説明

変調方式識別回路および受信装置

【課題】入力信号に適用された変調方式を高精度に識別する変調方式識別回路を得ること。
【解決手段】本発明にかかる変調方式識別回路は、入力信号の電力変動量を評価する電力変動量算出部(2)と、入力信号の周波数変動量を評価する周波数変動量算出部(3)と、電力変動量算出部(2)および周波数変動量算出部(3)による各評価結果に基づいて、入力信号に適用された変調方式を識別する変調方式識別部(4a)と、を備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムを構成する通信装置において受信信号に適用された変調方式を識別する変調方式識別回路およびこれを備えた受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、受信信号から未知の変調方式を識別する従来の変調方式識別技術について説明する。例えば、アナログ変調であるAM(Amplitude Modulation)とFM(Frequency Modulation)を識別する変調方式識別装置が下記特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載の変調方式識別装置では、各方式固有の特性を利用して受信信号の変調方式を識別している。具体的には、AMの場合は情報信号を振幅に重畳して変調を行う方式のため、変調により包絡線(振幅)が変動する特性と、FMの場合は情報信号を周波数に重畳して変調を行う方式のため、変調を行っても包絡線が一定となる特性と、を利用し、受信信号から算出した包絡線変動特性(電力変動特性)に基づいて変調方式を識別している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−86171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置においては、例えば変調指数が小さいAMでは包絡線の変動が小さくなるため、受信信号が変調指数の小さいAMの場合には包絡線が一定であるFMとの識別が困難になる、という問題があった。
【0005】
また、包絡線変動を利用して変調方式を識別するためには、事前情報として、包絡線変動が一定であるか否かを判定するための最適な閾値をシミュレーションや実験などで予め取得し設定しておく必要がある、という問題があった。
【0006】
さらに、この予め設定しておく必要がある閾値は、実際の伝送路で想定されるガウス通信路やフェージング通信路などの伝送路状況に合った閾値でないと高い識別性能が得られないため、想定される伝送路に対応した最適な閾値を事前に準備しておく必要がある、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、変調指数の小さいAMなどや雑音の影響等により受信信号のC/N(Carrier to Noise ratio)が低い場合などであっても、高精度に変調方式を識別する変調方式識別回路を得ることを目的とする。
【0008】
また、変調方式識別のための閾値をシミュレーション等により事前に準備しておく必要がなく、想定される伝送路が未知であっても、高精度に変調方式を識別する変調方式識別回路を得ることを目的とする。
【0009】
さらに、変調方式が未知である受信信号を復調することが可能な受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、入力信号に適用された変調方式を識別する変調方式識別回路であって、前記入力信号の電力変動量を評価する電力変動量評価手段と、前記入力信号の周波数変動量を評価する周波数変動量評価手段と、前記電力変動量評価手段および前記周波数変動量評価手段による各評価結果に基づいて、前記入力信号に適用された変調方式を識別する変調方式識別手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、電力および周波数のそれぞれの変動量を評価し、得られた各評価結果に基づいて受信信号の変調方式を識別することとしたので、従来の電力変動量のみを利用して識別を行う方式と比較して、変調指数が小さいAMなどに対する識別性能を向上させることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる変調方式識別回路および受信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる変調方式識別回路を備えた受信装置の実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示したように、本実施の形態の受信装置は、受信信号を周波数変換し、同相信号(Ich信号)および直交信号(Qch信号)を生成する準同期検波部1と、準同期検波部1から出力されるIch信号およびQch信号を使用して電力変動量を算出し、電力変動量を評価する電力変動量算出部2と、準同期検波部1から出力されるIch信号およびQch信号を使用して周波数変動量を算出し、周波数変動量を評価する周波数変動量算出部3と、電力変動量算出部2による電力変動量の評価結果および周波数変動量算出部3による周波数変動量の評価結果に基づいて、受信信号に適用されている変調方式を識別する変調方式識別部4aと、を備え、変調方式識別部4aによる識別結果に従った復調処理を行い、受信信号を復調する。
【0014】
上記各構成要素をさらに詳しく説明する。準同期検波部1は、受信信号の周波数変換を行うための発振信号(クロック)を生成する発振器10と、発振器10から出力される発振信号の位相をπ/2(90°)だけ移相させるπ/2移相部11と、受信信号と発振器10から出力される発振信号を乗算する乗算部12aと、受信信号とπ/2移相部11から出力されるπ/2移相した後の発振信号を乗算する乗算部12bと、乗算部12a,12bから出力される信号に含まれる不要波や雑音を除去するLPF(Low Pass Filter)13a,13bと、を備える。
【0015】
電力変動量算出部2は、準同期検波部1のLPF13a,13bから出力されるIch信号,Qch信号を2乗処理する2乗器20a,20bと、2乗器20a,20bから出力される2乗処理後の信号を加算する加算部21と、加算部21から出力される信号の平均及び分散を算出する平均/分散算出部22と、を備える。
【0016】
周波数変動量算出部3は、準同期検波部1のLPF13a,13bから出力されるIch信号,Qch信号を使用して位相変換処理を行い、位相量を算出する位相変換部30と、位相変換部30から出力される位相量に対して差分処理を実行して位相変化量を算出する差分処理部31と、差分処理部31から出力される位相変化量の平均及び分散を算出する平均/分散算出部32と、を備える。
【0017】
次に、本実施の形態の変調方式識別回路の全体動作について説明する。準同期検波部1では、乗算部12aが、発振器10から出力される発振信号と受信信号を乗算することにより周波数変換を行い、LPF13aは、乗算部12aから出力された周波数変換後の信号から不要波や雑音を除去し、得られた信号を、ベースバンド信号に変換したIch信号RIとして出力する。また、乗算部12bが、発振器10から出力される発振信号をπ/2移相部11でπ/2だけ移相した発振信号と受信信号を乗算することにより周波数変換を行い、LPF部13bは、乗算部12bから出力された周波数変換後の信号から不要波や雑音を除去し、得られた信号を、ベースバンド信号に変換したQch信号RQとして出力する。
【0018】
電力変動量算出部2(電力変動量評価手段に相当)では、準同期検波部1から出力されたIch信号RIおよびQch信号RQを入力とし、これらの入力信号を用いて評価関数R1に基づく評価量を算出する。具体的には、Ich信号RIを2乗器20aへの入力、Qch信号RQを2乗器20bへの入力とし、2乗器20aおよび20bは、入力信号を2乗し、得られた信号を出力する。そして、加算部21が2乗処理後のIch信号(2乗器20aの出力)と2乗処理後のQch信号(2乗器20bの出力)を加算することにより、受信電力P(=(RI)2+(RQ)2)を算出する。平均/分散算出部22(電力変動評価量算出手段に相当)では、加算部21から出力される受信電力Pの変動量を評価する。例えば、この受信電力Pの平均値(μPとする)と分散(σ2とする)とを計算し、受信電力の変動量を評価するための評価関数としてR1=σP2/μP2やR1=σP2などを適用し、受信電力変動量の評価結果(電力変動量を示す電力変動評価量)を算出する。
【0019】
一方、周波数変動量算出部3(周波数変動量評価手段に相当)では、準同期検波部1から出力されたIch信号RIおよびQch信号RQを入力とし、これらの入力信号を用いて評価関数R2に基づく評価量を算出する。具体的には、Ich信号RIおよびQch信号RQを位相変換部30への入力とし、位相変換部30は、位相変換処理を行い位相量θ(=tan-1(RQ/RI))を算出する。そして、差分処理部31(周波数算出手段に相当)が位相量θに対して差分処理を行うことにより位相変化量、すなわち、周波数を算出する。例えば、時刻t1の位相量θ1と時刻t2の位相量θ2を算出し、その位相変化量(周波数)Δθ=θ1−θ2(=F)を計算して周波数Fを算出する。平均/分散算出部32(周波数変動評価量算出手段に相当)では、差分処理部31から出力される周波数Fの変動量を評価する。例えば、この周波数Fの平均値(μFとする)と分散(σF2とする)とを計算し、周波数の変動量を評価するための評価関数としてR2=σF2/μF2やR2=σF2などを適用し、周波数変動量の評価結果(周波数変動量を示す周波数変動評価量)を算出する。
【0020】
変調方式識別部4aでは、電力変動量算出部2で算出された電力変動評価量、及び、周波数変動量算出部3で算出された周波数変動評価量に基づき、各変調方式が有する特徴を利用して変調方式を識別する。例えば、AMの場合は情報信号を振幅に重畳する変調方式のため、電力変動量は大きくなるが周波数変動量は小さくなるという特徴を有するため、AMの判定式をD[AM]=R1−R2とし、FMの場合は情報信号を周波数に重畳する変調方式のため、電力変動量は小さくなるが周波数変動量は大きくなるという特徴を有するため、FMの判定式をD[FM]=R2−R1とする。そして、これらの判定式を用い、例えば、D[AM]≧D[FM]であればAMと判定し、D[AM]<D[FM]であればFMと判定する。
【0021】
このように、本実施の形態の変調方式識別回路では、受信電力の変動量についての評価量(電力変動評価量)および受信周波数の変動量についての評価量(周波数変動評価量)を算出し、各評価量と各変調方式固有の特徴とに基づいて、受信信号の変調方式を識別することとした。これにより、従来の電力変動量のみを利用して識別を行う方式と比較して、変調指数が小さいAMなどに対する識別性能を向上させることができる。また、変調方式ごとの判定式を導出し、各判定式を用いて算出した算出値の比較結果から変調方式を識別することとした。これにより、識別のための閾値を予め設定する等の調整が不要となり、簡易な方法で識別を行うことができる。また、AMかFMかの硬判定的な判定ではなく、AMやFMであることの確からしさを判定式(D[AM]、D[FM])利用により定量的に出力することもできる。
【0022】
なお、上記判定式は、より一般化した形式として、D[AM]=α1×R1−β1×R2やD[FM]=α2×R2−β2×R1のように、α1、α2やβ1、β2の調整係数を含む形としてもよい。これにより、伝送路環境に応じてα1、α2やβ1、β2の調整係数を最適化することにより、識別性能をさらに向上することが可能となる。
【0023】
実施の形態2.
つづいて、実施の形態2の変調方式識別回路について説明する。図2は、実施の形態2の変調方式識別回路の構成例を示す図である。本実施の形態の変調方式識別回路は、実施の形態1で示した変調方式識別回路(図1参照)の変調方式識別部4aに代えて変調方式識別部4bを備えた構成をとり、その他の部分については同一である。すなわち、電力変動量算出部2により算出された評価関数R1に基づく評価量(電力変動評価量)と周波数変動量算出部3により算出された評価関数R2に基づく評価量(周波数変動評価量)とを用いて行う変調方式の識別方法のみが異なる。そのため、本実施の形態では、実施の形態1で説明済みの構成要素についての説明は省略し、変調方式識別部4bについてのみ説明する。
【0024】
本実施の形態の変調方式識別回路において、変調方式識別部4bは、電力変動量算出部2から出力される電力変動評価量および周波数変動量算出部3から出力される周波数変動評価量を用い、これらの評価量と変調指数に応じて設定した複数の閾値とを比較し、その比較結果から変調方式を識別する。
【0025】
図3は、搬送波電力Cと雑音電力Nの比であるC/Nに対する評価関数R1としてR1=σP2/μP2を使用した場合の評価量R(電力変動評価量)を示す図である。この図から、電力変動量に基づく評価関数R1に対しては、AMの変調指数が変化するとその評価量(電力変動評価量)も変化することがわかる。これと同様に、周波数変動量に基づく評価関数R2に対しては、FMの変調指数が変化するとその評価量(周波数変動評価量)も変化する。すなわち、これらの評価関数R1,R2を使用した場合、図4に示すように、AMの変調指数が大きい場合は、受信電力の変動量が大きくなる傾向がある。そのため、図3に示すように、評価関数R1(電力変動評価量)に対して変調指数に応じた複数の閾値を設定してその閾値との比較を行い、変調指数の大きさを考慮したAMやFMの識別を行う。また、FMの変調指数が大きい場合は、周波数の変動量が大きくなる傾向があるため、評価関数R2(周波数変動評価量)に対して変調指数に応じた複数の閾値を設定してその閾値との比較を行い、変調指数の大きさを考慮したAMとFMの識別を行う。また、評価関数R1を用いて算出した評価量と評価関数R2を用いて算出した評価量が共に大きくなる場合には、SSB(Single Side Band)と判定する。
【0026】
このように、本実施の形態の変調方式識別回路では、受信電力の変動量についての評価量(電力変動評価量)および受信周波数の変動量(周波数変動評価量)についての評価量を算出し、各評価量と各変調方式の変調指数に応じて設定した複数のしきい値との比較結果に基づいて、受信信号の変調方式を識別することとした。これにより、従来の電力変動量のみを利用して識別を行う方式と比較して、変調指数が小さいAMなどに対する識別性能を向上させることができる。また、AMかFMかの硬判定的な判定ではなく、変調指数に応じたAMやFMであることの確からしさを定量的に出力することもできる。
【0027】
実施の形態3.
つづいて、実施の形態3の変調方式識別回路について説明する。図5は、実施の形態3の変調方式識別回路の構成例を示す図である。本実施の形態の変調方式識別回路は、実施の形態1で示した変調方式識別回路(図1参照)の変調方式識別部4aに代えて変調方式識別部4cを備えた構成をとり、その他の部分については同一である。すなわち、電力変動量算出部2により算出された評価関数R1に基づく評価量(電力変動評価量)と周波数変動量算出部3により算出された評価関数R2に基づく評価量(周波数変動評価量)とを用いて行う変調方式の識別方法のみが異なる。そのため、本実施の形態では、実施の形態1で説明済みの構成要素についての説明は省略し、変調方式識別部4cについてのみ説明する。
【0028】
本実施の形態の変調方式識別回路において、変調方式識別部4cは、電力変動量算出部2から出力される電力変動評価量および周波数変動量算出部3から出力される周波数変動評価量を用い、各変調方式が有する特徴を利用して変調方式を識別する処理と、各評価量と変調指数に応じて設定した複数の閾値との比較結果から変調方式を識別する処理と、を実行することにより、受信信号の変調方式を識別する。
【0029】
図6は、搬送波電力Cと雑音電力Nの比C/Nに対する評価関数R1としてR1=σP2/μP2を使用した場合の評価量を示す図である。また、図7は、各変調方式を識別するための識別手順を示す図である。図6からわかるように、SSBとAM/FMの評価量R(電力変動評価量)は大きく離れている。そのため、本実施の形態の変調方式識別回路では、まず、SSBとSSB以外(AM/FM)の識別を閾値判定により行い、SSB以外の場合には、さらにAMかFMかの識別を行う。具体的には、SSBかどうかを識別するための閾値を予め設定しておき、変調方式識別部4cは、図7に示したように、まず、閾値判定によりSSBであるか否かの判定を行う(ステップS1)。SSBであると判定した場合(ステップS1,Yes)、識別結果として「SSB」を示す情報を出力して処理を終了する(ステップS2)。一方、SSBではないと判定した場合には(ステップS1,No)、さらに、変調方式がAMかFMかの判定を行う(ステップS3)。このステップS3における処理では、実施の形態1で示した変調方式識別回路4aによる判定方法または実施の形態2で示した変調方式識別回路4bによる判定方法を使用して、AMとFMの識別を行う。ステップS3でAMと判定した場合(ステップS3,AM)、識別結果として「AM」を示す情報を出力して処理を終了する(ステップS4)。一方、FMと判定した場合には(ステップS3,FM)、識別結果として「AM」を示す情報を出力して処理を終了する(ステップS5)。
【0030】
なお、上記説明では、SSBかどうかを判定する際に、評価関数R1から得られる電力変動評価量を使用する場合について示したが、評価関数R2から得られる周波数変動評価量を使用することも可能である。
【0031】
このように、本実施の形態の変調方式識別回路では、受信電力の変動量についての評価量(電力変動評価量)および受信周波数の変動量についての評価量(周波数変動評価量)を算出し、まず、いずれか一方の評価量をしきい値判定することにより、変調方式がSSBかどうかの判定を行い、SSBではないと判定した場合、各評価量と各変調方式が有する特徴とに基づいて、または、各評価量と各変調方式の変調指数に応じて設定した複数のしきい値との比較結果に基づいて、受信信号の変調方式がAMとFMのどちらであるかを判定することとした。これにより、判定しやすいSSBとSSB以外(AM/FM)を識別判定した後にAMとFMの識別を行うことになるので、AMとFMを判定する際にSSBと誤判定する確率を低減することができ、変調方式の識別性能を向上させることができる。
【0032】
実施の形態4.
つづいて、実施の形態4の変調方式識別回路について説明する。図8は、実施の形態4の変調方式識別回路の構成例を示す図である。本実施の形態の変調方式識別回路は、実施の形態1で示した変調方式識別回路(図1参照)の変調方式識別部4aに代えて変調方式識別部4dを備え、さらに、C/N測定部5が追加された構成をとる。なお、その他の部分については実施の形態1で示した変調方式識別回路と同一であるため、同一構成要素についての詳細説明は省略する。
【0033】
C/N測定部5は、準同期検波部1から出力されるIch信号及びQch信号を入力とし、これらの入力信号に基づいて、搬送波電力Cと雑音電力Nの比であるC/Nを算出する。変調方式識別部4dは、電力変動量算出部2で評価関数R1を用いて算出された評価量(電力変動評価量)と、周波数変動量算出部3で評価関数R2を用いて算出された評価量(周波数変動評価量)と、変調指数およびC/N測定部5で測定されたC/Nに応じて最適化された複数の閾値と、に基づいて、受信信号の変調方式を識別する。
【0034】
次に、本実施の形態の変調方式識別回路の動作を説明する。準同期検波部1は、実施の形態1で示した動作を実行し、得られたIch信号RIおよびQch信号RQを電力変動量算出部2、周波数変動量算出部3およびC/N測定部5に対して出力する。
【0035】
電力変動量算出部2は、実施の形態1で示した動作を実行し、得られた電力変動評価量(評価関数R1を用いて算出した評価量)を変調方式識別部4dへ出力する。
【0036】
周波数変動量算出部3は、実施の形態1で示した動作を実行し、得られた周波数変動評価量(評価関数R2を用いて算出した評価量)を変調方式識別部4dへ出力する。
【0037】
C/N測定部5は、準同期検波部1から入力されたIch信号RIおよびQch信号RQを使用して受信信号に含まれる搬送波電力Cと雑音電力Nを測定し、さらに、その測定結果から電力比であるC/Nを算出し、得られた算出結果を変調方式識別部4dへ出力する。
【0038】
変調方式識別部4dは、電力変動量算出部2から入力された電力変動評価量、周波数変動量算出部3から入力された周波数変動評価量およびC/N測定部5から入力されたC/N測定結果に基づいて変調方式を識別する。
【0039】
変調方式識別部4dにおける変調方式識別動作の詳細について説明する。実施の形態2や3で示した閾値による識別判定では、図3や図6に示したように、受信信号のC/Nによって評価量(電力変動評価量,周波数変動評価量)が変動する。そのため、変調方式を識別するための最適な閾値も受信信号のC/Nに応じて変動する。すなわち、閾値を固定して判定を行うようにした場合、C/Nに応じて識別性能が変化し、特にC/Nが低い領域では識別性能の劣化が顕著になる。このため、変調方式識別部4dは、まず、C/N測定部5において受信信号から測定されたC/Nを取得し、取得したC/Nに基づいて、変調方式を識別する際に使用する閾値を最適化(設定)する。そして、最適化後の閾値を使用して、電力変動量算出部2から入力された電力変動評価量および周波数変動量算出部3から出力された周波数変動評価量のしきい値判定を行い、判定結果に基づいて変調方式を識別する。なお、変調方式の識別は、実施の形態2の変調方式識別部4bと同じ手順または実施の形態3の変調方式識別部4cと同じ手順にて行う。
【0040】
このように、本実施の形態の変調方式識別回路では、受信信号からC/Nを測定し、その測定したC/Nに応じて変調方式識別のための最適な閾値を適応的に設定した上で変調方式の識別を行う構成とした。これにより、C/Nに応じた最適な閾値を設定して変調方式の識別を行うことができ、C/Nの低い領域を含む広いC/Nの範囲で変調方式の識別性能を向上させることができる。
【0041】
実施の形態5.
つづいて、実施の形態5の変調方式識別回路について説明する。図9は、実施の形態5の変調方式識別回路の構成例を示す図である。本実施の形態の変調方式識別回路は、実施の形態1で示した変調方式識別回路(図1参照)に対してUSB/LSB判定部6を追加した構成をとる。なお、その他の部分については実施の形態1で示した変調方式識別回路と同一であるため、同一構成要素についての説明は省略し、USB/LSB判定部6についてのみ説明する。
【0042】
USB/LSB判定部6は、周波数変動算出部3の平均/分散算出部32にて算出される周波数の平均値と、変調方式識別部4aにおける変調方式の識別結果と、を入力とし、識別結果がSSBを示す場合に、SSBにおけるUSB(Upper Side Band)かLSB(Lower Side Band)かを、周波数の平均値に基づいて判定する。
【0043】
本実施の形態の変調方式識別回路の全体動作を、USB/LSB判定部6の動作を中心に説明する。USB/LSB判定部6は、変調方式識別部4aから取得した識別結果がSSBを示す場合、周波数変動算出部3の平均/分散算出部32から取得した周波数Fの平均値μFを使用し、受信信号の変調方式がSSBにおけるUSBかLSBかを判定する。具体的には、μF≧0の場合はUSBと判定し、μF<0の場合はLSBと判定する。
【0044】
なお、本実施の形態では、実施の形態1で示した変調方式識別回路に対してUSB/LSB判定部6を追加する場合の例について説明したが、実施の形態2〜4で示した変調方式識別回路に対してUSB/LSB判定部6を追加することも可能である。
【0045】
このように、本実施の形態の変調方式識別回路では、変調方式識別部で変調方式がSSBと識別された場合、周波数の平均値を使用することにより、SSBにおけるUSBとLSBの変調方式の識別を行う構成とした。これにより、SSBという識別だけでなく、SSBにおけるUSBとLSBの識別までも行うことができる。
【0046】
実施の形態6.
つづいて、実施の形態6の変調方式識別回路について説明する。図10は、実施の形態6の変調方式識別回路の構成例を示す図である。本実施の形態の変調方式識別回路は、実施の形態1で示した変調方式識別回路(図1参照)の周波数変動量算出部3に代えて周波数変動量算出部3fを備えた構成をとる。なお、その他の部分については実施の形態1で示した変調方式識別回路と同一であるため、同一構成要素についての説明は省略し、周波数変動量算出部3fについてのみ説明する。
【0047】
図10に示した周波数変動量算出部3fは、実施の形態1で示した周波数変動量算出部3(図1参照)に対して補正処理部33を追加した構成をとり、その他の構成要素は周波数変動量算出部3の構成要素と同一である。
【0048】
周波数変動量算出部3fにおいて、補正処理部33は、差分処理部31から出力される差分処理された位相量に対して後述する補正処理を実行し、得られた補正後の位相量を平均/分散算出部32へ出力する。
【0049】
本実施の形態の変調方式識別回路の全体動作を、周波数変動量算出部3fの動作を中心に説明する。周波数変動算出部3fにおいて、位相変換部30および差分処理部31は、実施の形態1の周波数変動量算出部3が備える位相変換部30および差分処理部31と同様の処理を実行し、周波数Fを算出する。この算出結果は補正処理部33に渡され、補正処理部33は、差分処理部31からの入力である周波数Fに対して補正処理を実行する。補正処理の具体例を示すと、補正処理部33では、入力された周波数Fを予め設定されていた閾値F0と比較し、「|F|≧F0の場合にF=0とする補正処理」、「F≧F0の場合F=F0とし、F≦−F0の場合にはF=−F0とする補正処理」などを行う。補正処理を実行して得られた補正後の周波数Fは平均/分散算出部32に渡され、平均/分散算出部32は、補正処理部33から受け取った補正後の周波数Fを対象として、実施の形態1の周波数変動量算出部3が備える平均/分散算出部32と同様の処理を実行し、周波数の変動量を評価する。すなわち、補正後の周波数Fの平均値μFと分散σF2を計算し、周波数の変動量を評価するための評価関数としてR2=σF2/μF2やR2=σF2などを適用し、周波数変動量の評価結果(周波数変動量を示す周波数変動評価量)を算出する。
【0050】
なお、本実施の形態では、実施の形態1で示した変調方式識別回路の周波数変動量算出部3を周波数変動量算出部3fに置き換える場合の例について説明したが、実施の形態2〜5で示した変調方式識別回路の周波数変動量算出部3を周波数変動量算出部3fに置き換えることも可能である。
【0051】
このように、本実施の形態の変調方式識別回路では、周波数Fに対して閾値を設定し、その設定値を超える周波数Fを検出した場合は、閾値以下となるように調整するなどの補正処理を実行した上で周波数変動についての評価量を算出する構成とした。これにより、雑音等の影響により誤って計算された周波数Fの影響を小さくすることができるため、周波数変動に基づく評価関数R2を用いた周波数変動量の評価精度を高めることができ、変調方式の識別性能を向上させることができる。
【0052】
なお、上述した各実施の形態では、準同期検波部を備え、受信信号を準同期検波することによりIch信号およびQch信号を生成する構成の変調方式識別回路について説明したが、これに限らず、受信信号をヒルベルト変換することによりIch信号およびQch信号を生成する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる変調方式識別回路は、無線通信システムなどを構成する通信装置に有用であり、特に、変調方式が未知の受信信号を受信した場合に変調方式を判別した上で復調する受信装置における変調方式識別に適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1の変調方式識別回路を備えた受信装置の構成例を示す図である。
【図2】実施の形態2の変調方式識別回路を備えた受信装置の構成例を示す図である。
【図3】C/Nと評価関数R1を用いて算出した評価量Rの関係を示す図である。
【図4】変調指数、電力変動量および周波数変動量の関係を示す図である。
【図5】実施の形態3の変調方式識別回路を備えた受信装置の構成例を示す図である。
【図6】C/Nと評価関数R1を用いて算出した評価量Rの関係を示す図である。
【図7】実施の形態3の変調方式識別回路における変調方式の識別手順を示す図である。
【図8】実施の形態4の変調方式識別回路を備えた受信装置の構成例を示す図である。
【図9】実施の形態5の変調方式識別回路を備えた受信装置の構成例を示す図である。
【図10】実施の形態6の変調方式識別回路を備えた受信装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 準同期検波部
2 電力変動量算出部
3、3f 周波数変動量算出部
4a、4b、4c、4d 変調方式識別部
5 C/N測定部
6 USB/LSB判定部
10 発振器
11 π/2移相部
12a、12b 乗算部
13a、13b LPF
20a、20b 2乗器
21 加算部
22、32 平均/分散算出部
30 位相変換部
31 差分処理部
33 補正処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に適用された変調方式を識別する変調方式識別回路であって、
前記入力信号の電力変動量を評価する電力変動量評価手段と、
前記入力信号の周波数変動量を評価する周波数変動量評価手段と、
前記電力変動量評価手段および前記周波数変動量評価手段による各評価結果に基づいて、前記入力信号に適用された変調方式を識別する変調方式識別手段と、
を備えることを特徴とする変調方式識別回路。
【請求項2】
前記電力変動量評価手段は、
前記入力信号に含まれる同相信号および直交信号をそれぞれ2乗する2乗手段と、
前記2乗手段により算出された前記同相信号の2乗値と前記直交信号の2乗値を加算する加算手段と、
前記加算手段による加算結果の平均値および分散を算出し、得られた平均値および分散を用いて、前記入力信号の電力変動量の評価結果である電力変動評価量を算出する電力変動評価量算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の変調方式識別回路。
【請求項3】
前記周波数変動量評価手段は、
前記入力信号に含まれる同相信号および直交信号に対して位相変換処理を実行し、位相量を算出する位相変換手段と、
前記位相変換手段により算出された位相量に基づいて受信信号の周波数を算出する周波数算出手段と、
前記周波数算出手段により算出された周波数の平均値および分散を算出し、得られた平均値および分散を用いて、前記入力信号の周波数変動量の評価結果である周波数変動評価量を算出する周波数変動評価量算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の変調方式識別回路。
【請求項4】
前記周波数変動量評価手段は、
さらに、
前記周波数算出手段により算出された周波数に対してしきい値判定を利用した補正処理を実行する補正手段、
を備え、
前記周波数変動評価量算出手段は、前記補正手段により補正された後の周波数を利用して、前記周波数変動評価量を算出することを特徴とする請求項3に記載の変調方式識別回路。
【請求項5】
前記変調方式識別手段は、
前記電力変動量評価手段による評価結果および前記周波数変動量評価手段による評価結果と、前記入力信号に適用されうる各変調方式固有の特徴と、に基づいて、前記入力信号に適用された変調方式を識別することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の変調方式識別回路。
【請求項6】
前記変調方式識別手段は、
前記電力変動量評価手段による評価結果および前記周波数変動量評価手段による評価結果と、前記入力信号に適用されうる各変調方式の固有の特徴および変調指数に応じて予め設定された複数のしきい値と、に基づいて、前記入力信号に適用された変調方式を識別することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の変調方式識別回路。
【請求項7】
前記変調方式識別手段は、
前記電力変動量評価手段による評価結果である電力変動評価量または前記周波数変動量評価手段による評価結果である周波数変動評価量と、予め設定されたしきい値と、に基づいて前記入力信号に適用された変調方式がSSBかどうかを識別し、SSBではないと識別した場合には、さらに、前記電力変動評価量および前記周波数変動評価量と、前記入力信号に適用されうる各変調方式固有の特徴と、に基づいて、前記入力信号に適用された変調方式がAMとFMのどちらであるかを識別することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の変調方式識別回路。
【請求項8】
前記変調方式識別手段は、
前記電力変動量評価手段による評価結果である電力変動評価量または前記周波数変動量評価手段による評価結果である周波数変動評価量と、予め設定されたしきい値と、に基づいて前記入力信号に適用された変調方式がSSBかどうかを識別し、SSBではないと識別した場合には、さらに、前記電力変動評価量および前記周波数変動評価量と、前記入力信号に適用されうる各変調方式の固有の特徴および変調指数に応じて予め設定された複数のしきい値と、に基づいて、前記入力信号に適用された変調方式がAMとFMのどちらであるかを識別することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の変調方式識別回路。
【請求項9】
さらに、
前記入力信号に含まれる同相信号および直交信号に基づいて当該入力信号のC/Nを算出するC/N算出手段、
を備え、
前記変調方式識別手段は、
まず、前記C/N算出手段により算出されたC/Nに基づいて前記予め設定されたしきい値を最適化し、次に、当該最適化後のしきい値を使用して、前記入力信号に適用された変調方式の識別処理を実行することを特徴とする請求項6、7または8に記載の変調方式識別回路。
【請求項10】
さらに、
前記変調方式識別手段による識別結果がSSBを示す場合に、前記周波数変動評価量算出手段により算出された平均値に基づいて、前記入力信号に適用された変調方式がSSBにおけるUSBとLSBのどちらであるかを判定するUSB/LSB判定手段、
を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の変調方式識別回路。
【請求項11】
変調方式が未知の変調信号を受信する受信装置であって、
請求項1〜10のいずれか一つに記載の変調方式識別回路、
を備え、
前記変調方式識別回路による識別結果に対応する復調処理を受信信号に実行することを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−296252(P2009−296252A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147173(P2008−147173)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】