説明

変調装置及び復調装置

【課題】位相変調信号及び振幅変調信号を生成する変調装置において、I/Q直交ずれの補正と、ON/OFF比の劣化を低減すること。
【解決手段】位相シフタ174は、位相制御部180から出力される制御信号に基づいて、コンデンサに印可する電圧を制御して、キャパシタンスを調整することにより、発振器173により発生される搬送波の位相をシフトする。位相制御部180は、位相ずれ推定方法を用いて、出力RF信号S140に基づいて、位相シフタ174の位相ずれを推定する。さらに、位相制御部180は、推定した位相シフタ174の位相ずれの推定値に基づいて、I信号S125とQ信号S135の搬送波間の位相差が90度を保つように、位相シフタ174をチューニングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、位相変調信号及び振幅変調信号が用いられるミリ波帯に適用される変調装置及び復調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.15 Task Group 3cでは、60GHz帯付近のミリ波帯を用いた高速度の無線パーソナル・エリア・ネットワーク(WPAN:Wireless Personal Area Network)の物理層に関する議論が進められている。ミリ波WPANの適用されるアプリケーションとしては、高速インタネット・アクセス、ビデオ・ストリーミング(ビデオ・オン・デマンド、HDTV(High Definition Television)やホーム・シアター)、並びにケーブルに代わる無線データ・バスなどの2Gbpsを超える非常に高いデータ転送などが上げられる。
【0003】
ミリ波WPANの利用に向けて、BPSK、QPSK、OOK、OFDMなどの様々な変調方式が検討されているところである。キオスク・ファイル・ダウンローディングなどのポータブル機器でのミリ波利用では、回路規模が小さく、低消費電力・低コストに向いたBPSK、QPSKまたはOOKといったシングルキャリア通信方式を装備した機器が望ましい。したがって、キオスク側装置では、BPSKやQPSKといった位相変調方式とOOKのような振幅変調方式の両方の携帯機器と通信できるように実現しなければならない。
【0004】
図6は、第1の先行技術(特許文献1,特許文献2参照)によるQPSK/OOK変調装置10の要部構成を示すブロック図である。図6に示すように、QPSK/OOK変調装置10は、OOK送信データを生成するためのOOKデータ生成部12と、QPSK送信データを生成するためのQPSKデータ生成部13と、スペクトル・マスクに適合するように、OOKまたはQPSKデータのパルス波形を整形するための二つのパルス整形部14−1,14−2と、パルス整形部14−1,14−2を通過したOOKまたはQPSKデータから高調波成分を除去するための2つの低域通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)16−1,16−2と、OOKデータ又はQPSKデータに応じてパルス整形部14−1,14−2のフィルタ特性を切り換えるフィルタ特性切換部15と、LPF16−1,16−2からのOOKデータ又はQPSKデータをQPSK変調するためのQPSK変調部17と、変調指示信号S11によりOOKデータ生成部12、QPSKデータ生成部13、及びフィルタ特性切換部15を制御するための変調選択部11とを具備する。
【0005】
QPSK変調部17は、LPF16−1,16−2の出力にそれぞれ接続された2つのミキサ17−1,17−2と、ミキサ17−1,17−2から出力された信号を足し合わせるための合成器17−5とを備える。ミキサ17−1は、発振器17−3により発生された搬送波に直接接続され、一方、ミキサ17−2は90度位相シフタ17−4を介して搬送波に間接的に接続される。
【0006】
図6において、変調指示信号S11がOOK変調を指示するとき、変調選択部11は、OOKデータ生成部12を有効にし、QPSKデータ生成部13を無効にする。変調選択部11は、また、フィルタ特性切換部15に対してパルス整形部14−1及び14−2のフィルタ特性をOOKデータ用に切り換えるように指示する。
【0007】
OOKデータ生成部12は、式(1),(2)により表わされるI(t)信号S12及びQ(t)信号S13を出力する。
【数1】

【数2】

【0008】
ここでαは定数であり、D(t)は0または1のいずれかに値をとる入力データ信号である。QPSK/OOK変調装置10の出力RF信号S14は、式(3)のように表わされる。
【数3】

式(3)から分かるように、出力RF信号S14は、OOK変調波の形状となる。
【0009】
図7は、第2の先行技術(特許文献1,特許文献3参照)による他のQPSK/OOK変調装置20の要部構成を示すブロック図である。図6に示したQPSK/OOK変調装置10とは異なり、QPSK/OOK変調装置20は、フィルタ特性切換部15を削除し、QPSK変調部26の出力信号S24を増幅するための振幅変調部28を追加した構成を採る。QPSK/OOK変調装置20は、また、OOK変調波を生成するのに異なる方法を採用する。
【0010】
図7において、変調指示信号S21がOOK変調を示すとき、OOKデータ生成部22は、一般によく知られるように式(4),(5)により表わされるI(t)信号S22及びQ(t)信号S23を出力する。
【数4】

【数5】

【0011】
ここでφは、例えば45度といった定数である。式(4)、(5)に示すように、90度位相差信号の生成方法としては、無線周波数に比し低い周波数の局部発振器を用いて生成したIF(Intermediate Frequency)信号に位相差を付与したり、矩形波の発生タイミングをずらして位相を調整したりして行なわれる。なお、式(4),(5)で示されるI(t)信号S22及びQ(t)信号S23は、式(1),(2)で示されるI(t)信号S12及びQ(t)信号S13とは異なることに注意する。式(4),(5)に基づいて、QPSK/OOK変調装置20の出力信号S24は、式(6)により表わされる。
【数6】

式(6)から分かるように、出力RF信号S24もまた、OOK変調波の形状となる。
【0012】
図7に示したQPSK/OOK変調装置20は、動作安定性という点で、図6に示したQPSK/OOK変調装置10よりも優れた利点をもつ。これは、QPSK/OOK変調装置20は、OOK変調を実現するためにI(同相成分)及びQ(直交成分)の両方のブランチを利用し、I及びQの両方のブランチは、接地レベル等の変動が互いに補正または相殺されるように互いに同期して動作するとともに、振幅変調部28において振幅変調を行うからである。しかし、QPSK/OOK変調装置20の不利なところは、付加的な振幅変調部28を必要とするために実装の複雑度が増すことである。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/157888号明細書
【特許文献2】特開2004−147052号公報
【特許文献3】米国特許第7120202号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図6に示したQPSK/OOK変調装置10及び図7に示したQPSK/OOK変調装置20はともに、90度位相シフタ17−4,26−4における位相のずれがQPSK/OOK変調装置に及ぼす悪影響を考慮に入れていない。また、90度位相シフタ17−4,26−4における位相ずれに加え、例えば基板上の配線作成精度、部品のばらつきに起因した位相ずれが生じる。このため、これらの位相ずれにより、QPSK/OOK変調装置10及びQPSK/OOK変調装置20の出力信号はQPSK変調信号生成時にはI/Q信号の直交ずれ、OOK変調信号生成時の合成電力の損失(ON電力の低下)と相殺合成時の抑圧特性劣化(OFF電力の増加)、つまりON/OFF比の劣化を招く可能性がある。
【0014】
I/Q信号の直交ずれとON/OFF比の劣化は、特に、電力損失は、QPSK/OOK変調装置10及びQPSK/OOK変調装置20が、高い周波数で動作するほど問題となる。5GHz帯のようなマイクロ波帯で動作する場合は周波数を、分周器を用いて低い周波数に変換し、位相比較することが可能となるが、60GHz帯で動作する場合には、分周器を実現すること自体が困難である。また、ON/OFF比の劣化については、例えば、90度位相シフタ17−4,26−4において5度の位相ずれがある場合、60GHzのQPSK/OOK変調装置10及びQPSK/OOK変調装置20での最大信号電力損失は、およそ5dBになる。なお、この90度位相シフタの位相ずれが、部品形状といった物理形状によるものであれば、5GHz帯での位相ずれは、1/10以下となり、最大信号電力の損失は非常に小さく、これによる悪影響は無視することができる。
【0015】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、位相変調信号及び振幅変調信号を生成、復調する変調装置及び復調装置において、I/Q直交ずれの補正と、ON/OFF比の劣化を低減することができる変調装置及び復調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の変調装置の一つの態様は、振幅変調又は位相変調された無線周波数信号を変調する変調装置であって、搬送波の位相をシフトする位相シフタと、振幅変調モード又は位相変調モードに応じて、I信号とQ信号とを生成する生成手段と、前記I信号と前記搬送波を乗算することにより、第1の混合信号を生成し、前記Q信号と前記位相シフタにより位相がシフトされた前記搬送波とを乗算することにより、第2の混合信号を生成する乗算手段と、前記第1の混合信号と前記第2の混合信号とを足し合わせることにより、無線周波数信号を生成する合成手段と、振幅変調モードの前記無線周波数信号に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する位相制御手段と、を具備する構成を採る。
【0017】
この構成によれば、同相成分であるI信号及び直交成分であるQ信号の両方のブランチを利用して振幅変調信号を生成し、振幅変調信号に基づいて、I信号とQ信号との搬送波間の位相ずれを推定して、当該位相ずれが無くなるように位相シフタをチューニングするので、I信号とQ信号とが所望の位相差で加算されるようになり、位相ずれによって生じる振幅の減少を抑圧し、電力損失を低減することができる。
【0018】
本発明の変調装置の一つの態様は、OOK変調又はQPSK変調された無線周波数信号を生成する変調装置であって、変調方式に応じて、前記I信号及び前記Q信号を生成する信号生成手段と、前記I信号にベースバンド処理を施し、第1のベースバンド信号を生成する第1のベースバンド処理手段と、前記Q信号にベースバンド処理を施し、第2のベースバンド信号を生成する第2のベースバンド処理手段と、搬送波を生成する局部発振器と、前記搬送波の位相をシフトする位相シフタと、前記局部発振器により生成された前記搬送波と前記第1のベースバンド信号とを乗算して、第1の混合信号を生成する第1のミキサと、前記位相シフタにより位相がシフトされた前記搬送波と前記第2のベースバンド信号とを乗算して、第2の混合信号を生成する第2のミキサと、前記第1の混合信号と前記第2の混合信号とを足し合わせることにより無線周波数信号を生成する合成手段と、前記無線周波数信号に基づいて、前記第1及び第2の混合信号の搬送波間の実際の位相差と、前記第1及び第2の混合信号の搬送波間の目標の位相差との位相ずれを推定し、当該位相ずれが無くなるように、前記位相シフタの位相シフト量を制御する位相制御手段と、を具備する構成を採る。
【0019】
この構成によれば、同相成分であるI信号及び直交成分であるQ信号の両方のブランチを利用してOOK変調信号を生成し、OOK変調信号に基づいて、I信号とQ信号との搬送波間の位相ずれを推定して、当該位相ずれが無くなるように、位相シフタをチューニングするようにしたので、I信号とQ信号とが所望の位相差で加算されるようになるため、OOK変調時のON/OFF比の劣化を低減することができるとともに、QPSK変調時のI/Q直交ずれの補正することができる。
【0020】
本発明の復調装置の一つの態様は、振幅変調又は位相変調された無線周波数信号を復調する復調装置であって、搬送波の位相をシフトする位相シフタと、前記無線周波数信号に前記搬送波を乗算しI信号を生成し、前記無線周波数信号に前記位相シフタにより位相シフトされた前記搬送を乗算しQ信号を生成する乗算手段と、前記位相シフタのシフト量を制御する位相制御手段と、を具備し、前記位相制御手段は、振幅変調モードの前記I信号と前記Q信号とが同相になるように、前記位相シフタを制御して得られた前記I信号と前記Q信号とを合成した同相信号に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する構成を採る。
【0021】
この構成によれば、同相成分であるI信号及び直交成分であるQ信号の両方のブランチを利用して振幅変調信号を復調し、当該振幅変調信号に基づいて、I信号とQ信号との搬送波間の位相ずれを推定して、当該位相ずれが無くなるように位相シフタをチューニングするので、QPSK信号を受信した際にも良好な直交度でI/Q信号を出力することが可能となり、直交ずれによる復調性能の劣化を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、QPSK変調信号及びOOK変調信号を生成、復調する変復調装置において、直交するI信号およびQ信号でQPSK変調信号を生成、復調すると共に、I信号とQ信号を所望の位相差で加算してOOK変調信号を生成する際に、I信号とQ信号の所望の位相差からのずれを検出、補正することでI/Q直交ずれの補正と、ON/OFF比の劣化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るQPSK/OOK変調装置100の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態は、QPSK変調及びOOK変調送受信装置に用いられるQPSK/OOK変調装置に適用した例である。
【0025】
図1において、QPSK/OOK変調装置100は、変調選択部110、OOKデータ生成部120、QPSKデータ生成部130、パルス整形部140−1,140−2、フィルタ特性切換部150、LPF(Low Pass Filter)160−1,160−2、QPSK変調部170、及び位相制御部180を備えて構成される。
【0026】
変調選択部110は、OOK変調又はQPSK変調のうち、どちらの変調方式に対応した送信データを生成するかを示す変調指示信号S110を入力し、変調指示信号S110に応じて、OOKデータ生成部120又はQPSKデータ生成部130のON/OFFを制御する。また、変調選択部110は、フィルタ特性を変更する指示をフィルタ特性切換部150に出力する。
【0027】
OOKデータ生成部120は、OOK送信データとして、I(t)信号S120及びQ(t)信号S130を生成する。このとき、OOKデータ生成部120は、I(t)信号S120及びQ(t)信号S130として、式(7),(8)で表されるような、I(t)信号S120及びQ(t)信号S130を生成する。
【数7】

【数8】

【0028】
ここでφは、例えば45度といった定数であり、αは定ゲインである。式(7),(8)に示すように、I(t)信号S120及びQ(t)信号S130は、図6に示した、これらに対応するI(t)信号S12及びQ(t)信号S13とは、異なる数式表現をとる。つまりこれは、QPSK/OOK変調装置100は、QPSK/OOK変調装置10とは異なる方式で、OOK変調された信号を生成する。
【0029】
QPSKデータ生成部130は、QPSK送信データとして、I(t)信号S120及びQ(t)信号S130を生成する。
【数9】

【数10】

【0030】
ここで、α1とα2は、QPSKデータの各シンボルに従って、1または−1に設定される。位相φは、例えば約45度といった固定値に設定される。
【0031】
パルス整形部140−1,140−2は、規格等で定められるスペクトラムマスクに適合するように、OOK送信データ又はQPSK送信データを濾波する。
【0032】
フィルタ特性切換部150は、変調選択部110から出力されるフィルタ特性を変更する指示に応じて、OOK送信データとQPSK送信データとの場合で、パルス整形部140−1及び140−2のフィルタ特性を切り換える。
【0033】
LPF160−1,160−2は、低域通過フィルタであり、OOK送信データ又はQPSK送信データから高調波成分を除去する。
【0034】
QPSK変調部170は、LPF160−1と160−2の出力にそれぞれ接続された2つのミキサ171,172と、搬送波を生成する発振器173と、搬送波の位相をシフトする位相シフタ174と、ミキサ171から出力されるI信号S125とミキサ172から出力されるQ信号S135とを足し合わせるための合成器175と、を備える。ミキサ171は、発振器173により発生された搬送波に直接接続され、一方、ミキサ172は、位相シフタ174を介して、搬送波に間接的に接続される。
【0035】
位相シフタ174は、可変位相シフタであり、例えば、キャパシタンスが可変な可変コンデンサを有している。位相シフタ174は、この当該可変コンデンサに印可する電圧を制御して、キャパシタンスを変えることにより、位相をシフトする。
【0036】
すなわち、位相シフタ174は、位相制御部180から出力される制御信号に基づいて、コンデンサに印可する電圧を制御して、キャパシタンスを調整することにより、発振器173により発生される搬送波の位相をシフトする。なお、本実施の形態のQPSK/OOK変調装置100は、QPSK変調信号を生成する一般的な構成を用いて、OOK変調信号を生成するようにしているので、位相シフタ174の初期位置シフト値は通常90度に設定されている。
【0037】
位相制御部180は、OOK変調又はQPSK変調のうち、どちらの変調方式に対応した送信データを生成するかを示す変調指示信号S110を入力し、変調指示信号S110に応じて、位相シフタ174に対して位相制御を行う。
【0038】
位相制御部180は、位相制御として、2つの主要な機能をもつ。第1の機能は、後述する位相ずれ推定方法を用いて、出力RF信号S140に基づいて、位相シフタ174の位相ずれを推定することである。
【0039】
第2の機能は、位相シフタ174の位相ずれの推定値に基づいて、変調指示信号S110がOOK変調を示す際、I信号S125とQ信号S135の搬送波間の位相差が0度又は180度に保たれるように、位相シフタ174をチューニングすることである。また、位相制御部180は、変調指示信号S110がQPSK変調を示す際、I信号S125とQ信号S135の搬送波間の位相差が90度に保たれるように、位相シフト174をチューニングする。位相制御部180は、位相シフタ174のキャパシタンスを調整することにより、搬送波の位相をチューニングする。
【0040】
このようにして、例えば、変調指示信号S110がOOK変調を示し、搬送波間の位相差を0度とする同相合成では、データ「1」に相当する出力RF信号S140が生成され、搬送波間の位相差を180度とする逆相合成では、データ「0」に相当する出力RF信号S140が生成される。
【0041】
また、位相制御部180は、トリガ信号S150によって、位相制御の実行開始が制御される。トリガ信号S150としては、いろいろな信号波形が存在する。例えば、トリガ信号S150が単一の矩形パルスであり、あるPHYフレームの開始タイミングに同期する矩形パルスの立ち上がりエッジにより、位相制御部180は位相制御の実行を開始できる。この場合、位相制御部180は、位相シフタ174に対して位相制御を1回実行する。
【0042】
あるいは、トリガ信号S150は矩形パルス列であり、対応するPHYフレームの開始に同期するパルス列の各矩形パルスの立ち上がりエッジにより、位相制御部180は、位相制御の実行を開始できる。その結果、位相制御部180は、位相シフタ174に対して、位相制御を各PHYフレームごとに実行する。
【0043】
あるいは、トリガ信号S150が単一の矩形パルスである場合において、工場出荷前の調整工程において、矩形パルスの立ち上がりエッジで、位相制御部180が位相制御の実行を開始するようにしてもよい。
【0044】
以下、上述のように構成された図1のQPSK/OOK変調装置100の動作について説明する。
【0045】
変調指示信号S110がOOK変調を示すとき、変調選択部110は、OOKデータ生成部120を有効にし、QPSKデータ生成部130を無効にする。変調選択部110は、また、フィルタ特性切換部150に対してパルス整形部140−1及び140−2のフィルタ特性をOOKデータ用に切り換えるように指示する。
【0046】
OOKデータ生成部120により生成されるI(t)信号S120とQ(t)信号S130は、式(7),(8)によって表わされる。式(7),(8)のI(t)信号S120,Q(t)信号S130は、式(4),(5)に対応するI(t)信号S22,Q(t)信号S23とは異なる。これらはまた、式(1),(2)に対応するI(t)信号S12,Q(t)信号S13とも異なる。
【0047】
位相制御部180が、トリガ信号S150によりトリガされる前は、位相シフタ174に対して位相制御が実行されていないため、ミキサ171から出力されるI信号S125の搬送波とミキサ172から出力されるQ信号S135の搬送波との間の位相差が0度でなく、位相ずれが存在している可能性がある。この場合、QPSK/OOK変調装置100の出力RF信号S140は、式(11)によって表わされる。
【数11】

ここで、δは、位相シフタ174によりシフトされる位相量が、0度(所望の位相差)から、どの位ずれているかを示す位相ずれである。
【0048】
位相制御を実行するためには、始めに、位相制御部180は、位相シフタ174の位相ずれを推定する必要がある。この目的を達するために、以下に説明する最尤(ML:Maximum likelihood)原則に基づく推定方法(以下「最尤推定方法」という)が用いられる。
【0049】
最尤推定方法では、対数尤度関数は式(12)のように記述される。
【数12】

ここで、Tは、数個のOOKシンボル長を含む時間に相当し得る観測間隔である。R(t)は、式(13)に示すように、ノイズの影響を受けた出力RF信号S140を示す。
【数13】

N(t)は、電力スペクトル密度Nをもつガウス性白色雑音である。
【0050】
式(11)〜(13)により、lnΛ(δ)のδに関する導関数をそれぞれゼロに設定し、式(14),(15)を得る。
【数14】

【数15】

【0051】
式(14),(15)に基づいて、式(16)を得る。
【数16】

【0052】
上述した最尤推定方法は、統計的な意味では最適であるが、積分演算を含むため計算複雑度がより高くなる。さらに、最尤推定方法は、また、観測間隔T内での入力データ信号D(t)を知ることを必要とする。
【0053】
もう一つの方法として、位相シフタ174の位相ずれを推定するために、信号振幅測定に基づく推定方法を用いることができる。
【0054】
この方法では、式(11),(13)により、2N個の異なる時刻点t1,t2,…,t2Nにおいて、雑音の影響を受けた出力RF信号S140をサンプリングし、式(17)を得る。
【数17】

【0055】
ここで、l=1,2,…,2Nとする。雑音を平滑化するために、始めからN個のサンプルを概ね平均化し、式(18)を得る。なお、全てのサンプルを用いて平均化する必要はない。
【数18】

ここで、R,X,Yは、それぞれ式(19),(20),(21)である。
【数19】

【数20】

【数21】

【0056】
次いで、残りのN個のサンプルを概ね平均化し、式(22)を得る。
【数22】

ここで、R,X,Yは、それぞれ式(23),(24),(25)である。
【数23】

【数24】

【数25】

【0057】
式(18),(20)により、式(26)を得る。
【数26】

【0058】
最尤推定方法に比べて、信号振幅測定に基づく推定方法は、計算複雑度がより低い。しかし、この方法は準最適である。さらに、この方法は、また、2N個のサンプリング時刻点での入力データ信号D(t)を知ることを必要とする。
【0059】
上述した最尤推定方法及び信号振幅測定に基づく推定方法に加えて、位相シフタ174の位相ずれを推定するために、以下に説明する信号電力測定に基づく方法を用いることができる。
【0060】
式(11),(13)によれば、雑音の影響を受けた出力RF信号S140の信号電力は、式(27)によって表わされる。
【数27】

【0061】
ここでE[・]は期待作用素を表わす。式(27)により、式(28)を得る。
【数28】

【0062】
最尤推定方法や信号振幅測定に基づく推定方法に比較して、信号電力測定に基づく推定方法は、観測間隔Tとともに入力データ信号D(t)を知ることを必要としない。その代わりに、この方法は雑音電力を知ることを必要とする。
【0063】
最尤推定方法、信号振幅測定に基づく推定方法、または信号電力測定に基づく推定方法を用いて得られる位相シフタ174の位相ずれδの推定値に従って、位相制御部180は、位相ずれδを無くすように位相シフタ174をチューニングして、位相ずれδをゼロにする。チューニング後の出力RF信号S140は、式(11)により、式(29)によって表わされる。
【数29】

【0064】
この結果、式(27)から分かるように、出力RF信号S140は、OOK変調波の形状となる。
【0065】
なお、式(7),(8)において、OOKデータ生成部120によって生成されるI(t)信号S120とQ(t)信号S130とは、それぞれ逆方向に変化する振幅と同一の固定位相をもっている。実際には、OOK変調波を生成する目的で、I(t)信号S120とQ(t)信号S130として、以下にあげるような他の信号波形も存在する。
【0066】
1)I(t)信号S120とQ(t)信号S130は、振幅が互いに逆方向に変化し、それぞれの固定位相が正反対になるような信号である。
【0067】
2)I(t)信号S120とQ(t)信号S130は、振幅が互いに逆方向に変化し、それぞれの固定位相の位相差が180度であるような信号である。
【0068】
3)I(t)信号S120とQ(t)信号S130は、振幅が互いに逆方向に変化し、それぞれの固定位相の位相和が180度であるような信号である。
【0069】
4)I(t)信号S120とQ(t)信号S130は、振幅が同一方向に変化し、それぞれの固定位相が正反対になるような信号である。
【0070】
5)I(t)信号S120とQ(t)信号S130は、振幅が同一方向に変化し、それぞれの固定位相の位相差が180度であるような信号である。
【0071】
6)I(t)信号S120とQ(t)信号S130は、振幅が同一方向に変化し、それぞれの固定位相の位相和が180度であるような信号である。
【0072】
I(t)信号S120とQ(t)信号S130との様々な形態に応じて、QPSK/OOK変調装置100の出力RF信号S140が、式(11),(27)とは異なる数式表現をとり得ることは当業者には理解されるであろう。前述した位相ずれ推定方法の推定の数式表現、例えば式(16),(24),(28)もまた異なってくる。
【0073】
変調指示信号S110が、QPSK変調を示すとき、変調選択部110は、QPSKデータ生成部130を有効にし、OOKデータ生成部120を無効にする。変調選択部110はまた、フィルタ特性切換部150に対してパルス整形部140−1及び140−2のフィルタ特性をQPSKデータ用に切り換えるように指示する。
【0074】
QPSKデータ生成部130は、QPSKデータ信号の4個の2進コード(00,01,10,11)または4個のシンボルに基づいて、式(9),(10)によって表わされるI(t)信号とQ(t)信号を出力する。
【0075】
位相制御部180が、位相シフタ174に対して位相制御を実行する前は、位相シフタ174には位相ずれが存在している可能性がある。この場合、式(28),(29)により、QPSK/OOK変調装置100の出力RF信号S140は、式(30)によって表わされる。
【数30】

式(11)と同様に、δは、位相シフタ174によりシフトされる位相量が、90度(所望の位相差)からどの位ずれているかを示す位相ずれである。
【0076】
位相制御部180は、上述した位相ずれ推定方法を用いて、位相シフタ174の位相ずれの推定値を得た後、位相ずれδを無くすように、位相シフタ174をチューニングして、位相ずれδをゼロにする。式(30)により、チューニング後の出力RF信号S140は、式(31)によって表わされる。
【数31】

【0077】
式(31)から分かるように、出力RF信号S140は、QPSKデータ信号の4個のシンボルに対応して、搬送波に対し45度、135度、225度、及び315度の位相シフトをもつ4個の位相の間で切り換えられ、QPSK変調波の形状となる。
【0078】
QPSK変調された信号を出力する際にも、位相シフタ174の位相ずれを推定するために、上述した最尤推定方法、信号振幅測定に基づく推定方法、及び、信号電力測定に基づく推定方法を用いることができることは当業者には理解されるであろう。ただし、QPSK変調器100の出力RF信号S140は、OOK変調とQPSK変調とでは異なる数式表現をとるので、これらの位相ずれ推定方法の推定の数式表現、例えば、式(16),(24),(28)は、OOK変調とQPSK変調とでは異なってくる。したがって、位相制御部180は、変調指示信号S110に応じて、位相ずれ推定方法を適宜に調整するようにすればよい。
【0079】
図2は、本実施の形態に係る位相制御方法を説明するためのフローチャート図である。図中、STはフローの各ステップを示す。
【0080】
ST101で、位相シフタ174の位相シフト値が初期値に設定される。位相シフタ174の初期位相シフト値は、位相シフタ174のキャパシタンスを適宜に調整することにより、90度に設定される。ST102で、位相ずれ推定方法、例えば、信号電力測定に基づいた方法を用いて、位相シフタ174の位相ずれδが推定される。ST103で、位相シフタの位相ずれδの推定値に従って、位相シフタ174がチューニングされる。これは、位相シフタ174のキャパシタンスを再調整することにより行われる。
【0081】
以上のように、本実施の形態によれば、OOK変調を実現するためにI及びQの両方のブランチを利用し、Q及びIの両方のブランチは、接地レベル等の変動が互いに補正、または相殺されるように、互いに同期して動作するので、動作安定性を向上させることができる。さらに、付加的な振幅変調部を必要としないため、実装の複雑度を減少させることもできる。
【0082】
さらに重要なのは、本実施の形態では、位相ずれがQPSK/OOK変調装置100に及ぼす悪影響に配慮している。すなわち、位相ずれ推定値に従って、位相シフタ174をチューニングすることによって、位相ずれδがQPSK/OOK変調装置100に及ぼす悪影響を排除する。この結果、特に60GHzにおいて、QPSK/OOK変調装置100の出力RF信号のON/OFF比を大幅に改善することができる。また、位相ずれが調整されることにより、I/Q信号送信の際の直交ずれが小さくなるので、QPSK変調装置としての変調精度を高める効果も期待できる。
【0083】
以上、I/Q直交ずれの補正を行い、ON/OFF比の劣化を低減することができる変調装置について説明した。なお、以上の説明では、OOK変調信号とQPSK変調信号との組合せを用いて説明したが、振幅変調方式としてはASK変調や、これを多値化した多値ASK変調を用いても同様に実施可能である。多値ASK変調では、式(7),(8)において、αが、多値のゲインを採ることになる。また、位相変調方式としてはBPSK変調、π/2シフトBPSK変調や8値以上の多位相の変調方式を用いても同様に実施可能である。
【0084】
すなわち、振幅変調モード又は位相変調モードに応じて、I信号とQ信号とを生成し、I信号と搬送波を乗算することにより、第1の混合信号を生成し、Q信号と位相シフタにより位相がシフトされた前記搬送波とを乗算することにより、第2の混合信号を生成し、第1と第2の混合信号とを足し合わせることにより、無線周波数信号を生成し、振幅変調モードの無線周波数信号に基づいて、位相シフタのシフト量を調整するようにしてもよい。
【0085】
この際、例えば、振幅変調モードにおいて、異なる振幅レベルに変調された第1の無線周波数信号と第2の無線周波数信号の振幅差に基づいて、上述の推定方法により、位相シフタのシフト量を調整する。
【0086】
なお、以上の説明では、振幅変調信号と位相変調信号の送信順序について記載していないが、例えば、振幅変調信号をまず送信し、この信号を元に送信と受信の位相調整を行なった後に、位相変調信号を送信するようにしてもよい。また、送信フレーム中にビーコンを挿入し、ビーコンを用いて位相調整を行なうように取り決めてもよい。
【0087】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係るQPSK/OOK変調装置200の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態の説明にあたり、図1と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
実施の形態1との相違点は、本実施の形態のQPSK/OOK変調装置200は、位相制御部180に代えて、位相制御部210を有し、LPF160−1とミキサ171との間に可変遅延部220を備えることにある。
【0089】
可変遅延部220は、LPF160−1とミキサ171との間に設けられ、I(t)信号S120に可変遅延を与える。可変遅延部220は、例えば、多段のトランジスタから構成され、当該トランジスタのバイアス電圧を調整することにより、遅延量をチューニングする。また、遅延量は、トランジスタの組み合わせや段数を変えることにより、変更することができる。このため、可変遅延部220は、比較的大きな遅延量を与えることができる。一方、上述したように、位相シフタ174は、キャパシタンスが可変なコンデンサを有し、当該コンデンサに印可する電圧を調整してキャパシタンスを制御することにより、遅延量をチューニングする。このため、位相シフタ174は、比較的小さな位相差を微調整することができる。なお、可変遅延部220を、LPF160−2とミキサ172との間に設け、Q(t)信号S130に可変遅延を与えるようにしてもよい。
【0090】
位相制御部210は、可変遅延部220と位相シフタ174とに対して位相制御を行う。位相制御部210は、位相制御として、2つの主要な機能をもつ。第1の機能は、上述した位相ずれ推定方法を用いて、出力RF信号S140に基づいて、パルス整形部140−1,140−2や、LPF160−1,160−2の素子のばらつき等により、I(t)信号の伝送経路とQ(t)信号の伝送経路との間に生じる経路差遅延(以下「I/Q経路差遅延」という)及び位相シフタ174の位相ずれの双方を共に推定することである。第2の機能は、I/Q経路差遅延の推定値に従って可変遅延部220をチューニングし、位相シフタ174の位相ずれの推定値に従って位相シフタ174をチューニングすることである。位相制御部210は、可変遅延部220をそのバイアス電圧を調整することによりチューニングし、一方、位相制御部210は、位相シフタ174のキャパシタンスを調整することにより、位相シフタ174をチューニングする。
【0091】
このようにすることで、位相制御部210は、パルス整形部140−1,140−2や、LPF160−1,160−2の素子のばらつき等により、I(t)信号の伝送経路とQ(t)信号の伝送経路との間に生じるI/Q経路差遅延を、可変遅延部220を用いてキャンセルすることができ、さらに、位相シフタ174を用いて、I信号S125とQ信号S135の搬送波間の位相差を微調整することができる。
【0092】
なお、実施の形態1と同様に、位相制御部210は、トリガ信号S150によって、位相制御の実行開始が制御される。
【0093】
以下、上述のように構成されたQPSK/OOK変調装置200の動作について説明する。
【0094】
変調指示信号S110がOOK変調を指示するとき、変調選択部110はOOKデータ生成部120を有効にし、QPSKデータ生成部130を無効にする。変調選択部110は、また、フィルタ特性切換部150に対してパルス整形部140−1と140−2のフィルタ特性をOOKデータ用に切り換えるように指示する。
【0095】
OOKデータ生成部120により生成されるI(t)信号S120とQ(t)信号S130は、実施の形態1と同様に、式(7),(8)によって表わされる。
【0096】
位相制御部210が、トリガ信号S150によりトリガされる前は、可変遅延部220及び位相シフタ174に対して位相制御が実行されていないため、QPSK/OOK変調装置200にはI/Q経路差遅延と位相シフタ174の位相ずれの双方が存在している可能性がある。この場合、QPSK/OOK変調装置100の出力RF信号S140は、式(32)によって表わされる。
【数32】

ここで、δは、I/Q経路差遅延であり、δは、位相シフタ174によりシフトされる位相量が、90度からどの位ずれているかを示す位相ずれである。
【0097】
位相制御を実行するためには、最初に、位相制御部210は、I/Q経路差遅延と位相シフタ174の位相ずれと、を推定する必要がある。位相ずれ推定方法としては、実施の形態1と同様に、最尤推定方法、及び信号振幅測定に基づく推定方法に基づく推定方法を用いることができる。
【0098】
以下では、最尤推定方法を用いて、位相制御部210が、I/Q経路差遅延と位相シフタ174の位相ずれを推定する場合を例に説明する。
【0099】
最尤推定方法では、対数尤度関数が式(33)のように記述される。
【数33】

ここで、Tは、数個のOOKシンボル長を含む時間に相当し得る観測間隔である。R(t)は、式(13)に示すように、ノイズの影響を受けた出力RF信号S140を示す。
【0100】
式(13),(32),(33)により、lnΛ(δ,δ)のδ及びδに関する導関数をそれぞれゼロに設定し、式(34),(35)を得る。
【数34】

【数35】

【0101】
式(34),(35)に基づいて、実施の形態1と同様に、式(16)を得る。
【0102】
δは、式(34)又は(35)に、式(16)を代入することにより導出される。
【0103】
また、実施の形態1と同様に、信号振幅測定に基づく推定方法を用いて、I/Q経路差遅延及び位相シフタ174の位相ずれの双方を推定することができる。
【0104】
この方法では、式(13),(32)により、2N個の異なる時刻点t1,t2,…,t2Nにおいて、雑音の影響を受けた出力RF信号S140をサンプリングし、式(36)を得る。
【数36】

【0105】
ここで、l=1,2,…,2Nとする。雑音を平滑化するために、始めからN個のサンプルを概ね平均化し、式(37)を得る。なお、全てのサンプルを用いて平均化する必要はない。
【数37】

ここで、R,X,Yは、それぞれ上述した式(19),(20),(21)と同じである。
【0106】
次いで、残りのN個のサンプルを概ね平均化し、式(38)を得る。
【数38】

ここで、R,X,Yは、それぞれ上述した式(23),(24),(25)と同じである。
【0107】
式(37),(38)により、実施の形態1と同様に、式(26)を得る。
【0108】
δは、式(37)又は(38)に、式(26)を代入することにより導出される。
【0109】
最尤推定方法、又は信号振幅測定に基づく推定方法を用いて得られるI/Q経路差遅延及び位相シフタ174の位相ずれの双方の推定値に従って、位相制御部210は、双方の位相ずれを無くすように可変遅延部220及び位相シフタ174をチューニングする。このようにして、δ及びδをゼロにする。チューニング後の出力RF信号S140は、式(32)により、式(29)によって表わされる。
【0110】
この結果、式(27)から分かるように、出力RF信号S140は、OOK変調波の形状となる。
【0111】
なお、実施の形態1と同様に、I(t)信号S120とQ(t)信号S130の様々な形態に応じて、QPSK/OOK変調装置200の出力RF信号S140が、式(32)や式(27)とは異なる数式表現をとり得ることは当業者には理解されるであろう。前述した位相ずれ推定方法の推定の数式表現、例えば式(16),(24)もまた異なってくる。
【0112】
なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なり、信号電力測定に基づく推定方法を用いて、I/Q経路差遅延及び位相シフタ174の位相ずれの双方を推定することが難しい。ただし、出力RF信号S140の所望の形状については予めわかっているので、出力RF信号S140の信号電力をモニタすることにより、I/Q経路差遅延又は位相シフタ174の位相ずれのどちらの影響がより強いか推測することができる。すなわち、出力RF信号S140の信号電力と所望の出力電力との差が大きい場合には、I/Q経路差遅延の影響が大きいと推測し、一方、出力RF信号S140の信号電力と所望の出力電力との差が小さい場合は、I/Q経路差遅延の影響は小さいと推測することができる。
【0113】
したがって、出力RF信号S140の信号電力と所望の出力電力との差が所定の閾値以上の場合は、可変遅延部220をチューニングし、出力RF信号S140の信号電力と所望の出力電力との差が所定の閾値未満の場合は、位相シフタ174をチューニングするようにすることで、比較的短い時間で、I/Q経路差遅延又は位相シフタ174の位相ずれの影響を除去することができる。
【0114】
また、比較的短時間でチューニングを行う必要がある場合には、可変遅延部220をチューニングし、チューニングに比較的長い時間をかけることができる場合には、位相シフタ174を先にチューニングするようにしてもよい。上述したように可変遅延部220は、多段のトランジスタなどから構成されており、位相シフタ174に比べ大きな遅延を発生させることができる。したがって、比較的短時間でチューニングを行う必要がある場合に、可変遅延部220をチューニングするようにすることで、出力RF信号S140の状態がI/Q経路差遅延の影響を受けているか否かの判定を早く行うことができるようになる。
【0115】
一方、位相シフタ174は、例えば、キャパシタンスが可変な可変コンデンサを有し、当該可変コンデンサに印可する電圧を調整することにより、位相シフト量を微調整することができる。したがって、チューニングに比較的長い時間をかけることができる場合に、位相シフタ174をチューニングするようにすることで、より正確にI信号S125の搬送波とQ信号S135の搬送波の位相ずれを調整することができるようになり、チューニング後の出力RF信号S140の電力をより所望の電力に近づけることができるようになる。
【0116】
変調指示信号S110が、QPSK変調を指示するとき、変調選択部110はQPSKデータ生成部130を有効にし、OOKデータ生成部120を無効にする。変調選択部110はまた、フィルタ特性切換部150に対してパルス整形部140−1及び140−2のフィルタ特性をQPSKデータ用に切り換えるように指示する。
【0117】
QPSKデータ生成部130は、QPSKデータ信号の4個の2進コード(00,015,及び11)、または4個のシンボルに基づいて、実施の形態1と同様に、式(22),(23)によって表わされるI(t)信号とQ(t)信号を出力する。
【0118】
位相制御部210が、可変遅延部220と位相シフタ174の両方に対して位相制御を実行する前は、QPSK/OOK変調装置200には、I/Q経路差遅延と位相シフタ174の位相ずれの双方が存在している可能性がある。この場合、式(28),(29)により、QPSK/OOK変調装置200の出力RF信号S140は、式(39)によって表わされる。
【数39】

ここで、δは、I/Q経路差遅延であり、δは、位相シフタ174によりシフトされる位相量が、90度からどの位ずれているかを示す位相ずれである。
【0119】
上述した位相ずれ推定方法を用いて、I/Q経路差遅延と位相シフタ174の位相ずれの双方の推定値を得た後、位相制御部210は、双方の位相ずれを無くすように可変遅延部220及び位相シフタ174をチューニングする。式(39)により、チューニング後の出力RF信号S140は、実施の形態1と同様に、式(31)によって表わされ、QPSK変法波の形状となる。
【0120】
QPSK変調された信号を出力する際にも、I/Q経路差遅延と位相シフタ174の位相ずれの双方を推定するために、上述した最尤推定方法、及び、信号振幅測定に基づく推定方法に基づく推定方法を用いることができることは当業者には理解されるであろう。ただし、QPSK変調器200の出力RF信号S140は、OOK変調とQPSK変調では異なる数式表現をとるので、これらの位相ずれ推定方法の推定の数式表現、例えば、式(16),(24)は、OOK変調とQPSK変調とでは異なってくる。したがって、位相制御部210は、変調指示信号S110に応じて、位相ずれ推定方法を適宜に調整するようにすればよい。
【0121】
図4は、本実施の形態に係る位相制御方法を説明するためのフローチャート図である。図中、STはフローの各ステップを示す。
【0122】
ST201で、位相シフタ174の位相シフト値が初期値に設定される。位相シフタ174の初期位相シフト値は、位相シフタ174のキャパシタンスを適宜に調整することにより90度に設定される。ST202で、可変遅延部220の遅延値が初期値に設定される。可変遅延部220の初期遅延値は、可変遅延部220のバイアス電圧を適宜に調整することによりゼロに設定される。ST203で、前述した位相ずれ推定方法、例えば、信号振幅測定に基づく推定方法を用いて、I/Q経路差遅延δと位相シフタ174の位相ずれδが共に推定される。ST204で、位相シフタ174の位相ずれδの推定値に従って、位相シフタ174がチューニングされる。これは、位相シフタ174のキャパシタンスを再調整することにより行われる。ST205で、I/Q経路差遅延δの推定値に従って、可変遅延部220がチューニングされる。これは、可変遅延部220のバイアス電圧を再調整することにより行われる。
【0123】
以上のように、本実施の形態によれば、出力RF信号S140に基づいて、同相成分と直交成分のI/Q経路差遅延δを推定し、I/Q経路差遅延δが無くなるように、可変遅延部220の遅延量を微調整するようにしたので、より確実にI信号S125及びQ信号S135の搬送波間の位相差が目標の位相差となって、加算器175によって合成されるようになるので、出力RF信号S140の振幅レベルの劣化を確実に抑圧し、電力損失を確実に低減することができるようになる。
【0124】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係るQPSK/OOK復調装置の要部構成を示すブロック図である。
【0125】
図5のQPSK/OOK復調装置300は、受信アンテナ310、QPSK復調部320、復調・同期部330、位相制御部340を備えて構成される。QPSK復調部320は、分岐回路321、発振器322、位相シフタ323、ミキサ324,325を備える。
【0126】
分岐回路321は、受信アンテナ310を介して受信信号を分岐し、ミキサ324,325に入力する。
【0127】
位相シフタ323は、位相制御部340から出力される制御信号に基づいて、発振器322から出力される搬送波の位相をシフトし、シフト後の搬送波をミキサ325に出力する。
【0128】
ミキサ324は、発振器322により発生された搬送波と、受信信号とを乗算し、ベースバンドのI信号にダウンコンバートする。ミキサ324は、I信号を復調・同期部330及び位相制御部340に出力する。
【0129】
ミキサ325は、位相シフタ323から出力される位相シフト後の搬送波と、受信信号とを乗算し、ベースバンドのQ信号にダウンコンバートする。ミキサ325は、Q信号を復調・同期部330及び位相制御部340に出力する。
【0130】
このようにして、QPSK復調部320は、受信信号を直交復調し、I信号及びQ信号に変換する。
【0131】
復調・同期部330は、I信号及びQ信号を用いて、データ復調を行い、復調後のデータを、位相制御部340に出力する。
【0132】
位相制御部340は、位相シフタ323の位相シフト量を制御する。なお、位相シフト量の制御方法については、後述する。
【0133】
以下、上述のように構成された図5のQPSK/OOK復調装置300の動作について説明する。
【0134】
受信アンテナ310を介して受信された受信信号は、分岐回路321によって分岐され、分岐後の受信信号は、それぞれミキサ324,325に出力される。発振器322から出力される搬送波は位相シフタ323によって、所定の位相に調整されてミキサ325に出力される。ミキサ324は、発振器322から出力される搬送波と、分岐回路321から出力される受信信号とを乗算し、ベースバンドのI信号に変換する。ミキサ325は、位相シフタ323から出力される位相シフト後の搬送波と、分岐回路321から出力される受信信号とを乗算し、ベースバンドのQ信号に変換する。このようにして、QPSK復調部320によって、受信信号は、直交復調され、I信号及びQ信号に変換される。
【0135】
I信号及びQ信号は、復調・同期部330に出力され、データの復調が行われる。
【0136】
QPSK復調部320において直交復調される際に、I信号とQ信号の直交度が劣化すると、復調性能の劣化につながる。図5から分かるように、QPSK復調部320において、分岐回路以降は別系統の回路(例えば、ミキサ324,325)が用いられて、信号処理が行なわれるため、I信号とQ信号の直交度を正確に、例えば90度の位相差で保つことは困難である。
【0137】
これを解決するために、本実施の形態では、受信アンテナ310によって受信されたOOK信号の振幅に基づいて、位相制御部340が、I信号とQ信号の直交度の判定と調整を行なうようにした。以下、位相制御部340の制御方法について説明する。
【0138】
先ず、位相制御部340は、発振器322からミキサ324,325に供給される搬送波の位相を、直交(例えば、90度)ではなく、同相となるように、位相シフタ323のシフト量を調整する。このようにすることで、ミキサ324及びミキサ325において、同相のI信号とQ信号とが得られるようになる。これら信号は、位相制御部340に出力される。
【0139】
次に、位相制御部340は、同相のI信号Q信号の振幅差を算出するとともに、OOK信号として‘1’を受信した場合のI/Q信号の振幅差(第1の振幅差)と、‘0’を受信した場合のI/Q信号の振幅差(第2の振幅差)を比較する。位相制御部340は、第1の振幅差と第2の振幅差との差が、所定の値を満たしていれば、I信号の系とQ信号の系は所定の直交度であると判断する。一方、I信号とQ信号の振幅差が、所定の値を満たしていなければ、位相制御部340は、位相シフタ323の位相シフト量を変更し、直交度を満たすように制御する。
【0140】
これにより、QPSK/OOK復調装置300は、OOK信号を受信した際にON/OFF比の劣化を低減することができるとともに、QPSK信号を受信した際に良好な直交度でI/Q信号を出力することが可能となり、直交ずれによる復調性能の劣化を低減することができる。
【0141】
広く記述された本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲で、具体的な実施形態に示された本発明に対して多様な変形及び/または修正を加えることが可能であることは当業者には理解されるであろう。本実施形態は、したがって、あらゆる点で制限的ではなく、例示的にみされるべきものである。
【0142】
本発明の変調装置の一つの態様は、振幅変調又は位相変調された無線周波数信号を変調する変調装置であって、搬送波の位相をシフトする位相シフタと、振幅変調モード又は位相変調モードに応じて、I信号とQ信号とを生成する生成手段と、前記I信号と前記搬送波を乗算することにより、第1の混合信号を生成し、前記Q信号と前記位相シフタにより位相がシフトされた前記搬送波とを乗算することにより、第2の混合信号を生成する乗算手段と、前記第1の混合信号と前記第2の混合信号とを足し合わせることにより、無線周波数信号を生成する合成手段と、振幅変調モードの前記無線周波数信号に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する位相制御手段と、を具備する構成を採る。
【0143】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、振幅変調モードにおいて、異なる振幅レベルに変調された前記無線周波数信号の振幅差に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する構成を採る。
【0144】
これらの構成によれば、同相成分であるI信号及び直交成分であるQ信号の両方のブランチを利用して振幅変調信号を生成し、振幅変調信号に基づいて、I信号とQ信号との搬送波間の位相ずれを推定して、当該位相ずれが無くなるように位相シフタをチューニングするので、I信号とQ信号とが所望の位相差で加算されるようになり、位相ずれによって生じる振幅の減少を抑圧し、電力損失を低減することができる。
【0145】
本発明の変調装置の一つの態様は、OOK変調又はQPSK変調された無線周波数信号を生成する変調装置であって、変調方式に応じて、前記I信号及び前記Q信号を生成する信号生成手段と、前記I信号にベースバンド処理を施し、第1のベースバンド信号を生成する第1のベースバンド処理手段と、前記Q信号にベースバンド処理を施し、第2のベースバンド信号を生成する第2のベースバンド処理手段と、搬送波を生成する局部発振器と、前記搬送波の位相をシフトする位相シフタと、前記局部発振器により生成された前記搬送波と前記第1のベースバンド信号とを乗算して、第1の混合信号を生成する第1のミキサと、前記位相シフタにより位相がシフトされた前記搬送波と前記第2のベースバンド信号とを乗算して、第2の混合信号を生成する第2のミキサと、前記第1の混合信号と前記第2の混合信号とを足し合わせることにより無線周波数信号を生成する合成手段と、前記無線周波数信号に基づいて、前記第1及び第2の混合信号の搬送波間の実際の位相差と、前記第1及び第2の混合信号の搬送波間の目標の位相差との位相ずれを推定し、当該位相ずれが無くなるように、前記位相シフタの位相シフト量を制御する位相制御手段と、を具備する構成を採る。
【0146】
この構成によれば、同相成分であるI信号及び直交成分であるQ信号の両方のブランチを利用してOOK変調信号を生成し、OOK変調信号に基づいて、I信号とQ信号との搬送波間の位相ずれを推定して、当該位相ずれが無くなるように位相シフタをチューニングするようにしたので、I信号とQ信号とが所望の位相差で加算されるようになるため、OOK変調時のON/OFF比の劣化を低減することができるとともに、QPSK変調時のI/Q直交ずれの補正することができる。
【0147】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記第1のベースバンド信号又は前記第2のベースバンド信号に対して遅延を与える可変遅延手段を、さらに具備し、前記位相制御手段は、前記無線周波数信号に基づいて、前記第1のベースバンド信号の伝送経路と前記第2のベースバンド信号の伝送経路との伝送経路差を、さらに推定し、当該伝送経路差が無くなるように、前記可変遅延手段の遅延量を制御する構成を採る。
【0148】
この構成によれば、同相成分であるI信号と直交成分であるQ信号との伝搬経路差を無くすことができるので、I信号とQ信号とが確実に所望の位相差で加算されるようになり、伝搬経路差よって生じる振幅レベルの劣化を確実に抑圧し、電力損失を確実に低減することができるようになる。
【0149】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、前記位相シフタのキャパシタンスを調整することにより、前記位相ずれをチューニングする構成を採る。
【0150】
この構成によれば、位相シフタの可変コンデンサに印可する電圧を制御してキャパシタンスを変えることにより、搬送波の位相を微調整して、I信号とQ信号の搬送波間の位相差を所望の位相差に調整することができる。
【0151】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、多段のトランジスタから構成され、前記位相制御手段は、前記トランジスタに印可するバイアス電圧を調整することにより、前記遅延量をチューニングする構成を採る。
【0152】
この構成によれば、トランジスタのバイアス電圧を調整することにより、遅延量を微調整して、I信号とQ信号の伝搬経路差を無くすことができる。また、トランジスタの組み合わせや段数を変えることにより、遅延量の可変範囲を容易に変更することができる。
【0153】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、最尤原則に基づく方法を用いて前記位相ずれを推定する構成を採る。
【0154】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の振幅に基づいて前記位相ずれを推定する構成を採る。
【0155】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の電力を検出し、当該電力に基づいて前記位相ずれを推定する構成を採る。
【0156】
これらの構成によれば、I信号及びQ信号の搬送波間の実際の位相差と、I信号及びQ信号の搬送波間の目標の位相差との位相ずれを推定することができる。
【0157】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、最尤原則に基づく方法を用いて前記位相ずれ及び前記伝送経路差を推定する構成を採る。
【0158】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の振幅に基づいて前記位相ずれ及び前記伝送経路差を推定する構成を採る。
【0159】
これらの構成によれば、I信号及びQ信号の搬送波間の実際の位相差と、I信号及びQ信号の搬送波間の目標の位相差との位相ずれ、及びI信号の伝送経路とQ信号の伝送経路との伝送経路差を推定することができる。
【0160】
本発明の変調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の電力を検出し、当該電力と目標電力との差が予め設定された閾値以上の場合、前記可変遅延手段の前記遅延量を制御し、前記電力と目標電力との差が予め設定された閾値未満の場合、前記位相シフタの前記位相シフト量を制御する構成を採る。
【0161】
この構成によれば、I信号とQ信号との伝搬経路差による影響が大きいと推定される場合、I信号又はQ信号の遅延量を調整し、搬送波間の位相ずれによる影響が大きいと推定される場合、Q信号の搬送波の位相シフト量を調整することができるので、比較的短い時間で、I信号とQ信号との伝搬経路差又は搬送波の位相ずれの影響を除去することができる。
【0162】
本発明の復調装置の一つの態様は、振幅変調又は位相変調された無線周波数信号を復調する復調装置であって、搬送波の位相をシフトする位相シフタと、前記無線周波数信号に前記搬送波を乗算しI信号を生成し、前記無線周波数信号に前記位相シフタにより位相シフトされた前記搬送を乗算しQ信号を生成する乗算手段と、前記位相シフタのシフト量を制御する位相制御手段と、を具備し、前記位相制御手段は、振幅変調モードの前記I信号と前記Q信号とが同相になるように、前記位相シフタを制御して得られた前記I信号と前記Q信号とを合成した同相信号に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する構成を採る。
【0163】
本発明の復調装置の一つの態様は、前記位相制御手段は、振幅変調モードにおいて、異なる振幅レベルに変調された前記無線周波数信号の第1の同相信号と、第2の同相信号とに基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する構成を採る。
【0164】
これらの構成によれば、同相成分であるI信号及び直交成分であるQ信号の両方のブランチを利用して振幅変調信号を復調し、当該振幅変調信号に基づいて、I信号とQ信号との搬送波間の位相ずれを推定して、当該位相ずれが無くなるように位相シフタをチューニングするので、QPSK信号を受信した際にも良好な直交度でI/Q信号を出力することが可能となり、直交ずれによる復調性能の劣化を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の変調装置及び復調装置は、位相変調信号及び振幅変調信号を生成、復調する変調装置及び復調装置において、同相成分と直交成分とを所望の位相差で加算し、電力損失を低減することができ、例えば、ミリ波帯において適用されるQPSK変調信号及びOOK変調信号を生成する変調装置又は復調装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の実施の形態1に係るQPSK/OOK変調装置の要部構成を示すブロック図
【図2】実施の形態1に係る位相制御方法を説明するためのフローチャート図
【図3】本発明の実施の形態2に係るQPSK/OOK変調装置の要部構成を示すブロック図
【図4】実施の形態2に係る位相制御方法を説明するためのフローチャート図
【図5】本発明の実施の形態3に係るQPSK/OOK復調装置の要部構成を示すブロック図
【図6】従来のQPSK/OOK変調装置の要部構成を示すブロック図
【図7】従来のQPSK/OOK変調装置の要部構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0167】
100,200 QPSK/OOK変調装置
110 変調選択部
120 OOKデータ生成部
130 QPSKデータ生成部
140−1,140−2 パルス整形部
150 フィルタ特性切換部
160−1,160−2 LPF
170 QPSK変調部
180,210 位相制御部
220 可変遅延部
300 QPSK/OOK復調装置
310 受信アンテナ
320 QPSK復調部
330 復調・同期部
340 位相制御部
321 分岐回路
322 発振器
323 位相シフタ
324,325 ミキサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振幅変調又は位相変調された無線周波数信号を変調する変調装置であって、
搬送波の位相をシフトする位相シフタと、
振幅変調モード又は位相変調モードに応じて、I信号とQ信号とを生成する生成手段と、
前記I信号と前記搬送波を乗算することにより、第1の混合信号を生成し、前記Q信号と前記位相シフタにより位相がシフトされた前記搬送波とを乗算することにより、第2の混合信号を生成する乗算手段と、
前記第1の混合信号と前記第2の混合信号とを足し合わせることにより、無線周波数信号を生成する合成手段と、
振幅変調モードの前記無線周波数信号に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する位相制御手段と、
を具備する変調装置。
【請求項2】
前記位相制御手段は、
振幅変調モードにおいて、異なる振幅レベルに変調された第1の無線周波数信号と第2の無線周波数信号の振幅差に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する
請求項1に記載の変調装置。
【請求項3】
OOK変調又はQPSK変調された無線周波数信号を生成する変調装置であって、
変調方式に応じて、I信号及びQ信号を生成する信号生成手段と、
前記I信号にベースバンド処理を施し、第1のベースバンド信号を生成する第1のベースバンド処理手段と、
前記Q信号にベースバンド処理を施し、第2のベースバンド信号を生成する第2のベースバンド処理手段と、
搬送波を生成する局部発振器と、
前記搬送波の位相をシフトする位相シフタと、
前記局部発振器により生成された前記搬送波と前記第1のベースバンド信号とを乗算して、第1の混合信号を生成する第1のミキサと、
前記位相シフタにより位相がシフトされた前記搬送波と前記第2のベースバンド信号とを乗算して、第2の混合信号を生成する第2のミキサと、
前記第1の混合信号と前記第2の混合信号とを足し合わせることにより無線周波数信号を生成する合成手段と、
前記無線周波数信号に基づいて、前記第1及び第2の混合信号の搬送波間の実際の位相差と、前記第1及び第2の混合信号の搬送波間の目標の位相差との位相ずれを推定し、当該位相ずれが無くなるように、前記位相シフタの位相シフト量を制御する位相制御手段と、
を具備する変調装置。
【請求項4】
前記第1のベースバンド信号又は前記第2のベースバンド信号に対して遅延を与える可変遅延手段を、さらに具備し、
前記位相制御手段は、前記無線周波数信号に基づいて、前記第1のベースバンド信号の伝送経路と前記第2のベースバンド信号の伝送経路との伝送経路差を、さらに推定し、当該伝送経路差が無くなるように、前記可変遅延手段の遅延量を制御する
請求項3に記載の変調装置。
【請求項5】
前記位相制御手段は、前記位相シフタのキャパシタンスを調整することにより、前記位相ずれをチューニングする
請求項3に記載の変調装置。
【請求項6】
前記位相制御手段は、多段のトランジスタから構成され、
前記位相制御手段は、前記トランジスタに印可するバイアス電圧を調整することにより、前記遅延量をチューニングする
請求項4に記載の変調装置。
【請求項7】
前記位相制御手段は、最尤原則に基づく方法を用いて前記位相ずれを推定する
請求項3に記載の変調装置。
【請求項8】
前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の振幅に基づいて前記位相ずれを推定する
請求項3に記載の変調装置。
【請求項9】
前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の電力を検出し、当該電力に基づいて前記位相ずれを推定する
請求項3に記載の変調装置。
【請求項10】
前記位相制御手段は、最尤原則に基づく方法を用いて前記位相ずれ及び前記伝送経路差を推定する
請求項4に記載の変調装置。
【請求項11】
前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の振幅に基づいて前記位相ずれ及び前記伝送経路差を推定する
請求項4に記載の変調装置。
【請求項12】
前記位相制御手段は、前記無線周波数信号の電力を検出し、当該電力と目標電力との差が予め設定された閾値以上の場合、前記可変遅延手段の前記遅延量を制御し、前記電力と目標電力との差が予め設定された閾値未満の場合、前記位相シフタの前記位相シフト量を制御する
請求項4に記載の変調装置。
【請求項13】
振幅変調又は位相変調された無線周波数信号を復調する復調装置であって、
搬送波の位相をシフトする位相シフタと、
前記無線周波数信号に前記搬送波を乗算しI信号を生成し、前記無線周波数信号に前記位相シフタにより位相シフトされた前記搬送を乗算しQ信号を生成する乗算手段と、
前記位相シフタのシフト量を制御する位相制御手段と、を具備し、
前記位相制御手段は、
振幅変調モードの前記I信号と前記Q信号とが同相になるように、前記位相シフタを制御して得られた前記I信号と前記Q信号とを合成した同相信号に基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する
復調装置。
【請求項14】
前記位相制御手段は、
振幅変調モードにおいて、異なる振幅レベルに変調された前記無線周波数信号の第1の同相信号と、第2の同相信号とに基づいて、前記位相シフタのシフト量を調整する
請求項13に記載の復調装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−211782(P2008−211782A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19614(P2008−19614)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】