説明

外分泌障害を処置するための医薬

【課題】 外分泌障害を処置するために有効な医薬を提供することを目的とする。
【解決手段】 ケトン体(好ましくはβ−ヒドロキシ酪酸)または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む、外分泌障害(好ましくはドライマウスおよび/または唾液分泌障害)を処置するための医薬が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外分泌障害を処置するための医薬に関し、特に、ドライマウスおよび/または唾液分泌障害を処置するための医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
外分泌とは、腺細胞から直接、または導管等を通じて体表面もしくは管腔内に出される分泌物をいう。涙液および唾液が典型的な外分泌であり、鼻粘膜および気道粘膜からの分泌、胃または腸からの分泌、膣からの分泌、汗等も含まれる。外分泌の障害から生じる疾患としては、「ドライアイ」(眼乾燥症)、「ドライマウス」(口腔乾燥症)、「ドライノーズ」(鼻乾燥症)、「ドライスキン」(皮膚乾燥症)および「ドライバジャイナ」(膣乾燥症)等の乾燥症状、および外分泌の低下による慢性膵炎、慢性胃炎および慢性気管支炎等の、体の種々の部分の乾燥が挙げられる。
【0003】
特に、唾液分泌障害と関連する疾患として、ドライマウス(口腔乾燥症)が挙げられる。ドライマウスは、何らかの原因によって唾液の分泌が減少することにより、唇や口腔が乾燥し、口渇感、口腔粘膜乾燥、灼熱感、咀嚼障害、嚥下障害等の様々な障害を引起こす他、口腔内に食物のかすが残存し易いので虫歯の増殖を招く等の弊害もある。ドライマウスの原因は不明のものも含め様々であるが、その治療法としては、一日中液体を少しずつ飲む方法、チューインガム等を噛む方法、人工唾液を使用する方法等の対処療法が行われているに過ぎず(非特許文献1:Lancet 366:321-331 2005)、唾液分泌の減少を改善するための抜本的な治療の確立が切望されている。
【0004】
なお、D−β−ヒドロキシ酪酸はケトン体の一種であり、饑餓状態など人体が糖をエネルギーとして利用できない場合の代替エネルギー源である。D−β−ヒドロキシ酪酸を投与することで、パーキンソン病のモデルマウスにおいて、細胞内のミトコンドリアのATP産生能が活性化され、これにより神経が変性から保護されることが報告されている(非特許文献2:J Clin Invest 112:892-901 2003)。また、D−β−ヒドロキシ酪酸水溶液を点眼することで、角膜上皮におけるアポトーシスを抑制することができることが報告されている(非特許文献3:Invest Ophthalmol Vis Sci 44:4682-4688 2003)。
【0005】
【非特許文献1】Lancet 366:321-331 2005
【非特許文献2】J Clin Invest 112:892-901 2003
【非特許文献3】Invest Ophthalmol Vis Sci 44:4682-4688 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、外分泌障害を処置するために有効な医薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ケトン体の有する組織損傷を抑える作用が、口腔領域でも粘膜や唾液腺組織の病態の改善につながると考え、これを検討した。この結果、本発明者等により、驚くべきことに、ケトン体またはその塩が、外分泌障害を改善する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一の側面によると、ケトン体または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む、外分泌障害を処置するための医薬が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以下に詳細に説明するように、本発明によると、外分泌障害を治療するために有効な医薬が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。もっとも、以下の記載は、本発明を具体的に説明するためのものであって、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【0010】
上記したように、本発明の一の側面によると、外分泌障害を処置するための医薬が提供される。また、本発明の他の側面によると、外分泌障害を患う被検体において、外分泌障害を処置する方法が提供される。また、本発明の他の側面によると、外分泌障害を処置するための医薬を製造するための、ケトン体の使用が提供される。
【0011】
本発明にかかる医薬は、ケトン体または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む。なお、ケトン体は、アセトン、アセト酢酸およびβ−ヒドロキシ酪酸の総称である。特に、ケトン体がβ−ヒドロキシ酪酸(HBA)であることが好ましく、β−ヒドロキシ酪酸がD−β−ヒドロキシ酪酸であることがさらに好ましい。
【0012】
薬学的に許容される塩は、慣用される非毒性の塩であることが好ましい。具体的には、薬学的に許容される塩として、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩が挙げられる。また、薬学的に許容される塩として、有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、リジン塩、プロカイン塩、およびカフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0013】
ケトン体または薬学的に許容されるその塩は、商業的に入手することもでき、また、公知の任意の方法で調製することもできる(例えばInvest Ophthalmol Vis Sci 44: 4682-4688 2003参照)。
【0014】
本発明にかかる医薬は、外分泌障害を患うヒト、マウスを含む哺乳動物の被検体に用いることができる。外分泌障害とは、何らかの原因により引き起こされる外分泌の異常(低下または停止)意味する。具体的には、外分泌障害として、口腔内粘膜、膣粘膜、肺粘膜、鼻粘膜等の粘膜における外分泌障害が挙げられる。特に、外分泌障害として、唾液分泌障害、涙液分泌障害およびドライマウス、ドライスキン、ドライアイ、ドライノーズ、ドライバジャイナが挙げられる。ドライマウスおよび/または唾液分泌障害は、のどが渇く症状またはのどがざらざらする症状であってもよい。
【0015】
なお、ドライマウス等の外分泌障害が認められる全身性の要因として、風邪、熱性疾患、脱水症、内分泌異常(粘液水腫、バセドー病、尿崩症等)、代謝障害(糖尿病、尿毒症、肝硬変等)、ビタミンA,B欠乏症、自己免疫疾患(シェーグレン症候群、進行性強皮症等)、高血圧症、腎疾患、貧血、出血、加齢、閉経、薬物(鎮静剤、副交感神経遮断剤、抗ヒスタミン剤等)等が挙げられる。また、ドライマウス等の外分泌障害が認められる局所的な要因として、唾液腺炎、唾液腺萎縮(加齢によるものも含む)、放射腺処置の副作用、先天異常(外胚葉形成異常等)、唾液腺関連の神経系統の障害等が挙げられる。本発明にかかる医薬は、これらの少なくとも1に関連する(例えば起因する)外分泌障害を処置するために用いることができる。
【0016】
なお、本明細書において、「処置」は、あらゆる態様において症状を制御することを含み、具体的には、予防、治療、症状の軽減、症状の減退、進行停止等を含む。
【0017】
本発明にかかる医薬は、処置に有効な量のケトン体または薬学的に許容されるその塩を含む。有効量は、対象とする疾患およびその症状、被検体(患者)の年齢、体重、投与形態(投与経路、剤型を含む)、処置期間、所望の治療効果等に応じて、適宜決定することができる。一般的には、有効量は、0.01g/日〜2g/日とすることが好ましく、0.11g/日〜0.21g/日とすることが特に好ましい。
【0018】
本発明にかかる医薬は、経口投与、口腔内等の疾患部位への局所投与、静脈内投与を含む任意の投与経路により被検体(患者)に投与することができる。特に、本発明にかかる医薬は、ドライマウスおよび/または唾液分泌障害に適応する場合、口腔内局所投与により投与することが好ましい。投与経路に応じて、本発明にかかる医薬は、任意の剤型を採ることができる。特に、本発明にかかる医薬は、ドライマウスおよび/または唾液分泌障害に適応する場合、口腔内局所投与に適した剤型であることが好ましい。より具体的には、本発明にかかる医薬は、例えば舌下剤、トローチ剤、チューインガム剤、うがい剤、スプレー剤、軟膏剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、注射剤等とすることができる。これらの各剤形への製剤化は、公知の種々の方法により行うことができる。
【0019】
本発明にかかる医薬は、投与経路や剤型に応じて、有効成分に加えて、薬学的に許容される種々の添加剤を含んでもよい。添加剤は、賦形剤、担体、希釈剤、増量剤、溶剤、潤滑剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基材、座薬用基材、エアゾール材、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、コーティング剤、安定剤および機能性剤を含む。当業者であれば、剤型等に応じて、これらの添加物を公知の材料から適宜選択することができる。
【0020】
なお、ケトン体または薬学的に許容されるその塩は、処置に有効な量において、細胞毒性を示さないことが知られている。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、以下の記載は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【0022】
[実験例1−1:ドライマウスの治療におけるD−β−ヒドロキシ酪酸の有用性]
〔対象〕
鶴見大学歯学部付属病院ドライマウス専門外来を受診したドライマウス患者7名と健常者4名を対象とした。ドライマウス患者は男性が1名、女性が6名で平均年齢は57.4+/−15.4歳であった。健常者は女性が4名で平均年齢は59.8+/−12.5歳であった。ドライマウス患者の刺激時唾液量は平均で0.47+/−0.32gであり、健常者は3.00+/−1.22gであった。
【0023】
〔方法〕
2週間にわたって、D−β−ヒドロキシ酪酸の3重量%水溶液を1日に5回口腔に噴霧により投与し、投与前後の口腔乾燥感の自覚症状、口腔粘膜の水分含量および唾液分泌量の変化を評価した。1回の投与量は0.6mLとした。口腔乾燥感の自覚症状は、VAS(Visual analog scale)を用いて、全く口腔乾燥感がない状態を0、ひどくて我慢できない状況を100と評価した。口腔粘膜の水分含量は、頬粘膜におけるモイスチャーチェッカー・ムーカス(MCM)(ライフ株式会社製)の値で評価した。MCMの測定部位は,右口角より10mm後方の頬粘膜とし、プローブを200g/cm2で適用した。プローブが口腔粘膜に直接接触しないように厚さ12μmのセンサーカバーを全例に使用した。測定は3回行いその平均値を算出した。唾液分泌量の測定にはサクソンテストを用いた。5x5cmのガーゼを2分間咀嚼し咀嚼前後のガーゼの重量の差を唾液分泌量として計測した。
【0024】
〔結果〕
(1.口腔乾燥感の自覚症状)
図1に、健常者群およびドライマウス患者群におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後の口腔乾燥感(VAS)の変化を示す。図1に示すように、健常者群において、口腔乾燥感のVAS平均値は投与前64.0+/−43.2であり、投与後は62.5+/−43.9に変化した。ドライマウス患者群においては、この値は、投与前85.0+/−20.2であり、投与後80.4+/−21.0であった。健常者群と比較しドライマウス群は高いVASの値を示す傾向が認められた。また、各群において、D−β−ヒドロキシ酪酸の投与後にVAS平均値が低下した。
【0025】
(2.口腔粘膜の水分含量)
図2に、健常者群およびドライマウス患者群におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後のMCMの平均値の変化を示す。図2に示すように、健常者群において、MCMの値の平均値は、投与前29.8+/−9.1であり、投与後は31.4+/−8.2に変化した。ドライマウス患者群においては、この値は、投与前31.5.+/−5.1であり、投与後は36.2+/−1.9と変化した。このように、ドライマウス患者群において、D−β−ヒドロキシ酪酸の投与により、MCM値が増加する傾向が認められた。図4(a)に、各症例(ドライマウス患者および健常者)におけるD−β−ヒドロキシ酪酸投与前後のMCMの値の変化を示す。
【0026】
(3.刺激時唾液分泌量)
図3に、健常者群およびドライマウス患者群におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後の刺激時唾液分泌量の変化を示す。図3に示すように、健常者群において、刺激時唾液分泌量の平均値は、投与前3.00+/−1.22gであり、投与後は3.16+/−1.08gに変化した。ドライマウス患者群においては、この値は、投与前0.47+/−0.32gであり、投与後は1.19+/−1.35gと変化した。このように、ドライマウス患者群において、D−β−ヒドロキシ酪酸の投与により、唾液分泌量が増加する傾向が認められた。図4(b)に、各症例(ドライマウス患者および健常者)におけるD−β−ヒドロキシ酪酸投与前後の刺激時唾液分泌量の変化を示す。
【0027】
〔考察〕
以上の結果から、D−β−ヒドロキシ酪酸を投与することにより、ドライマウス患者群において口腔粘膜の水分含量と刺激時唾液量が増加することが認められた。ここから、β−ヒドロキシ酪酸が、ドライマウスおよび/または唾液分泌障害の処置に有効であることが分かる。
【0028】
[実験例1−2:ドライマウスの治療におけるD−β−ヒドロキシ酪酸の有用性]
結果を検証する目的で、症例を追加して、上記実験例1−1と同様の方法で、サクソンテストにより唾液分泌量を測定した。図5に、追加症例も含めた健常者群9名およびドライマウス患者群12名におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後の刺激時唾液分泌量の変化を示す。この結果、上記と同様に、ドライマウス患者群において、D−β−ヒドロキシ酪酸の投与により、唾液分泌量が増加する傾向が認められた。
【0029】
[実験例2:ヒト唾液腺細胞(HSY)のATP産生能へのD−β−ヒドロキシ酪酸の影響]
〔方法〕
ヒト唾液腺細胞(HSY)のATP産生能へのD−β−ヒドロキシ酪酸の影響を検証した。D−β−ヒドロキシ酪酸の存在下(1,5,20mM)および非存在下(0mM)で細胞内のATP活性を測定した。ATP活性はATPliteキット(PerkinElmer)を用いて、当該キットに添付の取扱説明書に準じて行った。各細胞を1x104/100μLずつ96ウェルプレートに撒き、播種の24時間後に50μLの哺乳動物細胞溶解液(mammalian cell lysis solution)を加えて細胞を溶解した後、50μLの基質液(substrate solution)を加え10分後に各ウェルの蛍光強度を測定した。D−β−ヒドロキシ酪酸の添加は、哺乳動物細胞溶解液を加える2.5分前、5分前、10分前または15分前に行った。
【0030】
〔結果〕
図6に、ヒト唾液腺細胞(HSY)におけるD−β−ヒドロキシ酪酸によるATP活性の変化を示す。コントロール(0mM)と比較し、2.5分間のD−β−ヒドロキシ酪酸の添加により、各濃度で高いATP活性が認められた。
【0031】
〔考察〕
この結果から、D−β−ヒドロキシ酪酸は短時間の添加で細胞のATP産生を促進する作用を持つことが示唆された。唾液腺上皮細胞のATP産生能の亢進は唾液の分泌促進に関与するため、当該データは、D−β−ヒドロキシ酪酸がドライマウスの治療薬として有効であることを説明できる有力な基礎データであると考えられる。
【0032】
[実験例3:ヒト角膜上皮細胞(HCEC)におけるフリーラジカルに対する予防効果へのD−β−ヒドロキシ酪酸の影響]
〔方法〕
D−β−ヒドロキシ酪酸による前処理が、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)において、紫外線照射により生じるフリーラジカルの細胞障害作用を抑制するか否かを検討した。HCEC細胞を96穴プレートに細胞数20,000/ウェルで撒き、その後24時間培養し、D−β−ヒドロキシ酪酸を添加した。D−β−ヒドロキシ酪酸の終濃度は、0%、0.1%、1%または10%(いずれも重量%)とし、前処理時間は1時間とし、前処理後、培地をHBAを含まないものに戻した。その後すぐに、DAPI(4',6-Diamidino-2-phenylindole, dihydrochloride)を添加し、紫外線を照射した。紫外線照射後30分、40分、50分または60分の各時点において経時的にDAPI陽性の死細胞数を計測した。
【0033】
〔結果〕
図7に、D−β−ヒドロキシ酪酸による前処理および紫外線照射を行ったヒト角膜上皮細胞(HCEC)の蛍光顕微鏡写真を示す。図7に示すように、紫外線照射により死滅した細胞数は、未照射のコントロールと比較し時間依存的に増加した。このモデルにD−β−ヒドロキシ酪酸を添加することにより、各照射時間群における死細胞数がD−β−ヒドロキシ酪酸の濃度依存的に減少する傾向を示した。
【0034】
〔結論〕
以上のように、HCEC細胞を用いた紫外線照射モデルの検討により、D−β−ヒドロキシ酪酸が紫外線照射により発生するフリーラジカルに対する予防効果をもつ可能性が示唆された。ドライマウスは唾液の量的減少と質的異常を来す疾患であり、本症の原因は複合的で薬剤の副作用、ストレス、生活習慣など様々な環境要因により発症することが多く、シェーグレン症候群にみられる腺組織の器質的な傷害によるものは比較的少ないとされているが、これらの唾液分泌障害の機序は明らかではない。近年、酸化ストレスは感染、虚血、タバコ、薬物などにより生体内での活性酸素の産生が増加することにより生じるとされ、様々な疾患や老化に関連することが知られていることから、唾液腺の機能不全においてもその関与が想定されている。このことから、フリーラジカルに対する予防効果をもつ薬剤はドライマウスの治療に有用であると考え検討を行った結果が本発明につながった。特にドライマウスの発症原因の1つであるシェーグレン症候群においては目と口が主病変となり同様な症状が出現することからHCEC細胞で示された結果は口腔にも還元されるものと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】健常者群およびドライマウス患者群におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後の口腔乾燥感(VAS)の変化を示すグラフである。
【図2】健常者群およびドライマウス患者群におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後のMCMの平均値の変化を示すグラフである。
【図3】健常者群およびドライマウス患者群におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後の刺激時唾液分泌量の変化を示すグラフである。
【図4】各症例(ドライマウス患者および健常者)におけるD−β−ヒドロキシ酪酸投与前後の(a)MCMの値と(b)刺激時唾液分泌量の変化を示すグラフである。
【図5】追加症例も含めた健常者群およびドライマウス患者群におけるD−β−ヒドロキシ酪酸による投与前後の刺激時唾液分泌量の変化を示す。
【図6】ヒト唾液腺細胞(HSY)におけるD−β−ヒドロキシ酪酸によるATP活性の変化を示すグラフである。
【図7】D−β−ヒドロキシ酪酸による前処理および紫外線照射を行ったヒト角膜上皮細胞(HCEC)の蛍光顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトン体または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む、外分泌障害を処置するための医薬。
【請求項2】
前記ケトン体がβ−ヒドロキシ酪酸である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記β−ヒドロキシ酪酸がD−β−ヒドロキシ酪酸である、請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
前記外分泌障害が、ドライマウスおよび/または唾液分泌障害である、請求項1〜3に記載の医薬。
【請求項5】
前記ドライマウスおよび/または唾液分泌障害が、のどが渇く症状またはのどがざらざらする症状を含む、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
前記外分泌障害が、風邪、熱性疾患、脱水症、内分泌異常、代謝障害、ビタミンA,B欠乏症、自己免疫疾患、高血圧症、腎疾患、貧血、出血、加齢、閉経、薬物、唾液腺炎、唾液腺萎縮、放射腺処置の副作用、先天異常、および唾液腺関連の神経系統の障害からなる群から選ばれる少なくとも1に関連する、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−127369(P2008−127369A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316874(P2006−316874)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(505248543)有限会社ノーベル医学研究所 (1)
【出願人】(503384971)株式会社クレインサイエンス (3)
【Fターム(参考)】