説明

外来性の物質の検出におけるリボザイムの使用

【課題】調製される微生物に特異的なリボザイムを使用して、微生物調製物を確認する方法を提供すること。
【解決手段】レオウイルスを含む組成物における外来性の物質の存在を検出する方法であって、当該方法は、以下:
(a)リボザイムを発現する指標細胞の集団を提供する工程であって、当該リボザイムは、当該レオウイルスのゲノムを特異的に切断し得る、工程;
(b)当該リボザイムによる当該レオウイルスのゲノムの切断を許容する条件下で、当該指標細胞を、当該組成物と接触させる、工程;および
(c)当該指標細胞に対する、当該組成物の効果を決定する工程であって、ここで、なんらかの病原効果は、当該組成物において、当該レオウイルスに加えて外来性の物質の存在を示す、工程、
を、包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を含む組成物中において外来性の物質を検出する方法およびこのような検出において有用な指標細胞に関連する。
【背景技術】
【0002】
(参考文献)
米国特許第6,307,041号
米国特許第6,136,307号
米国特許第5,631,359号
米国特許第5,631,115号
米国特許第5,254,678号
米国特許第5,168,053号
米国特許第4,987,071号
WO 91/04319
WO 91/04324
WO 94/18992
WO 94/25627
WO 99/18799
欧州出願第 89 117 424号。
【0003】
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【0004】
本出願において上または他で引用された刊行物、特許および特許出願の全ては、あたかも個々の刊行物、特許出願または特許の開示が、具体的かつ個別にその全体が参考として援用されることを示されるのと同じ程度に、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0005】
(背景技術)
医学または生物科学の分野において、ウイルス、細菌、酵母、他の真菌、寄生生物およびプリオンのような微生物を多量に産生する需要が常に存在した。得られた微生物は、微生物のタンパク質を単離しそして精製するか、ワクチンを生成するか、あるいは実験室での研究または医学的な研究のために感染性の微生物を提供するために、使用され得る。近年、ウイルス治療の新たな発展が、感染性のウイルスの効率的な産生の必要性をさらに要求している。
【0006】
レオウイルス治療(特許文献1)は、ウイルス治療の例である。レオウイルスは、セグメント化されたゲノムを有する二本鎖RNAウイルスである。哺乳動物レオウイルスに対するレセプターは、広範囲に分布する分子であり、それゆえレオウイルスは、多数の細胞に結合し得る。しかし、ほとんどの細胞は、レオウイルス感染に対して感受性でなく、そしてその細胞レセプターへのレオウイルスの結合は、ウイルスの複製またはウイルス粒子の産生を生じない。これがおそらく、レオウイルスが、いかなる特定の疾患と関連することも知られていない理由である。
【0007】
ras癌遺伝子で形質転換された細胞がレオウイルス感染に対して感受性になる一方で、形質転換されていない対応物は感受性にならないことが、近年発見された(Strongら,1998)。例えば、レオウイルス耐性NIH3T3細胞が、活性化RasまたはSos(Rasを活性化するタンパク質)で形質転換された場合、レオウイルス感染が増強された。同様に、レオウイルス感染に対して耐性なマウスの線維芽細胞は、EGFレセプター遺伝子またはv−erbB癌遺伝子(両方ともras経路を活性化する)でのトランスフェクション後に感受性になった(Strongら,1993;Strongら,1996)。従って、レオウイルスは、活性化ras経路を有する細胞に選択的に感染し得、そしてこの細胞を殺傷し得る。
【0008】
ras経路活性化は、哺乳動物の腫瘍の原因の大きな割合を占める。ras遺伝子自体の変異の活性化は、全てのヒト腫瘍の約30%(主に膵臓癌腫(90%)、散発性結腸直腺癌腫(50%)および肺癌腫(40%)、ならびに骨髄性白血病(30%))で生じる(Bos,1989)。ras経路におけるrasの上流または下流の因子の活性化もまた、腫瘍と関連する。例えば、HER2/Neu/ErbB2または上皮細胞増殖因子(EGF)レセプターの過剰発現は、乳癌(25〜30%)において通常であり、そして血小板由来成長因子(PDGF)レセプターまたはEGFレセプターの過剰発現は、神経膠腫および神経膠芽細胞腫中で一般的である(40〜50%)。EGFレセプターおよびPDGFレセプターは両方とも、それぞれのリガンドとの結合の際にrasを活性化することが公知であり、そしてv−erbBは、細胞外ドメインを欠損している構成的活性化レセプターをコードする。従って、レオウイルス治療(ras関連腫瘍細胞に対して高度に選択的である)は、多数の種々の腫瘍を処置するために使用され得る。
【0009】
レオウイルスは、バルクの調製で産生され、そして精製され得る(特許文献2)。レオウイルス調製物が、所望でない副作用を生じ得る外来性の物質を含まないことを確実にするために、その調製物は、感受性細胞系統および抗レオウイルス抗体を使用することによって確認される。従って、その細胞系統は、ウイルス調製物単独またはレオウイルス特異的中和抗体によって中和されたウイルス調製物のどちらかに曝露される。抗体で中和したウイルス調製物がなお、その細胞系統に対して病原性である場合、そのウイルス調製物は、外来ウイルスまたは他の生物を含むにちがいない。従って、その調製物は放棄されるか、またはさらに精製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,136,307号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0037576号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本確認プロトコルが、ウイルスを中和するために高親和性で高力価の抗体を多量に必要とする場合、本確認プロトコルは高くつく。本発明者らは、非常に効率的にレオウイルスを産生し得、抗体の必要量はさらにより多いため、この問題は、ここでさらに深刻になる。それゆえ、よりコスト効率の良いアプローチが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の開示)
本発明は、調製される微生物に特異的なリボザイムを使用して、微生物調製物を確認する方法を提供する。例えば、レオウイルスのゲノムを特異的に切断するリボザイムをコードするプラスミドが、レオウイルス感染に対して感受性である細胞に導入され得る。トランスフェクトされた細胞は、リボザイムの発現によって、レオウイルスを不活性化し得、従って、このウイルスに感染されない。次いで、このリボザイム発現細胞は、レオウイルス調製に供され、そしてレオウイルス調製物によって引き起こされるなんらかの病原効果が、外来性の物質がレオウイルス調製物中に存在することを示す。逆に言えば、いかなる病原効果も存在しないことは、この調製物が、検出可能な外来性の物質を有さないことを確認する。
【0013】
本方法はまた、DNAゲノムを有するウイルスまたは他の微生物に対しても適用可能である。DNAゲノムは、微生物による感染を成功させるためにRNAに転写されなければならないので、RNA転写物に対して特異的なリボザイムが、微生物の感染および複製を阻害する。ここでも、リボザイム発現細胞が、微生物調製物に起因するなんらかの病原効果を示す場合、外来性の物質がその調製物中に存在するにちがいない。同様に、本方法は、プリオンの調製物を確認するためにも使用され得る。
【0014】
従って、本発明は、レオウイルスを含む組成物中の外来性の物質の存在を検出する方法を提供し、本方法は、以下を包含する:
(a)レオウイルスのゲノムを特異的に切断し得るリボザイムを発現する、指標細胞の調製物を提供する工程;
(b)リボザイムによるレオウイルスのゲノムの切断を可能にする条件下で、指標細胞を組成物と接触させる工程;および
(c)指標細胞に対する組成物の効果を決定する工程(ここで、なんらかの病原効果が、レオウイルスに加えてその組成物中の外来性の物質の存在を示す)。
【0015】
この細胞は、リボザイムを一時的または永久に発現し得る。好ましくは、この細胞は、その細胞のゲノムに組み込まれたリボザイムコード遺伝子を含む。このリボザイムは、レオウイルスによる複製または感染のために重要なレオウイルスゲノムの任意の部分を切断し得る。例えば、このリボザイムは、レオウイルスのS1セグメントを切断し得る(例えば、Rz−553またはRz−984)。
【0016】
本方法は、任意のレオウイルス中の外来性の物質を検出するために使用され得る。レオウイルスは、好ましくは、哺乳動物レオウイルスであり、より好ましくは血清型3レオウイルスであり、最も好ましくは、Dearing系統のレオウイルスである。このレオウイルスは、組換えレオウイルスであり得る。組換えレオウイルスは、異なるサブタイプのレオウイルスとともに哺乳動物細胞を共感染させることにより生成され得る。この組換えレオウイルスは、天然に存在し得るか、または天然には存在しないものであり得る。この組換えレオウイルスは、2つ以上の系統のレオウイルス(特に、Dearing系統、Abney系統、Jones系統、およびLang系統からなる群から選択される2つ以上の系統のレオウイルス)由来であり得る。組換えレオウイルスはまた、異なる血清型(例えば、血清型1レオウイルス、血清型2レオウイルスおよび血清型3レオウイルスからなる群から選択される)由来のレオウイルスの再組み合わせから生じ得る。この組換えレオウイルスは、天然に存在する改変体被膜タンパク質コード配列または変異型被膜タンパク質コード配列を含み得る。
【0017】
本発明は、任意の微生物(任意のウイルスを含む)の組成物に適用され得る。従って、本発明は、RNAゲノムを含むウイルスまたは複製するためにRNA転写物を利用するウイルスを含む組成物における外来性の物質の存在を検出する方法を提供し、この方法は、以下を包含する:
(a)ウイルスのRNAゲノムまたはRNA転写物を特異的に切断し得るリボザイムを発現する指標細胞の集団を提供する工程;
(b)リボザイムによるウイルスのRNAゲノムまたはRNA転写物の切断を可能にする条件下で、指標細胞と組成物を接触させる工程;および
(c)指標細胞に対する組成物の効果を決定する工程(ここで、なんらかの病原効果が、ウイルスに加えて組成物中の外来因子の存在を示す)。
【0018】
この細胞は、リボザイムを一時的または永久に発現し得る。好ましくは、この細胞は、その細胞のゲノムに組み込まれたリボザイムコード遺伝子を含む。
【0019】
このウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。好ましくは、このウイルスは、腫瘍破壊性ウイルスであり、これは、新生物細胞中で選択的に複製し得る。好ましい腫瘍破壊性ウイルスとしては、改変アデノウイルス、改変HSV、改変ワクシニアウイルス、改変パラポックスオルフウイルス、改変インフルエンザウイルス、p53発現ウイルス、ONYX−015ウイルス、Delta24ウイルス、および水疱性口内炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の別の局面は、微生物を含む組成物を確認する方法を提供し、この方法は、以下を包含する:
(a)微生物の複製または感染を阻害するために、微生物のRNAゲノムまたはRNA転写物を特異的に切断し得るリボザイムを発現する指標細胞の集団を提供する工程;
(b)リボザイムによる微生物のRNAゲノムまたはRNA転写物の切断を可能にする条件下で、指標細胞を組成物と接触させる工程;および
(c)指標細胞に対する組成物の効果を決定する工程(ここで、いかなる病原効果も存在しないことが、その組成物を検出可能な外来性の物質を有さないとして確認する)。
【0021】
微生物は、好ましくはウイルスであり、より好ましくは新生物細胞中で選択的に複製し得るウイルスであり、そして最も好ましくはレオウイルスである。
【0022】
本発明の別の局面は、微生物の組成物中の外来性の物質を検出するために有用な指標細胞を提供し、この指標細胞は、その微生物のゲノムまたはRNA転写物を切断し得るリボザイムを持続的に発現する。好ましくは、このリボザイムをコードする遺伝子は、指標細胞のゲノムに組み込まれる。この微生物は、好ましくはウイルスであり、そしてより好ましくはレオウイルスである。この細胞は、好ましくはヒト胚腎臓293細胞(HEK 293細胞)に由来する。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
レオウイルスを含む組成物における外来性の物質の存在を検出する方法であって、当該方法は、以下:
(a)リボザイムを発現する指標細胞の集団を提供する工程であって、当該リボザイムは、当該レオウイルスのゲノムを特異的に切断し得る、工程;
(b)当該リボザイムによる当該レオウイルスのゲノムの切断を許容する条件下で、当該指標細胞を、当該組成物と接触させる、工程;および
(c)当該指標細胞に対する、当該組成物の効果を決定する工程であって、ここで、なんらかの病原効果は、当該組成物において、当該レオウイルスに加えて外来性の物質の存在を示す、工程、
を、包含する、方法。
・(項目2)
上記指標細胞が、当該細胞のゲノム内に組み込まれる遺伝子から上記リボザイムを発現する、項目1に記載の方法。
・(項目3)
上記リボザイムが、上記レオウイルスのs1 RNAを特異的に切断可能である、項目1に記載の方法。
・(項目4)
上記リボザイムが、Rz−553またはRz−984である、項目1に記載の方法。
・(項目5)
上記レオウイルスが、哺乳動物レオウイルスである、項目1に記載の方法。
・(項目6)
上記レオウイルスが、ヒトレオウイルスである、項目1に記載の方法。
・(項目7)
上記レオウイルスが、Dearing系統レオウイルスである、項目1に記載の方法。
・(項目8)
上記レオウイルスが、組換えレオウイルスである、項目1に記載の方法。
・(項目9)
上記組換えレオウイルスが、異なるサブタイプのレオウイルスと共に哺乳動物細胞に共感染させることにより生成される、項目8に記載の方法。
・(項目10)
上記組換えレオウイルスが、天然に存在する、項目8に記載の方法。
・(項目11)
上記組換えレオウイルスが、天然に存在しない、項目8に記載の方法。
・(項目12)
上記組換えレオウイルスが、2つ以上の系統のレオウイルスに由来する、項目8に記載の方法。
・(項目13)
上記2つ以上の系統のレオウイルスが、Daring系統、Abney系統、Jones系統、およびLang系統からなる群から選択される、項目12に記載の方法。
・(項目14)
上記組換えレオウイルスが、血清型1レオウイルス、血清型2レオウイルスおよび血清型3レオウイルスからなる群から選択されるレオウイルスの再組み合わせから生じる、項目8に記載の方法。
・(項目15)
上記組換えレオウイルスが、天然に存在する改変体被膜タンパク質コード配列を含む、項目8に記載の方法。
・(項目16)
上記組換えレオウイルスが、変異型被膜タンパク質コード配列を含む、項目8に記載の方法。
・(項目17)
ウイルスを含む組成物における外来性の物質の存在を検出する方法であって、当該ウイルスは、RNAゲノムを含むか、またはRNA転写物を利用して複製し、当該方法は、以下:
(a)リボザイムを発現する指標細胞の集団を提供する工程であって、当該リボザイムは、当該ウイルスのRNAゲノムまたはRNA転写物を特異的に切断することにより、当該ウイルスの複製または感染を阻害し得る、工程;
(b)当該リボザイムによる当該ウイルスのRNAゲノムまたはRNA転写物の切断を許容する条件下で、当該指標細胞を、当該組成物と接触させる工程;および
(c)指標細胞に対する当該組成物の効果を決定する工程であって、ここで、なんらかの病原効果は、当該組成物において当該ウイルスに加えて外来性の物質の存在を示す、工程、
を、包含する、方法。
・(項目18)
上記指標細胞が、当該細胞のゲノム内に組み込まれた遺伝子から上記のリボザイムを発現する、項目17に記載の方法。
・(項目19)
上記ウイルスがDNAウイルスである、項目17に記載の方法。
・(項目20)
上記ウイルスが、新生物細胞に選択的に感染し得る、項目17に記載の方法。
・(項目21)
上記ウイルスが、改変されたアデノウイルス、改変されたHSV、改変されたワクシニアウイルス、改変されたパラポックスウイルスオルフウイルス、改変されたインフルエンザウイルス、p53発現ウイルス、ONYX−015ウイルス、デルタ24ウイルス、および水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択される、項目17に記載の方法。
・(項目22)
微生物を含む組成物を確認する方法であって、当該方法は、以下:
(a)リボザイムを発現する指標細胞の集団を提供する工程であって、当該リボザイムは、当該微生物のRNAゲノムまたはRNA転写物を特異的に切断することにより、当該微生物の複製または感染を阻害し得る、工程;
(b)当該リボザイムによる当該微生物のRNAゲノムまたはRNA転写物の切断を許容する条件下で、当該指標細胞を、当該組成物と接触させる工程;および
(c)指標細胞に対する当該組成物の効果を決定する工程であって、ここで、なんらかの病原効果の非存在は、当該組成物が検出可能な外来性の物質を有さないことを確認する、工程、
を、包含する、方法。
・(項目23)
上記微生物がウイルスである、項目13に記載の方法。
・(項目24)
上記微生物が、新生物細胞に選択的に感染し得るウイルスである、項目13に記載の方法。
・(項目25)
上記微生物がレオウイルスである、項目13に記載の方法。
・(項目26)
上記微生物が、改変されたアデノウイルス、改変されたHSV、改変されたワクシニアウイルス、改変されたパラポックスウイルスオルフウイルス、改変されたインフルエンザウイルス、p53発現ウイルス、ONYX−015ウイルス、デルタ24ウイルス、および水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択される、項目13に記載の方法。
・(項目27)
微生物の組成物において、外来性の物質を検出するために有用な指標細胞であって、当該微生物のゲノムまたはRNA転写物を特異的に切断可能なリボザイムを持続的に発現する、指標細胞。
・(項目28)
上記リボザイムをコードする遺伝子が、上記細胞のゲノムに組み込まれる、項目27に記載の指標細胞。
・(項目29)
上記微生物がウイルスである、項目27に記載の指標細胞。
・(項目30)
上記微生物がレオウイルスである、項目27に記載の指標細胞。
・(項目31)
上記細胞がヒト胚性腎臓293細胞由来である、項目27に記載の指標細胞。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(本発明を実行するための方法)
本発明は、微生物に特異的なリボザイムを使用することによって、その微生物の調製物中の外来性の物質を検出する方法を提供する。従って、その微生物に対して感受性である細胞集団は、そのリボザイムをコードする発現ベクターによってトランスフェクトされ、そしてその微生物を含む組成物に曝露される。その細胞におけるその微生物の感染および/または複製は、そのリボザイムによって阻害される。従って、その微生物は、この細胞に対していかなる病原効果も引き起こさない。結果として、病原効果のなんらかの兆候は、その微生物調製物における外来性の物質の存在を示す。
【0024】
さらに詳細に本発明を記載する前に、本出願で使用される用語が、他のように示されない限り、以下のように定義される。
【0025】
(定義)
「外来性の物質」は、組成物中に含まれることが意図されない因子である。好ましくは、外来性の物質は、感染性の因子である(すなわち、細胞に感染し得る)。
【0026】
細胞に「感染する」とは、細胞へ侵入し、そしてその細胞中で複製する作用をいう。
【0027】
「リボザイム」は、別のRNA(「標的RNA」)を触媒的に切断し得るRNA分子またはRNA誘導体である。本発明のリボザイムは、天然に存在するリボザイムの特徴を有し得る。例えば、Tetrahymena thermophilaから分離されたリボザイムは、標的を切断する前に標的RNA配列にハイブリッドする8塩基対の活性部位を有する(例えば、ZaugおよびCech、1986を参照のこと)。遊離したグアノシン誘導体またはグアノシン誘導体が、この反応のために必要とされ、そしてグアノシンが、切断されたRNAの5’末端に付加される。本発明のリボザイムはまた、米国特許第5,254,678号において記載されるような合成リボザイムであり得る。これらの合成リボザイムは、別個のハイブリダイズ領域および触媒領域を有する:従って、このハイブリダイズ領域は、任意の標的配列を認識するために設計され得る。さらに、切断されたRNAは、これらのリボザイムによって改変されない。
【0028】
「指標細胞」は、リボザイムを発現する細胞であり、このリボザイムは、確認されるべき微生物を切断し、そして不活性化し得る。リボザイムを発現しない場合、この指標細胞は、その微生物の感染に対して感受性である。
【0029】
「病原効果」は、細胞の増殖または維持に対する有害作用(特に微生物感染に関連する効果)である。病原効果としては、細胞変性効果(CPE)、細胞破壊、増殖阻害、タンパク質合成阻害、およびアポトーシスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「細胞変性効果」は、細胞構造における観察可能な変化である。細胞変性効果は、細胞型および死亡原因とともに変化し得、そして当該分野で確立された知見に従って決定され得る。例えば、ウイルス感染の最も一般的な効果のいくつかは、例えば、(a)細胞球形化および基質からの剥離;(b)細胞溶解;(c)合胞体形成;ならびに(d)封入体形成のような形態変化である。レオウイルス感染細胞によって示される細胞変性効果は、例えば、外見上は膨張し、そして顆粒状の細胞およびバラバラになった細胞塊によって示される。
【0031】
本明細書中で使用される場合、組成物の「確認」は、その組成物が、使用される方法によって検出可能な外来性の物質を含まないことを証明することを、意味する。
【0032】
「レオウイルス」とは、天然に存在するもの、改変されたもの、または組換え体のいずれであろうと、レオウイルス属に分類される任意のウイルスをいう。レオウイルスは、二本鎖の、セグメント化されたRNAゲノムを有するウイルスである。そのビリオンは、直径60〜80nmに達し、そして2つの同心性カプシド殻(それぞれ正二十面体である)を保有する。このゲノムは、二本鎖RNAの10〜12個の分離したセグメント(16〜27kbpの総ゲノムサイズを有する)からなる。個々のRNAセグメントは、サイズが異なる。3つの、異なるが関連する型のレオウイルスが、多くの種から回収されている。3つの型全ては、共通の補体結合抗原を共有する。
【0033】
このヒトレオウイルスは、3つの血清型からなる;1型(Lang系統またはT1L)、2型(Jones系統、T2J)および3型(Dearing系統またはAbney系統、T3D)からなる。この3つの血清型は、中和阻害アッセイおよび血球凝集素阻害アッセイに基づいて容易に同定可能である(例えば、Fields、B.N.ら、1996を参照のこと)。
【0034】
このレオウイルスは、天然に存在し得るか、または改変され得る。このレオウイルスは、天然の供給源から単離されそしてヒトによって実験室で意図的に改変されていない場合、「天然に存在」する。例えば、このレオウイルスは、「野外供給源(field source)」由来、すなわち、そのレオウイルスに感染したヒト由来であり得る。
【0035】
このレオウイルスは改変されたが、活性ras経路を有する哺乳動物細胞になお溶菌性感染可能であり得る。レオウイルスは、増殖性の細胞に投与する前に化学的または生化学的に前処理(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンのようなプロテアーゼでの処理によって)され得る。プロテアーゼでの前処理は、ウイルスの外膜およびカプシドを除去し、そしてウイルスの感染性を増加し得る。レオウイルスは、リポソームまたはミセルでコートされ得る(ChandronおよびNibert、1998)。例えば、新たな感染性のサブビリオン粒子を生成するために、ビリオンは、ミセルを形成する濃度のアルキルスルフェート界面活性剤の存在下でキモトリプシンで処理され得る。
【0036】
レオウイルスは、2つ以上の遺伝的に異なるレオウイルスからのゲノムセグメントの組換え/再組み合わせから生じる、組換えレオウイルスであり得る。レオウイルスゲノムセグメントの組換え/再組み合わせは、少なくとも2つの遺伝的に異なるレオウイルスによる宿主生物への感染後に天然で起こり得る。組換えビリオンはまた、例えば、遺伝的に異なるレオウイルスでの許容宿主細胞への共感染によって、細胞培養物中で生成され得る(Nibertら 1995)。
【0037】
従って、本発明は、2つ以上の遺伝的に異なるレオウイルス(1型(例えば、Lang系統)、2型(例えば、Jones系統)、および3型(例えば、Dearing系統またはAbney系統)のようなヒトレオウイルス、非ヒト哺乳動物レオウイルス、またはトリレオウイルスが挙げられるが、これらに限定されない)からのゲノムセグメントの再組み合わせから生じる組換えレオウイルスを企図する。本発明は、2つ以上の遺伝的に異なるレオウイルス(少なくとも片側の親ウイルスは、遺伝子操作され、1つ以上の化学的に合成されたゲノムセグメントを含み、化学的変異誘発物質または物理的変異誘発物質で処理されているか、またはそれ自体が組換え事象の結果である)からのゲノムセグメントの再組み合わせから生じる組換えレオウイルスをさらに企図する。本発明は、化学的変異誘発物質(ジメチルスルフェートおよびエチジウムブロマイドが挙げられるが、これらに限定されない)、または物理的変異誘発物質(紫外線および他の形態の放射線が挙げられるが、これらに限定されない)の存在下で組換えを受けた組換えレオウイルスをさらに企図する。
【0038】
本発明は、1つ以上のゲノムセグメントにおける欠失または重複を含むか、宿主細胞ゲノムとの組換えの結果としてさらなる遺伝情報を含むか、または合成遺伝子を含む、組換えレオウイルスをさらに企図する。
【0039】
このレオウイルスは、変異した被膜タンパク質(例えば、σ1)のビリオン外膜カプシドへの取り込みによって改変され得る。このタンパク質は、置換、挿入または欠失によって変異され得る。置換は、異なるアミノ酸をネイティブなアミノ酸の代わりに挿入することを含む。挿入は、さらなるアミノ酸残基をこのタンパク質へ1つ以上の位置で挿入することを含む。欠失は、このタンパク質における1つ以上のアミノ酸残基の欠失を含む。このような変異は、当該分野において公知の技術によって引き起こされ得る。例えば、被膜タンパク質の1つをコードする遺伝子のオリゴヌクレオチド部位特異的変異誘発は、所望の変異体被膜タンパク質の生成を生じ得る。インビトロでのレオウイルスに感染した哺乳動物細胞(例えば、COS1細胞)における変異したタンパク質の発現は、その変異したタンパク質のレオウイルスビリオン粒子への取り込みをもたらす(TurnerおよびDuncan、1992;Duncanら、1991;Mahら、1990)。
【0040】
このレオウイルスは、好ましくは、そのレオウイルスに対する免疫反応を減少させるかまたは除去するように改変されたレオウイルスである。そのような改変されたレオウイルスは、「免疫防御レオウイルス」と称される。そのような改変は、そのレオウイルスを哺乳動物の免疫系から隠すためのリポソーム、ミセルまたはビヒクル中へのそのレオウイルスのパッケージング、ミセルまたはビヒクルを含み得る。あるいは、レオウイルスのビリオン粒子の外膜カプシドは、外膜カプシド中に存在するタンパク質が、宿主の体液性応答および細胞性応答の主要な決定因子であるので、取り除かれ得る。
【0041】
「増殖性障害を伴う細胞」としても公知である「新生物細胞」とは、異常に速い速度で増殖する細胞をいう。新生物細胞を含む新たな増殖は、新生物である(腫瘍としても公知である)。新生物は、正常な組織増殖より急速な細胞増殖によって増殖する異常な組織増殖であり、概して異なった塊を形成する。新生物は、構造的な組織化および正常な組織との機能的な協調または総合的な欠損を示し得る。本明細書中で使用される場合、新生物は、造血性の腫瘍および固形腫瘍を含むことが意図される。
【0042】
新生物は、良性(良性腫瘍)あるいは悪性(悪性腫瘍または癌)であり得る。悪性腫瘍は、3つの主要な型に幅広く分類され得る。上皮構造から生じる悪性新生物は、癌腫と呼ばれ、筋、軟骨、脂肪または骨のような結合組織に起源がある悪性腫瘍は肉腫と呼ばれ、そして免疫系の構成要素を含む造血構造(血球細胞の形成に関与する構造)に影響する悪性腫瘍は、白血病およびリンパ腫と呼ばれる。他の新生物としては、神経線維腫が挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
「ras活性化新生物細胞」または「ras媒介性新生物細胞」とは、ras経路の活性化に少なくとも一部起因して異常な速度で増殖する細胞をいう。このras経路は、ras遺伝子の構造的変異、ras遺伝子発現の上昇したレベル、ras遺伝子メッセージの上昇した安定性、あるいはrasまたはras経路においてrasから下流もしくは上流にある1つまたは複数の因子の活性化を導く任意の変異または他の機構を手段として活性化され得、それによってras経路活性を増加する。例えば、EGFレセプター、PDGFレセプターまたはsosの活性化は、ras経路の活性化をもたらす。ras媒介性新生物細胞としては、ras媒介性癌細胞(ras経路の活性化に起因して悪性の様式で増殖する細胞である)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「腫瘍破壊性(oncolytic)」ウイルスは、それを新生物細胞に選択的に感染し、殺傷し得るウイルスである。特に、腫瘍破壊性ウイルスは、新生物細胞中で選択的に複製し、そしてそれを溶解し得る。腫瘍破壊性ウイルスの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:改変されたアデノウイルス、改変されたHSV、改変されたワクシニアウイルス、改変されたパラポックスウイルスオルフウイルス、改変されたインフルエンザウイルス、p53発現ウイルス、ONYX−015ウイルス、デルタ24ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、hrR3を欠損した単純ヘルペスウイルス1変異体、ニューカッスル病ウイルス、脳炎ウイルス、帯状疱疹ウイルス、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、および麻疹ウイルス。
【0045】
用語「弱毒化アデノウイルス」または「改変アデノウイルス」は、PKR活性化がブロックされないように、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠失するか、阻害されるかまたは変異した、アデノウイルスを意味する。好ましくは、VAI RNAは、転写されない。このような弱毒化アデノウイルスまたは改変アデノウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞内で複製できないが、活性化ras経路を有する細胞に感染し、その細胞中で複製し得る。
【0046】
用語「弱毒化HSV」または「改変HSV」は、PKR活性化がブロックされないように、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠失するか、阻害されるかまたは変異した、単純ヘルペスウイルス(HSV)を意味する。好ましくは、HSV遺伝子γ134.5は、転写されない。このような弱毒化HSVまたは改変HSVは、活性化ras経路を有さない正常細胞内で複製できないが、活性化ras経路を有する細胞に感染し、その細胞中で複製し得る。
【0047】
「パラポックスウイルスオルフ(orf)ウイルス」は、ポックスウイルスである。これは、ヒトを含む種々の哺乳動物種において急性皮膚損傷を誘導する、ウイルスである。パラポックスウイルスオルフウイルスは、損傷した皮膚または傷んだ皮膚を通して、ヒツジ、ヤギおよびヒトに自然感染し、再生上皮細胞においてにおいて複製し、そして膿疱性の損傷(瘡蓋になる)を誘導する(Haigら,1998)。用語「弱毒化パラポックスウイルスオルフウイルス」または「改変パラポックスウイルスオルフウイルス」は、PKR活性化がブロックされないように、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠失するか、阻害されるかまたは変異した、パラポックスウイルスオルフウイルスを意味する。好ましくは、遺伝子OV20.0Lは、転写されない。このような弱毒化パラポックスウイルスオルフウイルスまたは改変パラポックスウイルスオルフウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞内で複製できないが、活性化ras経路を有する細胞に感染し、その細胞中で複製し得る。
【0048】
用語「弱毒化ワクシニアウイルス」または「改変ワクシニアウイルス」は、PKR活性化がブロックされないように、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠失するか、阻害されるかまたは変異した、ワクシニアウイルスを意味する。好ましくは、E3L遺伝子および/またはK3L遺伝子は、転写されない。このような弱毒化ワクシニアウイルスまたは改変ワクシニアウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞内で複製できないが、活性化ras経路を有する細胞に感染し、その細胞中で複製し得る。
【0049】
用語「弱毒化インフルエンザウイルス」または「改変インフルエンザウイルス」は、PKR活性化がブロックされないように、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠失するか、阻害されるかまたは変異した、インフルエンザウイルスを意味する。好ましくは、NS1遺伝子は、転写されない。このような弱毒化インフルエンザウイルスまたは改変インフルエンザウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞内で複製できないが、活性化ras経路を有する細胞に感染し、その細胞中で複製し得る。
【0050】
(方法)
本発明は、微生物を含む組成物中の、外来性の物質を検出する方法を提供する。この方法の実施形態は、実施例1において実証される。従って、外来性の物質がレオウイルス調製物中に存在するか否かを決定するため、リボザイム(Rz−553(Shahiら,2001))をコードするプラスミドが、構築される。Rz−553は、レオウイルスゲノムのS1セグメントにハイブリダイズする2つの8ヌクレオチド配列に隣接する触媒領域からなる、「ハンマーヘッド型」リボザイムである。S1は、細胞上のレオウイルスレセプターに結合するタンパク質σ1をコードする。したがって、S1 RNAの切断は、生じた全てのウイルスの感染性の低下を導く。触媒領域中の1ヌクレオチドが(GからUへ)変異したRz−553の変異体をコードするプラスミドもまた、構築される。この変異体は、完全に不活性であることが公知である。
【0051】
このプラスミドは、COS−1細胞に導入され、トランスフェクトされた細胞は、試験されるレオウイルス調製物のアリコートに曝される。偽感染細胞が、コントロールとして使用される。予期されるように、変異体リボザイムを発現する細胞は、広範なCPEを有した。しかし、Rz−553発現細胞も、偽感染細胞と比較した場合、中程度のCPEを示した。従って、レオウイルス調製物は、COS−1細胞上のCPEを生じた非レオウイルス物質を含む。
【0052】
微生物の標的RNA配列を切断することにより、この微生物の複製または感染を阻害し得る任意のリボザイムが、本発明において有用である。標的配列は、例えば、構造タンパク質(特に外側被膜タンパク質)、複製機構のタンパク質、または細胞への侵入に重要なタンパク質(例えばレセプタータンパク質)を、コードするRNAであり得る。配列特異的リボザイムを構築する方法は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,254,678号は、2つのハイブリダイゼーション領域に隣接する中央触媒領域を有するハンマーヘッド型リボザイムを、記載する。ハイブリダイゼーション領域を全体にわたり、事前に選択された標的配列にハイブリダイズする工程において、触媒領域は、標的配列の切断を容易にする二次構造を形成し、そして標的配列を切断する。この特許は、少なくとも1つのハイブリダイゼーション領域が最小で9個のハイブリダイズするヌクレオチドを有するリボザイムを記載するが、本発明において、このような最小の長さは、必要ではない。本発明において、それぞれのハイブリダイゼーション領域は、6個、7個、8個またはそれより多くの、ハイブリダイズするヌクレオチドを含み得る。
【0053】
米国特許第6,307,041号は、ハンマーヘッド型リボザイムの誘導体(ハンマーヘッド型リボザイムの環状、ヘアピン、環状/ヘアピン、ラリアットおよびヘアピン/ラリアット形態を含む)を記載する。これらのリボザイムは、増大した特異的活性および異なった補助因子要求性を有し、そして本発明においてもまた、使用され得る。他の例としては、例えば、米国特許第5,631,359号および同第5,631,115号に記載されるようなヘアピンリボザイムが、挙げられる。
【0054】
これらのリボザイムの全ては、少なくとも1つのハイブリダイゼーション領域、および触媒領域を有する。ハイブリダイゼーション領域は、標的配列に従って設計される。触媒領域は、例えば、ハンマーヘッド型リボザイム(米国特許第5,254,678号)、ヘアピンリボザイム(欧州出願第89 117 424号)、デルタ肝炎リボザイム(WO 91/04319およびWO 91/04324)、RNase Pリボザイム(米国特許第5,168,053号)、グループIイントロン(米国特許第4,987,071号)、グループIIイントロン(Pyle,1993)に由来し得る。
【0055】
本発明において、1つより多くのリボザイムを合わせ得ることもまた、企図される。例えば、同一のRNAの異なった領域を認識する多くのリボザイムが、合わされ得る。あるいは、そして好ましくは、同一の微生物の異なったRNAに特異的なリボザイムは、微生物の不活性化の効率を増大するために、共に使用され得る。複数のリボザイムが使用される場合、これらは、同一の発現ベクターにコードされ得るか、または別々にコードされ得る。
【0056】
本発明は、任意の微生物調製物中の外来性の物質の存在を検出するために、使用され得る。リボザイムはRNAのみを切断するが、本発明の適用は、RNAゲノムを有する微生物に限定されないことが、留意されるべきである。DNAゲノムを有する微生物は、感染過程の一部として、必然的にRNA転写物を介して複製する必要があり、そして/またはRNA転写物を介してタンパク質を合成する必要がある。プリオンでさえ、複製しそして感染するために、RNA転写物を必要とする。従って、任意の微生物の複製および感染は、微生物のRNA転写物/RNAゲノムを特異的に切断するリボザイムにより、阻害され得る。
【0057】
本発明の微生物は、好ましくはウイルスであり、より好ましくは、腫瘍破壊性ウイルスである。腫瘍破壊性ウイルスは、新生物細胞に選択的に感染しそしてそれを殺傷し得、従ってウイルス治療において有用である。レオウイルスに加え、これらのウイルスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:改変されたアデノウイルス、改変されたHSV、改変されたワクシニアウイルス、改変されたパラポックスウイルスオルフウイルス、改変されたインフルエンザウイルス、p53発現ウイルス、ONYX−015ウイルス、デルタ24ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、hrR3を欠損した単純ヘルペスウイルス1変異体、ニューカッスル病ウイルス、脳炎ウイルス、帯状疱疹ウイルス、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、および麻疹ウイルス。
【0058】
アデノウイルス、HSV、ワクシニアウイルス、およびパラポックスウイルスオルフウイルスは、二本鎖RNAキナーゼ(PKR)を克服するための機構を発達させているウイルスである。通常、ウイルスが細胞に侵入した場合、PKRが活性化されてタンパク質合成をブロックし、そのウイルスは細胞内で複製し得ない。しかし、アデノウイルスは、大量の低分子RNA(VA1 RNA)を作製し得る。VA1 RNAは、広範な二次構造を有し、そして二本鎖RNA(dsRNA)(通常はPKRを活性化する)と競合して、PKRに結合する。PKRを活性化するためには、最小の長さのdsRNAが必要とされるので、VA1 RNAは、PKRを活性化しない。その代わり、VA1 RNAは、その大量の量によって、PKRを隔絶する。その結果、タンパク質合成はブロックされず、アデノウイルスは、細胞内で複製し得る。しかし、タンパク質合成機構はブロックされないが、宿主細胞タンパク質合成は、ウイルスにより阻害され、ウイルスタンパク質合成を容易にすることを、留意すべきである。
【0059】
ワクシニアウイルスは、2つの遺伝子産物(K3LおよびE3L)をコードする。これらは、別々の機構を用いて、PKRをダウンレギュレートする。K3L遺伝子産物は、eIF−2α(PKRの天然の基質)のN末端領域に対して限定された相同性を有し、そしてPKRについての偽基質として作用し得る。E3L遺伝子産物は、dsRNA結合タンパク質であり、アクチベーターdsRNAを隔絶することにより、明白に機能する。
【0060】
同様に、単純ヘルペスウイルス(HSV)遺伝子γ134.5は、遺伝子産物である感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)をコードする。これは、PKRによって発揮される抗ウイルス効果を防ぎ得る。パラポックスウイルスオルフウイルスは、遺伝子OV20.0Lをコードする。これは、PKR活性のブロッキングに関与する。従って、これらのウイルスは、PKRに妨げられることなく、首尾よく細胞に感染し得る。
【0061】
改変されたアデノウイルス、改変されたHSV、改変されたワクシニアウイルス、または改変されたパラポックスウイルスオルフウイルスにおいて、そのウイルス性抗PKR機構は、変異されているか、さもなければ不活性化されている。従って、これらの改変ウイルスは、正常なPKR機能を有する正常細胞において、複製し得ない。しかし、Ras活性化新生物細胞は、PKRによるタンパク質合成阻害を受けない。何故なら、rasはPKRを不活性化するからである。従って、これらの細胞は、改変されたアデノウイルス、改変されたHSV、改変されたワクシニアウイルス、または改変されたパラポックスウイルスオルフウイルスによる感染に対して感受性である。
【0062】
ウイルスは、ウイルス性PKRインヒビターの公知の構造機能関連性に従って、改変され得るか、または変異され得る。例えば、ワクシニアウイルスのE3タンパク質のアミノ末端領域は、PKRのカルボキシ末端領域ドメインと相互作用するので、このドメインの欠失または点変異は、抗PKR機能を防ぐ(Changら(1992)(1993)(1995);Sharpら(1998);Romanoら(1998))。ワクシニアウイルスのK3L遺伝子は、pK3(PKRの偽基質)をコードする。K3L内には、機能喪失(loss−of−function)変異が存在する。eIF−2αにおける残基79〜83に相同なK3Lタンパク質のC末端部分を切り詰める工程、または点変異をこのC末端部分の範囲内に配置する工程のどちらかにより、PKR阻害活性は、消滅する(Kawagishi−Kobayashiら(1997))。
【0063】
改変されたHSVとしては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:R3616(γ134.5遺伝子の両コピーが欠失されている)、R4009(γ134.5遺伝子内に2つの停止コドンが挿入されている)およびG207(リボヌクレオチドレダクターゼおよびγ134.5において変異されている)(Andreanskyら(1996))。これらの改変されたウイルスは、脳腫瘍治療において使用されており、最近、R3616はras活性化細胞に優先的に感染することが知られている(Farassatiら(2001))。
【0064】
同様に、delNS1ウイルス(Bergmannら(2001))は、ras活性化新生物細胞において選択的に複製し得る、遺伝子操作されたインフルエンザAウイルスである。インフルエンザウイルスのNS1タンパク質は、宿主によるPKR媒介抗ウイルス性応答を克服する、毒性(virulence)因子である。NS1は、delNS1ウイルスがノックアウトされている。このdelNS1ウイルスは、恐らくPKR媒介阻害に起因して正常細胞に感染し得ないが、ras活性化新生物細胞において成功裏に複製する。従って、delNS1ウイルスのようにNS1が改変されたかまたは変異された、改変化インフルエンザウイルスもまた、本発明において有用である。
【0065】
他の腫瘍破壊性ウイルスとしては、腫瘍抑制遺伝子を保有することにより新生物細胞を、選択的に殺傷するウイルスが挙げられる。例えば、p53は、正常細胞の制御不能な増殖を阻害する、細胞性腫瘍抑制因子である。しかし、全ての腫瘍のおよそ半分が、機能の損なわれたp53を有し、制御不能な様式で増殖する。従って、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、p53遺伝子産物の不活性化に起因して新生物になる新生物細胞を、選択的に殺傷し得る。このようなウイルスは、変異体p53を発現する癌細胞においてアポトーシスを誘導するために構築され、示されている(Blagosklonnyら(1996))。
【0066】
同様のアプローチは、腫瘍抑制因子のウイルス性インヒビターを含む。例えば、特定のアデノウイルス、SV40およびヒトパピローマウイルスは、p53を不活性化するタンパク質を含み、それによって、これら自体を複製させる(Nemunaitis(1999))。アデノウイルス血清型5については、このタンパク質は、E1B領域にコードされる55Kdタンパク質である。ONYX−015ウイルス(Bischoffら(1996);Heiseら(2000);WO 94/18992)のように、この55kdタンパク質をコードするE1B領域が欠失された場合、55kd p53インヒビターは、もはや存在しない。結果として、ONYX−015が正常細胞に侵入した場合、p53が機能し、細胞性増殖機構に依存した細胞増殖およびウイルスの複製を抑制する。従って、ONYX−015は、正常細胞において複製しない。一方、p53機能不全の新生物細胞においては、ONYX−015は、複製し、最終的に細胞死を引き起こし得る。従って、このウイルスは、p53欠損新生物細胞に選択的に感染し、これを殺傷するために、使用され得る。当業者はまた、確立された技術に従い、アデノウイルス5または他のウイルスにおいてp53インヒビター遺伝子を、変異し、破壊し得る。
【0067】
別の例は、デルタ24ウイルスであり、これは、E1A領域内に24塩基対の欠失を有する変異体アデノウイルスである(Fueyoら(2000))。この領域は、細胞性腫瘍抑制因子Rbへの結合およびRb機能の阻害を担い、これにより、細胞増殖機構(およびそれ故ウイルスの複製)を、制御不能な様式で進行させる。デルタ24は、Rb結合領域に欠損を有し、Rbに結合しない。従って、その変異体ウイルスの複製は、正常細胞において、Rbによって阻害される。しかし、Rbが不活性化され、細胞が新生物になる場合、デルタ24は、もはや阻害されない。代わりに、変異体ウイルスは、効率的に複製し、Rb欠損細胞を溶解する。
【0068】
さらに他の腫瘍破壊性ウイルスとしては、インターフェロン感受性ウイルスが挙げられる。水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、インターフェロン存在下で、選択的に新生物細胞を殺傷する。インターフェロンは、細胞表面レセプターに結合する循環性の因子であり、この細胞表面レセプターは、標的細胞において、抗ウイルス応答と、増殖阻害シグナルおよび/またはアポトーシスシグナルの誘導との両方を、最終的に導く。インターフェロンは、理論的には、腫瘍細胞の増殖を阻害するために使用され得るが、この試みは、インターフェロン経路のメンバーの腫瘍特異的変異のため、あまり成功していない。
【0069】
しかし、インターフェロン経路を破壊して、インターフェロンによりもたらされる増殖阻害を回避することにより、腫瘍細胞は、同時にその抗ウイルス応答を弱め得る。実際、VSV(被膜されたネガティブセンスRNAウイルス)は、インターフェロン存在下で、種々のヒト腫瘍細胞株において迅速に複製し、これらを殺傷した。一方、正常ヒト一次細胞培養物は、インターフェロンによって明らかに保護された。VSVの腫瘍内注入もまた、皮下にヒト黒色腫異種移植片を保有するヌードマウスの腫瘍負荷を減少した(Stojdlら(2000))。
【0070】
他のインターフェロン感受性ウイルス(WO 99/18799)、すなわちインターフェロン存在下で正常細胞において複製しないウイルスは、正常細胞培養物を増殖させ、種々の濃度のインターフェロンの存在下でこの培養物を目的のウイルスと接触させ、次いで、一定時間のインキュベーション後に細胞殺傷の百分率を決定することにより、同定され得る。正常細胞は、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満しか殺傷されない。
【0071】
幾つかの新生物細胞が高レベルの酵素を発現する事実を利用し、この酵素に依存するウイルスを構築することもまた、可能である。例えば、リボヌクレオチドレダクターゼは、肝臓転移において豊富であるが、正常な肝臓においては乏しい。従って、リボヌクレオチドレダクターゼ発現の欠損した単純ヘルペスウイルス1(HSV−1)変異体(hrR3)は、結腸癌腫細胞において複製するが、正常肝臓細胞では複製しないことを示した(Yoonら(2000))。
【0072】
上述のウイルスに加えて、種々の他のウイルスが、腫瘍殺傷に関連しているが、その根底にある機構が、常に明らかなわけではない。ニューカッスル病ウイルス(NDV)は、悪性の細胞において優先的に複製し、最も一般的に使用される系統は、73−Tである(Reichardら(1992);Zomら(1994);Bar−Eriら(1996))。腫瘍内接種後、NDVが腫瘍負荷を減少する臨床的抗腫瘍活性もまた、種々の腫瘍(子宮頸部、結腸直腸、膵臓、胃、黒色腫および腎臓の癌を含む)において観察された(WO 94/25627;Nemunaitis(1999))。
【0073】
さらに、脳炎ウイルスが腫瘍破壊性効果を有することが、マウス肉腫において示されたが、正常細胞におけるその感染性を減少するために、弱毒化が必要であり得る。帯状疱疹ウイルス、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、または麻疹ウイルスに感染した患者における腫瘍退行が、記載されている(概説について、Nemunaitis(1999)を参照のこと)。従って、これらのウイルスもまた、腫瘍破壊性ウイルスの候補である。
【0074】
腫瘍細胞において複製を生じるように核酸が改変された、改変腫瘍破壊性ウイルスについて、リボザイムは、その改変された核酸に対応するRNAを切断するように設計され得る事が、企図される。このリボザイムは、指標細胞を調製するために、感受性腫瘍細胞に導入され得る。このリボザイムが、改変されたRNA(腫瘍細胞における感染性を担う)を切断するので、ウイルス調製物中に外来の物質が存在しない限り、感染は起こらない。
【0075】
(指標細胞)
指標細胞は、確認されるべき微生物の感染に対して感受性の細胞から調製されるべきである。適切なリボザイムをコードする構築物は、当該分野に公知の任意の方法(例えば、リン酸カルシウム沈降、リポソーム融合、リポフェクチン(lipofectin)(登録商標)、エレクトロポレーション、およびウイルス感染)によって、この感受性細胞に導入され得る。
【0076】
この構築物の一過性な導入または安定的な導入は、本発明において有用であり得る。しかし、指標細胞は、好ましくは永続的な様式で、リボザイムを発現する。この目的のため、リボザイムをコードする発現ベクターは、細胞のゲノムに組み込まれ得るか、またはエピソームベクター(例えば、ウシパピローマウイルスベクター)として導入され得る。代表的には、この発現ベクターは、選択マーカーを含み、発現ベクターを内包する細胞は、選択マーカーを使用して選択され、そして選択下で維持される。このようなベクターを構築するための方法、トランスフェクションのための方法および選択のための方法は、当該分野で周知である(例えば、Sambrookら(2001)を参照のこと)。
【0077】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供され、決して本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0078】
以下の実施例において、以下の略語は、以下の意味を有する。定義されない略語は、一般的に受け入れられる意味を有する。
【0079】
℃=セルシウス度
hr=時間
min=分
μM=マイクロモル濃度
mM=ミリモル濃度
M=モル濃度
ml=ミリリットル
μl=マイクロリットル
mg=ミリグラム
μg=マイクログラム
FBS=ウシ胎仔血清
PBS=リン酸緩衝化生理食塩水
DMEM=ダルベッコ改変イーグル培地
α−MEM=α改変イーグル培地
β−ME=β−メルカプトエタノール
MOI=感染多重度
PFU=プラーク形成単位
PKR=二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ
EGF=上皮成長因子
PDGF=血小板由来成長因子
CPE=細胞変性効果。
【0080】
(実施例1−レオウイルス調製物の試験)
レオウイルスを、米国特許出願番号09/920,012に従って調製し、精製する。簡潔には、ヒト胚性腎臓293 SF(293/SF)細胞を、15L攪拌フラスコ中で培養し、そして細胞密度が10/mlに達した時に、感染多重度0.5でレオウイルスに感染させる。この培養物を、細胞溶解が始まるまでインキュベートされる。この細胞溶解は、培地中のフェノールレッドの存在によって培地の色が赤から橙へ変化するか、または顕微鏡下での生細胞数によって、証明される。この時点で、細胞を、遠心分離によって収集し、再懸濁し、凍結/融解によって破壊する。次いで、このウイルスを、塩化セシウム濃度勾配により、精製する。
【0081】
COS−1細胞を、指標細胞として使用する。Shahiら(2001)に記載されるように、従って、COS−1細胞を、6−ウェルプレート内で60%の集密度まで増殖させ、リポフェクチン(GIBCO/BRL)を使用して、Rz−553をコードするDNAまたはコントロールDNA(変異体S1−Rz−553)でトランスフェクトする。pSVLacZ(Promega)を、全ての実験において共トランスフェクトして、一様なトランスフェクション効率を保証する。12時間後、この細胞を、新鮮な培地で1回洗浄し、そして1細胞あたり1PFUの感染多重度で、上述のレオウイルス調製物のアリコートで感染させる。偽感染細胞は、レオウイルス調製物を用いずに、同じ様式で処理する。感染から8時間後、細胞を、細胞変性効果(CPE)について観察する。
【0082】
変異体S1−Rz−553トランスフェクト細胞は、予期したように広範なCPEを示す。何故なら、変異体リボザイムは、レオウイルスを不活性化せず、レオウイルス感染は、感染細胞に対してCPEを引き起こすからである。しかし、Rz−553トランスフェクト細胞もまた、偽感染細胞と比較して、検出可能なCPEを示す。Rz−553は、レオウイルスを不活性化することが公知であるので、これらの結果は、このレオウイルス調製物が、COS−1細胞に対して細胞変性効果を引き起こす非レオウイルス物質を含むことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明

【公開番号】特開2012−125257(P2012−125257A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77593(P2012−77593)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2008−235697(P2008−235697)の分割
【原出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(501332264)オンコリティクス バイオテク,インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】