変速駆動装置
【課題】変速機のシフトヘッドに位置ずれが生じた場合であっても、シフトレバーによるシフト動作を良好に行わせることができる変速駆動装置を提供すること。
【解決手段】変速機2に備えられる変速操作機構6には、複数のフォーク軸10A〜10Dが備えられている。各フォーク軸10A〜10Dの途中部には、変速駆動装置3によって駆動されるシフトヘッド12A〜12Dが固定されている。変速駆動装置3は、軸まわりに回転することによってインターナルレバー16をシフト動作させ、軸方向に向けて移動させることによってインターナルレバー16をセレクト動作させるシフトセレクト軸15を備えている。インターナルレバー16によるセレクト動作中におけるシフトセレクト軸15の回転角度量に基づいて、位置データ記憶部に記憶されている、各シフトヘッド12A〜12Dに対応する位置データの設定が修正される。
【解決手段】変速機2に備えられる変速操作機構6には、複数のフォーク軸10A〜10Dが備えられている。各フォーク軸10A〜10Dの途中部には、変速駆動装置3によって駆動されるシフトヘッド12A〜12Dが固定されている。変速駆動装置3は、軸まわりに回転することによってインターナルレバー16をシフト動作させ、軸方向に向けて移動させることによってインターナルレバー16をセレクト動作させるシフトセレクト軸15を備えている。インターナルレバー16によるセレクト動作中におけるシフトセレクト軸15の回転角度量に基づいて、位置データ記憶部に記憶されている、各シフトヘッド12A〜12Dに対応する位置データの設定が修正される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速機を駆動するための変速駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マニュアルトランスミッションの変速が自動化された自動制御式マニュアルトランスミッション(Automated Manual Transmission)の変速装置が知られている。このような変速装置には、変速機の変速段を切り換える変速駆動装置が備えられている。
たとえば下記特許文献1では、途中部にシフトレバーが固定されたシフトセレクト軸を、単一の電動モータの回転駆動力によってその軸まわりに回転させてシフト動作を行わせたり、電動モータの回転駆動力によってシフトセレクト軸を軸方向に移動させたりするシフト/セレクト駆動装置が、変速駆動装置の一例として開示されている。このシフト/セレクト駆動装置は、電動モータの回転駆動力を、シフトセレクト軸を回転させるための力に変換するための第1変換機構と、当該回転駆動力を、シフトセレクト軸を軸方向移動させるための力に変換するための第2変換機構と、電動モータからの回転駆動力の伝達を、第1変換機構に断続可能なシフト側電磁クラッチと、電動モータからの回転駆動力の伝達を、第2変換機構に断続可能なセレクト側電磁クラッチとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−75097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動アクチュエータでは、シフトレバーにシフト動作を行わせるときには、シフト側電磁クラッチを接続状態にするとともにセレクト側電磁クラッチを切断状態にする。一方、シフトレバーにセレクト動作を行わせるときには、シフト側電磁クラッチを切断状態にするとともにセレクト側電磁クラッチを接続状態にする。つまり、接続状態にある電磁クラッチを、シフト側電磁クラッチとセレクト側電磁クラッチとの間で選択的に切り換えることにより、電動モータの動力の伝達先を、シフト駆動機構とセレクト駆動機構との間で切り換えている。
【0005】
ところで、変速機において、シフトレバーによって操作される変速操作機構は、複数のフォーク軸と、各フォーク軸に固定されたシフトヘッドと、これら複数のシフトヘッドに跨って形成された係合溝とを有している。係合溝は、シフトレバーの先端部を収容するとともに、当該先端部と係合している。
シフトレバーによるセレクト動作時には、各シフトヘッドが中立位置に設定された状態で、電動アクチュエータが駆動されてシフトセレクト軸がその軸方向に向けて移動させられる。このとき、シフトセレクト軸の軸方向移動により、シフトレバーの先端部が係合溝内を通って移動し、当該先端部の係合先がそれまでと異なるシフトヘッドに切り換えられる(選択される)。
【0006】
一方、シフトレバーによるシフト動作時には、電動アクチュエータが駆動されてシフトセレクト軸が回転させられる。このとき、シフトセレクト軸の回転により、シフトレバーと係合しているシフトヘッドの先端部がフォーク軸ごとその軸方向の一方に向けて移動させられる。このときのシフトレバーの移動は、記憶部に記憶されている各シフト位置および各中立位置の位置データに基づいて実行される。
【0007】
しかしながら、温度変化や経年劣化、その他の要因により、シフトヘッドの中立位置が所期位置からずれるおそれがある。このとき、実際にはシフトレバーおよびシフトヘッドが中立位置からずれているのに対し、所期位置にあるものとして管理されることになる。そのため、シフト動作後のシフトレバーが、所期のシフト位置に到達しなかったり、所期のシフト位置を通り過ぎたりする場合が生じるおそれがある。すなわち、シフト動作が不十分または過剰になる結果、良好なギヤ入れ状態を実現できないおそれがある。
【0008】
そこで、この発明の目的は、変速機のシフトヘッドに位置ずれが生じた場合であっても、シフトレバーによるシフト動作を良好に行わせることができる変速駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、複数のフォーク軸(10A〜10D)と、各フォーク軸に固定されたシフトヘッド(12A〜12D)とを有する変速機(2)を駆動するための変速駆動装置(3)であって、前記シフトヘッドと係合するためのシフトレバー(16)が連結された軸状体であり、軸まわりに回転することによって前記シフトレバーをシフト動作させ、軸方向に向けて移動させることによって前記シフトレバーをセレクト動作させるシフトセレクト軸(15)と、回転駆動力を発生させるための単一の電動モータ(23)と、前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸まわりに回転させるシフト駆動機構(24)と、前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸方向に向けて移動させるセレクト駆動機構(25)と、前記電動モータから回転駆動力の伝達先を、前記シフト駆動機構と前記セレクト駆動機構とで選択的に切り換えるクラッチ機構(43,45)と、前記シフトセレクト軸の回転角を検出するための軸回転検出手段(89)と、前記シフトレバーが前記シフトヘッドに係合するときの位置情報を、各シフトヘッドに対応して記憶する位置情報記憶手段(311)と、前記セレクト駆動機構の駆動中における前記シフトセレクト軸の回転角度量に基づいて、前記位置情報記憶手段に記憶されている、各シフトヘッドに対応する前記位置情報の設定を修正する位置情報設定修正手段(301)とを含む、変速駆動装置である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、シフトレバーによるセレクト動作により、中立位置にある所定のシフトヘッドから、同じく中立位置にある別のシフトヘッドに向けてシフトレバーが移動させられる。このとき、移動先のシフトヘッドの中立位置が所期位置からずれていると、シフトレバーによるセレクト動作に伴って、シフトヘッドのずれ量に応じた大きさの逆入力がシフトレバーに生じ、これによりシフトセレクト軸が回転する。そのため、シフトヘッドのずれ量は逆入力によるシフトセレクト軸の回転角度量に対応している。また、シフトセレクト軸の回転角は、軸回転検出手段により検出される。
【0011】
セレクト動作中におけるシフトセレクト軸の回転角度量に基づいて位置情報の設定を修正する。シフトセレクト軸の回転角度量が中立位置のずれ量に対応しているので、各シフトヘッドに対応する位置情報の設定を、当該位置情報によって特定される位置が所期位置になるように修正することができる。
以上により、シフトヘッドに位置ずれが生じた場合であっても、シフトレバーによるシフト動作を良好に行わせることができる。
【0012】
なお、この明細書において、「シフトレバーの位置情報」とは、シフトレバーの位置データそのものだけでなく、所定の中立位置から所定のシフト位置までの移動距離に関する移動距離情報をも含む趣旨である。
請求項2記載の発明は、前記変速機は、複数の前記シフトヘッドに跨って形成され、前記シフトレバーの少なくとも一部を収容し、当該シフトレバーに係合する係合溝(14A〜14D)をさらに有し、前記変速駆動装置は、前記シフトレバーに作用するトルクを検出するトルク検出手段(306,312)をさらに含み、前記位置情報設定修正手段は、前記シフトレバーに予め定める大きさ以上のトルクが作用したときの当該シフトレバーの位置を基準として、前記位置情報の設定を修正する、請求項1記載の変速駆動装置である。
【0013】
この構成によれば、シフトレバーが係合溝に係合した状態(より具体的には、係合溝の内壁(200A)に押し当てられた状態)であるときには、シフトレバーに作用するトルク量が急激に増大する。したがって、このトルク量の変化に基づいて、シフトレバーが係合溝に係合しているか否かを検出することができ、このときのシフトレバーの位置を基準として、位置情報の設定の修正を行うことができる。シフトレバーが係合溝に係合している状態(係合溝の内壁に押し当てられた状態)であることを、容易にかつ高精度に検出することができ、これにより、位置情報の修正を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の変速駆動装置が適用された変速装置の一部構成の概略分解斜視図である。
【図2】図1に示す変速操作機構のシフトパターンを説明するための図である。
【図3】図1に示す変速駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示す変速駆動装置の構成を示す断面図である。
【図5A】図4の切断面線V‐Vで切断したときの断面図である。
【図5B】図1に示す変速駆動装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】1速からR速にシフトダウンさせる場合における変速操作制御を示すフローチャートである。
【図7A】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その1)。
【図7B】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その2)。
【図7C】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その3)。
【図7D】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その4)。
【図8】図6に示すセレクト動作(N2→N1)の変速操作制御を示すフローチャートである。
【図9】図6に示すシフト動作(N1→R速)の変速操作制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の変速駆動装置3が適用された変速装置1の一部構成の概略分解斜視図である。変速装置1は、変速機2と、変速機2を変速駆動する変速駆動装置3とを備えている。
変速機2は、公知の常時かみ合い式の平行軸歯車動力伝達機構により構成された動力伝達機構(図示しない)と、動力伝達機構の動力伝達経路を、複数の動力伝達経路の間で切り換えるための変速操作機構6と、これら動力伝達機構および変速操作機構6を収容するギヤハウジング7とを備えている。変速機2を含む構成の変速装置1は、乗用車やトラックなどの車両に搭載されている。動力伝達機構における動力伝達経路の切換えにより、動力伝達比を異ならせることができる。
【0016】
変速操作機構6はギヤハウジング7内に収容され、互いに平行に延びる複数のフォーク軸10A,10B,10C,10Dを有している。フォーク軸10Aは軸方向M1,M2に移動可能に設けられている。フォーク軸10Bは軸方向M3,M4に移動可能に設けられている。フォーク軸10Cは軸方向M5,M6に移動可能に設けられている。フォーク軸10Dは軸方向M7,M8に移動可能に設けられている。軸方向M1,M3,M5およびM7は、互いに同じ方向を向きかつ互いに並行な軸方向である。軸方向M2、M4、M6およびM8は、それぞれ、軸方向M1,M3,M5およびM7と逆向きの軸方向である。
【0017】
フォーク軸10A,10B,10C,10Dは、軸方向M1,M3,M5,M7(M2,M4,M6,M8)から見て一直線上に位置するように並置されている。各フォーク軸10A,10B,10C,10Dの途中部には、変速駆動装置3によって駆動されるシフトヘッド12A,12B,12C,12Dが固定されている。これらのシフトヘッド12A,12B,12C,12Dは、それぞれ、中立位置(後述する中立位置N1,N2,N3,N4。図2参照)にある状態で、軸方向M1,M3,M5,M7に関して揃っており、複数のセレクト方向位置(図2に示す上下方向の各位置。この実施形態では、たとえば4つのセレクト方向位置。たとえば、5速および6速用のセレクト方向位置、3速および4速用のセレクト方向位置、1速および2速用のセレクト方向位置ならびにR速のセレクト方向位置)に対応して設けられている。各シフトヘッド12A,12B,12C,12Dは変速駆動装置3に対向する対向面を有している。各対向面は同一平面を有している。各対向面には、係合溝14A,14B,14C,14Dが形成されている。各係合溝14A,14B,14C,14Dは、対応するフォーク軸10A〜10Dの軸方向M1〜M8に沿う方向に直交する内壁200A(図2参照)を有している。また、両端側の係合溝14A,14Dは、シフトセレクト軸15の第1および第2軸方向M11,M12に沿う方向に直交し、各係合溝14A,14Dの両端側の側面を閉塞する内壁200B(図2参照)を有している。換言すると、これら4つの係合溝14A,14B,14C,14Dによって、4つのシフトヘッド12A,12B,12C,12Dに跨る係合溝が構成される。
【0018】
係合溝14A,14B,14C,14Dには、インターナルレバー(シフトレバー)16の他端部(先端部)16bが進入しており、他端部16bが係合溝14A,14B,14C,14Dの内壁200Aおよび内壁200Bに押し当てられる(当接する)ことにより、シフトヘッド12A,12B,12C,12Dと係合している。インターナルレバー16の他端部16bは、係合溝14A,14B,14C,14Dの内部空間を通って移動し、これにより、各シフトヘッド12A,12B,12C,12Dとの係合のための係合位置間を移動することができる。
【0019】
また、各フォーク軸10A,10B,10C,10Dには、動力伝達機構の動力伝達経路を切り換えるために操作される被操作部材(図示しない。たとえばクラッチスリーブやシンクロナイザ機構など)と係合するためのシフトフォーク11(図1では、フォーク軸10Dに設けられたシフトフォーク11のみを示す)が固定されている。シフトフォーク11の軸方向M1〜M8移動により、シフトフォーク11を被操作部材に係合させることができ、その被操作部材を駆動することができる。
【0020】
変速駆動装置3は、変速操作機構6にシフト動作およびセレクト動作を行わせるための円柱状のシフトセレクト軸15と、シフトセレクト軸15をシフト動作およびセレクト動作させるための回転駆動源として用いられる電動アクチュエータ21とを備えている。シフトセレクト軸15は中心軸線17を有している。シフトセレクト軸15はギヤハウジング7に、シフトセレクト軸15の軸まわり(すなわち中心軸線17まわり)に第1または第2軸回転方向R1,R2に回転可能に、かつ第1または第2軸方向M11,M12に移動可能に支持されている。シフトセレクト軸15はフォーク軸10A,10B,10C,10Dのそれぞれといわゆる90°の食違い軸の関係をなす状態に配置されている。第2軸回転方向R2は第1軸回転方向R1と逆向きの回転方向である。第2軸方向M12は、第1軸方向M11と逆向きの軸方向である。
【0021】
シフトセレクト軸15の途中部には、ギヤハウジング7内に収容されるインターナルレバー16の一端16aが固定されている。インターナルレバー16は、シフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに、シフトセレクト軸15と同伴回転する。シフトセレクト軸15の先端部(図1に示す左手前部)は、ギヤハウジング7外に突出している。
電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が第1軸方向M11移動されると、インターナルレバー16が第1軸方向M11に移動させられる。また、電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が第2軸方向M12移動されると、インターナルレバー16が第2軸方向M12に移動させられる。そして、セレクト方向位置でインターナルレバー16の他端部16bが所要のシフトヘッド12A,12B,12C,12Dに係合し、これによりセレクト動作が達成される。
【0022】
一方、電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15が第1軸回転方向R1に回転されると、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに第1軸回転方向R1に揺動させられる。また、電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15が第2軸回転方向R2に回転されると、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに第2軸回転方向R2に揺動する。その結果、インターナルレバー16と係合しているシフトヘッド12A,12B,12C,12Dが、フォーク軸10A,10B,10C,10Dの軸方向M1〜M8に移動し、これにより、シフト動作が達成される。
【0023】
図2は、変速操作機構6のシフトパターンを説明するための図である。
インターナルレバー16に係合しているシフトヘッド12A〜12Dに対応するフォーク軸10A〜10Dが、所定の基準位置(中立位置)から軸方向移動していないときのシフト方向位置を中立位置N1,N2,N3,N4という。第1中立位置N1とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aに係合している中立位置を言い、第2中立位置N2とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bに係合している中立位置を言う。第3中立位置N3とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Cに係合している中立位置を言い、第4中立位置N4とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Dに係合している中立位置を言う。中立位置N1,N2,N3,N4にあるときは、出力ギヤは中立状態にあり、インターナルレバー16の他端部16bと係合しているシフトヘッド12A,12B,12C,12Dに対応するシフトフォーク11は、被操作部材に係合していない。
【0024】
インターナルレバー16が第2中立位置N2にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D1に向けて移動して、インターナルレバー16が第1中立位置N1に導かれる。インターナルレバー16が第2中立位置N2にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D2に向けて移動して、インターナルレバー16が第3中立位置N3に導かれる。
【0025】
また、インターナルレバー16(他端部16b)が第3中立位置N3にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D1に向けて移動して、インターナルレバー16が第2中立位置N2に導かれる。インターナルレバー16が第3中立位置N3にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D2に向けて移動して、インターナルレバー16が第4中立位置N4に導かれる。
【0026】
図2に示すように、第1中立位置N1およびR速シフト位置はともに第1セレクト方向位置(図2に示す最も上方のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。1速シフト位置、第2中立位置N2および2速シフト位置はともに第2セレクト方向位置(図2に示す上から2つ目のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。3速シフト位置、第3中立位置N3および4速シフト位置はともに第3セレクト方向位置(図2に示す上から3つ目のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。5速シフト位置、第4中立位置N4および6速シフト位置はともに第4セレクト方向位置(図2に示す最も下方のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。
【0027】
R速シフト位置、2速シフト位置、4速シフト位置および6速シフト位置はともに第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)にあり、シフト方向に関して互いに揃っている。これらのシフト位置は、中立位置N1,N2,N3,N4から見て加速方向側(図2中の白抜矢符ER、E2、E4およびE6で示す方向)に位置している。1速シフト位置、3速シフト位置および5速シフト位置はともに第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)にあり、シフト方向に関して互いに揃っている。これらのシフト位置は、中立位置N1,N2,N3,N4から見て減速方向側(図2中の白抜矢符E1、E3およびE5に示す方向)に位置している。
【0028】
図2に示すように、R速(リバース)にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中のR速シフト位置(図2中に「R速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構のR速出力用の出力ギヤに、被操作部材が係合している。これにより、出力ギヤがR速である。インターナルレバー16がR速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aに係合しているとともに、第1中立位置N1から他端部16bがシフトヘッド12Aごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M1移動(図2中の白抜矢符ERに向けて移動)させられた状態である。
【0029】
1速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の1速シフト位置(図2中に「1速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の1速出力用の出力ギヤに被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが1速である。インターナルレバー16が1速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bに係合しているとともに、第2中立位置N2から他端部16bがシフトヘッド12Bごと第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)に軸方向M4移動(図2中の白抜矢符E1に向けて移動)させられた状態である。
【0030】
図2に示すように、2速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の2速シフト位置(図2中に「2速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の2速出力用の出力ギヤに、被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが2速である。インターナルレバー16が2速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bに係合しているとともに、第2中立位置N2から他端部16bがシフトヘッド12Bごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M3移動(図2中の白抜矢符E2に向けて移動)させられた状態である。
【0031】
3速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の3速シフト位置(図2中に「3速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の3速出力用の出力ギヤに、被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが3速である。インターナルレバー16が3速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Cに係合しているとともに、第3中立位置N3から他端部16bがシフトヘッド12Cごと第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)に軸方向M6移動(図2中の白抜矢符E3に向けて移動)させられた状態である。
【0032】
4速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の4速シフト位置(図2中に「4速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の4速出力用の出力ギヤに、被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが4速である。インターナルレバー16が4速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Cに係合しているとともに、第3中立位置N3から他端部16bがシフトヘッド12Cごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M5移動(図2中の白抜矢符E4に向けて移動)させられた状態である。
【0033】
5速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の5速シフト位置(図2中に「5速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の5速出力用の出力ギヤに、被操作部材が係合している。これにより、出力ギヤが5速である。インターナルレバー16が5速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Dに係合しているとともに、その第4中立位置N4から他端部16bがシフトヘッド12Dごと第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)に軸方向M8移動(図2中の白抜矢符E5に向けて移動)させられた状態である。
【0034】
6速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の6速シフト位置(図2中に「6速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の6速出力用の出力ギヤに、被操作部材が係合している。これにより、出力ギヤが6速である。インターナルレバー16が6速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Dに係合しているとともに、その第4中立位置N4から他端部16bがシフトヘッド12Dごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M7移動(図2中の白抜矢符E6に向けて移動)させられた状態である。
【0035】
次に、図1および図2を参照して、R速へのギヤ入れについて説明する。第2中立位置N2からR速にギヤ入れする場合には、インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動して、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aと係合する(第1中立位置N1に位置する。)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R2に回転させられ、これに同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Aおよびフォーク軸10Aが軸方向M1移動させられる(図2中の白抜矢符ER)。インターナルレバー16の他端部16bが前記のR速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これによりR速へのギヤ入れが達成される。
【0036】
R速にギヤ入れされている状態からギヤ抜きする場合には、インターナルレバー16の他端部16bがR速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Aおよびフォーク軸10Aが軸方向M2移動させられて(図2中の白抜矢符ERと反対方向。)、インターナルレバー16の他端部16bが第1中立位置N1に位置する。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより(図2中の白抜矢符D2方向)、インターナルレバー16が軸方向M12移動して、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bと係合する(第2中立位置N2に位置する。)。
【0037】
次に、1速→2速→3速→4速→5速→6速のシフトアップについて説明する。
まず、第2中立位置N2から1速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M4移動させられる(図2中の白抜矢符E1)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の1速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより1速へのギヤ入れが達成される。
【0038】
次に、1速から2速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の1速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M3移動させられる(図2中の白抜矢符E2)。インターナルレバー16の他端部16bが、第2中立位置N2を通って前記の2速シフト位置に向けて移動させられる。これにより、他端部16bが2速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより2速へのギヤ入れが達成される。
【0039】
次に、2速から3速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の2速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M4移動させられて(図2中の白抜矢符E1)、インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより(図2中の白抜矢符D2)、インターナルレバー16が軸方向M12移動し、シフトヘッド12Bと離脱してシフトヘッド12Cに係合させられる(第3中立位置N3に位置させられる)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R1に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M6移動させられる(図2中の白抜矢符E3)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の3速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより3速へのギヤ入れが達成される。
【0040】
次に、3速から4速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の3速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M5移動させられる(図2中の白抜矢符E4)。インターナルレバー16の他端部16bが、第3中立位置N3を通って前記の4速シフト位置に向けて移動させられる。これにより、他端部16bが4速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより4速へのギヤ入れが達成される。
【0041】
次に、4速から5速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の4速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M6移動させられて(図2中の白抜矢符E3)、インターナルレバー16の他端部16bが第3中立位置N3に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより(図2中の白抜矢符D2)、インターナルレバー16が軸方向M12移動し、シフトヘッド12Cと離脱してシフトヘッド12Dに係合させられる(第4中立位置N4に位置させられる)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R1に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M8移動させられる(図2中の白抜矢符E5)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の5速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより5速へのギヤ入れが達成される。
【0042】
次に、5速から6速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の5速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M7移動させられる(図2中の白抜矢符E6)。インターナルレバー16の他端部16bが、第4中立位置N4を通って前記の6速シフト位置に向けて移動させられる。これにより、他端部16bが6速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより6速へのギヤ入れが達成される。
【0043】
次に、図1および図2を参照して、6速→5速→4速→3速→2速→1速のシフトダウンについて説明する。
まず、6速から5速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の6速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M8移動させられる(図2中の白抜矢符E5)。これにより、インターナルレバー16の他端部16bが、第4中立位置N4を通って前記の5速シフト位置に向けて移動させられる。他端部16bが5速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより5速へのギヤ入れが達成される。
【0044】
次に、5速から4速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の5速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M7移動させられて(図2中の白抜矢符E6)、インターナルレバー16の他端部16bが第4中立位置N4に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動し、シフトヘッド12Dと離脱してシフトヘッド12Cに係合させられる(第3中立位置N3に位置させられる)ようになる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R2に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M5移動させられる(図2中の白抜矢符E4)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の4速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより4速へのギヤ入れが達成される。
【0045】
次に、4速から3速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の4速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M6移動させられる(図2中の白抜矢符E3)。これにより、インターナルレバー16の他端部16bが、第3中立位置N3を通って前記の3速シフト位置に向けて移動させられる。他端部16bが3速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより3速へのギヤ入れが達成される。
【0046】
次に、3速から2速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の3速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M5移動させられて(図2中の白抜矢符E4)、インターナルレバー16の他端部16bが第3中立位置N3に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動し、シフトヘッド12Cと離脱してシフトヘッド12Bに係合させられる(第2中立位置N2に位置させられる)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R2に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M3移動させられる(図2中の白抜矢符E2)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の2速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより2速へのギヤ入れが達成される。
【0047】
次に、2速から1速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の2速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M4移動させられる(図2中の白抜矢符E1)。これにより、インターナルレバー16の他端部16bが、第2中立位置N2を通って前記の1速シフト位置に向けて移動させられる。他端部16bが1速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより1速へのギヤ入れが達成される。
【0048】
図3は、電動アクチュエータ21の構成を示す斜視図である。図4は、電動アクチュエータ21の構成を示す断面図である。図5Aは、図4の切断面線V‐Vで切断したときの断面図である。なお、図3では、シフトセレクト軸15の図示を省略している。以下、図3〜図5Aを参照して、電動アクチュエータ21の構成について説明する。
電動アクチュエータ21は有底略筒状のハウジング22を備えている。電動アクチュエータ21は、ギヤハウジング7(図1参照)の外表面または車両の所定箇所に固定されている。
【0049】
電動アクチュエータ21は、たとえばブラシレス電動モータからなる電動モータ23と、電動モータ23により発生された回転トルク(回転駆動力)を、シフトセレクト軸15を軸まわりに回転させる力に変換するためのシフト変換機構(シフト駆動機構)24と、電動モータ23によって発生させられた回転トルクを、シフトセレクト軸15を第1または第2軸方向M11,M12に移動させる力に変換するためのセレクト変換機構(セレクト駆動機構)25と、電動モータ23によって発生させられた回転トルクをシフト変換機構24および/またはセレクト変換機構25に断続するための切換ユニット26とを備えている。シフト変換機構24、セレクト変換機構25および切換ユニット26はハウジング22内に収容されている。
【0050】
ハウジング22の開口部(図4に示す左側)は、略板状の蓋27によって閉塞されている。このハウジング22および蓋27は、それぞれたとえば鋳鉄やアルミニウムなどの金属材料を用いて形成されており、蓋27の外周がハウジング22の開口部に嵌め合わされている。蓋27にはその内面(図4に示す右面)と外面(図4に示す左面)とを貫通する円形の貫通孔29が形成されている。また、蓋27の外面には、電動モータ23の本体ケーシングが固定されている。電動モータ23は、第1回転方向R11(モータ出力軸側から見て時計まわり。「CW」ともいう。と第2回転方向R12(たとえば逆方向)とに正逆回転可能な電動モータであり、この電動モータ23としてたとえばブラシレス電動モータが採用されている。電動モータ23は、その本体ケーシングがハウジング22外に露出するように取り付けられている。電動モータ23の出力軸40は、シフトセレクト軸15と、食違い角90°の食違い軸の関係をなして配置されている。軸方向M11,M12に沿う方向に直交する所定の方向(図4に示す左右方向)に延びている。出力軸40は蓋27の貫通孔29を介してハウジング22の内部に臨んでおり、切換ユニット26に対向している。
【0051】
図5Aに示すように、ハウジング22は、シフトセレクト軸15における先端(図5Aに示す下端)側の部分や、シフト変換機構24の各構成部品を主に収容する略箱状の主ハウジング22Aを含んでいる。主ハウジング22Aは、第1側壁111と、第2側壁112と、シフトセレクト軸15の基端寄りを支持するための第1の軸ホルダ113と、シフトセレクト軸15の先端部を収容支持するための第2の軸ホルダ114と備えている。
【0052】
第1側壁111の内側の側面は、平坦面からなる第1内壁面111Aである。第2側壁112の内側の側面は、平坦面からなる第2内壁面112Aである。第2内壁面112Aは第1内壁面111Aと対向し、第1内壁面111Aと平行に形成されている。
第1の軸ホルダ113は、第1側壁111の外壁面(第1内壁面111Aとは反対側の面)から外方に膨出して形成されており、たとえば円柱状に形成されている。第1の軸ホルダ113は第1側壁111と一体的に形成されている。第1の軸ホルダ113および第1側壁111には、断面円形の挿通孔104が形成されている。挿通孔104は第1の軸ホルダ113および第1側壁111を、それらの厚み方向(図5Aに示す上下方向)に貫通している。挿通孔104には、シフトセレクト軸15が挿通されている。
【0053】
挿通孔104の内周壁には、第1すべり軸受101が内嵌固定されている。第1すべり軸受101は、挿通孔104に挿通されているシフトセレクト軸15の途中部(先端部よりもやや基端寄り)の外周を取り囲み、シフトセレクト軸15の途中部の外周を摺接支持している。
第2の軸ホルダ114は、第2側壁112の外壁面(第2内壁面112Aとは反対側の面)から外方に膨出して形成されており、たとえば略円筒状に形成されている。第2の軸ホルダ114は第2側壁112と一体的に形成されている。第2の軸ホルダ114の内周面および底面によって、シフトセレクト軸15の先端部(図5Aに示す下端部)を収容する円柱状の先端部収容溝115(図5A参照)が区画されている。先端部収容溝115の内周壁は、円筒状の挿通孔104と同軸の中心軸線を有する円筒状に形成されている。
【0054】
先端部収容溝115の内周壁には、第2すべり軸受102が内嵌固定されている。第2すべり軸受102は、先端部収容溝115に収容されているシフトセレクト軸15の先端部の外周を取り囲んで、当該先端部の外周を摺接支持している。シフトセレクト軸15は、これら第1および第2すべり軸受101,102によって、その中心軸線17まわりに回転可能にかつ軸方向M11,M12移動可能に支持されている。
【0055】
挿通孔104における第1すべり軸受101の外側の部分には、ごみや埃がハウジング22内(主ハウジング22A内)に進入しないように、挿通孔104の内周壁とシフトセレクト軸15の外周との間をシールするためのシール部材103が介装されている。
第1の軸ホルダ113において、厚み方向(図5Aに示す上下方向)に関しシール部材103と第1すべり軸受101との間には、ロックボール106が配設されている。具体的には、挿通孔104の内周壁と、第1の軸ホルダ113の外周面とを貫通する貫通孔105内にロックボール106が収容されている。ロックボール106は、円筒状の先端部収容溝115の中心軸線(すなわちシフトセレクト軸15の中心軸線17)に沿う方向と直交する方向(直交方向)に延び、略円筒状をなすともに、当該方向(直交方向)に沿って移動可能に設けられている。ロックボール106の先端部は半球状をなしており、次に述べる係合溝107に係合する。
【0056】
シフトセレクト軸15の外周には、軸方向M11,M12に間隔を空けて、周方向に延びる複数本(たとえば3本)の係合溝107が形成されている。各係合溝107は全周にわたって設定されている。ロックボール106がその長手方向に移動することにより、先端部が挿通孔104の内周壁よりも中心軸線17側(図5Aに示す右方)に突出して、その先端部が係合溝107と係合して、シフトセレクト軸15の軸方向M11,M12移動を阻止する。これにより、シフトセレクト軸15は、軸方向M11,M12への移動が阻止された状態で、一定力で保持される。
【0057】
図5Aに示すように、シフトセレクト軸15の外周における第1すべり軸受101が摺接する部分と第2すべり軸受102が摺接する部分との間には、雄スプライン121と、ピニオン36が噛み合う後述するラック122とが、第1すべり軸受101側からこの順で形成されている。
図4に示すように、切換ユニット26は、電動モータ23の出力軸40と同軸に連結された伝達軸41と、伝達軸41と同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第1ロータ42と、伝達軸41に同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第2ロータ44と、第1ロータ42と第2ロータ44との間で伝達軸41の連結先を切り換えるためのクラッチ機構39とを備えている。
【0058】
伝達軸41は、電動モータ23側に設けられた小径の主軸部46と、主軸部46の第1ロータ42側の軸方向端部(図4に示す右端部)に、主軸部46と一体的に設けられ、主軸部46よりも大径の大径部47とを備えている。
第1ロータ42は、伝達軸41に対し電動モータ23側と反対側に配置されている。第1ロータ42は、電動モータ23側の軸方向端部(図4に示す左端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第1アーマチュアハブ54を備えている。第1アーマチュアハブ54は大径部47の電動モータ23側と反対側の面(図4に示す右面)に対向して配置されている。
【0059】
第2ロータ44は、伝達軸41の大径部47に対し第1ロータ42と反対側、すなわち電動モータ23側に配置されており、伝達軸41の主軸部46の周囲を取り囲んでいる。第2ロータ44は、電動モータ23側と反対側の軸方向端部(図4に示す右端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第2アーマチュアハブ55を備えている。第2アーマチュアハブ55は大径部47の電動モータ23側の面(図4に示す左面)に対向して配置されている。言い換えれば、第1ロータ42(の第1アーマチュアハブ54)および第2ロータ44(の第2アーマチュアハブ55)が、伝達軸41の大径部47を挟むように配置されている。
【0060】
クラッチ機構39は、第1ロータ42と断続して、伝達軸41と第1ロータ42とを連結/解放するシフト側電磁クラッチ(クラッチ機構)43と、第2ロータ44と断続して、伝達軸41と第2ロータ44とを連結/解放するセレクト側電磁クラッチ(クラッチ機構)45とを備えている。
シフト側電磁クラッチ43は、第1フィールド48と第1アーマチュア49とを備えている。第1アーマチュア49は、伝達軸41の大径部47の軸方向他方側の面(図4に示す右面)に第1アーマチュアハブ54の電動モータ23側の面(図4に示す左面)と微小間隔を隔てて配置されており、略円環板状をなしている。第1アーマチュア49は鉄などの強磁性体を用いて形成されている。第1フィールド48は、ヨーク内に第1電磁コイル50を内蔵しており、ハウジング22に固定されている。
【0061】
セレクト側電磁クラッチ45は、第2フィールド51と、第2アーマチュア52とを備えている。第2アーマチュア52は、伝達軸41の大径部47の軸方向一方側の面(図4に示す左面)に第2アーマチュアハブ55の電動モータ23と反対側の面(図4に示す右面)と微小間隔を隔てて配置されており、略円環板状をなしている。第2アーマチュア52は鉄などの強磁性体を用いて形成されている。第2フィールド51はヨーク内に第2電磁コイル53を内蔵しており、ハウジング22に固定されている。第1フィールド48および第2フィールド51は、大径部47、第1アーマチュアハブ54および第2アーマチュアハブ55を挟んで軸方向に沿って並置されている。
【0062】
シフト側およびセレクト側電磁クラッチ43,45を駆動するためのリレー回路等からなるクラッチ駆動部303(後述する。図5B参照)が接続されている。クラッチ駆動部303には、配線などを介して電源(たとえば24V。図示しない)から電圧供給(給電)されている。クラッチ駆動部303によるシフト側電磁クラッチ43に対する給電により、第1電磁コイル50に通電されると、その第1電磁コイル50が励磁状態になり、第1電磁コイル50を含む第1フィールド48に電磁吸引力が発生する。そして、第1アーマチュア49が第1フィールド48に吸引されて第1フィールド48に向けて変形し、第1アーマチュア49が第1アーマチュアハブ54と摩擦接触する。したがって、第1電磁コイル50への通電により第1電磁コイル50が第1ロータ42に結合(締結)され、伝達軸41が第1ロータ42に連結される。そして、第1電磁コイル50に対する電圧供給が停止され、第1電磁コイル50に電流が流れなくなることにより、第1アーマチュア49に対する吸引力もなくなり、第1アーマチュア49が元の形状に復帰する。これにより、第1電磁コイル50が第1ロータ42から分離して、伝達軸41が第1ロータ42から解放される。つまり、シフト側電磁クラッチ43に対する給電/給電停止を切り換えることにより、電動モータ23から第1ロータ42への回転トルクの伝達を断続させることができる。
【0063】
一方、クラッチ駆動部303によるセレクト側電磁クラッチ45に対する給電により、第2電磁コイル53に通電されると、その第2電磁コイル53が励磁状態になり、第2電磁コイル53を含む第2フィールド51に電磁吸引力が発生する。そして、第2アーマチュア52が第2フィールド51に吸引されて第2フィールド51に向けて変形し、第2アーマチュア52が第2アーマチュアハブ55と摩擦接触する。したがって、第2電磁コイル53への通電により、第2電磁コイル53が第2ロータ44に結合(締結)され、伝達軸41が第2ロータ44に連結される。そして、第2電磁コイル53に対する電圧供給が停止され、第2電磁コイル53に電流が流れなくなることにより、第2アーマチュア52に対する吸引力もなくなり、第2アーマチュア52が元の形状に復帰する。これにより、第2電磁コイル53が第2ロータ44から分離して、伝達軸41が第2ロータ44から解放される。つまり、第2電磁コイル53への給電通電/給電停止を切り換えることにより、電動モータ23から第2ロータ44への回転トルクの伝達を断続させることができる。
【0064】
第2ロータ44の外周には、小径の円環状の第1歯車56が外嵌固定されている。第1歯車56は第2ロータ44と同軸に設けられている。第1歯車56は転がり軸受57によって支持されている。転がり軸受57の外輪は、第1歯車56に内嵌固定されている。転がり軸受57の内輪は、伝達軸41の主軸部46の外周に外嵌固定されている。
シフト変換機構24は、回転運動を直線運動に変換する減速機としてのボールねじ機構58と、このボールねじ機構58のナット59の軸方向移動に伴って、シフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに回動するアーム60とを備えている。
【0065】
ボールねじ機構58は、第1ロータ42と同軸(すなわち伝達軸41と同軸)に延びるねじ軸61と、ねじ軸61にボール(図示しない)を介して螺合するナット59とを備えている。ねじ軸61はシフトセレクト軸15と、食違い角が90°の食違い軸の関係をなしている。言い換えれば、ねじ軸61の軸方向およびシフトセレクト軸15の軸方向M11,M12の双方に直交する方向から見て、ねじ軸61およびシフトセレクト軸15は互いに直交している。
【0066】
ねじ軸61は転がり軸受64,67によって軸方向への移動が規制されつつ支持されている。具体的には、ねじ軸61の一端部(図4に示す左端部)は転がり軸受64によって支持されており、また、ねじ軸61の他端部(図4に示す右端部)は転がり軸受67によって支持されている。これらの転がり軸受64,67により、ねじ軸61がその中心軸線80まわりに回転可能に支持されている。
【0067】
転がり軸受64の内輪は、ねじ軸61の一端部に外嵌固定されている。また、転がり軸受64の外輪は、ハウジング22に固定された切換ユニット26ケーシングの底壁65の内外面を貫通する貫通孔に内嵌されている。また、転がり軸受64の外輪にはロックナット66が係合されて、ねじ軸61の軸方向の他方(図4に示す右方)への移動が規制されている。ねじ軸61の一端部における転がり軸受64よりも電動モータ23側(図4に示す左側)の部分は、第1ロータ42の内周に挿通されて、この第1ロータ42に同伴回転可能に連結されている。転がり軸受67の外輪は、ハウジング22に固定されている。
【0068】
ナット59の一側面(図4に示す手前側側面。図5Aに示す下側側面)、および当該一側面とは反対側の他側面(図4に示す奥側側面。図5Aに示す上側側面)には、それぞれシフトセレクト軸15の軸方向M11,M12に沿う方向(図4の紙面に直交する方向。図5Aに示す上下方向)に延びる円柱状の突出軸70(図4では一方のみ図示。図5Aを並行して参照)が突出形成されている。一対の突出軸70は同軸である。ナット59はアーム60の第1係合部72によって、ねじ軸61まわりの回転が規制されている。したがって、ねじ軸61が回転されると、ねじ軸61の回転に同伴して、ナット59がねじ軸61の軸方向に移動する。なお、図5Aでは、ねじ軸61の軸方向に関し、図4に示すナット59の位置よりも、第1ロータ42に対し離反する方向(図4に示す右方)にナット59が位置するときの断面状態を示している。
【0069】
アーム60は、ナット59に係合するための第1係合部72と、シフトセレクト軸15にスプライン嵌合するための係合部としての第2係合部73(図5A参照)と、第1係合部72と第2係合部73とを接続する直線状の接続ロッド74とを備えている。接続ロッド74は、たとえば、その全長にわたって断面矩形状をなしている。第2係合部73は略円筒状をなし、シフトセレクト軸15に外嵌されている。
【0070】
第1係合部72は互いに対向する一対の支持板部76と、一対の支持板部76の基端辺同士(図4に示す下端辺および図5Aに示す右端辺)を連結する連結板部77とを備え、側面視で略U字状をなしている。各支持板部76には、各突出軸70の外周と、当該突出軸70の回転を許容しつつ係合するU字係合溝78が形成されている。U字係合溝78は前記の基端辺と反対側の先端辺から切り欠かれている。そのため、第1係合部72は、ナット59に、突出軸70まわりに相対回転可能にかつ、ねじ軸61の軸方向に同行移動可能に係合している。また、各U字係合溝78と各突出軸70との係合により、ナット59はアーム60の第1係合部72によってねじ軸61まわりの回転が規制される。したがって、ねじ軸61の回転に伴って、ナット59および第1係合部72がねじ軸61の軸方向に移動する。第2係合部73は、たとえば円環板状をなしている。しかし、第2係合部73が円筒状をなしていてもよい。
【0071】
シフトセレクト軸15の外周と第2係合部73の内周とはスプライン嵌合している。具体的には、第2係合部73の内周に設けられた雌スプライン75に、シフトセレクト軸15の外周に設けられた雄スプライン121が噛み合っている。このとき、雄スプライン121と雌スプライン75との間には噛合いのための隙間が確保されている。
言い換えれば、シフトセレクト軸15の外周には第2係合部73が、当該シフトセレクト軸15に対して相対回転不能にかつ相対軸方向移動が許容された状態で連結されている。したがって、ねじ軸61が回転し、これに伴ってナット59がねじ軸61の軸方向に移動すると、アーム60がシフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに回動し、このアーム60の移動に同伴してシフトセレクト軸15が回転する。
【0072】
セレクト変換機構25は、第1歯車56と、伝達軸41と平行に延び、回転可能に設けられたピニオン軸95と、ピニオン軸95における一端部(図4に示す左端部)寄りの所定位置に同軸に固定された第2歯車81と、ピニオン軸95の他端部(図4に示す右端部)寄りの所定位置に同軸に固定された小径のピニオン36とを備え、全体として減速機を構成している。なお、第2歯車81は、第1歯車56およびピニオン36の双方よりも大径に形成されている。
【0073】
ピニオン軸95の一端部(図4に示す左端部)は、ハウジング22に固定された転がり軸受96によって支持されている。転がり軸受96の内輪は、ピニオン軸95の一端部(図4に示す左端部)に外嵌固定されている。また、転がり軸受96の外輪は、蓋27の内面に形成された円筒状の凹部97内に固定されている。また、ピニオン軸95の他端部(図4に示す右端部)は、転がり軸受84によって支持されている。ピニオン36とラック122とがラックアンドピニオンにより噛み合っているので、伝達軸41の回転に伴ってピニオン軸95が回転すると、これに伴って、シフトセレクト軸15がその軸方向M11,M12に移動する。
【0074】
ピニオン軸95の他端部82(図4に示す右端部)に関連して、ピニオン軸95の回転角を検出するための第1回転角センサ87が配設されている。ハウジング22の底壁(蓋27とは反対側の壁。図4に示す右壁)には、その内外面を貫通するセンサ用孔85が形成されている。第1回転角センサ87は、センサ部(図示しない)と、センサ部に連結された第1センサ軸99とを備えている。第1センサ軸99の先端部は、センサ用孔85を通ってピニオン軸95の他端部82に同伴回転可能に連結されている。ピニオン軸95が回転すると、そのピニオン軸95に同伴して第1センサ軸99がその軸まわりに回転する。第1回転角センサ87は第1センサ軸99の回転角に基づいて、ピニオン軸95の回転角を検出する。
【0075】
また、ハウジング22内には、シフトセレクト軸15の回転角を検出するための第2回転角センサ(軸回転検出手段)89が設けられている。第2回転角センサ89は、センサ部(図示しない)が内蔵された本体90と、本体90のセンサ部に一体回転可能に連結された第2センサ軸94と、第2センサ軸94に外嵌固定されたセクタ歯車91とを備えている。このセクタ歯車91は、シフトセレクト軸15に同伴回転可能に設けられた(外嵌固定された)センサ用歯車92と噛み合っている。シフトセレクト軸15がその軸まわりに回転すると、そのシフトセレクト軸15に同伴してセンサ用歯車92およびセクタ歯車91が回転し、これに伴って第2センサ軸94がその軸まわりに回転する。第2回転角センサ89は、第2センサ軸94の回転角に基づいてシフトセレクト軸15の回転角を検出する。
【0076】
図5Bは、変速駆動装置3の電気的構成を示すブロック図である。
変速駆動装置3は、制御部88を備えている。制御部88の一例としてECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を挙げることができる。
制御部88は、CPU301および記憶部310を含むマイクロコンピュータを備えている。制御部88にはクラッチ駆動部303を介して、シフト側電磁クラッチ43およびセレクト側電磁クラッチ45がそれぞれ制御対象として接続されている。制御部88は、予め記憶されたプログラムに従って、制御対象を駆動制御する。
【0077】
制御部88には、第1回転角センサ87および第2回転角センサ89の検出出力(たとえば検出電圧)がそれぞれ入力されるようになっている。制御部88には、また、車両の変速操作用の操作レバー93の位置情報が入力されるようになっている。さらに、制御部88には、次に述べる電流値検出回路306からの検出出力が入力されるようになっている。
【0078】
制御部88には記憶部310が接続されている。記憶部310は、インターナルレバー16の他端部16bの各シフト位置および各中立位置の位置データ(位置情報)を記憶する位置データ記憶部(位置情報記憶手段)311と、インターナルレバー16が係合溝14A〜14Dの内壁200Aに押し当てられるときの供給電流値の閾値を記憶するための閾値記憶部312とを備えている。電流値検出回路306と閾値記憶部312とによって特許請求の範囲に記載のトルク検出手段が構成されている。
【0079】
位置データ記憶部311は書換え可能なメモリにより構成されている。また、インターナルレバー16の他端部16bの位置は、シフト方向の位置データと、セレクト方向の位置データとによって特定されている。したがって、位置データ記憶部311には、図2にそれぞれ示すR速シフト位置、1速シフト位置、2速シフト位置、3速シフト位置、4速シフト位置、5速シフト位置、6速シフト位置、第1中立位置N1、第2中立位置N2、第3中立位置N3および第4中立位置N4のそれぞれについて、シフト方向の位置データおよびセレクト方向の位置データがそれぞれ記憶されている。
【0080】
CPU(位置情報設定修正手段)301は第1回転角センサ87の検出出力に基づいて、シフトセレクト軸15の軸方向位置を求めることができ、これによりインターナルレバー16の他端部16bのセレクト方向の位置を求めることができるようになっている。また、CPU301は第2回転角センサ89の検出出力に基づいて、シフトセレクト軸15の回転角を求めることができ、これによりインターナルレバー16の他端部16bのセレクト方向の位置を求めることができるようになっている。
【0081】
CPU301は、位置データ記憶部311に記憶されている、他端部16bの各シフト位置および各中立位置N1,N2,N3,N4の位置データに基づいて、電動モータ23、シフト側電磁クラッチ43およびセレクト側電磁クラッチ45の動作内容を決定する。換言すると、CPU301は位置データ記憶部311の位置データに基づいて、インターナルレバー16によるシフト動作およびセレクト動作を制御する。
【0082】
モータ駆動部302は、CPU301によって決定された動作内容に基づいて電動モータ23のロータ部の目標回転数を設定(決定)する目標回転数設定部304と、電動モータ23のロータ部の回転数が目標値となるように出力電流を制御する出力電流制御部305と、電動モータ23をたとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御によって駆動するモータ駆動回路307とを備えている。電動モータ23の回転数は、レゾルバやロータリーエンコーダ等によって構成されるモータ回転数検出部308によって検出される。モータ回転数検出部308によって検出された回転数はフィードバックされ、出力電流制御部305によって供給電流の値が制御される。モータ駆動部302では、モータ駆動回路307に対する供給電流の電流値は、電流値検出回路306によって検出される。電流値検出回路306の検出出力は、制御部88に入力されるようになっている。
【0083】
制御部88は、シフト動作中でないのにシフトセレクト軸15が回転したとき、そのときの第2回転角センサ89の検出出力に基づいてそのシフトセレクト軸15の回転角度量を求めることにより、インターナルレバー16の他端部16bの逆入力による移動量を検出することができる。
以下、1速からR速にシフトダウンさせる場合を例に挙げて説明する。
【0084】
図6は、1速からR速にシフトダウンさせる場合における変速操作制御を示すフローチャートである。また、図7A〜図7Dは、1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバー16と、シフトヘッド12A,12Bとの間の係合状態を示す図である。図6および図7A〜図7Dを参照して、1速からR速にシフトダウンさせる場合の動作制御について説明する。
【0085】
図6に示すように、1速からR速にシフトダウンさせる場合には、シフト動作(1速→N2)(ステップS1)、セレクト動作(N2→N1)(ステップS2)およびシフト動作(N1→R速)(ステップS3)の各動作がこの順で実行させられる。具体的には、ステップS1のシフト動作(1速→N2)では、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M3移動させられて(図7A中の白抜矢符E2)、インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2に位置させられる(図7B参照)。
【0086】
また、ステップS2のセレクト動作(N2→N1)では、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動し、シフトヘッド12Bと離脱してシフトヘッド12Aに係合させられる(第1中立位置N1に位置させられる)。
さらに、ステップS3のシフト動作(N1→R速)では、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Aおよびフォーク軸10Aが軸方向M1移動させられる(図2中の白抜矢符ER)。インターナルレバー16の他端部16bが前記のR速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これによりR速へのギヤ入れが達成される。
【0087】
ところで、前述のように、中立位置N1,N2,N3,N4にある状態で、各シフトヘッド12A,12B,12C,12Dは、軸方向M1,M3,M5,M7に関して揃っているのであるが、温度変化や経年劣化等の要因によりあるシフトヘッド12A〜12Dの中立位置N1,N2,N3,N4が所期位置からずれていることがある。たとえば、図7Cに示すように、シフトヘッド12Aの中立位置N1が所期位置からずれている場合、シフトヘッド12Aが中立状態にある他のシフトヘッド12B,12C,12Dと、軸方向M1,M3,M5,M7に関してずれている(揃っていない)。この場合ずれ量がそれほど大きくなければ、インターナルレバー16とシフトヘッド12Aとの間に強いこじりが発生するものの、図7Dに示すようにインターナルレバー16を、第2中立位置N2から第1中立位置N1に向けて移動(セレクト動作)させることができる。
【0088】
しかしながら、この場合、インターナルレバー16の他端部16bが第1中立位置N1が所期位置からずれたシフトヘッド12Aに係合することにより、そのインターナルレバー16も所期の第1中立位置N1からずれるようになる。このように、実際にはインターナルレバー16およびシフトヘッド12Aが第1中立位置N1からずれているのに対し、制御部88は所期の第1中立位置N1にあるもの、つまり、位置データ記憶部311に記憶されている第1中立位置N1の位置データに対応する位置にあるものとみなしている。そのため、制御部88が位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置の位置データに基づいて、インターナルレバー16の他端部16bをR速シフト位置に向けて移動させると、その移動(シフト動作)後の他端部16bが、R速シフト位置に到達しなかったり、当該R速シフト位置を通り過ぎたりするおそれがある。図7Cに示す場合は、中立時におけるシフトヘッド12Aが、所期の第1中立位置N1よりも軸方向M1側に寄せてずれているので、シフト動作後の他端部16bがR速シフト位置を通り過ぎるおそれがある。
【0089】
この実施形態の特徴は、セレクト動作を伴う変速操作に関し、セレクト動作中におけるインターナルレバー16に対する逆入力による他端部16bのシフト方向の移動量(シフトセレクト軸15の回転移動量)を求め、当該セレクト動作後のシフト動作時において、その移動量に基づいて、変速先のシフト位置の位置データ等を修正するようにした点である。
【0090】
以下、1速からR速にシフトダウンさせる場合、すなわち、変速先のシフト位置がR速シフト位置である場合を例に挙げて説明する。具体的には、セレクト動作(N2→N1)時に、当該セレクト動作(N2→N1)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量(シフトセレクト軸15の回転移動量)を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N1→R速)時にR速シフト位置および第1中立位置N1の位置データを修正するようにしている。
【0091】
図8は、セレクト動作(N2→N1)の変速操作制御を示すフローチャートである。
セレクト動作(N2→N1)に先立って、制御部88は、第2回転角センサ89の検出出力を参照する(ステップS11)。その後セレクト動作(N2→N1)が実行される(ステップS12)。セレクト動作(N2→N1)では、制御部88は、セレクト側電磁クラッチ45を接続状態にしかつシフト側電磁クラッチ43を切断状態にしつつ、電動モータ23を回転方向R11に所定回転量だけ回転させる。このときの電動モータ23の回転量は、位置データ記憶部311に記憶されている第2中立位置N2および第1中立位置N1の位置データ(セレクト方向の位置データ)に従って決定される。決定された回転量だけ電動モータ23を回転させた後、制御部88は電動モータ23の回転を停止させる。これにより、セレクト動作(N2→N1)が終了する。セレクト動作(N2→N1)の終了後、制御部88は、第2回転角センサ89の検出出力を参照する(ステップS13)。
【0092】
制御部88は、セレクト動作前後の検出出力を差分し(ステップS14)、検出出力に差分値がある場合には(ステップS15でYES)、記憶部310に記憶される補正実行フラグの値を「1」に設定する(ステップS16)。一方、検出出力に差分値がない場合には(ステップS15でNO)、記憶部310に記憶される補正実行フラグの値は更新されず、たとえば「0」のままである。その後、セレクト動作(N2→N1)は終了する。
【0093】
図9は、シフト動作(N1→R速)の変速操作制御を示すフローチャートである。
シフト動作時には、制御部88は、インターナルレバー16をシフトヘッド12Aの内壁200Aに押し当てるために、制御部88は、シフト側電磁クラッチ43を接続状態にしかつセレクト側電磁クラッチ45を切断状態にしつつ、電動モータ23を回転方向R11またはR12に向けて回転駆動させるとともにしばらくした後回転駆動を停止させる(ステップS21)。
【0094】
このとき、インターナルレバー16とシフトヘッド12Aとが完全な状態で係合していると、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aの内壁200Aに押し当てられる。インターナルレバー16が押し当てられる過程で、インターナルレバー16に作用するトルク量が急激に増大し、これに伴って電動モータ23に作用する負荷トルク量が急激に増大する。このとき、電動モータ23に作用する負荷トルク量が増大すると、供給電流値の値が増加する。そのため、制御部88は、電動モータ23に対する供給電流値の増加に基づいてインターナルレバー16のシフトヘッド12Aの内壁200Aへの係合状態を検出することができる。
【0095】
電動モータ23の回転駆動中に、制御部88(CPU301)は供給電流値検出回路306を用いて供給電流値を参照する(ステップS22)。このとき、供給電流値の値が記憶部(図示しない)に記憶されている閾値を外れる(閾値よりも大きくなる)ことにより(ステップS23でYES)、インターナルレバー16がシフトヘッド12Aの内壁200Aに押し当てられている、すなわち、インターナルレバー16とシフトヘッド12Aとが完全な状態で係合していることを検出することができる。一方、供給電流値の値が閾値記憶部312に記憶されている閾値内(閾値未満)にあるときは(ステップS23でNO)、当該供給電流値が閾値を外れる(閾値よりも大きくなる)まで(ステップS23でYES)、ステップS21およびステップS22を繰り返す。
【0096】
供給電流値が閾値を外れた後(ステップS23でYES)は、補正実行フラグ(図示しない)の値に応じて取扱いが異なる。すなわち、補正実行フラグの値が「1」である場合には(ステップS24でYES)、補正実行フラグを「0」に戻した後、位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置および第1中立位置N1のシフト方向の位置データを、シフトヘッド12Aの第1中立位置N1のずれを考慮した位置データに書き換える。そのため、修正後の位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置の位置データは、軸方向M1,M3,M5,M7に関し、他のシフトヘッド12B,12C,12Dの中立位置N2,N3,N4に揃う場合の第1中立位置Nを基準とした位置データである。また、修正後の位置データ記憶部311に記憶されている第1中立位置N1の位置データは、軸方向M1,M3,M5,M7に関し、他のシフトヘッド12B,12C,12Dの中立位置N2,N3,N4に揃う場合の第1中立位置Nの位置データである。
【0097】
その後、電動モータ23の回転を続行し、インターナルレバー16の他端部16bおよびシフトヘッド12Aが、位置データ記憶部311に記憶されている、修正後の第1中立位置N1およびR速シフト位置の位置データ(シフト方向の位置データ)に従って移動制御された後(ステップS28でYES)、電動モータ23の回転は停止される。
以上により、インターナルレバー16によるセレクト動作により、第2中立位置N2にあるシフトヘッド12Bから、第1中立位置N1にあるシフトヘッド12Aに向けてインターナルレバー16の他端部16bが移動させられる。このとき、移動先のシフトヘッド12Aの第1中立位置N1が所期位置からずれていると、他端部16bによるセレクト動作に伴って、シフトヘッド12Aのずれ量に応じた大きさの逆入力が他端部16bに生じてシフトセレクト軸15が回転する。そのため、(第1中立位置N1にある)シフトヘッド12Aのずれ量は、逆入力によるシフトセレクト軸15の回転角度量に対応している。また、シフトセレクト軸15の回転角が第2回転角センサ89により検出される。
【0098】
セレクト動作中におけるシフトセレクト軸15の回転角度量に基づいて、R速シフト位置の位置情報および第1中立位置N1の位置情報の設定を、それぞれ所期のR速シフト位置および第1中立位置N1になるように修正することができる。
したがって、シフトヘッド12Aの第1中立位置N1にずれが生じた場合であっても、位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置の位置データおよび第1中立位置N1の位置データを、そのずれ量に応じて修正することができ、その後のシフト動作を良好に行わせることができる。
【0099】
また、電動モータ23の負荷トルク量の変化に基づいて、インターナルレバー16が係合溝14Aの内壁200Aに押し当てられた状態であることを検出することができ、このときのインターナルレバー16の位置を基準として、R速シフト位置の位置情報および第1中立位置N1の位置情報の設定の修正を行うことができる。インターナルレバー16が係合溝14Aの内壁200Aに押し当てられた状態であることを、容易にかつ高精度に検出することができ、これにより、R速シフト位置の位置情報および第1中立位置N1の位置情報の修正を良好に行うことができる。
【0100】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、インターナルレバー16の位置データの修正を、1速からR速にシフトダウンさせる場合を例に挙げて説明したが、R速から1速にシフトアップさせる場合にも、この発明のようなインターナルレバー16の位置データの修正を行うようにしてもよい。この場合には、セレクト動作(N1→N2)時に、当該セレクト動作(N1→N2)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N2→1速)時に1速シフト位置、2速シフト位置および第2中立位置N2の位置データを修正することができる。
【0101】
また、この発明を、2速と3速との間の変速に適用することもできる。3速から2速にシフトダウンさせる場合には、セレクト動作(N3→N2)時に、当該セレクト動作(N3→N2)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N2→2速)時に1速シフト位置、2速シフト位置および第2中立位置N2の位置データを修正することができる。また、2速から3速にシフトアップさせる場合には、セレクト動作(N2→N3)時に、当該セレクト動作(N2→N3)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N3→3速)時に3速シフト位置、4速シフト位置および第3中立位置N3の位置データを修正することができる。
【0102】
さらに、この発明を、4速と5速との間の変速に適用することもできる。5速から4速にシフトダウンさせる場合には、セレクト動作(N4→N3)時に、当該セレクト動作(N4→N3)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N3→4速)時に3速シフト位置、4速シフト位置および第3中立位置N3の位置データを修正することができる。また、4速から5速にシフトアップさせる場合には、セレクト動作(N3→N4)時に、当該セレクト動作(N3→N4)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N4→5速)時に5速シフト位置、6速シフト位置および第4中立位置N4の位置データを修正することができる。
【0103】
なお、修正の対象になるインターナルレバー16の位置情報として、各シフト位置および各中立位置の位置データである場合を例に挙げて説明したが、中立位置N1,N2,N3,N4から所定のシフト位置までの移動距離データが記憶されており、移動距離データが修正されるようにされていてもよい。
また、たとえば、シフト位置の配置構成を、他の態様としてもよいのは言うまでもない。そしてシフト位置の配置構成に応じて、シフトヘッド12A〜12Dの個数を変更させることができるのも言うまでもない。
【0104】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0105】
2…変速機、3…変速駆動装置、10A〜10D…フォーク軸、12A〜12D…シフトヘッド、15…シフトセレクト軸、16…インターナルレバー(シフトレバー)、23…電動モータ、24…シフト変換機構(シフト駆動機構)、25…セレクト変換機構(セレクト駆動機構)、43…シフト側電磁クラッチ(クラッチ機構)、45…セレクト側電磁クラッチ(クラッチ機構)、89…第2回転角センサ(軸回転検出手段)、311…位置データ記憶部(位置情報記憶手段)、301…CPU(位置情報設定修正手段)、14A〜14D…係合溝、306…電流値検出回路(トルク検出手段)、312…閾値記憶部(トルク検出手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速機を駆動するための変速駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マニュアルトランスミッションの変速が自動化された自動制御式マニュアルトランスミッション(Automated Manual Transmission)の変速装置が知られている。このような変速装置には、変速機の変速段を切り換える変速駆動装置が備えられている。
たとえば下記特許文献1では、途中部にシフトレバーが固定されたシフトセレクト軸を、単一の電動モータの回転駆動力によってその軸まわりに回転させてシフト動作を行わせたり、電動モータの回転駆動力によってシフトセレクト軸を軸方向に移動させたりするシフト/セレクト駆動装置が、変速駆動装置の一例として開示されている。このシフト/セレクト駆動装置は、電動モータの回転駆動力を、シフトセレクト軸を回転させるための力に変換するための第1変換機構と、当該回転駆動力を、シフトセレクト軸を軸方向移動させるための力に変換するための第2変換機構と、電動モータからの回転駆動力の伝達を、第1変換機構に断続可能なシフト側電磁クラッチと、電動モータからの回転駆動力の伝達を、第2変換機構に断続可能なセレクト側電磁クラッチとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−75097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動アクチュエータでは、シフトレバーにシフト動作を行わせるときには、シフト側電磁クラッチを接続状態にするとともにセレクト側電磁クラッチを切断状態にする。一方、シフトレバーにセレクト動作を行わせるときには、シフト側電磁クラッチを切断状態にするとともにセレクト側電磁クラッチを接続状態にする。つまり、接続状態にある電磁クラッチを、シフト側電磁クラッチとセレクト側電磁クラッチとの間で選択的に切り換えることにより、電動モータの動力の伝達先を、シフト駆動機構とセレクト駆動機構との間で切り換えている。
【0005】
ところで、変速機において、シフトレバーによって操作される変速操作機構は、複数のフォーク軸と、各フォーク軸に固定されたシフトヘッドと、これら複数のシフトヘッドに跨って形成された係合溝とを有している。係合溝は、シフトレバーの先端部を収容するとともに、当該先端部と係合している。
シフトレバーによるセレクト動作時には、各シフトヘッドが中立位置に設定された状態で、電動アクチュエータが駆動されてシフトセレクト軸がその軸方向に向けて移動させられる。このとき、シフトセレクト軸の軸方向移動により、シフトレバーの先端部が係合溝内を通って移動し、当該先端部の係合先がそれまでと異なるシフトヘッドに切り換えられる(選択される)。
【0006】
一方、シフトレバーによるシフト動作時には、電動アクチュエータが駆動されてシフトセレクト軸が回転させられる。このとき、シフトセレクト軸の回転により、シフトレバーと係合しているシフトヘッドの先端部がフォーク軸ごとその軸方向の一方に向けて移動させられる。このときのシフトレバーの移動は、記憶部に記憶されている各シフト位置および各中立位置の位置データに基づいて実行される。
【0007】
しかしながら、温度変化や経年劣化、その他の要因により、シフトヘッドの中立位置が所期位置からずれるおそれがある。このとき、実際にはシフトレバーおよびシフトヘッドが中立位置からずれているのに対し、所期位置にあるものとして管理されることになる。そのため、シフト動作後のシフトレバーが、所期のシフト位置に到達しなかったり、所期のシフト位置を通り過ぎたりする場合が生じるおそれがある。すなわち、シフト動作が不十分または過剰になる結果、良好なギヤ入れ状態を実現できないおそれがある。
【0008】
そこで、この発明の目的は、変速機のシフトヘッドに位置ずれが生じた場合であっても、シフトレバーによるシフト動作を良好に行わせることができる変速駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、複数のフォーク軸(10A〜10D)と、各フォーク軸に固定されたシフトヘッド(12A〜12D)とを有する変速機(2)を駆動するための変速駆動装置(3)であって、前記シフトヘッドと係合するためのシフトレバー(16)が連結された軸状体であり、軸まわりに回転することによって前記シフトレバーをシフト動作させ、軸方向に向けて移動させることによって前記シフトレバーをセレクト動作させるシフトセレクト軸(15)と、回転駆動力を発生させるための単一の電動モータ(23)と、前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸まわりに回転させるシフト駆動機構(24)と、前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸方向に向けて移動させるセレクト駆動機構(25)と、前記電動モータから回転駆動力の伝達先を、前記シフト駆動機構と前記セレクト駆動機構とで選択的に切り換えるクラッチ機構(43,45)と、前記シフトセレクト軸の回転角を検出するための軸回転検出手段(89)と、前記シフトレバーが前記シフトヘッドに係合するときの位置情報を、各シフトヘッドに対応して記憶する位置情報記憶手段(311)と、前記セレクト駆動機構の駆動中における前記シフトセレクト軸の回転角度量に基づいて、前記位置情報記憶手段に記憶されている、各シフトヘッドに対応する前記位置情報の設定を修正する位置情報設定修正手段(301)とを含む、変速駆動装置である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、シフトレバーによるセレクト動作により、中立位置にある所定のシフトヘッドから、同じく中立位置にある別のシフトヘッドに向けてシフトレバーが移動させられる。このとき、移動先のシフトヘッドの中立位置が所期位置からずれていると、シフトレバーによるセレクト動作に伴って、シフトヘッドのずれ量に応じた大きさの逆入力がシフトレバーに生じ、これによりシフトセレクト軸が回転する。そのため、シフトヘッドのずれ量は逆入力によるシフトセレクト軸の回転角度量に対応している。また、シフトセレクト軸の回転角は、軸回転検出手段により検出される。
【0011】
セレクト動作中におけるシフトセレクト軸の回転角度量に基づいて位置情報の設定を修正する。シフトセレクト軸の回転角度量が中立位置のずれ量に対応しているので、各シフトヘッドに対応する位置情報の設定を、当該位置情報によって特定される位置が所期位置になるように修正することができる。
以上により、シフトヘッドに位置ずれが生じた場合であっても、シフトレバーによるシフト動作を良好に行わせることができる。
【0012】
なお、この明細書において、「シフトレバーの位置情報」とは、シフトレバーの位置データそのものだけでなく、所定の中立位置から所定のシフト位置までの移動距離に関する移動距離情報をも含む趣旨である。
請求項2記載の発明は、前記変速機は、複数の前記シフトヘッドに跨って形成され、前記シフトレバーの少なくとも一部を収容し、当該シフトレバーに係合する係合溝(14A〜14D)をさらに有し、前記変速駆動装置は、前記シフトレバーに作用するトルクを検出するトルク検出手段(306,312)をさらに含み、前記位置情報設定修正手段は、前記シフトレバーに予め定める大きさ以上のトルクが作用したときの当該シフトレバーの位置を基準として、前記位置情報の設定を修正する、請求項1記載の変速駆動装置である。
【0013】
この構成によれば、シフトレバーが係合溝に係合した状態(より具体的には、係合溝の内壁(200A)に押し当てられた状態)であるときには、シフトレバーに作用するトルク量が急激に増大する。したがって、このトルク量の変化に基づいて、シフトレバーが係合溝に係合しているか否かを検出することができ、このときのシフトレバーの位置を基準として、位置情報の設定の修正を行うことができる。シフトレバーが係合溝に係合している状態(係合溝の内壁に押し当てられた状態)であることを、容易にかつ高精度に検出することができ、これにより、位置情報の修正を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の変速駆動装置が適用された変速装置の一部構成の概略分解斜視図である。
【図2】図1に示す変速操作機構のシフトパターンを説明するための図である。
【図3】図1に示す変速駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示す変速駆動装置の構成を示す断面図である。
【図5A】図4の切断面線V‐Vで切断したときの断面図である。
【図5B】図1に示す変速駆動装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】1速からR速にシフトダウンさせる場合における変速操作制御を示すフローチャートである。
【図7A】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その1)。
【図7B】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その2)。
【図7C】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その3)。
【図7D】1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバーと、シフトヘッドとの間の係合状態を示す図である(その4)。
【図8】図6に示すセレクト動作(N2→N1)の変速操作制御を示すフローチャートである。
【図9】図6に示すシフト動作(N1→R速)の変速操作制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の変速駆動装置3が適用された変速装置1の一部構成の概略分解斜視図である。変速装置1は、変速機2と、変速機2を変速駆動する変速駆動装置3とを備えている。
変速機2は、公知の常時かみ合い式の平行軸歯車動力伝達機構により構成された動力伝達機構(図示しない)と、動力伝達機構の動力伝達経路を、複数の動力伝達経路の間で切り換えるための変速操作機構6と、これら動力伝達機構および変速操作機構6を収容するギヤハウジング7とを備えている。変速機2を含む構成の変速装置1は、乗用車やトラックなどの車両に搭載されている。動力伝達機構における動力伝達経路の切換えにより、動力伝達比を異ならせることができる。
【0016】
変速操作機構6はギヤハウジング7内に収容され、互いに平行に延びる複数のフォーク軸10A,10B,10C,10Dを有している。フォーク軸10Aは軸方向M1,M2に移動可能に設けられている。フォーク軸10Bは軸方向M3,M4に移動可能に設けられている。フォーク軸10Cは軸方向M5,M6に移動可能に設けられている。フォーク軸10Dは軸方向M7,M8に移動可能に設けられている。軸方向M1,M3,M5およびM7は、互いに同じ方向を向きかつ互いに並行な軸方向である。軸方向M2、M4、M6およびM8は、それぞれ、軸方向M1,M3,M5およびM7と逆向きの軸方向である。
【0017】
フォーク軸10A,10B,10C,10Dは、軸方向M1,M3,M5,M7(M2,M4,M6,M8)から見て一直線上に位置するように並置されている。各フォーク軸10A,10B,10C,10Dの途中部には、変速駆動装置3によって駆動されるシフトヘッド12A,12B,12C,12Dが固定されている。これらのシフトヘッド12A,12B,12C,12Dは、それぞれ、中立位置(後述する中立位置N1,N2,N3,N4。図2参照)にある状態で、軸方向M1,M3,M5,M7に関して揃っており、複数のセレクト方向位置(図2に示す上下方向の各位置。この実施形態では、たとえば4つのセレクト方向位置。たとえば、5速および6速用のセレクト方向位置、3速および4速用のセレクト方向位置、1速および2速用のセレクト方向位置ならびにR速のセレクト方向位置)に対応して設けられている。各シフトヘッド12A,12B,12C,12Dは変速駆動装置3に対向する対向面を有している。各対向面は同一平面を有している。各対向面には、係合溝14A,14B,14C,14Dが形成されている。各係合溝14A,14B,14C,14Dは、対応するフォーク軸10A〜10Dの軸方向M1〜M8に沿う方向に直交する内壁200A(図2参照)を有している。また、両端側の係合溝14A,14Dは、シフトセレクト軸15の第1および第2軸方向M11,M12に沿う方向に直交し、各係合溝14A,14Dの両端側の側面を閉塞する内壁200B(図2参照)を有している。換言すると、これら4つの係合溝14A,14B,14C,14Dによって、4つのシフトヘッド12A,12B,12C,12Dに跨る係合溝が構成される。
【0018】
係合溝14A,14B,14C,14Dには、インターナルレバー(シフトレバー)16の他端部(先端部)16bが進入しており、他端部16bが係合溝14A,14B,14C,14Dの内壁200Aおよび内壁200Bに押し当てられる(当接する)ことにより、シフトヘッド12A,12B,12C,12Dと係合している。インターナルレバー16の他端部16bは、係合溝14A,14B,14C,14Dの内部空間を通って移動し、これにより、各シフトヘッド12A,12B,12C,12Dとの係合のための係合位置間を移動することができる。
【0019】
また、各フォーク軸10A,10B,10C,10Dには、動力伝達機構の動力伝達経路を切り換えるために操作される被操作部材(図示しない。たとえばクラッチスリーブやシンクロナイザ機構など)と係合するためのシフトフォーク11(図1では、フォーク軸10Dに設けられたシフトフォーク11のみを示す)が固定されている。シフトフォーク11の軸方向M1〜M8移動により、シフトフォーク11を被操作部材に係合させることができ、その被操作部材を駆動することができる。
【0020】
変速駆動装置3は、変速操作機構6にシフト動作およびセレクト動作を行わせるための円柱状のシフトセレクト軸15と、シフトセレクト軸15をシフト動作およびセレクト動作させるための回転駆動源として用いられる電動アクチュエータ21とを備えている。シフトセレクト軸15は中心軸線17を有している。シフトセレクト軸15はギヤハウジング7に、シフトセレクト軸15の軸まわり(すなわち中心軸線17まわり)に第1または第2軸回転方向R1,R2に回転可能に、かつ第1または第2軸方向M11,M12に移動可能に支持されている。シフトセレクト軸15はフォーク軸10A,10B,10C,10Dのそれぞれといわゆる90°の食違い軸の関係をなす状態に配置されている。第2軸回転方向R2は第1軸回転方向R1と逆向きの回転方向である。第2軸方向M12は、第1軸方向M11と逆向きの軸方向である。
【0021】
シフトセレクト軸15の途中部には、ギヤハウジング7内に収容されるインターナルレバー16の一端16aが固定されている。インターナルレバー16は、シフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに、シフトセレクト軸15と同伴回転する。シフトセレクト軸15の先端部(図1に示す左手前部)は、ギヤハウジング7外に突出している。
電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が第1軸方向M11移動されると、インターナルレバー16が第1軸方向M11に移動させられる。また、電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が第2軸方向M12移動されると、インターナルレバー16が第2軸方向M12に移動させられる。そして、セレクト方向位置でインターナルレバー16の他端部16bが所要のシフトヘッド12A,12B,12C,12Dに係合し、これによりセレクト動作が達成される。
【0022】
一方、電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15が第1軸回転方向R1に回転されると、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに第1軸回転方向R1に揺動させられる。また、電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15が第2軸回転方向R2に回転されると、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに第2軸回転方向R2に揺動する。その結果、インターナルレバー16と係合しているシフトヘッド12A,12B,12C,12Dが、フォーク軸10A,10B,10C,10Dの軸方向M1〜M8に移動し、これにより、シフト動作が達成される。
【0023】
図2は、変速操作機構6のシフトパターンを説明するための図である。
インターナルレバー16に係合しているシフトヘッド12A〜12Dに対応するフォーク軸10A〜10Dが、所定の基準位置(中立位置)から軸方向移動していないときのシフト方向位置を中立位置N1,N2,N3,N4という。第1中立位置N1とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aに係合している中立位置を言い、第2中立位置N2とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bに係合している中立位置を言う。第3中立位置N3とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Cに係合している中立位置を言い、第4中立位置N4とは、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Dに係合している中立位置を言う。中立位置N1,N2,N3,N4にあるときは、出力ギヤは中立状態にあり、インターナルレバー16の他端部16bと係合しているシフトヘッド12A,12B,12C,12Dに対応するシフトフォーク11は、被操作部材に係合していない。
【0024】
インターナルレバー16が第2中立位置N2にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D1に向けて移動して、インターナルレバー16が第1中立位置N1に導かれる。インターナルレバー16が第2中立位置N2にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D2に向けて移動して、インターナルレバー16が第3中立位置N3に導かれる。
【0025】
また、インターナルレバー16(他端部16b)が第3中立位置N3にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D1に向けて移動して、インターナルレバー16が第2中立位置N2に導かれる。インターナルレバー16が第3中立位置N3にある状態で、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより、インターナルレバー16が図2中の白抜矢符D2に向けて移動して、インターナルレバー16が第4中立位置N4に導かれる。
【0026】
図2に示すように、第1中立位置N1およびR速シフト位置はともに第1セレクト方向位置(図2に示す最も上方のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。1速シフト位置、第2中立位置N2および2速シフト位置はともに第2セレクト方向位置(図2に示す上から2つ目のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。3速シフト位置、第3中立位置N3および4速シフト位置はともに第3セレクト方向位置(図2に示す上から3つ目のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。5速シフト位置、第4中立位置N4および6速シフト位置はともに第4セレクト方向位置(図2に示す最も下方のセレクト方向位置)にあり、セレクト方向に関して互いに揃っている。
【0027】
R速シフト位置、2速シフト位置、4速シフト位置および6速シフト位置はともに第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)にあり、シフト方向に関して互いに揃っている。これらのシフト位置は、中立位置N1,N2,N3,N4から見て加速方向側(図2中の白抜矢符ER、E2、E4およびE6で示す方向)に位置している。1速シフト位置、3速シフト位置および5速シフト位置はともに第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)にあり、シフト方向に関して互いに揃っている。これらのシフト位置は、中立位置N1,N2,N3,N4から見て減速方向側(図2中の白抜矢符E1、E3およびE5に示す方向)に位置している。
【0028】
図2に示すように、R速(リバース)にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中のR速シフト位置(図2中に「R速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構のR速出力用の出力ギヤに、被操作部材が係合している。これにより、出力ギヤがR速である。インターナルレバー16がR速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aに係合しているとともに、第1中立位置N1から他端部16bがシフトヘッド12Aごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M1移動(図2中の白抜矢符ERに向けて移動)させられた状態である。
【0029】
1速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の1速シフト位置(図2中に「1速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の1速出力用の出力ギヤに被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが1速である。インターナルレバー16が1速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bに係合しているとともに、第2中立位置N2から他端部16bがシフトヘッド12Bごと第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)に軸方向M4移動(図2中の白抜矢符E1に向けて移動)させられた状態である。
【0030】
図2に示すように、2速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の2速シフト位置(図2中に「2速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の2速出力用の出力ギヤに、被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが2速である。インターナルレバー16が2速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bに係合しているとともに、第2中立位置N2から他端部16bがシフトヘッド12Bごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M3移動(図2中の白抜矢符E2に向けて移動)させられた状態である。
【0031】
3速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の3速シフト位置(図2中に「3速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の3速出力用の出力ギヤに、被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが3速である。インターナルレバー16が3速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Cに係合しているとともに、第3中立位置N3から他端部16bがシフトヘッド12Cごと第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)に軸方向M6移動(図2中の白抜矢符E3に向けて移動)させられた状態である。
【0032】
4速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の4速シフト位置(図2中に「4速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の4速出力用の出力ギヤに、被操作部材が噛み合い状態で係合している。これにより、出力ギヤが4速である。インターナルレバー16が4速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Cに係合しているとともに、第3中立位置N3から他端部16bがシフトヘッド12Cごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M5移動(図2中の白抜矢符E4に向けて移動)させられた状態である。
【0033】
5速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の5速シフト位置(図2中に「5速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の5速出力用の出力ギヤに、被操作部材が係合している。これにより、出力ギヤが5速である。インターナルレバー16が5速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Dに係合しているとともに、その第4中立位置N4から他端部16bがシフトヘッド12Dごと第2シフト方向位置(図2に示す右方のシフト方向位置)に軸方向M8移動(図2中の白抜矢符E5に向けて移動)させられた状態である。
【0034】
6速にギヤ入れしているときは、インターナルレバー16の他端部16bが図2中の6速シフト位置(図2中に「6速」と記載)にあり、このとき動力伝達機構の6速出力用の出力ギヤに、被操作部材が係合している。これにより、出力ギヤが6速である。インターナルレバー16が6速シフト位置にある状態は、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Dに係合しているとともに、その第4中立位置N4から他端部16bがシフトヘッド12Dごと第1シフト方向位置(図2に示す左方のシフト方向位置)に軸方向M7移動(図2中の白抜矢符E6に向けて移動)させられた状態である。
【0035】
次に、図1および図2を参照して、R速へのギヤ入れについて説明する。第2中立位置N2からR速にギヤ入れする場合には、インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動して、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aと係合する(第1中立位置N1に位置する。)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R2に回転させられ、これに同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Aおよびフォーク軸10Aが軸方向M1移動させられる(図2中の白抜矢符ER)。インターナルレバー16の他端部16bが前記のR速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これによりR速へのギヤ入れが達成される。
【0036】
R速にギヤ入れされている状態からギヤ抜きする場合には、インターナルレバー16の他端部16bがR速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Aおよびフォーク軸10Aが軸方向M2移動させられて(図2中の白抜矢符ERと反対方向。)、インターナルレバー16の他端部16bが第1中立位置N1に位置する。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより(図2中の白抜矢符D2方向)、インターナルレバー16が軸方向M12移動して、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Bと係合する(第2中立位置N2に位置する。)。
【0037】
次に、1速→2速→3速→4速→5速→6速のシフトアップについて説明する。
まず、第2中立位置N2から1速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M4移動させられる(図2中の白抜矢符E1)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の1速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより1速へのギヤ入れが達成される。
【0038】
次に、1速から2速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の1速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M3移動させられる(図2中の白抜矢符E2)。インターナルレバー16の他端部16bが、第2中立位置N2を通って前記の2速シフト位置に向けて移動させられる。これにより、他端部16bが2速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより2速へのギヤ入れが達成される。
【0039】
次に、2速から3速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の2速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M4移動させられて(図2中の白抜矢符E1)、インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより(図2中の白抜矢符D2)、インターナルレバー16が軸方向M12移動し、シフトヘッド12Bと離脱してシフトヘッド12Cに係合させられる(第3中立位置N3に位置させられる)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R1に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M6移動させられる(図2中の白抜矢符E3)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の3速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより3速へのギヤ入れが達成される。
【0040】
次に、3速から4速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の3速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M5移動させられる(図2中の白抜矢符E4)。インターナルレバー16の他端部16bが、第3中立位置N3を通って前記の4速シフト位置に向けて移動させられる。これにより、他端部16bが4速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより4速へのギヤ入れが達成される。
【0041】
次に、4速から5速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の4速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M6移動させられて(図2中の白抜矢符E3)、インターナルレバー16の他端部16bが第3中立位置N3に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M12移動させられることにより(図2中の白抜矢符D2)、インターナルレバー16が軸方向M12移動し、シフトヘッド12Cと離脱してシフトヘッド12Dに係合させられる(第4中立位置N4に位置させられる)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R1に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M8移動させられる(図2中の白抜矢符E5)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の5速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより5速へのギヤ入れが達成される。
【0042】
次に、5速から6速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の5速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M7移動させられる(図2中の白抜矢符E6)。インターナルレバー16の他端部16bが、第4中立位置N4を通って前記の6速シフト位置に向けて移動させられる。これにより、他端部16bが6速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより6速へのギヤ入れが達成される。
【0043】
次に、図1および図2を参照して、6速→5速→4速→3速→2速→1速のシフトダウンについて説明する。
まず、6速から5速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の6速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M8移動させられる(図2中の白抜矢符E5)。これにより、インターナルレバー16の他端部16bが、第4中立位置N4を通って前記の5速シフト位置に向けて移動させられる。他端部16bが5速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより5速へのギヤ入れが達成される。
【0044】
次に、5速から4速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の5速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Dおよびフォーク軸10Dが軸方向M7移動させられて(図2中の白抜矢符E6)、インターナルレバー16の他端部16bが第4中立位置N4に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動し、シフトヘッド12Dと離脱してシフトヘッド12Cに係合させられる(第3中立位置N3に位置させられる)ようになる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R2に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M5移動させられる(図2中の白抜矢符E4)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の4速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより4速へのギヤ入れが達成される。
【0045】
次に、4速から3速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の4速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M6移動させられる(図2中の白抜矢符E3)。これにより、インターナルレバー16の他端部16bが、第3中立位置N3を通って前記の3速シフト位置に向けて移動させられる。他端部16bが3速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより3速へのギヤ入れが達成される。
【0046】
次に、3速から2速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の3速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Cおよびフォーク軸10Cが軸方向M5移動させられて(図2中の白抜矢符E4)、インターナルレバー16の他端部16bが第3中立位置N3に位置させられる。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動し、シフトヘッド12Cと離脱してシフトヘッド12Bに係合させられる(第2中立位置N2に位置させられる)。次いで、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15が回転方向R2に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴してインターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに揺動させられて、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M3移動させられる(図2中の白抜矢符E2)。インターナルレバー16の他端部16bが前記の2速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより2速へのギヤ入れが達成される。
【0047】
次に、2速から1速へのギヤ入れについて説明する。インターナルレバー16の他端部16bが前記の2速シフト位置にある状態から、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R1に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M4移動させられる(図2中の白抜矢符E1)。これにより、インターナルレバー16の他端部16bが、第2中立位置N2を通って前記の1速シフト位置に向けて移動させられる。他端部16bが1速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これにより1速へのギヤ入れが達成される。
【0048】
図3は、電動アクチュエータ21の構成を示す斜視図である。図4は、電動アクチュエータ21の構成を示す断面図である。図5Aは、図4の切断面線V‐Vで切断したときの断面図である。なお、図3では、シフトセレクト軸15の図示を省略している。以下、図3〜図5Aを参照して、電動アクチュエータ21の構成について説明する。
電動アクチュエータ21は有底略筒状のハウジング22を備えている。電動アクチュエータ21は、ギヤハウジング7(図1参照)の外表面または車両の所定箇所に固定されている。
【0049】
電動アクチュエータ21は、たとえばブラシレス電動モータからなる電動モータ23と、電動モータ23により発生された回転トルク(回転駆動力)を、シフトセレクト軸15を軸まわりに回転させる力に変換するためのシフト変換機構(シフト駆動機構)24と、電動モータ23によって発生させられた回転トルクを、シフトセレクト軸15を第1または第2軸方向M11,M12に移動させる力に変換するためのセレクト変換機構(セレクト駆動機構)25と、電動モータ23によって発生させられた回転トルクをシフト変換機構24および/またはセレクト変換機構25に断続するための切換ユニット26とを備えている。シフト変換機構24、セレクト変換機構25および切換ユニット26はハウジング22内に収容されている。
【0050】
ハウジング22の開口部(図4に示す左側)は、略板状の蓋27によって閉塞されている。このハウジング22および蓋27は、それぞれたとえば鋳鉄やアルミニウムなどの金属材料を用いて形成されており、蓋27の外周がハウジング22の開口部に嵌め合わされている。蓋27にはその内面(図4に示す右面)と外面(図4に示す左面)とを貫通する円形の貫通孔29が形成されている。また、蓋27の外面には、電動モータ23の本体ケーシングが固定されている。電動モータ23は、第1回転方向R11(モータ出力軸側から見て時計まわり。「CW」ともいう。と第2回転方向R12(たとえば逆方向)とに正逆回転可能な電動モータであり、この電動モータ23としてたとえばブラシレス電動モータが採用されている。電動モータ23は、その本体ケーシングがハウジング22外に露出するように取り付けられている。電動モータ23の出力軸40は、シフトセレクト軸15と、食違い角90°の食違い軸の関係をなして配置されている。軸方向M11,M12に沿う方向に直交する所定の方向(図4に示す左右方向)に延びている。出力軸40は蓋27の貫通孔29を介してハウジング22の内部に臨んでおり、切換ユニット26に対向している。
【0051】
図5Aに示すように、ハウジング22は、シフトセレクト軸15における先端(図5Aに示す下端)側の部分や、シフト変換機構24の各構成部品を主に収容する略箱状の主ハウジング22Aを含んでいる。主ハウジング22Aは、第1側壁111と、第2側壁112と、シフトセレクト軸15の基端寄りを支持するための第1の軸ホルダ113と、シフトセレクト軸15の先端部を収容支持するための第2の軸ホルダ114と備えている。
【0052】
第1側壁111の内側の側面は、平坦面からなる第1内壁面111Aである。第2側壁112の内側の側面は、平坦面からなる第2内壁面112Aである。第2内壁面112Aは第1内壁面111Aと対向し、第1内壁面111Aと平行に形成されている。
第1の軸ホルダ113は、第1側壁111の外壁面(第1内壁面111Aとは反対側の面)から外方に膨出して形成されており、たとえば円柱状に形成されている。第1の軸ホルダ113は第1側壁111と一体的に形成されている。第1の軸ホルダ113および第1側壁111には、断面円形の挿通孔104が形成されている。挿通孔104は第1の軸ホルダ113および第1側壁111を、それらの厚み方向(図5Aに示す上下方向)に貫通している。挿通孔104には、シフトセレクト軸15が挿通されている。
【0053】
挿通孔104の内周壁には、第1すべり軸受101が内嵌固定されている。第1すべり軸受101は、挿通孔104に挿通されているシフトセレクト軸15の途中部(先端部よりもやや基端寄り)の外周を取り囲み、シフトセレクト軸15の途中部の外周を摺接支持している。
第2の軸ホルダ114は、第2側壁112の外壁面(第2内壁面112Aとは反対側の面)から外方に膨出して形成されており、たとえば略円筒状に形成されている。第2の軸ホルダ114は第2側壁112と一体的に形成されている。第2の軸ホルダ114の内周面および底面によって、シフトセレクト軸15の先端部(図5Aに示す下端部)を収容する円柱状の先端部収容溝115(図5A参照)が区画されている。先端部収容溝115の内周壁は、円筒状の挿通孔104と同軸の中心軸線を有する円筒状に形成されている。
【0054】
先端部収容溝115の内周壁には、第2すべり軸受102が内嵌固定されている。第2すべり軸受102は、先端部収容溝115に収容されているシフトセレクト軸15の先端部の外周を取り囲んで、当該先端部の外周を摺接支持している。シフトセレクト軸15は、これら第1および第2すべり軸受101,102によって、その中心軸線17まわりに回転可能にかつ軸方向M11,M12移動可能に支持されている。
【0055】
挿通孔104における第1すべり軸受101の外側の部分には、ごみや埃がハウジング22内(主ハウジング22A内)に進入しないように、挿通孔104の内周壁とシフトセレクト軸15の外周との間をシールするためのシール部材103が介装されている。
第1の軸ホルダ113において、厚み方向(図5Aに示す上下方向)に関しシール部材103と第1すべり軸受101との間には、ロックボール106が配設されている。具体的には、挿通孔104の内周壁と、第1の軸ホルダ113の外周面とを貫通する貫通孔105内にロックボール106が収容されている。ロックボール106は、円筒状の先端部収容溝115の中心軸線(すなわちシフトセレクト軸15の中心軸線17)に沿う方向と直交する方向(直交方向)に延び、略円筒状をなすともに、当該方向(直交方向)に沿って移動可能に設けられている。ロックボール106の先端部は半球状をなしており、次に述べる係合溝107に係合する。
【0056】
シフトセレクト軸15の外周には、軸方向M11,M12に間隔を空けて、周方向に延びる複数本(たとえば3本)の係合溝107が形成されている。各係合溝107は全周にわたって設定されている。ロックボール106がその長手方向に移動することにより、先端部が挿通孔104の内周壁よりも中心軸線17側(図5Aに示す右方)に突出して、その先端部が係合溝107と係合して、シフトセレクト軸15の軸方向M11,M12移動を阻止する。これにより、シフトセレクト軸15は、軸方向M11,M12への移動が阻止された状態で、一定力で保持される。
【0057】
図5Aに示すように、シフトセレクト軸15の外周における第1すべり軸受101が摺接する部分と第2すべり軸受102が摺接する部分との間には、雄スプライン121と、ピニオン36が噛み合う後述するラック122とが、第1すべり軸受101側からこの順で形成されている。
図4に示すように、切換ユニット26は、電動モータ23の出力軸40と同軸に連結された伝達軸41と、伝達軸41と同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第1ロータ42と、伝達軸41に同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第2ロータ44と、第1ロータ42と第2ロータ44との間で伝達軸41の連結先を切り換えるためのクラッチ機構39とを備えている。
【0058】
伝達軸41は、電動モータ23側に設けられた小径の主軸部46と、主軸部46の第1ロータ42側の軸方向端部(図4に示す右端部)に、主軸部46と一体的に設けられ、主軸部46よりも大径の大径部47とを備えている。
第1ロータ42は、伝達軸41に対し電動モータ23側と反対側に配置されている。第1ロータ42は、電動モータ23側の軸方向端部(図4に示す左端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第1アーマチュアハブ54を備えている。第1アーマチュアハブ54は大径部47の電動モータ23側と反対側の面(図4に示す右面)に対向して配置されている。
【0059】
第2ロータ44は、伝達軸41の大径部47に対し第1ロータ42と反対側、すなわち電動モータ23側に配置されており、伝達軸41の主軸部46の周囲を取り囲んでいる。第2ロータ44は、電動モータ23側と反対側の軸方向端部(図4に示す右端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第2アーマチュアハブ55を備えている。第2アーマチュアハブ55は大径部47の電動モータ23側の面(図4に示す左面)に対向して配置されている。言い換えれば、第1ロータ42(の第1アーマチュアハブ54)および第2ロータ44(の第2アーマチュアハブ55)が、伝達軸41の大径部47を挟むように配置されている。
【0060】
クラッチ機構39は、第1ロータ42と断続して、伝達軸41と第1ロータ42とを連結/解放するシフト側電磁クラッチ(クラッチ機構)43と、第2ロータ44と断続して、伝達軸41と第2ロータ44とを連結/解放するセレクト側電磁クラッチ(クラッチ機構)45とを備えている。
シフト側電磁クラッチ43は、第1フィールド48と第1アーマチュア49とを備えている。第1アーマチュア49は、伝達軸41の大径部47の軸方向他方側の面(図4に示す右面)に第1アーマチュアハブ54の電動モータ23側の面(図4に示す左面)と微小間隔を隔てて配置されており、略円環板状をなしている。第1アーマチュア49は鉄などの強磁性体を用いて形成されている。第1フィールド48は、ヨーク内に第1電磁コイル50を内蔵しており、ハウジング22に固定されている。
【0061】
セレクト側電磁クラッチ45は、第2フィールド51と、第2アーマチュア52とを備えている。第2アーマチュア52は、伝達軸41の大径部47の軸方向一方側の面(図4に示す左面)に第2アーマチュアハブ55の電動モータ23と反対側の面(図4に示す右面)と微小間隔を隔てて配置されており、略円環板状をなしている。第2アーマチュア52は鉄などの強磁性体を用いて形成されている。第2フィールド51はヨーク内に第2電磁コイル53を内蔵しており、ハウジング22に固定されている。第1フィールド48および第2フィールド51は、大径部47、第1アーマチュアハブ54および第2アーマチュアハブ55を挟んで軸方向に沿って並置されている。
【0062】
シフト側およびセレクト側電磁クラッチ43,45を駆動するためのリレー回路等からなるクラッチ駆動部303(後述する。図5B参照)が接続されている。クラッチ駆動部303には、配線などを介して電源(たとえば24V。図示しない)から電圧供給(給電)されている。クラッチ駆動部303によるシフト側電磁クラッチ43に対する給電により、第1電磁コイル50に通電されると、その第1電磁コイル50が励磁状態になり、第1電磁コイル50を含む第1フィールド48に電磁吸引力が発生する。そして、第1アーマチュア49が第1フィールド48に吸引されて第1フィールド48に向けて変形し、第1アーマチュア49が第1アーマチュアハブ54と摩擦接触する。したがって、第1電磁コイル50への通電により第1電磁コイル50が第1ロータ42に結合(締結)され、伝達軸41が第1ロータ42に連結される。そして、第1電磁コイル50に対する電圧供給が停止され、第1電磁コイル50に電流が流れなくなることにより、第1アーマチュア49に対する吸引力もなくなり、第1アーマチュア49が元の形状に復帰する。これにより、第1電磁コイル50が第1ロータ42から分離して、伝達軸41が第1ロータ42から解放される。つまり、シフト側電磁クラッチ43に対する給電/給電停止を切り換えることにより、電動モータ23から第1ロータ42への回転トルクの伝達を断続させることができる。
【0063】
一方、クラッチ駆動部303によるセレクト側電磁クラッチ45に対する給電により、第2電磁コイル53に通電されると、その第2電磁コイル53が励磁状態になり、第2電磁コイル53を含む第2フィールド51に電磁吸引力が発生する。そして、第2アーマチュア52が第2フィールド51に吸引されて第2フィールド51に向けて変形し、第2アーマチュア52が第2アーマチュアハブ55と摩擦接触する。したがって、第2電磁コイル53への通電により、第2電磁コイル53が第2ロータ44に結合(締結)され、伝達軸41が第2ロータ44に連結される。そして、第2電磁コイル53に対する電圧供給が停止され、第2電磁コイル53に電流が流れなくなることにより、第2アーマチュア52に対する吸引力もなくなり、第2アーマチュア52が元の形状に復帰する。これにより、第2電磁コイル53が第2ロータ44から分離して、伝達軸41が第2ロータ44から解放される。つまり、第2電磁コイル53への給電通電/給電停止を切り換えることにより、電動モータ23から第2ロータ44への回転トルクの伝達を断続させることができる。
【0064】
第2ロータ44の外周には、小径の円環状の第1歯車56が外嵌固定されている。第1歯車56は第2ロータ44と同軸に設けられている。第1歯車56は転がり軸受57によって支持されている。転がり軸受57の外輪は、第1歯車56に内嵌固定されている。転がり軸受57の内輪は、伝達軸41の主軸部46の外周に外嵌固定されている。
シフト変換機構24は、回転運動を直線運動に変換する減速機としてのボールねじ機構58と、このボールねじ機構58のナット59の軸方向移動に伴って、シフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに回動するアーム60とを備えている。
【0065】
ボールねじ機構58は、第1ロータ42と同軸(すなわち伝達軸41と同軸)に延びるねじ軸61と、ねじ軸61にボール(図示しない)を介して螺合するナット59とを備えている。ねじ軸61はシフトセレクト軸15と、食違い角が90°の食違い軸の関係をなしている。言い換えれば、ねじ軸61の軸方向およびシフトセレクト軸15の軸方向M11,M12の双方に直交する方向から見て、ねじ軸61およびシフトセレクト軸15は互いに直交している。
【0066】
ねじ軸61は転がり軸受64,67によって軸方向への移動が規制されつつ支持されている。具体的には、ねじ軸61の一端部(図4に示す左端部)は転がり軸受64によって支持されており、また、ねじ軸61の他端部(図4に示す右端部)は転がり軸受67によって支持されている。これらの転がり軸受64,67により、ねじ軸61がその中心軸線80まわりに回転可能に支持されている。
【0067】
転がり軸受64の内輪は、ねじ軸61の一端部に外嵌固定されている。また、転がり軸受64の外輪は、ハウジング22に固定された切換ユニット26ケーシングの底壁65の内外面を貫通する貫通孔に内嵌されている。また、転がり軸受64の外輪にはロックナット66が係合されて、ねじ軸61の軸方向の他方(図4に示す右方)への移動が規制されている。ねじ軸61の一端部における転がり軸受64よりも電動モータ23側(図4に示す左側)の部分は、第1ロータ42の内周に挿通されて、この第1ロータ42に同伴回転可能に連結されている。転がり軸受67の外輪は、ハウジング22に固定されている。
【0068】
ナット59の一側面(図4に示す手前側側面。図5Aに示す下側側面)、および当該一側面とは反対側の他側面(図4に示す奥側側面。図5Aに示す上側側面)には、それぞれシフトセレクト軸15の軸方向M11,M12に沿う方向(図4の紙面に直交する方向。図5Aに示す上下方向)に延びる円柱状の突出軸70(図4では一方のみ図示。図5Aを並行して参照)が突出形成されている。一対の突出軸70は同軸である。ナット59はアーム60の第1係合部72によって、ねじ軸61まわりの回転が規制されている。したがって、ねじ軸61が回転されると、ねじ軸61の回転に同伴して、ナット59がねじ軸61の軸方向に移動する。なお、図5Aでは、ねじ軸61の軸方向に関し、図4に示すナット59の位置よりも、第1ロータ42に対し離反する方向(図4に示す右方)にナット59が位置するときの断面状態を示している。
【0069】
アーム60は、ナット59に係合するための第1係合部72と、シフトセレクト軸15にスプライン嵌合するための係合部としての第2係合部73(図5A参照)と、第1係合部72と第2係合部73とを接続する直線状の接続ロッド74とを備えている。接続ロッド74は、たとえば、その全長にわたって断面矩形状をなしている。第2係合部73は略円筒状をなし、シフトセレクト軸15に外嵌されている。
【0070】
第1係合部72は互いに対向する一対の支持板部76と、一対の支持板部76の基端辺同士(図4に示す下端辺および図5Aに示す右端辺)を連結する連結板部77とを備え、側面視で略U字状をなしている。各支持板部76には、各突出軸70の外周と、当該突出軸70の回転を許容しつつ係合するU字係合溝78が形成されている。U字係合溝78は前記の基端辺と反対側の先端辺から切り欠かれている。そのため、第1係合部72は、ナット59に、突出軸70まわりに相対回転可能にかつ、ねじ軸61の軸方向に同行移動可能に係合している。また、各U字係合溝78と各突出軸70との係合により、ナット59はアーム60の第1係合部72によってねじ軸61まわりの回転が規制される。したがって、ねじ軸61の回転に伴って、ナット59および第1係合部72がねじ軸61の軸方向に移動する。第2係合部73は、たとえば円環板状をなしている。しかし、第2係合部73が円筒状をなしていてもよい。
【0071】
シフトセレクト軸15の外周と第2係合部73の内周とはスプライン嵌合している。具体的には、第2係合部73の内周に設けられた雌スプライン75に、シフトセレクト軸15の外周に設けられた雄スプライン121が噛み合っている。このとき、雄スプライン121と雌スプライン75との間には噛合いのための隙間が確保されている。
言い換えれば、シフトセレクト軸15の外周には第2係合部73が、当該シフトセレクト軸15に対して相対回転不能にかつ相対軸方向移動が許容された状態で連結されている。したがって、ねじ軸61が回転し、これに伴ってナット59がねじ軸61の軸方向に移動すると、アーム60がシフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに回動し、このアーム60の移動に同伴してシフトセレクト軸15が回転する。
【0072】
セレクト変換機構25は、第1歯車56と、伝達軸41と平行に延び、回転可能に設けられたピニオン軸95と、ピニオン軸95における一端部(図4に示す左端部)寄りの所定位置に同軸に固定された第2歯車81と、ピニオン軸95の他端部(図4に示す右端部)寄りの所定位置に同軸に固定された小径のピニオン36とを備え、全体として減速機を構成している。なお、第2歯車81は、第1歯車56およびピニオン36の双方よりも大径に形成されている。
【0073】
ピニオン軸95の一端部(図4に示す左端部)は、ハウジング22に固定された転がり軸受96によって支持されている。転がり軸受96の内輪は、ピニオン軸95の一端部(図4に示す左端部)に外嵌固定されている。また、転がり軸受96の外輪は、蓋27の内面に形成された円筒状の凹部97内に固定されている。また、ピニオン軸95の他端部(図4に示す右端部)は、転がり軸受84によって支持されている。ピニオン36とラック122とがラックアンドピニオンにより噛み合っているので、伝達軸41の回転に伴ってピニオン軸95が回転すると、これに伴って、シフトセレクト軸15がその軸方向M11,M12に移動する。
【0074】
ピニオン軸95の他端部82(図4に示す右端部)に関連して、ピニオン軸95の回転角を検出するための第1回転角センサ87が配設されている。ハウジング22の底壁(蓋27とは反対側の壁。図4に示す右壁)には、その内外面を貫通するセンサ用孔85が形成されている。第1回転角センサ87は、センサ部(図示しない)と、センサ部に連結された第1センサ軸99とを備えている。第1センサ軸99の先端部は、センサ用孔85を通ってピニオン軸95の他端部82に同伴回転可能に連結されている。ピニオン軸95が回転すると、そのピニオン軸95に同伴して第1センサ軸99がその軸まわりに回転する。第1回転角センサ87は第1センサ軸99の回転角に基づいて、ピニオン軸95の回転角を検出する。
【0075】
また、ハウジング22内には、シフトセレクト軸15の回転角を検出するための第2回転角センサ(軸回転検出手段)89が設けられている。第2回転角センサ89は、センサ部(図示しない)が内蔵された本体90と、本体90のセンサ部に一体回転可能に連結された第2センサ軸94と、第2センサ軸94に外嵌固定されたセクタ歯車91とを備えている。このセクタ歯車91は、シフトセレクト軸15に同伴回転可能に設けられた(外嵌固定された)センサ用歯車92と噛み合っている。シフトセレクト軸15がその軸まわりに回転すると、そのシフトセレクト軸15に同伴してセンサ用歯車92およびセクタ歯車91が回転し、これに伴って第2センサ軸94がその軸まわりに回転する。第2回転角センサ89は、第2センサ軸94の回転角に基づいてシフトセレクト軸15の回転角を検出する。
【0076】
図5Bは、変速駆動装置3の電気的構成を示すブロック図である。
変速駆動装置3は、制御部88を備えている。制御部88の一例としてECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を挙げることができる。
制御部88は、CPU301および記憶部310を含むマイクロコンピュータを備えている。制御部88にはクラッチ駆動部303を介して、シフト側電磁クラッチ43およびセレクト側電磁クラッチ45がそれぞれ制御対象として接続されている。制御部88は、予め記憶されたプログラムに従って、制御対象を駆動制御する。
【0077】
制御部88には、第1回転角センサ87および第2回転角センサ89の検出出力(たとえば検出電圧)がそれぞれ入力されるようになっている。制御部88には、また、車両の変速操作用の操作レバー93の位置情報が入力されるようになっている。さらに、制御部88には、次に述べる電流値検出回路306からの検出出力が入力されるようになっている。
【0078】
制御部88には記憶部310が接続されている。記憶部310は、インターナルレバー16の他端部16bの各シフト位置および各中立位置の位置データ(位置情報)を記憶する位置データ記憶部(位置情報記憶手段)311と、インターナルレバー16が係合溝14A〜14Dの内壁200Aに押し当てられるときの供給電流値の閾値を記憶するための閾値記憶部312とを備えている。電流値検出回路306と閾値記憶部312とによって特許請求の範囲に記載のトルク検出手段が構成されている。
【0079】
位置データ記憶部311は書換え可能なメモリにより構成されている。また、インターナルレバー16の他端部16bの位置は、シフト方向の位置データと、セレクト方向の位置データとによって特定されている。したがって、位置データ記憶部311には、図2にそれぞれ示すR速シフト位置、1速シフト位置、2速シフト位置、3速シフト位置、4速シフト位置、5速シフト位置、6速シフト位置、第1中立位置N1、第2中立位置N2、第3中立位置N3および第4中立位置N4のそれぞれについて、シフト方向の位置データおよびセレクト方向の位置データがそれぞれ記憶されている。
【0080】
CPU(位置情報設定修正手段)301は第1回転角センサ87の検出出力に基づいて、シフトセレクト軸15の軸方向位置を求めることができ、これによりインターナルレバー16の他端部16bのセレクト方向の位置を求めることができるようになっている。また、CPU301は第2回転角センサ89の検出出力に基づいて、シフトセレクト軸15の回転角を求めることができ、これによりインターナルレバー16の他端部16bのセレクト方向の位置を求めることができるようになっている。
【0081】
CPU301は、位置データ記憶部311に記憶されている、他端部16bの各シフト位置および各中立位置N1,N2,N3,N4の位置データに基づいて、電動モータ23、シフト側電磁クラッチ43およびセレクト側電磁クラッチ45の動作内容を決定する。換言すると、CPU301は位置データ記憶部311の位置データに基づいて、インターナルレバー16によるシフト動作およびセレクト動作を制御する。
【0082】
モータ駆動部302は、CPU301によって決定された動作内容に基づいて電動モータ23のロータ部の目標回転数を設定(決定)する目標回転数設定部304と、電動モータ23のロータ部の回転数が目標値となるように出力電流を制御する出力電流制御部305と、電動モータ23をたとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御によって駆動するモータ駆動回路307とを備えている。電動モータ23の回転数は、レゾルバやロータリーエンコーダ等によって構成されるモータ回転数検出部308によって検出される。モータ回転数検出部308によって検出された回転数はフィードバックされ、出力電流制御部305によって供給電流の値が制御される。モータ駆動部302では、モータ駆動回路307に対する供給電流の電流値は、電流値検出回路306によって検出される。電流値検出回路306の検出出力は、制御部88に入力されるようになっている。
【0083】
制御部88は、シフト動作中でないのにシフトセレクト軸15が回転したとき、そのときの第2回転角センサ89の検出出力に基づいてそのシフトセレクト軸15の回転角度量を求めることにより、インターナルレバー16の他端部16bの逆入力による移動量を検出することができる。
以下、1速からR速にシフトダウンさせる場合を例に挙げて説明する。
【0084】
図6は、1速からR速にシフトダウンさせる場合における変速操作制御を示すフローチャートである。また、図7A〜図7Dは、1速からR速にシフトダウンさせる場合における、インターナルレバー16と、シフトヘッド12A,12Bとの間の係合状態を示す図である。図6および図7A〜図7Dを参照して、1速からR速にシフトダウンさせる場合の動作制御について説明する。
【0085】
図6に示すように、1速からR速にシフトダウンさせる場合には、シフト動作(1速→N2)(ステップS1)、セレクト動作(N2→N1)(ステップS2)およびシフト動作(N1→R速)(ステップS3)の各動作がこの順で実行させられる。具体的には、ステップS1のシフト動作(1速→N2)では、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Bおよびフォーク軸10Bが軸方向M3移動させられて(図7A中の白抜矢符E2)、インターナルレバー16の他端部16bが第2中立位置N2に位置させられる(図7B参照)。
【0086】
また、ステップS2のセレクト動作(N2→N1)では、電動アクチュエータ21が駆動されてシフトセレクト軸15がその軸方向M11移動させられることにより(図2中の白抜矢符D1)、インターナルレバー16が軸方向M11移動し、シフトヘッド12Bと離脱してシフトヘッド12Aに係合させられる(第1中立位置N1に位置させられる)。
さらに、ステップS3のシフト動作(N1→R速)では、電動アクチュエータ21が駆動されて、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転方向R2に揺動させられることにより、シフトヘッド12Aおよびフォーク軸10Aが軸方向M1移動させられる(図2中の白抜矢符ER)。インターナルレバー16の他端部16bが前記のR速シフト位置に達するまで電動アクチュエータ21の駆動が続行され、これによりR速へのギヤ入れが達成される。
【0087】
ところで、前述のように、中立位置N1,N2,N3,N4にある状態で、各シフトヘッド12A,12B,12C,12Dは、軸方向M1,M3,M5,M7に関して揃っているのであるが、温度変化や経年劣化等の要因によりあるシフトヘッド12A〜12Dの中立位置N1,N2,N3,N4が所期位置からずれていることがある。たとえば、図7Cに示すように、シフトヘッド12Aの中立位置N1が所期位置からずれている場合、シフトヘッド12Aが中立状態にある他のシフトヘッド12B,12C,12Dと、軸方向M1,M3,M5,M7に関してずれている(揃っていない)。この場合ずれ量がそれほど大きくなければ、インターナルレバー16とシフトヘッド12Aとの間に強いこじりが発生するものの、図7Dに示すようにインターナルレバー16を、第2中立位置N2から第1中立位置N1に向けて移動(セレクト動作)させることができる。
【0088】
しかしながら、この場合、インターナルレバー16の他端部16bが第1中立位置N1が所期位置からずれたシフトヘッド12Aに係合することにより、そのインターナルレバー16も所期の第1中立位置N1からずれるようになる。このように、実際にはインターナルレバー16およびシフトヘッド12Aが第1中立位置N1からずれているのに対し、制御部88は所期の第1中立位置N1にあるもの、つまり、位置データ記憶部311に記憶されている第1中立位置N1の位置データに対応する位置にあるものとみなしている。そのため、制御部88が位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置の位置データに基づいて、インターナルレバー16の他端部16bをR速シフト位置に向けて移動させると、その移動(シフト動作)後の他端部16bが、R速シフト位置に到達しなかったり、当該R速シフト位置を通り過ぎたりするおそれがある。図7Cに示す場合は、中立時におけるシフトヘッド12Aが、所期の第1中立位置N1よりも軸方向M1側に寄せてずれているので、シフト動作後の他端部16bがR速シフト位置を通り過ぎるおそれがある。
【0089】
この実施形態の特徴は、セレクト動作を伴う変速操作に関し、セレクト動作中におけるインターナルレバー16に対する逆入力による他端部16bのシフト方向の移動量(シフトセレクト軸15の回転移動量)を求め、当該セレクト動作後のシフト動作時において、その移動量に基づいて、変速先のシフト位置の位置データ等を修正するようにした点である。
【0090】
以下、1速からR速にシフトダウンさせる場合、すなわち、変速先のシフト位置がR速シフト位置である場合を例に挙げて説明する。具体的には、セレクト動作(N2→N1)時に、当該セレクト動作(N2→N1)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量(シフトセレクト軸15の回転移動量)を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N1→R速)時にR速シフト位置および第1中立位置N1の位置データを修正するようにしている。
【0091】
図8は、セレクト動作(N2→N1)の変速操作制御を示すフローチャートである。
セレクト動作(N2→N1)に先立って、制御部88は、第2回転角センサ89の検出出力を参照する(ステップS11)。その後セレクト動作(N2→N1)が実行される(ステップS12)。セレクト動作(N2→N1)では、制御部88は、セレクト側電磁クラッチ45を接続状態にしかつシフト側電磁クラッチ43を切断状態にしつつ、電動モータ23を回転方向R11に所定回転量だけ回転させる。このときの電動モータ23の回転量は、位置データ記憶部311に記憶されている第2中立位置N2および第1中立位置N1の位置データ(セレクト方向の位置データ)に従って決定される。決定された回転量だけ電動モータ23を回転させた後、制御部88は電動モータ23の回転を停止させる。これにより、セレクト動作(N2→N1)が終了する。セレクト動作(N2→N1)の終了後、制御部88は、第2回転角センサ89の検出出力を参照する(ステップS13)。
【0092】
制御部88は、セレクト動作前後の検出出力を差分し(ステップS14)、検出出力に差分値がある場合には(ステップS15でYES)、記憶部310に記憶される補正実行フラグの値を「1」に設定する(ステップS16)。一方、検出出力に差分値がない場合には(ステップS15でNO)、記憶部310に記憶される補正実行フラグの値は更新されず、たとえば「0」のままである。その後、セレクト動作(N2→N1)は終了する。
【0093】
図9は、シフト動作(N1→R速)の変速操作制御を示すフローチャートである。
シフト動作時には、制御部88は、インターナルレバー16をシフトヘッド12Aの内壁200Aに押し当てるために、制御部88は、シフト側電磁クラッチ43を接続状態にしかつセレクト側電磁クラッチ45を切断状態にしつつ、電動モータ23を回転方向R11またはR12に向けて回転駆動させるとともにしばらくした後回転駆動を停止させる(ステップS21)。
【0094】
このとき、インターナルレバー16とシフトヘッド12Aとが完全な状態で係合していると、インターナルレバー16の他端部16bがシフトヘッド12Aの内壁200Aに押し当てられる。インターナルレバー16が押し当てられる過程で、インターナルレバー16に作用するトルク量が急激に増大し、これに伴って電動モータ23に作用する負荷トルク量が急激に増大する。このとき、電動モータ23に作用する負荷トルク量が増大すると、供給電流値の値が増加する。そのため、制御部88は、電動モータ23に対する供給電流値の増加に基づいてインターナルレバー16のシフトヘッド12Aの内壁200Aへの係合状態を検出することができる。
【0095】
電動モータ23の回転駆動中に、制御部88(CPU301)は供給電流値検出回路306を用いて供給電流値を参照する(ステップS22)。このとき、供給電流値の値が記憶部(図示しない)に記憶されている閾値を外れる(閾値よりも大きくなる)ことにより(ステップS23でYES)、インターナルレバー16がシフトヘッド12Aの内壁200Aに押し当てられている、すなわち、インターナルレバー16とシフトヘッド12Aとが完全な状態で係合していることを検出することができる。一方、供給電流値の値が閾値記憶部312に記憶されている閾値内(閾値未満)にあるときは(ステップS23でNO)、当該供給電流値が閾値を外れる(閾値よりも大きくなる)まで(ステップS23でYES)、ステップS21およびステップS22を繰り返す。
【0096】
供給電流値が閾値を外れた後(ステップS23でYES)は、補正実行フラグ(図示しない)の値に応じて取扱いが異なる。すなわち、補正実行フラグの値が「1」である場合には(ステップS24でYES)、補正実行フラグを「0」に戻した後、位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置および第1中立位置N1のシフト方向の位置データを、シフトヘッド12Aの第1中立位置N1のずれを考慮した位置データに書き換える。そのため、修正後の位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置の位置データは、軸方向M1,M3,M5,M7に関し、他のシフトヘッド12B,12C,12Dの中立位置N2,N3,N4に揃う場合の第1中立位置Nを基準とした位置データである。また、修正後の位置データ記憶部311に記憶されている第1中立位置N1の位置データは、軸方向M1,M3,M5,M7に関し、他のシフトヘッド12B,12C,12Dの中立位置N2,N3,N4に揃う場合の第1中立位置Nの位置データである。
【0097】
その後、電動モータ23の回転を続行し、インターナルレバー16の他端部16bおよびシフトヘッド12Aが、位置データ記憶部311に記憶されている、修正後の第1中立位置N1およびR速シフト位置の位置データ(シフト方向の位置データ)に従って移動制御された後(ステップS28でYES)、電動モータ23の回転は停止される。
以上により、インターナルレバー16によるセレクト動作により、第2中立位置N2にあるシフトヘッド12Bから、第1中立位置N1にあるシフトヘッド12Aに向けてインターナルレバー16の他端部16bが移動させられる。このとき、移動先のシフトヘッド12Aの第1中立位置N1が所期位置からずれていると、他端部16bによるセレクト動作に伴って、シフトヘッド12Aのずれ量に応じた大きさの逆入力が他端部16bに生じてシフトセレクト軸15が回転する。そのため、(第1中立位置N1にある)シフトヘッド12Aのずれ量は、逆入力によるシフトセレクト軸15の回転角度量に対応している。また、シフトセレクト軸15の回転角が第2回転角センサ89により検出される。
【0098】
セレクト動作中におけるシフトセレクト軸15の回転角度量に基づいて、R速シフト位置の位置情報および第1中立位置N1の位置情報の設定を、それぞれ所期のR速シフト位置および第1中立位置N1になるように修正することができる。
したがって、シフトヘッド12Aの第1中立位置N1にずれが生じた場合であっても、位置データ記憶部311に記憶されているR速シフト位置の位置データおよび第1中立位置N1の位置データを、そのずれ量に応じて修正することができ、その後のシフト動作を良好に行わせることができる。
【0099】
また、電動モータ23の負荷トルク量の変化に基づいて、インターナルレバー16が係合溝14Aの内壁200Aに押し当てられた状態であることを検出することができ、このときのインターナルレバー16の位置を基準として、R速シフト位置の位置情報および第1中立位置N1の位置情報の設定の修正を行うことができる。インターナルレバー16が係合溝14Aの内壁200Aに押し当てられた状態であることを、容易にかつ高精度に検出することができ、これにより、R速シフト位置の位置情報および第1中立位置N1の位置情報の修正を良好に行うことができる。
【0100】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、インターナルレバー16の位置データの修正を、1速からR速にシフトダウンさせる場合を例に挙げて説明したが、R速から1速にシフトアップさせる場合にも、この発明のようなインターナルレバー16の位置データの修正を行うようにしてもよい。この場合には、セレクト動作(N1→N2)時に、当該セレクト動作(N1→N2)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N2→1速)時に1速シフト位置、2速シフト位置および第2中立位置N2の位置データを修正することができる。
【0101】
また、この発明を、2速と3速との間の変速に適用することもできる。3速から2速にシフトダウンさせる場合には、セレクト動作(N3→N2)時に、当該セレクト動作(N3→N2)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N2→2速)時に1速シフト位置、2速シフト位置および第2中立位置N2の位置データを修正することができる。また、2速から3速にシフトアップさせる場合には、セレクト動作(N2→N3)時に、当該セレクト動作(N2→N3)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N3→3速)時に3速シフト位置、4速シフト位置および第3中立位置N3の位置データを修正することができる。
【0102】
さらに、この発明を、4速と5速との間の変速に適用することもできる。5速から4速にシフトダウンさせる場合には、セレクト動作(N4→N3)時に、当該セレクト動作(N4→N3)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N3→4速)時に3速シフト位置、4速シフト位置および第3中立位置N3の位置データを修正することができる。また、4速から5速にシフトアップさせる場合には、セレクト動作(N3→N4)時に、当該セレクト動作(N3→N4)中におけるインターナルレバー16の他端部16bのシフト方向の移動量を求め、その移動量に基づいて、シフト動作(N4→5速)時に5速シフト位置、6速シフト位置および第4中立位置N4の位置データを修正することができる。
【0103】
なお、修正の対象になるインターナルレバー16の位置情報として、各シフト位置および各中立位置の位置データである場合を例に挙げて説明したが、中立位置N1,N2,N3,N4から所定のシフト位置までの移動距離データが記憶されており、移動距離データが修正されるようにされていてもよい。
また、たとえば、シフト位置の配置構成を、他の態様としてもよいのは言うまでもない。そしてシフト位置の配置構成に応じて、シフトヘッド12A〜12Dの個数を変更させることができるのも言うまでもない。
【0104】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0105】
2…変速機、3…変速駆動装置、10A〜10D…フォーク軸、12A〜12D…シフトヘッド、15…シフトセレクト軸、16…インターナルレバー(シフトレバー)、23…電動モータ、24…シフト変換機構(シフト駆動機構)、25…セレクト変換機構(セレクト駆動機構)、43…シフト側電磁クラッチ(クラッチ機構)、45…セレクト側電磁クラッチ(クラッチ機構)、89…第2回転角センサ(軸回転検出手段)、311…位置データ記憶部(位置情報記憶手段)、301…CPU(位置情報設定修正手段)、14A〜14D…係合溝、306…電流値検出回路(トルク検出手段)、312…閾値記憶部(トルク検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフォーク軸と、各フォーク軸に固定されたシフトヘッドとを有する変速機を駆動するための変速駆動装置であって、
前記シフトヘッドと係合するためのシフトレバーが連結された軸状体であり、軸まわりに回転することによって前記シフトレバーをシフト動作させ、軸方向に向けて移動させることによって前記シフトレバーをセレクト動作させるシフトセレクト軸と、
回転駆動力を発生させるための単一の電動モータと、
前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸まわりに回転させるシフト駆動機構と、
前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸方向に向けて移動させるセレクト駆動機構と、
前記電動モータから回転駆動力の伝達先を、前記シフト駆動機構と前記セレクト駆動機構とで選択的に切り換えるクラッチ機構と、
前記シフトセレクト軸の回転角を検出するための軸回転検出手段と、
前記シフトレバーが前記シフトヘッドに係合するときの位置情報を、各シフトヘッドに対応して記憶する位置情報記憶手段と、
前記セレクト駆動機構の駆動中における前記シフトセレクト軸の回転角度量に基づいて、前記位置情報記憶手段に記憶されている、各シフトヘッドに対応する前記位置情報の設定を修正する位置情報設定修正手段とを含む、変速駆動装置。
【請求項2】
前記変速機は、複数の前記シフトヘッドに跨って形成され、前記シフトレバーの少なくとも一部を収容し、当該シフトレバーに係合する係合溝をさらに有し、
前記変速駆動装置は、前記シフトレバーに作用するトルクを検出するトルク検出手段をさらに含み、
前記位置情報設定修正手段は、前記シフトレバーに予め定める大きさ以上のトルクが作用したときの当該シフトレバーの位置を基準として、前記位置情報の設定を修正する、請求項1記載の変速駆動装置。
【請求項1】
複数のフォーク軸と、各フォーク軸に固定されたシフトヘッドとを有する変速機を駆動するための変速駆動装置であって、
前記シフトヘッドと係合するためのシフトレバーが連結された軸状体であり、軸まわりに回転することによって前記シフトレバーをシフト動作させ、軸方向に向けて移動させることによって前記シフトレバーをセレクト動作させるシフトセレクト軸と、
回転駆動力を発生させるための単一の電動モータと、
前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸まわりに回転させるシフト駆動機構と、
前記電動モータからの回転駆動力を受けて、前記シフトセレクト軸を軸方向に向けて移動させるセレクト駆動機構と、
前記電動モータから回転駆動力の伝達先を、前記シフト駆動機構と前記セレクト駆動機構とで選択的に切り換えるクラッチ機構と、
前記シフトセレクト軸の回転角を検出するための軸回転検出手段と、
前記シフトレバーが前記シフトヘッドに係合するときの位置情報を、各シフトヘッドに対応して記憶する位置情報記憶手段と、
前記セレクト駆動機構の駆動中における前記シフトセレクト軸の回転角度量に基づいて、前記位置情報記憶手段に記憶されている、各シフトヘッドに対応する前記位置情報の設定を修正する位置情報設定修正手段とを含む、変速駆動装置。
【請求項2】
前記変速機は、複数の前記シフトヘッドに跨って形成され、前記シフトレバーの少なくとも一部を収容し、当該シフトレバーに係合する係合溝をさらに有し、
前記変速駆動装置は、前記シフトレバーに作用するトルクを検出するトルク検出手段をさらに含み、
前記位置情報設定修正手段は、前記シフトレバーに予め定める大きさ以上のトルクが作用したときの当該シフトレバーの位置を基準として、前記位置情報の設定を修正する、請求項1記載の変速駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−100857(P2013−100857A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244478(P2011−244478)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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