)に示すマルチブランチMZ変調器(MZベクトル変調器)102は、基本的に、2つのブランチ(それぞれ干渉アームと呼ぶことがある)および90°移相器103により構成されている。上側干渉アームおよび下側干渉アームには、それぞれ単一ブランチMZ変調器が設けられている。90°移相器103は、上記2つのブランチを互いに直交状態で動作させる。そして、各バイアス電圧(バイアス電圧I、Q)を適切に設定することにより、MZベクトル変調器は、理想的なQPSK変調器を実現できる。偏波多重技術をさらに導入する場合には、生成されるDP−QPSK(Dual-Polarization QPSK)信号のスペクトラムの使用効率は、従来のOOK変調方式の4倍に高めることができる。
【0004】
DP−QPSKは、次世代光通信システムのための変調方式の主流となるであろうと認識されている。一方、波長分散、チャネル内非線形効果、通過帯域が狭くなる効果などの光通信システムに固有の劣化を補償する際に、信号に対して電気領域でプリディストーションを実行するためにMZ(ベクトル)変調器を使用することは可能である。すなわち、予め歪が与えられた駆動信号がMZ(ベクトル)変調器に入力され、光信号がそのMZ(ベクトル)変調器を通過することで、予め歪が与えられた光信号が生成される。この場合は、歪みを有するリンクを介して光信号が伝送されると、受信器側では、歪みの無いまたはほぼ歪みの無い信号が得られる。MZ変調器は、様々な複雑な変調方式を柔軟に提供することができ、同時に準線形変調を実現できる。したがって、MZ変調器は、次世代光通信システムにおいて欠くことのできない部品または要素である。
【0005】
駆動信号の伝達関数(MZ変調器伝達関数と呼ぶこともある)としてMZ変調器から出力される光信号は、バイアス電圧によって制御される。バイアス電圧を変えることによって、MZ変調器は、ピーク点、消光点、または直交点で動作することができる。
【0006】
図2は、MZ変調器の伝達関数と動作点との関係を説明する図である。図2に示すように、変調方式がQPSKであるとき或いは事前補償のときは、変調器は、通常、消光点で動作する。変調器の動作点は、システムの性能に直接的に影響を及ぼすものであり、特に事前補償システムの性能に影響を及ぼす。実際の環境下では、外的な要因(例えば、温度および圧力)が直接的にMZ変調器の動作点のシフトを引き起こす。長い期間に渡って安定した動作を保証するためには、通常、MZベクトル変調器のバイアス電圧を制御する必要がある。
【0007】
2007年9月13日に開示された米国特許公開公報US2007/0212075においては、MZ変調器を消光点で動作させる、すなわち光キャリアのパワーをゼロに設定するためのバイアス制御方法が提案されている。なお、米国特許公開公報US2007/0212075は、そのすべてがこの明細書に記載されているのと同様に、参照によりここに組み込まれる。米国特許公開公報US2007/0212075では、変調器の出力端に極めて帯域の狭い光フィルタを設ける方法によりキャリアのパワーが直接的に検出される。このため、バイアス電圧と共に変化するフィードバック信号の精度が効果的に高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開公報US2007/0212075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明の発明者は、米国特許公開公報US2007/0212075に記載の方法は、上述のような極めて帯域の狭い光フィルタが非常に高価であり、そのフィルタの中心波長をレーザ波長に確実に整合させることが非常に困難である、という欠点を有していることを見出した。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の欠点を考慮し、従来技術における制限または不都合に起因する1以上の問題を解決し、少なくとも1つの利益のある選択を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明の1つの態様の外部変調器モニタ装置は、外部変調器をモニタするために、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して複数の混合光信号を得る混合部と、前記複数の混合光信号を対応する複数の電気信号に変換し、前記複数の電気信号の電圧の差分を得ることで差分信号を得る電気差分部と、前記差分信号のパワーを検出するパワー検出部、を有する。
【0012】
本発明の1つの態様の外部変調器モニタ方法は、外部変調器をモニタするために、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して複数の混合光信号を得る混合ステップと、前記複数の混合光信号を対応する複数の電気信号に変換する変換ステップと、前記複数の電気信号の電圧の差分を得ることで差分信号を得る差分ステップと、前記差分信号のパワーを検出する検出ステップ、を有する。
【0013】
明細書および添付の図面を参照すれば、本発明に係る上述の態様、実施形態、特徴は明らかになる。明細書および添付の図面において、本発明の具体的な実施形態は、発明の原理が適用可能な実施の方式を示すように詳しく開示される。なお、本発明の実施形態は、発明の範囲を制限するものではない。また、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の精神および条件の中で、様々な変更、変形、類似物、均等物を含む。
【0014】
1つの実施形態について記載されたおよび/または示された特徴は、同じまたは類似の方法で、1つ以上の他の実施形態と組み合わせてまたは代わりに使用してもよい。
なお、「備える/含む」という語は、この出願で使用されるときは、特徴、完全体、ステップ、部品の存在を意味するものであって、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、部品の存在または追加を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のMZ変調器の構成を示す図である。
【図2】MZ変調器の伝達関数と動作点との関係を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態の外部変調器モニタ装置を使用する変調装置の構成を示す図である。
【図4】バイアス電圧の変化に対する測定値についてのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の外部変調器モニタ装置を使用する変調装置の他の構成を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態の外部変調器モニタ装置の機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施形態の外部変調器モニタ方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態の方法を実行するコンピュータおよび装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態の外部変調器モニタ装置を使用する変調装置の構成を示す図である。図3に示すように、変調装置内で単一ブランチMZ変調器が使用される。なお、この図においては、MZ変調器のためのオートダイン方式のバイアス電圧制御装置が示されている。
【0017】
また、図3に示すように、レーザ301から出力される光は、2つのブランチに分岐される。一方のブランチの光はMZ変調器302に導かれ、他方のブランチの光は3×3光カプラ303に導かれる。MZ変調器302から出力される光は、さらに2分岐され、その一方が3×3光カプラ303に導かれる。すなわち、レーザ301により生成された光は2分岐され、一方の光はMZ変調器302により変調されて3×3光カプラ303に導かれると共に、他方の光はMZ変調器302により変調されることなく3×3光カプラ303に導かれる。
【0018】
3×3光カプラ303は、本発明の混合部の一例に対応する。好ましい実施形態においては、3×3光カプラ303は、例えば、対称カプラである。すなわち、3つの混合結果光信号のパワーは、互いに同じであることが好ましい。また、3つの混合結果光信号の位相は、均等に分布している(すなわち、隣接するブランチ間の位相差あるいは次のブランチとの間の位相差がそれぞれ120°)ことが好ましい。なお、このような混合部は、対称混合部と呼ばれることがある。
【0019】
3×3光カプラ303から出力される3つの混合光信号は、それぞれ3つの光電変換素子(photo detectorまたはphotovoltaic transformer)305に導かれる。これにより、上記3つの混合光信号は、3つの電気信号に変換される。このとき、光電変換素子305は、例えば、入力光信号に対応する電圧信号を出力する。
【0020】
3つの光電変換素子305により得られる3つの電気信号は、低域通過フィルタリングされた3つの信号を得るために、低域通過フィルタリングする3つのローパスフィルタ306にそれぞれ入力される。ここで、各光電変換素子305から出力される電気信号は、例えば、対応するローパスフィルタ306に即座に入力される。ローパスフィルタ306の帯域は、例えば、MHz領域で選択することができる。この場合、光電変換素子305として、低速のデバイスを使用することができる。このように、本発明の実施形態によれば、光信号が結合(あるいは、混合)された後、必要な情報はすべて極めて低い周波数領域の中にある。このため、光電変換素子305を含む後段の素子をすべて低速の素子で実現することができ、このことが本発明の1つの利点となっている。
【0021】
ローパスフィルタ306は、それぞれ平均化機能を提供する。ローパスフィルタ306から出力される3つのフィルタリングされた電気信号は、3つの差分素子307に導かれる。各差分素子307は、図3に示すように、それぞれ、3つのフィルタリングされた電気信号の中の任意の2つの電圧の差分を計算する(すなわち、電圧差が計算される)。例えば、第1の差分素子は、第1のローパスフィルタの出力電圧と第2のローパスフィルタの出力電圧との差分を生成し、第2の差分素子は、第2のローパスフィルタの出力電圧と第3のローパスフィルタの出力電圧との差分を生成し、第3の差分素子は、第3のローパスフィルタの出力電圧と第1のローパスフィルタの出力電圧との差分を生成する。
【0022】
他の実施形態としては、例えば、差分素子307は、増幅器を含み、差動増幅器として動作してもよい。ただし、この特許出願においては、増幅器を含む差分素子および増幅器を含まない差分素子を、総称して「差分素子」と呼ぶことにする。
【0023】
3つの光電変換素子305、3つのローパスフィルタ306、および3つの差分素子307は、本発明の電気差分部(または、差分フィルタ部304)を構成する。他の実施形態としては、3つのローパスフィルタ306は、3つの差分素子307の出力側に設けるようにしてもよい。この場合、各差分素子307は、それぞれ、3つの光電変換素子305により得られる3つの電気信号の中の対応する2つの電圧の差分を計算する。なお、差分フィルタ部304は、ローパスフィルタが差分素子の入力側に設けられる場合、およびローパスフィルタが差分素子の出力側に設けられる場合の双方を含むものとする。また、図3に示す構成において、各差分素子307の出力側にそれぞれさらにローパスフィルタを追加してもよい。すなわち、各差分素子307の入力側および出力側にそれぞれローパスフィルタを設けるようにしてもよい。
【0024】
さらに他の実施形態として、3つのローパスフィルタ306を不要としてもよい。この場合、3つの光電変換素子305および3つの差分素子307から構成される部分が、電気差分部として動作する。
【0025】
パワー検出部308は、3つの二乗器309および加算器310を備える。各二乗器309は、それぞれ対応する差分素子307から出力される差分信号を二乗し、対応する差分信号の二乗値を得る。加算器310は、上記3つの二乗値を足し合わせ、これにより、MZ変調器302の出力パワーをモニタすることができる。なお、パワー検出部308により検出される出力パワー(すなわち、加算器310の出力)は、MZ変調器302から出力される信号のキャリアパワーに比例する。
【0026】
コントローラ311は、加算器310により得られる和に基づいてMZ変調器302のバイアス電圧を調整する。すなわち、コントローラ311は、キャリアパワーの大きさに基づいて、MZ変調器302のバイアス電圧を調整する。なお、上記パワーに基づいてMZ変調器302を制御する方法は、公知の技術であり、例えば、上述した米国特許公開公報US2007/0212075および米国特許USP5400417に記載されている。ここで、米国特許USP5400417は、そのすべてがこの明細書に記載されているのと同様に、参照によりここに組み込まれる。
【0027】
ただし、上記米国特許に記載の方法においては、バイアス電圧を調整する方向(すなわち、バイアス電圧を高くするのか、低くするのか)を直接的に指示することはできない。そこで、実施形態のコントローラ311は、現在の動作点のバイアス電圧を振動させて、その振動量に対して測定値を比較することで、調整方向を導き出す。例えば、キャリア周波数と比較して十分に低い周波数f0でバイアス電圧を振動させる。そして、パワー検出部308の出力信号に含まれるf0成分および/または2×f0成分をモニタすることにより、バイアス電圧の調整方向を決定することができる。
【0028】
図4は、本発明の実施形態による外部変調器モニタ装置による、バイアス電圧の変化に対する測定値についてのシミュレーション結果を示す。なお、横軸はMZ変調器のバイアス電圧を表し、縦軸は測定値を表す。この測定値は、例えば、図3に示すパワー検出部308によって得られる。
【0029】
図4に示すように、MZ変調器が消光点(図4では、バイアス電圧がゼロ)で動作するときは、検出されるキャリアパワーは最小(または、極小)となる。したがって、外部変調器モニタ装置による測定値により、外部変調器をモニタすることができる。例えば、測定値を最小化するようにバイアス電圧をフィードバック制御すれば、MZ変調器を消光点で動作させることができる。なお、このシミュレーションでは、フィルタ(図3では、例えば、ローパスフィルタ306)の帯域は、1MHzである。
【0030】
図5は、本発明の実施形態の外部変調器モニタ装置を使用する変調装置の他の構成を示す図である。図5に示すように、この変調装置は、2ブランチMZ変調器302’を備える。2ブランチMZ変調器302’は、一方のブランチに単一ブランチMZ変調器501を備え、他方のブランチに単一ブランチMZ変調器502を備える。また、2ブランチMZ変調器302’は、1組のブランチ間に位相差90°を与える移相要素を備える。そして、コントローラ311’は、パワー検出部308により得られる測定値に基づいて、単一ブランチMZ変調器501、502のバイアス電圧(または、移相要素)を制御する。他の構成要素は、図3を参照した構成要素と実質的に同じなので、ここでは説明を省略する。
【0031】
図6は、本発明の他の実施形態の外部変調器モニタ装置の機能ブロック図である。図6に示すように、4×4光カプラ(90°光ミキサ)601には、変調器によって変調された光信号およびその変調器によって変調されていない光信号が入力される。なお、4×4光カプラ601に入力される1組の光信号は、特に限定されるものではないが、例えば、図3または図5に示す3×3光カプラ303に入力される1組の光信号と同じであってもよい。
【0032】
4×4光カプラ601は、本発明の混合部の一例に対応する。好ましい実施形態としては、4×4光カプラ601は、例えば、対称カプラである。すなわち、4つの混合結果光信号のパワーは、互いに同じであることが好ましい。また、4つの混合結果光信号の位相は、均等に分布している(すなわち、隣接するブランチ間の位相差あるいは次のブランチとの間の位相差がそれぞれ90°)ことが好ましい。なお、このような混合部は、対称混合部と呼ばれることがある。
【0033】
4×4光カプラ601から出力される4つの混合光信号は、それぞれ4つの光電変換素子603に導かれる。これにより、上記4つの混合光信号は、4つの電気信号に変換される。4つの電気信号は、2つの差分素子604に入力される。このとき、互いに隣接するブランチから得られる1組の電気信号が一方の差分素子に入力され、他の互いに隣接するブランチから得られる1組の電気信号が他方の差分素子に入力される。
【0034】
各差分素子604は、それぞれ、互いに隣接するブランチから得られる1組の電気信号の電圧の差分を得る。これにより、2つの差分信号が得られる。ここで、例えば、図6において、4×4光カプラ601の4つの出力ポートから出力されて対応する光電素子603で変換された電気信号を、上から順番にブランチ1、ブランチ2、ブランチ3、ブランチ4を呼ぶことにする。この場合、第1の差分素子604は、ブランチ1とブランチ2との間で電圧の差分を得る。また、第2の差分素子604は、ブランチ3とブランチ4との間で電圧の差分を得る。これにより、2つの差分信号が得られる。
【0035】
2つの差分信号は、それぞれ、対応するローパスフィルタ605によって低域通過フィルタリングされる。このとき、4つの光電変換素子603、2つの差分素子604、および2つのローパスフィルタ605は、本発明の他の実施形態の差分フィルタ部602を構成する。なお、他の実施形態の差分フィルタ部602は、ローパスフィルタ605を不要とすることも可能である。この場合、差分フィルタ部602は、電気差分を得るためのデバイスに単純化される。
【0036】
2つのローパスフィルタ605から出力される2つのフィルタリンングされた電気信号は、パワー検出部606に入力される。パワー検出部606は、2つの二乗器607および加算器608を備える。2つの二乗器607は、それぞれ、対応するローパスフィルタ605から出力される2つのフィルタリンングされた電気信号を二乗し、各ブランチの信号の二乗値を得る。加算器608は、2つのブランチの各二乗値を足し合わせ、これにより、MZ変調器(例えば、図3に示すMZ変調器302)の出力パワーをモニタする。この出力パワーは、MZ変調器302から出力される信号のキャリアパワーに比例する。そして、コントローラ(例えば、図3に示すコントローラ311)は、パワー検出部606により検出されるパワー(すなわち、各ブランチの二乗値の和)の大きさに基づいて、MZ変調器302のバイアス電圧を調整することができる。あるいは、コントローラ(例えば、図5に示すコントローラ311’)は、パワー検出部606により検出されるパワーの大きさに基づいて、2ブランチMZ変調器302’が備える単一ブランチMZ変調器501、502のバイアス電圧および/または90°移相器103を調整および/または制御することができる。
【0037】
なお、図6において、ローパスフィルタ605を差分素子604の入力側に配置することも可能である。ただし、この場合、差分フィルタ部602は、4つのローパスフィルタ605を備える必要がある。
【0038】
本発明の実施形態は、図1に示す2種類のMZ変調器だけでなく、MZ変調器をベースとする様々な組合せ、および他の構成にも適用可能である。また、本発明の実施形態の方法は、消光点で動作する任意の外部変調器をモニタするために適用可能である。なお、外部変調器は、特に限定されるものではないが、レーザから出力される光を変調する変調器を表す。
【0039】
上述の実施形態では、光信号を混合する3×3光カプラおよび4×4光カプラを取り上げて記載したが、当業者であれば気づくように、より多くのブランチを備える光カプラ、例えば5×5光カプラを使用することも可能である。そのような光カプラを使用するときは、その出力側に設ける光電素子、差分素子、ローパスフィルタの個数は、それぞれ光カプラのブランチの数に応じて決定される。
【0040】
図7は、本発明の実施形態の外部変調器モニタ方法を示すフローチャートである。図7に示すように、実施形態の外部変調器モニタ方法によれば、まずステップ701において混合が行われる。すなわち、外部変調器によって変調された光信号およびその外部変調器によって変調されていない光信号が混合され、複数のブランチにそれぞれ混合光信号が生成される。上述したように、入力光信号を混合して3つの混合光信号を得るために3×3光カプラを使用することができ、また、入力光信号を混合して4つの混合光信号を得るために4×4光カプラを使用することができる。もちろん、より多くのブランチにそれぞれ混合光信号を得るために他の構成の光カプラを使用することも可能である。
【0041】
ステップ702において、光電変換が行われる。これにより、各ブランチの混合光信号は、それぞれ対応する電気信号に変換される。この処理は、例えば、光電素子によって実現される。
【0042】
ステップ703において、複数のブランチの電気信号に対して差分演算を行うことにより、差分信号を得る。例えば、3×3光カプラが3つの混合光信号を生成するときには、3つの差分素子が、それぞれ、対応する3つの電気信号の中から選択される2つの電気信号の電圧の差分を得る。このとき、各差分素子には、互いに異なる組み合わせの電気信号が与えられる。また、4×4光カプラが4つの混合光信号を生成するときには、2つの差分素子が、それぞれ、対応する4つの電気信号の中の互いに隣接する2つのブランチの電気信号の電圧の差分を得る。
【0043】
好ましくは、各ブランチの信号をフィルタリングするために、上記差分処理の前または後に、フィルタリングステップをさらに設けるようにしてもよい。
最後に、ステップ704において、差分演算により得られた信号のパワーを検出するパワー検出処理が実行される。パワー検出処理は、上述の例では、二乗処理および加算処理を含む。
【0044】
なお、上述の装置を構成する各モジュール、ユニット、サブユニット、および上述の方法の各ステップは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せで実現することができる。この構成のために使用される具体的な手段または方式は、当業者にとってよく知られたものであり、ここで繰り返して記載することはしない。実施形態のモニタ装置をソフトウェアまたはファームウェアで実装する場合には、そのようなソフトウェア(またはファームウェア)を構成するプログラムが、記憶媒体またはネットワークから、対応するまたは専用のハードウェアを有するコンピュータ(例えば、図8に示す汎用コンピュータ800)、またはシステムまたは装置(例えば、送信器)に組み込まれたコンピュータにインストールされる。なお、コンピュータに各種プログラムがインストールされると、そのコンピュータは各種機能を実行することができる。
【0045】
図8は、本発明の実施形態の方法を実行するコンピュータおよび装置のブロック図である。
図8において、中央処理ユニット(CPU)801は、読出し専用メモリ(ROM)802に格納されているプログラムまたは格納部808からランダムアクセスメモリ(RAM)803にロードされたプログラムに従って様々な処理を実行する。RAM803にはさらに、CPU801が実際の要求に応じて様々な処理を実行する際に必要とされるデータが格納される。CPU801、ROM802、RAM803は、バス804を介して互いに接続されている。また、要求に応じて、入力/出力ポート805はバス804に接続することができる。
【0046】
要求に応じて、入力/出力ポート805に以下の要素を接続することができる:入力部806(キーパッド、マウス等を含む)、出力部807(CRT、LCD等の表示装置およびスピーカ等を含む)、格納部808(ハードディスク等を含む)、通信部809(LANカード等のネットワークインタフェースカード、モデム等を含む)。通信部809は、例えばインターネット等のネットワークを介して通信処理を実行する。要求に応じて、入力/出力ポート805にドライバ810を接続できるようにしてもよい。着脱可能媒体811、例えば磁気ディスク、光ディスク、磁気光ディスク、半導体メモリ等を要求に応じてドライバ810に実装することができ、要求に応じてそこから読み出したコンピュータプログラムを格納部808にインストールすることもできる。コンピュータは、バス804を介して接続されるCPU801、ROM802、RAM803のみから構成されるようにしてもよい。
【0047】
上述した一連の処理がソフトウェアで実現される場合には、そのようなソフトウェアを構成するプログラムは、インターネット等のネットワーク或いは着脱可能媒体811などの格納媒体からインストールされる。
【0048】
格納媒体は、プログラムを格納し、装置から離れてユーザにプログラムを提供する図8に示す着脱可能媒体811に限定されるものではない。着脱可能媒体811の例は、磁気ディスク(フロッピーディスク(登録商標)を含む)、光ディスク(CD−ROM、DVDを含む)、磁気光ディスク(mini-disc(MD)(登録商標)を含む)、半導体メモリを含む。或いは、格納媒体は、ROM802または格納部808に設けられる、プログラムを格納するハードウェアであってもよく、その格納媒体を含む装置と共にユーザに提供するようにしてもよい。
【0049】
上述した本発明の実施形態の装置および方法は、ハードウェアにより実装されてもよいし、ハードウェアにソフトウェアを組み合わせて実装してもよい。本発明は、論理構成部により実行されたときに、コンピュータ読み取り可能プログラムがその論理構成部に上記装置またはその部品を実現させる、或いは、上記方法またはステップを実現させるようなコンピュータ読み取り可能プログラムを含む。本発明は、例えば、ハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD、フラッシュメモリ等のプログラムを格納するための格納媒体も含む。
【0050】
本発明は、上述の具体的な実施形態を参照して記載したが、当業者にとっては、上述の記載は、本発明が保護する範囲を制限するものではなく、単に例示的なものであることは明らかである。当業者は、本発明の精神および原理の範囲内で様々な変更および変形を提供するかもしれないが、そのような様々な変更および変形は、すべて本発明の範囲内でカバーされるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部変調器をモニタする外部変調器モニタ装置であって、
前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して複数の混合光信号を得る混合部と、
前記複数の混合光信号を対応する複数の電気信号に変換し、前記複数の電気信号の電圧の差分を得ることで差分信号を得る電気差分部と、
前記差分信号のパワーを検出するパワー検出部、
を有する外部変調器モニタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外部変調器モニタ装置であって、
前記混合部は、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して3つの混合光信号を得る3×3光カプラであり、
前記電気差分部は、差分フィルタ部であって、
前記3つの混合光信号をそれぞれ電気信号に変換して3つの電気信号を得る3つの光電変換素子と、
前記3つの電気信号をそれぞれフィルタリングして3つのフィルタリングされた電気信号を得る3つのフィルタと、
前記3つのフィルタリングされた電気信号の中から選択される互いに異なる組み合わせの2つのフィルタリングされた電気信号の電圧の差分をそれぞれ得ることで、3つの差分信号を得る3つの差分部、を備え、
前記パワー検出部は、
前記3つの差分信号をそれぞれ二乗することで3つの二乗値を得る3つの二乗部と、
前記3つの二乗値の和を得る加算器、を備える
ことを特徴とする外部変調器モニタ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の外部変調器モニタ装置であって、
前記混合部は、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して3つの混合光信号を得る3×3光カプラであり、
前記電気差分部は、差分フィルタ部であって、
前記3つの混合光信号をそれぞれ電気信号に変換して3つの電気信号を得る3つの光電変換素子と、
前記3つの電気信号の中から選択される互いに異なる組み合わせの2つの電気信号の電圧の差分をそれぞれ得ることで、3つの差分信号を得る3つの差分部と、
前記3つの差分信号をそれぞれフィルタリングして3つのフィルタリングされた差分信号を得る3つのフィルタ、を備え、
前記パワー検出部は、
前記3つのフィルタリングされた差分信号をそれぞれ二乗することで3つの二乗値を得る3つの二乗部と、
前記3つの二乗値の和を得る加算器、を備える
ことを特徴とする外部変調器モニタ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の外部変調器モニタ装置であって、
前記混合部は、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して4つの混合光信号を得る4×4光カプラであり、
前記電気差分部は、差分フィルタ部であって、
前記4つの混合光信号をそれぞれ電気信号に変換して4つの電気信号を得る4つの光電変換素子と、
前記4つの電気信号の中で互いに隣接する異なる2つの電気信号の差分をそれぞれ得ることで、2つの差分信号を得る2つの差分部と、
前記2つの差分信号をそれぞれフィルタリングして2つのフィルタリングされた電気信号を得る2つのフィルタ、を備え、
前記パワー検出部は、
前記2つのフィルタリングされた差分信号をそれぞれ二乗することで2つの二乗値を得る2つの二乗部と、
前記2つの二乗値の和を得る加算器、を備える
ことを特徴とする外部変調器モニタ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の外部変調器モニタ装置であって、
前記混合部は、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して4つの混合光信号を得る4×4光カプラであり、
前記電気差分部は、差分フィルタ部であって、
前記4つの混合光信号をそれぞれ電気信号に変換して4つの電気信号を得る4つの光電変換素子と、
前記4つの電気信号をそれぞれフィルタリングして4つのフィルタリングされた電気信号を得る4つのフィルタと、
前記4つのフィルタリングされた電気信号の中で互いに隣接する異なる2つのフィルタリングされた電気信号の差分をそれぞれ得ることで、2つの差分信号を得る2つの差分部、を備え、
前記パワー検出部は、
前記2つの差分信号をそれぞれ二乗することで2つの二乗値を得る2つの二乗部と、
前記2つの二乗値の和を得る加算器、を備える
ことを特徴とする外部変調器モニタ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の外部変調器モニタ装置であって、
前記混合部は対称混合部であることを特徴とする外部変調器モニタ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の外部変調器モニタ装置であって、
前記外部変調器は、単一ブランチMZ変調器またはマルチブランチMZ変調器である、ことを特徴とする外部変調器モニタ装置。
【請求項8】
外部変調器をモニタする外部変調器モニタ方法であって、
前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して複数の混合光信号を得る混合ステップと、
前記複数の混合光信号を対応する複数の電気信号に変換する変換ステップと、
前記複数の電気信号の電圧の差分を得ることで差分信号を得る差分ステップと、
前記差分信号のパワーを検出する検出ステップ、
を有する外部変調器モニタ方法。
【請求項9】
請求項8に記載の外部変調器モニタ方法であって、
前記混合ステップは、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して3つの混合光信号を生成し、
前記変換ステップは、前記3つの混合光信号をそれぞれ電気信号に変換して3つの電気信号を生成し、
前記差分ステップは、
前記3つの電気信号をそれぞれフィルタリングして3つのフィルタリングされた電気信号を得るステップと、
前記3つのフィルタリングされた電気信号の中から選択される互いに異なる組み合わせの2つのフィルタリングされた電気信号の電圧の差分をそれぞれ得ることで、3つの差分信号を得るステップ、を備え、
前記検出ステップは、
前記3つの差分信号をそれぞれ二乗することで3つの二乗値を得るステップと、
前記3つの二乗値の和を得るステップ、を備える
ことを特徴とする外部変調器モニタ方法。
【請求項10】
請求項8に記載の外部変調器モニタ方法であって、
前記混合ステップは、前記外部変調器により変調された光信号および前記外部変調器により変調されていない光信号を混合して4つの混合光信号を生成し、
前記変換ステップは、前記4つの混合光信号をそれぞれ電気信号に変換して4つの電気信号を生成し、
前記差分ステップは、
前記4つの電気信号をそれぞれフィルタリングして4つのフィルタリングされた電気信号を得るステップと、
前記4つのフィルタリングされた電気信号の中で互いに隣接する異なる2つのフィルタリングされた電気信号の差分をそれぞれ得ることで、2つの差分信号を得るステップ、を備え、
前記検出ステップは、
前記2つの差分信号をそれぞれ二乗することで2つの二乗値を得るステップと、
前記2つの二乗値の和を得るステップ、を備える
ことを特徴とする外部変調器モニタ方法。
【請求項11】
レーザ光源により生成される第1の光信号および前記第1の光信号を変調器で変調することにより得られる第2の光信号を混合し、互いにパワーが同じまたはほぼ同じであり、且つ、相互の位相差がそれぞれ120°である、第1〜第3の混合光信号を生成する光混合部と、
前記第1〜第3の混合光信号をそれぞれ対応する電気信号に変換して第1〜第3の電気信号を生成する光電変換部と、
前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との間の差分を表す第1の差分信号、前記第2の電気信号と前記第3の電気信号との間の差分を表す第2の差分信号、前記第3の電気信号と前記第1の電気信号との間の差分を表す第3の差分信号を生成する差分部と、
前記第1〜第3の差分信号をそれぞれ二乗することで第1〜第3の二乗値を得る二乗部と、
前記第1〜第3の二乗値の和を得る加算器と、
前記加算器により得られる前記和に基づいて前記変調器を制御するコントローラ、
を備える変調器制御装置。
【請求項12】
レーザ光源により生成される第1の光信号および前記第1の光信号を変調器で変調することにより得られる第2の光信号を混合し、互いにパワーが同じまたはほぼ同じであり、且つ、互いに隣接するブランチの位相差がそれぞれ90°である、第1〜第4の混合光信号を生成する光混合部と、
前記第1〜第4の混合光信号をそれぞれ対応する電気信号に変換して第1〜第4の電気信号を生成する光電変換部と、
前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との間の差分を表す第1の差分信号および前記第3の電気信号と前記第4の電気信号との間の差分を表す第2の差分信号を生成する差分部と、
前記第1および第2の差分信号をそれぞれ二乗することで第1および第2の二乗値を得る二乗部と、
前記第1および第2の二乗値の和を得る加算器と、
前記加算器により得られる前記和に基づいて前記変調器を制御するコントローラ、
を備える変調器制御装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の変調器制御装置であって、
前記コントローラは、前記和を最小化するように前記変調器の動作点を調整するバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする変調器制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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