説明

外流し装置の構成部材

【課題】有害な土壌菌が外流し装置を介して拡散することを抑制できる外流し装置の構成部材を提供する。
【解決手段】外流し装置1は、台座2と、水栓パン3と、水栓柱4と、水栓5と、蓋体9とを備えている。外流し装置1の構成部材である台座2、水栓パン3、水栓柱4および蓋体9は、合成樹脂またはレジンコンクリートを主成分としかつ抗菌剤を含有した材料を用いて成形する。そして、それら構成部材2,3,4,9は、JISZ2801の試験細菌を土壌菌に置き換えてそのJISZ2801に準拠した試験方法で試験した場合には、接種した土壌菌の生菌数が24時間後に100分の1以下となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な土壌菌の拡散を抑制できる外流し装置の構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば一般的に多くの住宅では、泥で汚れた運動靴や服等の汚れ物を屋外で洗浄することを目的として、合成樹脂製の水栓柱および水栓パン等にて構成された外流し装置が庭先等に設置されている(特許文献1参照)。
【0003】
そして、特に郊外の住宅においては、例えば畑で作った野菜を収穫し、この収穫した野菜を外流し装置を使用して洗浄することも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−223323号公報(図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、泥まみれになった汚れ物や、畑から収穫された土まみれの野菜等を洗浄する場合、それらに付着している土壌から有害な土壌菌が外流し装置に持ち込まれるおそれがある。このため、このような有害な土壌菌が外流し装置を経由して様々な場所に広がることが懸念される。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、有害な土壌菌が外流し装置を介して拡散することを抑制できる外流し装置の構成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の外流し装置の構成部材は、屋外に設置される外流し装置の少なくとも一部を構成する構成部材であって、合成樹脂またはレジンコンクリートを主成分としかつ抗菌剤が配合された材料によって構成され、JISZ2801の試験細菌を土壌菌に置き換えてそのJISZ2801に準拠した試験方法で試験した場合には、接種した土壌菌の生菌数が24時間後に100分の1以下となるものである。
【0008】
請求項2記載の外流し装置の構成部材は、請求項1記載の外流し装置の構成部材において、土壌菌が軟腐病菌であるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、外流し装置の構成部材が、JISZ2801の試験細菌を土壌菌に置き換えてそのJISZ2801に準拠した試験方法で試験した場合には、接種した土壌菌の生菌数が24時間後に100分の1以下となるものであるため、有害な土壌菌が外流し装置を介して拡散することを抑制できる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、有害な土壌菌である軟腐病菌(Pectobacterium carotovorum、旧名Erwinia carotovora subsp. carotovora)が外流し装置を介して拡散することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る外流し装置の構成部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1において、1は外流し装置で、この外流し装置1は、例えば住宅の庭先等の屋外に設置された洗い場である。
【0014】
外流し装置1は、図1に示されるように、地面に設置された台座2と、この台座2上に設けられた槽形状の水栓パン3と、この水栓パン3から立ち上がるように設けられた筒形状の水栓柱4と、この水栓柱4の上端部前面から前方に向かって突出する蛇口部である例えば金属製の水栓5とを備えている。
【0015】
水栓5は、水栓柱4内に配設された水道管(図示せず)に接続されている。そして、水栓5のハンドル部6を開方向に操作すると、水栓5の吐水口部7から水が流れ出る。
【0016】
水栓パン3は、水栓5の吐水口部7から流れ出た水を受けるもので、この水栓パン3の排水口部8には排水管(図示せず)が接続されている。水栓柱4の上端部には蓋体9が取り付けられ、この蓋体9にて水栓柱4の上面開口が閉鎖されている。
【0017】
そして、外流し装置1の少なくとも一部を構成する構成部材(外流し装置1の構成部材)、すなわち例えば台座2、水栓パン3、水栓柱4および蓋体9の各々は、いずれも抗菌性に優れた同じ材料によってそれぞれ一体に成形されたものである。
【0018】
つまり、この外流し装置1に用いられる構成部材2,3,4,9(以下、「構成部材A」という)は、合成樹脂またはレジンコンクリートを主成分としかつ所定量の抗菌剤が配合された材料によって構成されている。換言すると、構成部材Aは、主成分である合成樹脂またはレジンコンクリートに抗菌剤が配合されたものである。
【0019】
そして、外流し装置1の構成部材Aは、JISZ2801の試験細菌を土壌菌である軟腐病菌に置き換えて、そのJISZ2801の抗菌性試験方法に準拠した試験方法で試験した場合には、接種した軟腐病菌の生菌数が24時間後に、100分の1以下(好ましくは1000分の1以下)となるものである。したがって、外流し装置1の構成部材Aは、軟腐病菌に対して優れた抗菌効果を発揮することができるため、外流し装置1を使用して野菜や運動靴等を洗浄しても、野菜等に付着した土壌から有害な軟腐病菌が外流し装置1を介して周囲に拡散することを抑制できる。
【0020】
ここで、本発明に用いられる抗菌剤は、式:[(M12+y(M22+1-y1-x3+x-aO(式中、M12+はZn2+および/またはCu2+を、M22+はMg2+および/またはCa2+を、M3+はAl3+、Fe3+、Co3+、Cr3+、In3+およびBi3+の中から選ばれた少なくとも一種の三価金属を示し、xおよびyは、0.01≦x<0.5、0<y≦1の範囲の数を示し、x−aはM3+の数が格子欠陥によりaだけ減少していることを示す)で表される酸化物である固溶体であり、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、他の無機系抗菌剤や、有機系抗菌剤と併用してもよい。そして、本発明に用いられる抗菌剤は、銀を含まないため、耐候性が良好であり、屋外用途に適している。
【0021】
また、抗菌剤の配合量は、合成樹脂に添加剤を加えたコンパウンド(混合物)100質量部に対して、0.1質量部以上、20質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上、10質量部以下である。
【0022】
なお、このコンパウンドに対する抗菌剤の配合量が0.1質量部未満の場合には抗菌性が不十分となるおそれがあり、20質量部を超える場合には強度物性や熱安定性が不十分となるおそれがある。
【0023】
本発明に用いられる合成樹脂は、例示すると次のとおりであるが、これらに限定されるものではない。ポリエチレン、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸メチルとの共重合体、ポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、ポリブテン−1、ポリスチレン、スチレンとアクリロニトリルまたはブタジエンとの共重合体、エチレンとプロピレンジエンゴムまたはブタジエンとの共重合体、酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ乳酸、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂。
【0024】
本発明の構成部材Aを得る場合には、合成樹脂に対して、添加剤として例えば熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、充填剤、補強材、骨材等を必要に応じて添加する。
【0025】
上記熱安定剤としては、特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム− 亜鉛系安定剤、バリウム− 亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、塩ビ系樹脂に用いる場合において抗菌剤にZnが含まれるときは、ジンクバーニング(亜鉛焼け)を防ぐような処方が好ましい。
【0026】
上記安定化助剤としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記滑剤としては、例えば、内部滑剤、外部滑剤等が挙げられる。内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。内部滑剤としては、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルステアレート、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリオレフインワックス、エステルワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記加工助剤としては、特に限定されず、例えば、質量平均分子10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記光安定剤としては、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記顔料としては、特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、意匠性をもたせるために、マイカ、セルロース繊維、木粉等を併用してもよい。
【0032】
上記充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記補強材としては、特に限定されず、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ビニロン繊維等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記骨材は、例えば、けい砂、砂利、砕石、玉石、合成骨材、計量骨材等が挙げられる。これらは単独や2種以上で併用してもよい。つまり、構成部材Aは、主成分である合成樹脂に抗菌剤を配合したものではなく、主成分であるレジンコンクリートに抗菌剤を配合したものでもよく、この場合、結合材として熱硬化性樹脂(レジン)を用いて骨材を結合するとともに抗菌剤を配合する。
【0035】
上記の各添加剤を、上記合成樹脂に混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法、ペレット化による等が挙げられる。
【0036】
本発明の構成部材A、つまり所定の抗菌剤を含有した合成樹脂製またはレジンコンクリート製の製品の成形方法は、従来公知の方法でよく、例えば、押出成形方法、射出成形方法、圧縮成型法が好適に用いられる。
【0037】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
「塩化ビニル系樹脂組成物の作成」
平均重合度1000の塩化ビニル系単独重合体100質量部にCa−Zn系安定剤3質量部、白色系顔料1質量部、アクリル系強化剤4質量部および重質炭酸カルシウム3質量部を加えたコンパウンド100質量部に対して、抗菌剤(商品名「Z−24」、株式会社海水化学研究所製)1質量部を配合し、この抗菌剤を配合したものをスーパーミキサー(30L、カワタ社製)によって攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0039】
「塩化ビニル系樹脂の水栓柱の成形」
この得られた塩化ビニル系樹脂組成物を2軸異方向回転押出成形機(東芝機械社製)に供給し、外径70mm、肉厚2mm、長さ1mの塩化ビニル系樹脂の水栓柱(角パイプ)を得た。
【0040】
(実施例2)
「ポリプロピレン系樹脂組成物の作成」
ポリプロピレン系ブロックコポリマー樹脂65質量部に重質炭酸カルシウム35質量部および白色系顔料1質量部を加えたコンパウンド100質量部に対して、抗菌剤(商品名「Z−24」、株式会社海水化学研究所製)1質量部を配合し、ポリプロピレン系樹脂組成物(成形用ペレット)を得た。
【0041】
「ポリプロピレン系樹脂の水栓パンの成形」
この得られたポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形機(東芝機械社製)に供給し、縦500mm、横550mm、深さ180mmのポリプロピレン系樹脂の水栓パンを得た。
【0042】
(実施例3)
「レジンコンクリート系樹脂組成物の作成」
スチレン系不飽和ポリエステル樹脂に熱可塑性樹脂スチレン溶液を加えた混合樹脂12質量部に無機系骨材87質量部と硬化剤および重合禁止材を合わせたもの1質量部とを加えたコンパウンド100質量部に対して、抗菌剤(商品名「Z−24」、株式会社海水化学研究所製)1質量部を配合し、レジンコンクリート系樹脂組成物を得た。
【0043】
「レジンコンクリート系樹脂の水栓パンの成形」
この得られたレジンコンクリート系樹脂組成物をプレス成形機に供給し、縦500mm、横550mm、深さ170mmのレジンコンクリート系樹脂の水栓パンを得た。
【0044】
(比較例1)
Ca−Zn系安定剤を添加する代わりにPb系安定剤3質量部を添加し、抗菌剤を除いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂の水栓柱を得て評価を行った。
【0045】
(比較例2)
抗菌剤を除いたこと以外は実施例2と同様にして、ポリプロピレン系樹脂の水栓パンを得て評価を行った。
【0046】
(比較例3)
抗菌剤を除いたこと以外は実施例3と同様にして、レジンコンクリート系樹脂の水栓パンを得て評価を行った。
【0047】
「軟腐病菌(土壌菌)に対する抗菌性の評価」
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた外流し装置の構成部材Aについて、JISZ2801(抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)の試験細菌を軟腐病菌に置き換え、試験方法はJIS規格に準じて評価し、その試験結果を表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
なお、JISZ2801(:2006)の抗菌性試験方法は、試験菌の前培養、試験片の調製、試験片の清浄化、試験菌液の調製、試験菌液の接種、試験菌液を接種した試験片の培養、接種した試験菌の洗い出し、寒天平板培養法による生菌数の測定という試験操作をこの順で行い、その後、測定した集落数から、式:N=C×D×V(式中、Nは生菌数(試験片1個当たり)を、Cは集落数(採用した2枚のシャーレの集落数平均値)を、Dは希釈倍数(採用したシャーレに分注した希釈液の希釈倍数)を、Vは洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(ml)を示す)によって、生菌数を求めた。各試験片は、外流し装置の構成部材(表1の水栓柱、水栓パン)を製作し、この製作したものから50mm角の正方形を切り取ったものである。
【0050】
なお、外流し装置1を構成する合成樹脂製またはレジンコンクリート製の構成部材のうち外部に露出するすべての構成部材を、それぞれ抗菌性に優れた同じ材料で構成してもよい。すなわち例えば水栓、水栓パンの排水口部を閉鎖するための栓、水栓柱を壁等に固定するための固定用バンド等も、水栓柱等と同じ材料で構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 外流し装置
2 構成部材である台座
3 構成部材である水栓パン
4 構成部材である水栓柱
9 構成部材である蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される外流し装置の少なくとも一部を構成する構成部材であって、
合成樹脂またはレジンコンクリートを主成分としかつ抗菌剤が配合された材料によって構成され、
JISZ2801の試験細菌を土壌菌に置き換えてそのJISZ2801に準拠した試験方法で試験した場合には、接種した土壌菌の生菌数が24時間後に100分の1以下となる
ことを特徴とする外流し装置の構成部材。
【請求項2】
土壌菌が軟腐病菌である
ことを特徴とする請求項1記載の外流し装置の構成部材。

【図1】
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