説明

外筒への内筒挿入装置

【課題】外筒と内筒との接触を防止し且つ外筒の内周面と内筒の外周面との間隔を適切に管理できる外筒への内筒挿入装置を提供する。
【解決手段】外筒1をその軸線Z1が横向きとなるように支持する架台3と、外筒1と同方向に延びる内筒2が載置され且つ架台3に対して近接離反する方向及び内筒2の軸線Z2に対して交差する方向へ移動可能な補助挿入台車4と、内筒2の架台3とは反対側の端部を保持し且つ架台3に対して近接離反する方向に移動可能な挿入台車5とを備え、内筒2の端部を挿入台車5により保持し、補助挿入台車4を挿入台車5の移動経路から退避させた後、挿入台車5を架台3側に移動させて外筒1に内筒2を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外筒への内筒挿入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントなどに組み込まれる構造物の製作時に、両端が開口した外筒の内方へ両端が開口した内筒を配置する際には、外筒をその軸線が垂直になるように立てた状態とし、内筒を揚重手段によって吊り上げ、外筒の軸線に内筒の軸線に一致させ、該内筒を下降させて外筒に挿入している。この後、内筒と外筒とをスペーサを介して相互に溶接し、あるいはボルトを始めとする機械要素により締結して、二重構造筒を形成させている。
【0003】
また、横向きに延びる円筒ワーク(上述の内筒に相当)を、フォークリフトトラックによって横向きに配置したタンク(上述の外筒に相当)に挿入するワークの筒内挿入方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−281298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術の前段に記載した二重構造筒の形成手法では、揚重手段によって吊り上げられた内筒は、外筒の真上へ移動させる際に揺動するため、この揺動が治まらない状態で内筒を下降させると、外筒と内筒とが相互に接触してしまう。更に、揚重手段によって吊り上げられた内筒の位置を、作業者の運転操作で微調整することは困難である。
【0006】
しかも、内筒を外筒に挿入するのに際し、外筒の内周面と内筒の外周面の間隔を設計値に合うように管理する必要があるが、内筒を下降させて外筒に挿入する手法では、外筒と内筒との位置関係を上方からしか確認できないため、前記間隔を管理することは容易ではない。
【0007】
背景技術の後段に記載した特許文献1のものでは、フォークリフトトラックの運転操作を慎重に行わないと、円筒ワークが振れ、タンク内周面に円筒ワークの先端外周面が接触してしまう。また、作業者が出入りできるほど大きな内筒を、フォークリフトトラックで移動させることは困難である。
【0008】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、外筒と内筒との接触を防止し且つ外筒の内周面と内筒の外周面との間隔を適切に管理できる外筒への内筒挿入装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の外筒への内筒挿入装置は、
外筒をその軸線が横向きとなるように支持する架台と、
前記外筒と同方向に延びる内筒が載置され且つ架台に対して近接離反する方向及び内筒の軸線に対して交差する方向へ移動可能な補助挿入台車と、
前記内筒の架台とは反対側の端部を保持し且つ架台に対して近接離反する方向に移動可能な挿入台車と、
前記内筒の架台側の端部に着脱可能で且つ外筒内周面を転動可能な案内ローラとを備えている。
【0010】
請求項2に記載の外筒への内筒挿入装置は、請求項1に記載の外筒への内筒挿入装置において、
架台は、外筒の軸線方向に並べて配置した二つの外筒用基盤を有し、
各外筒用基盤のそれぞれに、外筒外周面に当接し得る二つの外筒用ターニングローラを設けたもので、
外筒用ターニングローラを回転させると、外筒の周方向位置を調整することができる。
【0011】
請求項3に記載の外筒への内筒挿入装置は、請求項1、2のいずれかに記載の外筒への内筒挿入装置において、
補助挿入台車は、架台に対して近接離反する方向へ移動可能な第一の台車本体を有し、
該第一の台車本体に、補助挿入台車を内筒の軸線に対して交差する方向へ移動させるための退避用車輪を、該退避用車輪の踏面が走行用車輪の踏面よりも下側に位置する横行位置と走行用車輪の踏面よりも上側に位置する格納位置との間を昇降可能に設けたもので、
退避用車輪を横行位置に下降させると、該退避用車輪の踏面が路面に接するとともに、走行用車輪が路面から離隔し、補助挿入台車を構成する第一の台車本体を側方へ退避させることができる。
【0012】
請求項4に記載の外筒への内筒挿入装置は、請求項3に記載の外筒への内筒挿入装置において、
補助挿入台車は、
第一の台車本体に、二つのガイド部材を内筒の軸線方向に並べて且つ昇降可能に設け、各ガイド部材のそれぞれに、内筒外周面に当接し得る二つの内筒用ターニングローラを、内筒の軸線に対して交差する方向へ水平移動可能に設けたもので、
内筒用ターニングローラを回転させると、内筒の周方向位置を調整することができ、
内筒用ターニングローラを内筒の軸線に対して交差する方向へ水平移動させるとともに、ガイド部材の上下位置を調整すると、内筒の軸線を外筒の軸線に合わせることができる。
【0013】
請求項5に記載の外筒への内筒挿入装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の外筒への内筒挿入装置においては、
挿入台車は、架台に対して近接離反する方向へ移動可能な第二の台車本体と、内筒の架台とは反対側の端部に同軸に装着可能な位置調整用治具を有し、
内筒の軸線方向に延び且つ前記位置調整用治具と連結可能な回転軸を装備したターンテーブルを第二の台車本体に、昇降可能に且つ内筒の軸線に対して交差する方向へ移動可能に設けたもので、
内筒に装着した位置調整用治具に回転軸を連結してターンテーブルを回転させると、内筒の周方向位置を調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の外筒への内筒挿入装置によれば、下記のような優れた作用効果を奏し得る。
【0015】
(1)補助挿入台車に載置した内筒の端部を挿入台車により保持し、前記補助挿入台車を内筒の軸線に対して交差する方向へ移動させた後、前記挿入台車を架台側に移動させて該架台に支持されている外筒に内筒を挿入する際に、内筒に装着した案内ローラが外筒内周面を転動するので、外筒と内筒との接触を防止できる。
【0016】
(2)外筒、内筒を横向きに支持しているので、外筒の内周面と内筒の外周面との間隔を、外筒、内筒の両端部から確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の外筒への内筒挿入装置の一例において外筒に内筒を挿入し始める状態を示す側面図、(B)は本発明の外筒への内筒挿入装置の一例を示す平面図である。
【図2】(A)は本発明の外筒への内筒挿入装置の一例における位置調整用治具の正面図、(B)は補助挿入台車を移動させて外筒に内筒の一部を挿入した状態を示す側面図である。
【図3】(A)は位置調整用治具を内筒に装着して挿入台車を位置調整用治具に連結した状態を示す側面図、(B)は内筒に外筒の軸線延長方向への移動用の案内ローラを装着した状態を示す正面図である。
【図4】(A)は挿入台車を移動させて外筒に内筒の全部を挿入した状態を示す側面図、(B)は内筒に外筒の周方向への移動用の案内ローラを装着した状態を示す正面図である。
【図5】補助挿入台車の側面図である。
【図6】位置調整用治具と挿入台車に属するターンテーブルとの連結構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1〜図6は本発明の外筒への内筒挿入装置の一例であり、両端が開口した外筒1をその軸線Z1が横向きとなるように支持する架台3と、前記外筒1と同方向に延び且つ両端が開口した内筒2がその軸線Z2が横向きとなるように載置される補助挿入台車4と、外筒1に内筒2を挿入する前において架台3とは反対側に位置する内筒2の端部を保持し且つ架台3に対して近接離反する方向に移動可能な挿入台車5と、前記内筒2の架台3側の端部下縁に着脱可能で且つ外筒1の内底部を転動可能な案内ローラ6,7とを備えている。
【0020】
架台3は、外筒1の軸線Z1方向に並べて配置した二つの外筒用基盤8を有し、各外筒用基盤8の上部に、平面視で外筒1の軸線Z1に直交する方向に延びるガイド部材9を水平に設けている。ガイド部材9のそれぞれには、ブラケット10に枢支され且つ外筒1外周面に当接し得る外筒用ターニングローラ11が二つずつ、ガイド部材9に沿って移動可能に取り付けられており、前記外筒用ターニングローラ11が外筒1を支持する。
【0021】
各ガイド部材9に取り付けられている二つのブラケット10は、ボールねじ、減速機、及び電動機からなる周知の移動機構により互いに近接離反可能に構成され、前記ブラケット10に枢支されている外筒用ターニングローラ11の軸心間隔を調整することができる。一方のガイド部材9に属する外筒用ターニングローラ11は、減速機、及び電動機からなる周知の駆動機構により回転可能に構成され、外筒用ターニングローラ11に支持された外筒1の周方向位置(周方向位相)を調整することができる。
【0022】
補助挿入台車4は、架台3に対して近接離反する方向へ移動するための走行用車輪12を、一端部左右、及び後端部左右の合計四カ所に装備した第一の台車本体13を有しており、この第一の台車本体13の一端部の走行用車輪12は、減速機、及び電動機からなる周知の駆動機構により回転可能に構成されている。建屋の床には、内筒2の軸線Z2に沿うように作業用レール14が敷設してあり、第一の台車本体13の走行用車輪12は、作業用レール14上を転動するようになっている。
【0023】
第一の台車本体13の内部の中間部左右には、シリンダ15により上下方向へ移動可能なブラケット16が二つずつ設けられており、該ブラケット16には、補助挿入台車4を平面視で内筒2の軸線Z2に対して直交する方向へ移動させるための退避用車輪17が枢支されている。退避用車輪17は、減速機、及び電動機からなる周知の駆動機構により回転可能に構成されている。
【0024】
シリンダ15によりブラケット16を押し下げると退避用車輪17は、その踏面が前記走行用車輪12の踏面よりも下側に位置する横行状態となり、シリンダ15によりブラケット16を引き上げると退避用車輪17は、その踏面が前記走行用車輪12の踏面よりも上側に位置する格納状態となる。建屋の床には、作業用レール14に対して直交する方向へ延びる退避用レール18が敷設してあり、横行状態とした退避用車輪17は、退避用レール18上を転動するようになっている。
【0025】
第一の台車本体13の上部には、二つの内筒用基盤19が内筒2の軸線Z2方向に並ぶように設置されており、各内筒用基盤19の上部に、シリンダ20とテレスコピック状の垂直ガイド部材21とからなる昇降機構22を介して、平面視で内筒2の軸線Z2に直交する方向に延びるガイド部材23を水平に且つ上下へ移動可能に搭載している。ガイド部材23のそれぞれには、ブラケット24に枢支され且つ内筒2外周面に当接し得る内筒用ターニングローラ25が二つずつ、ガイド部材23に沿って移動可能に取り付けられており、前記内筒用ターニングローラ25が内筒2を支持する。
【0026】
各ガイド部材23に取り付けられている二つのブラケット24は、ボールねじ、減速機、及び電動機からなる周知の移動機構により内筒2の軸線Z2に対して水平に直交する方向へ移動可能に構成され、前記ブラケット24に枢支されている内筒用ターニングローラ25の前記軸線Z2に直交する水平方向への位置を調整することができる。一方のガイド部材23に属する内筒用ターニングローラ25は、減速機、及び電動機からなる周知の駆動機構により回転可能に構成され、内筒用ターニングローラ25に支持された内筒2の周方向位置(周方向位相)を調整することができる。
【0027】
すなわち、ガイド部材23を内筒用基盤19ごとに上下に変位させ、内筒用ターニングローラ25を枢支しているブラケット24をガイド部材23ごとに内筒2の軸線Z2に対して直交する方向に変位させれば、内筒2の軸線Z2を架台3に支持されている外筒1の軸線Z1に同軸に位置させることができる。
【0028】
挿入台車5は、架台3に対して近接離反する方向へ移動するための走行用車輪26を、一端部左右、及び後端部左右の合計四カ所に装備した第二の台車本体27を有しており、第二の台車本体27の一端部の走行用車輪26は、減速機、及び電動機からなる周知の駆動機構により回転可能に構成され、前記作業用レール14上を転動するようになっている。
【0029】
第二の台車本体27の上部には支持塔28が立設されており、該支持塔28の架台3側の面に、支持塔28に対して上下に移動可能に取り付けた昇降部材29、及び該昇降部材29に対して左右に移動可能に取り付けた横行部材30を介して、ターンテーブル31を取り付けている。
【0030】
ターンテーブル31は、減速機、及び電動機からなる周知の駆動機構により回転可能に構成され、架台3側へ向けて水平に突出する回転軸32を有している。この回転軸の軸線Z3は、ターンテーブル31の回転中心と一致している。
【0031】
支持塔28に対して昇降部材29を上下に移動させる手段、並びに昇降部材29に対して横行部材30を左右に移動させる手段には、シリンダを用いており、該シリンダを作動させれば、ターンテーブル31の回転軸32が上下左右に変位し、回転軸32の軸線Z3を補助挿入台車4に載置されている内筒2の軸線Z2と同軸に位置させることができる。
【0032】
ターンテーブル31の回転軸32には、内筒2の架台3とは反対側の端部(基端部)に同軸に装着可能な位置調整用治具33の中心部分が連結される。この位置調整用治具33は、回転軸32の軸線Z3方向に見ると、先端が内筒2の内周面に当接する四本のアーム34からなる十字状に形成され、各アーム34の先端は、内筒2に対してボルト締結されるようになっている。
【0033】
位置調整用治具33の中心部分には、回転軸32の軸線Z3方向に貫通する孔35が穿設されており、この孔35に、球面滑り軸受36のアウタレース37を嵌着している。球面滑り軸受36のインナレース38には、架台3側の端部が閉塞し且つ架台3とは反対側の端部が開口した円筒状のブラケット39が取り付けられている。
【0034】
回転軸32は、架台3側とは反対側の部分の外径がブラケット39の内径よりも大きく、それに連なって架台3側へ延びる部分がブラケット39に挿入可能な外径に設定され、その先端部が架台3側へ向かって外径が漸次縮小する先細り形状となっている。
【0035】
従って、ブラケット39の中心線が回転軸32の軸線Z3に対して斜めにずれていたとしても、第二の台車本体27の移動により回転軸32がブラケット39に近接する際には、回転軸32の先細り部分がブラケット39内へ回転軸32全体を導くとともに、球面滑り軸受36のインナレース38がアウタレース37に対して動き、ブラケット39の中心線が回転軸32の軸線Z3と同軸になる。
【0036】
ブラケット39の架台3側の端面はボルト40が貫通可能に構成されており、この端面に貫通させたボルトを回転軸32の先端部に螺合することにより、位置調整用治具33に属するブラケット39と挿入台車5のターンテーブル31に属する回転軸32とが互いに締結される。
【0037】
案内ローラ6は、クランプなど周知の固定具により内筒2の架台3側の端部(先端部)下縁に装着可能なブラケットに枢支され、内筒2の接線方向に延びる軸を中心として回転し且つ外筒1の内底部に沿って外筒1の軸線Z1延長方向へ転動し得るように構成されている。
【0038】
案内ローラ7は、クランプなど周知の固定具により内筒2の架台3側の端部(先端部)下縁に装着可能なブラケットに枢支され、内筒2の軸線Z2に平行な軸を中心として回転し且つ外筒1の内底部に沿って外筒1の周方向へ転動し得るように構成されている。
【0039】
次に、図1〜図6に示す外筒への内筒挿入装置の作動を説明する。
【0040】
両端が開口した外筒1に両端が開口した内筒2を挿入するのに際しては、外筒1をその軸線Z1が横向きとなるように、架台3の外筒用ターニングローラ11に支持させ、外筒用ターニングローラ11を回転させて外筒1の周方向位置(周方向位相)を調整し、必要に応じて外筒用ターニングローラ11の軸心間隔を調整し、外筒1をその軸線Z1が水平になるように保持する。
【0041】
また、内筒2をその軸線Z2が横向きとなるように、補助挿入台車4の内筒用ターニングローラ25に支持させ、内筒用ターニングローラ25を回転させて内筒2の周方向位置(周方向位相)を調整し、内筒用ターニングローラ25を内筒2の軸線Z2に対して水平に直交する方向へ移動させるとともに、ガイド部材23の上下位置を調整して内筒2の軸線Z2を外筒1の軸線Z1に合わせる。
【0042】
外筒1を架台3に搭載する作業、並びに内筒2を補助挿入台車4に搭載する作業が完了したならば、内筒用ターニングローラ25が外筒1に干渉しない位置まで、補助挿入台車4を架台3側へ向けて移動させ、内筒2の架台3側の端部を外筒1に挿入する。
【0043】
内筒2の基端部に位置調整用治具33を装着し、支持塔28に対する昇降部材29の上下位置、及び該昇降部材29に対する横行部材30の左右位置を調整して、ターンテーブル31の回転軸32の軸線Z3を位置調整用治具33のブラケット39の中心線に合わせる。
【0044】
挿入台車5を補助挿入台車4に向けて移動させ、ターンテーブル31の回転軸32を位置調整用治具33のブラケット39に嵌め合わせた後、ボルト40によりブラケット39を回転軸32に締結し、挿入台車5のターンテーブル31を内筒2に装着した位置調整用治具33に連結し、内筒2の先端部下縁に案内ローラ6を装着する。
【0045】
補助挿入台車4のガイド部材23を下降させると、内筒用ターニングローラ25を内筒2の外周面から離隔し、内筒2の架台3側の端部下縁に装着した案内ローラ6が、外筒1の内底面に接する。
【0046】
補助挿入台車4が作業用レール14に載ったままであると、挿入台車5が架台3側へ向けて移動できないので、補助挿入台車4を作業用レール14の側方へ移動させる作業を行う。
【0047】
補助挿入台車4を作業用レール14に沿って移動させ、退避用車輪17を退避用レール18の敷設個所に位置させる。ブラケット16を押し下げると、退避用車輪17の踏面が走行用車輪12の踏面よりも下側に位置する横行状態となり、走行用車輪12の踏面は作業用レール14から離隔するので、補助挿入台車4を退避用レール18に沿って作業用レール14の側方へと移動させる。
【0048】
補助挿入台車4を作業用レール14の側方へ移動させる作業を行ったならば、挿入台車5を架台3側へ移動させて、内筒2を外筒1に挿入する。このとき、案内ローラ6が外筒1の内底面を外筒1の軸線Z1方向に転動するので、外筒1と内筒2との接触を防止できる。また、外筒1、内筒2を横向きに支持しているので、外筒1の内周面と内筒2の外周面との間隔を、外筒1、内筒2の両端部から確認できる。
【0049】
外筒1と内筒2との相対的な周方向位置(周方向位相)を調整する必要がある場合には、前記案内ローラ6に替えて内筒2の先端部下縁に案内ローラ7を装着し、挿入台車5のターンテーブル31を回転させて内筒2の周方向位置(周方向位相)を調整する。このとき、案内ローラ7が外筒1の内底面を外筒1の周方向に転動するので、外筒1と内筒2との接触を防止できる。
【0050】
更に、外筒1の内周面と内筒2の外周面との間にスペーサを介在させ、外筒1及び内筒2をスペーサに溶接することにより、外筒1と内筒2との相対位置を固定する。この後、ターンテーブル31の回転軸32と内筒2に装着されている位置調整用治具33との連結を解除し、挿入台車5を架台3から離反する方向へ移動させ、位置調整用治具33を内筒2から取り外す。
【符号の説明】
【0051】
1 外筒
2 内筒
3 架台
4 補助挿入台車
5 挿入台車
8 外筒用基盤
11 外筒用ターニングローラ
13 第一の台車本体
17 退避用車輪
23 ガイド部材
24 ブラケット
25 内筒用ターニングローラ
27 第二の台車本体
31 ターンテーブル
32 回転軸
33 位置調整用治具
Z1 軸線
Z2 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒をその軸線が横向きとなるように支持する架台と、
前記外筒と同方向に延びる内筒が載置され且つ架台に対して近接離反する方向及び内筒の軸線に対して交差する方向へ移動可能な補助挿入台車と、
前記内筒の架台とは反対側の端部を保持し且つ架台に対して近接離反する方向に移動可能な挿入台車と、
前記内筒の架台側の端部に着脱可能で且つ外筒内周面を転動可能な案内ローラとを備えたことを特徴とする外筒への内筒挿入装置。
【請求項2】
架台は、外筒の軸線方向に並べて配置した二つの外筒用基盤を有し、
各外筒用基盤のそれぞれに、外筒外周面に当接し得る二つの外筒用ターニングローラを、外筒の軸線に対して交差する方向へ水平移動可能に設けたものである請求項1に記載の外筒への内筒挿入装置。
【請求項3】
補助挿入台車は、架台に対して近接離反する方向へ移動可能な第一の台車本体を有し、
該第一の台車本体に、補助挿入台車を内筒の軸線に対して交差する方向へ移動させるための退避用車輪を、該退避用車輪の踏面が走行用車輪の踏面よりも下側に位置する横行位置と走行用車輪の踏面よりも上側に位置する格納位置との間を昇降可能に設けたものである請求項1、2のいずれかに記載の外筒への内筒挿入装置。
【請求項4】
補助挿入台車は、
第一の台車本体に、二つのガイド部材を内筒の軸線方向に並べて且つ昇降可能に設け、各ガイド部材のそれぞれに、内筒外周面に当接し得る二つの内筒用ターニングローラを、内筒の軸線に対して交差する方向へ水平移動可能に設けたものである請求項3に記載の外筒への内筒挿入装置。
【請求項5】
挿入台車は、架台に対して近接離反する方向へ移動可能な第二の台車本体と、内筒の架台とは反対側の端部に同軸に装着可能な位置調整用治具を有し、
内筒の軸線方向に延び且つ前記位置調整用治具と連結可能な回転軸を装備したターンテーブルを第二の台車本体に、昇降可能に且つ内筒の軸線に対して交差する方向へ移動可能に設けたものである請求項1〜4に記載の外筒への内筒挿入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−24890(P2012−24890A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166910(P2010−166910)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】