説明

外周壁構造

【課題】本発明は、所定のピッチで縦溝が刻まれた外装パネルを用い、出隅部において留め納まりとした場合に、縦溝の間隔に統一性があり建物外観の意匠性を損ねることがない外周壁構造を提供する。
【解決手段】外周壁構築の基準となる基準線の間の寸法は平面モジュールMの正数倍であり、外周壁には基準線からの出寸法が一定の値Dとなるように外装パネルPが貼設されている。基準外装パネル1には、Mをn(n=1以上の整数)等分するピッチで縦溝2が刻まれていると共に、MのN(N=3以上の整数)倍の幅を有し、その両端には半縦溝2aが設けられている。平部用外装パネルP1の両端は半縦溝2aを有し、出隅用外装パネルP2,P3の一端は半縦溝2aを有すると共に平部用外装パネルP1の端部に突き付けられ、出隅用外装パネルP2,P3の他端は平断面で45度の小口8を有して留めの納まりとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に対する外装パネルの割り付けに係り、外装パネルが貼設された建物の外周壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、仕上材として外装パネルを貼り付けて構成される建物の外周壁の出隅部において、特許文献1に開示されているように、外周壁構造の出隅部を構成する2枚の外装パネルの小口を45度の角度に加工し、その小口どうしを突き付けて納めること(いわゆる「留め納まり」とすること)が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−39455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外装パネルとして所定のピッチで縦溝が刻まれたものを用いて留めの納まりとした場合、出隅部から最初の縦溝までの寸法が、向かって右側の外装パネルと向かって左側の外装パネルの縦溝とで食い違い生じることで縦溝の配列が左右対称の関係にならず、外観の意匠性を損ねてしまうことがある、という問題点があった。
【0005】
本発明は、所定のピッチで縦溝が刻まれた外装パネルを用い、出隅部において留め納まりとした場合に、縦溝の間隔に統一性があり建物外観の意匠性を損ねることがない外周壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外周壁を構築する際の基準となる基準線の間の寸法が、所定の平面モジュールの正数倍の値に基づいて設定され、外周壁には、基準線からの出寸法が一定の値Dとなるように外装パネルがそれぞれ貼設された外周壁構造であって、
外周壁の構築に利用される基準外装パネルには、平面モジュールMをn(n=1以上の整数)等分するピッチPで縦溝が刻まれていると共に、平面モジュールMのN(N=3以上の整数)倍の幅Lを有し、基準外装パネルの両端には、縦溝の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝が設けられており、
建物の平部に配置される平部用外装パネルの両端は、縦溝の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝を有し、
建物の出隅部に配置される出隅用外装パネルの一端は、基準外装パネルの縦溝の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝を有すると共に平部用外装パネルの端部に突き付けられ、出隅用外装パネルの他端は、平断面で45度の角度の小口を有して留め納まりとされたことを特徴とする。
【0007】
この外周壁構造においては、出隅部において、出隅部から最初の縦溝での寸法が、向かって右側の外装パネルと向かって左側の外装パネルとで一致し、縦溝の配列を左右対称の関係とすることができ、建物外観の意匠性を損ねることがない。
【0008】
また、出隅用外装パネルの表面側の幅寸法L1がM+Dとされ、寸法Dは、出隅用外装パネルが基準外装パネルから(N−1)枚切り出されるように設定されていると好適である。
このような構成を採用すると、基準外装パネルから出隅用外装パネルを効率良く切り出すことができる。
【0009】
また、留め納まり部における出隅用外装パネル同士の離隔寸法は、想定される地震力による建物の層間変形角の最大値に基づいて設定されていると好適である。
このような構成を採用すると、地震の際に、留め納まり部で隣接している出隅用外装パネル同士の接触によるヒビや欠けなどの破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建物の出隅部において、向かって右側の外装パネルと向かって左側の外装パネルとで縦溝の間隔の調和をはかることができ、建物外観の意匠性を損ねることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る外周壁構造の一実施形態を示す建物の正面図である。
【図2】建物の出隅部における平断面図である。
【図3】基準外装パネルを示す斜視図である。
【図4】出隅部外装パネルの切り出し要領を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る外周壁構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、建物Hは、平面視矩形状であり、455mmの平面モジュールMを基準単位として設計されている。また、建物Hの外周壁には仕上材としてALC(軽量気泡コンクリート)からなる外装パネルPが取り付けられている。外装パネルPとしては、図3に示される基準外装パネル1がそのままの形状で加工されることなく、或いは建築現場にて適宜加工されて使用される。
【0014】
基準外装パネル1は、工場生産された規格品であり、その幅Lは平面モジュールMの整数(N、本実施例ではN=4)倍となっている。基準外装パネル1には、平面モジュールMを3等分(n=3)したピッチP(151.67mm)で11本の縦溝2が予め工場で刻まれている。この縦溝2は、断面矩形又は台形状に形成され、基準外装パネル1の両端には、縦溝2の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝2aが設けられている。そして、外装パネルP同士を幅方向に連接させると、半縦溝2a同士が接合されて合成縦溝3が形成され、この合成縦溝3は、底部に形成されたシールポケット3cに充填材6が注入された状態で、外観的に、縦溝2と同一となる(図2参照)。
【0015】
図1に示すように、外周壁を構築する際の基準となる基準線Y0,Y1間の寸法(梁間寸法)Rは、平面モジュールMの正数倍の値を有し、この建物Hの場合、寸法Rは、455mmの24倍の10920mmである。同様に基準線Y0,Y1に直交する基準線X0,X1(X1は不図示)間の寸法(桁行寸法)も平面モジュールMの正数倍の値を有している。
【0016】
図2に示すように、建物Hの外周壁は、基準線Y0(Y1)に直交して水平に延在する基準線X0(X1)に基づいて構築された壁体10と、壁体10に所定の間隔で取り付けられた胴縁20と、胴縁20を下地としてビス固定により貼設された外装パネルPと、によって構成されている。壁体10は、その中心位置が基準線Y0,Y1,X0,X1に一致するように設定されており、平部用出隅パネルP1及び出隅用外装パネルP2,P3は、基準線Y0,Y1,X0,X1からの出寸法が一定の値D(例えば131mm)となるようにそれぞれ貼設されている。
【0017】
布基礎の上面に立設される壁体10は、壁式構造の建物において荷重の支持や地震力等の外力に対抗する要素として有効な構造壁として機能するものである。壁体10の構成は、布基礎の上に配置される枠体11と、2枚の石膏ボード12a,12bからなり枠体11の建物内部側に固定される内装材12と、枠体11の建物外部側でビスに固定される構造用面材13と、この構造用面材13に貼設される板状断熱材14と、この断熱材14に貼設される透湿防水シート(不図示)とからなる。
【0018】
建物Hの平部(出隅部以外の中間部)に配置される平部用外装パネルP1(後述する出隅部用パネルに挟まれるように配置される外装パネル)の両端は、縦溝2の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝2aを有する。建物Hの平部に割り付けられる平部用外装パネルP1については、基準外装パネル1が基本的には切断されることなく使用され、端数が生ずる場合に限って縦溝2の位置で半縦溝2aになるように切断されて使用される。
【0019】
建物Hの出隅部に配置される出隅用外装パネルP2,P3の一端は、基準外装パネルの縦溝の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝2aを有すると共に、平部用外装パネルP1の端部に突き合わされる。出隅用外装パネルP2,P3の他端は、平断面で45度の角度となる小口8を有する。この出隅用外装パネルP2は、基準線Y0と出隅用外装パネルP2の縦溝2の中心とが一致するように貼設されている。また、建物Hの出隅部に配置される他の出隅用外装パネルP3も、基準線X0と出隅用外装パネルP3の縦溝2の中心とが一致するように貼設されている。
【0020】
出隅用外装パネルP2,P3は、基準外装パネル1を現場にて切り出したものであり、出隅用外装パネルP2,P3の表面側の幅寸法L1がM+Dとされ、寸法Dは、出隅用外装パネルP2,P3が基準外装パネル1から(N−1)枚切り出されるように設定されている。すなわち、D=M/(N−1)以下である。なおここでL1は、対向する小口8間に形成された湿式(不定形)シール材15を充填する為の隙間や、尖端の面取りを考慮しない寸法である。
【0021】
具体的には、n=3の基準外装パネル1では、寸法Dの最大値は151.67mmとなるが、切断の際のロス(切断に使用する工具の厚みや切断面の仕上げ作業による欠損等)を考慮して寸法Dを130乃至140mm程度に設定している。また、n=4すなわち縦溝2のピッチPが227.5mmの場合は、寸法Dの最大値は113.75mmと求められ、実際の寸法Dとしては90乃至100程度に設定することができる。
【0022】
図3に示した基準外装パネル1からの出隅用外装パネルの切り出し手順について図4を用いて具体的に説明すると、まず、基準外装パネル1をその両端からM+Dの位置C1,C2で切断して2枚の出隅用外装パネルを得る。次に、残った基準外装パネル1をその一端から最初の縦溝2aの中心位置C3で切断して半縦溝を形成し、更にC3からM+Dの位置(C4)で切断することによって3枚目の出隅用外装パネルを得る。そして、ハッチで示した部分のみが廃棄あるいは他の用途にリサイクルされる。
【0023】
このようにすることで、基準外装パネル1から出隅用外装パネルP2,P3を無駄なく切り出すことができ、各出隅部に使用される部材やその納まりの共通化も達成することができる。
【0024】
また、この外周壁構造においては、建物Hの全ての出隅部において、出隅部から最初の縦溝での寸法が、向かって右側の出隅用外装パネルP2と、向かって左側の出隅用外装パネルP3とで一致し、縦溝2の配列を左右対称の関係とすることができ、建物外観の意匠性を維持することができる。
【0025】
また、留め納まり部Sにおいて、対向する一対の出隅用外装パネルP2,P3の切断面(小口8)に形成された隙間の離間寸法(A)は、想定される地震力が作用した際の層間変形角の最大値に基づく離隔寸法(A)を有しており、このように構成することにより、地震の際に、留め納まり部Sで隣接している出隅用外装パネルP2,P3同士の接触によるヒビや欠けなどの破損を防止することができる。
【0026】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、基準外装パネル1の横貼りを例示したが、基準外装パネル1を縦貼りする場合にも本発明は適用可能である。また、縦溝2は上記実施形態のような連続的なのものに限定はされず、馬目地(破れ目地)を模した不連続なものであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…基準外装パネル 2…縦溝 2a…半縦溝 P…外装パネル P1…平部用外装パネル P2,P3…出隅用外装パネル X0,X1,Y0,Y1…基準線 H…建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁を構築する際の基準となる基準線の間の寸法が、所定の平面モジュールの正数倍の値に基づいて設定され、前記外周壁には、前記基準線からの出寸法が一定の値Dとなるように外装パネルがそれぞれ貼設された外周壁構造であって、
前記外周壁の構築に利用される基準外装パネルには、前記平面モジュールMをn(n=1以上の整数)等分するピッチPで縦溝が刻まれていると共に、前記平面モジュールMのN(N=3以上の整数)倍の幅Lを有し、前記基準外装パネルの両端には、前記縦溝の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝が設けられており、
前記建物の平部に配置される平部用外装パネルの両端は、前記縦溝の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝を有し、
前記建物の前記出隅部に配置される出隅用外装パネルの一端は、前記基準外装パネルの前記縦溝の幅の半分の幅寸法をもった半縦溝を有すると共に、前記平部用外装パネルの端部に突き付けられ、前記出隅用外装パネルの他端は、平断面で45度の小口を有して留めの納まりとされたことを特徴とする外周壁構造。
【請求項2】
前記出隅用外装パネルの表面側の幅寸法L1がM+Dとされ、寸法Dは、前記出隅用外装パネルが前記基準外装パネルから(N−1)枚切り出されるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載した外周壁構造。
【請求項3】
前記留め納まり部における前記出隅用外装パネル同士の離隔寸法は、想定される地震力による建物の層間変形角の最大値に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載した外周壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256555(P2011−256555A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130239(P2010−130239)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】