説明

外壁構造およびその施工方法

【課題】 パネル張り付け作業のコストダウンを図るとともに工期短縮を図ることができる外壁構造およびその施工方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 構造物の壁面を形成するパネル8が柱1の側方に複数配設されてなる外壁構造において、少なくとも複数のパネル8、複数のパネル8の裏面にそれぞれ接合されて複数のパネル8同士を連結する胴縁12,13、及びパネル8に沿って略水平方向に延在する耐風梁14,15がそれぞれ一体に組み合わされてなるパネルユニット9と、柱1に張設されるとともに耐風梁14,15に接合されてパネルユニット9を保持するブラケット10,11とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルを用いて形成される外壁構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製のパネルを横貼りして外壁を構築する際、まず、鉄骨工事にて下地となる縦胴縁を梁やスラブ等の躯体に固定して設置し、次に、設置された縦胴縁の外側にパネルを張り付けて外壁を形成している。また、縦胴縁の内側には、縦胴縁に直交する方向(水平方向)に延在する耐風梁を設置し、外壁の耐風性を高めている。
【0003】
近年、パネルと縦胴縁とを一体に組み合わせてユニット化させ、ユニット化されてなるパネルユニットを設置する方法が提案されている。この方法は、予めパネルユニットを形成しておくとともにスラブ端部に取付金具を取り付けておき、そして、パネルユニットをスラブの側方に配置し、縦胴縁と取付金具とを接合することで、外壁を形成する方法である。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−256736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した前者の従来の外壁構造の施工方法では、パネルを一枚づつ張り付けていくため、多数のパネルを張り付ける場合には相当の工期が必要であるという問題が存在する。また、縦胴縁の設置精度を高めることは困難であるため、パネルと縦胴縁との接合部分に取り付けピースが必要となる場合がありコストアップの要因となるという問題が存在する。
【0005】
また、上記した後者の従来の外壁構造の施工方法では、パネルユニットを浮かした状態で配置する場合、取付金具が設けられたスラブ端部にパネルユニットの重量がかかり、張り出されたスラブはパネルユニットの重量を支持し得る構造にしなければならないという問題が存在し、スラブの鉄筋量が増加し、或いはスラブ厚さが厚くなり、コストアップとなる。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、パネル張り付け作業のコストダウンを図るとともに工期短縮を図ることができる外壁構造およびその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、構造物の壁面を形成するパネルが柱の側方に複数配設されてなる外壁構造において、少なくとも複数の前記パネル、該複数のパネルの裏面にそれぞれ接合されて前記複数のパネル同士を連結する胴縁、及び前記パネルに沿って略水平方向に延在する耐風梁がそれぞれ一体に組み合わされてなるパネルユニットと、前記柱に張設されるとともに前記耐風梁に接合されて前記パネルユニットを保持するブラケットとが備えられていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、予め組み合わされたパネルユニットをブラケットを介して柱に取り付けることで、複数のパネルは一遍に設置される。また、パネルと胴縁と耐風梁とは予め組み合わされるため、精度良く組み合わせられる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の外壁構造において、前記ブラケットと前記柱との接合箇所には、接合された前記ブラケットの高さを調整する鉛直調整手段が備えられ、前記ブラケットと前記耐風梁との接合箇所には、保持された前記パネルユニットの水平方向の位置を調整する水平調整手段が備えられていることを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、ブラケットを介して取り付けられるパネルユニットは、鉛直調整手段によって鉛直方向の位置が調整されるとともに、水平調整手段によって水平方向の位置が調整される。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の外壁構造の施工方法において、予め、少なくとも前記パネルと前記胴縁と前記耐風梁とを組み合わせて前記パネルユニットを形成するとともに、前記柱に前記ブラケットを取り付け、次に、前記パネルユニットを構造物の外壁位置に配置し、前記ブラケットと前記耐風梁とを接合させることを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、複数のパネルは一遍に設置される。また、パネルと胴縁と耐風梁とは予め組み合わされるため、精度良く組み合わせられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る外壁構造および請求項3に係る外壁構造の施工方法によれば、少なくとも複数のパネル、胴縁及び耐風梁がそれぞれ一体に組み合わされてなるパネルユニットと、柱に張設されるとともに耐風梁に接合されてパネルユニットを保持するブラケットとが備えられており、複数のパネルは一遍に設置されるため、複数のパネルを張り付ける際の工期短縮を図ることができる。また、パネルと胴縁とは予め接合させておくため、パネルと胴縁との接合箇所の精度吸収のための取り付けピースは不要となり、コストダウンを図ることができる。さらに、パネルユニットはブラケットを介して柱に取り付けられているため、スラブにパネルユニットの重量がかからず、スラブの鉄筋量等を増加させる必要はない。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る外壁構造によれば、ブラケットと柱との接合箇所には、ブラケットの高さを調整する鉛直調整手段が備えられ、ブラケットと耐風梁との接合箇所には、パネルユニットの水平方向の位置を調整する水平調整手段が備えられており、ブラケットを介して取り付けられるパネルユニットは、鉛直調整手段によって鉛直方向の位置が調整されるとともに、水平調整手段によって水平方向の位置が調整されるため、パネルユニットの取付精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0016】
図1は本発明に係る外壁構造を表す側面図であり、図2外壁構造を表す平面図であり、図3は図2に示すA−A間の断面図であり、図4は図2に示すB−B間の断面図である。
図1,図2,図3,図4に示すように、本実施の形態において、本発明に係る外壁構造が備えられた構造物は、鉄骨ラーメン構造からなっており、角形鋼管からなる柱1とH形鋼からなる大梁2とを組み合わせてなるラーメン構造体3が形成されている。外側に位置する柱1と梁2との仕口部4には、外方に張り出されたH形鋼からなる片持梁5が張設されており、隣り合おう片持梁5間には、H形鋼からなる小梁6が架設されている。また、各梁2,5,6間には、図示せぬデッキプレート等が敷設され、該デッキプレート等の上に鉄筋コンクリート造のスラブ7が形成されている。
【0017】
外壁構造は、構造物の壁面を形成するパネル8が柱1の側方に複数配設されてなるものであり、ラーメン構造体3の側方に間隔をあけて略鉛直に配置されているパネルユニット9と、柱1とパネルユニット9の上下端部との間に介装されている縦使いされたH形鋼からなるブラケット10,11とから構成されている。
【0018】
パネルユニット9は、隣り合う柱1間に設置されるとともに大梁2の側方に設置されて大梁2を覆うように配置されるものであり、横張りされて上下方向に複数枚(図では3枚)並べられた複数のパネル8と、複数のパネル8の裏面にそれぞれ接合されて複数のパネル8同士を連結する縦横の胴縁12,13と、上下端のパネル8に沿って略水平方向に延在する上下の耐風梁14,15とから構成されている。複数のパネル8と、複数の縦横の胴縁12,13と、上下の耐風梁14,15とは、工場や現場等で予め一体にそれぞれ組み合わされてユニット化されている。
【0019】
パネル8は、例えば金属サンドイッチパネルやALCパネル等の矩形の外壁材であり、その上下端および両側端が凹凸状に形成されて隣接するパネル8同士が噛合されるようになっている。
【0020】
胴縁12,13は、格子状に組み立てられた下地骨組みであり、例えばリップ溝形鋼からなっている鉛直方向に延在する縦胴縁12と、例えば角形鋼管からなっている水平方向に延在する横胴縁13とが、アングル材等からなる接合部材16を介して接合されて組み立てられている。縦胴縁12は、適当な間隔をあけて複数並設されており、本実施の形態では、一方の端に配置された角形鋼管からなる縦胴縁12を含むと、一組のパネルユニット9毎に6本の縦胴縁12が並設されている。また、横胴縁13は、パネルユニット9の上下端に沿ってそれぞれ水平に延在して上下平行に配置されており、縦胴縁12の上下端にそれぞれ接合されている。
【0021】
耐風梁14,15は、例えば横使いされたH形鋼からなり、パネル8の垂直方向の変形に対して抵抗するものである。上側の耐風梁14は、上側の横胴縁13の下方に配置されており、複数の縦胴縁12の上端部と上側の耐風梁14とは、アングル材等からなる接合部材17を介してそれぞれ接合されている。下側の耐風梁15は、下側の横胴縁13の上方に配置されており、複数の縦胴縁12の下端部と下側の耐風梁15とは、アングル材等からなる接合部材17を介してそれぞれ接合されている。
【0022】
また、上側の耐風梁14の両端部は、上側のブラケット10に取り付けられる形状に加工されており、具体的には、両側のフランジのうち内側(柱1側)のフランジの下部が切り取られ、ブラケット10の上フランジの上面と耐風梁14のウェブ下面とが接するように形成されている。また、下側の耐風梁15の両端部は、下側のブラケット11に取り付けられる形状に加工されており、具体的には、両側のフランジのうち内側(柱1側)のフランジの下部が切り取られ、ブラケット11の下フランジの上面と耐風梁15のウェブ下面とが接するように形成されている。
【0023】
図5はブラケット10,11と柱1との接合箇所を表す部分詳細図である。図3,図5に示すように、ブラケット10,11は、パネルユニット9を上下でそれぞれ保持するものであり、仕口部4を挟んで上下一対に設けられて柱1から外方に張設されている。ブラケット10,11の基端部は、柱1の側面に張設されたガセットプレート18を介して柱1に接合されており、ガセットプレート18は、柱1の側方に鉛直に配置されて柱1の側面に隅肉溶接され、ブラケット10、11の基端部のウェブと重ね合わされている。
【0024】
ブラケット10,11と柱1とを接合するガセットプレート18には、接合されたブラケット10,11の高さを調整する鉛直調整手段19が備えられている。鉛直調整手段19は、ガセットプレート18に形成された鉛直方向に延在する複数(図では2本)平行の長孔20からなっている。つまり、ブラケット10,11基端部のウェブに形成された図示せぬ複数の孔と、ガセットプレート18に形成された複数の長孔20との中にボルト21をそれぞれ挿通させ、貫通したそれぞれのボルト21の先端をナット22でそれぞれ締結することで、ブラケット10,11とガセットプレート18とは接合されており、パネルユニット9は、ガセットプレート18に形成された長孔20の長さ分だけ高さ調節可能に設置されている。
【0025】
図6は上側のブラケット10と上側の耐風梁14との接合箇所を表す斜視図である。図3,図6に示すように、上側のブラケット10先端部の上フランジ上に上側の耐風梁14端部のウェブが重なり合わされており、隣り合うブラケット10先端部の間に耐風梁14が架設された状態になっている。
【0026】
上側のブラケット10と上側の耐風梁14との接合箇所には、保持されたパネルユニット9の水平方向の位置を調整する水平調整手段23が備えられている。水平調整手段23は、ブラケット10の上フランジに形成されてブラケット10の軸方向に直交する方向に延在する複数(図では2本)平行の長孔24と、耐風梁14のウェブに形成されて前記長孔24に交差(直交)する方向に延在する複数(図では2本)平行の長孔25とからなっている。つまり、ブラケット10及び耐風梁14にそれぞれ形成されて互いに重ね合わされた長孔24,25の中にボルト26をそれぞれ挿通させ、貫通したボルト26の先端をナット27で締結することで、上側のブラケット10と上側の耐風梁14とは接合されており、パネルユニット9は、ブラケット10に形成された長孔24の長さ分だけ横方向に調整可能であるとともに、耐風梁14に形成された長孔25の長さ分だけ出入り調節可能に設置されている。
【0027】
図7は下側のブラケット11と下側の耐風梁15との接合箇所を表す斜視図である。図3,図7に示すように、下側のブラケット11先端部の下フランジ上に下側の耐風梁15端部のウェブが重なり合わされており、隣り合うブラケット11先端部の間に耐風梁15が架設された状態となっている。
【0028】
下側のブラケット11と下側の耐風梁15との接合箇所には、保持されたパネルユニット9の水平方向の位置を調整する水平調整手段28が備えられている。水平調整手段28は、ブラケット11の下フランジに形成されてブラケット11の軸方向に直交する方向に延在する複数(図では2本)平行の長孔29と、耐風梁15のウェブに形成されて前記長孔29に交差(直交)する方向に延在する複数(図では2本)平行の長孔30とからなっている。つまり、ブラケット11および耐風梁15にそれぞれ形成されて重なり合わされた長孔29,30の中にボルト31をそれぞれ挿通させ、貫通したボルト31の先端をナット32で締結することで、下側のブラケット11と下側の耐風梁15とは接合されており、パネルユニット9は、ブラケット11に形成された長孔29の長さ分だけ横方向に調整可能であるとともに、耐風梁15に形成された長孔30の長さ分だけ出入り調節可能に設置されている。
【0029】
また、パネルユニット9は、上記した水平調整手段28によって上下端部の出入りをそれぞれ調整することで傾きを調整することが可能であり、上記した水平調整手段28は、保持されたパネルユニット9の傾きを調整する傾き調整手段を兼ねている。
【0030】
図3,図6,図7に示すように、上下のブラケット10,11の先端には、片持梁5の先端と繋ぐ溝形鋼からなる繋ぎ部材33,34がそれぞれ設けられている。上側の繋ぎ部材33は、上側のブラケット10先端の下フランジと片持梁5先端の上フランジとの間に介在されており、下側の繋ぎ部材34は、下側のブラケット11先端の上フランジと片持梁5先端の下フランジとの間に介在されている。
【0031】
図8は片持梁5の先端部分を表す図である。図3,図6,図8に示すように、上側の繋ぎ部材33の上端は、上側のブラケット10の下フランジに両側隅肉溶接されて垂設されたガセットプレート35を介して上側のブラケット10の先端に接合されており、繋ぎ部材33の下端は、片持梁5の上フランジに両側隅肉溶接されて立設されたガセットプレート36を介して片持梁5の先端に接合されている。
【0032】
図6に示すように、繋ぎ部材33の上端とブラケット10の下フランジに垂設されたガセットプレート35とは、重ね合わされている。重ね合わされた繋ぎ部材33の上端には、鉛直方向に延在する複数の長孔37が形成されており、ガセットプレート35には前記複数の長孔37に対向する位置に図示せぬ孔がそれぞれ形成されている。この孔と繋ぎ部材33に形成された長孔37との中にボルト38がそれぞれ挿通されるとともに、貫通したそれぞれのボルト38の先端にナット39が締結されることで、繋ぎ部材33の上端とブラケット10の下フランジに垂設されたガセットプレート35とが接合されている。
【0033】
また、図8に示すように、片持梁5の上フランジに立設されたガセットプレート36は、下部がスラブ7内に埋設されており、上部がスラブ7の上面から突出されている。スラブ7上面から突出したガセットプレート36の上部と上側の繋ぎ部材33の下端とは、互いに重ね合わされてボルト接合されている。
【0034】
図3,図7,図8に示すように、下側の繋ぎ部材34の下端は、下側のブラケット11の上フランジに両側隅肉溶接されて立設されたガセットプレート40を介して下側のブラケット11の先端と接合されており、繋ぎ部材34の上端は、片持梁5の下フランジに両側隅肉溶接されて垂設されたガセットプレート41を介して片持梁5の先端と接合されている。
【0035】
図7に示すように、繋ぎ部材34の下端とブラケット11の上フランジに立設されたガセットプレート40とは、重ね合わされている。重ね合わされた繋ぎ部材34の下端部には、鉛直方向に延在する複数の長孔42が形成されており、ガセットプレート40には、前記複数の長孔42に対向する位置に図示せぬ孔がそれぞれ形成されている。この孔と繋ぎ部材34に形成された長孔42との中にボルト43がそれぞれ挿通されるとともに、貫通したそれぞれのボルト43の先端にナット44が締結されることで、繋ぎ部材34の上端とブラケット11の上フランジに垂設されたガセットプレート40とが接合されている。
また、図8に示すように、片持梁5の下フランジに垂設されたガセットプレート41は、繋ぎ部材34の上端部に重ね合わされてボルト接合されている。
【0036】
一方、図4に示すように、上下の耐風梁14,15の中央部には、小梁6の中央部と繋ぐ溝形鋼からなる繋ぎ部材45,46がそれぞれ設けられている。上側の繋ぎ部材45は、上側の耐風梁14のウェブと小梁6の上フランジとの間に介在されており、下側の繋ぎ部材46は、下側の耐風梁15のウェブと小梁6の下フランジとの間に介在されている。
【0037】
図9は上側の耐風梁14と上側の繋ぎ部材45との接合箇所を表す斜視図であり、図10は小梁6の中央部を表す断面図である。図4,図9,図10に示すように、上側の繋ぎ部材45の上端は、アングル材からなるL形の取付ファスナー47を介して上側の耐風梁14に接合されており、繋ぎ部材45の下端は、小梁6の上フランジに両側隅肉溶接されて立設されたガセットプレート48を介して小梁6の中央部に接合されている。
【0038】
図9に示すように、上側の耐風梁14のウェブと取付ファスナー47の一方の面(水平部)とは、重ね合わされており、取付ファスナー47の水平部には、耐風梁14の軸方向に延在する長孔49が複数(図では2本)平行に形成されており、耐風梁14のウェブには、前記長孔49に対向する位置に図示せぬ孔が複数形成されている。この孔と長孔49との中にボルト50がそれぞれ挿通されるとともに、貫通したそれぞれのボルト50の先端にナット51が締結されることで、耐風梁14と取付ファスナー47とが接合されている。
【0039】
また、取付ファスナー47の他方の面(鉛直部)と繋ぎ部材45の上端部とは、重ね合わされており、取付ファスナー47の鉛直部には、水平方向に延在する長孔52が形成されており、繋ぎ部材45の上端部には、鉛直方向に延在する複数(図では2本)平行の長孔53が形成されている。これらの長孔52,53の中にボルト54がそれぞれ挿通されるとともに、貫通したそれぞれのボルト54の先端にナット55が締結されることで、取付ファスナー47と繋ぎ部材45とが接合されている。
【0040】
また、図10に示すように、小梁6の上フランジに立設されたガセットプレート48は、下部がスラブ7内に埋設されており、上部がスラブ7の上面から突出されている。スラブ7上面から突出したガセットプレート48の上部と上側の繋ぎ部材45の下端とは、互いに重ね合わされてボルト接合されている。
【0041】
図11は下側の耐風梁15と下側の繋ぎ部材46との接合箇所を表す斜視図である。図4,図10,図11に示すように、下側の繋ぎ部材46の下端は、2枚の平鋼を略L形に溶接接合してなる取付ファスナー56を介して下側の耐風梁15に接合されており、繋ぎ部材46の上端は、小梁6の下フランジに両側隅肉溶接されて垂設されたガセットプレート57を介して小梁6の中央部に接合されている。
【0042】
図11に示すように、下側の耐風梁15のウェブと取付ファスナー56の一方の面(水平部)とは、重ね合わされており、取付ファスナー56の水平部には、耐風梁15の軸方向に延在する長孔57が複数(図では2本)平行に形成されており、耐風梁15のウェブには、前記長孔57に対向する位置に図示せぬ孔が形成されている。この孔と長孔57との中にボルト58がそれぞれ挿通されるとともに、貫通したそれぞれのボルト58の先端にナット59が締結されることで、耐風梁15と取付ファスナー56とが接合されている。
【0043】
また、取付ファスナー56の他方の面(鉛直部)と繋ぎ部材46の下端部とは、重ね合わされており、取付ファスナー56の鉛直部には、水平方向に延在する長孔60が形成されており、繋ぎ部材46の下端部には、鉛直方向に延在する複数(図では2本)平行の長孔61が形成されている。これらの長孔60,61の中にボルト62がそれぞれ挿通されるとともに、貫通したそれぞれのボルト62の先端にナット63が締結されることで、取付ファスナー56と繋ぎ部材46とが接合されている。
また、図10に示すように、小梁6の下フランジに垂設されたガセットプレート57は、繋ぎ部材46の上端部に重ね合わされてボルト接合されている。
【0044】
また、図10に示すように、小梁6の上フランジには、上フランジと略面一に配置されて内側方に張り出されたトッププレート64がメタルタッチされており、トッププレート64の上面には、スタッドジベル65が間隔をあけて複数突設されている。また、小梁6の中央部にはリブプレート66が設けられている。また、図3,図4に示すように、スラブ7の側端面とパネルユニット9との間には隙間があけられており、この隙間には、例えばロックウール等からなる層間塞ぎ部材67が介装されている。
【0045】
次に、上記した構成からなる外壁構造の施工方法について説明する。
【0046】
先ず、予め工場或いは現場で、複数枚のパネル8と、縦横の胴縁12,13と、上下の耐風梁14,15とをそれぞれ組み合わせてパネルユニット9を形成する工程を行う。具体的には、まず、縦横の胴縁12,13を、接合部材16を介して互いに接合させ、格子状に組み立てる。そして、組み立てられた胴縁12,13の表面に複数枚のパネル8をそれぞれ横貼りするとともに、胴縁12,13の裏面の上下端に接合部材17を介して耐風梁14,15をそれぞれ取り付ける。
【0047】
一方、柱1等からなるラーメン構造体3側には、予め柱1にブラケット10,11を取り付ける工程を行う。具体的には、上下のブラケット10,11を片持梁5の上下方にそれぞれ配置し、上下のブラケット10,11の基端部を、ボルト21およびナット22によって、柱1の側面に張設されたガセットプレート18にそれぞれ接合させる。また、上側のブラケット10先端部の下フランジと片持梁5先端部の上フランジとの間に繋ぎ部材33を配置し、当該繋ぎ部材33の上下端を、ボルト38およびナット39等によって、ブラケット10の下フランジや片持梁5の上フランジに立設・垂設されたガセットプレート35,36にそれぞれ接合させる。また、同様に、下側のブラケット11先端部の上フランジと片持梁5先端部の下フランジとの間に繋ぎ部材34を配置し、当該繋ぎ部材34の上下端を、ボルト43およびナット44等によって、ブラケット11の上フランジや片持梁5の下フランジに立設・垂設されたガセットプレート40,41にそれぞれ接合させる。このとき、鉛直調整手段19によって接合されたブラケット10,11の高さを調整する。
【0048】
次に、上述したように組み立てられたパネルユニット9をラーメン構造体3の側方の外壁位置に配置し、柱1に取り付けられたブラケット10,11とパネルユニット9に備えられた耐風梁14,15とを接合させる工程を行う。具体的には、隣り合う柱1にそれぞれ張設された上側のブラケット10間にパネルユニット9の上側の耐風梁14が架設されるとともに、上記上側のブラケット10と仕口部4を挟んで一対にそれぞれ設けられた下側のブラケット11間に、パネルユニット9の下側の耐風梁15が架設されるように、パネルユニット9を配置する。このとき、上側のブラケット10先端部の上フランジ上に上側の耐風梁14端部のウェブが載せられているとともに、下側のブラケット11先端部の下フランジ上に耐風梁15端部のウェブが載せられている。そして、重ね合わされたブラケット10,11のフランジと耐風梁14,15のウェブとを、ボルト26,31およびナット27,32によって接合する。このとき、水平調整手段23,28によって、パネルユニット9の横方向の位置および出入り位置を調整する。
【0049】
次に、耐風梁14,15の中央部と小梁6との間に繋ぎ部材45,46を介装させる工程を行う。具体的には、上側の耐風梁14中央部のウェブと小梁6中央部の上フランジとの間に繋ぎ部材45を配置し、当該繋ぎ部材45の上端を、ボルト50およびナット51によって、耐風梁14のウェブに垂設された取付ファスナー47に接合させるとともに、繋ぎ部材45の下端を、小梁6の上フランジに立設されたガセットプレート48にボルト接合させる。また、同様に、下側の耐風梁15中央部のウェブと小梁6中央部の下フランジとの間に繋ぎ部材46を配置し、当該繋ぎ部材46の下端を、ボルト54およびナット55によって、耐風梁15のウェブに立設された取付ファスナー56に接合させるとともに、繋ぎ部材46の上端を、小梁6の下フランジに垂設されたガセットプレート57にボルト接合させる。
【0050】
上記した構成からなる外壁構造およびその施工方法によれば、複数のパネル8、胴縁12,13及び耐風梁14,15がそれぞれ一体に組み合わされてなるパネルユニット9と、柱1に張設されるとともに耐風梁14,15に接合されてパネルユニット9を保持するブラケット10,11とが備えられているため、複数のパネル8は、柱1に張設されたブラケット10,11の先端にパネルユニット9を取り付けることで、一遍に設置される。このため、複数のパネル8を一枚づつ張り付ける場合に比べて、工期の短縮を図ることができる。また、パネル8と胴縁12,13とは予め接合させておくため、パネル8と胴縁12,13との接合箇所の精度を向上させることができ、パネル8と胴縁12,13との接合箇所に精度吸収のための取り付けピースは不要となり、コストダウンを図ることができる。さらに、パネルユニット9はブラケット10,11を介して柱1に取り付けられているため、スラブ7にパネルユニット9の重量がかからず、スラブ7の鉄筋量等を増加させる等の必要はない。
【0051】
また、ブラケット10,11と柱1と接合させるガセットプレート18には、ブラケット10,11の高さを調整する鉛直調整手段19が備えられ、ブラケット10,11と耐風梁14,15との接合箇所であるブラケット10,11先端部のフランジおよび耐風梁14,15端部のウェブには、パネルユニット9の水平方向の位置を調整する水平調整手段23,28が備えられているため、ブラケット10,11を介して取り付けられるパネルユニット9は、鉛直調整手段19によって鉛直方向の位置が調整されるとともに、水平調整手段23,28によって水平方向の位置が調整される。これによって、パネルユニット9の取付精度を向上させることができる。
【0052】
以上、本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、ブラケット10,11が、角形鋼管からなる柱1の側面に溶接接合されたガセットプレート18を介して柱1に張設されているが、本発明は、ブラケットの基端部を鉄筋コンクリート造の柱内に定着させ、或いは鉄筋コンクリート造の柱内に定着したガセットプレート等にブラケットの基端部を接合させ、鉄筋コンクリート造の柱にブラケットを張設させてもよく、無論鉄骨鉄筋コンクリート造の柱であってもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、ブラケット10,11が仕口部4を挟んで上下一対にそれぞれ設けられており、上下のブラケット10,11がパネルユニット9の上下端にそれぞれ取り付けられているが、本発明は、上下階の仕口部間に上下一対のブラケットを設けてもよい。また、ブラケットがパネルユニットの上下端に取り付けられているだけでなく、パネルユニットの中間部に取り付けられている場合でもよく、或いはブラケットがパネルユニットの上下端の何れか一方に取り付けられていてもよい。
【0054】
また、上記した実施の形態では、耐風梁14,15は縦胴縁12に接合されているが、本発明は、耐風梁が横胴縁13に接合されている場合でもよく、さらにはパネルに接合されている場合でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための側面図である。
【図2】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための平面図である。
【図3】図2に示すA−A間の断面図である。
【図4】図2に示すB−B間の断面図である。
【図5】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための部分詳細図である。
【図6】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための部分斜視図である。
【図7】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための部分斜視図である。
【図8】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための部分詳細図である。
【図9】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための部分斜視図である。
【図10】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための部分詳細図である。
【図11】本発明に係る外壁構造およびその施工方法の実施の形態について説明するための部分斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 柱
8 パネル
9 パネルユニット
10,11 ブラケット
12 縦胴縁(胴縁)
13 横胴縁(胴縁)
14,15 耐風梁
19 鉛直調整手段
23,28 水平調整手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面を形成するパネルが柱の側方に複数配設されてなる外壁構造において、
少なくとも複数の前記パネル、該複数のパネルの裏面にそれぞれ接合されて前記複数のパネル同士を連結する胴縁、及び前記パネルに沿って略水平方向に延在する耐風梁がそれぞれ一体に組み合わされてなるパネルユニットと、
前記柱に張設されるとともに前記耐風梁に接合されて前記パネルユニットを保持するブラケットと
が備えられていることを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
請求項1記載の外壁構造において、
前記ブラケットと前記柱との接合箇所には、接合された前記ブラケットの高さを調整する鉛直調整手段が備えられ、前記ブラケットと前記耐風梁との接合箇所には、保持された前記パネルユニットの水平方向の位置を調整する水平調整手段が備えられていることを特徴とする外壁構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の外壁構造の施工方法において、
予め、少なくとも前記パネルと前記胴縁と前記耐風梁とを組み合わせて前記パネルユニットを形成するとともに、前記柱に前記ブラケットを取り付け、
次に、前記パネルユニットを構造物の外壁位置に配置し、前記ブラケットと前記耐風梁とを接合させることを特徴とする外壁構造の施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−57336(P2006−57336A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240703(P2004−240703)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】