説明

外科的手順識別システムおよび外科用システムを操作する方法

【課題】外科用パックの全内容物を識別でき、これらの内容物に対するシステムの操作パラメータを自動的に調節できるシステムを提供する。
【解決手段】外科用システムコンソールは外科用コンソール制御(CPU等)に対しパックの内容物を識別するべく外科用パック上の唯一無二の識別子に関連して動作する、バーコードスキャナ、磁気読取装置または他の感知手段(光学、磁気、または他のシステム等)システムのような電子識別システムを有する。パック内の情報は、在庫管理、製品使用法、追跡性、患者の請求書作成、統計データの収集、OR支持、外科用コンソールによる外科的操作パラメータの自動設定、サービスおよび外科用パックの内容物のリストまたは他の記録可能な手段(DVD、CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードドライブ、ZIPドライブ等)上へのプリントアウトのような種々の他の用途に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して白内障外科的処置に関し、特に白内障除去に係る超音波白内障乳化吸引法(phacoemulsification)に用いられる外科用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の目は、その最も簡単な言葉で表現すると、角膜と呼ばれる透明な外側部分を介して光を送り、水晶体を経由して網膜上に像を焦点づけることによって像を提供するよう機能する。焦点づけられた像の質は、目の大きさや形状および角膜や水晶体の透明度を含む多くの要因に依存する。
【0003】
年齢または病気により水晶体の透明度が低下したとき、網膜に送られ得る光が減少するので、像は悪化する。この目の水晶体における欠点は、医学的に白内障として知られている。この状態に対して認められている治療は、水晶体を外科的に除去し、その水晶体機能を人工の眼内レンズ(IOL:intraocular lens)で置換えることである。
【0004】
米国において、他の水晶体除去種(modalities)が導入される一方、大多数の白内障水晶体は、いまだに超音波白内障乳化吸引法と呼ばれる外科医術により除去されている。この手順中、薄い超音波白内障乳化吸引法用切取り先端部が、病気の水晶体に挿入され超音波で振動する。振動する切取り先端部は水晶体を液化または乳化し、それゆえ水晶体は目から吸引される。病気の水晶体は、一度除去されると、人工のレンズにより置換えられる。
【0005】
眼科の手順のために適切な典型的な超音波外科装置は、超音波駆動手持ち部品、付属切取り先端部、洗浄スリーブ管および電子制御コンソールからなる。手持ち部品アセンブリは、電気ケーブルとフレキシブルチューブとで電子制御コンソールに取付けられている。電気ケーブルを介して、コンソールは、手持ち部品により付属切取り先端部へ送られる出力レベルを変え、フレキシブルチューブは、手持ちアセンブリを介して、洗浄液を目に供給し、目から吸引液を吸出す。切取り先端部、流体チューブ、カセット、布およびスリーブのようなシステムの処分可能な部分は、通常外科パック(pak)の形式で完成ユニットとして合わせて売られている。
【0006】
使用上、切取り先端部の終端および洗浄スリーブは、角膜、強膜または他の位置における予め決定された幅の小さい切開部に挿入される。切取り先端部は、水晶発振駆動された超音波ホーンにより、洗浄スリーブ内の長手軸に沿って超音波で振動し、これにより選択された組織を本来の場所で洗浄する。切取り先端部の中空の穴は、ホーンの穴に通じ、今度はホーンの穴が、手持ち部品からコンソールへの吸引ラインに通じる。コンソール内の減少した圧力または真空源は、切取り先端部の開放終端部、切取り先端部、ホーン穴部および吸引ラインを介して、目から収集装置に洗浄組織を吸出すか吸引する。洗浄組織の吸引は、洗浄スリーブの内側表面と切取り先端部との間の小さな環状ギャップを介して外科の患部に注入されるサリン洗浄溶液または洗浄剤により補助される。
【0007】
デジタル回路において過去数年の間になされた進歩に伴い、製造業者は、特別な技術または状況に合わせるように操作パラメータを自動的に可変できる外科用器具を設計し製作することが可能となった。吸引液の流量率、真空、洗浄液の流量率および、圧力および手持ち部品の出力およびデューティサイクルのような操作パラメータは、特別な外科的処置または外科的手順に対しプログラム可能である。加えて、種々の切取り先端部、スリーブ、チューブおよびカセットは、外科医により使用される医術に合うように、あつらえることが(特注)できる。システムを最適化するため、操作パラメータ、先端部、スリーブ、チューブおよびカセットは、全て共に動作するように設計されることが重要である。今日利用可能な種々の処分可能な製品について、外科医が、外科用コンソールの操作パラメータが使用された外科用パックの内容物に対し最適であったか否かを知ることは困難である。
【0008】
一つの従来技術による装置が、使用されたカセットの型式を識別する外科用コンソールによって使用できる識別システムを有する外科用カセットを開示する米国特許第5,899,764号および第6,059,544号(ユング他)において例示されている。他の同様な装置が、使用されたカセットの型式を識別すると同時に何回カセットが使用されたかを示すため外科用コンソールによって使用できる識別システムを有する外科用カセットを開示する米国特許第6,036,458号(コール他)において例示されている。これらの引用文献は、何れも外科用コンソールが外科用パック内に収容された全項目を識別でき、これら内容物に対するシステムの操作パラメータを自動的に調節できるシステムを開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、外科用パックの全内容物を識別でき、かつこれらの内容物に対するシステムの操作パラメータを自動的に調節できるシステムの提供が引続き望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外科用コンソール制御(例えば、CPU)に対しそのパックの内容物を識別するように、外科用パック上の唯一無二の識別子に関連して、動作する、バーコードスキャナ、磁気読取装置または他の感知手段(例えば、光学、磁気または他のシステム)のような電子的識別システムを有する外科用システムコンソールを提供することにより、従来技術を改善する。この情報は、在庫管理、製品使用法、追跡性、OR支持、患者の請求書作成、統計データの収集、外科用コンソールによる外科的操作パラメータの自動設定、サービスおよび外科用パックの内容物のリストまたは他の記録可能な手段(例えば、DVD、CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードドライブ、ZIPドライブ)上へのプリントアウトのような種々の他の用途に利用できる。
【0011】
したがって、本発明の一つの目的は、電子識別システムを有するコンソールを備えた外科用システムを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、外科用コンソールに対して識別できる内容物を有する外科用パックを備えた外科用システムを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる他の目的は、外科用パックの内容物からの情報が外科用コンソールに対して識別可能であり、その外科用コンソールがその外科用コンソールによって使用される操作パラメータを自動的に設定するために上記情報を使用する、外科用システムを提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1において最もよく解るように、本発明のシステム10は、概して、外科用コンソール12および外科用パック14を含む。コンソール12は、テキサス州、フォートワースのアルコン研究所から調達可能なSERIES TWENTY THOUSAND(登録商標)のLEGACY(登録商標)またはACCURUS(登録商標)外科用システムのような適切に改造された商業上調達可能な外科用コンソールでよい。パック14は、テキサス州、フォートワースのアルコン研究会社により販売されているような、適切に改造された商業上調達可能な外科用パックの何れのものでもよい。また、パック14は、図2において最もよく解るように、切取り先端部、スリーブ、プローブ、カセット、チューブセット、注射器、布、等のような、特別な外科的手順を実行するために要求される種々の構成要素16の何れかを含むものでよい。代替パック14は、医薬、粘着/弾性作用剤または眼内レンズを含むことができる。構成要素16は、蓋17によりトレイ15内に無菌状態で保たれる。
【0015】
図3において最もよく解るように、パック14は、パック14の内容物を識別するバーコードのような識別デバイス18を含む。識別デバイス18は、バーコードのような外部に設けられたものでも磁気装置のような内部に設けられたものでもよい。使用上、識別デバイス18は、読取装置21に供せられるか、またはコンソール12に接続される。読取装置21は、識別デバイス18、識別パック14およびパック14内に含まれた構成要素16を認識し、この情報をコンソール12に送信する。コンソール12は、以下に説明するような適切なソフトウェア制御下でこの情報を用い、製造所またはユーザによりプログラム可能な設定装置を用いて、コンソール12の操作パラメータがパック14の構成要素に一致するように、自動的に調整する。デバイス18および読取装置20は、容易に商業上調達可能な当該技術分野で公知な種々の電気、磁気または光学装置の何れのものでもよい。
【0016】
図4において最もよく解るように、制御コンソール12は、一般的に、CPU118、吸引ポンプ20、手持ち電源22、注入流体バルブ26、吸引バルブ28および吸引圧力センサ30を含む。読取装置21からCPU118に供給される情報は、吸引バルブ28、ポンプ20および注入流体バルブ26を制御するために使用される。CPU118はまた、電源22により手持ち部品116に供給された電源を制御する。吸引された流体は、ポンプ20により収集コンテナ24に導かれる。
【0017】
加えて、制御コンソール12は、外科的処置中に用いられる一つまたは複数のパックの内容物のリストをプリントアウトするようにプリンタ220に信号を送ることができる。図5において解るように、リスト200は、外科的手順中に用いられた種々のプロダクツ(産出物)、レンズ、医薬等を追跡できるように、リスト200から取外しかつ患者の診断カルテ上に置くことが容易にできる一連の自己接着性ラベル210の形式とすることができる。プリンタ220は、ハードウェア接続またはワイヤレス接続(例えば、ブルートゥース(登録商標))を介して制御コンソール12と通信できる。
【0018】
システム10は、システム10の所有者によって使用されるパック14または構成要素16に関する情報を在庫管理システムまたはソフトウェア230に提供することにより在庫管理/追跡用にもまた使用でき、在庫管理ソフトウェアプログラムおよびシステムはたくさんあり、商業上調達可能で当該技術分野で公知なものである。在庫管理システム230は、パック14および/または構成要素16を自動的に再注文するために使用できる。加えて、パック14または構成要素16に関する製造番号、ロット番号または他の情報のような情報がシステム10で追跡でき、および/または、在庫管理システム230を介して、パック14および/または構成要素16の製造業者に指示を送ることができる。在庫管理システム230は、ハードウェア接続またはワイヤレス接続(例えば、ブルートゥース(登録商標))を介して制御コンソール12と通信できる。
【0019】
図6において解るように、システム10は、コンソール12の操作および/またはコンソール12によって実行される外科的手順に関する広範囲の種々な情報を提供するように、インターネットまたはローカルエリアネットワーク(LAN)サーバ310、パーソナルデジタルアシスタンス(PDA)320またはインターネットサーバ330のような外科センタの内部または外部のコンソール12に対して外部の装置と、通信するよう、電子的に接続されるように、適切なハードウェア300(例えば、モデム、イーサネット(登録商標)カード)およびソフトウェアを含むことができる。統計データ(例えば、患者データ、実績パラメータ、外科手術パラメータ(例えば、真空レベル、超音波出力、洗浄圧力)、外科手術のビデオ記録、または外科手術時間)は、遠隔地に配置されたコンソール12とコンソール312、コンソール12と外科センタデータベース340、および/またはコンソール12とコンソール12の製造業者350、との間に転送でき、またはビデオレコーダ360またはDVD/CD370のような適切なメディア上に格納できる。このような情報は、教育、患者の請求書作成、専門的サービスまたは患者の特質の保証のような種々の方法で補助できる。このような情報の記録を提供することは、外科医が後の手術のために外科的手順を再検討することをも可能にし、これにより互換性のある外科的手法および装置を評価できる。コンソール12はまた、コンソール12がサービスまたは修理を必要とするときを認識し自動的に製造業者350に警告する適切なソフトウェアを含むこともできる。
【0020】
加えて、システム10は、ハードウェア300を介したコンソール12への遠隔アクセスを可能とする。このような遠隔アクセスは、製造業者350によりコンソール12内で使用されるソフトウェアが遠隔から更新されるようにすることができる。加えて、遂行されるサービス診断は遠隔でなされ得る。訓練および他の教育材料は、コンソール12にダウンロードされ、要求されるかまたは依頼されるときには何時でも自動的に提供される。先に手術された患者のデータは、外科医が外科的手順(手術)中に利用可能な患者の完全な診断記録をもつことができるようにコンソール12にダウンロードできる。コンソール12用の操作マニュアル同様、外科的手順(手術)中に使用される各外科用装置に対するパッケージのラベル化、禁忌および使用説明書は、コンソール12にダウンロードでき、外科的手順(手術)中に利用できる。このような情報は、製造業者350により自動的に更新できる。
【0021】
この明細書は、例証と説明のために設けられたものである。当該関連技術分野において熟練したものにとって、本発明の範囲または精神から逸脱することなく上述した本発明に変更と修正がなされ得ることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】外科用パックの外観を示す本発明に使用できる外科用コンソールの斜視図である。
【図2】外科用パックの種々の内容物を示す本発明に使用できる外科用パックの分解斜視図である。
【図3】図2の円3で抜取った本発明に使用できる外科用パックの拡大斜視図である。
【図4】本発明に使用できる外科用システムコンソールの概要を示す図である。
【図5】本発明により得られるプリントアウトの例を示す図である。
【図6】本発明のシステム概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)読取装置を有する外科用コンソールと、
b)複数の構成要素を含む少なくとも一つの外科用パックと、
c)前記外科用パックに関係づけられた識別デバイスであって、前記読取装置により認識され、かつ前記パック内に含まれた前記構成要素に関する情報を前記外科用コンソールに提供することができる識別デバイスと、
d)前記パック内に含まれた前記構成要素のリストをプリントアウトするため前記外科用コンソールに接続されたプリンタと、
を備えたことを特徴とする外科的手順識別システム。
【請求項2】
前記リストは複数のラベルである、請求項1に記載の外科的手順識別システム。
【請求項3】
前記識別デバイスはバーコードであり、前記読取装置はバーコードスキャナである、請求項1に記載の外科的手順識別システム。
【請求項4】
前記制御コンソールと前記プリンタとの間の接続はワイヤレス接続である、請求項1に記載の外科的手順識別システム。
【請求項5】
a)読取装置を有する外科用コンソールと、
b)複数の構成要素を含む少なくとも一つの外科用パックと、
c)前記外科用パックに関係づけられた識別デバイスであって、前記読取装置により認識され、かつ前記パック内に含まれた前記構成要素に関する情報を前記外科用コンソールに提供することができる識別デバイスと、
d)前記パックおよび/または前記構成要素の使用を追跡するため前記外科用コンソールに接続された在庫管理システムと、
を備えたことを特徴とする外科的手順識別システム。
【請求項6】
前記識別デバイスはバーコードであり、前記読取装置はバーコードスキャナである、請求項5に記載の外科的手順識別システム。
【請求項7】
前記制御コンソールと前記プリンタとの間の接続はワイヤレス接続である、請求項5に記載の外科的手順識別システム。
【請求項8】
a)読取装置を有する外科用コンソールと、
b)複数の構成要素を含む少なくとも一つの外科用パックと、
c)前記外科用パックに関係づけられた識別デバイスであって、前記読取装置により認識され、かつ前記パック内に含まれた前記構成要素に関する情報を前記外科用コンソールに提供することができる識別デバイスと、
d)前記パック内に含まれた前記構成要素に関する情報を受信するため前記外科用コンソールに電子的に接続された外部装置と、
を備えたことを特徴とする外科的手順識別システム。
【請求項9】
前記識別デバイスはバーコードであり、前記読取装置はバーコードスキャナである、請求項8に記載の外科的手順識別システム。
【請求項10】
前記制御コンソールと前記外部装置との間の電子的接続はワイヤレス接続である、請求項8に記載の外科的手順識別システム。
【請求項11】
a)データを蓄積可能な外科用コンソールを設け、
b)前記外科用コンソールを該外科用コンソールの外部に配置された通信装置に電子的に接続し、
c)前記外科用コンソールと前記装置との間でデータを電子的に転送する、
ことを特徴とする外科用システムを操作する方法。
【請求項12】
前記装置はローカルエリアネットワークサーバである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記装置は個人的デジタル補助器である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記装置はインターネットサーバである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記装置はイントラネットサーバである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記装置は、前記ローカルエリアネットワークサーバから受信したデータを前記外科用コンソールに伝達する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記装置は、前記個人的デジタル補助器から受信したデータを前記外科用コンソールに伝達する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記装置は、前記インターネットサーバから受信したデータを前記外科用コンソールに伝達する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記装置は、前記イントラネットサーバから受信したデータを前記外科用コンソールに伝達する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記データは、複数の構成要素を含む外科用パック内に含まれた構成要素に関する情報を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記装置はローカルエリアネットワークである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記装置は個人的デジタル補助器である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記装置はインターネットサーバである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記装置はイントラネットサーバである、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−279263(P2008−279263A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133523(P2008−133523)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【分割の表示】特願2003−579044(P2003−579044)の分割
【原出願日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【出願人】(501449322)アルコン,インコーポレイティド (140)
【Fターム(参考)】