説明

外科手術用メッシュ

【課題】メッシュの破壊を防止するように強化された、柔軟な、しなやかな外科手術用メッシュを提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの糸からなる中心部分12であって、該糸は、開口部を形成するように相互接続されている、中心部分;および該中心部分の周りに延びる外周部分14であって、該外周部分は、少なくとも1つの高強度糸を備える、外周部分、を備える、移植物。上記中心部分の前記少なくとも1つの糸は、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって相互接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2010年2月2日に出願された米国仮出願番号61/300,532の利益および優先権を主張する。この米国仮出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、外科手術用メッシュに関し、そしてより特定すると、引き裂きの伝播およびメッシュの破壊を軽減するために、高強度繊維で強化された外科手術用メッシュに関する。
【背景技術】
【0003】
損傷組織または疾患組織を修復するための技術は、医学において普及している。創傷閉鎖デバイス(例えば、縫合糸およびステープル)、ならびに他の修復デバイス(メッシュまたはパッチ強化材など)は、修復のために頻繁に使用されている。例えば、ヘルニアの場合、腹壁を強化するためのメッシュまたはパッチの使用を包含する技術が使用される。このメッシュまたはパッチは、腹壁に適応し、そして腹壁の動きに合わせて曲がる目的で、一般に柔軟かつしなやかである。このメッシュまたはパッチは、周囲組織に縫合またはステープル留めすることにより、適所に保持され得る。
【0004】
ヘルニア修復手順において、術後合併症が生じ得る。例えば、直線状の引き裂きが、外科手術用メッシュの縦糸方向または横糸方向のいずれかに沿って形成され得、これによって、修復されたヘルニア開口部におけるメッシュの破壊を引き起こし得る。別の例において、外科手術用メッシュの繊維が、この外科手術用メッシュの外周において、縫合糸/メッシュ境界において破断し得、これによって、腹壁におけるこのメッシュの安全性を低下させ得る。このことは、このメッシュを腹壁から剥離させ得、これによって、ヘルニア欠損部の外科手術修復を損ない得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メッシュの破壊を防止するように強化された、柔軟な、しなやかな外科手術用メッシュを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1つの糸からなる中心部分であって、該糸は、開口部を形成するように相互接続されている、中心部分;および
該中心部分の周りに延びる外周部分であって、該外周部分は、少なくとも1つの高強度糸を備える、外周部分、
を備える、移植物。
【0007】
(項目2)
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸は、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって相互接続されている、上記項目に記載の移植物。
【0008】
(項目3)
前記中心部分が、少なくとも1つの一次糸および少なくとも1つの高強度糸を含む、少なくとも2つの糸からなる、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0009】
(項目4)
前記少なくとも1つの高強度糸が、少なくとも1Gpaの引張り強度を有する、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0010】
(項目5)
前記少なくとも1つの高強度糸が、前記中心部分を形成する前記少なくとも1つの糸の引張り強度よりも少なくとも2倍高い引張り強度を有する、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0011】
(項目6)
前記少なくとも1つの高強度糸が、前記中心部分を形成する前記少なくとも1つの糸の引張り強度よりも少なくとも5倍高い引張り強度を有する、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0012】
(項目7)
前記少なくとも1つの高強度糸が、前記中心部分を形成する前記少なくとも1つの糸の引張り強度よりも少なくとも10倍高い引張り強度を有する、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0013】
(項目8)
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸が、少なくとも部分的に、前記移植物の前記外周部分内まで延びている、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0014】
(項目9)
前記少なくとも1つの高強度糸が、編成、製織、縫い付け、縫い取り、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって、前記移植物の前記外周部分の前記少なくとも1つの糸と混ざっている、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0015】
(項目10)
前記移植物の周りに、前記少なくとも1つの高強度糸のみから形成された端縁部をさらに備える、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0016】
(項目11)
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸が、前記移植物の前記外周部分全体に延びている、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0017】
(項目12)
前記端縁部が、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって形成されている、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0018】
(項目13)
前記外周部分が、前記少なくとも1つの高強度糸のみから形成されている、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0019】
(項目14)
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸が、少なくとも1つの二成分繊維を含む、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0020】
(項目15)
前記二成分繊維が、非吸収性コアを備える、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0021】
(項目16)
前記二成分繊維が、前記非吸収性コアを囲む吸収性シースを備える、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0022】
(項目17)
前記少なくとも1つの高強度糸がモノフィラメント糸である、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0023】
(項目18)
前記少なくとも1つの高強度糸がマルチフィラメント糸である、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0024】
(項目19)
前記少なくとも1つの高強度糸が超高分子量ポリエチレンからなる、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0025】
(項目20)
前記少なくとも1つの高強度糸が高分子量ポリエチレンテレフタレートからなる、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0026】
(項目21)
前記少なくとも1つの高強度糸が少なくとも1つの二成分繊維を含む、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0027】
(項目22)
前記二成分繊維が非吸収性コアを備える、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0028】
(項目23)
前記二成分繊維が、前記非吸収性コアを囲む非吸収性シースを備える、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0029】
(項目24)
前記非吸収性コアが超高分子量ポリエチレンである、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0030】
(項目25)
前記外周部分が、前記中心部分の引張り強度より少なくとも50%高い引張り強度を有する、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0031】
(項目26)
前記外周部分の前記引張り強度が、前記中心部分の前記引張り強度よりも約100%高い、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0032】
(項目27)
前記外周部分の前記引張り強度が、前記中心部分の前記引張り強度よりも約200%高い、上記項目のいずれかに記載の移植物。
【0033】
(摘要)
移植物は、中心部分、およびこの中心部分の周りに延びる外周部分を備え、この中心部分は、少なくとも1つの糸からなり、この糸は、開口部を形成するように相互接続されている。この外周部分は、少なくとも1つの高強度糸を備える。
【0034】
(要旨)
本開示の移植物は、外周部分により囲まれた中心部分を備える。この中心部分は、少なくとも1つの糸からなり、この少なくとも1つの糸は、開口部を形成するように相互接続されている。この外周部分は、少なくとも1つの高強度糸を備える。ある実施形態において、この中心部分の少なくとも1つの糸は、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって相互接続されている。いくつかの実施形態において、この中心部分の少なくとも1つの糸は、たて編みまたは製織によって相互接続されている。この中心部分は、少なくとも2つの糸を含み得、少なくとも1つの糸は、一次糸であり、そして少なくとも1つの糸は、高強度糸である。
【0035】
いくつかの実施形態において、この移植物の高強度糸は、少なくとも1Gpaの引張り強度を有し得る。他の実施形態において、この高強度糸の引張り強度は、一次糸の引張り強度の少なくとも2倍であり、ある実施形態においては、高強度糸は、一次糸の引張り強度の約5倍の引張り強度を有し、そしてなお他の実施形態においては、高強度糸は、一次糸の引張り強度の10倍を超える引張り強度を有する。
【0036】
外周部分の引張り強度は、中心部分の引張り強度より高い。ある実施形態において、この外周部分は、この中心部分の引張り強度よりも少なくとも50%高い引張り強度を有する。いくつかの実施形態において、この外周部分の引張り強度は、この中心部分の引張り強度よりも約100%高く、そして他の実施形態においては、この外周部分の引張り強度は、この中心部分の引張り強度よりも約200%高い。
【0037】
この中心部分の少なくとも1つの糸は、少なくとも部分的に、この移植物の外周部分内まで延び得、いくつかの実施形態においては、この移植物の外周部分全体に延び得る。このような実施形態において、この少なくとも1つの高強度糸は、編成、製織、縫い付け、縫い取り、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって、この移植物の外周部分の少なくとも1つの糸と混ざっている。いくつかの実施形態において、端縁部が、この移植物の周りに形成され得、この端縁部は、少なくとも1つの高強度糸のみから形成される。この端縁部は、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって形成され得る。
【0038】
この外周部分もまた、少なくとも1つの高強度糸のみから形成され得る。ある実施形態において、この少なくとも1つの高強度糸は、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって、この中心部分に相互接続される。いくつかの実施形態において、この少なくとも1つの高強度糸は、縁編み(welt knitting)、または縦糸方向と横糸方向への製織によって、相互接続される。
【0039】
この中心部分の少なくとも1つの糸は、少なくとも1つの二成分繊維を含み得る。ある実施形態において、この二成分繊維は、非吸収性コア、およびこの非吸収性コアを囲む吸収性シースを備える。
【0040】
この少なくとも1つの高強度糸は、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよい。ある実施形態において、この高強度糸は、超高分子量ポリエチレンからなり得る。他の実施形態において、この高強度糸は、高分子量ポリエチレンテレフタレートからなり得る。この少なくとも1つの高強度糸は、少なくとも1つの二成分繊維を含み得る。ある実施形態において、この二成分繊維は、非吸収性コア、およびこの非吸収性コアを囲む非吸収性シースを備える。いくつかの実施形態において、この非吸収性コアおよび/または非吸収性シースは、超高分子量ポリエチレンである。
【0041】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の実施形態を図示する。これらの図面は、上に与えられた本開示の一般的な説明、および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒になって、本開示の原理を説明する役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本開示に従う外科手術用メッシュの二成分繊維の1つの実施形態の断面図である。
【図2】図2は、本開示に従う外科手術用メッシュの二成分繊維の別の実施形態の断面図である。
【図3】図3は、本開示に従う外科手術用メッシュの二成分繊維のなお別の実施形態の断面図である。
【図4】図4は、本開示に従う外科手術用メッシュの二成分繊維の別の実施形態の断面図である。
【図5】図5は、本開示に従う外科手術用メッシュの1つの実施形態の概略図である。
【図6】図6は、本開示に従う外科手術用メッシュの別の実施形態の概略図である。
【図7】図7は、本開示に従う外科手術用メッシュのなお別の実施形態の概略図である。
【図8】図8は、本開示に従う外科手術用メッシュの別の実施形態の概略図である。
【図9】図9は、本開示に従う外科手術用メッシュの中心部分の1つの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示に従う外科手術用メッシュは、布地から製造され、この布地は、少なくとも1つの高強度繊維を含む糸の外周部分(すなわち、外側部分)によって相互接続されて結合されている、糸の中心部分(すなわち、内側部分)を備える。この中心部分は、この移植物に一次構造を提供し、一方で、この外周部分は、この移植物を破壊に対して耐性にする。メッシュの破壊としては、このメッシュの一体性を損ない得る他の欠損のうちでもとりわけ、引き裂きおよび引き裂きの伝播、繊維または糸の破断、縫合糸/メッシュ界面における分離などの事項が挙げられる。外科手術用メッシュは、ヘルニアの外科手術的修復のために特に適切であるが、これらのメッシュは、軟部組織の欠損の修復を必要とする、他の外科手術手順(例えば、筋肉または壁組織の欠損、骨盤器官の脱出、尿失禁、スポーツ外科手術、および整形外科用途)に関連して使用され得ることが想定される。本開示のメッシュは、シート、パッチ、三角布、サスペンダー、および他の移植物の形態であり得、そして外科用綿撒糸、バットレス、創傷包帯、薬物送達デバイスなどの複合材料であり得る。
【0044】
この外科手術用メッシュを形成する糸は、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよく、これらの糸は、任意の適切な生体適合性材料から作製され得る。このメッシュが作製され得る適切な材料は、以下の特徴を有するべきである:ヘルニアを引き起こしている筋膜壁の欠損の修復中に筋膜壁を支持するために充分な引張り強度;身体内に長期間にわたって保持される場合に、異物反応を回避するために充分に不活性であること;このメッシュが身体内に移植される場合に、感染の導入を防止するために容易に滅菌されること;および身体内の所望の位置への配置のために適切に容易な取り扱い特徴。このメッシュは、筋膜壁に適応するため、およびこの壁の動きと共に曲がるために充分にしなやかであるべきであり、同時に、そのメッシュ形状を保持するために充分に硬くあるべきである。このメッシュはまた、その一部分(このメッシュを組織に固定するために外科手術用ファスナーが付けられる部分が挙げられる)が引き裂けることを回避するために充分に強いべきである。
【0045】
いくつかの実施形態において、これらの糸は、少なくとも2つのフィラメントを備え、これらのフィラメントは、間に開口部を作製するように配置され得、そしてこれらの糸はまた、このメッシュに開口部を形成するように、互いに対して配置され得る。あるいは、このメッシュは、このメッシュに開口部を生じるループに配置された、1本の連続的な糸から形成され得る。本開示に従う、間隔を空けた糸を有するメッシュの使用は、身体内に移植される異物の質量を減少させながら、このメッシュにより修復される欠損部および組織をしっかりと支持するために充分な引張り強度を維持するという利点を有する。さらに、本開示のメッシュの開口部は、線維芽細胞の増殖および内方成長、ならびに規則的なコラーゲンの並び(laydown)を可能にするサイズにされ得、身体内へのこのメッシュの組み込みを生じ得る。従って、糸間の間隔は、当業者により想定されるような、外科手術用途および所望の移植特徴に依存して変動し得る。さらに、欠損の種々のサイズ、および修復を必要とし得る種々の筋膜の種々のサイズに依存して、このメッシュは、任意の適切なサイズのものであり得る。
【0046】
これらの糸は、編組されるか、ねじられるか、整列されるか、融合されるか、または他の様式で接合されて、種々の異なるメッシュ形状を形成し得る。少なくとも2つのフィラメントが1本の糸を形成している実施形態において、これらのフィラメントは、延伸されるか、配向されるか、捲縮されるか、撚糸されるか、編組されるか、混繊されるか、または空気で絡まされて、この糸を形成し得る。これらの糸は、製織され得るか、編成され得るか、織り交ぜられ得るか、編組され得るか、または不織技術により外科手術用メッシュに形成され得る。このメッシュの構造は、このメッシュを形成するために利用される組み立て技術、ならびに他の要因(例えば、使用される繊維の型、糸が保持される張力、およびメッシュの必要とされる機械的特性)に依存して、変動する。
【0047】
ある実施形態において、編成が、本開示のメッシュを形成するために利用され得る。編成は、ある実施形態において、糸を相互にかみ合わせてループを形成すること、または糸での相互のループ形成を包含する。いくつかの実施形態において、糸はたて編みされ得、これによって、垂直な重なり合うループ鎖を作製し、そして/またはよこ編みされ得、これによって、メッシュを横切る重なり合うループの目の列を作製する。他の実施形態において、製織が、本開示のメッシュを形成するために利用され得る。製織は、ある実施形態において、互いに直角に交差して織り合わされる2セットの真っ直ぐな糸(縦糸および横糸)の交差を含み得るか、または互いに直角な2つの糸の織り交ぜを含み得る。いくつかの実施形態において、これらの糸は、等方性またはほぼ等方性の引張り強度および弾性を有する、ネットメッシュを形成するように配置され得る。
【0048】
ある実施形態において、これらの糸は織られないかもしれず、これらの糸を機械的にか、化学的にか、または熱的に結合させることにより、ランダムな配列または系統的な配列のシートまたはウェブに形成され得る。例えば、糸は、編成または製織以外の手段(例えば、絡ませること、圧縮、ステッチボンディング、ニードルパンチング、もしくは糸を他の様式で重ね合わせて結合剤なしの網目構造を形成すること)によって、これらの糸を絡ませることにより機械的に結合されて、メッシュを形成し得る。他の実施形態において、このメッシュの糸は、接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)の使用により化学的に結合され得るか、あるいは結合剤(例えば、粉末、ペースト、または融解物)を付けてこの結合剤を糸のシートまたはウェブ上で融解することにより熱的に結合され得る。
【0049】
これらの糸は、外科手術手順において使用され得る任意の生分解性ポリマーおよび/または非生分解性ポリマーから製造され得る。用語「生分解性」は、本明細書中で使用される場合、生体吸収性材料と生体再吸収性材料との両方を包含するように定義される。生分解性とは、分解生成物が身体により排出可能または吸収可能であるように、その材料が身体条件下で分解するかもしくは構造的一体性を失うこと(例えば、酵素分解もしくは加水分解)、または身体内の生理学的条件下で(物理的もしくは化学的に)分解することを意味する。吸収性材料は、所定の期間の終了時にインビボで生物学的組織により吸収されて消失する。この期間は、この材料の化学的性質に依存して、例えば数時間から数ヶ月間まで変動し得る。このような材料としては、天然材料、合成材料、生体吸収性材料、および/または特定の非生体吸収性材料、ならびにこれらの組み合わせが挙げられることが理解されるべきである。
【0050】
代表的な天然生分解性ポリマーとしては、多糖類(例えば、アルギネート、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、コラーゲン、ゼラチン、フカン、グリコサミノグリカン、およびこれらの化学的誘導体(化学基(例えば、アルキル、アルキレン、アミン、スルフェートが挙げられる)の置換および/または付加、ヒドロキシル化、カルボキシル化、酸化、ならびに当業者により慣用的になされる他の修飾));ガット;絹;リネン;綿;およびタンパク質(例えば、アルブミン、カゼイン、ゼイン、絹、ダイズタンパク質)、ならびにこれらのコポリマーおよびブレンド(単独または合成ポリマーとの組み合わせ)が挙げられる。
【0051】
糸を形成するために使用され得る、合成により修飾された天然ポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサン)が挙げられる。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。
【0052】
糸を形成するために使用され得る、代表的な合成生分解性ポリマーとしては、ラクトンモノマー(例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、ε−カプロラクトン、バレロラクトン、およびδ−バレロラクトン)から調製されたポリヒドロキシ酸、カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノンおよびp−ジオキサノン)、ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。これらから形成されるポリマーとしては、ポリラクチド;ポリ(乳酸);ポリグリコリド;ポリ(グリコール酸);ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ジオキサノン);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ(ラクチド−co−(ε−カプロラクトン));ポリ(グリコリド−co−(ε−カプロラクトン));ポリカーボネート;ポリ(偽アミノ酸);ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバレレート)、ポリヒドロキシオクタノエート、およびポリヒドロキシヘキサノエート);ポリアルキレンオキサレート;ポリオキサエステル;ポリ酸無水物;ポリエステル無水物;ポリオルトエステル;ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせが挙げられる。
【0053】
合成分解性ポリマーはまた、発泡してホスホリルコリン(例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、ヒドロキサメート、ビニルフラノンおよびこれらのコポリマー、ならびに第四級アンモニアを包接するような親水性ビニルポリマー;ならびに他のポリマー(例えば、ラクトン、オルトエステル、およびヒドロキシブチレートなど)と組み合わせた種々のアルキレンオキシドコポリマーを包含する。
【0054】
生体で迅速に腐食可能なポリマー(例えば、ポリマーの表面が腐食する際に外部表面に露出するカルボン酸基を有する、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ酸無水物、およびポリオルトエステル)もまた使用され得る。
【0055】
他の生分解性ポリマーとしては、ポリホスファゼン;ポリプロピレンフマレート;ポリイミド;ポリマー薬物(例えば、ポリアミン);パーフルオロアルコキシポリマー;フッ素化エチレン/プロピレンコポリマー;PEG−ラクトンコポリマー;PEG−ポリオルトエステルコポリマー;これらのブレンドおよび組み合わせが挙げられる。
【0056】
このメッシュが形成され得る適切な非分解性材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(超高分子量ポリエチレンが挙げられる)およびポリプロピレン(アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチック、およびこれらのブレンドが挙げられる));ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー;フッ素化ポリオレフィン(例えば、ポリフルオロエチレン、ポリフルオロプロピレン、フルオロPEG、およびポリテトラフルオロエチレン);ポリアミド(例えば、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、およびポリカプロラクタム);ポリアミン;ポリイミン;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート);ポリエーテル;ポリブタエステル(polybutester);ポリテトラメチレンエーテルグリコール;1,4−ブタンジオール;ポリウレタン;アクリルポリマー;メタクリル酸;ハロゲン化ビニルポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル);ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル);ポリビニリデンハロゲン化物(例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン);ポリクロロフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;ポリアリールエーテルケトン;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン);ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル);エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー;アクリロニトリル−スチレンコポリマー;ABS樹脂;エチレン−酢酸ビニルコポリマー;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリホスファジン;ポリイミド;エポキシ樹脂;アラミド;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;スパンデックス;シリコーン;ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。
【0057】
特定の実施形態において、本開示の高強度糸は、高分子量ポリエチレンテレフタレートまたは超高分子量ポリエチレンから構成され得る。
【0058】
本開示に従う糸は、1つ以上の二成分繊維を含み得る。二成分繊維とは、異なる化学特性および/または物理特性を有し得る、2つのポリマーからなる繊維である。図1に図示されるように、二成分繊維2は、コアポリマー4およびシースポリマー6を備える。コアポリマー4は、非吸収性材料または長期間持続する吸収性材料から製造され得、そしてシースポリマー6は、上に列挙されたもののような非吸収性材料または吸収性材料のいずれかから製造され得る。
【0059】
二成分繊維2は、この実施形態に図示されるように、2つの異なるポリマーから共押し出しされて、同心状のシース−コア配置を示す、モノフィラメント繊維であり得る。繊維2は、丸い断面形状を有し、シースポリマー6により囲まれるコアポリマー4を備え、コアポリマー4とシースポリマー6との両方が、共通の中心を有する。他の断面形状(例えば、図2の繊維2aにより図示されるような平坦な断面形状、および当業者により想定されるようなより複雑な輪郭を有する繊維を生じるように共押し出しされ得る、他の改変された断面)が想定される。図3に図示されるように、二成分繊維2bはまた、偏心的なシース−コア配置を示し得る。繊維2bは、シースポリマー6bにより囲まれた、中心がずれたコアポリマー4bを備える。
【0060】
図4に図示されるように、二成分繊維2cはまた、マルチフィラメント繊維であり得、コアポリマー4cの微小デニールフィラメントから紡糸および加工される。繊維2cは、「海の中の島」の配置を示し、この配置において、2つ以上の「島」すなわちコアポリマーフィラメント4cが、「海」すなわちシースポリマー6cにより囲まれている。この配置は、島ポリマーフィラメント4cの非常に微細なストランドが、製造設備により効果的に取り扱われて、紡糸されて繊維2cを形成するために提供され得る。コアポリマーフィラメント4cは、これらのフィラメントの長さに沿って一般に交差しないように配置され得る。平行である必要はないが、コアポリマーフィラメント4cは、一般に、これらのフィラメントの長さの実質的な部分にわたって、絡まりも織り混ぜも存在しない。あるいは、コアポリマーフィラメント4cは、当業者の知識の範囲内である種々のプロセスによって、製織され得るか、編組され得るか、または絡まされ得る。コアポリマーフィラメント4cは、シースポリマー6cの内側に紡糸され得る。ある実施形態において、約3程度に少ないコアポリマーフィラメント4c、および約50以上に多いコアポリマーフィラメント4cが、単一の繊維2cを形成するために効果的に取り扱われ得る。
【0061】
このシースポリマーは、当業者の知識の範囲内である任意の手段によって、この二成分繊維のコアポリマーに付けられ得る。これらの手段としては、押し出し;共押し出し;引き出し;上記プロセスのうちの1つを伴うゲル紡糸;溶融コーティング;スプレーコーティング;超音波スプレーコーティング;静電コーティング;粉末コーティング;溶媒/浸漬コーティング(例えば、ディッピング);スプレー;溶媒エバポレーション;シース熱圧着(heat crimping);化学的表面修飾;これらの組み合わせなどが挙げられる。ある実施形態において、粉末コーティングは、乾燥形態のポリマー粒子をコーティングし、そしてこれらのポリマー粒子を融解して相似被覆(conformal coating)を形成することにより、達成され得る。他の実施形態において、このシースポリマーは、化学的表面修飾によって、このコアポリマーに付けられ得る。これらの化学的表面修飾としては、エネルギーベースの重合(例えば、紫外線、γ線、熱および/または化学物質により開始されるプロセス)、あるいは電子線重合(コアを形成するために利用されるポリマーの存在下で、分解性ポリマーを重合させることを包含し得る)が挙げられ得る。コーティングとして付けられる場合、このシースポリマーは、生体適合性溶媒(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール、アセトン、イソプロパノール、塩化メチレン、クロロホルム、これらの組み合わせなど)を含有する溶液中に存在し得る。
【0062】
ある実施形態において、このコアポリマーの表面は、このコア内にシースポリマーの少なくとも一部分を繋留または含浸することを補助するために、ある程度の多孔度を有し得る。このコアポリマーの多孔度はまた、シースポリマーの分解/吸収後の組織内方成長に備え得る。ある実施形態において、多孔度は、コアポリマーの表面を粗くすることにより達成される。あるいは、このコアポリマーは、コアポリマーとシースポリマーとが互いに対する接着をほとんどまたは全く示さないように、滑らかな非多孔性表面を維持し得る。
【0063】
ある実施形態において、二成分繊維は、非吸収性または長期間持続する吸収性コア、およびより短期間持続する吸収性シースを備え得る。この吸収性シースは、移植を容易にするために、このメッシュに堅さおよび剛性を提供し得、そして分解して、しなやかな可撓性のコアを身体内への長期間の移植のために残す。この二成分繊維のシースは、コア部分のみが長期間(代表的に、組織内方成長を可能にするために充分に長い期間)にわたって身体内に残されるように、様々な時間以内で身体により吸収され得る。この吸収性部分は、ほんの数時間から1時間未満までの速い分解速度を有する、上記のような生体内で迅速に腐食するポリマーまたは他の高速吸収ポリマーであり得る。他の実施形態において、この吸収性部分は、移植後約2日間〜約180日間で吸収され得る。
【0064】
二成分繊維のシースポリマーが吸収性である実施形態において、このシースポリマーは、一般に、迅速な分解のために薄く、従って、この繊維の断面のうちの大部分がコアポリマーである。いくつかの実施形態において、このコアポリマーは、繊維の断面の約65%〜約95%であり、他の実施形態においては、約70%〜約90%であり、そしてなお他の実施形態においては、約80%である。
【0065】
ある実施形態において、二成分繊維の吸収性シースは、二成分繊維全体に堅さを提供し、これによって、全体としてのメッシュに堅さを提供する。他の実施形態において、この吸収性シースは、外科手術用メッシュが折り畳まれる場合に、このメッシュがその元の幾何学的形状に自発的に広がり得るように、堅さを示す。なお別の実施形態において、二成分繊維の吸収性シースは、この外科手術用メッシュが腹腔鏡デバイスを通して体腔内に移動された後に、その元の幾何学的形状に再形成することを可能にする。
【0066】
生物活性剤が、本開示の外科手術用メッシュに添加され得る。「生物活性剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素)。あるいは、生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の薬剤;組織成長、細胞増殖および/もしくは細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物;生物学的作用(例えば、免疫応答)を起こし得るかもしくは防止し得る化合物;または1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る化合物であり得る。種々の生物活性剤がこのメッシュに組み込まれ得る。さらに、組織修復を増強し得、敗血症の危険性を制限し得、メッシュの機械的特性(例えば、水中での膨潤率、引張り強度など)を調節し得る、任意の剤が、フィラメントまたはメッシュの調製中に添加され得るか、あるいはこのメッシュの開口部の表面または内側にコーティングされ得る。
【0067】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、および酵素が挙げられる。生物活性剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0068】
本開示において存在し得る他の生物活性剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性避妊薬;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0069】
本開示に含有され得る適切な生物活性剤の他の例としては、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにアナログ、ムテイン、ならびにその活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質;性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNAおよびRNA);オリゴヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0070】
いくつかの実施形態において、生物活性コーティングが、1種以上の生物活性剤を含有する組成物またはコーティングとしてメッシュに塗布され得るか、あるいは生物活性剤は、適切な生体適合性溶媒中に分散され得る。特定の生物活性剤のために適切な溶媒は、当業者の知識の範囲内である。
【0071】
二成分繊維を利用する実施形態において、この二成分繊維は、本開示のメッシュを形成するためと、生物活性剤を送達するためとの両方のために使用され得る。従って、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物活性剤は、組み合わせてかまたは別々に、このメッシュの個々の二成分繊維に、生物活性剤の迅速な放出のためにコーティングとして付けられ得、この二成分繊維のシースに、このシースが吸収性である場合に分解中に放出するために付けられ得、そして/またはこのコアに、経時的な長期間にわたる放出のために付けられ得る。例えば、これらの生物活性剤は、この二成分繊維のコアまたはシースを形成するポリマーと結合しない状態で混合され得るか、あるいは任意の適切な化学結合を介してこれらのポリマーに繋留され得る。
【0072】
生物活性剤を含有する任意のコーティング組成物が、繊維または糸全体を封入し得る。あるいは、生物活性コーティングが、繊維または糸の1つ以上の面に塗布され得る。このようなコーティングは、メッシュの望ましい治療特徴を改善する。
【0073】
生物活性剤は、当業者に公知である任意の適切な方法を利用して、このメッシュに付けられ得る。いくつかの例としては、スプレー、ディッピング、層状化、カレンダリングなどが挙げられるが、これらに限定されない。この生物活性剤はまた、このメッシュに他の様式で組み込まれるかまたは付けられてもよい。
【0074】
このメッシュの中心部分は、上記任意の様式で相互に接続された、上に列挙された材料のいずれかで製造された、一次糸を備え得る。いくつかの実施形態において、この中心部分は、一次糸および1つ以上の高強度糸を備え得る。このメッシュの外周部分は、少なくとも1つの高強度糸を備え、この高強度糸は、単独で使用され得るか、または中心部分の一次糸のうちのいずれかと組み合わせて使用され得る。この外周部分は、中心部分の一次糸と同じ様式、または異なる様式で、相互に接続され得る。
【0075】
これらの高強度糸は、メッシュの大部分を構築するために使用される一次糸より強い。ある実施形態において、これらの高強度糸は、このメッシュの一次糸と色の差をつけるために染色されて、外科医がこれらの高強度糸を見分けることを補助し得る。例えば、高強度糸の可視化は、メッシュを組織に固定するための外科手術用ファスナーの適切な配置を補助し得る。さらに、これらの糸の可視化は、外科医がこのメッシュを配向して標的組織を覆って適切に配置することを補助し得る。
【0076】
高強度糸は、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよく、上記任意の吸収性材料または非吸収性材料から製造され、少なくとも1.0Gpaの引張り強度を有する。ある実施形態において、この高強度糸は、超高分子量ポリエチレンであり、単独で使用されるか、または他のポリマーフィラメントと組み合わせて使用される。高強度糸は、一次糸の引張り強度の少なくとも2倍である引張り強度を有すると特徴付けられ得、ある実施形態においては、高強度糸は、一次糸の引張り強度の約5倍の引張り強度を有し、そしてなお他の実施形態においては、高強度糸は、一次糸の引張り強度の10倍を超える引張り強度を有する。
【0077】
従って、高強度糸を含む外周部分の引張り強度は、一次糸を含む中心部分の引張り強度より高い。従って、このメッシュの外周部分は、このメッシュの中心部分と比較して、破壊に対してより耐性がある。外周部分の引張り強度は、中心部分の引張り強度よりも少なくとも10%高い。ある実施形態において、外周部分の引張り強度は、中心部分の引張り強度よりも約50%高く、他の実施形態においては、外周部分の引張り強度は、中心部分の引張り強度よりも約100%高く、そしてなお他の実施形態においては、外周部分の引張り強度は、中心部分の引張り強度よりも約200%高い。
【0078】
これらの高強度糸は、単独でかまたは他のポリマーフィラメントと組み合わせて、1つ以上の二成分繊維を備え得る。ある実施形態において、これらの高強度糸の二成分繊維は、非吸収性コアおよび非吸収性シースを備え得る。ある実施形態において、シースとコアとの重量比は、約5:1であり、他の実施形態においては、この比は約3:1であり、そしてなお他の実施形態においては、この比は2:1未満である。本開示に従う高強度糸として利用され得る非吸収性の二成分糸の一例、およびその形成方法は、米国特許第7,582,576号において議論されており、その全内容は、本明細書中に参考として援用される。代替の実施形態において、シースとコアとの重量比は、約1:5である。
【0079】
高強度糸は、このメッシュの外周部分全体を形成し得るか、または高強度糸は、このメッシュの外周部分内および/またはこの外周部分全体に延びる中心部分の一次糸と混ぜられ得る。これらの高強度糸は、種々の方法(例えば、当業者の知識の範囲内である他の技術のうちでもとりわけ、混繊、相互ブレンド、織り混ぜ、および編成、製織、縫い付け、縫い取りによって糸を織り合わせること)のいずれかで、一次糸と混ぜられ得ることが理解されるべきである。様々な構成の例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0080】
ここで図5を参照すると、本開示に従う外科手術用移植物の1つの実施形態が示されている。メッシュ10は、中心部分12、および中心部分12から半径方向外向きに延びる外周部分14を備える。糸16は、たて編みされて中心部分12を形成する。外周部分14は、高強度糸18のみから構成され、これらの高強度糸は、中心部分12の周りに縁編みされる。
【0081】
図6は、高強度糸がメッシュの一次糸と織り合わされている、外科手術用移植物の1つの実施形態を図示する。メッシュ20は、中心部分22、および中心部分22の外周の周りに延びる外周部分24を備える。2セットの糸26aおよび26bが織られて中心部分22を形成する。外周部分24は、一次糸26aおよび26bを通して織られた高強度糸18を含む。
【0082】
図7および図8は、高強度糸がメッシュの一次糸と混ぜられている、外科手術用移植物の実施形態を図示する。図7に図示されるように、中心部分32の糸36は、外周部分34内に延びる。高強度糸38は、メッシュ30の外周部分34の糸36を通して織り交ぜられる。図8は、メッシュ40の外周部分44に部分的に延びる、中心部分42の糸46を図示する。高強度糸48は、メッシュ40の外周部分44で一次糸46の周りに縫われ、そして外側に延びて、メッシュ40の周りに高強度糸48の端縁部49を形成する。
【0083】
図9は、一次糸56と高強度糸57との両方が織られて中心部分52を形成している、メッシュの中心部分52の1つの実施形態を図示する。外周部分(図示せず)は、この外周部分の引張り強度が、上記のように、この中心部分の引張り強度より高くなるような、任意の構成の高強度糸を備える。任意の数の一次糸56および高強度糸57が、種々の配置およびパターンで使用されて、このメッシュの中心部分52を形成し得、同時に外周部分に対する中心部分の相対的な引張り強度を維持し得ることが想定される。
【0084】
一般に、本開示の移植物は、本明細書中に図示および説明されるものに限定されず、代替のメッシュ(組織の内方成長を容易にするために、より多くの細孔または連続細孔構造を有するメッシュが挙げられる)が利用され得ることが理解されるべきである。
【0085】
本開示の糸から形成される外科手術用メッシュは、観血外科手術中に付けられ得る。観血手術中に、この外科手術用メッシュの硬さは、外科医による取り扱いの容易さを可能にする。吸収性ポリマーを利用する実施形態において、その吸収性の繊維またはシースは、このメッシュを組織に付けて付着させた後に溶解し得、ヘルニア修復の長期間の一体性を維持するために必要とされる、充分に強いメッシュを残す。この残ったメッシュは、可撓性であり、筋膜壁の形になる。このメッシュまた、ある実施形態において、メッシュと組織との間に起こり得る癒着を防止および/または低減させるために使用され得る。
【0086】
あるいは、この外科手術用メッシュは、最小侵襲性外科手術中に付けられ得る。腹腔鏡外科手術手順は、最小侵襲性手順であり、この手順において、身体の小さい入口開口部を通して挿入された、細長い展開デバイスを使用することによって、身体内で手術が実施される。内視鏡デバイスまたは腹腔鏡デバイスが身体の内側を通ることを可能にするための、身体組織の最初の開口部は、身体の自然な通路であり得るか、または組織穿孔デバイス(例えば、トロカール)により作製され得る。腹腔鏡手順中に、狭い穿孔または切開が作製され得、これによって、体腔に対する外傷を最小にし、そして患者の回復時間を短縮する。
【0087】
腹腔鏡展開デバイスが、メッシュを体腔内に移動させるために使用され得る。このようなデバイスは、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許出願公開第2006/0229640号、同第2006/0200170号、および/または同第2006/0200169号に開示されるデバイスが挙げられる。これらの米国特許出願公開の各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0088】
本開示によるメッシュは、小さい切開(例えば、長さが約1cm〜約2cm)または組織の穿孔を通して、腹腔鏡展開デバイス(例えば、針またはトロカール)を使用して、挿入され得る。このメッシュは、丸められ得るかまたは折り畳まれ得、これによって、体腔内への移動のために、このデバイス内に嵌る。吸収性シースを利用する実施形態において、この吸収性シースは、メッシュが移動デバイスを出る際に、丸められたメッシュまたは折り畳まれたメッシュをその元の幾何学的形状に、部分的にかまたは完全に再度開くために充分な堅さを、このメッシュに提供し得る。
【0089】
吸収性シースを利用する実施形態において、二成分繊維のシースは、外科手術用移植物に、外科手術的取り扱いのために必要とされる特徴を提供する。身体への挿入後、この二成分繊維のシースポリマーは、身体により吸収され得、このメッシュのコアポリマーの減少した塊を残し得、これは、より柔軟な、より適応性のメッシュを生じ得る。
【0090】
本開示のメッシュの高強度糸は、移植物に、メッシュを組織に固定するために必要とされる適切な特徴を提供し、そしてこのメッシュの一次糸における引き裂きの伝播を最小にするかまたは排除する。外周部分全体を通してかまたはこの外周部分と混合することなどにより、高強度糸をこのメッシュの構造に組み込むことによって、外科手術用ファスナーでの固定中のこのメッシュの引き裂きが減少し得る。なぜなら、これらの高強度糸は、ファスナーの穿孔部位から広がり得る引き裂き、および身体の動きの際にこのメッシュに付与される力により形成される引き裂きを低減するために必要な強度を有するからである。さらに、このメッシュの低強度の中心部分における引き裂きの伝播は、外周部分の高強度糸によって、一部分に抑えられ得る。
【0091】
本開示の数個の実施形態が記載されたが、本開示はこれらの実施形態に限定されることは意図されない。なぜなら、本開示は、当該分野が許容すると同程度まで範囲が広いこと、および本明細書も同様に読まれることが意図されるからである。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、本開示の実施形態の例示であると解釈されるべきである。このメッシュにおいて利用されるポリマー、ならびに中心部分および外周部分を形成する方法、このメッシュの中心部分と外周部分とを相互接続する方法、および高強度糸を外周部分に組み込む方法の、種々の改変およびバリエーションが、上記詳細な説明から当業者に明らかになる。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内であることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
2 (二成分)繊維
4 コアポリマー
6 シースポリマー
10 メッシュ
12 中心部分
14 外周部分
16 (一次)糸
18 高強度糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの糸からなる中心部分であって、該糸は、開口部を形成するように相互接続されている、中心部分;および
該中心部分の周りに延びる外周部分であって、該外周部分は、少なくとも1つの高強度糸を備える、外周部分、
を備える、移植物。
【請求項2】
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸は、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって相互接続されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前記中心部分が、少なくとも1つの一次糸および少なくとも1つの高強度糸を含む、少なくとも2つの糸からなる、請求項1に記載の移植物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの高強度糸が、少なくとも1Gpaの引張り強度を有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの高強度糸が、前記中心部分を形成する前記少なくとも1つの糸の引張り強度よりも少なくとも2倍高い引張り強度を有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの高強度糸が、前記中心部分を形成する前記少なくとも1つの糸の引張り強度よりも少なくとも5倍高い引張り強度を有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの高強度糸が、前記中心部分を形成する前記少なくとも1つの糸の引張り強度よりも少なくとも10倍高い引張り強度を有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項8】
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸が、少なくとも部分的に、前記移植物の前記外周部分内まで延びている、請求項1に記載の移植物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの高強度糸が、編成、製織、縫い付け、縫い取り、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって、前記移植物の前記外周部分の前記少なくとも1つの糸と混ざっている、請求項1に記載の移植物。
【請求項10】
前記移植物の周りに、前記少なくとも1つの高強度糸のみから形成された端縁部をさらに備える、請求項9に記載の移植物。
【請求項11】
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸が、前記移植物の前記外周部分全体に延びている、請求項9に記載の移植物。
【請求項12】
前記端縁部が、編成、製織、およびこれらの組み合わせのうちの1つによって形成されている、請求項10に記載の移植物。
【請求項13】
前記外周部分が、前記少なくとも1つの高強度糸のみから形成されている、請求項1に記載の移植物。
【請求項14】
前記中心部分の前記少なくとも1つの糸が、少なくとも1つの二成分繊維を含む、請求項1に記載の移植物。
【請求項15】
前記二成分繊維が、非吸収性コアを備える、請求項14に記載の移植物。
【請求項16】
前記二成分繊維が、前記非吸収性コアを囲む吸収性シースを備える、請求項15に記載の移植物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの高強度糸がモノフィラメント糸である、請求項1に記載の移植物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの高強度糸がマルチフィラメント糸である、請求項1に記載の移植物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの高強度糸が超高分子量ポリエチレンからなる、請求項1に記載の移植物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの高強度糸が高分子量ポリエチレンテレフタレートからなる、請求項1に記載の移植物。
【請求項21】
前記少なくとも1つの高強度糸が少なくとも1つの二成分繊維を含む、請求項1に記載の移植物。
【請求項22】
前記二成分繊維が非吸収性コアを備える、請求項21に記載の移植物。
【請求項23】
前記二成分繊維が、前記非吸収性コアを囲む非吸収性シースを備える、請求項22に記載の移植物。
【請求項24】
前記非吸収性コアが超高分子量ポリエチレンである、請求項22に記載の移植物。
【請求項25】
前記外周部分が、前記中心部分の引張り強度より少なくとも50%高い引張り強度を有する、請求項1に記載の移植物。
【請求項26】
前記外周部分の前記引張り強度が、前記中心部分の前記引張り強度よりも約100%高い、請求項25に記載の移植物。
【請求項27】
前記外周部分の前記引張り強度が、前記中心部分の前記引張り強度よりも約200%高い、請求項25に記載の移植物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−156359(P2011−156359A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15838(P2011−15838)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】