説明

夏物スーツ

【課題】きれいなシルエットをもった袖山を形成し、かつ、通気性が良好な夏物スーツを提供する。
【解決手段】袖裏の裏地のない夏物スーツ10において、、第一に、肩パット26の芯材24を無膜ポリウレタンフォームとし、この芯材24を、20〜30メッシュでからめ織りした布で包んでなり、第二に、垂れ綿の芯材17を、20〜30メッシュでからめ織りした布をバイアス状に配置し、この芯材をバイアス状に配置した薄布18で包み込んでなる構成としたものである。また、上記肩パット26は、肩にのる部分から肩の両側および袖刳りに向けて次第に薄く成形し、垂れ綿の芯材17は、その中心部分で複数枚重ね合わせ、周辺に向けて次第に枚数を減らしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は裏地のない夏物スーツに関する。
【背景技術】
【0002】
夏物スーツの袖山の形状が滑らかな形状を画くようした先行技術として特許文献1,2に挙げるものがある。また、図6に示すように一般的なスーツ10の袖11と袖山12の形状は、肩パット30や垂れ綿14は袖の裏地13に包まれて外部から見えない状態である。
【0003】
また、外部から見えない状態であることもあって、従来の垂れ綿14は図5に示すように25〜30メッシュ程度に織製した芯材15を、袖山の中心では二枚重ねにし、周辺を一枚にして、さらにこれにフェルト16を重ねたものを裸のまま用いていた。
【0004】
また、肩パット30は図8に示す如く、強撚りの糸を30メッシュ程度に織製した芯材31の上下にフェルト32を重ね表面に薄布33を被せミシンで押えたものを採用してきた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−157907号公報(要約および選択図)
【0006】
【特許文献2】特開平9−217215号公報(要約および選択図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記二つの先行技術は、いずれも夏物スーツにおいて肩パットの縁がスーツの表に現れるのを防止するものである。
【0008】
一方、地球温暖化現象のもとで夏物衣料を可能な限り薄くし、かぜ通しのよいものとする傾向が強く、袖全体に裏地のないスーツが求められており、これに応えて袖の裏地のないスーツを試作したが、肩パットや垂れ綿のシルエットがスーツの表面に現れて見栄えのわるいものとなった。
【0009】
また、肩パットとして使われてきた従来の素材では通気性が悪く、熱がこもって夏物衣料として好ましいものとはいえなかった。
【0010】
上記状況に鑑みこの発明は、袖の裏地をなくして従来の夏ものスーツより一層通気性をよくして清涼感を高め、かつ、袖山の外形形状をなめらかなものとして高級感あふれる夏物スーツを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためにこの発明は、第一に、肩パットの芯材を無膜ポリウレタンフォームとし、この芯材を、20〜30メッシュでからめ織りした布で包んでなり、第二に、垂れ綿の芯材を、20〜30メッシュでからめ織りした布をバイアス状に配置し、この芯材をバイアス状に配置した薄布で包み込んでなる構成としたものである。また、上記肩パットは、肩にのる部分から肩の両側および袖刳りに向けて次第に薄く成形し、垂れ綿の芯材は、その中心部分で複数枚重ね合わせ、周辺に向けて次第に枚数を減らしてなる。
【発明の効果】
【0012】
上記の如く構成するこの発明によれば、肩パットに上記素材を採用したので熱がこもらず清涼感がよくなり、垂れ綿の芯材を上記の如く特定して、この芯材を薄布で包み込むようにしたので、シルエットが滑らかになり高級感が得られ、商品をハンガーに掛けて陳列したときも表に皺が現れず丁寧な縫製による夏物スーツとしての評価を得られるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次にこの発明の実施の形態を、図1乃至図4を参照しながら説明する。図2に示すように、本発明では袖の裏地がなく、肩パット26は、図4に示すように、芯材24を無膜ポリウレタンフォームとし、この芯材24を、経糸を綿100%、緯糸をウールとレーヨンとの混紡糸として、20〜30メッシュでからめ織りした布25で包んでいる。
【0014】
ここで、からめ織りとは、経糸を二本宛密にし、その経糸交差させ、それに緯糸を打ち込んで織製したものである。
【0015】
上記肩パット26は、図4(b)に示すように、無膜ポリウレタンフォームの芯材24の縁が一番内側にあり、これを包む片面の布25bの縁がその外側に、他面の布25aの縁がさらに外側になるようにしている。
【0016】
上記無膜ポリウレタンフォームの芯材24は、図4(b)のように肩にのる部分から肩の両側および袖刳り部分に向けて次第に薄く成形し、公知の無膜処理を施して骨格のみを残したもので、1インチ当りのセルの数が13〜20個(JISK6400)あるものが実用的である。
【0017】
袖山12に挿入される垂れ綿14は図1に示すように、経糸を綿100%、緯糸をウールとレーヨンとの混紡糸を用いて20〜30メッシュにからめ織りした布を芯材17とし、中心部分を二枚重ね17a、17bにし、周辺を一枚17bにし、この芯材17をローンスレーキ18で包み込むように縫製し、これを袖山12に縫い合わせている。なお、上記垂れ綿が袖山に縫いつけられた状態を滑らかにするために、上記芯材17、ローンスレーキ18とも織目がバイアス状に配置している。
【0018】
上記実施例では垂れ綿14の芯材17は二枚を重ねただけであるが、三枚またはそれ以上重ねても良いが、その場合中心部分から周辺に向けて順に重ね枚数を少なくして段が付かずなだらかな傾斜にする。
【0019】
上袖20と下袖21の生地を縫い合わせた縁をバイアステープで押え縫いし、袖口23のカフス側の縫い合わせ部分を折り返し縫い合わせる。このような縫い方にすることによって着衣の際の抵抗が少なくその部分の摩滅損傷を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上説明したようにこの発明によれば裏地のない夏物スーツでありながら袖山の部分のシルエットが滑らかで着衣状態、ハンガーに掛けて陳列した状態ともに高い技術で縫製されたものとして見られ、また、袖裏の裏地をなくし袖山の形成材を特定の素材とすることにより、より涼しく着衣することが出来るようになって省エネルギー効果とともに産業状利用価値の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る垂れ綿の部分剥ぎ取り平面図
【図2】同垂れ綿を縫い付けた状態の袖山部詳細図
【図3】同カフス側袖口(裏面)詳細図
【図4】同肩パットの(a)平面図、(b)A−A断面図
【図5】従来の垂れ綿の平面図
【図6】従来の垂れ綿を縫い付けた状態の袖山部詳細図
【図7】従来のカフス側袖口(裏面)詳細図
【図8】従来の肩パットの平面図
【符号の説明】
【0022】
10 スーツ
11 袖
12 袖山
13 裏地
14 垂れ綿
15 芯材(従来例の)
16 フェルト(従来例の)
17 芯材(本発明の)
18 ローンスレーキ(薄布)
20 上袖
21 下袖
22 バイアステープ
23 袖口
24 芯材(無膜ポリウレタンフォーム)
25 布
26 肩パット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袖裏も含めて裏地のない夏物スーツにおいて、肩パットを下記1の構成とし、袖山部の垂れ綿を下記2の構成としたことを特徴とする夏物スーツ。

1 芯材(24)を無膜ポリウレタンフォームとし、この芯材(24)を、20〜30メッシュでからめ織りした布(25)で包んでなる。
2 芯材(17)を、20〜30メッシュでからめ織りした布をバイアス状に配置し、芯材(17)を、バイアス状に配置した薄布(18)で包み込んでなる。
【請求項2】
上記肩パット(26)は、肩にのる部分から肩の両側および袖刳りに向けて次第に薄く成形し、垂れ綿の芯材(17)は、その中心部分で複数枚重ね合わせ、周辺に向けて次第に枚数を減らしてなることを特徴とする請求項1に記載の夏物スーツ。
【請求項3】
上記肩パット(26)の芯材(24)を包む布と垂れ綿の芯材(17)は、経糸を綿100%、緯糸をウールとレーヨンとの混紡糸としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の夏物スーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−131972(P2007−131972A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325528(P2005−325528)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(399027255)株式会社リオンドール (3)
【Fターム(参考)】